(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20230327BHJP
H01L 21/312 20060101ALI20230327BHJP
C23C 14/54 20060101ALI20230327BHJP
C23C 14/12 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/312 D
C23C14/54 B
C23C14/12
(21)【出願番号】P 2019078001
(22)【出願日】2019-04-16
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】小倉 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】植 喜信
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕子
(72)【発明者】
【氏名】矢島 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 文生
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-064187(JP,A)
【文献】米国特許第06261408(US,B1)
【文献】特開2016-162997(JP,A)
【文献】特開2002-151489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/312
C23C 14/54
C23C 14/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜室を有するチャンバと、
前記成膜室に配置されたステージと、
エネルギ線を照射する照射源を有し、前記ステージと一軸方向に対向して配置された光源ユニットと、
前記エネルギ線の照射を受けて硬化するエネルギ線硬化樹脂を含む原料ガスを、前記ステージに向けて供給するガス供給部と、
前記成膜室の前記ステージの外周に配置され、第1の開口幅の第1の状態と、前記第1の開口幅よりも広い第2の開口幅の第2の状態と、の間で可変に構成された排気溝と、
前記成膜室に接続され、前記排気溝を通った前記原料ガスを排気する排気系と、
前記排気溝の前記第1の状態と前記第2の状態とを切り替える駆動機構と
を具備
し、
前記排気溝は、前記原料ガスの流路を加熱する加熱機構を有する
成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記排気溝は、
前記ステージの周縁に沿って延びる第1の開口形成部を含む第1の溝部材と、
前記ステージの周縁に沿って延び前記第1の開口形成部とともに前記排気溝の開口を形成する第2の開口形成部を含み、前記第1の溝部材の外周に配置された第2の溝部材と、を有し、
前記第2の開口形成部は、前記第2の状態において、前記第1の状態よりも前記第1の開口形成部から離間するように構成され、
前記駆動機構は、前記第2の溝部材の前記第1の状態と前記第2の状態とを切り替える
成膜装置。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜装置であって、
前記第1の開口形成部及び前記第2の開口形成部は、前記ステージの外周を取り囲む環状に構成される
成膜装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の成膜装置であって、
前記第2の溝部材は、前記第1の状態において、前記第1の溝部材と対向し、前記第2の状態において、前記一軸方向に沿って前記第1の溝部材から離間させ、
前記駆動機構は、前記第2の溝部材を前記一軸方向に沿って昇降させる
成膜装置。
【請求項5】
請求項4に記載の成膜装置であって、
前記第1の溝部材は、前記第1の開口形成部から屈曲して前記成膜室の外方へ突出する凸部をさらに含み、
前記第2の溝部材は、前記第2の開口形成部から屈曲して前記成膜室の外方へ陥凹する凹部をさらに含む
成膜装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の成膜装置であって、
前記駆動機構は、
前記一軸方向に延び、先端部によって前記ステージに配置される基板を支持することが可能な基板昇降ピンと、
前記一軸方向に延び、先端部によって前記第2の溝部材を支持することが可能な溝部材昇降ピンと、
前記基板昇降ピン及び前記
溝部材昇降ピンを前記一軸方向に昇降させる駆動部と、を有する
成膜装置。
【請求項7】
請求項1から
6のうちいずれか一項に記載の成膜装置であって、
前記排気溝を、前記第1の状態に設定するように前記駆動機構を制御し、
前記排気溝を前記第1の状態に設定した後、前記原料ガスを前記
ステージに向けて供給するように前記ガス供給部を制御し、
前記
原料ガスを供給した後、前記排気溝を前記第2の状態に切り替えるように前記駆動機構を制御し、
前記排気溝を前記第2の状態に切り替えた後、前記成膜室内の前記原料ガスを排気するように前記排気系を制御する
ように構成された制御部
をさらに具備する成膜装置。
【請求項8】
チャンバの成膜室に配置されたステージに基板を配置し、
前記成膜室における前記ステージの外周に配置された排気溝の開口を、第1の開口幅に設定し、
前記開口を前記第1の開口幅に設定した後、エネルギ線の照射を受けて硬化するエネルギ線硬化樹脂を含む原料ガスを前記基板に向けて供給し、
前記
原料ガスを供給した後、前記排気溝の前記開口を、前記第1の開口幅よりも広い第2の開口幅に切り替え、
前記開口を前記第2の開口幅に切り替えた後、前記成膜室内の前記原料ガスを排気し、
前記原料ガスを排気した後、前記エネルギ線を前記基板に照射する
成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ線硬化樹脂からなる樹脂層を形成する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化樹脂等のエネルギ線硬化樹脂を硬化して樹脂層を基板上に形成する際、典型的には、以下の2工程が行われる。すなわち、冷却ステージによって基板を支持し、当該樹脂を含む原料ガスを冷却ステージに支持された基板上に供給する工程と、基板上に紫外線等の光を照射し、基板上に硬化した樹脂層を形成する工程とである。
