(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】生理用ショーツ
(51)【国際特許分類】
A41B 9/12 20060101AFI20230327BHJP
A41B 9/04 20060101ALI20230327BHJP
A61F 13/68 20060101ALI20230327BHJP
A61F 13/72 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A41B9/12 E
A41B9/12 B
A41B9/12 A
A41B9/04 B
A41B9/04 F
A41B9/04 D
A61F13/68
A61F13/72
(21)【出願番号】P 2020091561
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002882
【氏名又は名称】弁理士法人白浜国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 順一
(72)【発明者】
【氏名】田村 竜也
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3033322(JP,U)
【文献】特開2020-069380(JP,A)
【文献】特開2002-330996(JP,A)
【文献】特開2013-185268(JP,A)
【文献】特開2011-224274(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0295891(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/12
A41B 9/04
A61F 13/68
A61F 13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向と横方向とを有し、前身頃と、後身頃と、前記前後身頃間に位置する股下域と、前記前身頃の上端縁と前記後身頃の上端縁とによって画成されたウエスト開口と、一対のレッグ開口とを含む生理用ショーツにおいて、
着用者の下腹部から臀部までを被覆するショーツ本体と、前記ショーツ本体から上方へ延出して着用者の胴回りに腹巻き状に配置される上側帯体と
、前記ショーツ本体の外形を形成する身生地と、前記上側帯体を形成する帯体生地とを含み、
前記帯体生地は、前記身生地よりも弾性糸の含有率が高く、
前記ショーツ本体は、前記股下域が位置する下側部分と、前記下側部分と前記上側帯体との間に位置する上側部分とを有し、
前記ショーツ本体の前記上側部分の前身頃側及び後身頃側の少なくとも一方には、前記横方向へ延びる伸縮性の温感シートが配置されていて、
前記上側帯体は、前記ショーツ本体の前記上側部分よりも前記横方向に伸び易く、前記上側部分は前記下側部分よりも前記横方向に伸び易いことを特徴とする前記生理用ショーツ。
【請求項2】
前記ショーツ本体の前記下側部分には防水布が配置されていて、前記防水布は、前記後身頃において、前記上側部分と前記上側帯体との境界部分まで延びている請求項
1に記載の生理用ショーツ。
【請求項3】
温感シートは、前記防水布の肌対向面側に位置している請求項
2に記載の生理用ショーツ。
【請求項4】
前記防水布は、前記温感シートと互いに重なり合う重複部分において最も幅狭となる形状を有する請求項
3に記載の生理用ショーツ。
【請求項5】
前記上側帯体は、1枚の生地を前記ウエスト開口の縁部において折り曲げて形成される請求項1~
4のいずれかに記載の生理用ショーツ。
【請求項6】
前記上側帯体を形成する生地と前記ショーツ本体を形成する身生地とは、含有率90%以上のオーガニックコットンを含む請求項1~
5のいずれかに記載の生理用ショーツ。
【請求項7】
前記上側帯体を形成する生地は、前記横方向へ互いに間隔を空けて配置され、かつ、前記縦方向へ延びる複数条のリブを有する請求項1~
6のいずれかに記載の生理用ショーツ。
【請求項8】
前記境界部分において、前記上側帯体と前記ショーツ本体の前記上側部分とが互いに重なり合って接合されていて、前記上側帯体は前記上側部分の肌対向面側に位置する請求項
2又は3に記載の生理用ショーツ。
【請求項9】
前記上側帯体と前記ショーツ本体とは、異なる編み地から形成される請求項1~
8のいずれかに記載の生理用ショーツ。
【請求項10】
前記股下域から前記後身頃に延びる縦断弾性体を有し、前記縦断弾性体の端部は、前記境界部分に位置する請求項
2,3,8のいずれかに記載の生理用ショーツ。
【請求項11】
前記上側帯体の前記縦方向の長さ寸法が、前記上側部分の前記縦方向の長さ寸法の1.0~1.5倍の大きさである請求項1~
