(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/00 20060101AFI20230327BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230327BHJP
C23C 14/12 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
C23C14/00 B
H01L21/31 B
C23C14/12
(21)【出願番号】P 2019046042
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕子
(72)【発明者】
【氏名】矢島 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 文生
(72)【発明者】
【氏名】植 喜信
(72)【発明者】
【氏名】小倉 祥吾
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06284050(US,B1)
【文献】特開2013-064187(JP,A)
【文献】特開2004-179426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
C23C 16/00-16/56
H01L 21/205,21/302,21/31,21/312,
21/365,21/469
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、側壁と、前記底部及び前記側壁に囲まれた成膜室と、を有するチャンバと、
基板を支持する支持面と、前記底部に対向する裏面と、
冷却機構とを有し、前記成膜室に配置された冷却ステージと、
エネルギ線を照射する照射源を有し、前記支持面に対向して配置された光源ユニットと、
前記エネルギ線の照射を受けて硬化するエネルギ線硬化樹脂を含む原料ガスを、前記支持面に向けて供給するガス供給部と、
前記チャンバに設けられ、前記裏面が面する前記成膜室のステージ裏側領域と、前記ステージ裏側領域の外周部に位置し排気系が接続された前記成膜室の排気領域と、を区画する隔壁と
、
前記排気領域に配置されたヒータと、
前記隔壁と前記冷却ステージとの間に配置された断熱部材と
を具備
し、
前記冷却ステージは、前記冷却機構により前記支持面に供給された前記原料ガスを凝縮させる温度に冷却され、
前記ヒータは、前記排気領域に流入する前記原料ガスをその気化温度以上に加熱する
成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記隔壁は、前記底部に設けられ、前記支持面の周囲を取り囲むように構成される
成膜装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成膜装置であって、
前記隔壁は、前記チャンバと一体に構成される
成膜装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の成膜装置であって、
前記排気系に接続され前記排気領域に開口する複数の流路をさらに具備する
成膜装置。
【請求項5】
請求項4に記載の成膜装置であって、
前記側壁は、複数の角部を有する環状に構成され、
前記複数の流路は、前記複数の角部と前記隔壁との間に開口する
成膜装置。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の成膜装置であって、
複数の基板昇降ピンを有し、前記ステージ裏側領域に配置された基板昇降機構をさらに具備し、
前記冷却ステージは、前記複数の基板昇降ピンをそれぞれ挿通させる複数の貫通孔をさらに有する
成膜装置。
【請求項7】
請求項6に記載の成膜装置であって、
前記ステージ裏側領域に不活性ガスを導入する不活性ガス導入部をさらに具備する
成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ線硬化樹脂からなる樹脂層を形成する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化樹脂等のエネルギ線硬化樹脂を硬化して樹脂層を基板上に形成する際、典型的には、以下の2工程が行われる。すなわち、冷却ステージによって基板を支持し、当該樹脂を含む原料ガスを冷却ステージに支持された基板上に供給する工程と、基板上に紫外線等の光を照射し、基板上に硬化した樹脂層を形成する工程とである。
【0003】
