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特許7250449プラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】プラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230327BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20230327BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H05H1/46 M
H05H1/46 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018127811
(22)【出願日】2018-07-04
(65)【公開番号】P2020009839
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ビン ブディマン モハマド ファイルズ
(72)【発明者】
【氏名】辻本 宏
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-229734(JP,A)
【文献】特開2006-173223(JP,A)
【文献】特開2002-176030(JP,A)
【文献】特開2008-227063(JP,A)
【文献】特開2010-283028(JP,A)
【文献】特開2009-152232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消耗部材を有する処理容器内を一定の圧力に維持し、被処理体をプラズマによりエッチングするプラズマエッチング方法であって、
前記消耗部材の温度が第1温度から該第1温度よりも低い第2温度に達するまでの降温時間又は降温速度の変動値を計測する工程と、
前記消耗部材の消耗度合いと前記変動値との相関を示す情報に応じて、計測した前記変動値に基づき前記消耗部材の消耗度合いを推定する工程と、
推定した前記消耗部材の消耗度合いに基づき、前記消耗部材の上昇量を制御する工程と、
を有し、
前記消耗部材は、エッジリングであり、
前記エッジリングは、内周エッジリング、中央エッジリング及び外周エッジリングに分割され、
前記内周エッジリング、中央エッジリング及び外周エッジリングの少なくともいずれかの上昇量を調整する、
プラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記処理容器内に一定の流量のガスを供給しながら前記処理容器内を一定の圧力に維持する、
請求項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
消耗部材を有する処理容器と、
ガスを供給するガス供給部と、
前記消耗部材の温度を計測する計測部と、
前記消耗部材を加熱する加熱部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記処理容器内にガスを供給させながら前記処理容器内を一定の圧力に維持し、
前記消耗部材の温度が第1温度から該第1温度よりも低い第2温度に達するまでの降温時間又は降温速度の変動値を計測し、
前記消耗部材の消耗度合いと前記変動値との相関を示す情報に応じて、計測した前記変動値に基づき前記消耗部材の消耗度合いを推定し、
推定した前記消耗部材の消耗度合いに基づき、前記消耗部材の上昇量を制御し、
前記消耗部材は、エッジリングであり、
前記エッジリングは、内周エッジリング、中央エッジリング及び外周エッジリングに分割され、
前記制御部は、
前記内周エッジリング、中央エッジリング及び外周エッジリングの少なくともいずれかの上昇量を調整する、
プラズマエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エッジリングは、プラズマエッチング装置の処理室内において載置台上のウエハの周辺部に配置され、プラズマをウエハWの表面に向けて収束させる。プラズマ処理中、エッジリングはプラズマに曝露され、消耗する。
【0003】
その結果、ウエハのエッジ部においてシースに段差が生じ、イオンの照射角度が斜めになり、エッチング形状にチルティング(tilting)が生じる。また、ウエハのエッジ部のエッチングレートが変動し、ウエハWの面内におけるエッチングレートが不均一になる。そこで、エッジリングが所定以上消耗したときには新品のものに交換することが行われている。ところが、その際に発生する交換時間が生産性を低下させる要因の一つになっている。
【0004】
これに対して、例えば、特許文献1には、直流電源より直流電圧をエッジリングに印加することで、エッチングレートの面内分布を制御する技術が開示されている。引用文献2には、エッジリングの温度の時間変動からエッジリングの消耗度合いを計測する技術が開示されている。引用文献3には、エッジリングの厚さを測定して測定結果に応じてエッジリングの直流電圧を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5281309号公報
【文献】特許第6027492号公報