10のいずれかに記載の生理用ショーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ショーツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ショーツは、公知である。例えば、特許文献1には、前身頃と、後身頃と、着用者の股間に対向する股部とを有し、着用者の下腹部から臀部までを被覆するショーツ本体と、ショーツ本体から上方へ延出して着用者の胴回りに腹巻状に配置される上側帯体とを含む生理用ショーツが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-139658号(2013-139658A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された生理用ショーツでは、ショーツ本体から上方へ延出して、着用者の胴回りに腹巻状に配置される上側帯体を有することから、着用者の腹部全体を温めて生理痛を緩和することができる。
【0005】
しかしながら、上側帯体が幅広のゴムから形成されることによって、比較的に胴回り方向(横方向)へ伸び難いことから、生理用ショーツの着用状態において、ショーツ本体の股部に配置された生理用ナプキンを交換する際に、上側帯体の締め付け力によって身体と上側帯体の間に両手を差し入れて交換作業を行い難いといえる。したがって、着用者は、上側帯体を手繰るようにして折り曲げてから、交換作業を行う必要があり、手間である。また、ショーツ本体においても、股部の位置する下側部分よりも上側帯体側に位置する上側部分が胴回り方向へ伸び易い方が、より生理用ナプキンの交換作業が容易になるといえる。
【0006】
本発明は、従来の生理用ショーツの改良であって、着用者の腹部全体を温めることによって生理痛を緩和することができ、かつ、生理用ナプキンの交換を容易に行うことのできる生理用ショーツの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、縦方向と横方向とを有し、前身頃と、後身頃と、前記前後身頃間に位置する股下域と、前記前身頃の上端縁と前記後身頃の上端縁とによって画成されたウエスト開口と、一対のレッグ開口とを含む生理用ショーツに関する。
【0008】
本発明に係る生理用ショーツは、着用者の下腹部から臀部までを被覆するショーツ本体と、前記ショーツ本体から上方へ延出して着用者の胴回りに腹巻き状に配置される上側帯体と、前記ショーツ本体の外形を形成する身生地と、前記上側帯体を形成する帯体生地とを含み、前記帯体生地は、前記身生地よりも弾性糸の含有率が高く、前記ショーツ本体は、前記股下域が位置する下側部分と、前記下側部分と前記上側帯体との間に位置する上側部分とを有し、前記ショーツ本体の前記上側部分の前身頃側及び後身頃側の少なくとも一方には、前記横方向へ延びる伸縮性の温感シートが配置されていて、前記上側帯体は、前記ショーツ本体の前記上側部分よりも前記横方向に伸び易く、前記上側部分は前記下側部分よりも前記横方向に伸び易いことを特徴とする。
【0009】
本願発明に係る生理用ショーツは、以下の実施の態様を含む。
(1)前記ショーツ本体の前記下側部分には防水布が配置されていて、前記防水布は、前記後身頃において、前記上側部分と前記上側帯体との境界部分まで延びている。
(2)温感シートは、前記防水布の肌対向面側に位置している。
(3)前記防水布は、前記温感シートと互いに重なり合う重複部分において最も幅狭となる形状を有する。
(4)前記上側帯体は、1枚の生地を前記ウエスト開口の縁部において折り曲げて形成される。
(5)前記上側帯体を形成する生地と前記ショーツ本体を形成する身生地とは、含有率90%以上のオーガニックコットンを含む。
(6)前記上側帯体を形成する生地は、前記横方向へ互いに間隔を空けて配置され、かつ、前記縦方向へ延びる複数条のリブを有する。
(7)境界部分において、前記上側帯体と前記ショーツ本体の前記上側部分とが互いに重なり合って接合されていて、前記上側帯体は前記上側部分の肌対向面側に位置する。
(8)上側帯体と前記ショーツ本体とは、異なる編み地から形成される。
(9)前記股下域から前記後身頃に延びる縦断弾性体を有し、前記縦断弾性体の端部は、前記境界部分に位置する。
(10)上側帯体の前記縦方向の長さ寸法が、前記上側部分の前記縦方向の長さ寸法の1.0~1.5倍の大きさである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る生理用ショーツにおいては、ショーツ本体から上方に延びる上側帯体を有することから、着用者の腹部全体を温めて生理痛を緩和することができる。また、上側帯体は、ショーツの上側部分よりも横方向に伸び易く、上側部分は下側部分よりも横方向に伸び易いことから、着用状態においても、容易に生理用ナプキンの交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る、着用状態における生理用ショーツを正面から視た斜視図。
