(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】医療用編組チューブアッセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20230328BHJP
【FI】
A61M25/00 506
A61M25/00 620
(21)【出願番号】P 2019179828
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡部 考信
(72)【発明者】
【氏名】工藤 紀美香
(72)【発明者】
【氏名】小室 隆徳
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-19851(JP,A)
【文献】特開2017-18278(JP,A)
【文献】特表2019-503216(JP,A)
【文献】特開2000-245851(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103599(WO,A1)
【文献】米国特許第4806182(US,A)
【文献】中国実用新案第202366306(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状の内側樹脂層、前記内側樹脂層の周囲に素線を編組して構成された編組線、及び、前記内側樹脂層及び前記編組線の周囲を覆うように設けられた外側樹脂層を有する編組チューブと、
前記編組チューブの一端に設けられたコネクタと、を備え、
前記コネクタは、前記編組チューブの一端を収容するチューブ収容部を有し、前記チューブ収容部に収容した前記編組チューブと前記コネクタとを接着剤により接着固定するように構成され、
前記接着剤は、前記編組チューブの端面において、前記編組線を全周にわたって封止するように設けられている
と共に、前記内側樹脂層と前記編組線と前記外側樹脂層とにわたって設けられている、
医療用編組チューブアッセンブリ。
【請求項2】
前記コネクタは、前記編組チューブを流通する作動流体を通すための流路を有し、
前記流路の一端部に、前記編組チューブの一端を収容する前記チューブ収容部が形成されており、
前記接着剤は、前記流路の内周面と前記編組チューブの端面とにわたって設けられている、
請求項
1に記載の医療用編組チューブアッセンブリ。
【請求項3】
前記流路は、前記チューブ収容部と、前記チューブ収容部と連通され、その前記チューブ収容部側の端部が、前記チューブ収容部よりも内径が小さく、かつ前記編組チューブの内径よりも内径が大きく形成された液流通路と、を有し、
前記チューブ収容部の内周面と前記液流通路の内周面との間に前記編組チューブの過挿入を抑制するための段差が形成されており、
前記接着剤は、前記液流通路の内周面と前記編組チューブの端面とにわたって設けられている、
請求項
2に記載の医療用編組チューブアッセンブリ。
【請求項4】
前記チューブ収容部の内周面は、前記編組チューブの挿入側から前記液流通路側にかけて内径が徐々に小さくなるテーパ状に形成されており、
前記チューブ収容部の前記液流通路側の端部における内径が、前記編組チューブの外径よりも小さい、
請求項
3に記載の医療用編組チューブアッセンブリ。
【請求項5】
前記接着剤が紫外線の照射により硬化する紫外線硬化樹脂であり、
前記コネクタは、紫外線を透過する材質からなる、
請求項
1から4の何れか1項に記載の医療用編組チューブアッセンブリ。
【請求項6】
チューブ長手方向に垂直な断面において、前記編組線の前記素線の周囲に形成された空隙の幅が、30μm以下である、
請求項
1から5の何れか1項に記載の医療用編組チューブアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用編組チューブアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、経皮的冠動脈形成術(PTCA)や経皮的血管形成術(PTA)において、拡張用バルーンカテーテルを拡張、収縮させるインデフレーター等に用いられる耐圧チューブとして、編組チューブが用いられている。編組チューブの端部には、拡張用バルーンカテーテル等との接続のためにコネクタが設けられている。以下、編組チューブの端部にコネクタを設けたものを医療用編組チューブアッセンブリと呼称する。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のインデフレーターでは、血圧に対抗して拡張用バルーンカテーテルを拡張させるために、医療用編組チューブアッセンブリの内部を流通する作動流体に高い圧力が付与される。そのため、医療用編組チューブアッセンブリには、高い耐圧性が要求される。