【文献】特開2005-203489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記課題に対して、一側面では、本発明は、プラズマエッチング装置における生産性を向上させることを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一の態様によれば、消耗部材を有する処理容器内を一定の圧力に維持し、被処理体をプラズマによりエッチングするプラズマエッチング方法であって、前記消耗部材の温度が第1温度から該第1温度よりも低い第2温度に達するまでの降温時間又は降温速度の変動値を計測する工程と、前記消耗部材の消耗度合いと前記変動値との相関を示す情報に応じて、計測した前記変動値に基づき前記消耗部材の消耗度合いを推定する工程と、を有するプラズマエッチング方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
一の側面によれば、プラズマエッチング装置における生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るプラズマエッチング装置の一例を示す図。
図2】エッジリングの消耗によるエッチングレート及びチルティングの変動を説明するための図。
図3】一実施形態に係るエッジリング及び周辺構造の断面の一例を示す図。
図4】一実施形態に係る直流電圧制御処理の事前処理の一例を示すフローチャート。
図5】一実施形態に係る降温時間の差分とエッジリングの消耗量との相関テーブルの一例を示す図。
図6】一実施形態に係る降温時間の差分と直流電圧の適正値との相関テーブルの一例を示す図。
図7】一実施形態に係る直流電圧制御処理を含むエッチング処理の一例を示すフローチャート。
図8】一実施形態に係る直流電圧制御処理による直流電圧の印加を説明するための図。
図9】一実施形態に係る3分割のエッジリングの一例を示す図。
図10】一実施形態に係るシステムの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0011】
[プラズマエッチング装置]
まず、本発明の一実施形態に係るプラズマエッチング装置1の一例について、図1を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係るプラズマエッチング装置1の断面の一例を示す図である。本実施形態に係るプラズマエッチング装置1は、RIE(Reactive Ion Etching)型のプラズマエッチング装置である。
【0012】
プラズマエッチング装置1は、真空排気可能な円筒型の処理容器10を有する。処理容器10は、金属製、例えば、アルミニウム又はステンレス鋼製等により形成され、その内部は、プラズマエッチングやプラズマCVD等のプラズマ処理が行われる処理室となっている。処理容器10は接地されている。
【0013】
処理容器10の内部には、円板状の載置台11が配設されている。載置台11は、ウエハWを載置する。載置台11は、アルミナ(Al)から形成された筒状保持部材12を介して処理容器10の底から垂直上方に延びる筒状支持部13に支持されている。
【0014】
載置台11は、静電チャック25及び基台25cを有する。基台25cは、アルミニウムから形成される。静電チャック25は、基台25c上に配置される。また、基台25cの上部外周側には、エッジリング(フォーカスリング)30がウエハWの周辺部を覆うように配置される。基台25c及びエッジリング30の外周は、インシュレータリング32により覆われている。
【0015】
静電チャック25は、導電膜からなる吸着電極25aを誘電層25bに挟み込んだ構成を有する。吸着電極25aには、スイッチ26aを介して直流電源26が接続されている。静電チャック25は、直流電源26から吸着電極25aに印加された直流電圧によりクーロン力等の静電力を発生させ、その静電力によりウエハWを吸着保持する。
【0016】
エッジリング30は、シリコン又は石英により形成されている。エッジリング30の下面近傍の基台25cにはヒータ52が埋設されている。ヒータ52には、交流電源58が接続され、交流電源58からの電力がヒータ52に印加されると、ヒータ52は加熱され、これにより、エッジリング30が90℃等に設定される。エッジリング30の裏面の温度は、放射温度計51により測定可能となっている。
【0017】
可変直流電源28は、スイッチ28aを介して電極29に接続され、電極29から該電極29に接するエッジリング30に印加する直流電圧を出力する。本実施形態では、可変直流電源28からエッジリング30に印加する直流電圧を適正値に制御することで、エッジリング30の消耗量に応じてエッジリング30上のシースの厚さを制御する。これにより、チルティングの発生を抑制し、エッチングレートの面内分布を制御する。可変直流電源28は、エッジリング30に印加する直流電圧を供給する直流電源の一例である。
【0018】