【
図6】(a)
図4の一点鎖線VI(a)で囲んだ領域の拡大平面図。(b)
図4の一点鎖線VI(b)に沿う拡大断面図。
【
図7】(a)着用状態における生理用ショーツを斜め前方から視た斜視図。(b)着用状態における生理用ショーツを斜め後方から視た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記の実施の形態は、
図1~
図8に示す生理用ショーツ10に関し、発明の不可欠な構成ばかりではなく、選択的及び好ましい構成を含む。説明の便宜上、各図において、温感シート81,82には薄黒色、防水布70には網掛けを付している。
【0013】
図1~
図6を参照すると、本発明の生理用ショーツの一例として示す、生理用ショーツ10は、縦方向Y及び横方向Xと、着用状態における前後方向Zとを有し、ウエスト開口3及び一対のレッグ開口4と、前身頃11と、後身頃12と、前後身頃11,12間に位置する股下域13とを有する。股下域13は、説明の便宜上、一対の横断縫合ライン45,46間に位置している。生理用ショーツ10は、その縦方向Xの長さ寸法を2等分する縦断中心線Pと、横方向Xの長さ寸法を2等分する横中心線Qとをさらに有する。
【0014】
生理用ショーツ10は、着用状態において、着用者の下腹部から臀部までを被覆するショーツ本体20と、ショーツ本体20から上方へ延出して着用者の胴回りに腹巻状に配置される上側帯体30とを含む。ショーツ本体20と上側帯体30とは、横方向Xに延びる境界縫着ライン(境界部分)41において互いに連結されている。生理用ショーツ10は、上側帯体30を有することによって、ショーツ本体20とともに着用者の腹部全体を被覆して温めることができ、生理痛を緩和させることができる。
【0015】
ショーツ本体20は、説明の便宜上、股下域13が位置する下側部分21と、下側部分21と上側帯体30との間に位置する上側部分22とに区分される。上側帯体30とショーツ本体20の上側部分22とが互いに重なり合って縫合された境界縫着ライン41には、環状に延びる境界弾性体63が配置されている。
【0016】
前身頃11は、上側帯体30の前側部分30Aとショーツ本体20の上側部分22のうちの前側部分22A、後身頃12は、上側帯体30の後側部分30Bとショーツ本体20の上側部分22のうちの前側部分22Aからそれぞれ形成されている。また、前身頃11の両側縁11c,11dは、上側帯体30の前側部分30Aの両側縁とショーツ本体20の上側部分22のうちの前側部分22Aの両側縁とから形成され、後身頃12の両側縁12c,12dは、上側帯体30の後側部分30Bの両側縁とショーツ本体20の上側部分22のうちの後側部分22Bの両側縁とから形成されている。
【0017】
前身頃11の両側縁11c,11dと後身頃12の両側縁11c,11dとが、縦方向Yへ延びる縦断縫着ライン(縫着ライン)42によって互いに接合されることによって、ウエスト開口3と一対のレッグ開口4とが画成される。前身頃11の両側縁11c,11dと後身頃12の両側縁12c,12dとは、それらの外面どうしが互いに接した状態で縦断縫着ライン42を介して接合されることによって、縦断縫着ライン42は、ショーツ本体20及び上側帯体30の内面側に位置している。
【0018】
ショーツ本体20は、ショーツ本体20の外形を形成する身生地50を有する。身生地50は、前身頃11側の外面を形成する前ウエスト生地51と、後身頃12側の外面を形成する後ウエスト生地52と、股下域13の外面を形成する股下生地53とを有する。股下生地53は、前身頃11側に位置する第1部分と後身頃12側に位置する第2部分とを有し、第1及び第2部分は横断縫着ライン43を介して互いに接合される。
【0019】
上側帯体30は、前側部分30Aを形成する生地と後側部分30Bを形成する生地とからなる帯体生地(生地)31を有する。本実施形態において、上側帯体30は、前側部分30A及び後側部分30Bにおいて、1枚の帯体生地31をウエスト開口3の縁部において折り曲げて形成されている。上側帯体30の前後側部分30A,30Bは、帯体生地31のうちの内面側に位置する内面部分と外面側に位置する外面部分とによって形成され、それらの内部に空間が形成されることによって、着用者の体温に温められた空気が内部空間に滞留して、着用者の胴回りを温めることができる。