【0006】
そこで、本発明は、耐圧性の向上を図った医療用編組チューブアッセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、中空筒状の内側樹脂層、前記内側樹脂層の周囲に素線を編組して構成された編組線、及び、前記内側樹脂層及び前記編組線の周囲を覆うように設けられた外側樹脂層を有する編組チューブと、前記編組チューブの一端に設けられたコネクタと、を備え、前記コネクタは、前記編組チューブの一端を収容するチューブ収容部を有し、前記チューブ収容部に収容した前記編組チューブと前記コネクタとを接着剤により接着固定するように構成され、前記接着剤は、前記編組チューブの端面において、前記編組線を全周にわたって封止するように設けられている、医療用編組チューブアッセンブリを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐圧性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る医療用編組チューブアッセンブリを用いたインデフレーターの平面図である。
【
図2】(a)は編組チューブのチューブ長手方向に垂直な断面を示す断面図、(b)はそのA部拡大図である。
【
図3】
図2の編組チューブにおいて、編組線の素線が径方向に重なる位置の断面を拡大した図である。
【
図4】(a)はコネクタと編組チューブとの接続部分の断面図であり、(b)はそのB部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
(編組チューブを用いたインデフレーターの説明)
図1は、本実施の形態に係る医療用編組チューブアッセンブリを用いたインデフレーターの平面図である。インデフレーター10は、経皮的冠動脈形成術(PTCA)や経皮的血管形成術(PTA)において、拡張用バルーンカテーテルを拡張、収縮させるためのものである。
【0012】
図1に示すように、インデフレーター10は、造影剤等の作動流体を送出あるいは吸引する所謂プランジャポンプ(あるいはピストンポンプ)であり、シリンダ11と、プランジャ(あるいはピストン)12と、シリンダ11内の作動流体の圧力を検出する圧力計13と、を有している。
【0013】
インデフレーター10において、作動流体の吐出、あるいは吸引を行う液出入口14には、編組チューブ1の一端が接続される。編組チューブ1の他端には、コネクタ(ルアーコネクタ)15が設けられている。本実施の形態では、コネクタ15には、図示しない拡張用バルーンカテーテルが接続される。編組チューブ1の端部にコネクタ15を設けたものが、本実施の形態に係る医療用編組チューブアッセンブリ100である。
【0014】
インデフレーター10では、プランジャ12を進退させることで、作動流体の加圧・減圧を行い、拡張用バルーンカテーテルを拡張、収縮させる。この際、例えば、医療用編組チューブアッセンブリ100内に気泡が混入されていると、作動流体の加圧・減圧が意図通りに行われず、拡張用バルーンカテーテルが意図しない動作を行うおそれがある。また、作動流体としては、透明な液体が用いられる場合もあるため、医療用編組チューブアッセンブリ100では、その内部を流通している透明な液体、及び当該液体に含まれる気泡の外形が視認できる程度の高い透明度が要求される。また、作動流体を加圧した際に編組チューブ1の一部が膨張したり、コネクタ15と編組チューブ1との接続部でリーク等が生じたりすると、作動流体の加圧が意図通りに行われず、拡張用バルーンカテーテルが意図しない動作を行うおそれがあるため、医療用編組チューブアッセンブリ100には、高い耐圧性が要求される。
【0015】
(編組チューブ1の説明)
まず、医療用編組チューブアッセンブリ100における編組チューブ1の詳細について説明する。
図2は、本実施の形態に係る編組チューブを示す図であり、(a)はチューブ長手方向に垂直な断面を示す断面図、(b)はそのA部拡大図である。
【0016】
図2に示すように、編組チューブ1は、中空筒状の内側樹脂層2と、内側樹脂層2の周囲に素線3aを編組して構成された編組線3と、内側樹脂層2及び編組線3の周囲を覆うように設けられた外側樹脂層4と、を備えている。
【0017】
