(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】位置推定装置および位置推定方法
(51)【国際特許分類】
G01S 3/48 20060101AFI20230328BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
G01S3/48
G01S7/02 218
(21)【出願番号】P 2019015109
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋幸
(72)【発明者】
【氏名】並木 一
(72)【発明者】
【氏名】山村 隆介
(72)【発明者】
【氏名】上村 和孝
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 禎央
(72)【発明者】
【氏名】藤島 勇人
(72)【発明者】
【氏名】川手 隆司
(72)【発明者】
【氏名】矢板 信
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-012074(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154748(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/025421(WO,A1)
【文献】特開2017-090229(JP,A)
【文献】特開2017-058359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個の受信素子によって受信する、干渉性を有する信号波の波源位置を推定する位置推定装置であって、
Nを2以上の整数として、前記N個の受信素子は物理的に存在する受信素子
であり、
nを前記N個の受信素子の番号、Kを2以上の整数、kをK個の仮想的な単一波源の番号として、前記N個の受信素子によって前記信号波を受信することにより生成される受信信号x
nを、前記K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号x
n(k)’の合成波信号として近似する第1処理部と、
MをNよりも大きい整数、mを前記N個の受信素子およびM-N個の非実在受信素子の番号として、前記K個の単一波信号x
n(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、前記M-N個の非実在受信素子の単一波信号を生成し、前記N個の受信素子および前記M-N個の非実在受信素子ごとに、
前記N個の受信素子の単一波信号x
n
(k)’および前記M-N個の非実在受信素子の単一波信号を各々含むK個の単一波信号を合成することによって、前記N個の受信素子および前記M-N個の非実在受信素子の合成信号x
m’を生成する第2処理部と、
前記生成した合成信号x
m’を用いて、波源位置として前記波源の方位角度を推定する第3処理部と、
を備え
、
前記N個の受信素子の受信信号x
n
および前記K個の単一波信号x
n
(k)’は、前記N個の受信素子の番号nに対する信号強度であり、
前記第1処理部は、前記N個の受信素子の受信信号x
n
は前記K個の単一波信号x
n
(k)’の合成信号x
n
(k)のk=0のときの合成信号x
n
(0)であると仮定し、
(1)前記N個の受信素子の合成信号x
n
(k)をフーリエ変換することにより、前記信号波の方位角度分布を推定関数Y(k)として生成し、
(2)生成した推定関数Y(k)のピークを形成する単一波信号の成分について前記N個の受信素子の単一波信号x
n
(k)’を生成し、
(3)前記N個の受信素子ごとに、前記合成信号x
n
(k)から、前記単一波信号x
n
(k)’に所定の減算率Mを乗算したM・x
n
(k)’を減算して、前記N個の受信素子の残りの合成信号x
n
(k’)を生成し、
ここで、k’は、kを1だけインクリメントした値であり、
k’=Kとなるまで、残りの合成信号x
n
(k’)に対して、上記(1)~(3)の処理を繰り返すことにより、前記N個の受信素子の受信信号x
n
を、前記K個の単一波信号x
n
(k)’の合成波信号として近似する、
位置推定装置。
【請求項2】
前記第2処理部において、前記M-N個の非実在受信素子の単一波信号の生成数は、前記N個の受信素子の単一波信号x
n(k)’の数の2倍以上である、請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項3】
前記第2処理部は、iをK未満の整数として、前記N個の受信素子および前記M-N個の非実在受信素子ごとに、
前記N個の受信素子の単一波信号x
n
(k)’および前記M-N個の非実在受信素子の単一波信号を各々含むK個の単一波信号を合成することによって、前記N個の受信素子および前記M-N個の非実在受信素子の合成信号x
m’を生成する際、前記K個の単一波信号x
n(k)’およびそれに対応する前記K個の非実在受信素子の単一波信号のうち所定のi個を使用しない、請求項1
または2に記載の位置推定装置。
【請求項4】
前記第1処理部は、(2)前記N個の受信素子の単一波信号x
n(k)’を最初に生成する際、既に前記第3処理部によって前記生成した合成信号x
m’を用いて推定された前記波源の方位角度に基づいて、(2)前記生成した推定関数Y(k)における既に推定された前記波源の方位角度の前記推定関数Y(k)を形成する単一波信号について前記N個の受信素子の単一波信号x
n(k)’を生成する、
請求項
1に記載の位置推定装置。
【請求項5】
受信素子によって受信する、干渉性を有する信号波の波源位置を推定する位置推定装置であって、
前記信号波を時間軸で周波数変化する周波数変調波、前記時間軸を分割したN個の時刻における受信信号をx
n、Nを2以上の整数、nを前記N個の時刻の番号、Kを2以上の整数、kをK個の仮想的な単一波源の番号として、
前記受信素子によって前記信号波を受信することにより生成される前記受信信号x
nを、前記K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号x
n(k)’の合成波信号として近似する第1処理部と、
MをNよりも大きい整数、mを前記N個の時刻およびM-N個の非実在時刻の番号として、前記K個の単一波信号x
n(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、前記M-N個の非実在時刻の単一波信号を生成し、前記N個の時刻および前記M-N個の非実在時刻ごとに、
前記N個の時刻の単一波信号x
n
(k)’および前記M-N個の非実在時刻の単一波信号を各々含むK個の単一波信号を合成することによって、前記N個の時刻および前記M-N個の非実在時刻の合成信号x
m’を生成する第2処理部と、
前記生成した合成信号x
m’を用いて、波源位置として前記波源との距離を推定する第3処理部と、
を備え
、
前記N個の時刻の受信信号x
n
および前記K個の単一波信号x
n
(k)’は、前記N個の時刻の番号nに対する信号強度であり、
前記第1処理部は、前記N個の時刻の受信信号x
n
は前記K個の単一波信号x
n
(k)’の合成信号x
n
(k)のk=0のときの合成信号x
n
(0)であると仮定し、
(1)前記N個の時刻の合成信号x
n
(k)をフーリエ変換することにより、前記波源との距離分布を推定関数Y(k)として生成し、
(2)生成した推定関数Y(k)のピークを形成する単一波信号の成分について前記N個の時刻の単一波信号x
n
(k)’を生成し、
(3)前記N個の時刻ごとに、前記合成信号x
n
(k)から、前記単一波信号x
n
(k)’に所定の減算率Mを乗算したM・x
n
(k)’を減算して、前記N個の時刻の残りの合成信号x
n
(k’)を生成し、
ここで、k’は、kを1だけインクリメントした値であり、
k’=Kとなるまで、残りの合成信号x
n
(k’)に対して、上記(1)~(3)の処理を繰り返すことにより、前記N個の時刻の受信信号x
n
を、前記K個の単一波信号x
n
(k)’の合成波信号として近似する、
位置推定装置。
【請求項6】
前記第2処理部において、前記M-N個の非実在時刻の単一波信号の生成数は、前記N個の時刻の単一波信号x
n(k)’の数の2倍以上である、請求項
5に記載の位置推定装置。
【請求項7】
前記第2処理部は、iをK未満の整数として、前記N個の時刻および前記M-N個の非実在時刻ごとに、
前記N個の時刻の単一波信号x
n
(k)’および前記M-N個の非実在時刻の単一波信号を各々含むK個の単一波信号を合成することによって、前記N個の時刻および前記M-N個の非実在時刻の合成信号x
m’を生成する際、前記K個の単一波信号x
n(k)’およびそれに対応する前記K個の非実在時刻の単一波信号のうち所定のi個を使用しない、請求項
5または6に記載の位置推定装置。
【請求項8】
前記第1処理部は、(2)前記N個の時刻の単一波信号x
n(k)’を最初に生成する際、既に前記第3処理部によって前記生成した合成信号x
m’を用いて推定された前記波源との距離に基づいて、(2)前記生成した推定関数Y(k)における既に推定された前記波源との距離の前記推定関数Y(k)を形成する単一波信号について前記N個の時刻の単一波信号x
n(k)’を生成する、
請求項
5に記載の位置推定装置。
【請求項9】
受信素子によって受信する、干渉性を有する信号波の波源位置を推定する位置推定装置であって、
前記信号波を時間軸でパルス状に強度変化するパルス変調波、前記時間軸を変換した周波数軸を分割したN個の周波数における受信信号をx
n、Nを2以上の整数、nを前記N個の周波数の番号、Kを2以上の整数、kをK個の仮想的な単一波源の番号として、
前記受信素子によって前記信号波を受信することにより生成される前記受信信号x
nを、前記K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号x
n(k)’の合成波信号として近似する第1処理部と、
MをNよりも大きい整数、mを前記N個の周波数およびM-N個の非実在周波数の番号として、前記K個の単一波信号x
n(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、前記M-N個の非実在周波数の単一波信号を生成し、前記N個の周波数および前記M-N個の非実在周波数ごとに、
前記N個の周波数の単一波信号x
n
(k)’および前記M-N個の非実在周波数の単一波信号を各々含むK個の単一波信号を合成することによって、前記N個の周波数および前記M-N個の非実在周波数の合成信号x
m’を生成する第2処理部と、
前記生成した合成信号x
m’を用いて、波源位置として前記波源との距離を推定する第3処理部と、
を備え
、
前記N個の周波数の受信信号x
n
および前記K個の単一波信号x
n
(k)’は、前記N個の周波数の番号nに対する信号強度であり、
前記第1処理部は、前記N個の周波数の受信信号x
n
は前記K個の単一波信号x
n
(k)’ の合成信号x
n
(k)のk=0のときの合成信号x
n
(0)であると仮定し、
(1)前記N個の周波数の合成信号x
n
(k)をフーリエ変換することにより、前記波源との距離分布を推定関数Y(k)として生成し、
(2)生成した推定関数Y(k)のピークを形成する単一波信号の成分について前記N個の周波数の単一波信号x
n
(k)’を生成し、
(3)前記N個の周波数ごとに、前記合成信号x
n
(k)から、前記単一波信号x
n
(k)’に所定の減算率Mを乗算したM・x
n
(k)’を減算して、前記N個の周波数の残りの合成信号x
n
(k’)を生成し、
ここで、k’は、kを1だけインクリメントした値であり、
k’=Kとなるまで、残りの合成信号x
n
(k’)に対して、上記(1)~(3)の処理を繰り返すことにより、前記N個の周波数の受信信号x
n
を、前記K個の単一波信号x
n
(k)’の合成波信号として近似する、
位置推定装置。
【請求項10】
前記第2処理部において、前記M-N個の非実在周波数の単一波信号の生成数は、前記N個の周波数の単一波信号x
n(k)’の数の2倍以上である、請求項
9に記載の位置推定装置。
【請求項11】
