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特許7252016動画像符号化装置、動画像復号装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】動画像符号化装置、動画像復号装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/105 20140101AFI20230328BHJP
   H04N 19/176 20140101ALI20230328BHJP
   H04N 19/139 20140101ALI20230328BHJP
   H04N 19/59 20140101ALI20230328BHJP
【FI】
H04N19/105
H04N19/176
H04N19/139
H04N19/59
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019046520
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020150422
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】松尾 康孝
【審査官】間宮 嘉誉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0242011(US,A1)
【文献】特表2016-514378(JP,A)
【文献】特開2004-266778(JP,A)
【文献】松尾康孝,ほか2名,超解像・ぼやけピクチャを用いた画面間予測による符号化効率改善の検討,Proc. PCSJ/IMPS2018,日本,2018年11月19日,P-1-02,pp.20, 21
【文献】LAI, Polin et al.,Adaptive Reference Filtering for MVC,JVT-W065,ITU,2007年04月23日,pp.1-11,[online],retrieved on 2023-02-17,Retrieved from the Internet: <URL: https://itu.int/wftp3/av-arch/jvt-site/2007_04_SanJose/JVT-W065.zip>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/12
H04N 19/00-19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力動画像から予測画像を減算して残差画像を生成し、当該残差画像に対し直交変換、量子化及びエントロピー符号化を行い、符号化信号を生成して出力すると共に、前記量子化により生成した量子化インデックス列に対し逆量子化及び逆直交変換を行い、復号残差画像を生成し、当該復号残差画像に前記予測画像を加算して加算後画像を生成し、当該加算後画像にフィルタ処理を施して局部復号ピクチャを生成し、当該局部復号ピクチャを用いて画面間予測を行い、前記予測画像を生成する動画像符号化装置において、
前記局部復号ピクチャに基づいて複数の超解像ピクチャを生成し、前記画面間予測により、所定領域毎に、前記局部復号ピクチャの予測画像及び前記複数の超解像ピクチャの予測画像を生成し、これらの前記予測画像のうちのいずれか一つを選択する画面間予測部を備え、
前記画面間予測部は、
前記局部復号ピクチャに超解像処理を施し、水平方向の高周波帯域の成分を強調したピクチャ、垂直方向の高周波帯域の成分を強調したピクチャ及び対角方向の高周波帯域の成分を強調したピクチャを、前記複数の超解像ピクチャとして生成する超解像処理部と、
現在の前記局部復号ピクチャを基準ピクチャとし、過去の前記局部復号ピクチャ及び前記超解像処理部により生成された過去の前記複数の超解像ピクチャのそれぞれを参照ピクチャとして前記画面間予測を行い、前記所定領域毎に、前記局部復号ピクチャの予測画像及び動きベクトルを生成すると共に、前記複数の超解像ピクチャの予測画像及び動きベクトルを生成する画面間予測処理部と、
現在の前記局部復号ピクチャ及び過去の前記局部復号ピクチャの周波数解析を行い、現在の前記局部復号ピクチャと過去の前記局部復号ピクチャとの間のパワー変動情報を生成する周波数解析部と、
前記所定領域毎に、前記周波数解析部により生成された前記パワー変動情報、または、前記パワー変動情報並びに前記画面間予測処理部により生成された前記局部復号ピクチャの動きベクトル及び前記複数の超解像ピクチャの動きベクトルに基づいて、前記局部復号ピクチャの予測画像及び前記複数の超解像ピクチャの予測画像のうちのいずれか一つを選択する選択部と、
を備えたことを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項2】
入力動画像から予測画像を減算して残差画像を生成し、当該残差画像に対し直交変換、量子化及びエントロピー符号化を行い、符号化信号を生成して出力すると共に、前記量子化により生成した量子化インデックス列に対し逆量子化及び逆直交変換を行い、復号残差画像を生成し、当該復号残差画像に前記予測画像を加算して加算後画像を生成し、当該加算後画像にフィルタ処理を施して局部復号ピクチャを生成し、当該局部復号ピクチャを用いて画面間予測を行い、前記予測画像を生成する動画像符号化装置において、
前記局部復号ピクチャに基づいて複数のぼやけピクチャを生成し、前記画面間予測により、所定領域毎に、前記局部復号ピクチャの予測画像及び前記複数のぼやけピクチャの予測画像を生成し、これらの前記予測画像のうちのいずれか一つを選択する画面間予測部を備え、
前記画面間予測部は、
前記局部復号ピクチャにぼやけ処理を施し、水平方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ、垂直方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ及び対角方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャを、前記複数のぼやけピクチャとして生成するぼやけ処理部と、
現在の前記局部復号ピクチャを基準ピクチャとし、過去の前記局部復号ピクチャ及び前記ぼやけ処理部により生成された過去の前記複数のぼやけピクチャのそれぞれを参照ピクチャとして前記画面間予測を行い、前記所定領域毎に、前記局部復号ピクチャの予測画像及び動きベクトルを生成すると共に、前記複数のぼやけピクチャの予測画像及び動きベクトルを生成する画面間予測処理部と、
現在の前記局部復号ピクチャ及び過去の前記局部復号ピクチャの周波数解析を行い、現在の前記局部復号ピクチャと過去の前記局部復号ピクチャとの間のパワー変動情報を生成する周波数解析部と、
前記所定領域毎に、前記周波数解析部により生成された前記パワー変動情報、または、前記パワー変動情報並びに前記画面間予測処理部により生成された前記局部復号ピクチャの動きベクトル及び前記複数のぼやけピクチャの動きベクトルに基づいて、前記局部復号ピクチャの予測画像及び前記複数のぼやけピクチャの予測画像のうちのいずれか一つを選択する選択部と、
を備えたことを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項3】
請求項1に記載の動画像符号化装置において、