特に最近では、このような複数の工程をそれぞれ別の真空チャンバで行うことはせず、基板上に原料ガスを供給する工程と、紫外線等によって基板上に硬化した樹脂層を形成する工程とを1つの真空チャンバ内で行う成膜装置が提供されている。例えば、特許文献1には、原料ガスを吐出する配管を含むガス供給部を有する成膜装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の成膜装置では、冷却ステージの裏面に樹脂層が堆積することがあった。この樹脂層は、硬化した後に剥がれてパーティクルとなるため、成膜装置内のメンテナンスを頻回に行う手間が生じ、生産性の低下の原因となる。また、当該パーティクルが成膜中の樹脂層に混入した場合、成膜品質を低下させることもある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、成膜品質及び生産性を向上させることが可能な成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る成膜装置は、チャンバと、冷却ステージと、光源ユニットと、ガス供給部と、隔壁と、を具備する。
上記チャンバは、底部と、側壁と、上記底部及び上記側壁に囲まれた成膜室と、を有する。
上記冷却ステージは、基板を支持する支持面と、上記底部に対向する裏面と、を有し、上記成膜室に配置される。
上記光源ユニットは、エネルギ線を照射する照射源を有し、上記支持面に対向して配置される。
上記ガス供給部は、上記エネルギ線の照射を受けて硬化するエネルギ線硬化樹脂を含む原料ガスを、上記支持面に向けて供給する。
上記隔壁は、上記チャンバに設けられ、上記冷却ステージの裏面が面する上記成膜室のステージ裏側領域と、上記ステージ裏側領域の外周部に位置し排気系が接続された上記成膜室の排気領域と、を区画する。
【0008】
この構成では、隔壁によって排気領域とステージ裏側領域とが区画されるため、成膜室に供給された原料ガスが、排気に伴ってステージ裏側領域に流入することを防止できる。これにより、冷却ステージの裏面にエネルギ線硬化樹脂層が堆積することを防止できる。したがって、メンテナンスの頻度を低減させ、生産性を高めることができる。さらに、冷却ステージ裏面の堆積物が成膜中の膜に付着することを防止し、成膜品質を高めることができる。
【0009】
上記隔壁は、上記底部に設けられ、上記支持面の周囲を取り囲むように構成されてもよい。
これにより、冷却ステージ全体を隔壁で取り囲むことができ、支持面が面する成膜領域からステージ裏側領域への原料ガスの流入をより効果的に防止することができる。したがって、冷却ステージの裏面に樹脂層が堆積することを効果的に防止することができる。
【0010】
例えば、上記隔壁は、上記チャンバと一体に構成されてもよい。
これにより、隔壁とチャンバとの接合強度を十分に確保することができる。
【0011】
また、上記成膜装置は、上記排気系に接続され上記排気領域に開口する複数の流路をさらに具備してもよい。
これにより、複数の箇所から原料ガスを効率よく排気できる。
【0012】
例えば、上記側壁は、複数の角部を有する環状に構成され、
上記複数の流路は、上記複数の角部と前記隔壁との間に開口してもよい。
これにより、原料ガスが角部付近に滞留することを防止でき、原料ガスをより確実に排気できる。
【0013】
上記成膜装置は、複数の基板昇降ピンを有し、上記ステージ裏側領域に配置された基板昇降機構をさらに具備し、
上記冷却ステージは、上記複数の基板昇降ピンをそれぞれ挿通させる複数の貫通孔をさらに有していてもよい。
この構成では、基板昇降機構が成膜領域及び排気領域から区画されたステージ裏側領域に配置されるため、基板昇降機構にエネルギ線硬化樹脂層が堆積することを防止できる。したがって、メンテナンスの頻度を抑えて生産性を向上できるとともに、基板昇降機構に付着した堆積物が成膜中の膜に付着することを防止し、成膜品質を高めることができる。
【0014】
この場合、上記成膜装置が、上記ステージ裏側領域に不活性ガスを導入する不活性ガス導入部をさらに具備してもよい。
【0015】
これにより、成膜領域よりもステージ裏側領域の圧力を高く維持することができる。したがって、成膜領域から貫通孔を介して原料ガスがステージ裏側領域に流入することを防止でき、冷却ステージの裏面に樹脂層が堆積することをより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明によれば、成膜品質及び生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る成膜装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図1のII-II線で切断した断面を示す概略断面図である。
【