前記第2処理部は、iをK未満の整数として、前記N個の周波数および前記M-N個の非実在周波数ごとに、
前記N個の周波数の単一波信号x
n
(k)’および前記M-N個の非実在周波数の単一波信号を各々含むK個の単一波信号を合成することによって、前記N個の周波数および前記M-N個の非実在周波数の合成信号x
m’を生成する際、前記K個の単一波信号x
n(k)’およびそれに対応する前記K個の非実在周波数の単一波信号のうち所定のi個を使用しない、請求項
9または10に記載の位置推定装置。
【請求項12】
前記第1処理部は、(2)前記N個の周波数の単一波信号x
n(k)’を最初に生成する際、既に前記第3処理部によって前記生成した合成信号x
m’を用いて推定された前記波源との距離に基づいて、(2)前記生成した推定関数Y(k)における既に推定された前記波源との距離の前記推定関数Y(k)を形成する単一波信号について前記N個の周波数の単一波信号x
n(k)’を生成する、
請求項
9に記載の位置推定装置。
【請求項13】
請求項
5~12の何れか1項に記載の第1処理部、第2処理部および第3処理部が、N個の受信素子ごと前記波源との距離を推定した後、
請求項1~
4の何れか1項に記載の第1処理部、第2処理部および第3処理部が、前記波源の方位角度を推定する、
位置推定装置。
【請求項14】
N個の受信素子によって受信する、干渉性を有する信号波の波源位置を推定する位置推定方法であって、
Nを2以上の整数として、前記N個の受信素子は物理的に存在する受信素子
であり、
nを前記N個の受信素子の番号、Kを2以上の整数、kをK個の仮想的な単一波源の番号として、前記N個の受信素子によって前記信号波を受信することにより生成される受信信号x
nを、前記K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号x
n(k)’の合成波信号として近似し、
MをNよりも大きい整数、mを前記N個の受信素子およびM-N個の非実在受信素子の番号として、前記K個の単一波信号x
n(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、前記M-N個の非実在受信素子の単一波信号を生成し、前記N個の受信素子および前記M-N個の非実在受信素子ごとに、
前記N個の受信素子の単一波信号x
n
(k)’および前記M-N個の非実在受信素子の単一波信号を各々含むK個の単一波信号を合成することによって、前記N個の受信素子および前記M-N個の非実在受信素子の合成信号x
m’を生成し、
前記生成した合成信号x
m’を用いて、波源位置として前記波源の方位角度を推定
し、
前記N個の受信素子の受信信号x
n
および前記K個の単一波信号x
n
(k)’は、前記N個の受信素子の番号nに対する信号強度であり、
前記近似する工程では、前記N個の受信素子の受信信号x
n
は前記K個の単一波信号x
n
(k)’の合成信号x
n
(k)のk=0のときの合成信号x
n
(0)であると仮定し、
(1)前記N個の受信素子の合成信号x
n
(k)をフーリエ変換することにより、前記信号波の方位角度分布を推定関数Y(k)として生成し、
(2)生成した推定関数Y(k)のピークを形成する単一波信号の成分について前記N個の受信素子の単一波信号x
n
(k)’を生成し、
(3)前記N個の受信素子ごとに、前記合成信号x
n
(k)から、前記単一波信号x
n
(k)’に所定の減算率Mを乗算したM・x
n
(k)’を減算して、前記N個の受信素子の残りの合成信号x
n
(k’)を生成し、
ここで、k’は、kを1だけインクリメントした値であり、
k’=Kとなるまで、残りの合成信号x
n
(k’)に対して、上記(1)~(3)の処理を繰り返すことにより、前記N個の受信素子の受信信号x
n
を、前記K個の単一波信号x
n
(k)’の合成波信号として近似する、
位置推定方法。
【請求項15】
受信素子によって受信する、干渉性を有する信号波の波源位置を推定する位置推定方法であって、
前記信号波を時間軸で周波数変化する周波数変調波、前記時間軸を分割したN個の時刻における受信信号をx
n、Nを2以上の整数、nを前記N個の時刻の番号、Kを2以上の整数、kをK個の仮想的な単一波源の番号として、
前記受信素子によって前記信号波を受信することにより生成される前記受信信号x
nを、前記K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号x
n(k)’の合成波信号として近似し、
MをNよりも大きい整数、mを前記N個の時刻およびM-N個の非実在時刻の番号として、前記K個の単一波信号x
n(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、前記M-N個の非実在時刻の単一波信号を生成し、前記N個の時刻および前記M-N個の非実在時刻ごとに、
前記N個の時刻の単一波信号x
n
(k)’および前記M-N個の非実在時刻の単一波信号を各々含むK個の単一波信号を合成することによって、前記N個の時刻および前記M-N個の非実在時刻の合成信号x
m’を生成し、
前記生成した合成信号x
m’を用いて、波源位置として前記波源との距離を推定
し、
前記N個の時刻の受信信号x
n
および前記K個の単一波信号x
n
(k)’は、前記N個の時刻の番号nに対する信号強度であり、
前記近似する工程では、前記N個の時刻の受信信号x
n
は前記K個の単一波信号x
n
(k)’の合成信号x
n
(k)のk=0のときの合成信号x
n
(0)であると仮定し、
(1)前記N個の時刻の合成信号x
n
(k)をフーリエ変換することにより、前記波源との距離分布を推定関数Y(k)として生成し、
(2)生成した推定関数Y(k)のピークを形成する単一波信号の成分について前記N個の時刻の単一波信号x
n
(k)’を生成し、
(3)前記N個の時刻ごとに、前記合成信号x
n
(k)から、前記単一波信号x
n
(k)’に所定の減算率Mを乗算したM・x
n
(k)’を減算して、前記N個の時刻の残りの合成信号x
n
(k’)を生成し、
ここで、k’は、kを1だけインクリメントした値であり、
k’=Kとなるまで、残りの合成信号x
n
(k’)に対して、上記(1)~(3)の処理を繰り返すことにより、前記N個の時刻の受信信号x
n
を、前記K個の単一波信号x
n
(k)’の合成波信号として近似する、
位置推定方法。
【請求項16】
受信素子によって受信する、干渉性を有する信号波の波源位置を推定する位置推定装置であって、
前記信号波を時間軸でパルス状に強度変化するパルス変調波、前記時間軸を変換した周波数軸を分割したN個の周波数における受信信号をx
n、Nを2以上の整数、nを前記N個の周波数の番号、Kを2以上の整数、kをK個の仮想的な単一波源の番号として、
前記受信素子によって前記信号波を受信することにより生成される前記受信信号x
nを、前記K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号x
n(k)’の合成波信号として近似し、
MをNよりも大きい整数、mを前記N個の周波数およびM-N個の非実在周波数の番号として、前記K個の単一波信号x
n(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、前記M-N個の非実在周波数の単一波信号を生成し、前記N個の周波数および前記M-N個の非実在周波数ごとに、
前記N個の周波数の単一波信号x
n
(k)’および前記M-N個の非実在周波数の単一波信号を各々含むK個の単一波信号を合成することによって、前記N個の周波数および前記M-N個の非実在周波数の合成信号x
m’を生成し、
前記生成した合成信号x
m’を用いて、波源位置として前記波源との距離を推定
し、
前記N個の周波数の受信信号x
n
および前記K個の単一波信号x
n
(k)’は、前記N個の周波数の番号nに対する信号強度であり、
前記近似する工程では、前記N個の周波数の受信信号x
n
は前記K個の単一波信号x
n
(k)’ の合成信号x
n
(k)のk=0のときの合成信号x
n
(0)であると仮定し、
(1)前記N個の周波数の合成信号x
n
(k)をフーリエ変換することにより、前記波源との距離分布を推定関数Y(k)として生成し、
(2)生成した推定関数Y(k)のピークを形成する単一波信号の成分について前記N個の周波数の単一波信号x
n
(k)’を生成し、
(3)前記N個の周波数ごとに、前記合成信号x
n
(k)から、前記単一波信号x
n
(k)’に所定の減算率Mを乗算したM・x
n
(k)’を減算して、前記N個の周波数の残りの合成信号x
n
(k’)を生成し、
ここで、k’は、kを1だけインクリメントした値であり、
k’=Kとなるまで、残りの合成信号x
n
(k’)に対して、上記(1)~(3)の処理を繰り返すことにより、前記N個の周波数の受信信号x
n
を、前記K個の単一波信号x
n
(k)’の合成波信号として近似する、
位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波源の方位角度または波源との距離、またはその両方である波源の位置を推定する位置推定装置および位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および2、並びに非特許文献1には、波源から到来する到来波の方位角度推定技術が記載されている。到来波の方位角度推定技術としては、フーリエ変換を用いたBeamformer法、アレー入力の相関行列の固有値展開を用いたMUSIC法(Multiple Signal Classification)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5874824号公報
【文献】特許第5695930号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】菊間信良、「アダプティブアンテナ技術」、株式会社オーム社、平成15年10月10日、p.122-150
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Beamformer法による方位角度推定技術は、波源が2以上ある場合、これらの波源からの到来波の方位角度推定(位置推定)の分離能が低いことがある。例えば、受信素子数が十分でない場合、Beamformer法による方位角度推定技術では、2以上の波源からの到来波の方位角度の推定が困難であることがある。
【0006】
Beamformer法による方位角度推定技術の受信素子数を位置推定に使用する周波数帯域幅に置き換えると波源との距離を推定する距離推定にも適用可能である。十分な周波数帯域幅が得られない場合における距離推定技術でも、Beamformer法による方位角度推定技術と同様に、波源が2以上ある場合、これらの波源との距離推定(位置推定)の分離能が低いことがある。
【0007】
本発明は、波源が2以上あっても、波源の位置推定の分離能を高めることが可能な位置推定装置および位置推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の位置推定装置は、N個の受信素子によって受信する、干渉性を有する信号波の波源位置を推定する位置推定装置であって、Nを2以上の整数として、N個の受信素子は、物理的に存在する受信素子、および複数の送信素子を用いることによって仮想的に存在する受信素子を含み、(1)nをN個の受信素子の番号、Kを2以上の整数、kをK個の仮想的な単一波源の番号として、N個の受信素子によって信号波を受信することにより生成される受信信号xnを、K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号xn(k)’の合成波信号として近似する第1処理部と、(2)MをNよりも大きい整数、mをN個の受信素子およびM-N個の非実在受信素子の番号として、K個の単一波信号xn(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、M-N個の非実在受信素子の単一波信号を生成し、N個の受信素子およびM-N個の非実在受信素子ごとに、K個の単一波信号xn(k)’を合成することによって、N個の受信素子およびM-N個の非実在受信素子の合成信号xm’を生成する第2処理部と、(3)生成した合成信号xm’を用いて、波源位置として波源の方位角度を推定する第3処理部と、を備える。