【0003】
特に最近では、このような複数の工程をそれぞれ別の真空チャンバで行うことはせず、基板上に原料ガスを供給する工程と、紫外線等によって基板上に硬化した樹脂層を形成する工程とを1つの真空チャンバ内で行う成膜装置が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記成膜装置では、原料ガスの供給中も、真空チャンバ内を調圧するために排気する。しかしながら、排気速度や排気系の接続位置によっては、排気に伴って真空チャンバ内の原料ガスの流れに偏りや乱れが生じ、膜厚分布が均一化できないことがある。
【0006】
これを解決するために、ステージの周囲に原料ガスの排気溝を設け、排気溝によって原料ガスの排気を規制する手法がある。しかしながら、成膜後は速やかに真空チャンバから原料ガスを排気する必要があるが、排気溝によって排気速度が制限され、生産効率を高めることができないという問題が生じる。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、膜厚分布を均一化でき、かつ、生産効率を高めることが可能な成膜装置及び成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る成膜装置は、チャンバと、ステージと、光源ユニットと、ガス供給部と、排気溝と、排気系と、駆動機構と、を具備する。
上記チャンバは、成膜室を有する。
上記ステージは、上記成膜室に配置される。
上記光源ユニットは、エネルギ線を照射する照射源を有し、上記ステージと一軸方向に対向して配置される。
上記ガス供給部は、上記エネルギ線の照射を受けて硬化するエネルギ線硬化樹脂を含む原料ガスを、上記ステージに向けて供給する。
上記排気溝は、上記成膜室の上記ステージの外周に配置され、第1の開口幅の第1の状態と、上記第1の開口幅よりも広い第2の開口幅の第2の状態と、の間で可変に構成される。
上記排気系は、上記成膜室に接続され、上記排気溝を通った上記原料ガスを排気する。
上記駆動機構は、上記排気溝の上記第1の状態と上記第2の状態とを切り替える。
【0009】
この構成では、排気溝の開口幅が可変に構成される。これにより、排気を制限したい成膜工程においては排気溝の開口幅を狭め、排気の流れの偏りや乱れを抑制することができる。これにより、膜厚分布を均一化することができる。さらに、排気が必要な工程では開口幅を広げて排気速度を高めることができる。これにより、排気時間を短縮して生産効率を向上させることができる。
【0010】
例えば、上記排気溝は、
上記ステージの周縁に沿って延びる第1の開口形成部を含む第1の溝部材と、
上記ステージの周縁に沿って延び上記第1の開口形成部とともに上記排気溝の開口を形成する第2の開口形成部を含み、上記第1の溝部材の外周に配置された第2の溝部材と、を有し、
上記第2の開口形成部は、上記第2の状態において、上記第1の状態よりも上記第1の開口形成部から離間するように構成され、
上記駆動機構は、上記第2の溝部材の上記第1の状態と上記第2の状態とを切り替えてもよい。
これにより、排気溝を分割された2つの部材で構成することができ、一方の第2の溝部材のみ変形又は変位させることで、開口幅を可変に構成することができる。したがって、開口幅の変更に伴う装置構成の複雑化を抑制することができる。
【0011】
例えば、上記第1の開口形成部及び上記第2の開口形成部は、上記ステージの外周を取り囲む環状に構成されてもよい。
これにより、排気溝がステージの外周に沿って環状に開口する。したがって、排気の流れの偏りや乱れをより効果的に防止でき、成膜工程において排気溝を第1の状態とすることで、膜厚分布を均一化することができる。また、第2の状態においては、排気効率を高めることができ、排気時間をより短縮することができる。
【0012】
具体的には、上記第2の溝部材は、上記第1の状態において、上記第1の溝部材と対向し、上記第2の状態において、上記一軸方向に沿って上記第1の溝部材から離間させ、
上記駆動機構は、上記第2の溝部材を上記一軸方向に沿って昇降させてもよい。
これにより、第2の溝部材が一軸方向に沿って移動することによって第1の状態と第2の状態とが切り替わる。したがって、装置構成の複雑化をより効果的に防止できる。
【0013】
さらにこの場合、上記第1の溝部材は、上記第1の開口形成部から屈曲して上記成膜室の外方へ突出する凸部をさらに含み、
上記第2の溝部材は、上記第2の開口形成部から屈曲して上記成膜室の外方へ陥凹する凹部をさらに含んでいてもよい。
これにより、第1の状態において屈曲した流路が形成され、排気溝におけるガス流速をより低下させることができる。したがって、第1の状態が適用される成膜時等の排気速度を抑え、排気に伴う膜厚分布の偏りをより効果的に抑制することができる。
【0014】
例えば、上記駆動機構は、
上記一軸方向に延び、先端部によって上記ステージに配置される基板を支持することが可能な基板昇降ピンと、
上記一軸方向に延び、先端部によって上記第2の溝部材を支持することが可能な溝部材昇降ピンと、
上記基板昇降ピン及び上記部材昇降ピンを上記一軸方向に昇降させる駆動部と、を有してもよい。
これにより、基板の昇降と第2の溝部材の昇降とを1つの駆動機構によって行うことができる。したがって、第2の溝部材の昇降に伴う装置構成の複雑化を防止することができる。
【0015】
また、上記排気溝は、上記原料ガスの流路を加熱する加熱機構をさらに有していてもよい。
これにより、冷却された原料ガスが排気溝の流路に付着して硬化することを防止できる。
【0016】
また、上記成膜装置は、
上記排気溝を、上記第1の状態に設定するように上記駆動機構を制御し、
上記排気溝を上記第1の状態に設定した後、上記原料ガスを上記基板に向けて供給するように上記ガス供給部を制御し、
上記成膜ガスを供給した後、上記排気溝を上記第2の状態に切り替えるように上記駆動機構を制御し、
上記排気溝を上記第2の状態に切り替えた後、上記成膜室内の上記原料ガスを排気するように上記排気系を制御する
ように構成された制御部
をさらに具備してもよい。
【0017】
本発明の他の形態に係る成膜方法は、チャンバの成膜室に配置されたステージに基板を配置する工程を含む。
上記成膜室における上記ステージの外周に配置された排気溝の開口が、第1の開口幅に設定される。