載置台11には、第1高周波電源21が整合器21aを介して接続されている。第1高周波電源21は、プラズマ生成およびRIE用の第1の周波数(例えば、13MHzの周波数)の高周波電力(HF電力)を載置台11に印加する。また、載置台11には、第2高周波電源22が整合器22aを介して接続されている。第2高周波電源22は、第1の周波数よりも低いバイアス印加用の第2の周波数(例えば、3MHzの周波数)の高周波電力(LF電力)を載置台11に印加する。このようにして載置台11は下部電極としても機能する。なお、HF電力は、ガスシャワーヘッド24に印加してもよい。
【0019】
基台25cの内部には、例えば、円周方向に延在する環状の冷媒室31が設けられている。冷媒室31には、チラーユニットから配管33、34を介して所定の温度の冷媒、例えば、冷却水が循環供給され、静電チャック25を冷却する。
【0020】
また、静電チャック25には、ガス供給ライン36を介して伝熱ガス供給部35が接続されている。伝熱ガス供給部35は、伝熱ガスをガス供給ライン36を介して静電チャック25の上面とウエハWの裏面の間の空間に供給する。伝熱ガスとしては、熱伝導性を有するガス、例えば、Heガス等が好適に用いられる。
【0021】
処理容器10の内面と筒状支持部13の外周面の間には排気路14が形成されている。排気路14には環状のバッフル板15が配設されるとともに、底部に排気口16が設けられている。排気口16には、排気管17を介して排気装置18が接続されている。排気装置18は、真空ポンプを有し、処理容器10内の処理空間を所定の真空度まで減圧する。また、排気管17は可変式バタフライバルブである自動圧力制御弁(automatic pressure control valve)(以下、「APC」という)を有し、APCは自動的に処理容器10内の圧力制御を行う。さらに、処理容器10の側壁には、ウエハWの搬入出口19を開閉するゲートバルブ20が取り付けられている。
【0022】
処理容器10の天井部にはガスシャワーヘッド24が配設されている。ガスシャワーヘッド24は、電極板37と、該電極板37を着脱可能に支持する電極支持体38とを有する。電極板37は、多数のガス通気孔37aを有する。ガスシャワーヘッド24は、載置台11に対向して上部電極としても機能する。
【0023】
電極支持体38の内部にはバッファ室39が設けられ、このバッファ室39のガス導入口38aには、ガス供給配管41を介して処理ガス供給部40が接続されている。処理ガス供給部40は、バッファ室39にガスを流し、多数のガス通気孔37aからガスシャワーヘッド24と載置台11の間の処理空間に処理ガスを供給する。処理容器10の周囲には、環状又は同心状に延びる磁石42が配置されている。処理ガス供給部40は、ガスを供給するガス供給部の一例である。
【0024】
プラズマエッチング装置1の各構成要素は、制御部43に接続されている。制御部43は、プラズマエッチング装置1の各構成要素を制御する。各構成要素としては、例えば、排気装置18、整合器21a,22a、第1高周波電源21、第2高周波電源22、スイッチ26a、28a、直流電源26、可変直流電源28、伝熱ガス供給部35および処理ガス供給部40等が挙げられる。
【0025】
制御部43は、CPU43a及びメモリ43bを備えるコンピュータである。CPU43aは、メモリ43bに記憶されたプラズマエッチング装置1の制御プログラム及び処理レシピを読み出して実行することで、プラズマエッチング装置1によるプラズマエッチング処理の実行を制御する。
【0026】
また、制御部43は、後述するエッジリング30の直流電圧制御処理の事前処理において算出した各種の相関テーブル(図5図6参照)をメモリ43bに記憶する。メモリ43bは、相関テーブルを記憶する記憶部の一例である。
【0027】
プラズマエッチング装置1は、ウエハWにプラズマエッチングを施す。プラズマエッチングを実行する場合、先ずゲートバルブ20を開き、ウエハWを処理容器10内に搬入し、静電チャック25上に載置する。直流電源26からの直流電圧を吸着電極25aに印加し、ウエハWを静電チャック25に吸着させる。
【0028】
また、伝熱ガスを静電チャック25の上面とウエハWの裏面の間に供給する。そして、処理ガス供給部40からの処理ガスを処理容器10内に導入し、排気装置18等により処理容器10内を減圧する。さらに、第1高周波電源21及び第2高周波電源22から第1高周波電力及び第2高周波電力を載置台11に供給する。
【0029】
プラズマエッチング装置1の処理容器10内では、磁石42によって一方向に向かう水平磁界が形成され、載置台11に印加された高周波電力によって鉛直方向のRF電界が形成される。これにより、ガスシャワーヘッド24から導入された処理ガスがプラズマ化し、プラズマ中のラジカルやイオンによってウエハWに所定のエッチング処理が行われる。
【0030】
ヒータ52は、エッジリング30等の消耗部材を加熱する加熱部の一例である。加熱部はこれに限られず、例えば熱媒体等であってもよい。また、放射温度計51は、消耗部材の温度を計測する計測部の一例である。なお、計測部は特定の温度計に限られず、例えば、ラクストロン等の光学式温度計や熱電対等であってもよい。
【0031】
[エッジリングの消耗]