【0009】
本発明の別の位置推定装置は、受信素子によって受信する、干渉性を有する信号波の波源位置を推定する位置推定装置であって、信号波を時間軸で周波数変化する周波数変調波、時間軸を分割したN個の時刻における受信信号をxn、Nを2以上の整数、nをN個の時刻の番号、Kを2以上の整数、kをK個の仮想的な単一波源の番号として、(1)受信素子によって信号波を受信することにより生成される受信信号xnを、K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号xn(k)’の合成波信号として近似する第1処理部と、(2)MをNよりも大きい整数、mをN個の時刻およびM-N個の非実在時刻の番号として、K個の単一波信号xn(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、M-N個の非実在時刻の単一波信号を生成し、N個の時刻およびM-N個の非実在時刻ごとに、K個の単一波信号xn(k)’を合成することによって、N個の時刻およびM-N個の非実在時刻の合成信号xm’を生成する第2処理部と、(3)生成した合成信号xm’を用いて、波源位置として波源との距離を推定する第3処理部と、を備える。
【0010】
本発明の更に別の位置推定装置は、受信素子によって受信する、干渉性を有する信号波の波源位置を推定する位置推定装置であって、信号波を時間軸でパルス状に強度変化するパルス変調波、時間軸を変換した周波数軸を分割したN個の周波数における受信信号をxn、Nを2以上の整数、nをN個の周波数の番号、Kを2以上の整数、kをK個の仮想的な単一波源の番号として、(1)受信素子によって信号波を受信することにより生成される受信信号xnを、K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号xn(k)’の合成波信号として近似する第1処理部と、(2)MをNよりも大きい整数、mをN個の周波数およびM-N個の非実在周波数の番号として、K個の単一波信号xn(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、M-N個の非実在周波数の単一波信号を生成し、N個の周波数およびM-N個の非実在周波数ごとに、K個の単一波信号xn(k)’を合成することによって、N個の周波数およびM-N個の非実在周波数の合成信号xm’を生成する第2処理部と、(3)生成した合成信号xm’を用いて、波源位置として波源との距離を推定する第3処理部と、を備える。
【0011】
本発明の位置推定方法は、N個の受信素子によって受信する、干渉性を有する信号波の波源位置を推定する位置推定方法であって、Nを2以上の整数として、N個の受信素子は、物理的に存在する受信素子、および複数の送信素子を用いることによって仮想的に存在する受信素子を含み、(1)nをN個の受信素子の番号、Kを2以上の整数、kをK個の仮想的な単一波源の番号として、N個の受信素子によって信号波を受信することにより生成される受信信号xnを、K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号xn(k)’の合成波信号として近似し、(2)MをNよりも大きい整数、mをN個の受信素子およびM-N個の非実在受信素子の番号として、K個の単一波信号xn(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、M-N個の非実在受信素子の単一波信号を生成し、N個の受信素子およびM-N個の非実在受信素子ごとに、K個の単一波信号xn(k)’を合成することによって、N個の受信素子およびM-N個の非実在受信素子の合成信号xm’を生成し、(3)生成した合成信号xm’を用いて、波源位置として波源の方位角度を推定する。
【0012】
本発明の別の位置推定方法は、受信素子によって受信する、干渉性を有する信号波の波源位置を推定する位置推定方法であって、信号波を時間軸で周波数変化する周波数変調波、時間軸を分割したN個の時刻における受信信号をxn、Nを2以上の整数、nをN個の時刻の番号、Kを2以上の整数、kをK個の仮想的な単一波源の番号として、(1)受信素子によって信号波を受信することにより生成される受信信号xnを、K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号xn(k)’の合成波信号として近似し、(2)MをNよりも大きい整数、mをN個の時刻およびM-N個の非実在時刻の番号として、K個の単一波信号xn(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、M-N個の非実在時刻の単一波信号を生成し、N個の時刻およびM-N個の非実在時刻ごとに、K個の単一波信号xn(k)’を合成することによって、N個の時刻およびM-N個の非実在時刻の合成信号xm’を生成し、(3)生成した合成信号xm’を用いて、波源位置として波源との距離を推定する。
【0013】
本発明の更に別の位置推定方法は、受信素子によって受信する、干渉性を有する信号波の波源位置を推定する位置推定装置であって、信号波を時間軸でパルス状に強度変化するパルス変調波、時間軸を変換した周波数軸を分割したN個の周波数における受信信号をxn、Nを2以上の整数、nをN個の周波数の番号、Kを2以上の整数、kをK個の仮想的な単一波源の番号として、(1)受信素子によって信号波を受信することにより生成される受信信号xnを、K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号xn(k)’の合成波信号として近似し、(2)MをNよりも大きい整数、mをN個の周波数およびM-N個の非実在周波数の番号として、K個の単一波信号xn(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、M-N個の非実在周波数の単一波信号を生成し、N個の周波数およびM-N個の非実在周波数ごとに、K個の単一波信号xn(k)’を合成することによって、N個の周波数およびM-N個の非実在周波数の合成信号xm’を生成し、(3)生成した合成信号xm’を用いて、波源位置として波源との距離を推定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、波源が2以上あっても、波源の位置推定の分離能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】受信アンテナアレイが信号波を受信する様子を示す図である。
【
図2】受信アンテナごとの受信信号を示す図である。
【
図3A】
図2に示す16個の受信アンテナの受信信号を用いた推定関数Yの一例を示す図である(Beamformer法)。
【
図3B】
図2に示す4個の受信アンテナの受信信号を用いた推定関数Yの一例を示す図である(Beamformer法)。
【
図4A】方位角度差が分離限界未満の2波による方位角度推定の一例を示す図である(Beamformer法)。
【
図4B】方位角度差が分離限界未満の2波による方位角度推定の一例を示す図である(Beamformer法)。
【
図4C】方位角度差が分離限界未満の2波による方位角度推定の一例を示す図である(Beamformer法)。
【
図4D】方位角度差が分離限界以上の2波による方位角度推定の一例を示す図である(Beamformer法)。
【
図5A】方位角度0度と20度からの同強度の2波を4個の受信アンテナで受信した場合の信号波の方位角度推定について、MUSIC法を適用した例を示す図である。
【
図5B】2波が互いに適切な位相変化をした場合のMUSIC法による推定結果を示す図である(MUSIC法)。
【
図5C】2波が互いに適切な位相変化をした場合のMUSIC法による推定結果を示す図である(MUSIC法)。
【
図6A】方位角度±20度の2波の合成波の推定関数Yの一例を示す図である(Beamformer法)。
【
図6B】方位角度0度の単一波の推定関数Yの一例を示す図である(Beamformer法)。
【
図7】第1実施形態に係る位置推定装置(方位角度推定)の構成を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る位置推定装置による位置推定処理(DOA1)を示すフローチャートである。
【
図9】
図7に示す位置推定装置における第1処理部による実測4アンテナデータの分析(手順1)を説明するための図である。
【
図10】
図7に示す位置推定装置における第1処理部による実測4アンテナデータの分析(手順1)を説明するための図である。
【
図11】
図7に示す位置推定装置における第1処理部による実測4アンテナデータの分析(手順1)を説明するための図である。
【
図12】
図7に示す位置推定装置における第1処理部による実測4アンテナデータの分析(手順1)を説明するための図である。
【
図13】
図7に示す位置推定装置における第1処理部による実測4アンテナデータの分析(手順1)を説明するための図である。
【
図16】第2実施形態に係る位置推定装置による位置推定処理(DOA2)のフローチャートである。
【
図17A】第2実施形態の推定関数Yの算出結果を示す図である。
【
図17B】第2実施形態の変形例の推定関数Yの算出結果を示す図である。
【
図18】第3実施形態に係る位置推定装置による位置推定処理(DOA3)のフローチャートである。
【
図19】第3実施形態に係る位置推定装置における第1処理部による実測4アンテナデータの分析(手順1)を説明するための図である。
【
図20】第3実施形態の合成信号x
n(k)’および推定関数Y’の算出結果を示す図である。
【
図21】第4実施形態に係る距離推定の一例を説明するための図である(FMCW方式)。
【
図22】第4実施形態に係る距離推定の他の一例を説明するための図である(パルス方式)。
【
図23】第4実施形態の位置推定装置による距離推定の効果を説明するための図である。
【
図24】本実施形態の方位角度推定と距離推定との組み合わせによる位置推定の効果を説明するための図である。
【
図25】第5実施形態に係るレーダ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0017】
(概要)
まず、波源の位置(方位角度、距離)推定における波源の方位角度推定として、波源から到来する信号波(到来波)の方位角度推定の概要について説明する。尚、本願発明における「波源」とは、外部から到来する信号波を反射する物標を含む。
図1は、受信アンテナアレイが信号波を受信する様子を示す図である。
図1に示す受信アンテナアレイは、等間隔dで並んだN個の受信アンテナ(受信素子)(例えば、N=16)を含む。
図1では、信号波として、方位角度α(例えば、α=20度)から到来する波長λの平面波を想定する。この場合、受信アンテナ番号n(例えば、n=-4~11)の受信アンテナが信号波を受信することによって生成する受信信号x
n、その実部I
nおよび虚部Q
nは、次式のように表される。
x
n=I
n+j・Q
n
I
n=A・cos(n・Δφ+Φ)
Q
n=A・sin(n・Δφ+Φ)
Δφ=-2π(d/λ)sin(α)
A:信号波の振幅
Φ:受信アンテナ番号n=0の受信アンテナが受信する信号波の位相
Δφ:受信アンテナ1つあたりの位相変化量
【0018】
図1に示すように、受信アンテナ番号n=0の受信アンテナを基準とすると、信号波が受信アンテナに到達するまでの行路は、アンテナ番号に比例して長くなる。例えば、0番の受信アンテナの信号波に対する1番の受信アンテナの信号波の行路差Lは、次式のように表される。
L=d・sin(α)
このように、0番の受信アンテナの信号波に対して、1番の受信アンテナの信号波の到達時間が遅れることから、1番の受信アンテナの信号波の位相も遅れる。その位相変化量は、行路差Lが波長λと同じときに-2πであることから、Lに-2π/λを乗じることにより、受信アンテナ1つあたりの位相変化量Δφは上式のように表される。
【0019】
図2は、受信アンテナごとの受信信号を示す図である。
図2には、上述のΔφを用いて受信アンテナごとの受信信号x