【0020】
身生地50と帯体生地31とは、編み組織によって縦方向Yと横方向Xとに伸縮可能な伸縮性生地(ツーウエイストレッチ生地)から形成されており、その材料としては、主として綿糸が用いられ、綿糸とポリウレタン弾性糸等の弾性糸とを混紡したものが好適に使用される。本実施形態においては、綿糸として、無農薬有機栽培(オーガニック)されたコットン繊維を好適に用いることができる。
【0021】
身生地50及び帯体生地31にオーガニックのコットン繊維が含まれていることによって、肌触りが良好になるとともに、着用者に対して天然由来の材料を使用することによる安心感を与えることができる。身生地50と帯体生地31とは、弾性糸の含有率が異なることによって、後記のとおり、伸縮力及びウエスト回り方向(横方向X)への伸び易さが異なる。
【0022】
身生地50と帯体生地31とに含まれるオーガニックコットンの含有率は90%以上であることが好ましい。オーガニックコットンの含有率が90%以上であることによって、合成繊維のみから形成された生地や含有率の低いオーガニックコットンを含む生地を用いる場合に比べて、生理用ショーツ10は、全体として肌に優しく、かぶれを生じ難いといえる。
【0023】
生理用ショーツ10は、ウエスト開口3を画成する環状のウエスト弾性域61と、レッグ開口4を画成するレッグ弾性域62とをさらに有する。ウエスト開口3の開口縁部とレッグ開口4の開口縁部とがそれぞれウエスト弾性域61とレッグ弾性域62とによって形成されていることによって、各開口縁部は着用者の身体にフィットされる。
【0024】
また、生理用ショーツ10は、ショーツ本体20に上側帯体30が連結されることで、前後身頃11,12の縦寸法が比較的に大きくなってウエスト開口3とレッグ開口4との間がダブついて身体から離間するおそれがあるところ、それらの間に境界弾性体63が位置することによって、生理用ショーツ10全体を身体にフィットさせることができる。
【0025】
ウエスト弾性域61は、帯体生地を2つに折り曲げて形成された折曲部分の内部において、伸長状態で収縮可能に配置されたウエスト弾性体64を有する。レッグ弾性域62は、レッグ開口4に沿って環状に延びるレッグ弾性体65から形成されている。レッグ弾性体65は、身生地50の内面に伸長状態で収縮可能に取り付けられている。
【0026】
境界弾性体63、ウエスト弾性体64及びレッグ弾性体65とは、糸状、テープ状またはリボン状のゴムやウレタン、伸縮性繊維不織布等の弾性材料から形成される。
【0027】
図2及び
図5を参照すると、ショーツ本体20は、股下域13から後身頃12側へ延びる防水布70を有する。防水布70は、身生地50の内面に縫合ラインを介して接合される。防水布70は、後身頃12において上側帯体30と上側部分22の後側部分22Bとの境界縫着ライン(境界部分)41まで延びていて、股下域13から後方へ向かうにつれて次第に幅狭となる形状を有する。防水布70は、股下域13に位置する幅広部分71と、幅広部分71から後方へ延びる幅狭部分72とを有する。ショーツ本体20の股下域13及び後身頃12側に防水布70が配置されることによって、特に就寝時において、股下域13及びそこから着用者の背中側へ拡がった体液が漏れるのを抑制することができる。
【0028】
また、ショーツ本体20の内面側には、縦断中心線Pに沿うように股下域13から後身頃12まで延びる縦断弾性体75が配置されている。縦断弾性体75は、身生地50と防水布70との間に介在して位置している。縦断弾性体75は、ウエスト弾性体64等と同様の弾性材料から形成されており、一方端部75Aが境界縫着ライン41を介して後ウエスト生地52に固定され、他方端部75Bが横断縫着ライン43を介して股下生地53に固定されることによって、縦方向Yへ伸長状態で収縮可能に取り付けられる。
【0029】
縦断弾性体75の一方端部75Aが、境界縫着ライン41に位置し、境界弾性体63と連結されることで、着用時にショーツ本体20がずり下がるのを抑制することができる。また、着用者の腹部は背部に比して丸みのある形状であることから、着用中にずり下がり易いところ、縦断弾性体75が、前身頃11に配置されていないことによって、縦断弾性体75の収縮力によって前身頃11の下方へのずり下がりを抑制することができる。
【0030】
縦断弾性体75は、縦方向Yへ帯状に連続的に延びているが、断続的に延びていてもよい。また、縦断弾性体75は、股下域13を縦断するように横断縫合ライン45からさらに横断縫合ライン46まで連続的に延在していてもよい。縦断弾性体75は、防水布70と後記の第1及び第2温感シート(温感シート)81,82との外面側に位置することによって、その伸長応力によって防水布70と第1及び第2温感シート81,82とを身体に押し当てることができる。特に、縦断弾性体75の肌面側に第1及び第2温感シート81,82が位置することによって、第1及び第2温感シート81,82が肌に当接して確実に身体を温めることができる。