次に、図2を参照して、エッジリング30の消耗によって生じるシースの変化と、エッチングレートの変動及びチルティングの発生について説明する。図2(a)に示すように、エッジリング30が新品の場合にウエハWの上面とエッジリング30の上面とが同じ高さになるようにエッジリング30の厚さが設計されている。このとき、プラズマ処理中のウエハW上のシースとエッジリング30上のシースとは同じ高さになる。この状態では、ウエハW上及びエッジリング30上へのプラズマからのイオンの照射角度は概ね垂直になる。この結果、ウエハW上に形成されるホール等のエッチング形状は、ウエハWの中央部及びエッジ部のいずれにおいても垂直になり、エッチング形状が斜めになるチルティング(tilting)は生じない。また、ウエハWの面内においてエッチングレートが均一に制御される。
【0032】
ところが、プラズマ処理中、エッジリング30はプラズマに曝露され、消耗する。そうすると、図2(b)に示すように、エッジリング30の厚さが薄くなって、エッジリング30の上面はウエハWの上面よりも低くなる。この結果、エッジリング30上のシースの高さはウエハW上のシースの高さよりも低くなる。
【0033】
このようにシースの高さに段差が生じている場合、ウエハWのエッジ部においてイオンの照射角度が斜めになり、エッチング形状のチルティング(tilting)が生じることがある。または、ウエハWのエッジ部のエッチングレートが変動し、ウエハWの面内におけるエッチングレートに不均一が生じることがある。以下、イオンが斜めに照射することでエッチング形状が垂直からずれる角度をチルト角度ともいう。
【0034】
これに対して、可変直流電源28から、エッジリング30の消耗量に応じた適正な直流電圧をエッジリング30に印加することで、チルティングを概ね垂直に制御し、エッチングレートの面内分布の均一性を図ることができる。しかしながら、エッジリング30はプラズマ処理中にプラズマに曝露され、徐々に消耗する。よって、可変直流電源28から印加する直流電圧の適正値は、エッジリング30の消耗量に応じて変動する。また、図2の(b)に示すように、エッジリング30の消耗は、エッジリング30の厚み方向の削れるだけでなく、幅の減少や材質の劣化等も含む。よって、エッジリング30の厚みの測定だけからエッジリング30の消耗量を推定し、推定した消耗量に応じてエッジリング30に印加する直流電圧を算出した場合、エッジリング30の消耗量の推定値が現実の消耗量からずれることがあるために適正な直流電圧をエッジリング30に印加できない場合がある。
【0035】
そこで、本実施形態では、エッジリング30の消耗量を熱容量から算出し、算出した熱容量に応じてエッジリング30へ印加する直流電圧を適正化する。具体的には、本実施形態では、熱容量としてエッジリング30の降温時間を測り、降温時間によってエジリング30の消耗量を予測し、エッジリング30へ印加する直流電圧の適正値を求め、エッジリング30へ印加する。なお、上記熱容量にはエッジリング30だけでなく、エッジリング30の周辺の部材の熱容量が含まれる。すなわちエッジリング30の降温温度は、エッジリング30の熱容量だけでなくエッジリング30の周辺の部材の熱容量も含んだ熱容量に対応するものである。
【0036】
[エッジリング及びその周辺構造]
本実施形態では、エッジリング30の消耗量をエッジリング30の降温時間の測定値から推定することで、エッジリング30の消耗量を熱容量から算出する。これにより、エッジリング30へ適正な直流電圧を印加するように制御できる。そこで、エッジリング30の温度を測定するためのエッジリング30及びその周辺構造について、図3を参照しながら説明する。図3は、一実施形態に係るエッジリング30及びその周辺構造の断面の一例を示す図である。
【0037】
エッジリング30は、基台25cの外周側の上面にリング状に配置されている。基台25cの上面には、エッジリング30の下面に接するようにインシュレータ52aが置かれ、インシュレータ52a内にヒータ52が埋設されている。交流電源58からの電力がヒータ52に印加されると、ヒータ52は加熱され、これにより、エッジリング30は昇温される。
【0038】
放射温度計51は、エッジリング30の裏面の温度を測定する。放射温度計51の先端は、Ge等の材質の、反射防止処理が施されたガラス54に近接する。放射温度計51の先端からは赤外線又は可視光線が出射される。出射された赤外線又は可視光線は、インシュレータ56内の空洞を通ってエッジリング30の下面に到達し、反射する。本実施形態では、反射した赤外線又は可視光線の強度を測定することによりエッジリング30の温度を測定する。Oリング55は、処理容器10内の真空空間をインシュレータ56内の大気空間から閉塞するようにシールする。可変直流電源28は、インシュレータ29a内に設けられた電極29に接続されている。電極29には、可変直流電源28からエッジリング30の消耗量に応じた直流電圧が印加される。
【0039】
本実施形態では、ヒータ52を用いてエッジリング30の温度を90℃に設定した後、20℃まで降温させる。その際、例えば、60(sccm)のArガスを処理容器10内に供給しながら、処理容器10内を100(mT)の圧力に維持しながら、エッジリング30を90℃から20℃まで降温させるときの降温時間を計測する。この工程において供給されるパージガスは、Arガスに限られないが、不活性ガスであることが好ましい。また、第1高周波電源21及び第2高周波電源22から出力される高周波電力は0(W)に設定される。