図3】上記実施形態の比較例に係る成膜装置の要部を示す概略断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る成膜装置を示す概略断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る成膜装置の要部を示す概略断面図である。
【
図6】本発明のさらに他の実施形態に係る成膜装置の要部を示す概略断面図であって、
図2と同様の断面を示す図である。
【
図7】本発明のさらに他の実施形態に係る成膜装置の要部を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る成膜装置100を示す概略断面図である。図においてX軸方向及びY軸方向は互いに直交する水平方向を示し、Z軸方向はX軸方向及びY軸方向に直交する方向を示している。
【0020】
成膜装置100は、基板W上に、エネルギ線硬化樹脂である紫外線硬化樹脂層を形成するための成膜装置である。成膜装置100は、チャンバ10と、冷却ステージ15と、光源ユニット20と、ガス供給部30と、隔壁40と、基板昇降機構50と、を備える。
【0021】
(チャンバ)
チャンバ10は、底部11と、側壁12と、底部11及び側壁12に囲まれた成膜室13と、を有する。チャンバ10は、上部に開口が形成された金属製の真空容器である。成膜室13は、チャンバ10に接続された排気系19を介して所定の減圧雰囲気に排気または維持することが可能に構成される。
【0022】
チャンバ10は、開口を気密に閉塞する天板14をさらに有する。例えば、天板14は、紫外線UVを透過させる窓部141と、窓部141を支持する枠部142とを有する。窓部141は、石英ガラス等の紫外線透過性材料で構成される。窓部141の数は特に限定されず、単数であってもよいし、2つ以上であってもよい。
【0023】
(冷却ステージ)
冷却ステージ15は、成膜室13に配置される。冷却ステージ15は、基板Wを支持する支持面151と、底部11に対向する裏面152と、支持面151及び裏面152を接続された側面153と、を有する。
【0024】
冷却ステージ15は、図示しない冷却機構を有し、所定温度以下に冷却される。冷却機構により、基板Wは、後述する原料ガス中の紫外線硬化樹脂を凝縮させるのに十分な適宜の温度に冷却される。
【0025】
基板Wは、ガラス基板であるが、半導体基板であってもよい。基板Wの形状や大きさは特に限定されず、矩形でもよいし円形でもよい。基板Wの成膜面には、あらかじめ素子が形成されていてもよい。この場合、基板Wに成膜される樹脂層は、上記素子の保護膜として機能する。
【0026】
冷却ステージ15は、さらに、後述する基板昇降機構50の基板昇降ピン51を挿通させる複数の貫通孔154を有する。各貫通孔154は、支持面151と裏面152とを貫通するように構成され、基板昇降ピン51が挿通可能な位置に配置される。
【0027】
(光源ユニット)
光源ユニット20は、カバー21と、照射源22とを有する。カバー21は、例えば天板14の上に配置され、照射源22を収容する光源室23を有する。光源室23は、例えば、大気雰囲気である。照射源22は、冷却ステージ15に向けて、天板14の窓部141を介してエネルギ線としての紫外線UVを照射する光源であり、典型的には、紫外線ランプで構成される。これに限られず、照射源22には、紫外線UVを発光する複数のLED(Light Emitting Diode)がマトリクス状に配列された光源モジュールが採用されてもよい。
【0028】
(ガス供給部)
ガス供給部30は、シャワープレート31と、ガス拡散室32とを有し、紫外線UVの照射を受けて硬化する樹脂(紫外線硬化樹脂)を含む原料ガスを支持面151に向けて供給する。
【0029】
紫外線硬化樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂を用いることができる。また、上記樹脂には重合開始剤等を添加して用いることも可能である。このような樹脂を含む原料ガスは、チャンバ10の外部に設置される原料ガス生成装置(図示せず)によって生成される。原料ガス生成装置によって生成された原料ガスは、配管130を介して、ガス供給部30のガス拡散室32へ導入される。
【0030】
ガス拡散室32へ導入された原料ガスは、シャワープレート31のガス供給孔311を介して成膜領域S1へ供給される。成膜領域S1は、成膜室13における支持面151が面する領域であって、支持面151とガス供給部30との間の領域である。成膜領域S1に供給された原料ガスは、さらに隔壁40によって区画された排気領域S3を通って排気される。
【0031】
(隔壁)
隔壁40は、チャンバ10に設けられ、冷却ステージ15の裏面152が面する成膜室13のステージ裏側領域S2と、排気系19が接続された成膜室13の排気領域S3と、を区画する。