前記局部復号ピクチャに基づいて、前記複数の超解像ピクチャ及び複数のぼやけピクチャを生成し、前記画面間予測により、前記所定領域毎に、前記局部復号ピクチャの予測画像、前記複数の超解像ピクチャの予測画像及び前記複数のぼやけピクチャの予測画像を生成し、これらの前記予測画像のうちのいずれか一つを選択する画面間予測部を備え、
前記画面間予測部は、さらに、
前記局部復号ピクチャにぼやけ処理を施し、水平方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ、垂直方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ及び対角方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャを、前記複数のぼやけピクチャとして生成するぼやけ処理部を備え、
前記画面間予測処理部は、
現在の前記局部復号ピクチャを基準ピクチャとし、過去の前記局部復号ピクチャ、前記超解像処理部により生成された過去の前記複数の超解像ピクチャ、及び前記ぼやけ処理部により生成された過去の前記複数のぼやけピクチャのそれぞれを参照ピクチャとして前記画面間予測を行い、前記所定領域毎に、前記局部復号ピクチャの予測画像及び動きベクトル、前記複数の超解像ピクチャの予測画像及び動きベクトル、並びに前記複数のぼやけピクチャの予測画像及び動きベクトルを生成し、
前記選択部は、
前記所定領域毎に、前記周波数解析部により生成された前記パワー変動情報、または、前記パワー変動情報並びに前記画面間予測処理部により生成された前記局部復号ピクチャの動きベクトル、前記複数の超解像ピクチャの動きベクトル及び前記複数のぼやけピクチャの動きベクトルに基づいて、前記局部復号ピクチャの予測画像、前記複数の超解像ピクチャの予測画像及び前記複数のぼやけピクチャの予測画像のうちのいずれか一つを選択する、ことを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の動画像符号化装置において、
前記周波数解析部は、
現在の前記局部復号ピクチャ及び過去の前記局部復号ピクチャについて、デシメーションを伴わない1階ウェーブレットパケット分解にて前記周波数解析を行い、現在の前記局部復号ピクチャの解析結果及び過去の前記局部復号ピクチャの解析結果に基づいて、周波数帯域毎かつ位相位置毎の前記パワー変動情報を生成する、ことを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項5】
動画像の符号化信号を入力し、当該符号化信号に対しエントロピー復号、逆量子化及び逆直交変換を行い、復号残差画像を生成し、当該復号残差画像に予測画像を加算して加算後画像を生成し、前記加算後画像にフィルタ処理を施して復号ピクチャを生成することで、元の前記動画像を復元し、前記復号ピクチャを用いて画面間予測を行い、前記予測画像を生成する動画像復号装置において、
前記符号化信号に、局部復号ピクチャの予測画像及び複数の超解像ピクチャの予測画像から選択した一つの前記予測画像の種類を示すパラメータが含まれている場合に、
前記復号ピクチャに基づいて複数の超解像ピクチャを生成し、前記画面間予測により、所定領域毎に、前記パラメータに従って前記復号ピクチャ及び前記複数の超解像ピクチャのうちのいずれか一つの予測画像を生成する画面間予測部を備え、
前記画面間予測部は、
前記復号ピクチャに超解像処理を施し、水平方向の高周波帯域の成分を強調したピクチャ、垂直方向の高周波帯域の成分を強調したピクチャ及び対角方向の高周波帯域の成分を強調したピクチャを、前記複数の超解像ピクチャとして生成する超解像処理部と、
前記パラメータに従って、前記復号ピクチャ及び前記超解像処理部により生成された前記複数の超解像ピクチャのうちのいずれか一つのピクチャを用いて前記画面間予測を行い、前記所定領域毎の前記予測画像を生成する画面間予測処理部と、
を備えたことを特徴とする動画像復号装置。
【請求項6】
動画像の符号化信号を入力し、当該符号化信号に対しエントロピー復号、逆量子化及び逆直交変換を行い、復号残差画像を生成し、当該復号残差画像に予測画像を加算して加算後画像を生成し、前記加算後画像にフィルタ処理を施して復号ピクチャを生成することで、元の前記動画像を復元し、前記復号ピクチャを用いて画面間予測を行い、前記予測画像を生成する動画像復号装置において、
前記符号化信号に、局部復号ピクチャの予測画像及び複数のぼやけピクチャの予測画像から選択した一つの前記予測画像の種類を示すパラメータが含まれている場合に、
前記復号ピクチャに基づいて複数のぼやけピクチャを生成し、前記画面間予測により、所定領域毎に、前記パラメータに従って前記復号ピクチャ及び前記複数のぼやけピクチャのうちのいずれか一つの予測画像を生成する画面間予測部を備え、
前記画面間予測部は、
前記復号ピクチャにぼやけ処理を施し、水平方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ、垂直方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ及び対角方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャを、前記複数のぼやけピクチャとして生成するぼやけ処理部と、
前記パラメータに従って、前記復号ピクチャ及び前記ぼやけ処理部により生成された前記複数のぼやけピクチャのうちのいずれか一つのピクチャを用いて前記画面間予測を行い、前記所定領域毎の前記予測画像を生成する画面間予測処理部と、
を備えたことを特徴とする動画像復号装置。
【請求項7】
請求項5に記載の動画像復号装置において、
前記符号化信号に、前記局部復号ピクチャの予測画像、前記複数の超解像ピクチャの予測画像及び複数のぼやけピクチャから選択した一つの前記予測画像の種類を示すパラメータが含まれている場合に、
前記復号ピクチャに基づいて、前記複数の超解像ピクチャ及び前記複数のぼやけピクチャを生成し、前記画面間予測により、前記所定領域毎に、前記パラメータに従って前記復号ピクチャ、前記複数の超解像ピクチャ及び前記複数のぼやけピクチャのうちのいずれか一つの予測画像を生成する画面間予測部を備え、
前記画面間予測部は、さらに、
前記復号ピクチャにぼやけ処理を施し、水平方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ、垂直方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ及び対角方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャを、前記複数のぼやけピクチャとして生成するぼやけ処理部を備え、
前記画面間予測処理部は、
前記パラメータに従って、前記復号ピクチャ、前記超解像処理部により生成された前記複数の超解像ピクチャ及び前記ぼやけ処理部により生成された前記複数のぼやけピクチャのうちのいずれか一つのピクチャを用いて前記画面間予測を行い、前記所定領域毎の前記予測画像を生成する、ことを特徴とする動画像復号装置。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1から4までのいずれか一項に記載の動画像符号化装置として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