nを算出し、その実数成分I
nと虚数成分Q
nが示されている。
図2では、信号波の振幅Aを1とし、受信アンテナ番号n=0の受信アンテナが受信する信号波の位相Φを0[rad]とした。縦軸は受信信号のI
n,Q
nの大きさであり、横軸は受信アンテナ番号nである。
図2によれば、アンテナ番号1つの変化に対して位相がΔφ変化する周期的な波形が得られる。上式より、Δφは方位角度αの関数であることから、この周期性を分析することにより、方位角度αを算出することが可能である。
【0020】
Beamformer法では、受信信号xnの周期性の分析にフーリエ変換が用いられる。例えば、方位角度を256階調で量子化した場合の推定関数Yを下式に示す。
【数1】
【数2】
ここで、
図2に示す16個の受信アンテナの受信信号を用いる場合、以下のような条件となる。
X
n=I
n-4+j・Q
n-4 (0≦n≦15)
X
n=0 (16≦n≦255)
一方、
図2に示す4個の受信アンテナの受信信号を用いる場合、以下のような条件となる。
X
n=I
n+j・Q
n (0≦n≦3)
X
n=0 (4≦n≦255)
【0021】
図3Aは、
図2に示す16個の受信アンテナの受信信号を用いた推定関数Yの一例を示す図であり、
図3Bは、
図2に示す受信アンテナ番号0~3の4個の受信アンテナの受信信号を用いた推定関数Yの一例を示す図である。
図3Aおよび
図3Bには、上式のYを算出し、その実部Re_Yおよび虚部Im_Y、並びにこれらの二乗和の平方根である大きさ|Y|が、中太実線および実線、並びに最太実線で示されている。縦軸は推定関数YのRe_Y、Im_Y、および|Y|の大きさであり、横軸は信号波の方位角度θ[deg]である。
図3Aおよび
図3Bによれば、信号波の方位角度(α=20度)にピークを有する波形が得られる。このピークが有する方位角度θを信号波の方位角度として推定する(DOA0:Direction of Arrival)。
【0022】
図3Aおよび
図3Bに示すように、信号波が1波のみである場合、受信アンテナ数によらず、正しい方位角度に頂点を有するが、そのピーク波形の幅は異なる。
例えばレーダ装置では、用いられる信号波は干渉性が高い電磁波であるため、信号波が2波以上であり、これらの信号波の方位角度差が推定関数Yのピーク波形の幅よりも小さい場合、これらの信号波の方位角度を分離して検出することが困難となる。この方位角度の分離能の限界は、16個の受信アンテナで15度程度であり、4個の受信アンテナでは60度程度である。これは、インコヒーレントな光学望遠鏡における、対物レンズ径と波長の比で決まる分離限界「レイリー限界」のおおよそ2倍である。
【0023】
図4A~
図4Cは、方位角度差が分離限界未満の2波による方位角度推定の一例(方位角度差が十分にない場合の例)を示す図である。
図4A~
図4Cには、4個の受信アンテナの受信信号を用いた推定関数Yの実部Re_Yおよび虚部Im_Y、並びにこれらの二乗和の平方根である大きさ|Y|が、中太実線および実線、並びに最太実線で示されている。また、
図4A~
図4Cには、方位角度20度の単一波(単独波)と方位角度-20度の単一波(単独波)との合成波の推定関数Yが示されている(方位角度差40度<分離限界60度)。
図4Aには、0番の受信アンテナの信号波の位相Φが2波ともに0度の例が示されており、
図4Bには、一方の波のΦが0度であり、他方の波のΦが90度である例が示されており、
図4Cには、一方の波のΦが0度であり、他方の波のΦが180度である例が示されている。
図4A~
図4Cに示すように、2波以上の合成波は、それぞれの方位角度の単一波を単純に線形合成するだけで生成される。そして、例えばレーダ装置では、用いられる信号波は干渉性が高い電磁波であるため、各方位角度の到来波の位相の組合せによって合成波は様々なピークを有する波形を形成する。
図4Aおよび
図4Bに示すように、2波の方位角度差が分離限界未満であっても必ずしも分離検出不能な訳ではないが、
図4Cに示すように、2波の位相φの条件によって1つのピークしか持たず、分離検出不能となる場合がある。
【0024】
一方、
図4Dは、方位角度差が分離限界以上の2波による方位角度推定の一例(方位角度差が十分にある場合の例)を示す図である。
図4Dにも、4個の受信アンテナの受信信号を用いた推定関数Yの実部Re_Yおよび虚部Im_Y、並びにこれらの二乗和の平方根である大きさ|Y|が、中太実線および実線、並びに最太実線で示されている。また、
図4Dには、方位角度30度の単一波(単独波)と方位角度-30度の単一波(単独波)との合成波の推定関数Yが示されている(方位角度差60度=分離限界60度)。
図4Dには、一方の波のΦが0度であり、他方の波のΦが45度である例が示されている。なお、
図4Dでは、一方の波と他方の波との振幅が異なる。
図4Dでは、方位角度差が分離限界以上であった場合には、ピークが分離されるが、方位角度の推定が正しいことを保証するものではない。
図4Dの合成波の例では、干渉によりピークが10度程度ずれている。
【0025】
次に、MUSIC法による信号波の方位角度推定について説明する。
図5Aは、方位角度0度と20度からの同強度の2波を4個の受信アンテナで受信した場合の信号波の方位角度推定について、MUSIC法を適用した例を示す図である。MUSIC法を適用するには多数の受信データが必要であり、この例では100個の受信データを用いている。波源が静止物の場合、多数のデータを取得しても全て同じ値であるので1つしかデータを取得しなかった場合と変わらない。このとき得られる分離能はBeamformer法と変らない。
【0026】
図5Bおよび
図5Cは、2波が互いに適切な位相変化をした場合のMUSIC法による推定結果を示す図である。
図5Bに示すように、方位角度0度と20度の波を分離検出できているが、推定関数YをdB表示しなければピークを確認できないほど、互いのピーク強度に差が生じてしまう。MUSIC法では、方位角度の推定は出来るが、強度情報を失ってしまうことが問題である。さらに、MUSIC法では、ピーク幅が非常に狭くなることもあるので、方位角度の推定を細かい角度ステップで行わないとピークを見逃す可能性もある。
また、
図5Cに示すように、2波が互いに適切な位相変化をした場合でも、わずかなノイズが混入すると、全く誤った方位角にピークを生成してしまうことがある。
図5Cでは、方位角度0度と20度の波を分離検出できているが、誤ピークも生じている。MUSIC法では、信号強度がピーク強度に反映されない性質から、ピークの真贋を判断することは困難である。
【0027】
以上より、静止物である波源が2個以上存在する場合に、Beamformer法およびMUSIC法には以下のような問題がある。
問題(1) Beamformer法の分離能の低さ(レイリー限界の2倍の角度差が必要)
問題(2) MUSIC法は静止物の推定が出来ない
問題(3) MUSIC法は到来波の強度情報が反映されない
問題(4) MUSIC法は誤推定ピークが生じやすく、その真贋の判定が困難
【0028】
以下、本実施形態に係る位置推定装置(方位角度推定装置および距離推定装置)について説明する。
ここで、2以上の波源の高分離能化に利用可能なレーダ装置の特徴は、以下の通りである。
(1)受信信号xnは線形合成可能であること
例えば、複雑な受信信号xnも複数波の線形合成で再現可能であること
(2)レーダ波の干渉性が高いこと
例えば、検知対象とレーダ装置との相対的な位置関係が、受信信号xnの位相として敏感に現れること
(3)単一波の場合、受信信号xnには簡単な法則性があること
例えば、(n+1)番目の受信アンテナの信号xn+1はn番目の受信アンテナの信号xnをΔφ位相回転させるだけで生成可能であること
【0029】
上述したBeamformer法では、推定関数|Y|のピークにしか注目しておらず、ピークの形状と位相の情報を捨てている。そのため、
図6Aに示す方位角度±20度の2波の合成波も、
図6Bに示す方位角度0度の単一波と判定されてしまう。しかし、
図6Aに示す方位角度±20度の2波の合成波の推定関数Yの形状は、
図6Bに示す方位角度0度の単一波の推定関数Yの形状と明らかに異なる。
推定関数Yにおいて、位相も含めたピークの形状を裾野まで分析対象とすることで、より多くの情報を得ることが可能になる。
特に、位相情報はレーダ装置の特徴(2)に関係しており、Beamformer法では干渉性のためにレイリー限界(非干渉性の光学望遠鏡の分離限界)の2倍の方位角度差を必要としているが、光学望遠鏡では扱えない位相情報を分析対象に含めることで、レイリー限界を超えた分離能の実現が狙える。
【0030】
本実施形態の高分離能化の手順は、大きくは以下の3つである。
(手順1)実測4アンテナデータの分析
位相も含めたピーク形状を複数波の線形合成で再現(レーダ装置の特徴(1)および(2))
(手順2)受信アンテナ開口拡大
手順1の結果を用いて、実在しない受信アンテナの信号xnを生成
受信アンテナ開口を2倍以上に拡大することにより、レイリー限界を超える(レーダ装置の特徴(1)または(2))
(手順3)増大させたアンテナ開口で方位角度推定
以下にその詳細を説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図7は、第1実施形態に係る位置推定装置10(方位角度推定)の構成を示す図であり、
図8は、
図7に示す位置推定装置10による位置推定処理(DOA1)を示すフローチャートである。
位置推定装置10は、4個の受信アンテナによって受信する信号波であって、干渉性を有する信号波の波源位置として、波源の方位角度の推定を行う装置である。位置推定装置10は、第1処理部11と、第2処理部12と、第3処理部13とを備える。
【0032】
位置推定装置10は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の演算プロセッサで構成される。位置推定装置10の各種機能は、例えば記憶部に格納された所定のソフトウェア(プログラム、アプリケーション)を実行することで実現される。位置推定装置10の各種機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
【0033】
(手順1)
第1処理部11は、実在するN個の受信アンテナによって信号波を受信することにより生成される受信信号xnを、K個の仮想的な単一波信号xn(k)’の線形合成信号として近似する(Nは4であり、nはN個の受信アンテナの番号であって0~3であり、Kは15であり、kはK個の仮想的な単一波源の番号である)。
【0034】
具体的には、第1処理部11は、N個の受信アンテナの受信信号xnはK個の単一波信号xn(k)’の合成信号xn(0)であると仮定し、以下の処理を行う。すなわち、第1処理部11は、
(1)N個の受信アンテナの合成信号xn(k)をフーリエ変換することにより、信号波の方位角度分布(方位角度スペクトラム)を推定関数Y(k)として生成し、
(2)生成した推定関数Y(k)のピークを形成する単一波信号についてN個の受信アンテナの単一波信号xn(k)’を生成し、
(3)N個の受信アンテナごとに、合成信号xn(k)から、単一波信号xn(k)’に所定の減算率Mを乗算したM・xn(k)’を減算して、N個の受信アンテナの残りの合成信号xn(k’)を生成する。
xn(k’)=xn(k)-M・xn(k)’
k’は、kを1だけインクリメントした値である。
第1処理部11は、k’=Kとなるまで、残りの合成信号xn(k’)に対して、上記(1)~(3)の処理を繰り返す。
このように、kを1ずつインクリメントして、合成信号xn(k)に対して上記(1)~(3)の処理を繰り返すことにより、N個の受信アンテナの受信信号xnを、K個の単一波信号xn(k)’の線形合成信号として近似することができる。
【0035】
なお、上述および後述において、xnは実測された受信アンテナ信号であり、xn(k)はk個の単一波信号成分を減算済みの受信アンテナ信号であり(減算前。つまりk=0のときxn(0)=xn)、Y(k)はxn(k)をフーリエ変換して算出した推定関数であり(減算前、つまりk=0のときY(0)=Y0)、xn(k)’はY(k)のピークを形成する単一波信号の受信アンテナ信号であり、Y(k)’はxn(k)’をフーリエ変換して算出した推定関数であり、k’=k+1であり、xm’はK個の単一波信号を合成した受信信号である(m:実在、非実在を含むアンテナ番号)。