上記開口を上記第1の開口幅に設定した後、エネルギ線の照射を受けて硬化するエネルギ線硬化樹脂を含む原料ガスが、上記基板に向けて供給される。
上記成膜ガスを供給した後、上記排気溝の上記開口が、上記第1の開口幅よりも広い第2の開口幅に切り替えられる。
上記開口を上記第2の開口幅に切り替えた後、上記成膜室内の上記原料ガスが排気される。
上記原料ガスを排気した後、上記エネルギ線が上記基板に照射される。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように、本発明によれば、膜厚分布を均一化でき、かつ、生産効率を高めることが可能な成膜装置及び成膜方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る成膜装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図1のII-II方向から見た断面図である。
【
図3】上記成膜装置の排気溝の第1の状態における構成を示す、
図1の拡大断面図である。
【
図4】上記成膜装置を用いた成膜方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図4に示す成膜過程における、上記成膜装置の要部を示す概略構成図である。
【
図6】
図4に示す成膜過程における、上記成膜装置の要部を示す概略構成図である。
【
図7】
図4に示す成膜過程における、上記成膜装置の要部を示す概略構成図である。
【
図8】Aは、上記成膜方法における各工程での成膜室内の圧力の推移の一例を示すグラフであり、横軸は時間、縦軸は圧力を示す。Bは、Aの縦軸の間隔を拡大して一部を示すグラフである。
【
図9】上記排気溝の第2の状態における構成を示す断面図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る成膜装置の要部を示す概略構成図である。
【
図11】上記成膜装置の成膜過程における要部を示す概略構成図である。
【
図12】上記成膜装置の成膜過程における要部を示す概略構成図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態に係る成膜装置の要部を示す断面図である。
【
図14】本発明の第4の実施形態に係る成膜装置の要部を示す断面図である。
【
図15】上記実施形態の変形例に係る成膜装置の要部を示す断面図である。
【
図16】本発明の他の実施形態に係る成膜装置を示す図であり、
図2と同様の方向から見た概略断面図である。
【
図17】本発明のさらに他の実施形態に係る成膜装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
<第1の実施形態>
[成膜装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る成膜装置100を示す概略断面図である。
図2は、
図1のII-II方向から見た断面図である。図においてX軸方向及びY軸方向は互いに直交する水平方向を示し、Z軸方向はX軸方向及びY軸方向に直交する方向を示している。
【0022】
成膜装置100は、基板W上に、エネルギ線硬化樹脂である紫外線硬化樹脂からなる樹脂膜を形成するための成膜装置である。成膜装置100は、チャンバ10と、ステージ15と、光源ユニット20と、ガス供給部30と、排気溝40と、駆動機構50と、制御部60と、を備える。
【0023】
(チャンバ)
チャンバ10は、上部に開口が形成された金属製の真空容器である。チャンバ10は、底部10aと側壁10bとで区画された成膜室11を有する。チャンバ10の底部10aは、一例として矩形で構成されるが、円形その他の形状でもよい。成膜室11には、所定の減圧雰囲気に排気または維持することが可能な排気系19が接続される。排気系19は、例えば、図示しない配管や調圧バルブ、流速制御器及び真空ポンプ等を有する。
【0024】
チャンバ10は、開口を気密に閉塞する天板14をさらに有する。例えば、天板14は、紫外線UVを透過させる窓部141と、窓部141を支持する枠部142とを有する。窓部141は、石英ガラス等の紫外線透過性材料で構成される。窓部141の数は特に限定されず、単数であってもよいし、2つ以上であってもよい。
【0025】
(ステージ)
ステージ15は、成膜室11に配置される。ステージ15は、基板Wを支持しZ軸方向に向いた支持面15aを有する。ステージ15は、図示しない冷却機構を有し、所定温度以下に冷却される。冷却機構により、基板Wは、後述する原料ガス中の紫外線硬化樹脂を凝縮させるのに十分な適宜の温度に冷却される。基板Wは、ガラス基板であるが、半導体基板であってもよい。基板Wの形状や大きさは特に限定されず、矩形でもよいし円形でもよい。
【0026】
ステージ15は、さらに、後述する駆動機構50の基板昇降ピン51を挿通させる複数の貫通孔151を有する。各貫通孔151は、ステージ15の支持面15aから裏面まで貫通するように構成され、
図2に示すように、基板昇降ピン51が挿通可能な位置に配置される。
【0027】
(光源ユニット)
光源ユニット20は、カバー21と、照射源22とを有する。カバー21は、例えば天板14の上に配置され、照射源22を収容する光源室23を有する。光源室23は、例えば、大気雰囲気である。照射源22は、ステージ15に向けて、天板14の窓部141を介してエネルギ線としての紫外線UVを照射する光源であり、典型的には、紫外線ランプで構成される。これに限られず、照射源22には、紫外線UVを発光する複数のLED(Light Emitting Diode)がマトリクス状に配列された光源モジュールが採用されてもよい。
【0028】
(ガス供給部)
ガス供給部30は、例えば複数のガス供給配管31を有し、紫外線UVの照射を受けて硬化する樹脂(紫外線硬化樹脂)を含む原料ガスをステージ15に向けて供給する。
【0029】
紫外線硬化樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂を用いることができる。また、上記樹脂には重合開始剤等を添加して用いることも可能である。このような樹脂を含む原料ガスは、チャンバ10の外部に設置された原料ガス生成装置(図示せず)によって生成される。原料ガス生成装置によって生成された原料ガスは、配管を介して、ガス供給部30のガス供給配管31へ導入される。