【0040】
制御部43は、測定した降温時間に基づき、エッジリング30の消耗量を算出し、エッジリング30の消耗量に応じた直流電圧の適正値を算出する。制御部43は、算出した直流電圧の適正値を電極29に印加するように制御する。
【0041】
[直流電圧制御処理の事前処理]
次に、測定した降温時間に基づきエッジリング30の消耗量を算出するために、降温時間とのエッジリングの消耗量との相関を示す情報を収集する事前処理について、図4を参照しながら説明する。図4は、一実施形態に係る直流電圧制御処理の事前処理の一例を示すフローチャートであり、エッジリング30に直流電圧の適正値を印加する直流電圧制御処理(図7参照)の事前処理として実行される。
【0042】
本処理が開始されると、制御部43は、60(sccm)のArガスを処理容器10内に供給しながら、処理容器10内を100(mT)の一定圧力に維持する(ステップS10)。
【0043】
次に、制御部43は、新品のエッジリング30を使用して、交流電源58から印加されるヒータ52の電力を一定にして入熱を行う。制御部43は、放射温度計51により測定したエッジリング30の裏面の温度が90℃になるように設定する(ステップS11)。次に、制御部43は、Arガスによる抜熱によりエッジリング30の裏面の温度が90℃から20℃になるまでの降温時間を測定する(ステップS11)。
【0044】
次に、制御部43は、エッジリング30の使用時間の一例であるRF電力の印加時間毎(例えば300h経過毎)にエッジリング30の裏面の温度が90℃から20℃になるまでの降温時間を測定する(ステップS12)。
【0045】
次に、制御部43は、RF印加時間毎の降温時間の測定結果から、新品のエッジリング30の降温時間に対するRF印加時間毎(例えば300h毎)の降温時間の差分(変動値)とエッジリング30の消耗量との相関を示す情報を算出する(ステップS13)。
【0046】
次に、制御部43は、エッジリング30の消耗量にするエッジリング30への直流電圧の適正値を求め、メモリ43bに記憶し(ステップS14)、本処理を終了する。
【0047】
ステップS13を実行した結果得られた降温時間の差分とエッジリング30の消耗量との相関情報の一例を図5に示す。図5の横軸は新品のエッジリング30に対する降温時間の差分を示し、縦軸はエッジリング30の消耗量を示す。
【0048】
RF印加時間毎のエッジリング30の消耗量は、RF印加時間毎に実際にエッジリング30の消耗量(エッジリング30の消耗した厚さ)を計測してもよい。また、RF印加時間からエッジリング30の消耗量を推定してもよい。また、RF印加時間毎にウエハWのエッジ部に形成されたエッチング形状のチルト角度からエッジリング30の消耗量を算出してもよい。
【0049】
図5の例では、新品のエッジリング30の裏面の温度が90℃から20℃になるまでの降温時間を基準とした。RF印加時間が0h(新品のエッジリング)、300h、600hのそれぞれにおいてエッジリング30の裏面の温度が90℃から20℃になるまでの降温時間を5回ずつ測定した。そして、それぞれの5回の測定値の平均値を使用して新品のエッジリング30の降温時間の平均値に対する降温時間の平均値の差分を算出した。そして、各降温時間(平均値)の差分に対する300h、600hのときのエッジリング30の消耗量の相関を求め、相関テーブルを作成した。
【0050】
その結果の一例を示す図5では、エッジリング30が、新品(0h)、RF印加時間が300h経過後、600h経過後のそれぞれの場合の降温時間とエッジリング30の消耗量の間には比例関係があることが示された。この結果からエッジリング30の使用時間が増え(RF印加時間が増え)、エッジリング30がプラズマに曝露されて消耗量が多くなる程、エッジリング30の熱容量が小さくり、エッジリング30の温度を90℃から20℃になるまでにかかる降温時間が短くなることがわかった。
【0051】
かかる降温時間とエッジリング30の消耗量との比例関係と、予め求められたエッジリング30の消耗量とエッジリング30に印加する直流電圧の適正値の相関を示す情報とから、降温時間の差分と直流電圧の適正値との相関テーブルを作成できる。その一例を図6に示す。図6に示す相関テーブルに基づき、測定した降温時間と新品のエッジリング30の降温時間との差分に応じて、エッジリング30に印加する直流電圧の適正値を算出することができる。
【0052】
以上から、図6の相関テーブルを用いて、測定した降温時間に応じた直流電圧の適正値を算出することで、エッジリング30の消耗量に応じた直流電圧を擬似的に計算することができる。これにより、エッジリング30の消耗量に応じた直流電圧の適正値をエッジリング30に印加する制御が可能になる(直流電圧制御処理)。
【0053】
[直流電圧制御処理を含むエッチング処理]
以下に、一実施形態に係る直流電圧制御処理を含むエッチング処理について、図7を参照しながら説明する。図7は、一実施形態に係る直流電圧制御処理を含むエッチング処理の一例を示すフローチャートである。
【0054】