コンピュータを、請求項5から7までのいずれか一項に記載の動画像復号装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像を符号化する動画像符号化装置、符号化信号を復号する動画像復号装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、解像度の高い4Kまたは8Kの動画像を対象とした動画圧縮方式の標準規格として、H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)が知られている(例えば非特許文献1を参照)。このH.265/HEVCの規格は、符号化されたフレームを用いて動きを予測し、予測残差の信号を直交変換して符号化する、動き補償及び直交変換の技術を基本としている。
【0003】
図14は、従来の動画像符号化装置の構成例を示すブロック図であり、H.265/HEVCの標準規格に従った符号化側の構成を示している。この動画像符号化装置100は、減算部110、直交変換部111、量子化部112、逆量子化部113、逆直交変換部114、加算部115、画面内予測部116、インループフィルタ117、画面間予測部118、スイッチ119及びエントロピー符号化部120を備えている。画面間予測部118は、画面間予測処理部121及びフレームメモリ122を備えている。
【0004】
動画像符号化装置100は、入力動画像に対し、1フレームのピクチャ毎に符号化処理を行い、符号化信号を生成して出力する装置である。
【0005】
入力動画像のピクチャは、減算部110により、画面内予測部116または画面間予測部118により生成された予測画像との間で減算処理が施される。これにより、残差画像が生成される。
【0006】
残差画像は、直交変換部111による直交変換処理、量子化部112による量子化処理、及びエントロピー符号化部120によりエントロピー符号化が施され、符号化信号として出力される。
【0007】
一方、量子化部112により量子化処理が施された量子化インデックス列は、逆量子化部113による逆量子化処理、逆直交変換部114による逆直交変換処理が施される。これにより、復号残差画像が生成される。
【0008】
復号残差画像は、加算部115により、予測画像との間で加算処理が施される。加算部115による加算結果の画像は、画面内予測部116による画面内予測処理が施される。また、加算結果の画像は、インループフィルタ117によるフィルタ処理が施され、局部復号ピクチャとして画面間予測部118のフレームメモリ122に格納される。
【0009】
フレームメモリ122に格納された局部復号ピクチャは、画面間予測処理部121により過去の局部復号ピクチャとして読み出される。そして、現在の局部復号ピクチャ(入力動画像のピクチャ)を基準ピクチャとし、過去の局部復号ピクチャを参照ピクチャとして、画面間予測処理が行われる。
【0010】
画面内予測部116による画面内予測処理にて生成された画像、及び画面間予測処理部121による画面間予測処理にて生成された画像のうち、いずれか一方がスイッチ119により選択され、予測画像として減算部110へ入力される。
【0011】
このような動き補償及び直交変換を基本とした動画像符号化技術において、符号化効率を向上させるための技術が提案されている。例えば、色差信号の符号化効率を向上させるために、複数フレームによる超解像処理を適用して色差補間を行い、色差間引き画像をYCbCr4:4:4に変換する技術がある(例えば、特許文献1を参照)。
【0012】
また、動画像の符号化効率を向上させるために、画像を縮小してから符号化及び伝送を行い、復号後に超解像復元し、また、画像の複雑度に応じて最適な折り返し周波数を設定して伝送することで、超解像画質を高める技術もある(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第6152642号公報
【文献】特許第6344800号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】大久保榮、「インプレス標準教科書シリーズ H.265/HEVC教科書」、インプレスジャパン
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の動き補償及び直交変換を基本とした動画像符号化技術では、画面間予測処理により生成される予測画像は、例えばブロックマッチング法にて予測誤差が最小となる画像が選択される。これにより、符号化効率を向上させることができ、復号側において客観的に高画質な動画像を得ることができる。
【0016】
しかしながら、動画像のピクチャ間におけるオブジェクトの動きに伴って、領域毎にぼやけまたは鮮鋭化が起こる場合がある。従来の動画像符号化技術では、例えば、ぼやけまたは鮮鋭化が起こる動画像であっても、通常の局部復号画像を用いて予測画像を生成する。
【0017】
このため、ぼやけまたは鮮鋭化が起こる動画像と、通常の動画像(ぼやけまたは鮮鋭化が起こらない動画像)とを区別した画面間予測処理を行うことができない。また、水平方向の動きに伴うぼやけまたは鮮鋭化が起こる動画像と、垂直方向の動きに伴うぼやけまたは鮮鋭化が起こる動画像とを区別した画面間予測を行うことができない。
【0018】
このように、従来の動画像符号化技術では、客観的に高画質な動画像を得ることができるが、必ずしも主観的に高画質な動画像を得ることができるとは限らないという問題があった。
【0019】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、動画像のピクチャ間で領域毎にオブジェクトのぼやけまたは鮮鋭化が起こる場合であっても、主観的に高画質な動画像を得ることが可能な動画像符号化装置、動画像復号装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記課題を解決するために、請求項1の動画像符号化装置は、入力動画像から予測画像を減算して残差画像を生成し、当該残差画像に対し直交変換、量子化及びエントロピー符号化を行い、符号化信号を生成して出力すると共に、前記量子化により生成した量子化インデックス列に対し逆量子化及び逆直交変換を行い、復号残差画像を生成し、当該復号残差画像に前記予測画像を加算して加算後画像を生成し、当該加算後画像にフィルタ処理を施して局部復号ピクチャを生成し、当該局部復号ピクチャを用いて画面間予測を行い、前記予測画像を生成する動画像符号化装置において、前記局部復号ピクチャに基づいて複数の超解像ピクチャを生成し、前記画面間予測により、所定領域毎に、前記局部復号ピクチャの予測画像及び前記複数の超解像ピクチャの予測画像を生成し、これらの前記予測画像のうちのいずれか一つを選択する画面間予測部を備え、前記画面間予測部が、前記局部復号ピクチャに超解像処理を施し、水平方向の高周波帯域の成分を強調したピクチャ、垂直方向の高周波帯域の成分を強調したピクチャ及び対角方向の高周波帯域の成分を強調したピクチャを、前記複数の超解像ピクチャとして生成する超解像処理部と、現在の前記局部復号ピクチャを基準ピクチャとし、過去の前記局部復号ピクチャ及び前記超解像処理部により生成された過去の前記複数の超解像ピクチャのそれぞれを参照ピクチャとして前記画面間予測を行い、前記所定領域毎に、前記局部復号ピクチャの予測画像及び動きベクトルを生成すると