内側樹脂層2及び外側樹脂層4は、可視光を透過する部材からなる。本実施の形態では、内側樹脂層2及び外側樹脂層4は、熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)からなる。以下、内側樹脂層2と外側樹脂層4をまとめて樹脂層5と呼称する。本実施の形態では、樹脂層5の内径(内側樹脂層2の内径)を1.70mm以上1.90mm以下とし、樹脂層5の外径(外側樹脂層4の外径)を3.50mm以上3.70mm以下とした。樹脂層5全体での厚さは、0.80mm以上1.00mm以下である。
【0018】
外側樹脂層4は、編組線3の素線3a同士の隙間に入り込み、素線3aの周囲にできるだけ隙間無く密着するように形成されている(この点についての詳細は後述する)。また、外側樹脂層4と内側樹脂層2とは、外側樹脂層4を成形する際の熱により溶着し一体化されている。外側樹脂層4の成形の際に外側樹脂層4と内側樹脂層2とが溶着し一体となるように、外側樹脂層4を構成する樹脂の融点は、内側樹脂層2を構成する樹脂の融点以上であるとよい。
【0019】
編組線3の素線3aとしては、ナイロンからなるものを用いる。また、編組線3の素線3aとしては、編組チューブ1の透明度を高めるために、非着色のものを用いるとよい。非着色のナイロンは、可視光を透過する透明な部材である。なお、
図2(a),(b)では、素線3aの断面形状が楕円形状となっているが、これはチューブ長手方向に対して傾斜する方向に沿って素線3aが配置されているためであり、素線3aの長手方向に垂直な断面形状は円形状である。
【0020】
また、編組線3の素線3aの外径は、0.20mm以下であるとよい。これは、編組線3の素線3aが太すぎると編組チューブ1の内部を流通する液体や当該液体に含まれる気泡を視認しにくくなる(つまり透明度が低下する)おそれがあるためである。素線3aの外径を0.20mm以下と細くすることにより、編組線3が目立ちにくくなり、編組チューブ1の内部を流通する透明な液体や当該液体に含まれる気泡を視認し易くなる。本実施の形態では、外径が0.15mmの素線3aを用いた。なお、素線3aが細すぎると耐圧性が低下してしまうおそれがあるため、素線3aの外径は、0.10mm以上であることが望ましい。
【0021】
本発明者らは、編組チューブ1の透明度を高めるべく検討を行ったところ、例えば編組チューブ1をチューブ長手方向に強く引っ張る力を加えた場合に、編組線3が白く目立つ状態となり、編組チューブ1の内部を流通する透明な液体や当該液体に含まれる気泡を視認しにくくなることを見出した。さらに検討を進めたところ、編組線3が白く目立つのは、編組線3の素線3aがその周囲の樹脂層5に対して剥離してしまい、素線3aの周囲に空隙が生じるためであることを見出した。
【0022】
そこで、本実施の形態に係る編組チューブ1では、チューブ長手方向に垂直な断面において、編組線3の素線3aの周囲に形成された空隙6の幅wを、30μm以下とした。なお、空隙6の幅wとは、チューブ長手方向に垂直な断面において、空隙6を挟んで対向する素線3aの外表面と樹脂層5(内側樹脂層2または外側樹脂層4)の最短距離をいう。空隙6の幅wを30μm以下と小さくすることにより、編組線3が目立ちにくくなり、編組チューブ1の透明度が向上する。その結果、編組チューブ1の内部を流通している透明な液体、及び当該液体に含まれる気泡の外形が容易に視認できるようになる。なお、編組チューブ1の透明度をより高めるために、空隙6の幅wを25μm以下とすることがより望ましい。
【0023】
また、編組チューブ1の透明度をより高めるためには、素線3aの外周において空隙6が存在している割合をできるだけ小さくし、素線3aと樹脂層5が密着している割合を高めることがより望ましいといえる。具体的には、チューブ長手方向に垂直な断面において、素線3a全体の外周の長さに対する、空隙6に面した素線3aの外周の長さの割合を、60%以下とすることが望ましい。換言すれば、チューブ長手方向に垂直な断面において、素線3a全体の外周の長さに対する、樹脂層5と密着している素線3aの外周の長さの割合を、40%以上とすることが望ましい。
【0024】
外側樹脂層4を薄くした場合、編組線3の素線3aの有無による凹凸が外側樹脂層4の外表面に転写されて、外側樹脂層4の外表面に凹凸が生じ、編組チューブ1の透明度が低下するおそれがある。そのため、編組線3よりも径方向外方の外側樹脂層4の厚さが、素線3aの外径の2倍以上(編組線3の厚さd1以上)であるとよい。より詳細には、
図3に示すように、編組線3は複数の素線3aを編み合わせて構成されるため、2本の素線3aがチューブ径方向に重なる位置が存在する。この位置において、編組線3よりも径方向外方の外側樹脂層4の厚さd2が、編組線3の厚さd1以上であるとよい。本実施の形態では、編組線3よりも径方向外方の外側樹脂層4の厚さd2を、0.3mm以上とした。