【0031】
図5を参照すると、股下域13には、股下生地の内面に固定された当て布77が配置される。当て布77は、横方向Xへ延びる前後端部と、前後端部間において縦方向Yへ延びる両側縁部とを有する。当て布77の前後端部は、一対の横断縫合ライン45,46を介して股下生地53に固定されている。また、当て布77の両側縁部は、股下生地に固定されておらず、前後端部を除く部分は股下生地53に固定されていない、フリー(非固定)の状態にある。当て布77は、内外面側に位置する2枚のシートから構成されていて、外面側(非肌対向面側)には、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維及びアクリル繊維等の合成繊維からなる防水加工された編地を用いることが好ましい。
【0032】
図示していないが、生理用ショーツ10の着用時において、当て布77には、生理用ナプキンを取り付けることができる。具体的には、生理用ナプキンの非肌対向面を当て布77に宛がった状態で翼部を折り曲げて防水布と当て布77との間に挿し入れて、翼部の肌対向面側に位置する粘着部分を介して当て布77の非肌対向面に取り付けることによって、生理用ショーツ10に生理用ナプキンを安定的に固定することができる。当て布77は、その前後端部を除いてフリーであるので、股下域13において吊持された状態となり、生理用ナプキンを着用者の身体の動きに追従させるように移動させることができ、経血の漏れを効果的に防止することができる。
【0033】
図2~
図4を参照すると、前身頃11の中間域の内面には、前後身頃11,12の両側縁部が互いに接合される縦断縫着ライン42間において横方向Xへ延びる第1温感シート(温感シート)81が配置されている。第1温感シート81は、横方向Xへ延びる上下端縁部と、上下端縁部間において縦方向Yへ延びる両側縁部とからなる外周縁部を有する。第1温感シートは81、外周縁部81aにおいてのみ前ウエスト生地51に固定されている。
【0034】
後身頃12の中間域の内面には、前後身頃11,12の両側縁部が互いに接合される縦断縫着ライン42間において横方向Xへ延びる第2温感シート(温感シート)82が配置されている。第2温感シート82は、横方向Xへ延びる上下端縁部と、上下端縁部間において縦方向Yへ延びる両側縁部とからなる外周縁部を有する。第2温感シート82は、外周縁部82aにおいてのみ後ウエスト生地52及び防水布70に固定されている。
【0035】
第1及び第2温感シート81,82は、編み組織によって縦方向Yと横方向Xとに伸縮可能な伸縮性生地(ツーウエイストレッチ生地)から形成されており、着用したときに着用者の身体を温めることのできる温感素材が使用される。繊維材料として使用される温感素材としては、例えば、粉末状のセラミックを練り込んだ遠赤外線放射効果を有する繊維、発熱紛体、例えば、熱、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等の被酸化性金属を練り込んだ発熱効果を有する繊維、ウール、ガラス繊維や木材パルプ繊維等の断熱効果や吸湿発熱効果を有する繊維のいずれかの繊維を用いることができる。発熱効果を生じる被酸性金属を錬り込んだ繊維を使用する場合には、発熱反応を促進するための酸素保持/供給剤として、活性炭、カーボンブラック、黒鉛、ゼオライト等をともに繊維に練り込むことが好ましい。
【0036】
本実施形態においては、第1及び第2温感シート81,82の温感素材として、20~40℃の低温でも遠赤外線を効率良く放射することのできるアルミナ系セラミックやジルコニウム系セラミック等からなる高純度の超微粒子セラミックを繊維1本ごとの内部に練り込んだ遠赤外線繊維を用いている。また、遠赤外線繊維とともに、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム等の複数の微量金属元素と活性炭等の有機植物炭化材とを組み合わせた複合構造材ともいえる蓄熱性繊維を併せて使用することが好ましい。
【0037】
第1及び第2温感シート81,82は、遠赤外線繊維が着用者の身体から放出された遠赤外線を吸収して身体へ輻射することで身体をより温めることができる遠赤外線保温機能を有することに加えて、蓄熱性繊維が身体から放出された遠赤外線を効率的に吸収して遠赤外線繊維に到達させることによって、より多くの遠赤外線が輻射することのできる蓄熱保温機能を備える。したがって、遠赤外線繊維のみを用いた従来の温感シートや断熱効果や吸湿発熱効果を生じる繊維のみを用いた従来の温感シートに比べて保温性に優れ、身体をより内部まで温めることができるといえる。また、多孔質の蓄熱性繊維を有することによって、消臭効果や除湿効果等の副次的効果も発生しうる。