【0030】
ガス供給配管31は、図示しない複数のガス吐出孔を有し、原料ガスを成膜室11へ吐出することが可能に構成される。成膜室11へ吐出された原料ガスは、後述する排気溝40を介して排気系19により排気される。
【0031】
(排気溝)
図3は、排気溝40の構成を示す
図1の拡大断面図である。
排気溝40は、第1の溝部材41と、第2の溝部材42と、を有し、成膜室11内のステージ15の外周に配置される。第1の溝部材41は、ステージ15側に配置される。第2の溝部材42は、第1の溝部材41と間隔をあけて、第1の溝部材41の外周に配置される。第1の溝部材41と第2の溝部材42の間隙は、排気されるガスの流路Qとなる。排気溝40の流路Qを通ったガスは、成膜室11の、排気溝40よりZ軸方向下方の領域に接続された排気系19(
図3において図示せず)によって排気される。
【0032】
第1の溝部材41は、本実施形態において、第1の開口形成部411と、凸部412と、を含む。第1の溝部材41は、チャンバ10の底部10aから延びる図示しない支持部材等によって支持されていてもよいし、ステージ15に接着等されることで支持されてもよい。
【0033】
第1の開口形成部411は、開口Pの一部を形成し、ステージ15の周縁に沿って延びる。第1の開口形成部411は、Z軸方向に上方に向いた上面部411aと、成膜室11の外方に向いた側面部411bと、を含む。
【0034】
凸部412は、第1の開口形成部411から成膜室11の外方に屈曲して突出する。凸部412は、側面部411bから屈曲して延びる上面部412aと、上面部412aから屈曲し成膜室11の外方(側壁10bの方)に向いた側面部412bと、を含む。
【0035】
第2の溝部材42は、本実施形態において、第2の開口形成部421と、凹部422と、を含む。第2の溝部材42は、後述する駆動機構50によって昇降可能に支持される。
【0036】
第2の開口形成部421は、第1の開口形成部411とともに排気溝40の開口Pを形成し、ステージ15の周縁に沿って延びる。第2の開口形成部421は、成膜室11の内方(ステージ15の方)に突出した構成を有し、Z軸方向上方に向いた上面部421aと、成膜室11の内方に向いた側面部421bと、を含む。
【0037】
凹部422は、第2の開口形成部421から屈曲して成膜室11の外方に陥凹する。凹部422は、第2の開口形成部421から屈曲して延びる下面部422aと、下面部422aから屈曲して延び成膜室11の内方に向いた側面部422bと、を含む。
【0038】
図2に示すように、排気溝40は、本実施形態において、ステージ15の周囲に環状に配置される。このため、第1の開口形成部411及び第2の開口形成部411は、ステージ15の外周を取り囲む環状に構成され、開口Pも環状に構成される。したがって、成膜室11に供給された原料ガスが、成膜室11の中央部から外方に向かって放射状に流れるようになり、膜厚分布を均一化することができる。
【0039】
図3に示すように、排気溝40は、さらに、第1の溝部材41と第2の溝部材42とを加熱する加熱機構43を有する。加熱機構43は、例えば、第1の溝部材41及び第2の溝部材42に内蔵された抵抗加熱線等のヒータとして構成される。加熱機構43により、排気溝40の原料ガスの流路Qが加熱され、冷却されて凝縮した原料ガスが排気溝40に付着して硬化することを防止できる。
【0040】
第2の溝部材42は、駆動機構50によって駆動される。これにより、後述するように、開口Pの開口幅が可変に構成される。
【0041】
(駆動機構)
図1に示すように、駆動機構50は、本実施形態において、基板昇降ピン51と、溝部材昇降ピン52と、基板昇降ピン51及び溝部材昇降ピン52をZ軸方向に昇降させる駆動部53と、を有する。なお、
図1では、便宜上、基板昇降ピン51と溝部材昇降ピン52とを同一断面上に記載している。
【0042】
基板昇降ピン51は、Z軸方向に沿って延び、ステージ15の貫通孔151に挿入されることが可能に構成される。基板昇降ピン51は、基板Wの搬入及び搬出時に、支持面15aから先端部51aが突出し、先端部51aによって基板Wを支持することが可能に構成される。
【0043】
溝部材昇降ピン52は、Z軸方向に沿って延び、先端部52aによって第2の溝部材42を支持することが可能に構成される。溝部材昇降ピン52は、本実施形態において、基板昇降ピン51よりもZ軸方向に長く構成される。
【0044】
駆動部53は、本実施形態において、支持板531と、昇降機532と、を有する。支持板531は、基板昇降ピン51及び溝部材昇降ピン52を支持する。昇降機532は、モータ等の駆動装置で構成され、支持板531をZ軸方向に昇降させる。
【0045】
(制御部)
制御部60は、典型的にはコンピュータで構成され、成膜装置100の各部を制御する。制御部60により、成膜装置100を用いて以下の成膜方法が実施される。
【0046】
[成膜方法]
図4は、成膜装置100を用いた成膜方法を示すフローチャートである。
図5~7は、成膜装置100の異なる態様を示す要部の概略構成図である。以下、
図4及び
図5~7を参照しながら、本実施形態に係る成膜装置100の動作について説明する。
【0047】
(ステップS01:基板の搬入)
ステップS01では、基板Wが成膜室11に搬入される。基板Wは、基板搬送装置によって、側壁10bの図示しない開口等から成膜室11へ搬入される。
【0048】
図5に示すように、駆動部53は、基板昇降ピン51を、先端部51aが支持面15aから突出した基板支持位置に配置させる。基板搬送装置によって搬入された基板Wは、突出している基板昇降ピン51の先端部51a上に配置される。
【0049】
このとき、溝部材昇降ピン52の先端部52aは、基板昇降ピン51の先端部51aよりもZ軸方向上方に位置し、第2の溝部材42は、例えば搬入された基板WよりもZ軸方向上方に配置される。
【0050】
(ステップS02:ステージへの基板の配置)
続いて、駆動部53は、基板昇降ピン51を、先端部51aが支持面15aから突出しない待機位置まで、Z軸方向に下降させる。これにより、
図6に示すように、基板Wが先端部51aとともにZ軸方向下方に下降し、ステージ15の支持面15a上に配置される。
【0051】