【0036】
図9~
図13は、第1処理部11による実測4アンテナデータの分析(手順1)を説明するための図である。
図9の(A)は、4個の受信アンテナの受信信号x
n、すなわち合成信号x
n(0)の一例を示す図である。
図9の(A)では、実在する受信アンテナ(番号n=0~3)で受信した受信信号x
nの実部I
nおよび虚部Q
nが黒丸および黒三角で示されている。なお、
図9の(A)には、参考のため実在しない受信アンテナ(番号n=-4~-1,4~11の受信信号の実部I
nおよび虚部Q
nが白丸および白三角で示されているが、本手順1ではこれらの信号は用いられない。横軸は受信アンテナ番号nであり、縦軸は受信強度である。
図9の(A)では、方位角度0度からの信号波と方位角度20度からの信号波との2つの信号波を受信する場合を例示する。方位角度0度からの信号波の振幅Aおよび位相φはA=1、φ=0度であり、方位角度20度からの信号波の振幅Aおよび位相φはA=1、φ=180度である。
【0037】
まず、第1処理部11は、4個の受信アンテナの合成信号x
n(0)をフーリエ変換することにより、信号波の方位角度分布(方位角度スペクトラム)を推定関数Y(0)として生成する。
図9の(B)は、推定関数Y(0)の一例を示す図である。
図9の(B)には、推定関数Y(0)の実部Re_Y(0)および虚部Im_Y(0)、並びにこれらの二乗和の平方根である大きさ|Y(0)|が、中太実線および実線、並びに最太実線で示されている。横軸は推定角度θであり、縦軸は受信強度である。
|Y(0)|におけるピークp0の方位角度θ0は、真の信号波の方位角度ではなく、2つの信号波の干渉によって生じた偽の方位角度であるが、この段階では真偽は問わない。
【0038】
次に、第1処理部11は、生成した推定関数|Y(0)|のピークp0(推定角度θ0)を形成する単一波信号について実在する受信アンテナ(番号n=0~3)の単一波信号x
n(0)’を生成する。
図9の(C)は、単一波信号x
n(0)’の一例を示す図である。
図9の(C)には、実在する受信アンテナ(番号n=0~3)の単一波信号x
n(0)’の実部I
n(0)’および虚部Q
n(0)’が黒丸および黒三角で示されている。横軸は受信アンテナ番号nであり、縦軸は受信強度である。
例えば、第1処理部11は、受信アンテナ番号n=0の単一波信号x
0(0)’の実部I
0(0)’および虚部Q
0(0)’を次式により算出する。
I
0(0)’=Re[Y(0)@方位角度=θ0]/4
Q
0(0)’=Im[Y(0)@方位角度=θ0]/4
また、第1処理部11は、等間隔dで並ぶ受信アンテナ間の信号波の位相差Δφ0に基づいて、受信アンテナ番号n=0~3の単一波信号x
n(0)’の実部I
n(0)’および虚部Q
n(0)’を算出する。
In(0)’=Re[x
n(0)’・exp(j・Δφ0・n)]
Qn(0)’=Im[x
n(0)’・exp(j・Δφ0・n)]
Δφ0=-2π(d/λ)sin(θ0)
【0039】
次に、第1処理部11は、4個の受信アンテナの単一波信号x
n(0)’をフーリエ変換することにより、単一波信号x
n(0)’の方位角度分布(方位角度スペクトラム)を推定関数Y(0)’として生成する。
図9の(D)は、推定関数Y(0)’の一例を示す図である。
図9の(D)には、推定関数Y(0)’の実部Re_Y(0)’および虚部Im_Y(0)’、並びにこれらの二乗和の平方根である大きさ|Y(0)’|が、中太実線および実線、並びに最太実線で示されている。横軸は推定角度θであり、縦軸は受信強度である。
【0040】
次に、第1処理部11は、実在する4個の受信アンテナごとに、受信信号x
n(0)から、単一波信号x
n(0)’に所定の減算率Mを乗算したM・x
n(0)’を減算して、4個の受信アンテナの残りの合成信号x
n(1)を算出する。
x
n(1)=x
n(0)-M・x
n(0)’
図10の(E)は、残りの合成信号x
n(1)の一例を示す図である。
図10の(E)には、実在する4個の受信アンテナの残りの合成信号x
n(1)の実部I
n(1)および虚部Q
n(1)が黒丸および黒三角で示されている。横軸は受信アンテナ番号nであり、縦軸は受信強度である。また、所定の減算率Mは0.4である。
【0041】
第1処理部11は、k’=Kとなるまで、残りの合成信号x
n(k’)に対して、上記処理を繰り返す。
具体的には、第1処理部11は、4個の受信アンテナの残りの合成信号x
n(1)をフーリエ変換することにより、合成信号x
n(1)の方位角度分布(方位角度スペクトラム)を推定関数Y(1)として生成する。
図10の(F)は、推定関数Y(1)の一例を示す図である。
図1の(F)には、推定関数Y(1)の実部Re_Y(1)および虚部Im_Y(1)、並びにこれらの二乗和の平方根である大きさ|Y(1)|が、中太実線および実線、並びに最太実線で示されている。横軸は推定角度θであり、縦軸は受信強度である。
なお、第1処理部11は、
図9の(B)に示す合成信号x
n(0)の推定関数Y(0)から、
図9の(D)に示す単一波信号x
n(0)’の推定関数Y(0)’に所定の減算率Mを乗算したM・Y(0)’を減算して、4個の受信アンテナの残りの合成信号x
n(1)の推定関数Y(1)を算出してもよい。
Y(1)=Y(0)-M・Y(0)’
【0042】
図10の(F)では、偽の頂点を形成する単一波信号x
n(0)’の成分が減少したため、より真に近い方位角度にピークp1が得られている。ただし、単一波信号x
n(0)’は偽のピークを形成する以外に、真の受信信号成分も含んでいるため、減算率M=1とするのは不適切であり、M<0.5程度が適切であると考えられる。
また、p0が真の方位角度であった場合には、Y(1)もしくは、その後にも同一方位角度にピークが形成されるので、その結果を用いてp0の真偽を判定してもよい。
【0043】
次に、第1処理部11は、生成した推定関数|Y(1)|のピークp1(推定角度θ1)を形成する単一波信号について4個の受信アンテナ(番号n=0~3)の単一波信号x
n(1)’を生成する。単一波信号x
n(1)’の生成方法は、上述した単一波信号x
n(0)’の生成方法と同様である。
図10の(G)は、単一波信号x
n(1)’の一例を示す図である。
図10の(G)には、実在する4個の受信アンテナ(番号n=0~3)の単一波信号x
n(1)’の実部I
n(1)’および虚部Q
n(1)’が黒丸および黒三角で示されている。横軸は受信アンテナ番号nであり、縦軸は受信強度である。
【0044】
次に、第1処理部11は、4個の受信アンテナの単一波x
n(1)’をフーリエ変換することにより、単一波信号x
n(1)’の方位角度分布(方位角度スペクトラム)を推定関数Y(1)’として算出する。
図10の(H)は、推定関数Y(1)’の一例を示す図である。
図10の(H)には、推定関数Y(1)’の実部Re_Y(1)’および虚部Im_Y(1)’、並びにこれらの二乗和の平方根である大きさ|Y(1)’|が、中太実線および実線、並びに最太実線で示されている。横軸は推定角度θであり、縦軸は受信強度である。
【0045】
このように、第1処理部11は、kを1ずつインクリメントして、合成信号x
n(k)に対して、上記処理を繰り返すことにより、
図11および
図12に示すように、4個の受信アンテナの受信信号x
n(0)を、15個の単一波信号x
n(k)’の線形合成信号として近似する。
【0046】
上記処理を十分に繰り返すと(本実施形態では15回)、受信信号x
nおよび推定関数Yは、
図12の(I)および(J)に示すよう0に近づく。その途中過程をみると、|Y(k)|の頂点は真の方位角度である0度付近と20度付近とを交互に示している。このように、実測した信号から、都度得られるピークに対応する仮の方位角度成分を、少しずつ削り取っていくと、真値に近いピークが得られる。
このとき、実測可能な受信信号x
n(0)および推定関数Y(0)は、15個の単一波信号x
n(0)’~x
n(14)’およびその推定関数Y(0)’~Y(14)’に分解できたと考えられる。ただし、この個々の単一波信号の方位角度は真の値ではない。
【0047】
図13の(L)は、15個の単一波信号x
n(0)’~x
n(14)’を線形合成した結果を示し、
図13の(M)は、15個の単一波信号の推定信号Y(0)’~Y(14)’を線形合成した結果を示す。
図13の(L)および(M)によれば、
図9の(A)および(B)を良好に再現できており、この分解処理が適切であることが確認できる。
【0048】
(手順2)
第2処理部12は、15個の単一波信号xn(k)’ごとに、所定の位相差Δφに応じて、実在しない(16-4)個の非実在受信アンテナ(番号-4~-1,4~11)の単一波信号を生成する。このように、
xn+1(k)’=xn(k)’・ejΔφ
位相差Δφ=-2π(d/λ)sin(θ)
を考慮すると、実際には存在しない受信アンテナの受信信号を推定することができる。これは、受信アンテナ開口を拡大させることと等化である。
【0049】
第2処理部12は、実在する4個の受信アンテナ(番号n=0~3)および実在しない12個の非実在受信アンテナ(番号-4~-1、4~11)ごとに、15個の単一波信号xn(k)’を合成するとともに15個の非実在受信アンテナの単一波信号を合成することによって、4個の受信アンテナ(番号n=0~3)および12個の非実在受信アンテナ(番号-4~-1、4~11)の合成信号xm’を生成する(M>NであってM=16であり、mは4個の受信アンテナおよび(M-N)個の非実在受信アンテナの番号である)。
【0050】
図14は、合成信号x
m’の一例を示す図である。
図14と
図9の(A)とを比較すると、現実のレーダ装置では確かめようのない値であるが、真値である信号x
n(0)と比較すると、実測可能な受信アンテナ(番号0~3)に対して前後合わせて5つ程度の信号x
m’が真値に近い値を示した。
これは、受信アンテナ開口が(4+5)/4≒2.3倍に拡大したことに相当する。
【0051】
(手順3)
第3処理部13は、生成した合成信号x
m’をフーリエ変換することにより、推定関数Y’を生成し、Y’ピークの方位角度を信号波の方位角度、すなわち波源の方位角度(波源位置)として推定する。
この処理により、手順1で求めた15個の単一波信号x
n(k)’を合成して(合成の過程で真の方位角度に近い成分は互いに強め合い、遠い成分は打ち消されて減衰する)、真の方位角度に近いピークを形成する。
図15は、推定関数Y’の一例を示す図である。
図15では、真の方位角度である0度と20度に近い方位角度にピークが現れるようになった。
しかし、両ピークの間に誤ピークが生じている。これは、手順1の分析過程における最初のピークp0の影響である。この点については後述の第2実施形態で説明する。
【0052】
次に、
図8を参照して、第1実施形態の位置推定装置10による位置推定動作について説明する。
(手順1)
まず、第1処理部11は、k=0をセットし(S1)、N個の受信アンテナの受信信号x
nはK個の単一波信号x
n(k)’の合成信号x
n(0)であると仮定し、以下の処理を行う。すなわち、第1処理部11は、
(1)N個の受信アンテナの合成信号x
n(k)をフーリエ変換することにより、信号波の方位角度分布(方位角度スペクトラム)を推定関数Y(k)として生成し(S2)、
(2)生成した推定関数Y(k)のピークを形成する単一波信号についてN個の受信アンテナの単一波信号x
n(k)’を生成し(S3)、
(3)N個の受信アンテナごとに、合成信号x
n(k)から、単一波信号x
n(k)’に所定の減算率Mを乗算したM・x
n(k)’を減算して、N個の受信アンテナの残りの合成信号x
n(k)を生成する(S4)。
x
n(k’)=x
n(k)-M・x
n(k)’
k’は、kを1だけインクリメントした値である。
第1処理部11は、kを1だけインクリメントし(S5)、k=Kとなるまで(S6)、残りの合成信号x
n(k)に対して、上記(1)~(3)の処理を繰り返す。
【0053】
(手順2)