共に、前記複数の超解像ピクチャの予測画像及び動きベクトルを生成する画面間予測処理部と、現在の前記局部復号ピクチャ及び過去の前記局部復号ピクチャの周波数解析を行い、現在の前記局部復号ピクチャと過去の前記局部復号ピクチャとの間のパワー変動情報を生成する周波数解析部と、前記所定領域毎に、前記周波数解析部により生成された前記パワー変動情報、または、前記パワー変動情報並びに前記画面間予測処理部により生成された前記局部復号ピクチャの動きベクトル及び前記複数の超解像ピクチャの動きベクトルに基づいて、前記局部復号ピクチャの予測画像及び前記複数の超解像ピクチャの予測画像のうちのいずれか一つを選択する選択部と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項2の動画像符号化装置は、入力動画像から予測画像を減算して残差画像を生成し、当該残差画像に対し直交変換、量子化及びエントロピー符号化を行い、符号化信号を生成して出力すると共に、前記量子化により生成した量子化インデックス列に対し逆量子化及び逆直交変換を行い、復号残差画像を生成し、当該復号残差画像に前記予測画像を加算して加算後画像を生成し、当該加算後画像にフィルタ処理を施して局部復号ピクチャを生成し、当該局部復号ピクチャを用いて画面間予測を行い、前記予測画像を生成する動画像符号化装置において、前記局部復号ピクチャに基づいて複数のぼやけピクチャを生成し、前記画面間予測により、所定領域毎に、前記局部復号ピクチャの予測画像及び前記複数のぼやけピクチャの予測画像を生成し、これらの前記予測画像のうちのいずれか一つを選択する画面間予測部を備え、前記画面間予測部が、前記局部復号ピクチャにぼやけ処理を施し、水平方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ、垂直方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ及び対角方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャを、前記複数のぼやけピクチャとして生成するぼやけ処理部と、現在の前記局部復号ピクチャを基準ピクチャとし、過去の前記局部復号ピクチャ及び前記ぼやけ処理部により生成された過去の前記複数のぼやけピクチャのそれぞれを参照ピクチャとして前記画面間予測を行い、前記所定領域毎に、前記局部復号ピクチャの予測画像及び動きベクトルを生成すると共に、前記複数のぼやけピクチャの予測画像及び動きベクトルを生成する画面間予測処理部と、現在の前記局部復号ピクチャ及び過去の前記局部復号ピクチャの周波数解析を行い、現在の前記局部復号ピクチャと過去の前記局部復号ピクチャとの間のパワー変動情報を生成する周波数解析部と、前記所定領域毎に、前記周波数解析部により生成された前記パワー変動情報、または、前記パワー変動情報並びに前記画面間予測処理部により生成された前記局部復号ピクチャの動きベクトル及び前記複数のぼやけピクチャの動きベクトルに基づいて、前記局部復号ピクチャの予測画像及び前記複数のぼやけピクチャの予測画像のうちのいずれか一つを選択する選択部と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
また、請求項3の動画像符号化装置は、請求項1に記載の動画像符号化装置において、前記局部復号ピクチャに基づいて、前記複数の超解像ピクチャ及び複数のぼやけピクチャを生成し、画面間予測により、前記所定領域毎に、前記局部復号ピクチャの予測画像、前記複数の超解像ピクチャの予測画像及び前記複数のぼやけピクチャの予測画像を生成し、これらの前記予測画像のうちのいずれか一つを選択する画面間予測部を備え、前記画面間予測部が、さらに、前記局部復号ピクチャにぼやけ処理を施し、水平方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ、垂直方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ及び対角方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャを、前記複数のぼやけピクチャとして生成するぼやけ処理部を備え、前記画面間予測処理部が、現在の前記局部復号ピクチャを基準ピクチャとし、過去の前記局部復号ピクチャ、前記超解像処理部により生成された過去の前記複数の超解像ピクチャ、及び前記ぼやけ処理部により生成された過去の前記複数のぼやけピクチャのそれぞれを参照ピクチャとして前記画面間予測を行い、前記所定領域毎に、前記局部復号ピクチャの予測画像及び動きベクトル、前記複数の超解像ピクチャの予測画像及び動きベクトル、並びに前記複数のぼやけピクチャの予測画像及び動きベクトルを生成し、前記選択部が、前記所定領域毎に、前記周波数解析部により生成された前記パワー変動情報、または、前記パワー変動情報並びに前記画面間予測処理部により生成された前記局部復号ピクチャの動きベクトル、前記複数の超解像ピクチャの動きベクトル及び前記複数のぼやけピクチャの動きベクトルに基づいて、前記局部復号ピクチャの予測画像、前記複数の超解像ピクチャの予測画像及び前記複数のぼやけピクチャの予測画像のうちのいずれか一つを選択する、ことを特徴とする。
【0023】
また、請求項4の動画像符号化装置は、請求項1から3までのいずれか一項に記載の動画像符号化装置において、前記周波数解析部が、現在の前記局部復号ピクチャ及び過去の前記局部復号ピクチャについて、デシメーションを伴わない1階ウェーブレットパケット分解にて前記周波数解析を行い、現在の前記局部復号ピクチャの解析結果及び過去の前記局部復号ピクチャの解析結果に基づいて、周波数帯域毎かつ位相位置毎の前記パワー変動情報を生成する、ことを特徴とする。
【0024】
さらに、請求項5の動画像復号装置は、動画像の符号化信号を入力し、当該符号化信号に対しエントロピー復号、逆量子化及び逆直交変換を行い、復号残差画像を生成し、当該復号残差画像に予測画像を加算して加算後画像を生成し、前記加算後画像にフィルタ処理を施して復号ピクチャを生成することで、元の前記動画像を復元し、前記復号ピクチャを用いて画面間予測を行い、前記予測画像を生成する動画像復号装置において、前記符号化信号に、局部復号ピクチャの予測画像及び複数の超解像ピクチャの予測画像から選択した一つの前記予測画像の種類を示すパラメータが含まれている場合に、前記復号ピクチャに基づいて複数の超解像ピクチャを生成し、前記画面間予測により、所定領域毎に、前記パラメータに従って前記復号ピクチャ及び前記複数の超解像ピクチャのうちのいずれか一つの予測画像を生成する画面間予測部を備え、前記画面間予測部が、前記復号ピクチャに超解像処理を施し、水平方向の高周波帯域の成分を強調したピクチャ、垂直方向の高周波帯域の成分を強調したピクチャ及び対角方向の高周波帯域の成分を強調したピクチャを、前記複数の超解像ピクチャとして生成する超解像処理部と、前記パラメータに従って、前記復号ピクチャ及び前記超解像処理部により生成された前記複数の超解像ピクチャのうちのいずれか一つのピクチャを用いて前記画面間予測を行い、前記所定領域毎の前記予測画像を生成する画面間予測処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