【0025】
また、編組チューブ1の耐圧性を高めるために、樹脂層5の内周面と外周面との同軸度が高いことが望まれる。これは、同軸度が低いと、樹脂層5の一部が薄くなり、当該薄い部分が作動流体に圧力がかかった際に変形する(膨張する)おそれが生じるためである。より具体的には、チューブ長手方向に垂直な断面における樹脂層5の内周面と外周面の同軸度、すなわち、内側樹脂層2の内周面の中心と、外側樹脂層4の外周面の中心との距離が、0.08mm以下であるとよい。
【0026】
さらに、編組チューブ1の耐圧性を高めるために、編組チューブ1の肉厚(内側樹脂層2、編組線3、及び外側樹脂層4の全体での肉厚)はできるだけ均一であることが望まれる。具体的には、編組チューブ1の肉厚の最大値から、編組チューブ1の肉厚の最小値を減じた値が、0.16mm以下であるとよい。
【0027】
(コネクタ15、及びコネクタ15と編組チューブ1との接続構造)
図4(a)は、コネクタ15と編組チューブ1との接続部分の断面図であり、
図4(b)はそのB部拡大図である。
【0028】
図4(a),(b)に示すように、コネクタ15は、編組チューブ1の一端を収容するチューブ収容部161を有し、チューブ収容部161に収容した編組チューブ1とコネクタ15とを接着剤17により接着固定するように構成されている。
【0029】
より詳細には、コネクタ15は、編組チューブ1を流通する作動流体を通すための流路16を有し、流路16の一端部に、編組チューブ1の一端を収容するチューブ収容部161が形成されている。以下、チューブ収容部161以外の部分の流路16を液流通路162と呼称する。
【0030】
液流通路162は、チューブ収容部161と連通されており、そのチューブ収容部161側の端部(後述する第1液流通路162a)は、チューブ収容部161よりも内径が小さく、かつ編組チューブ1の内径よりも内径が大きく形成されている。本実施の形態では、液流通路162のチューブ収容部161側の端部(後述する第1液流通路162a)の内径は、編組チューブ1における編組線3の内径(あるいは内側樹脂層2の外径)よりも大きくなっている。チューブ収容部161の内周面と液流通路162の内周面との間には、編組チューブ1の過挿入を抑制するための段差163が形成されている。
【0031】
本実施の形態では、コネクタ15は、2分割構成となっており、チューブ収容部161及び液流通路162の一部である第1液流通路162aが形成された基部151と、液流通路162の他部である第2流通路162bが形成され、受け側のコネクタ(不図示)と接続される接続部152と、を有している。接続部152の先端部には、第2流通路162を覆う円筒状の内筒152aと、内筒152aと径方向に離間して同軸に設けられた外筒152bと、が形成されている。外筒152bの内周面には、螺旋状にネジ山を形成したネジ部152cが形成されており、このネジ部152cを、受け側のコネクタの端部に設けられたネジ部と螺合することで、コネクタ15と受け側のコネクタとが接続されるように構成されている。接続部152は、基部151の先端部を収容する基部収容部152dを有し、基部収容部152dに基部151の先端部を挿入した状態で、基部151と接続部152とが互いに固定されている。基部151の先端部の外周面にはOリング151aが設けられており、このOリング151aが基部151の外周面と基部収容部152dの内周面との間をシールするように構成されている。なお、コネクタ15の具体的な構造はこれに限定されるものではなく、例えば、二分割構成となっていなくてもよい。
【0032】
本発明者らが検討したところ、作動流体を加圧した際に、コネクタ15と編組チューブ1との接続部において耐圧性が十分に得られず、リークが発生する場合があることが分かった。さらに検討を進めたところ、作動流体を加圧した際に、編組チューブ1の端面における、編組線3と樹脂層5との間の空隙6に作動流体が入りこんでしまう場合があること、及び、空隙6に入りこんだ作動流体が編組チューブ1の変形や破損を引き起こす場合があることを見出した。特に、段差163が小さく、編組チューブ1の端面を段差163に当接させても編組線3が露出してしまう場合(つまり第1液流通路162aの内径が編組線3の内径よりも大きい場合)、あるいは、編組チューブ1の端面が段差163から大きく離間してしまうような場合に、上述の問題が顕著となることが分かった。
【0033】