本処理では、まず、制御部43は、変数nに1を設定し(ステップS19)、ウエハに対してプラズマエッチングを実行する(ステップS20)。次に、RF印加時間が100×n時間経過したかを判定する(ステップS21)。RF印加時間が100×n時間経過した時点で、制御部43は、エッジリング30の温度が90℃から20℃になるまでにかかる降温時間を測定する(ステップS22)。なお、ステップS21の経過時間の単位は、100×nに限られない。
【0055】
次に、制御部43は、新品のエッジリング30に対する降温時間の差分を算出し、エッジリング30の消耗量を推定する(ステップS23)。例えば図5に一例を示す相関グラフを参照して、新品のエッジリング30に対する降温時間の差分から、エッジリング30の消耗量を推定できる。なお、降温時間は、1回測定した値であってもよいし、複数回測定した値の平均値であってもよい。
【0056】
次に、制御部43は、降温時間の差分が予め定められた閾値Th1以上であるかを判定する(ステップS24)。図8(a)に一例を示すように、RF印加時間が長くなる程、降温時間の差分が大きくなる。閾値Th1は、新品のエッジリング30に対する降温時間の差分が、閾値Th1以上になると、エッジリング30の消耗量が許容できなくなる。よって、図7のステップS24において、制御部43は、降温時間の差分が閾値Th1以上であると判定すると、算出した降温時間の差分に対する直流電圧をエッジリング30に印加し(ステップS25)、ステップS26に進む。このとき、直流電圧制御処理の事前処理において算出した降温時間の差分と直流電圧の相関を示す情報を記憶したメモリ43b上の相関テーブルを参照して、降温速度の差分に応じた直流電圧の適正値が算出される。例えば、図6の相関テーブルの場合、新品のエッジリング30に対する降温時間の差分が閾値Th1に等しくなった場合、エッジリング30に印加する直流電圧の適正値として直流電圧Vaが算出される。
【0057】
以上のようにして算出された直流電圧をエッジリング30に印加することで、エッジリング30上のシースの高さがウエハW上のシースと同程度の高さになるため、ウエハWのエッジ部においてイオンの照射角度が略垂直になる。この結果、例えば図8(b)の降温時間の差分が3(sec)のときに、ウエハWのエッジ部におけるチルト角度が補正され、チルト角度が90℃に近づく。これにより、ウエハWのエッジ部においてもチルト角を、チルト角度の許容範囲を示すTh2~Th3の範囲内に制御することができる。
【0058】
図7に戻り、一方、ステップS24において降温時間の差分が閾値Th1よりも小さいと判定されると、制御部43は、エッジリング30に直流電圧を印加することによるチルト角度の補正は不要であると判断し、直ちにステップS26に進む。
【0059】
ステップS26において、制御部43は、測定を終了するか否かを判定し、測定を終了する場合には本処理を終了する。測定を終了しない場合には、変数nに1を加算し(ステップS27)、ステップS20に戻り、ステップS20以降の処理を繰り返す。
【0060】
ステップS21~S26の直流電圧制御方法を含むプラズマエッチング方法では、ウエハWへのプラズマエッチング処理が実行される間にエッジリング30への直流電圧の制御が行われる。
【0061】
本実施形態に係る直流電圧制御処理によれば、エッジリング30の降温時間を測定し、測定した降温時間に応じた直流電圧の適正値を算出することで、エッジリング30の消耗量に応じた直流電圧を擬似的に計算する。そして、算出した直流電圧の適正値をエッジリング30に印加することで、エッジリング30上のシースとウエハW上のシースとの高さを揃えることができる。これにより、チルティングの発生又はエッチングレートの変動の少なくともいずれかを抑制することができる。例えば、算出された直流電圧の適正値が100Vである場合、100Vの直流電圧をエッジリング30に印加することで、エッジリング30が消耗していてもエッジリング30が新品時のチルティング及びエッチングレートに戻すことができる。
【0062】
これにより、エッジリング30が消耗しても、直流電圧の制御によりエッジリング30の交換時間を遅らせることができる。エッジリング30の交換に必要な時間には、例えば、処理容器10を開け、エッジリング30を交換する時間、交換後に処理容器10を閉じて処理容器内をクリーニングしたり、シーズニングして処理容器10内の雰囲気を整える時間が含まれる。よって、エッジリング30の交換時間を遅らせることにより、生産性の向上を図ることができる。
【0063】
なお、ステップS21では、RF印加時間に基づき降温時間の測定タイミングを判定したが、これに限られない。例えば、特定の枚数のウエハWを処理したと判定した場合に降温時間を測定するようにしてもよい。特定の枚数のウエハWは、1枚のウエハWでもよいし、1ロット(例えば25枚)のウエハWでもよいし、それ以外の枚数でもよい。
【0064】