また、請求項6の動画像復号装置は、動画像の符号化信号を入力し、当該符号化信号に対しエントロピー復号、逆量子化及び逆直交変換を行い、復号残差画像を生成し、当該復号残差画像に予測画像を加算して加算後画像を生成し、前記加算後画像にフィルタ処理を施して復号ピクチャを生成することで、元の前記動画像を復元し、前記復号ピクチャを用いて画面間予測を行い、前記予測画像を生成する動画像復号装置において、前記符号化信号に、局部復号ピクチャの予測画像及び複数のぼやけピクチャの予測画像から選択した一つの前記予測画像の種類を示すパラメータが含まれている場合に、前記復号ピクチャに基づいて複数のぼやけピクチャを生成し、前記画面間予測により、所定領域毎に、前記パラメータに従って前記復号ピクチャ及び前記複数のぼやけピクチャのうちのいずれか一つの予測画像を生成する画面間予測部を備え、前記画面間予測部が、前記復号ピクチャにぼやけ処理を施し、水平方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ、垂直方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ及び対角方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャを、前記複数のぼやけピクチャとして生成するぼやけ処理部と、前記パラメータに従って、前記復号ピクチャ及び前記ぼやけ処理部により生成された前記複数のぼやけピクチャのうちのいずれか一つのピクチャを用いて前記画面間予測を行い、前記所定領域毎の前記予測画像を生成する画面間予測処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
また、請求項7の動画像復号装置は、請求項5に記載の動画像復号装置において、前記符号化信号に、前記局部復号ピクチャの予測画像、前記複数の超解像ピクチャの予測画像及び複数のぼやけピクチャから選択した一つの前記予測画像の種類を示すパラメータが含まれている場合に、前記復号ピクチャに基づいて、前記複数の超解像ピクチャ及び前記複数のぼやけピクチャを生成し、前記画面間予測により、前記所定領域毎に、前記パラメータに従って前記復号ピクチャ、前記複数の超解像ピクチャ及び前記複数のぼやけピクチャのうちのいずれか一つの予測画像を生成する画面間予測部を備え、前記画面間予測部が、さらに、前記復号ピクチャにぼやけ処理を施し、水平方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ、垂直方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャ及び対角方向の高周波帯域の成分を抑制したピクチャを、前記複数のぼやけピクチャとして生成するぼやけ処理部を備え、前記画面間予測処理部が、前記パラメータに従って、前記復号ピクチャ、前記超解像処理部により生成された前記複数の超解像ピクチャ及び前記ぼやけ処理部により生成された前記複数のぼやけピクチャのうちのいずれか一つのピクチャを用いて前記画面間予測を行い、前記所定領域毎の前記予測画像を生成する、ことを特徴とする。
【0027】
さらに、請求項8のプログラムは、コンピュータを、請求項1から4までのいずれか一項に記載の動画像符号化装置として機能させることを特徴とする。
【0028】
また、請求項9のプログラムは、コンピュータを、請求項5から7までのいずれか一項に記載の動画像復号装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明によれば、動画像のピクチャ間で領域毎にオブジェクトのぼやけまたは鮮鋭化が起こる場合であっても、主観的に高画質な動画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態による動画像符号化装置の構成例を示すブロック図である。
図2】動画像符号化装置に備えた画面間予測部の構成例を示すブロック図である。
図3】逆直交変換部から加算部及びインループフィルタを経て画面間予測部までの処理の流れを説明する図である。
図4】超解像処理部の処理例を説明する図である。
図5】ぼやけ処理部の処理例を説明する図である。
図6】画面間予測処理部の構成例を示すブロック図である。
図7】周波数解析部の処理例を説明する図である。
図8】選択部の構成例を示すブロック図である。
図9】選択部の処理例を示すフローチャートである。
図10】動き量算出部により算出される水平超解像ピクチャの動き量CVH-mH,V,Dの例を説明する図である。
図11】パワー変動量算出部により算出されるパワー変動量pH,V,Dの例を説明する図である。
図12】本発明の実施形態による動画像復号装置の構成例を示すブロック図である。
図13】動画像復号装置に備えた画面間予測部の構成例を示すブロック図である。
図14】従来の動画像符号化装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、動き補償及び直交変換を基本とした動画像符号化技術において、画面間予測処理に用いる参照ピクチャとして、局部復号ピクチャKに加え、複数の超解像ピクチャCまたは/及び複数のぼやけピクチャBを生成し、ピクチャのパワー変動量、動き量等を考慮して、領域単位で最適な予測画像を選択することを特徴とする。
【0032】
これにより、動画像のピクチャ間で過去のピクチャから現在のピクチャへ向けてオブジェクトのぼやけが起こる場合、領域単位でぼやけピクチャBの予測画像が選択される。また、オブジェクトの鮮鋭化が起こる場合、領域単位で超解像ピクチャCが選択される。このため、入力動画像と予測画像との間の残差を小さくすることができる。
【0033】
また、復号側においても、元の動画像にオブジェクトのぼやけが起こる場合、ぼやけピクチャB’の予測画像が生成され、ぼやけが起こる動画像を復元することができる。さらに、元の動画像にオブジェクトの鮮鋭化が起こる場合、超解像ピクチャC’が生成され、鮮鋭化が起こる動画像を復元することができる。
【0034】
したがって、動画像のピクチャ間で領域毎にオブジェクトのぼやけまたは鮮鋭化が起こる場合であっても、画面間予測効率を向上させることができると共に、主観的に高画質な動画像を得ることが可能となる。
【0035】
〔動画像符号化装置〕
まず、本発明の実施形態による動画像符号化装置について説明する。図1は、本発明の実施形態による動画像符号化装置の構成例を示すブロック図である。この動画像符号化装置1は、減算部110、直交変換部111、量子化部112、逆量子化部113、逆直交変換部114、加算部115、画面内予測部116、インループフィルタ117、画面間予測部10、スイッチ119及びエントロピー符号化部120を備えている。尚、図1には、本発明に直接関連する構成部のみを示しており、直接関連しない構成部は省略してある。
【0036】
減算部110は、入力動画像のピクチャ(Iピクチャ、Pピクチャ及びBピクチャ)を入力すると共に、スイッチ119から当該ピクチャの予測画像を入力する。そして、減算部110は、入力動画像のピクチャから予測画像を減算し、減算結果の残差画像を生成し、残差画像を直交変換部111に出力する。
【0037】
直交変換部111は、減算部110から残差画像を入力し、残差画像に対し直交変換を行い、変換係数列を生成する。そして、直交変換部111は、変換係数列を量子化部112に出力する。
【0038】