【0038】
かかる保温作用を有する温感シート81,82が生理用ショーツ10の内面全体に配置されていた場合や身生地50自体に遠赤外線繊維が使用されていた場合には、温感シート81,82の通気性が低く、かつ、広い範囲で身体が温められることで発汗作用が促されて、生理用ショーツ10の内部が蒸れてしまうおそれがある。また、特に、本実施形態に係る生理用ショーツ10において、ウエスト弾性域61やレッグ弾性域62の位置する股下域13に温感シート81,82を配置する場合には、内部の蒸れとともに弾性域の伸縮作用によって肌にゴム痕が付き易くなって、肌がカブレたりして肌トラブルを生じるおそれがある。
【0039】
本実施形態においては、第1及び第2温感シート81,82は、それぞれ、前後身頃11,12においてショーツ本体20の上側部分22に配置されている。第1及び第2温感シート81,82が上側部分22にのみ配置されていて上側帯体30及び下側部分21に配置されていない場合には、生理用ショーツ10の内面全体が温められて内部の蒸れを生じたり、ウエスト弾性域61及びレッグ弾性域62においてゴム痕が付いたり、肌がかぶれるのを抑制することができる。
【0040】
図7(a)を参照すると、生理用ショーツ10の着用状態において、第1温感シート81は、前身頃11において局所的に着用者の腹部の子宮と対向する位置に配置されており、着用者の子宮を遠赤外線効果によって温めて生理痛を緩和することができる。また、第2温感シート82は、後身頃12において局所的に着用者に背部の仙骨近傍と対向する位置に配置されており、着用者の仙骨近傍を遠赤外線効果によって温めて生理に伴う腰痛を緩和することができる。
【0041】
第1温感シート81が前身頃11の上側部分22の後側部分22Aにのみ配置され、かつ、第2温感シートが後身頃12の上側部分22の後側部分22Bにのみ配置されていることによって、縦断縫着ライン42を介して身生地50とともに、第1温感シート81の両側縁部と第2温感シート82の両側縁部とが、少なくとも部分的に互いに重なるように接合されている。このように、第1温感シート81の両側縁部と第2温感シート82の両側縁部とが互いに連結されることによって、ウエスト周り方向へ延びる環状の温帯域が形成されるので、腹部又は背部のみを温める場合に比べて、着用者の子宮と仙骨近傍とを含めた腹部及び背部の一部を環状に温めて生理痛をより効果的に緩和することができる。
【0042】
ただし、第1及び第2温感シート81,82は、所要の生理痛緩和の効果を生じる限りにおいて、両方又は少なくとも一方が生理用ショーツ10の内面に配置されていればよく、例えば、第2温感シート82のみが後身頃12の内面に配置され、第1温感シート81が前身頃11の内面に配置されていなくてもよい。特に、女性は生理時に腹痛よりも腰痛に悩まされることが多いことから、前後身頃11,12の一方にのみ温感シート81,82を配置する場合には、後身頃12にのみ配置することが好ましい。
【0043】
既述のとおり、第1及び第2温感シート81,82は、外周縁部81a,82aにおいてのみ身生地50及び防水布70に固定されており、外周縁部81a,82aに囲まれた領域には、身生地50から離間してなる内部空間S1,S2が画成される。第1及び第2温感シート81,82と身生地50及び防水布70との間に内部空間S1,S2が形成されることによって、遠赤外線効果によって温められた空気が内部空間S1,S2に滞留する。温度の高い空気が内部空間に滞留して横方向Xに拡がることから、第1及び第2温感シート81,82の遠赤外線の輻射効果と相俟って、着用者の子宮及び仙骨近傍を広い範囲でかつより長時間、高い温度で温めてより効果的に生理痛を緩和することができる。
【0044】
図6(a)を参照すると、上側帯体30を形成する帯体生地31は、構成糸をリブ織りして形成されたものであって、横方向Xへ間隔を空けて配置され、かつ、縦方向へ延びる複数条のリブ33を有する。
【0045】
生理用ショーツ10は、ショーツ本体20と上側帯体30とから構成されて比較的に広い範囲で着用者の下半身を覆うことで内部が蒸れ易くなるが、上側帯体30を形成する帯体生地31が複数条のリブ33を有することによって、リブ33とリブ33との間に形成された凹部34を介してウエスト開口3から内部の空気を放出するとともに外部の空気を内部に取り込みやすくなり、生理用ショーツ10内が蒸れて肌がかぶれたりするのを抑制することができる。
【0046】