以上の説明では、エッジリング30の裏面の温度が90℃から20℃になるまでにかかる降温時間を測定したが、測定温度はこれに限らない。90℃は、第1の温度の一例であり、20℃は第1の温度よりも低い第2の温度の一例である。第1の温度及び第2の温度は、90℃及び20℃に限られず、第2の温度が第1の温度よりも低い条件を満たす2つの温度を適宜設定することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、エッジリング30の裏面の温度が90℃から20℃になるまでにかかる降温時間を測定したが、降温速度を測定してもよい。また、本実施形態では、エッジリング30の裏面の温度を放射温度計51により測定したが、これに限られず、エッジリング30のいずれかの面を測定してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、一定の流量のArガスを供給し、Arガスによりエッジリング30の表面から抜熱することで、エッジリング30の温度を20℃まで下げるようにした。しかしこれに限られず、冷媒室31をエッジリング30の下方にも設け、ブラインを循環させることでエッジリング30を降温させるようにしてもよい。
【0067】
また、処理容器10内を一定の圧力に調整する方法としては、一定の流量のArガスを処理容器10内に供給することで調整してもよいし、自動圧力制御機器(APC)等を用いた排気側の制御により調整してもよいし、その両方の手段により調整してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、エッジリングの消耗度合いの一例として、エッジリング30の消耗量を推定した。しかし、測定した降温時間又は降温速度に基づき、図6の相関テーブルを用いて直流電圧を算出し、該直流電圧をエッジリング30に印加するように制御してもよい。これにより、エッジリング30の消耗量を推定することなく、直流電圧の適正値を求めることができる。
【0069】
本実施形態に係るエッジリング30は、消耗部材の一例である。消耗部材の他の例としては、ガスシャワーヘッド24(上部電極)が挙げられる。この場合、ガスシャワーヘッド24にガスシャワーヘッド24の温度を測定する計測部と、直流電圧を印加できる可変直流電源と、加熱部とを設ける必要がある。
【0070】
[変形例]
上記実施形態では、測定した降温時間又は降温速度に基づき、エッジリング30に印加する直流電圧を制御した。これに対して、変形例では、エッジリング30に直流電圧を印加する替わりに又は直流電圧を印加することに加えて、エッジリング30の駆動量を制御できる。
【0071】
一実施形態の変形例にかかるエッジリング30及びその周辺構造について、図9を参照しながら説明する。図9は、一実施形態の変形例に係る3分割のエッジリング及びその周辺構造の断面の一例を示す図である。
【0072】
図9に示す変形例では、放射温度計51は、エッジリング30の裏面の中央の温度を測定するように配置される。この変形例では、インシュレータ52aに埋設されたヒータ52及びインシュレータ62aに埋設されたヒータ62がエッジリング30の裏面の内周側と外周側に配置される。
【0073】
かかる構成から、本変形例に係る放射温度計51による温度測定の位置は、本実施形態に係る放射温度計51による温度測定の位置よりもヒータ52,62に近く、また、エッジリング30の裏面の中央の温度を測定するようになる。しかしながら、ヒータ52,62と放射温度計51との位置関係は近くても遠くてもいずれであってもよい。例えば、放射温度計51の位置は、外周側又は中央に限られず、エッジリング30裏面の内周側に配置され、エッジリング30裏面の内周側の温度を測定してもよい。いずれの配置においても、事前処理においてエッジリング30の降温時間又は降温速度と直流電圧との相関を示す情報が算出され、メモリ43bに記憶されている。よって、図7のフローチャートに示されるプラズマエッチング方法を実行する際、メモリ43bに記憶した降温時間と直流電圧との相関情報に基づき、測定した降温時間に応じた適正な直流電圧を算出し、エッジリング30に印加することができる。
【0074】
本変形例では、エッジリング30は、内周エッジリング30a、中央エッジリング30b及び外周エッジリング30cに分割され、それぞれリング状に配置されている。内周エッジリング30a、中央エッジリング30b及び外周エッジリング30cの少なくともいずれかは駆動機構53に接続されている。制御部43は、上記実施形態又は本変形例において推定されたエッジリング30の消耗量に応じて駆動機構53の駆動量を制御する。これにより、内周エッジリング30a、中央エッジリング30b及び外周エッジリング30cの少なくともいずれかを上昇させることで、エッジリング30上のシースとウエハW上のシースとの高さを揃えることができる。これにより、チルティングの発生又はエッチングレートの変動の少なくともいずれかを抑制することができる。
【0075】
最後に、制御部43がメモリ43bに記憶した降温時間の差分と直流電圧との相対関係を示す情報を用いたシステムにおけるサーバ2の制御の一例について、図10を参照して説明する。図10は、一実施形態に係るシステムの一例を示す図である。
【0076】
本システムでは、プラズマエッチング装置A(以下、「装置A」ともいう。)を制御する制御部1a~1cと、プラズマエッチング装置B(以下、「装置B」ともいう。)を制御する制御部2a~2cとがネットワークを介してサーバ2に接続されている例を示す。
【0077】
例えば、装置Aとしては、プラズマエッチング装置1A、1B、1Cを一例として挙げるが、これに限らない。プラズマエッチング装置1A、1B、1Cは、制御部1a、1b、1cによりそれぞれ制御される。