量子化部112は、直交変換部111から変換係数列を入力し、変換係数列に対し量子化を行い、量子化インデックス列を生成する。そして、量子化部112は、量子化インデックス列を逆量子化部113及びエントロピー符号化部120に出力する。
【0039】
逆量子化部113は、量子化部112から量子化インデックス列を入力し、量子化部112の逆の処理を行うことで、量子化インデックス列を逆量子化し、変換係数列を生成する。そして、逆量子化部113は、変換係数列を逆直交変換部114に出力する。
【0040】
逆直交変換部114は、逆量子化部113から変換係数列を入力し、直交変換部111の逆の処理を行うことで、変換係数列を逆直交変換し、復号残差画像を生成する。そして、逆直交変換部114は、復号残差画像を加算部115に出力する。
【0041】
加算部115は、逆直交変換部114から復号残差画像を入力すると共に、スイッチ119から予測画像を入力する。そして、加算部115は、予測画像に復号残差画像を加算し、加算後の画像を画面内予測部116及びインループフィルタ117に出力する。
【0042】
画面内予測部116は、加算部115から加算後の画像を入力し、所定領域毎に、加算後の画像に画面内予測処理を施し、画面内予測結果を生成し、所定領域毎の画面内予測結果をスイッチ119に出力する。
【0043】
インループフィルタ117は、加算部115から加算後の画像を入力し、加算後の画像にフィルタ処理を施し、局部復号ピクチャKを生成する。そして、インループフィルタ117は、局部復号ピクチャKを画面間予測部10に出力する。
【0044】
画面間予測部10は、インループフィルタ117から局部復号ピクチャKを入力し、局部復号ピクチャKから複数の超解像ピクチャC及び複数のぼやけピクチャBを生成する。局部復号ピクチャK、複数の超解像ピクチャC及び複数のぼやけピクチャBは、画面間予測処理のための参照ピクチャとして用いられる。
【0045】
画面間予測部10は、所定領域毎に、現在の局部復号ピクチャK(入力動画像のピクチャ)である基準ピクチャ、及び局部復号ピクチャK等の参照ピクチャを用いて、画面間予測処理を行う。画面間予測部10は、所定領域毎に、局部復号ピクチャK、複数の超解像ピクチャC及び複数のぼやけピクチャBのそれぞれについて、動きベクトル、予測画像及び予測誤差を求める。
【0046】
画面間予測部10は、所定領域毎に、ピクチャのパワー変動量等から重みを求め、当該重みを予測誤差に乗算し、重み乗算後の予測誤差が最小となるピクチャの画像を最適な予測画像として選択する。そして、画面間予測部10は、所定領域毎に選択した予測画像を、所定領域毎の画面間予測結果としてスイッチ119に出力する。
【0047】
また、画面間予測部10は、所定領域毎に最適な予測画像を選択する処理において、所定領域毎に実際に選択した予測画像の種類、算出した動きベクトル等をパラメータに設定する。そして、画面間予測部10は、パラメータをエントロピー符号化部120に出力する。画面間予測部10の詳細については後述する。
【0048】
スイッチ119は、画面内予測部116から所定領域毎の画面内予測結果を入力すると共に、画面間予測部10から所定領域毎の画面間予測結果を入力し、いずれか一方を選択し、予測画像として減算部110及び加算部115に出力する。
【0049】
エントロピー符号化部120は、量子化部112から量子化インデックス列を入力すると共に、画面間予測部10からパラメータを入力し、さらに、直交変換部111等からパラメータを入力する。そして、エントロピー符号化部120は、量子化インデックス列及びパラメータに対しエントロピー符号化を行い、符号化信号を生成する。エントロピー符号化部120は、符号化信号を、後述する動画像復号装置2へ出力する。
【0050】
〔画面間予測部10〕
次に、図1に示した画面間予測部10について詳細に説明する。図2は、動画像符号化装置1に備えた画面間予測部10の構成例を示すブロック図である。この画面間予測部10は、超解像処理部11、ぼやけ処理部12、フレームメモリ13、画面間予測処理部14、周波数解析部15、選択部16及びパラメータ処理部17を備えている。尚、図2には、本発明に直接関連する構成部のみを示しており、直接関連しない構成部は省略してある。
【0051】
画面間予測部10は、インループフィルタ117から局部復号ピクチャKを入力し、局部復号ピクチャKをフレームメモリ13に格納する。
【0052】
超解像処理部11は、局部復号ピクチャKに超解像処理を施し、3種類の超解像ピクチャCH,V,D(水平超解像ピクチャCH、垂直超解像ピクチャCV及び対角超解像ピクチャCD)を生成する。Hは水平、Vは垂直、Dは対角を示す。超解像処理部11は、3種類の超解像ピクチャCH,V,Dをフレームメモリ13に格納する。超解像処理部11の詳細については後述する。
【0053】
水平超解像ピクチャCHは、水平方向の高周波帯域の成分を強調した画像である。垂直超解像ピクチャCVは、垂直方向の高周波帯域の成分を強調した画像である。対角超解像ピクチャCDは、対角方向(水平かつ垂直方向)の高周波帯域の成分を強調した画像である。
【0054】
ぼやけ処理部12は、局部復号ピクチャKにぼやけ処理を施し、3種類のぼやけピクチャBH,V,D(水平ぼやけピクチャBH、垂直ぼやけピクチャBV及び対角ぼやけピクチャBD)を生成する。ぼやけ処理部12は、3種類のぼやけピクチャBH,V,Dをフレームメモリ13に格納する。ぼやけ処理部12の詳細については後述する。
【0055】
水平ぼやけピクチャBHは、水平方向の高周波帯域の成分を抑制した画像である。垂直ぼやけピクチャBVは、垂直方向の高周波帯域の成分を抑制した画像である。対角ぼやけピクチャBDは、対角方向(水平かつ垂直方向)の高周波帯域の成分を抑制した画像である。
【0056】
フレームメモリ13には、局部復号ピクチャK、3種類の超解像ピクチャCH,V,D及び3種類のぼやけピクチャBH,V,Dがフレーム毎に格納される。
【0057】
画面間予測処理部14は、フレームメモリ13に格納された局部復号ピクチャK、3種類の超解像ピクチャCH,V,D及び3種類のぼやけピクチャBH,V,Dを、過去の局部復号ピクチャK、超解像ピクチャCH,V,D及びぼやけピクチャBH,V,Dとして読み出す。また、画面間予測処理部14は、現在の局部復号ピクチャK(入力動画像のピクチャ)を入力する。
【0058】
画面間予測処理部14は、現在の局部復号ピクチャKを基準ピクチャとし、過去の局部復号ピクチャK、超解像ピクチャCH,V,D及びぼやけピクチャBH,V,Dを参照ピクチャとして、所定領域毎に、例えばブロックマッチング法にて、予測画像KY,CYH,V,D,BYH,V,D、動きベクトルKV,CVH,V,D,BVH,V,D及び予測誤差KE,CEH,V,D,BEH,V,Dを求める。所定領域は、例えばslice(スライス)領域、CTU(Coding Tree Unit:コーディングツリーユニット)領域、CU(Coding Unit:コーディングユニット)領域である。
【0059】
画面間予測処理部14は、所定領域毎の予測画像KY,CYH,V,D,BYH,V,D、動きベクトルKV,CVH,V,D,BVH,V,D及び予測誤差KE,CEH,V,D,BEH,V,Dを選択部16に出力する。画面間予測処理部14の詳細については後述する。
【0060】
予測画像KYは、1種類の局部復号ピクチャの予測画像である。予測画像CYH,V,Dは、3種類の超解像ピクチャの予測画像であり、水平超解像ピクチャの予測画像CYH、垂直超解像ピクチャの予測画像CYV及び対角超解像ピクチャの予測画像CYDからなる。