駆動部53は、基板昇降ピン51の下降に伴い、第2の溝部材42もZ軸方向下方に下降させる。これにより、第2の溝部材42は、
図3に示す第1の状態となる。
【0052】
図3に示すように、第1の状態において、第1の溝部材41及び第2の溝部材42は、成膜室11の内外方向(
図3に示す例ではX軸方向)に相互に対向している。第1の開口形成部411の上面411a及び第2の開口形成部421の上面421aは、略同一平面上に配置される。これにより、開口Pは、Z軸方向に向けて開口した状態となる。
【0053】
第1の状態において、排気溝40の開口Pは、第1の開口幅D1を有する。第1の開口幅D1は、第1の開口形成部411と第2の開口形成部421との間の距離であり、具体的には、上面部411a及び上面部421aの端部間の距離である。第1の開口幅D1は、例えば1~50mm程度である。
【0054】
また、第1の状態において、排気溝40の流路Qは、開口PからZ軸方向下方に延びる第1の流路Q1と、第1の流路Q1から屈曲して延びる第2の流路Q2と、第2の流路Q2から屈曲してZ軸方向下方に延びる第3の流路Q3と、を有する。第1の流路Q1は、側面部411b及び側面部421bの間隙で構成される。第2の流路Q2は、上面部412a及び下面部422aの間隙で構成される。第3の流路Q3は、側面部412b及び側面部422bの間隙で構成される。これにより、第1の状態の排気溝40には、2か所で屈曲する幅狭の流路Qが形成される。
【0055】
(ステップS03:基板の冷却)
ステップS03では、ステージ15上の基板Wを冷却する。本ステップでは、基板冷却機構によってステージ15を冷却することに加えて、冷却された窒素等の不活性ガスを成膜室11に導入することで、基板Wを例えば-5℃以下に冷却する。このとき、排気溝40は、開口幅D1が狭い第1の状態を維持している。
【0056】
図8は、本実施形態の成膜方法における各工程での成膜室11内の圧力の推移の一例を示すグラフであり、横軸は時間、縦軸は圧力を示す。
【0057】
図8に示すように、本ステップでは、成膜室11内に冷却された不活性ガスが導入されることにより、成膜室11内の圧力が高まる。本ステップでは、排気溝40が第1の状態であるため、不活性ガスが過剰に排気されることなく、効率的に冷却を行うことができる。
【0058】
(ステップS04:排気溝40の第2の状態への切り替え)
ステップS04では、駆動部53が、溝部材昇降ピン52を介して第2の溝部材42をZ軸方向上方に上昇させる。これにより、
図7に示すように、排気溝40が第2の状態に切り替わる。
【0059】
このとき、溝部材昇降ピン52よりも短い基板昇降ピン51は、引き続き、支持面15aから突出しない待機位置に配置される。これにより、排気溝40が第2の状態の時に基板Wが支持面15aから離間することを防止できる。
【0060】
図9は、排気溝40の第2の状態における構成を示す図である。第2の状態において、第2の溝部材42は、第1の状態よりもZ軸方向上方に配置される。つまり、第2の溝部材42の上面部421a及び下面部422aは、第1の溝部材41の上面部411aよりもZ軸方向上方に配置される。これにより、第2の開口形成部421が第1の開口形成部411からZ軸方向に離間し、開口Pが、成膜室11の内方(
図9の例ではX軸方向)に向けて開口した状態となる。
【0061】
第2の状態において、排気溝40の開口Pは、第1の開口幅D1よりも大きい第2の開口幅D2を有する。第2の開口幅D2は、本実施形態において、第1の開口形成部411の上面部411aから第2の開口形成部421の側面部421bの下端部までのZ軸方向に沿った距離である。第2の開口幅D2は、例えば第1の開口幅D1よりも大きく100mm以下程度である。
【0062】
(ステップS05:調圧)
ステップS05では、
図8に示すように、成膜室11内を、成膜圧力である例えば0~200Pa程度の圧力に調圧する。本ステップでは、第2の状態である排気溝40から、ステップS02で導入された不活性ガスを排気することで、成膜室11内の圧力を調整する。
【0063】
第2の状態では、開口Pに加えて、排気溝40の流路Qが全体的に広がるため、排気溝40の排気性能が大幅に高められる。
仮に排気溝40が第1の状態であった場合、開口P及び流路Qの幅が狭く、排気速度が規制され、本ステップにかかる時間が長時間化する。また、十分に排気されない場合、次の成膜工程における圧力が目標到達圧力まで到達せず、成膜が不安定になる可能性もある。
【0064】
そこで本実施形態では、ステップS04において排気溝40を第2の状態に切り替え、開口幅及び流路を広げて排気性能を高める。これにより、排気溝40における不活性ガスの排気速度を高め、調圧工程にかかる時間を短縮することができる。
【0065】
(ステップS06:排気溝40の第1の状態への切り替え)
ステップS06では、駆動部53が、溝部材昇降ピン52を介して第2の溝部材42をZ軸方向上方に下降させる。これにより、
図6に示すように、排気溝40が第1の状態に切り替わり、開口幅が第1の開口幅D1に設定される。
【0066】
(ステップS07:成膜)
ステップS07では、ガス供給部30から成膜室11へ原料ガスが供給される。原料ガスが冷却された基板Wに到達すると、原料ガス内の樹脂が基板W上に凝縮し、紫外線硬化樹脂層が成膜される。
【0067】
図8に示すように、ステップS04では、成膜室11内が、原料ガスが供給されつつもほぼ一定の圧力を維持するように調整される。このため、供給された原料ガスは、第1の状態である排気溝40から排気される。
【0068】
ここで、仮に排気溝40の開口幅が第2の開口幅D2のように広い場合、排気溝40付近のステージ15の周縁部で原料ガスの流速が早まり、成膜空間内におけるガスの流れが不安定になる。この結果、特に基板Wの周縁部での膜厚均一性を維持することができず、所望の成膜品質を得ることができなくなる。また、排気速度が高まることで、成膜速度を向上させることが難しく、成膜工程にかかる時間が長時間化する。
【0069】
そこで本実施形態では、ステップS06において排気溝40を第1の状態に切り替え、開口幅及び流路の幅を狭めて排気速度を低下させる。これにより、排気される原料ガスを規制して排気速度を低下させて、膜厚分布を均一化することができる。さらに、原料ガスが成膜室11内に長く留まるため、成膜速度が高まり成膜工程にかかる時間を短縮することができる。