【0078】
例えば、装置Bとしては、プラズマエッチング装置2A、2B、2Cを一例として挙げるが、これに限らない。プラズマエッチング装置2A、2B、2Cは、制御部2a、2b、2cによりそれぞれ制御される。
【0079】
制御部1a~1c及び制御部2a~2cは、それぞれのメモリ(記憶部)に記憶した降温時間の差分と直流電圧との相対関係を示す情報をサーバ2に送信する。サーバ2は、装置Aを制御する制御部1a、1b、1cから降温時間の差分と直流電圧の相対関係を示す情報3a、3b、3cを受信する。また、サーバ2は、装置Bを制御する制御部2a、2b、2cから降温時間の差分と直流電圧の相対関係を示す情報4a、4b、4cを受信する。図8では、便宜上、降温時間の差分と直流電圧の相対関係を示す情報をグラフの形式で示す。
【0080】
サーバ2は、装置Aに関する降温時間の差分と直流電圧の相対関係を示す情報3a、3b、3c・・・と、装置Bに関する降温時間の差分と直流電圧の相対関係を示す情報4a、4b、4c・・・とを別々のカテゴリに分類する。
【0081】
サーバ2は、装置Aに関するカテゴリに分類された情報3a、3b、3c・・・に基づき、装置Aの降温時間の差分に対する直流電圧の適正値を算出する。例えば、情報3a、3b、3c・・・に基づき、装置Aの降温時間の差分に対する直流電圧の平均値を適正値としてもよいし、装置Aの降温時間の差分に対する直流電圧の中央値を適正値としてもよい。また、例えば、情報3a、3b、3c・・・に基づき、装置Aの降温時間の差分に対する直流電圧の最小値又は最大値を適正値としてもよい。その他、サーバ2は、装置Aの降温時間の差分に対する直流電圧の適正値として情報3a、3b、3c・・・に基づき直流電圧の特定の値を算出することができる。
【0082】
同様にして、装置Bに関するカテゴリに分類された情報4a、4b、4c・・・に基づき、装置Bの降温時間の差分に対する直流電圧の適正値を算出する。例えば、情報4a、4b、4c・・・に基づき、装置Aの降温時間の差分に対する直流電圧の平均値、中央値、最小値又は最大値を適正値としてもよい。その他、サーバ2は、装置Bの降温時間の差分に対する直流電圧の適正値として情報4a、4b、4c・・・に基づき直流電圧の特定の値を算出することができる。
【0083】
サーバ2は、異なるエッチング装置毎に収集された降温時間の差分に対する直流電圧の適正値を算出し、算出した降温時間の差分に対する直流電圧の適正値の情報を、制御部1a~2cにフィードバックする。これにより、制御部1a~2cは、他のエッチング装置の情報を含めて得られたエッジリング30の消耗量に応じた直流電圧の適正値を用いて、エッジリング30に印加する直流電圧を制御することができる。
【0084】
これによれば、サーバ2により、同一のカテゴリに含まれるより多くのプラズマエッチング装置を使用して測定された降温時間の差分に対する直流電圧の情報を収集することができる。このため、収集した降温時間の差分に対する直流電圧の情報に基づき、降温時間の差分に対する直流電圧の適正値をよりバラツキなく算出することができる。これにより、エッジリング30の消耗量に応じた直流電圧の適正値をエッジリング30に印加する制御をよりバラツキなく精度良く行うことができる。なお、サーバ2は、クラウドコンピュータにより実現されてもよい。
【0085】
以上に説明したように、本実施形態によれば、エッジリング30を第1の温度から第2の温度に降温するときの降温時間又は降温速度の測定結果に基づきエッジリング30の消耗量を推定することができる。また、前記測定結果又は推定したエッジリング30の消耗度合いに応じて、適正な直流電圧をエッジリング30に印加することにより、チルティングの発生又はエッチングレートの変動の少なくともいずれかを抑制することができる。これにより、エッジリング30の消耗量による交換時期を遅らすことができる。これにより、プラズマエッチング装置における生産性を向上させることができる。
【0086】
今回開示された一実施形態に係るプラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0087】
本開示のプラズマエッチング装置は、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のどのタイプでも適用可能である。
【0088】
本明細書では、被処理体の一例としてウエハWを挙げて説明した。しかし、被処理体は、これに限らず、FPD(Flat Panel Display)に用いられる各種基板、プリント基板等であっても良い。
【符号の説明】
【0089】
1 :プラズマエッチング装置
10 :処理容器
11 :載置台
18 :排気装置
21 :第1高周波電源
22 :第2高周波電源
24 :ガスシャワーヘッド
25 :静電チャック
25a:吸着電極
25b:誘電層
25c:基台
28 :可変直流電源
29 :電極
30 :エッジリング
31 :冷媒室
35 :伝熱ガス供給部
40 :処理ガス供給部
43 :制御部
51 :放射温度計
52、62:ヒータ
29a、52a、56、62a:インシュレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10