次に、第2処理部12は、15個の単一波信号xn(k)’ごとに、所定の位相差Δφに応じて、実在しない(16-4)個の非実在受信アンテナ(番号-4~-1,4~11)の単一波信号を生成する(受信アンテナ開口拡大)(S7)。
第2処理部12は、実在する4個の受信アンテナ(番号n=0~3)および実在しない12個の非実在受信アンテナ(番号-4~-1、4~11)ごとに、15個の単一波信号xn(k)’を合成するとともに15個の非実在受信アンテナの単一波信号を合成することによって、4個の受信アンテナ(番号n=0~3)および12個の非実在受信アンテナ(番号-4~-1、4~11)の合成信号xm’を生成する(S8)。
【0054】
(手順3)
次に、第3処理部13は、生成した合成信号xm’をフーリエ変換することにより、推定関数Y’を生成し(S9)、Y’のピークの方位角度を信号波の方位角度、すなわち波源の方位角度(波源位置)として推定する(S10)。
【0055】
以上説明したように、第1実施形態の位置推定装置10によれば、受信信号xnを、K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号xn(k)’の合成で近似し、単一波信号xn(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、実在しない非実在受信素子の単一波信号を生成し(受信アンテナ開口拡大)、単一波信号xn(k)’および非実在受信素子の単一波信号を合成した合成信号xm’を生成する。
これにより、受信信号xnが2個以上の波源からの信号を含んでいても、単一波信号の受信アンテナ間の位相差に応じて、実在しない受信アンテナを含む、すなわち受信アンテナ開口拡大した合成信号xm’を生成することができる。
この受信アンテナ開口拡大した合成信号xm’をフーリエ変換して、方位角度分布(方位角度スペクトル)(推定関数)を生成することにより、2個以上のピークの分離能を高めることができる。したがって、これらのピークを2個以上の波源の方位角度として推定する際、波源の方位角度の推定の分離能を高めることができる。
なお、本実施形態は、波源が1つの場合にも適用可能であり、この場合には、位置推定装置および位置推定方法の分解能を高めることができる。
【0056】
また、第1実施形態の位置推定装置10によれば、第2処理部12において、M-N個の非実在受信素子の単一波信号の生成数は、N個の受信素子の単一波信号xn(k)’の数の2倍以上である。これにより、複数の波源の方位角度の分離限界をレイリー限界よりも小さくすることができ、第3処理部13によるフーリエ変換を用いた方位角度推定を高分離能化することができる。
【0057】
また、第1実施形態の位置推定装置によれば、上述したBeamformer法およびMUSIC法の問題を解消または緩和することができる。
(1) Beamformer法と比べ、分解能、分離能が向上し、推定ピークが明瞭になるので、物標検知が容易になる(上記問題(1)の解消)。
(2) MUSIC法と比べ、受信信号データが1つでよく、よって静止物にも対応可能である(上記問題(2)の解消)。
(3) MUSIC法と比べ、推定ピーク強度が信号波の強度をよく反映している(上記問題(3)の解消)。
(4) MUSIC法と比べ、明らかな誤推定が少ない(上記問題(4)の緩和)
【0058】
(第2実施形態)
第1実施形態では、
図15に示すように、2つのピークの間に誤ピークが生じてしまう。これは、手順1の分析過程における最初のピークp0の影響である。
第2実施形態では、手順1における最初のi回分のピークを無視する。
【0059】
第2実施形態に係る位置推定装置の構成は、
図7に示す第1実施形態の位置推定装置10の構成と同一である。なお、第2実施形態に係る位置推定装置では、第2処理部12の機能および動作が第1実施形態の位置推定装置10の機能および動作と異なる。
図16は、第2実施形態に係る位置推定装置10による位置推定処理(DOA2)のフローチャートである。
【0060】
(手順2)
第2処理部12は、N個の受信アンテナ(番号0~3)およびM-N個の非実在受信アンテナ(番号-4~-1、4~11)ごとに、K個の単一波信号x
n(k)’を合成することによって、N個の受信アンテナおよびM-N個の非実在受信アンテナの合成信号x
m’を生成する際、K個の単一波信号x
n(k)’およびそれに対応するK個の非実在受信アンテナの単一波信号のうち所定のi個を使用しない。
【数3】
Δφ0=-2π(d/λ)sin(θ
k)
※mは受信アンテナ番号(-4~11)
【数4】
【0061】
図17Aは、第2実施形態の推定関数Yの算出結果を示す図である。
図17Aに示すように、方位角度7度に生じていた誤ピークを低減することができる。このように、手順1において、複数の信号波の干渉によって誤った角度にピークが生じる可能性の高い最初のi回分(i=2程度が適当と思われる)の単一波信号を手順2で用いないことにより、誤ピークの発生を低減することができる。
【0062】
しかし、その代わりに誤ピークに近い真値0度に対応するピーク強度が低下してしまい、本来は同強度である20度のピーク強度とのバランスが崩れてしまう。
【0063】
このピーク強度バランス崩れは、手順1で用いる減算率Mの値を小さくすることにより(例えば、M=0.4→0.3)、軽減可能である(
図17B参照)。
なお、ピーク強度はターゲットの状態(形状や素材、向き)等で大きく変化する値であるので、このバランス崩れは許容範囲内であれば深刻な問題ではないと考えられる。
【0064】
なお、本実施形態では、使用しない所定のi個を、最初のi回分に設定したが、最初以外のi回分に設定してもよい。
【0065】
次に、
図16を参照して、第2実施形態の位置推定装置10による位置推定処理(DOA2)を説明する。
図16に示す位置推定処理は、
図8のステップS8(手順2)に代えてステップS11を含む点で、第1実施形態の位置推定処理と異なる。
【0066】
ステップS11では、第2処理部12は、N個の受信アンテナ(番号0~3)およびM-N個の非実在受信アンテナ(番号-4~-1、4~11)ごとに、K個の単一波信号xn(k)’を合成することによって、N個の受信アンテナおよびM-N個の非実在受信アンテナの合成信号xm’を生成する際、K個の単一波信号xn(k)’およびそれに対応するK個の非実在受信アンテナの単一波信号のうち所定のi個を使用しない。
【0067】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第2実施形態の手順1~3を行った後に、再度手順1~3を行う。この2周目の手順1において、1周目で得られた方位角度で、単一波信号xn(k)’を生成する。
【0068】
第3実施形態に係る位置推定装置の構成は、
図7に示す第1実施形態の位置推定装置10の構成と同一である。なお、第3実施形態に係る位置推定装置では、第2処理部12の機能および動作が第1実施形態の位置推定装置10の機能および動作と異なる。
図18は、第3実施形態の位置推定装置10による位置推定処理(DOA3)のフローチャートである。
【0069】
第2実施形態の手順1~3を行うと、
図17Bに示すように方位角度24度が得られる。
(2周目の手順1)
第1処理部11は、
(2)N個の受信アンテナの単一波信号x
n(k)’を最初に生成する際、既に第3処理部13によって合成信号x
m’を用いて推定された波源の方位角度に基づいて、
(2)生成した推定関数Y(k)における、既に推定された波源の方位角度の推定関数Y(k)を形成する単一波信号について、N個の受信アンテナの単一波信号x
n(k)’を生成する。
【0070】
例えば、
図19に示すように、第1処理部11は、合成信号x
n(0)の推定関数|Y(0)|のピークではなく、1周目に求めた方位角度24度の信号を形成する単一波信号を生成し、この単一波信号で合成信号x
n(0)の最初の減算を行う。
このとき、第1処理部11は、最初のみ減算率Mを大きく設定し、方位角度7度の誤ピークに影響される要素を大きく減らす(例えば、M=0.8)。
【0071】
手順1の2周目において、方位角度7度の誤ピークの影響を排除した結果、第2実施形態で失った最初のi回分の成分を取り戻すことができる(
図20参照)。
また、真値0度に対応するピークの誤差も低減することができる(
図20参照)。
【0072】
第3実施形態では、更にこの結果を用いて、3周目の手順1の最初の減算を-1度で行うと、真値24度のピークの誤差も低減することができる。
【0073】
次に、
図18を参照して、第3実施形態の位置推定装置10による位置推定処理(DOA3)を説明する。
図18に示す位置推定処理は、
図8に示す位置推定処理においてステップS12およびS13を更に含む点で第1実施形態と異なる。
【0074】
ステップS12では、
図16に示す第2実施形態の位置推定(DOA3)が行われる。その後、2周目の処理が行われる。
2周目の処理において、k=0をセットした後(S1)、第1処理部11は、
(1)N個の受信アンテナの合成信号x
n(0)をフーリエ変換することにより、信号波の方位角度分布(方位角度スペクトラム)を推定関数Y(0)として生成し、
(2)生成した推定関数Y(0)のピークを形成する単一波信号に代えて、既に第3処理部13によって合成信号x
m’を用いて推定された波源の方位角度に基づいて、生成した推定関数Y(0)における、既に推定された波源の方位角度の推定関数Y(0)を形成する単一波信号について、N個の受信アンテナの単一波信号x
n(0)’を生成し、
(3)N個の受信アンテナごとに、合成信号x
n(0)から、単一波信号x
n(0)’に所定の減算率Mを乗算したM・x
n(0)’を減算して、N個の受信アンテナの残りの合成信号x
n(1)を生成する(S13)。
【0075】
換言すれば、第1処理部11は、2周目の最初の減算において、合成信号xn(0)の推定関数|Y(0)|のピークではなく、1周目に求めた方位角度24度の信号を形成する単一波信号を生成し、この単一波信号で合成信号xn(0)の最初の減算を行う。
このとき、第1処理部11は、最初のみ減算率Mを大きく設定し、方位角度7度の誤ピークに影響される要素を大きく減らす(例えば、M=0.8)。
その後、上述したようにステップS2~S10の処理が行われる。
【0076】
(第4実施形態)
上述した第1~第3実施形態の方位角度推定の手順は、距離推定にもそのまま適用することができる。まず、第4実施形態に係る距離推定の概要について説明する。
図21は、第4実施形態に係る距離推定の一例を説明するための図であり(FMCW方式)、
図22は、第4実施形態に係る距離推定の他の一例を説明するための図である(パルス方式)。
図21の(A)は、FMCW方式の信号波を受信する4個の受信アンテナごとの受信信号Rx0~Rx3を示し、その縦軸は受信信号の振幅(実数成分と虚数成分の二乗和の平方根)|I+jQ|、受信信号の実数成分Rx_Iおよび虚数成分Rx_Qであり、横軸は時間である。
図21の(B)は、
図21の(A)に示す受信信号Rx0~Rx3をフーリエ変換した推定関数Yを示し、その縦軸は推定関数の振幅(実数成分と虚数成分の二乗和の平方根)|I+jQ|、推定関数の実数成分Rx_Iおよび虚数成分Rx_Qであり、横軸は周波数である。
図21の(C)は、
図21の(B)に示す推定関数Yの横軸を距離に換算した推定関数Yを示す。
図22の(B)は、パルス方式の信号波を受信する4個の受信アンテナごとの受信信号Rx0~Rx3、または
図22の(A)に示す受信信号Rx0~Rx3をフーリエ変換した推定関数Yを示し、その縦軸は受信信号または推定関数Yの振幅(実数成分と虚数成分の二乗和の平方根)|I+jQ|、受信信号または推定関数Yの実数成分Rx_Iおよび虚数成分Rx_Qであり、横軸は時間である。
図22の(A)は、
図22の(B)に示す受信信号Rx0~Rx3を逆フーリエ変換した受信信号Rx0~Rx3を示し、その縦軸は受信信号の振幅(実数成分と虚数成分の二乗和の平方根)|I+jQ|、受信信号の実数成分Rx_Iおよび虚数成分Rx_Qであり、横軸は周波数である。
図22の(C)は、
図22の(B)に示す推定関数Yの横軸を距離に換算した推定関数Yを示す。
【0077】