【0070】
(ステップS08:排気溝40の第2の状態への切り替え)
ステップS08では、駆動部53が、溝部材昇降ピン52を介して、第2の溝部材42をZ軸方向上方に上昇させる。これにより、排気溝40が、
図7及び9に示す第2の状態に切り替わり、開口幅が第2の開口幅D2に切り替わる。
なお、ここでいう「第2の状態」とは、第1の開口幅D1よりも大きい(例えば100mm以下の)任意の第2の開口幅D2を採り得るものとし、ステップS04において設定した第2の開口幅D2と同一でも異なっていてもよい。
【0071】
(ステップS09:排気)
ステップS09では、
図8Bに示すように、成膜室11内の原料ガスを排気し、成膜室11の圧力を低下させる。本ステップでは、排気溝40が第2の状態であるため、排気速度を高めることができる。これにより、本ステップにかかる時間を短縮することができる。また、排気溝40の排気性能を高めることで、成膜室11内を十分に排気することができる。
【0072】
(ステップS10:UV照射)
ステップS10では、照射源22から基板W上へ紫外線UVを照射する。これにより、基板W上に凝縮した樹脂層が硬化する。紫外線UVは、例えば、隣接するガス供給配管31の間を通って基板Wへ到達する。
【0073】
(ステップS11:基板搬出)
ステップS11では、駆動部53が、基板昇降ピン51を、先端部51aが支持面15aより突出する位置までZ軸方向に上昇させる。これにより、
図5に示すように、基板Wが支持面15aからZ軸方向に離間し、図示しない基板搬送装置に基板Wが移載される。これにより、成膜後の基板Wが成膜室11から搬出される。
【0074】
以上より、本実施形態では、ステップS07の成膜工程の前に、排気溝40を開口幅の狭い第1の状態に設定する。これにより、成膜室11内のガスの流れを安定化させ、膜厚分布を均一化することができる。
【0075】
また、ステップS05の調圧工程とステップS09の排気工程の前に、排気溝40を開口幅の広い第2の状態に切り替える。これにより、排気速度を高め、これらのステップに要する時間を短縮することができる。したがって、成膜プロセス全体の時間を短縮することができ、生産効率を高めることができる。
【0076】
さらに、本実施形態では、基板の搬送時に用いられる基板昇降ピン51と、第2の溝部材42の昇降に用いられる溝部材昇降ピン52とが、同一の駆動部53に接続される。これにより、駆動機構50の装置構成を単純化でき、駆動機構50にかかるコストを低下させることができる。
【0077】
一方で、駆動機構50については、基板昇降用の駆動機構と、溝部材昇降用の駆動機構とを別体に構成することも可能である。以下、第2実施形態として、この構成について説明する。
以下の各実施形態において、上述の第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0078】
<第2の実施形態>
[成膜装置の構成]
図10は、本発明の第2の実施形態に係る成膜装置200の要部を示す概略構成図である。
成膜装置200は、第1の実施形態と同様のチャンバ10、ステージ15、光源ユニット20、ガス供給部30及び排気溝40を備えるが、第1の実施形態と異なる駆動機構70を備える。なお、
図10において、光源ユニット20及びガス供給部30等の構成は省略している。
【0079】
駆動機構70は、本実施形態において、第1の駆動機構71と、第2の駆動機構72と、を有する。第1の駆動機構71は、基板Wを昇降させるための駆動機構であり、第2の駆動機構72は、第2の溝部材42を昇降させるための駆動機構である。
【0080】
第1の駆動機構71は、基板昇降ピン711と、第1の駆動部712と、を有する。基板昇降ピン711は、上述の基板昇降ピン51と同様に構成される。第1の駆動部712は、駆動部53と同様に、支持板と昇降機とを有し、基板昇降ピン711を昇降させる。
【0081】
第2の駆動機構72は、溝部材昇降ピン721と、第2の駆動部722と、を有する。溝部材昇降ピン721は、上述の溝部材昇降ピン52と同様に構成される。第2の駆動部722は、駆動部53と同様に、支持板と昇降機とを有し、溝部材昇降ピン721を昇降させる。
【0082】
このような構成の駆動機構70では、溝部材昇降ピン721が基板昇降ピン711とは独立して駆動される。
【0083】
[成膜装置の動作]
図11及び12は、成膜装置200の
図10とは異なる態様を示す概略構成図である。以下、
図4の成膜方法を示すフローチャート及び
図10~12を参照しながら、本実施形態に係る成膜装置200の動作について説明する。
【0084】
(ステップS01:基板の搬入)
ステップS01では、基板Wが成膜室11に搬入される。基板搬入時には、第1の駆動機構71のみが駆動し、
図11に示すように、基板昇降ピン711の先端部711aが、ステージ15の支持面15aから突出する基板支持位置に配置される。これにより、基板Wが、基板昇降ピン711の先端部711aに配置される。このとき、第2の駆動機構72は駆動せず、第2の溝部材42は第1の状態で待機している。
【0085】
(ステップS02:ステージへの基板の配置)
ステップS02では、第1の駆動機構71が、基板昇降ピン711を、先端部711aが支持面15aから突出しない待機位置までZ軸方向に下降させる。これにより、
図10に示すように、基板Wが先端部51aとともにZ軸方向下方に下降し、ステージ15の支持面15a上に配置される。本ステップにおいても第2の駆動機構72は駆動せず、第2の溝部材42は第1の状態で待機している。
【0086】
(ステップS03:基板の冷却)
ステップS03では、第1の実施形態と同様に、ステージ15上の基板Wが冷却される。このとき、第2の溝部材42が第1の状態であるため、冷却用の不活性ガスの排気が規制され、効率的に基板Wの冷却を行うことができる。
【0087】
(ステップS04:排気溝の第2の状態への切り替え)
ステップS04では、
図12に示すように、第2の駆動機構72が、溝部材昇降ピン721を介して第2の溝部材42をZ軸方向上方に上昇させる。これにより、排気溝40が開口幅の広い第2の状態に切り替わる。このとき、第1の駆動機構71は駆動せず、基板昇降ピン711は引き続き待機位置で待機している。
【0088】
(ステップS05:調圧)