そこで、本実施の形態に係る医療用編組チューブアッセンブリ100では、編組線3と樹脂層5との間の空隙6に作動流体が入り込むことを抑制するため、編組チューブ1の端面において、編組線3を全周にわたって封止するように接着剤17を設けた。これにより、コネクタ15と編組チューブ1との接続部において耐圧性が向上し、作動流体を加圧した際に、編組チューブ1に変形や破損が生じることを抑制可能になる。
【0034】
接着剤17は、編組チューブ1の端面において、内側樹脂層2と編組線3と外側樹脂層4とにわたって設けられているとよい。また、接着剤17は編組チューブ1をコネクタ15に接着固定する役割、及び編組チューブ1の外周面とコネクタ15間をシールする役割を果たすため、接着剤17は、流路16の内周面と編組チューブ1の端面とにわたって隙間無く設けられているとよい。
【0035】
空隙6が大きいと、作動流体が空隙6に入り込んでしまうおそれが大きくなるため、上述のように、チューブ長手方向に垂直な断面における空隙6の幅wは、30μm以下、より好ましくは25μm以下であるとよい。つまり、空隙6の幅wを30μm以下とすることで、編組チューブ1の透明度を向上するだけでなく、コネクタ15と編組チューブ1との接続部における耐圧性を向上させることも可能である。
【0036】
本実施の形態では、コネクタ15におけるチューブ収容部161の内周面は、編組チューブ1の挿入側から液流通路162側にかけて内径が徐々に小さくなるテーパ状に形成されている。また、チューブ収容部161は、その液流通路162側の端部における内径が、編組チューブ1の外径よりも小さく形成され、編組チューブ1の挿入側の端部が、編組チューブ1の外径よりも大きく形成されている。
【0037】
チューブ収容部161における編組チューブ1の挿入側の端部の内径を、編組チューブ1の外径よりも大きく形成することで、編組チューブ1のチューブ収容部161への挿入が容易になる。さらに、チューブ収容部161における液流通路162側の端部における内径を、編組チューブ1の外径よりも小さく形成することで、編組チューブ1を押し込む際に、編組チューブ1が縮径されるように変形しつつチューブ収容部161へと押し込まれ、編組チューブ1の外周面とチューブ収容部161の内周面とが強固に密着し、耐圧性が向上する。さらに、チューブ収容部161をテーパ状とすることによって、編組チューブ1の外径が多少異なる場合であっても対応可能となり、コネクタ15の汎用性が向上する。
【0038】
本実施の形態では、編組チューブ1は、縮径するように変形されつつチューブ収容部161の奥(段差163の近傍)まで押し込まれており、接着剤17は、液流通路162の内周面と編組チューブ1の端面とにわたってフィレット状に設けられている。なお、編組チューブ1の端面と段差163とは当接していてもよいし、当接していなくてもよい。
【0039】
本実施の形態では、接着剤17は、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化樹脂からなる。また、コネクタ15は、接着剤17に紫外線を照射可能とするため、紫外線を透過する材質からなる。なお、コネクタ15は、可視光を透過する材質からなることがより望ましく、編組チューブ1と同様に、流路16を流通している透明な液体、及び当該液体に含まれる気泡の外形が視認できる程度に透明度が高いことがより望ましい。本実施の形態では、ポリカーボネートからなるコネクタ15を用いた。
【0040】
編組チューブ1の端部にコネクタ15を取り付ける際には、まず、編組チューブ1の端部に接着剤17を塗布する。このとき、編組チューブ1の端面と、編組チューブ1の端部における外周面に、予め設定された量の接着剤17を塗布する。編組チューブ1の端面においては、全周にわたって編組線3を封止する(編組線3の部分を覆う)ように接着剤17が塗布される。その後、接着剤17を塗布した編組チューブ1の端部をコネクタ15のチューブ収容部161に差し込む。この際、編組チューブ1が縮径されつつ段差163の近傍まで押し込まれ、編組チューブ1の端面に塗布された接着剤17が周囲に広がることで、液流通路162の内周面と編組チューブ1の端面とにわたってフィレット状に接着剤17が設けられる。また、編組チューブ1の外周面とチューブ収容部161の内周面間のわずかな隙間に、接着剤17が充填された状態となる。この状態で、光源からコネクタ15に紫外光を照射すると、紫外光がコネクタ15を透過して接着剤17へと到達し、接着剤17が硬化される。以上により、医療用編組チューブアッセンブリ100が得られる。
【0041】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る医療用編組チューブアッセンブリ100では、チューブ収容部161に収容した編組チューブ1とコネクタ15とを接着剤17により接着固定するように構成され、接着剤17は、編組チューブ1の端面において、編組線3を全周にわたって封止するように設けられている。