【0032】
隔壁40は、例えば底部11に設けられ、底部11から少なくとも冷却ステージ15まで延びるように構成される。本実施形態では、隔壁40は冷却ステージ15の側面153に接するように設けられる。隔壁40は、本実施形態において、チャンバ10と一体に構成される。
【0033】
隔壁40は、
図1に示すように冷却ステージ15を直接支持していてもよいが、これに限定されず、後述するように、別の部材によって冷却ステージ15が支持されていてもよい。
【0034】
図2は、
図1のII-II線で切断した概略断面図である。
図2では、説明のため、隔壁40の上面をハッチングで示している。
隔壁40は、冷却ステージ15の支持面151を取り囲むように構成される。つまり、隔壁40は、Z軸方向から見た際に、冷却ステージ15の周縁に沿った環状に構成される。
【0035】
排気領域S3は、隔壁40とチャンバ10の側壁12とに挟まれて成膜室13の周縁に形成された溝状の領域である。側壁12は、本実施形態において、4つの角部12aを有する矩形の環状に構成される。排気領域S3も、例えば
図2に示すように、Z軸方向から見た際に側壁12に沿って環状に形成される。
【0036】
隔壁40が冷却ステージ15を取り囲むように設けられることで、ステージ裏側領域S2が、ほぼ閉塞された空間となる。なお、ステージ裏側領域S2を調圧する観点から、ステージ裏側領域S2に図示しない排気系が接続されていてもよい。
【0037】
排気領域S3には、排気系19が接続される。排気系19は、例えば
図1に示すように、排気領域S3に接続される排気配管191と、排気配管191に接続された真空ポンプ192と、排気配管191及び真空ポンプ192の間に配置されたバルブVと、を有する。排気配管191は、例えばバルブVの上流で複数本に分岐して、チャンバ10の複数箇所(
図2の例では4箇所)にそれぞれ接続される。排気系19の構成は図示の例に限定されず、例えば流量制御器が接続されてもよい。なお、
図1では、説明のため、排気配管191の開口と冷却ステージ15の貫通孔154の双方を同一断面上に示している。
【0038】
成膜装置100は、排気系19に接続され、排気領域S3に開口する複数の流路Qを備える。流路Qは、排気配管191に接続され、チャンバ10を通って排気領域S3に開口する。本実施形態において、流路Qは例えば4本配置され、排気領域S3の底部に開口し、より詳細には側壁12の角部12aと隔壁40との間に開口する。
【0039】
図1に示すように、排気領域S3には、ヒータHが配置されていてもよい。ヒータHは、例えば、原料ガスの流路となる排気溝H1を有し、排気溝H1を加熱することが可能に構成される。これにより、排気領域S3に流入する原料ガスが気化温度以上に加熱され、排気領域S3の内面に、原料ガスに含まれる樹脂材料が樹脂層となって堆積することを防止できる。ヒータHの構成は
図1の例に限定されず、例えば排気領域S3の内面全体に配置されていてもよい。なお、
図2では、ヒータHの図示を省略している。
【0040】
(基板昇降機構)
基板昇降機構50は、ステージ裏側領域S2に配置され、基板Wを支持面151に対して昇降させることが可能に構成される。基板昇降機構50は、基板昇降ピン51と、基板昇降ピン51をZ軸方向(上下方向)に駆動させる駆動部52と、を有する。駆動部52は、基板昇降ピン51を、端部51aが支持面151から突出した基板支持位置と、端部51aが支持面151から突出しない待避位置と、の間で移動させる。
【0041】
成膜装置100は、制御部60をさらに備える。制御部60は、典型的には、コンピュータで構成され、成膜装置100の各部を制御する。
【0042】
続いて、以上のように構成される本実施形態の成膜装置100を用いた成膜方法について説明する。
【0043】
(成膜工程)
成膜工程は、基板Wの搬入工程と、紫外線硬化樹脂を含む原料ガスの供給工程と、原料ガスの排気工程と、紫外線樹脂層の硬化工程と、基板Wの搬出工程と、を有する。
【0044】
まず、基板Wの搬入工程では、成膜室13に基板Wが搬入される。基板Wは、基板搬送装置によって、側壁12の図示しない開口等から成膜室13へ搬入される。基板昇降ピン51は、上記基板支持位置まで上昇する。基板Wは、基板搬送装置から端部51a上に移載される。
【0045】
続いて、基板昇降ピン51が、駆動部52によって上記待避位置までZ軸方向下方に移動する。これにより、基板Wが支持面151上に配置される。基板Wが搬入された後、成膜室13は、排気系19等によって所定の真空度に調圧される。
【0046】