ステップS05では、第1の実施形態と同様に、成膜室11から不活性ガスが排気され、成膜室11内が調圧される。このとき、第2の溝部材42は開口幅の広い第2の状態であるため、成膜室11から速やかに不活性ガスが排気され、調圧工程にかかる時間を短縮できる。なお、基板昇降ピン711は待機位置で待機している。
【0089】
(ステップS06:排気溝の第1の状態への切り替え)
ステップS06では、第2の駆動機構72が、溝部材昇降ピン721を介して第2の溝部材42をZ軸方向下方に下降させる。これにより、
図10に示すように、排気溝40が開口幅の狭い第1の状態に切り替わる。なお、基板昇降ピン711は駆動せずに、引き続き待機位置で待機している。
【0090】
(ステップS07:成膜)
ステップS07では、第1の実施形態と同様に、ガス供給部30から成膜室11へ原料ガスが供給され、基板W上に紫外線硬化樹脂層が成膜される。
【0091】
このとき、第2の溝部材42は開口幅の狭い第1の状態である。これにより、排気される原料ガスを規制して排気速度を低下させて、膜厚分布を均一化することができる。また、原料ガスが成膜室11内に長く留まるため、成膜速度を高めて本ステップにかかる時間を短縮することができる。なお、基板昇降ピン711は待機位置で待機している。
【0092】
(ステップS08:排気溝40の第2の状態への切り替え)
ステップS08では、第2の駆動機構72が、溝部材昇降ピン721を介して第2の溝部材42をZ軸方向上方に上昇させる。これにより、
図12に示すように、排気溝40が開口幅の広い第2の状態に切り替わる。このとき、第1の駆動機構71は駆動せず、基板昇降ピン711は引き続き待機位置で待機している。
なお、ここでいう「第2の状態」とは、第1の開口幅D1よりも大きい(例えば100mm以下の)任意の第2の開口幅D2を採り得るものとし、ステップS04において設定した第2の開口幅D2と同一でも異なっていてもよい。
【0093】
(ステップS09:排気)
ステップS09では、第1の実施形態と同様に、成膜室11内の原料ガスを排気する。
このとき、第2の溝部材42は開口幅の広い第2の状態であるため、排気速度を高め、本ステップにかかる時間を短縮することができる。なお、基板昇降ピン711は待機位置で待機している。
【0094】
(ステップS10:UV照射)
ステップS10では、第1の実施形態と同様に、照射源22から基板W上へ紫外線UVを照射して、基板W上に凝縮した樹脂層が硬化する。
このとき、第2の溝部材42は、開口幅の広い第2の状態でもよいし、第2の駆動機構72によって、開口幅の狭い第1の状態に切り替えられてもよい。なお、基板昇降ピン711は待機位置で待機している。
【0095】
(ステップS11:基板搬出)
ステップS11では、第1の駆動機構71が、基板昇降ピン711を、基板支持位置までZ軸方向に上昇させる。これにより、
図11に示すように、基板Wが支持面15aからZ軸方向に離間し、図示しない基板搬送装置に基板Wを移載させる。移載された基板Wは、成膜室11から搬出される。
このとき、第2の溝部材42は、開口幅の広い第2の状態でもよいし、開口幅の狭い第1の状態に切り替えられてもよい。
【0096】
以上より、本実施形態では、基板昇降のための第1の駆動機構71と第2の溝部材42を昇降させるための第2の駆動機構72とが独立して駆動される。これにより、基板昇降ピン711や溝部材昇降ピン721の動作が必要最低限に抑えられる。したがって、これらの動作に伴う成膜室11内のパーティクルの発生を抑制でき、形成された樹脂膜のパーティクルによる汚染を防止できる。
【0097】
ここで、排気溝40の構成は、第1及び第2の実施形態で説明した構成に限定されない。以下、本発明に係る排気溝の異なる態様について説明する。
【0098】
<第3の実施形態>
図13は、本発明の第3の実施形態に係る成膜装置300を示す要部断面図である。
同図に示すように、成膜装置300は、第1の実施形態に係る排気溝40とは異なる構成の排気溝80を備える。
図13Aは、排気溝80の第1の状態を示し、
図13Bは、排気溝80の第2の状態を示す。
【0099】
排気溝80は、第1の溝部材81と、第2の溝部材82と、を有し、成膜室11のステージ15の外周に配置される。第1の溝部材81は、ステージ15側に配置される。第2の溝部材82は、第1の溝部材81と間隔をあけて、第1の溝部材81よりも外周に配置される。
【0100】
第1の溝部材81は、本実施形態において、第1の開口形成部811を含む。
第1の開口形成部811は、開口Pの一部を形成し、ステージ15の周縁に沿って延びる。第1の開口形成部811は、Z軸方向に上方に向いた上面部811aと、成膜室11の外方に対して斜めに向いた斜面部811bと、を含む。
【0101】
第2の溝部材82は、本実施形態において、第2の開口形成部821を含む。
第2の開口形成部821は、第1の開口形成部811とともに排気溝80の開口Pを形成し、ステージ15の周縁に沿って延びる。第2の開口形成部821は、Z軸方向上方に向いた上面部821aと、成膜室11の内方に対して斜めに向いた斜面部821bと、を含む。
【0102】
排気溝80は、
図2の排気溝40と同様に、ステージ15の周囲に環状に配置される。つまり、第1の開口形成部811及び第2の開口形成部812も、ステージ15の外周を取り囲む環状に構成される。また、図示はしないが、排気溝80は、第1の溝部材81と第2の溝部材82とを加熱する加熱機構をさらに有していてもよい。
【0103】
第2の溝部材82は、第1の実施形態と同様に、駆動機構50の溝部材昇降ピン52によって、Z軸方向に昇降することが可能に構成される。これにより、排気溝80の第1の状態と第2の状態とが切り替わる。なお、第2の溝部材82は、第2の実施形態と同様に、駆動機構70の第2の駆動機構72によって、基板昇降ピン711とは独立して駆動されてもよい。
【0104】
図13Aに示す第1の状態において、排気溝80の開口Pは、第1の開口幅D31を有する。第1の開口幅D31は、第1の開口形成部811と第2の開口形成部821との間の距離であり、具体的には、第1の開口形成部811の上面部811aと第2の開口形成部821の上面部821aの端部間の距離である。第1の状態においては、第1の開口形成部811の斜面部811bと第2の開口形成部821の斜面部821bとの間隙が、排気溝80の流路Qを構成する。
【0105】