【0061】
予測画像BYH,V,Dは、3種類のぼやけピクチャの予測画像であり、水平ぼやけピクチャの予測画像BYH、垂直ぼやけピクチャの予測画像BYV及び対角ぼやけピクチャの予測画像BYDからなる。
【0062】
動きベクトルKVは、1種類の局部復号ピクチャの動きベクトルである。動きベクトルCVH,V,Dは、3種類の超解像ピクチャの動きベクトルであり、水平超解像ピクチャの動きベクトルCVH、垂直超解像ピクチャの動きベクトルCVV及び対角超解像ピクチャの動きベクトルCVDからなる。
【0063】
動きベクトルBVH,V,Dは、3種類のぼやけピクチャの動きベクトルであり、水平ぼやけピクチャの動きベクトルBVH、垂直ぼやけピクチャの動きベクトルBVV及び対角ぼやけピクチャの動きベクトルBVDからなる。
【0064】
予測誤差KEは、1種類の局部復号ピクチャの予測誤差である。予測誤差CEH,V,Dは、3種類の超解像ピクチャの予測誤差であり、水平超解像ピクチャの予測誤差CEH、垂直超解像ピクチャの予測誤差CEV及び対角超解像ピクチャの予測誤差CEDからなる。
【0065】
予測誤差BEH,V,Dは、3種類のぼやけピクチャの予測誤差であり、水平ぼやけピクチャの予測誤差BEH、垂直ぼやけピクチャの予測誤差BEV及び対角ぼやけピクチャの予測誤差BEDからなる。
【0066】
周波数解析部15は、フレームメモリ13に格納された局部復号ピクチャKを、過去の局部復号ピクチャKとして読み出し、現在の局部復号ピクチャKを入力する。
【0067】
周波数解析部15は、現在の局部復号ピクチャK及び過去の局部復号ピクチャKのそれぞれについて周波数解析を行う。そして、周波数解析部15は、現在の局部復号ピクチャKの解析結果から過去の局部復号ピクチャKの解析結果を減算し、周波数帯域毎かつ位相位置毎のパワー変動情報を求める。周波数解析部15は、周波数帯域毎かつ位相位置毎のパワー変動情報を選択部16に出力する。周波数解析部15の詳細については後述する。
【0068】
選択部16は、画面間予測処理部14から所定領域毎の予測画像KY,CYH,V,D,BYH,V,D、動きベクトルKV,CVH,V,D,BVH,V,D及び予測誤差KE,CEH,V,D,BEH,V,Dを入力する。また、選択部16は、周波数解析部15から周波数帯域毎かつ位相位置毎のパワー変動情報を入力する。
【0069】
選択部16は、所定領域毎に、3種類の超解像ピクチャCH,V,Dにつき、超解像ピクチャの動きベクトルCVH,V,D及び超解像ピクチャの強度情報cpH,V,Dに基づいて、超解像ピクチャの重みtCH,V,Dを算出する。
【0070】
尚、選択部16は、パワー変動情報及び超解像ピクチャの強度情報cpH,V,Dに基づいて、超解像ピクチャの重みtCH,V,Dを算出するようにしてもよい。また、選択部16は、超解像ピクチャの動きベクトルCVH,V,D、パワー変動情報及び超解像ピクチャの強度情報cpH,V,Dに基づいて、超解像ピクチャの重みtCH,V,Dを算出するようにしてもよい。
【0071】
重みtCH,V,Dは、3種類の超解像ピクチャの重みであり、水平超解像ピクチャの重みtCH、垂直超解像ピクチャの重みtCV及び対角超解像ピクチャの重みtCDからなる。
【0072】
また、選択部16は、所定領域毎に、3種類のぼやけピクチャBH,V,Dにつき、パワー変動情報及びぼやけピクチャの強度情報bpH,V,Dに基づいて、ぼやけピクチャの重みtBH,V,Dを算出する。
【0073】
尚、選択部16は、ぼやけピクチャの動きベクトルBVH,V,D、パワー変動情報及びぼやけピクチャの強度情報bpH,V,Dに基づいて、ぼやけピクチャの重みtBH,V,Dを算出するようにしてもよい。
【0074】
重みtBH,V,Dは、3種類のぼやけピクチャの重みであり、水平ぼやけピクチャの重みtBH、垂直ぼやけピクチャの重みtBV及び対角ぼやけピクチャの重みtBDからなる。
【0075】
選択部16は、所定領域毎に、3種類の超解像ピクチャCH,V,Dにつき、超解像ピクチャの予測誤差CEH,V,Dのそれぞれに、対応する重みtCH,V,Dを乗算する。また、選択部16は、所定領域毎に、3種類のぼやけピクチャBH,V,Dにつき、ぼやけピクチャの予測誤差BEH,V,Dのそれぞれに、対応する重みtBH,V,Dを乗算する。
【0076】
選択部16は、所定領域毎に、局部復号ピクチャの予測誤差KE、超解像ピクチャの重み乗算後の予測誤差CEH,V,D、及びぼやけピクチャの重み乗算後の予測誤差BEH,V,Dのうち、最小の予測誤差を特定する。そして、選択部16は、特定した予測誤差に対応する予測画像を選択する。これにより、7種類のピクチャの予測画像KY,CYH,V,D,BYH,V,Dのうち、いずれか一つの予測画像が選択される。
【0077】
選択部16は、所定領域毎に、選択した予測画像を画面間予測結果としてスイッチ119に出力する。選択部16の詳細については後述する。
【0078】
パラメータ処理部17は、選択部16により所定領域毎に選択された予測画像の種類、及び算出された動きベクトル等をパラメータに設定し、パラメータをエントロピー符号化部120に出力する。
【0079】
図3は、逆直交変換部114から加算部115及びインループフィルタ117を経て画面間予測部10までの処理の流れを説明する図である。
【0080】
加算部115により、逆直交変換部114により生成された復号残差画像と、画面間予測部10により生成された画面間予測結果すなわち予測画像とが加算され、加算後の画像がインループフィルタ117に入力される。インループフィルタ117によりフィルタ処理された局部復号ピクチャKは、フレームメモリ13に格納されると共に、超解像処理部11及びぼやけ処理部12に入力される。
【0081】
超解像処理部11において、局部復号ピクチャKに対し超解像処理が施され、3種類の超解像ピクチャCH,V,Dが生成され、フレームメモリ13に格納される。ぼやけ処理部12において、局部復号ピクチャKに対しぼやけ処理が施され、3種類のぼやけピクチャBH,V,Dが生成され、フレームメモリ13に格納される。
【0082】
これにより、フレームメモリ13には、局部復号ピクチャK、3種類の超解像ピクチャCH,V,D及び3種類のぼやけピクチャBH,V,Dである7種類のピクチャが格納される。これらのピクチャは、画面間予測処理部14により、過去の局部復号ピクチャK、超解像ピクチャCH,V,D及びぼやけピクチャBH,V,Dとして読み出される。
【0083】
画面間予測処理部14において、現在の局部復号ピクチャKを基準ピクチャとし、過去の局部復号ピクチャKを参照ピクチャとして画面間予測処理が行われ、予測画像KY等が生成される。また、画面間予測処理部14において、過去の3種類の超解像ピクチャCH,V,Dを参照ピクチャとして3種類の画面間予測処理が行われ、3種類の予測画像CYH,V,D等が生成される。さらに、画面間予測処理部14において、過去の3種類のぼやけピクチャBH,V,Dを参照ピクチャとして3種類の画面間予測処理が行われ、3種類の予測画像BYH,V,D等が生成される。予測画像KY,CYH,V,D,BYH,V,D等は選択部16に入力される。
【0084】
周波数解析部15により、現在の局部復号ピクチャK及び過去の局部復号ピクチャKに基づいてパワー変動情報が生成され、パワー変動情報が選択部16に入力される。