原料ガスの供給工程では、紫外線硬化樹脂を含む原料ガスがガス供給部30へ導入され、シャワープレート31の複数のガス供給孔311を介して成膜室13の成膜領域S1に吐出される。
【0047】
これにより、原料ガスが冷却ステージ15上の基板Wの全面に供給される。原料ガス中の紫外線硬化樹脂は、基板Wの表面で凝縮し、堆積する。原料ガスの供給工程中は、調圧のため、原料ガスの一部が排気系19によって排気される。
【0048】
原料ガスの供給が停止した後、成膜室13内の原料ガスが排気系19によって成膜室13の外部へ排気される。原料ガスは、成膜領域S1から排気溝H1を介して排気領域S3に導入され、流路Q及び排気配管191内に吸引される。
【0049】
続いて、紫外線硬化樹脂の硬化工程では、光源ユニット20の照射源22から冷却ステージ15の冷却ステージ15に向けて紫外線UVが照射される。これにより、基板W上に紫外線硬化樹脂の硬化物層が形成される。
【0050】
硬化工程の完了後、基板Wが成膜室13から搬出される。このとき、基板昇降ピン51は、待避位置から基板支持位置へ移動する。これに伴い、基板Wは、支持面151からZ軸方向上方へ離間する。そして、側壁12の図示しない開口等から進入した基板搬送装置に基板Wが移載され、当該装置によって基板Wが成膜室13から搬出される。
【0051】
その後、基板搬送装置によって成膜前の他の基板Wが成膜室13へ搬入され、同様の工程が繰り返される。これにより、一台の成膜装置で、基板W上に所定厚みの紫外線硬化樹脂層を形成することができる。
【0052】
[本実施形態の作用効果]
以下、比較例を挙げて本実施形態の作用効果について説明する。
図3は、本実施形態の比較例に係る成膜装置100'の要部を示す概略断面図である。成膜装置100'は、隔壁40を有さず、排気領域S3とステージ裏側領域S2とが区画されていない。
【0053】
このため、排気工程や原料ガス供給工程等において、原料ガスは、実線の矢印で示すように、冷却ステージ15の裏側の領域を通過して排気される。冷却ステージ15は、裏面152を含む全体が冷却されるため、裏面152にも紫外線硬化樹脂が凝縮し、堆積する。このため、硬化工程では、底部11等で反射した紫外線UVが裏面152にも到達し、裏面152に樹脂層Pが形成される。
【0054】
このような樹脂層Pは、剥がれてパーティクル源となる。パーティクルは、次に搬入された基板Wの成膜時に基板W上に付着する可能性があり、成膜品質が低下する原因となる。また、裏面152に形成された樹脂層Pを除去するため、成膜室13のメンテナンスを頻繁に行う必要が生じる。このため、成膜装置100の連続運転可能な時間が短縮され、生産性を低下させる恐れがある。
【0055】
そこで本実施形態では、成膜装置100が隔壁40を有する。これにより、排気系19が接続される排気領域S3と、冷却ステージ15の裏面152が面するステージ裏側領域S2とが隔壁40によって区画される。したがって、排気工程や原料ガス供給工程等において、多くの原料ガスは、ステージ裏側領域S2を通過せずに排気される。
【0056】
これにより、裏面152への樹脂層の堆積を抑制でき、パーティクルの発生を防止することができる。したがって、パーティクルに起因する成膜品質の低下や、頻回なメンテナンスによる生産性の低下を防止することができる。
【0057】
また、本実施形態では、隔壁40が、支持面151の周囲を取り囲むように配置される。これにより、ステージ裏側領域S2を隔壁40と冷却ステージ15とによってほぼ閉塞された空間とすることができ、成膜領域S1からステージ裏側領域S2への原料ガスの流入を防止できる。
【0058】
さらに本実施形態では、排気系19に接続される流路Qが、側壁12の角部12aに対応した位置に開口する。これにより、原料ガスが角部12a付近に滞留することを防止でき、原料ガスを効率的に排気することができる。
【0059】
また、上記構成により、ステージ裏側領域S2に配置された基板昇降機構50への樹脂層の堆積を防止することができる。これにより、基板昇降機構50に対するメンテナンスの頻度も低下させることができ、生産性をより高めることができる。
【0060】
<第2実施形態>
さらに、ステージ裏側領域S2への原料ガスの流入をより確実に防止する観点から、成膜装置は以下のような構成を採り得る。
以下の実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
【0061】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る成膜装置200を示す概略断面図である。
図4では、制御部60及び排気系19の一部の図示を省略している。
【0062】