また、上側帯体30が複数のリブ33を有することによって、肌との接触面積が減少することから、入浴後に着用者の身体が濡れている状態で着用する場合であっても、上側帯体30が身体に密着して引き上げ難くなることはなく、スムーズに着用操作を行うことができる。
【0047】
図6(b)を参照すると、境界縫着ライン41において、上側帯体30を形成する帯体生地31は、ショーツ本体20の上側部分22を形成する身生地(後ウエスト生地52)50の肌対向面側に位置している。境界縫着ライン41において、上側帯体30が上側部分22の非肌対向面側に位置する場合には、股下域13から前後身頃11,12側へ伝った体液が上側部分22の上端縁25を超えやすく上側部分22と上側帯体30との隙間から外部に漏れてしまうおそれがあるところ、上側帯体30が上側部分22の肌対向面側に位置することで、かかる事態を避けることができる。
【0048】
図7(a),(b)を参照すると、着用状態において、生理用ショーツ10は、着用者の胴回りを被覆する上側帯体30を備えるとともに、ショーツ本体20が仙骨から下腹部に掛けて配置された第1温感シート81とそれに対向して位置して第2温感シート82とを有することによって、着用者の腹部全体及び背部を効果的に温めて生理痛を柔らげることができる。
【0049】
一方で、生理用ショーツ10は、ショーツ本体20から上方へ延びる上側帯体30を有して前後身頃11,12の両側縁の縦寸法Yが比較的に大きいことから、着用状態において、股下域13の当て布77に取り付けられた生理用ナプキンを使用後に新しいものと交換するときに、上側帯体30が比較的に伸び難い場合には、ウエスト開口3を拡げ難く、身体と生理用ショーツとの間に手を差し入れて交換を容易に行うことができない。
【0050】
本実施形態においては、上側帯体30がショーツ本体20の上側部分22よりも横方向X(胴回り方向へ)に伸び易く、かつ、上側部分22は下側部分21よりも横方向X(胴回り方向へ)伸び易くなっている。これによって、上側帯体30は、着用時において身体の適正な位置からずり下がらない程度の伸縮力を有しつつ、生理用ナプキンの交換時において横方向へ伸び易く、ウエスト開口3を大きく拡げた状態で交換作業を行うことができる。
【0051】
また、上側部分22が下側部分21よりも横方向Xに伸び易いことから、上側帯体30とともに上側部分22を拡げることができる一方、相対的に下側部分21が伸び難くなっていることから、上側部分22とともに横方向Xへ拡げられてその形状が崩れてウエスト開口3から覗いても生理用ナプキンが視認できなかったり、生理用ナプキン自体がよれたりすることがなく、安定して生理用ナプキンの取り外し・取り付けを行うことができる。なお、ショーツ本体20と上側帯体30との横方向Xにおける伸び易さは、後記の測定方法によって測定した横方向Xの引張強度によって確認することができる。
【0052】
このように、生理用ショーツ10は、上方から下方へ向かって次第に横方向へ伸び難くなっていることから、上側帯体30を備えることによって、トイレ等で着脱がし難そうなイメージを着用者に与えるおそれがあるところ、上側帯体30が横方向Xに伸び易いことからかかる懸念を解消させることができるとともに、下側部分21で身体にしっかりとホールドされて、生理用ナプキンが身体にフィットすることから、夜間の睡眠中であっても体液が横漏れしないという安心感を与えることができる。
【0053】
上側帯体30の縦方向Yの長さ寸法L1は、ショーツ本体20の上側部分22の縦方向Yの長さ寸法L2の1.0~1.5倍の大きさである。長さ寸法L1,L2は、例えば、
図8示すように、生理用ショーツ10を股下域13を横断する横断中心線Qを介して前側の内面と後側の内面とが互いに当接するように2つ折りにした状態において、定規等の測定具で測定することができる。上側帯体30の縦方向の寸法L1が相対的に大きすぎる場合には、身体を広い範囲で覆って温めることができる一方、生理用ナプキンの交換時において、ウエスト開口3から股下域13までの距離が長くなって交換作業がし難くなる。本実施形態においては、長さ寸法L1と長さ寸法L2がかかる相関関係にあることから、上側帯体30によって腹部を温めることができるとともに、上側帯体30が相対的に長くなりすぎて、生理用ナプキンの交換作業がし難くなることはない。
【0054】
図4及び
図7(b)を参照すると、防水布70の幅狭部分72は第2温感シート82と交差していて、防水布70は第2温感シート82と互いに重なり合う重複部分において最も幅狭となる形状を有しているといえる。このように、防水布70における第2温感シート82と重複する部分の面積が比較的に小さくすることで、通気性の低い防水布70と第2温感シート82とが互いに重なることによる生理用ショーツ10内の蒸れの発生を抑制することができる。