図13Bに示す第2の状態では、第2の溝部材82が、第1の溝部材81からZ軸方向に離間する。これにより、排気溝80の開口Pは、第1の開口幅D31よりも大きい第2の開口幅D32を有する。第2の開口幅D32は、本実施形態において、第1の開口形成部811の上面部811aの端部から第2の開口形成部821の上面部821aの端部までのZ軸方向に沿った距離である。
【0106】
これにより、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、原料ガスが供給される成膜工程の前に、排気溝80を開口幅の狭い第1の状態に切り替えることができる。これにより、成膜室11内のガスの流れを安定化させ、膜厚分布を均一化することができる。また、成膜室11内のガスが排気される調圧工程及び排気工程の前に、排気溝80を開口幅の広い第2の状態に切り替えることができる。これにより、排気速度を高め、これらのステップに要する時間を短縮することができる。
【0107】
さらに、本実施形態では、第2の溝部材82を第1の状態からZ軸方向に上昇させることにより、第2の状態の開口幅及び流路の幅を、連続的に切り替えることが可能となる。これにより、排気溝80を、ステップ毎に必要な排気性能に設定することができ、成膜プロセスのさらなる安定化及び効率化を図ることができる。
【0108】
<第4の実施形態>
図14は、本発明の第4の実施形態に係る成膜装置400を示す要部断面図である。
同図に示すように、成膜装置400は、第1の実施形態に係る排気溝40とは異なる構成の排気溝90を備える。
図14Aは、排気溝90の第1の状態を示し、
図14Bは、排気溝90の第2の状態を示す。
【0109】
排気溝90は、第1の溝部材91と、第2の溝部材92と、を有し、成膜室11のステージ15の外周に配置される。第1の溝部材91は、ステージ15側に配置される。第2の溝部材92は、第1の溝部材91と間隔をあけて、第1の溝部材81よりも外周に配置される。
【0110】
第1の溝部材91は、第1の開口形成部911を含む。第1の開口形成部911は、開口Pの一部を形成し、ステージ15の周縁に沿って延びる。
【0111】
第2の溝部材92は、第2の開口形成部921と、第2の開口形成部921が接続された基部922と、を含む。
第2の開口形成部921は、第1の開口形成部911とともに排気溝90の開口Pを形成し、ステージ15の周縁に沿って延びる。第2の開口形成部921は、第2の状態において、第1の状態よりも第1の開口形成部911から離間するように構成され、例えば基部922に対して成膜室11の内外方向(例えば
図14においてはX軸方向)にスライド可能に構成される。
【0112】
これによっても、開口部Pの開口幅を第1の状態と第2の状態とで可変に構成することができる。したがって、成膜工程においては、排気溝90を開口幅の狭い第1の状態に切り替え、膜厚分布を均一化することができる。また、調圧工程及び排気工程においては、排気溝90を開口幅の広い第2の状態に切り替え、排気性能を高めて生産効率を高めることができる。
【0113】
図15は、本実施形態の変形例に係る排気溝90を示す要部断面図であり、
図15Aは、排気溝90の第1の状態を示し、
図15Bは、排気溝90の第2の状態を示す。
【0114】
第2の溝部材92の第2の開口形成部921は、第2の状態において第1の状態よりも第1の開口形成部911から離間するように、開閉可能に構成されてもよい。すなわち、第2の溝部材92は、第2の開口形成部921と、第2の開口形成部921が接続された基部922と、を含む。第2の開口形成部921は、基部922に対して回転軸Rまわりに回動可能に接続される。
【0115】
すなわち、
図15Aに示す第1の状態において、第2の開口形成部921は、基部922から成膜室11の内方に突出する。これにより、第2の開口形成部921の端部と第1の開口形成部911とがX軸方向に対向し、開口幅を狭めることができる。
【0116】
また、
図15Bに示す第2の状態において、第2の開口形成部921は、第1の状態から回転軸Rまわりに回動し、基部922の側面に沿ってZ軸方向に延びる。これにより、開口Pの開口幅を広げることができる。
【0117】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0118】
以上の実施形態では、排気溝40の状態の切り替えが終了してから次のステップを行う態様について説明したが、これに限定されない。例えば、排気溝40の第2の状態への切り替えは、調圧工程と同時に行ってもよいし、排気工程と同時に行ってもよい。また、第1の状態への切り替え中に成膜工程を開始してもよい。
【0119】
また、「第2の状態の第2の開口幅」は、「第1の状態の第1の開口幅」よりも大きい任意の値を採り得るものとする。例えば、「第2の状態の第2の開口幅」は、工程毎に異なっていてもよいし、調圧工程内及び排気工程内において多段に設定されていてもよい。
【0120】
例えば、
図16に示すように、排気溝40がステージ15の周囲を環状に取り囲む構成に限定されず、排気溝40がステージ15の一部に沿って配置されていてもよい。
図16の例では、排気溝40は、ステージ15を挟んでX軸方向に対向して配置されている。このような構成でも、排気溝40の第1の状態と第2の状態とを切り替えることによって、成膜厚均一性の向上と生産効率の向上とを両立させることができる。
【0121】
あるいは、ガス供給部30の構成は、ガス供給配管31を有する例に限定されない。例えば、
図17に示すように、ガス供給部30は、ガスを吐出可能なガス吐出孔321を含むシャワープレート32を有していてもよい。シャワープレート32を例えば紫外線UV透過性の材料で構成することで、成膜工程では基板W上へ原料ガスを供給可能であって、かつ、UV照射工程では基板W上へ紫外線UVを照射させることが可能となる。これにより、上述の実施形態と同様の作用効果が得られる成膜装置100を提供できる。
【符号の説明】
【0122】
10…チャンバ
11…成膜室
15…ステージ
19…排気系
20…光源ユニット
22…照射源
30…ガス供給部
40,80,90…排気溝
41,81,91…第1の溝部材
42,82,92…第2の溝部材
50,70…駆動機構
60…制御部
411.811.911…第1の開口形成部
421.821.921…第2の開口形成部
P…開口