成膜装置200は、第1の実施形態と同様の、チャンバ10と、冷却ステージ15と、光源ユニット20と、ガス供給部30と、隔壁40と、基板昇降機構50と、に加え、さらに不活性ガス導入部70と、を備える。
【0063】
不活性ガス導入部70は、ステージ裏側領域S2に不活性ガスを吐出する。不活性ガス導入部70は、例えば、ステージ裏側領域S2に接続されたガス導入管71と、ガス導入管71に接続されチャンバ10に形成された流路72と、図示しない不活性ガス源と、を有する。不活性ガスGは、例えば、N2、Ar等である。
【0064】
流路72は、ステージ裏側領域S2の内面に開口しており、例えばチャンバ10の底部11に開口している。あるいは、流路72は、隔壁40に開口していてもよい。また、流路72の開口は、単数でもよいし、複数でもよい。
【0065】
不活性ガス導入部70は、例えば、成膜工程中、常時ステージ裏側領域S2に不活性ガスを導入する。これにより、ステージ裏側領域S2の圧力が成膜領域S1の圧力よりも高まる。したがって、冷却ステージ15の貫通孔154と基板昇降ピン51とのわずかな隙間を介して、排気される原料ガスがステージ裏側領域S2に流入することを防止できる。この結果、冷却ステージ15の裏面152に樹脂層が堆積することをより確実に防止できる。
【0066】
[他の実施形態]
例えば、
図5の要部断面図に示すように、成膜装置100は、隔壁40と冷却ステージ15との間に配置された断熱部材80をさらに有していてもよい。断熱部材80は、断熱材によって形成され、例えば冷却ステージ15の裏面152と側面153とに接し、隔壁40に配置される。これにより、冷却ステージ15が配置されたステージ裏側領域S2と排気領域S3との間を効果的に断熱できる。したがって、排気領域S3内が冷却ステージ15によって冷却されることを防止でき、排気領域S3内への樹脂層の堆積をより確実に防止できる。
【0067】
また、
図6に示すように、隔壁40は、冷却ステージ15の支持面151の周囲を取り囲む構成に限定されず、例えば排気配管191の開口を囲むように配置されていてもよい。この場合のステージ裏側領域S2は、冷却ステージ15の裏面152よりもZ軸方向下部の領域であって、排気領域S3の外部の領域と定義できる。この構成でも、原料ガスの流路が隔壁40によって規定され、原料ガスがステージ裏側領域S2に流入しにくくなり、冷却ステージ15の裏面152への樹脂層の堆積を抑制できる。
【0068】
さらに、隔壁40は、チャンバ10の周縁の排気領域S3を画定できれば上記の各構成に限定されない。また、排気系19も、隔壁40の基部41やチャンバ10の底部11に接続される構成に限定されず、チャンバ10の側壁12に接続されていてもよい。
【0069】
ガス供給部30の構成は、シャワープレート31を有する構成に限定されない。例えば、
図7の概略断面図に示すように、ガス供給部30は、シャワープレート31及びガス拡散室32に替えて、ガス供給配管33を有していてもよい。ガス供給配管33は、図示しない複数のガス吐出孔を有し、原料ガス生成装置から供給された原料ガスが、ガス吐出孔から吐出されるように構成される。このような構成でも、光源ユニット20から照射された紫外線が、隣接するガス供給配管33の間を通って基板Wに到達可能となり、原料ガスの供給工程と硬化工程とを1台のチャンバ10で行うことができる。
【0070】
また、隔壁40は、チャンバ10と別体に構成されてもよい。
【0071】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば本発明の実施形態は各実施形態を組み合わせた実施形態とすることができる。
【0072】
以上の実施形態では、エネルギ線が紫外線の例を示したが、これに限られない。例えば13MHz、27MHz程度の高周波電源から発生される電磁波を用いることも可能である。この場合、照射源は発振器等とすることができる。また、エネルギ線を電子ビームとし、照射源を電子ビーム源とすることも可能である。
【0073】
さらに、以上の実施形態に係る成膜装置を、例えば複数のチャンバを有するインライン式あるいはクラスタ式の成膜装置の一部として用いることも可能である。このような装置を用いることで、発光素子のような複数の層を有する素子等を作製することがより容易になる。また、このような装置によって、低コスト化、省スペース化及びさらなる生産性の向上を実現することができる。
【符号の説明】
【0074】
10…チャンバ
11…底部
12…側壁
12a…角部
13…成膜室
15…冷却ステージ
19…排気系
20…光源ユニット
22…照射源
30…ガス供給部
40…隔壁
50…基板昇降機構
51…基板昇降ピン
151…支持面
152…裏面
154…貫通孔
S1…成膜領域
S2…ステージ裏側領域
S3…排気領域
Q…流路