例えば、上述した方位角度推定の手順を、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダの距離推定に適用する場合、
図2および
図9Aのn個の受信アンテナの受信信号x
nに代えて、受信アンテナごとに、
図21の(A)の時刻に対する受信信号を用いればよい。すなわち、
図2および
図9Aにおいて、横軸が、受信素子番号に代えて、時系列の受信データの時刻番号となる。
また、フーリエ変換後の
図3Bおよび
図9Bの角度分布(角度スペクトル)の推定関数Yに代えて、受信アンテナごとに、
図21の(C)の距離分布の推定関数Yを用いればよい。すなわち、
図3Bおよび
図9Bにおいて、横軸が、方位角度に代えて距離となる。
【0078】
一方、上述した方位角度推定の手順を、パルスレーダの距離推定に適用する場合、
図22の(B)のように時刻に対応する受信信号強度のデータが得られるが、時間軸を距離に変換するだけで距離の推定関数Yが得られる。そのためFMCWレーダの様なフーリエ変換前のデータが無いが、
図22の(A)のように時間軸データに対して逆フーリエ変換を行うことでフーリエ変換前のデータを生成することができ、これは、方位角度推定における
図2および
図9Aのn個の受信アンテナの受信信号x
nに対応する。手順2において時系列データを増やすのではなく、手順3においてパルス信号の周波数帯域を拡大することで、同様の処理を行うことができる。
【0079】
本実施形態の距離推定(位置推定)の手法は、フーリエ変換を用いる種々の装置に適用可能である。
例えば、FMCW方式のレーダ装置では、受信信号の時系列データをフーリエ変換することで距離推定を行っているので、上述したように本実施形態の距離推定(位置推定)の手法は、FMCW方式のレーダ装置に適用可能である。
【0080】
一方、パルス方式のレーダ装置には上記のフーリエ変換部分が存在しない(FMCW方式を基準にしてパルス方式を表現すると「パルス方式はフーリエ変換に相当する演算をアナログ回路上で実施するレーダ装置」である)。そのため、そのままでの転用は不可であるが、測定データを逆フーリエ変換すると上述した受信信号xn相当を生成することができる。
【0081】
また、本実施形態の距離推定(位置推定)の手法は、FMCW方式、パルス方式に限定されず、相対速度分析(ドップラスペクトル分析)の高度化、マイクロドップラの詳細分析にも応用することができる。
【0082】
次に、第4実施形態に係る距離推定の詳細について説明する。第4実施形態に係る位置推定装置(距離推定)の構成は、
図7に示す第1実施形態の位置推定装置10(方位角度推定)の構成と同一である。なお、第4実施形態に係る位置推定装置では、第1処理部11、第2処理部12および第3処理部13の機能および動作が第1実施形態の位置推定装置10の機能および動作と異なる。
第4実施形態の位置推定装置10は、4個の受信アンテナごとに、受信する信号波であって干渉性を有する信号波の波源位置として、波源との距離の推定を行う装置である。
【0083】
(FMCWの場合)
例えば、
図21の(A)に示すように(上述した
図9の(A)相当)、受信アンテナによって受信する信号波(Rx0~Rx3)は、時間軸で周波数変化する周波数変調波であり、時間軸を分割したN個の時刻における受信信号をx
nとする(Nは2以上の整数であり、nはN個の時刻の番号である。)。
位置推定装置10は、受信アンテナごとに、すなわち受信アンテナによって受信する受信信号x
n(Rx0~Rx3)ごとに、以下の処理を行う。
【0084】
(手順1)
第1処理部11は、上述した第1実施形態と同様に、受信アンテナによって信号波を受信することにより生成される受信信号xnを、K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号xn(k)’の合成波信号として近似する(Kは2以上の整数であり、kはK個の仮想的な単一波源の番号である。)。
【0085】
具体的には、第1処理部11は、N個の時刻の受信信号x
nはK個の単一波信号x
n(k)’の合成信号x
n(0)であると仮定し、以下の処理を行う。すなわち、第1処理部11は、
(1)N個の時刻の合成信号x
n(k)をフーリエ変換することにより、信号波の距離分布を推定関数Y(k)として生成し(
図21の(C):上述した
図9の(B)相当)、
(2)生成した推定関数Y(k)のピークを形成する単一波信号についてN個の時刻の単一波信号x
n(k)’を生成し、
(3)N個の時刻ごとに、合成信号x
n(k)から、単一波信号x
n(k)’に所定の減算率Mを乗算したM・x
n(k)’を減算して、N個の時刻の残りの合成信号x
n(k’)を生成する。
x
n(k’)=x
n(k)-M・x
n(k)’
k’は、kを1だけインクリメントした値である。
第1処理部11は、k’=Kとなるまで、残りの合成信号x
n(k’)に対して、上記(1)~(3)の処理を繰り返す。
このように、kを1ずつインクリメントして、合成信号x
n(k)に対して上記(1)~(3)の処理を繰り返すことにより、N個の時刻の受信信号x
nを、K個の単一波信号x
n(k)’の線形合成信号として近似することができる。
【0086】
(手順2)
第2処理部12は、上述した第1実施形態と同様に、K個の単一波信号xn(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、実在しないM-N個の非実在時刻の単一波信号を生成する。M-N個の非実在時刻の単一波信号の生成数は、N個の時刻の単一波信号xn(k)’の数の2倍以上である。これにより、複数の波源の距離の分離限界を小さくすることができ、第3処理部13によるフーリエ変換を用いた距離推定を高分離能化することができる。
【0087】
第2処理部12は、上述した第1実施形態と同様に、実在するN個の時刻および実在しないM-N個の非実在時刻ごとに、K個の単一波信号xn(k)’を合成することによって、N個の時刻およびM-N個の非実在時刻の合成信号xm’を生成する(M>Nであり、mはN個の時刻および(M-N)個の非実在時刻の番号である)。
【0088】
(手順3)
第3処理部13は、上述した第1実施形態と同様に、生成した合成信号xm’をフーリエ変換することにより、推定関数Y’を生成し、Y’ピークの距離を波源との距離(波源位置)として推定する。
位置推定装置10は、上述した処理を受信アンテナごとに行い、4つの受信アンテナのうちのいずれか1つの受信アンテナの推定結果を常に採用してもよいし、4つの受信アンテナのうちの最大値を有する受信アンテナの推定結果を採用してもよい。
【0089】
以上説明したように、第4実施形態の位置推定装置10によれば、受信信号xnを、K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号xn(k)’の合成で近似し、単一波信号xn(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、実在しない非実在受信素子の単一波信号を生成し、単一波信号xn(k)’および非実在受信素子の単一波信号を合成した合成信号xm’を生成する。これにより、受信信号xnが2個以上の波源からの信号を含んでいても、広帯域化した合成信号xm’を生成することができる。
この広帯域化した合成信号xm’をフーリエ変換して、距離分布(推定関数)を生成することにより、2個以上のピークの分離能を高めることができる。したがって、これらのピークを2個以上の波源との距離として推定する際、波源との距離の推定の分離能を高めることができる。
なお、本実施形態は、波源が1つの場合にも適用可能であり、この場合には、位置推定装置および位置推定方法の分解能を高めることができる。
【0090】
なお、第4実施形態の第2処理部12は、上述した第2実施形態と同様に、N個の時刻およびM-N個の非実在時刻ごとに、K個の単一波信号xn(k)’を合成することによって、N個の時刻およびM-N個の非実在時刻の合成信号xm’を生成する際、K個の単一波信号xn(k)’およびそれに対応するK個の非実在時刻の単一波信号のうち所定のi個を使用しなくてもよい(iはK未満の整数である。)。
これによれば、上述した第2実施形態と同様に、手順1において、複数の信号波の干渉によって誤った距離にピークが生じる可能性の高い最初のi回分(i=2程度が適当と思われる)の単一波信号を手順2で用いないことにより、誤ピークの発生を低減することができる。
【0091】
また、第4実施形態では、上述した第3実施形態と同様に、手順1~3を行った後に再度手順1~3を行い、この2周目の手順1において、1周目で得られた距離で、単一波信号xn(k)’を生成してもよい。具体的には、第1処理部11は、
(2)N個の時刻の単一波信号xn(k)’を最初に生成する際、既に第3処理部13によって生成した合成信号xm’を用いて推定された波源との距離に基づいて、
(2)生成した推定関数Y(k)における、既に推定された波源との距離の推定関数Y(k)を形成する単一波信号について、N個の時刻の単一波信号xn(k)’を生成してもよい。
このとき、第1処理部11は、最初のみ減算率Mを大きく設定し、誤ピークに影響される要素を大きく減らしてもよい。
これによれば、上述した第3実施形態と同様に、手順1の2周目において、誤ピークの影響を排除した結果、最初のi回分を使用しないことにより失った最初のi回分の成分を取り戻すことができる。
【0092】
(パルス変調の場合)
例えば、
図22の(A)に示すように(上述した
図9の(A)相当)、受信アンテナによって受信する信号波(Rx0~Rx3)は、時間軸でパルス状に強度変化するパルス変調波であり、時間軸を変換した周波数軸を分割したN個の周波数における受信信号をx
nとする(Nは2以上の整数であり、nはN個の周波数の番号である。)。
位置推定装置10は、受信アンテナごとに、すなわち受信アンテナによって受信する受信信号x
n(Rx0~Rx3)ごとに、以下の処理を行う。
【0093】
(手順1)
第1処理部11は、上述した第1実施形態と同様に、受信アンテナによって信号波を受信することにより生成される受信信号xnを、K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号xn(k)’の合成波信号として近似する(Kは2以上の整数であり、kはK個の仮想的な単一波源の番号である。)。
【0094】
具体的には、第1処理部11は、N個の周波数の受信信号x
nはK個の単一波信号x
n(k)’の合成信号x
n(0)であると仮定し、以下の処理を行う。すなわち、第1処理部11は、
(1)N個の周波数の合成信号x
n(k)をフーリエ変換することにより、信号波の距離分布を推定関数Y(k)として生成し、(
図22の(C):上述した
図9の(B)相当)
(2)生成した推定関数Y(k)のピークを形成する単一波信号についてN個の周波数の単一波信号x
n(k)’を生成し、
(3)N個の周波数ごとに、合成信号x
n(k)から、前記単一波信号x
n(k)’に所定の減算率Mを乗算したM・x
n(k)’を減算して、N個の周波数の残りの合成信号x
n(k’)を生成する。
x
n(k’)=x
n(k)-M・x
n(k)’
k’は、kを1だけインクリメントした値である。
第1処理部11は、k’=Kとなるまで、残りの合成信号x
n(k’)に対して、上記(1)~(3)の処理を繰り返す。
このように、kを1ずつインクリメントして、合成信号x
n(k)に対して上記(1)~(3)の処理を繰り返すことにより、N個の周波数の受信信号x
nを、K個の単一波信号x
n(k)’の線形合成信号として近似することができる。
【0095】
(手順2)
第2処理部12は、上述した第1実施形態と同様に、K個の単一波信号xn(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、実在しないM-N個の非実在周波数の単一波信号を生成する。M-N個の非実在周波数の単一波信号の生成数は、N個の周波数の単一波信号xn(k)’の数の2倍以上である。これにより、複数の波源の距離の分離限界をレイリー限界よりも小さくすることができ、第3処理部13によるフーリエ変換を用いた距離推定を高分離能化することができる。
【0096】