【0042】
このように構成することで、編組線3と樹脂層5との間の空隙6に作動流体が侵入してしまうことを抑制でき、作動流体を加圧した際に、編組チューブ1に変形や破損が生じることを抑制し、コネクタ15と編組チューブ1との接続部における耐圧性を向上することが可能になる。
【0043】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0044】
[1]中空筒状の内側樹脂層(2)、前記内側樹脂層(2)の周囲に素線(3a)を編組して構成された編組線(3)、及び、前記内側樹脂層(2)及び前記編組線(3)の周囲を覆うように設けられた外側樹脂層(4)を有する編組チューブ(1)と、前記編組チューブ(1)の一端に設けられたコネクタ(15)と、を備え、前記コネクタ(15)は、前記編組チューブ(1)の一端を収容するチューブ収容部(161)を有し、前記チューブ収容部(161)に収容した前記編組チューブ(1)と前記コネクタ(15)とを接着剤(17)により接着固定するように構成され、前記接着剤(17)は、前記編組チューブ(1)の端面において、前記編組線(3)を全周にわたって封止するように設けられている、医療用編組チューブアッセンブリ(100)。
【0045】
[2]前記接着剤(17)は、前記編組チューブ(1)の端面において、前記内側樹脂層(2)と前記編組線(3)と前記外側樹脂層(4)とにわたって設けられている、[1]に記載の医療用編組チューブアッセンブリ(100)。
【0046】
[3]前記コネクタ(15)は、前記編組チューブ(1)を流通する作動流体を通すための流路(16)を有し、前記流路(16)の一端部に、前記編組チューブ(1)の一端を収容する前記チューブ収容部(161)が形成されており、前記接着剤(17)は、前記流路(16)の内周面と前記編組チューブ(1)の端面とにわたって設けられている、[1]または[2]に記載の医療用編組チューブアッセンブリ(100)。
【0047】
[4]前記流路(16)は、前記チューブ収容部(161)と、前記チューブ収容部(161)と連通され、その前記チューブ収容部(161)側の端部が、前記チューブ収容部(161)よりも内径が小さく、かつ前記編組チューブ(1)の内径よりも内径が大きく形成された液流通路(162)と、を有し、前記チューブ収容部(161)の内周面と前記液流通路(162)の内周面との間に前記編組チューブ(1)の過挿入を抑制するための段差(163)が形成されており、前記接着剤(17)は、前記液流通路(162)の内周面と前記編組チューブ(1)の端面とにわたって設けられている、[3]に記載の医療用編組チューブアッセンブリ(100)。
【0048】
[5]前記チューブ収容部(161)の内周面は、前記編組チューブ(1)の挿入側から前記液流通路(162)側にかけて内径が徐々に小さくなるテーパ状に形成されており、前記チューブ収容部(161)の前記液流通路(162)側の端部における内径が、前記編組チューブ(1)の外径よりも小さい、[4]に記載の医療用編組チューブアッセンブリ(100)。
【0049】
[6]前記接着剤(17)が紫外線の照射により硬化する紫外線硬化樹脂であり、前記コネクタ(15)は、紫外線を透過する材質からなる、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の医療用編組チューブアッセンブリ(100)。
【0050】
[7]チューブ長手方向に垂直な断面において、前記編組線(3)の前記素線(3a)の周囲に形成された空隙(6)の幅が、30μm以下である、[1]乃至[6]の何れか1項に記載の医療用編組チューブアッセンブリ(100)。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0052】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、医療用編組チューブアッセンブリ100をインデフレーター10用に用いる場合について説明したが、医療用編組チューブアッセンブリ100の用途はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0053】
1…編組チューブ
2…内側樹脂層
3…編組線
3a…素線
4…外側樹脂層
15…コネクタ
16…流路
161…チューブ収容部
162…液流通路
163…段差
17…接着剤
100…医療用編組チューブアッセンブリ