【0055】
図示していないが、上側帯体30とショーツ本体20とは異なる色合いを有することが好ましい。かかる場合には、着用前に、着用者に対して、生理用ショーツ10がショーツ本体20から上方に延びる上側帯体30を備えることを視覚によって認識させ、腹部全体が温められて生理痛が緩和される効果があることを知らせることができる。なお、帯体生地31と身生地50を同じ色の糸で形成した場合であっても、帯体生地31をリブ織り、身生地50を平織りによって形成し、すなわち、異なる編み地を用いることで色合いが異なるように見え、上記の効果を奏しうるといえる。また、帯体生地31の糸と身生地50の糸とを異なる色に着色してもよい。
【0056】
<引張強度の測定方法>
図8を参照すると、生理用ショーツ10の各域における横方向Xの引張強度(伸び難さ)は、デジタルフォースゲージ100(日本電産シンポ株式会社製:SHIMPO FGP-2)を用いて以下の方法によって、測定した。
図8は、上側帯体30の測定の様子を示しているが、上側部分22と下側部分21についても順次、同様の測定を行った。
【0057】
生理用ショーツ10の測定台110に平置きして、生理用ショーツ10を股下域13を横断する横断中心線Qを介して前側の内面と後側の内面とが互いに当接するように2つ折りにした。次に、測定の対象となる各域(前側部分30Aと後側部分30Bとからなる上側帯体30、前側部分22Aと後側部分22Bとからなるショーツ本体20の上側部分22、及び前側部分21Aと後側部分21Bとからなる下側部分21)の側縁部をダブルクリップ120のクリップ部121で挟んだ。ダブルクリップ120のクリップ部121の内面には、クリップ部121の幅寸法(30mm幅)に合わせてカットした滑り止めテープ(3M社製、「Safty-walk typeSB黄色」)130を貼付した。
【0058】
次に、ダブルクリップ120のレバー部122にデジタルフォースゲージ100の先端に位置するフックを引っ掛けて、0.3N程度の引張力が掛けられた状態をスタート位置(0mm)とした。測定者が片方の手で生理用ショーツ10のダブルクリップ120が取り付けられた側縁部とは反対側の側縁部を押さえながら、もう一方の手でデジタルフォースゲージ100を生理用ショーツと離間する方向へ移動させて、スタート位置から20mm、50mm離間した位置の測定値(N)を読み取った。なお、離間寸法は、載置台に配置した定規で測定した。測定は4回行い(N=4)、その平均値を各域の引張強度とした。以下の表1は、測定した結果を示したものである。
【0059】
【0060】
表1に示すとおり、測定の結果、上側帯体30の離間寸法20mm、50mmの場合の横方向Xにおける引張強度は、それぞれ2.4N、5.1Nであったのに対し、ショーツ本体20の上側部分22の離間寸法20mm、50mmの横方向Xにおける引張強度は、3.1N、6.2Nであった。したがって、上側帯体30よりもショーツ本体20の横方向Xの引張強度が高い(横方向Xに拡げ難い)といえる。また、下側部分21の離間寸法20mmにおける横方向Xの引張強度は、18.0Nであった。
【0061】
したがって、下側部分21(股下域13)の横方向Xの引張強度は、ショーツ本体20の上側部分22の横方向Xの引張強度よりも高いといえる。なお、下側部分21は、測定において、スタート位置から50mmまで引っ張ることができなかったために、離間寸法50mmにおける引張強度は測定不能であった。このような測定結果から、上側帯体30はショーツ本体20の上側部分22よりも横方向に伸び易く、上側部分22は下側部分21よりも横方向に伸び易いといえる。
【0062】
生理用ショーツ10を構成する部材には、特に明記されていない限りにおいて、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている公知の材料を制限なく用いることができる。また、本明細書において使用されている「第1」及び「第2」等の用語は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いてある。
【符号の説明】
【0063】
3 ウエスト開口
4 レッグ開口
10 生理用ショーツ
11 前身頃
12 後身頃
13 股下域
20 ショーツ本体
21 ショーツ本体の下側部分
22 ショーツ本体の上側部分
30 上側帯体
31 帯体生地(生地)
33 リブ
50 身生地
70 防水布
81 第1温感シート(温感シート)
82 第2温感シート(温感シート)
L1 上側帯体の縦方向Yの長さ寸法
L2 ショーツ本体の上側部分の縦方向Yの長さ寸法
X 横方向
Y 縦方向