第2処理部12は、上述した第1実施形態と同様に、実在するN個の周波数および実在しないM-N個の非実在周波数ごとに、K個の単一波信号xn(k)’を合成することによって、N個の周波数およびM-N個の非実在周波数の合成信号xm’を生成する(M>Nであり、mはN個の周波数および(M-N)個の非実在周波数の番号である。)。
【0097】
(手順3)
第3処理部13は、上述した第1実施形態と同様に、生成した合成信号xm’をフーリエ変換することにより、推定関数Y’を生成し、Y’ピークの距離を波源との距離(波源位置)として推定する。
位置推定装置10は、上述した処理を受信アンテナごとに行い、4つの受信アンテナのうちのいずれか1つの受信アンテナの推定結果を常に採用してもよいし、4つの受信アンテナのうちの最大値を有する受信アンテナの推定結果を採用してもよい。
【0098】
以上説明したように、第4実施形態の位置推定装置10によれば、受信信号xnを、K個の仮想的な単一波源から生成される単一波信号xn(k)’の合成で近似し、単一波信号xn(k)’ごとに、所定の位相差に応じて、実在しない非実在受信素子の単一波信号を生成し、単一波信号xn(k)’および非実在受信素子の単一波信号を合成した合成信号xm’を生成する。これにより、受信信号xnが2個以上の波源からの信号を含んでいても、広帯域化した合成信号xm’を生成することができる。
この広帯域化した合成信号xm’をフーリエ変換して、距離分布(推定関数)を生成することにより、2個以上のピークの分離能を高めることができる。したがって、これらのピークを2個以上の波源との距離として推定する際、波源との距離の推定の分離能を高めることができる。
なお、本実施形態は、波源が1つの場合にも適用可能であり、この場合には、位置推定装置および位置推定方法の分解能を高めることができる。
【0099】
なお、第4実施形態の第2処理部は、上述した第2実施形態と同様に、N個の周波数およびM-N個の非実在周波数ごとに、K個の単一波信号xn(k)’を合成することによって、N個の周波数およびM-N個の非実在周波数の合成信号xm’を生成する際、K個の単一波信号xn(k)’およびそれに対応するK個の非実在周波数の単一波信号のうち所定のi個を使用しなくてもよい(iはK未満の整数である。)。
これによれば、上述した第2実施形態と同様に、手順1において、複数の信号波の干渉によって誤った距離にピークが生じる可能性の高い最初のi回分(i=2程度が適当と思われる)の単一波信号を手順2で用いないことにより、誤ピークの発生を低減することができる。
【0100】
また、第4実施形態では、上述した第3実施形態と同様に、手順1~3を行った後に再度手順1~3を行い、この2周目の手順1において、1周目で得られた距離で、単一波信号xn(k)’を生成してもよい。具体的には、第1処理部11は、
(2)N個の周波数の単一波信号xn(k)’を最初に生成する際、既に前記第3処理部によって生成した合成信号xm’を用いて推定された波源との距離に基づいて、
(2)生成した推定関数Y(k)における既に推定された波源との距離の推定関数Y(k)を形成する単一波信号についてN個の周波数の単一波信号xn(k)’を生成してもよい。
このとき、第1処理部11は、最初のみ減算率Mを大きく設定し、誤ピークに影響される要素を大きく減らしてもよい。
これによれば、上述した第3実施形態と同様に、手順1の2周目において、誤ピークの影響を排除した結果、最初のi回分を使用しないことにより失った最初のi回分の成分を取り戻すことができる。
【0101】
以下では、本実施形態の距離推定(位置推定)の効果について説明する。
図23は、第4実施形態の位置推定装置による距離推定の効果を説明するための図であり、手順3によって合成信号x
m’をフーリエ変換することにより生成した推定関数Y’の一例を示す図である。
図23では、3つの物標(ターゲット)A,B,Cが、レーダ装置を原点としたxy座標系において下記のように配置された例を示す(単位は[m])。
物標A:(x,y)= (-1,3)
物標B:(x,y)= (0,4)
物標C:(x,y)= (1,5)
図23には、推定関数Yの振幅(実数成分と虚数成分の二乗和の平方根)|I+jQ|、推定関数Yの実数成分Rx_Iおよび虚数成分Rx_Qが示されている。
【0102】
図23おいて、本実施例では、距離0mの大きなピークは送信アンテナからの送信信号波が受信アンテナに直接入射した成分であり、送信信号の波源が距離0mにあることが示されている。
従来例では、距離3~5m付近に緩やかなピーク形状がみられ、3つの物標を分離検出できていない。これに対して、本実施例では、物標A,B,Cの距離に対応した位置に3つのピークを確認することができる。
【0103】
また、第1~第3実施形態の方位角度推定と第4実施形態の距離推定とは、組み合わせて使用されることが出来る。
図24は、第1実施形態の方位角度推定と第4実施形態の距離推定との組み合わせによる位置推定の効果を説明するための図である。
図24において、矢印(1)が方位角度推定処理であり、矢印(2)が距離推定処理である。
【0104】
図24によれば、従来例(左上)に本実施形態の方位角度推定(開口拡大処理)を適用することにより(左下)、上記の物標(ターゲット)A,B,Cの方位角度の分離能を高めることができる。
また、従来例(左上)に本実施形態の距離推定(広帯域化処理)を適用することにより(右上)、物標A,B,Cとの距離の分離能を高めることができる。
更に、従来例(左上)に本実施形態の距離推定(広帯域化処理)および方位角度推定(開口拡大処理)をこの順に適用することにより(右下)、上記の物標A,B,Cとの距離の分離能および物標A,B,Cの方位角度の分離能を高めることができる。
【0105】
このように、本実施形態の方位角度推定および距離推定(位置推定)によれば、従来例では、ぼんやりとした1つの塊としか認識できなかった複数の検出対象である物標(方位角度差20度)を個別に検出可能となる。なお、本実施形態の方位角度推定および距離推定(位置推定)によれば、行う信号処理は単純なピークサーチと減算の繰り返しでありながら、
図24に示すように高い効果を示した。
【0106】
(第5実施形態)
次に、上述した位置推定装置(方位角度推定装置および距離推定装置)をレーダ装置に適用する一例を説明する。
図25は、第5実施形態に係るレーダ装置の構成を示す図である。
図25に示すレーダ装置100は、例えば76GHz帯域または79GHz帯域の車載用ミリ波レーダ、または、24GHz帯域の車載用レーダ等の種々の車載用レーダに用いられる装置である。
【0107】
レーダ装置100は、送信アンテナTxから送信波を送信し、この送信波が物標(ターゲット)で反射された反射波を複数の受信アンテナRxで受信する。レーダ装置100は、複数の受信アンテナRxで受信した受信信号に基づいて、物標の位置(物標との距離、物標の方位角度)、物標の速度(相対速度)を検出(推定)する。
レーダ装置100は、制御部101と、送信制御部110と、送信部111と、受信信号処理部120と、受信部121と、1つの送信アンテナTxと、複数の受信アンテナRxとを備える。
【0108】
制御部101、送信制御部110および受信信号処理部120は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の演算プロセッサで構成される。制御部101、送信制御部110および受信信号処理部120の各種機能は、例えば記憶部に格納された所定のソフトウェア(プログラム、アプリケーション)を実行することで実現される。制御部101、送信制御部110および受信信号処理部120の各種機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
【0109】
制御部101は、レーダ装置100全体の動作を制御する。
送信制御部110は、送信部111を制御する。
送信部111は、VCO(Voltage-controlled oscillator)、変調器、アンプ等を備える。VCOは送信制御部110からの周波数制御信号に基づいて、所定の高周波信号を生成する。変調器は、VCOからの高周波信号を、送信制御部110からの変調信号で変調して送信信号を生成する。生成された送信信号は、アンプおよび送信アンテナTxを介して送信される。
【0110】
受信部121は、アンプ、IQミキサ、フィルタ、ADC等を備える。受信部121は、受信アンテナRxおよびアンプを介して受信信号を受信する。
IQミキサは、受信信号を、VCOからの高周波信号で直交位相検波して同位相のI信号と、位相が90度(π/2)ずれたQ信号とを出力する。
ADCは、フィルタを介して入力されるI信号、Q信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングすることにより、アナログ-ディジタル変換を行う。ADCは、ディジタル信号に変換されたI信号、Q信号を受信信号処理部120に出力する。
【0111】
受信信号処理部120は、距離推定部131と、速度推定部132と、方位角度推定部133と、クラスタリング処理部134とを備える。
この距離推定部131に、上述した第4実施形態の位置推定装置(距離推定)が適用され、方位角度推定部133に、上述した第1~第3実施形態の位置推定装置(方位角度推定)が適用されればよい。
【0112】
速度推定部132は、物標の速度(相対速度)を推定する。
クラスタリング処理部134は、クラスタリング処理を実行する。クラスタリング処理とは、同一物標上の反射点をクラスタとしてまとめる処理である。
【0113】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、送信素子が1個および受信素子が4個の形態を想定した位置推定装置を例示したが、本発明は、2以上の受信素子からの受信信号から複数の波源位置を推定する位置推定装置に適用可能である。
【0114】
また、本発明は、2以上の送信素子を用いる装置における位置推定装置にも適用可能である。例えば、送信素子が2個および受信素子が4個の形態は、送信素子が1個および受信素子が8個の形態と等価となる。このように、上述した位置推定装置は、N個の受信素子によって受信する受信信号xnとして、物理的に存在する受信素子によって受信する受信信号xnのみならず、複数の送信素子を用いることによって仮想的に存在する受信素子の受信信号を用いて波源の位置推定を行ってもよい。
【0115】
また、本発明は、送信素子が複数および受信素子が1個の形態にも適用可能である。例えば、送信素子が4個および受信素子が1個の形態は、送信素子が1個および受信素子が4個の形態と等価となる。
例えば、レーザ光を送信波とする光アレイが送信素子である場合のLiDAR装置がこのような形態に相当する。このようなLiDAR装置では、光導波路の分岐によるレーザ光の減衰により送信素子の増加に制限があるため、低分離能である。本発明は、このようなLiDAR装置に適用することにより、LiDAR装置の高分離能化を可能とする。
【0116】
また、本発明は、送信素子を用いて物標(波源)からの反射波を受信する形態のみならず、送信素子を備えず、発信源である物標(波源)からの信号波を受信する装置にも適用可能である。
【0117】
また、上述した実施形態では、位置推定装置を備えるレーダ装置を例示した。しかし、本発明の位置推定装置は、これに限定されず、干渉性を有する信号波(例えば、電磁波(電波、テラヘルツ波、レーザ光、X線)および音波(超音波))を受信する種々の装置(例えば、LiDAR、マイクロホンアレーを用いた音源定位、ミリ波ボディスキャナ、MRI、X線CT、光CT、超音波検査機、等)に適用可能である。
なお、ミリ波ボディスキャナ、MRI、X線CT、光CT、超音波検査機では、多アレイ素子化が容易であったり、合成開口が可能であったりするので、本発明とは別技術によって複数の到来波の高分離能化が可能である。よって、本発明は、レーダ装置、LiDAR、マイクロホンアレーを用いた音源定位に好適に用いられることが予想される。
【符号の説明】
【0118】
10 位置推定装置
11 第1処理部
12 第2処理部
13 第3処理部
100 レーダ装置
101 制御部
110 送信制御部
111 送信部
120 受信信号処理部
121 受信部
Tx 送信アンテナ
Rx 受信アンテナ