【0085】
選択部16により、所定領域毎に、パワー変動情報等に基づいて、予測画像KY,CYH,V,D,BYH,V,Dのうちのいずれか一つの予測画像が選択され、画面間予測結果として加算部115に出力される。
【0086】
このように、画面間予測処理部14において、参照ピクチャとして、局部復号ピクチャK、3種類の超解像ピクチャCH,V,D及び3種類のぼやけピクチャBH,V,Dの合計7種類のピクチャが用いられる。また、所定領域毎に、7種類の予測画像KY,CYH,V,D,BYH,V,Dのうちのいずれか一つが、予測画像として選択される。
【0087】
〔超解像処理部11〕
次に、図2に示した超解像処理部11について詳細に説明する。図4は、超解像処理部11の処理例を説明する図である。
【0088】
超解像処理部11は、局部復号ピクチャKを入力し、例えば局部復号ピクチャKを1階ウェーブレット分解する(ステップS401)。そして、超解像処理部11は、1階ウェーブレット分解後の画像について、水平(H)、垂直(V)及び対角(D)の高周波帯域の全ての位相位置の要素値(画素値)に対し、予め設定された超解像ピクチャの水平用強度情報cpH1,V1,D1、垂直用強度情報cpH2,V2,D2及び対角用強度情報cpH3,V3,D3をそれぞれ乗算する(ステップS402)。
【0089】
水平用強度情報cpH1,V1,D1は、1階ウェーブレット分解後の画像における水平高周波帯域に対応する水平強度cpH1、垂直高周波帯域に対応する垂直強度cpV1、及び対角高周波帯域に対応する対角強度cpD1からなる。水平用強度情報cpH1,V1,D1は、水平高周波帯域の成分を強調した(パワーの強い)水平超解像ピクチャCHを生成するための強度情報であり、cpH1>cpV1,cpD1の条件を満たす強度情報が用いられる。例えば図4に示すように、水平強度cpH1=1.2、垂直強度cpV1=1.0及び対角強度cpD1=1.0が用いられる。
【0090】
垂直用強度情報cpH2,V2,D2は、水平強度cpH2、垂直強度cpV2及び対角強度cpD2からなる。垂直用強度情報cpH2,V2,D2は、垂直高周波帯域の成分を強調した(パワーの強い)垂直超解像ピクチャCVを生成するための強度情報であり、cpV2>cpH2,cpD2の条件を満たす強度情報が用いられる。例えば図4に示すように、水平強度cpH2=1.0、垂直強度cpV2=1.2及び対角強度cpD2=1.0が用いられる。
【0091】
対角用強度情報cpH3,V3,D3は、水平強度cpH3、垂直強度cpV3及び対角強度cpD3からなる。対角用強度情報cpH3,V3,D3は、対角高周波帯域の成分を強調した(パワーの強い)対角超解像ピクチャCDを生成するための強度情報であり、cpD3>cpH3,cpV3の条件を満たす強度情報が用いられる。例えば図4に示すように、水平強度cpH3=1.0、垂直強度cpV3=1.0及び対角強度cpD3=1.2が用いられる。
【0092】
超解像処理部11は、1階ウェーブレット分解後の乗算後画像のそれぞれを1階ウェーブレット再構成し、3種類の超解像ピクチャCH,V,D、すなわち水平超解像ピクチャCH、垂直超解像ピクチャCV及び対角超解像ピクチャCDを生成する(ステップS403)。
【0093】
このように、超解像処理部11により、局部復号ピクチャKから3種類の水平超解像ピクチャCH、垂直超解像ピクチャCV及び対角超解像ピクチャCDが生成される。
【0094】
〔ぼやけ処理部12〕
次に、図2に示したぼやけ処理部12について詳細に説明する。図5は、ぼやけ処理部12の処理例を説明する図である。
【0095】
ぼやけ処理部12は、局部復号ピクチャKを入力し、例えば局部復号ピクチャKを1階ウェーブレット分解する(ステップS501)。そして、ぼやけ処理部12は、1階ウェーブレット分解後の画像について、水平、垂直及び対角の高周波帯域の全ての位相位置の要素値に対し、予め設定されたぼやけピクチャの水平用強度情報bpH1,V1,D1、垂直用強度情報bpH2,V2,D2及び対角用強度情報bpH3,V3,D3をそれぞれ乗算する(ステップS502)。
【0096】
水平用強度情報bpH1,V1,D1は、1階ウェーブレット分解後の画像における水平高周波帯域に対応する水平強度bpH1、垂直高周波帯域に対応する垂直強度bpV1、及び対角高周波帯域に対応する対角強度bpD1からなる。水平用強度情報bpH1,V1,D1は、水平高周波帯域の成分を抑制した(パワーの弱い)水平ぼやけピクチャBHを生成するための強度情報であり、bpH1<bpV1,bpD1の条件を満たす強度情報が用いられる。例えば図5に示すように、水平強度bpH1=0.8、垂直強度bpV1=1.0及び対角強度bpD1=1.0が用いられる。
【0097】
垂直用強度情報bpH2,V2,D2は、水平強度bpH2、垂直強度bpV2及び対角強度bpD2からなる。垂直用強度情報bpH2,V2,D2は、垂直高周波帯域の成分を抑制した(パワーの弱い)垂直ぼやけピクチャBVを生成するための強度情報であり、bpV2<bpH2,bpD2の条件を満たす強度情報が用いられる。例えば図5に示すように、水平強度bpH2=1.0、垂直強度bpV2=0.8及び対角強度bpD2=1.0が用いられる。
【0098】
対角用強度情報bpH3,V3,D3は、水平強度bpH3、垂直強度bpV3及び対角強度bpD3からなる。対角用強度情報bpH3,V3,D3は、対角高周波帯域の成分を抑制した(パワーの弱い)対角ぼやけピクチャBDを生成するための強度情報であり、bpD3<bpH3,bpV3の条件を満たす強度情報が用いられる。例えば図5に示すように、水平強度bpH3=1.0、垂直強度bpV3=1.0及び対角強度bpD3=0.8が用いられる。
【0099】
ぼやけ処理部12は、1階ウェーブレット分解後の乗算後画像のそれぞれを1階ウェーブレット再構成し、3種類のぼやけピクチャBH,V,D、すなわち水平ぼやけピクチャBH、垂直ぼやけピクチャBV及び対角ぼやけピクチャBDを生成する(ステップS503)。
【0100】
このように、ぼやけ処理部12により、局部復号ピクチャKから3種類の水平ぼやけピクチャBH、垂直ぼやけピクチャBV及び対角ぼやけピクチャBDが生成される。
【0101】
〔画面間予測処理部14〕
次に、図2に示した画面間予測処理部14について詳細に説明する。図6は、画面間予測処理部14の構成例を示すブロック図である。この画面間予測処理部14は、復号ピクチャ予測部20、超解像予測部21及びぼやけ予測部22を備えている。尚、図6には、本発明に直接関連する構成部のみを示しており、直接関連しない構成部は省略してある。
【0102】
復号ピクチャ予測部20は、フレームメモリ13に格納された局部復号ピクチャKを、過去の局部復号ピクチャKとして読み出し、現在の局部復号ピクチャKを入力する。
【0103】
復号ピクチャ予測部20は、現在の局部復号ピクチャKを基準ピクチャとし、過去の局部復号ピクチャKを参照ピクチャとして、基準ピクチャ及び参照ピクチャに基づいて、所定領域毎に、例えばブロックマッチング法にて、予測画像KY、動きベクトルKV及び予測誤差KEを求める。
【0104】
復号ピクチャ予測部20は、予測画像KY、動きベクトルKV及び予測誤差KEを選択部16に出力する。
【0105】
超解像予測部21は、フレームメモリ13に格納された3種類の超解像ピクチャCH,V,Dを、過去の超解像ピクチャCH,V,Dとして読み出し、現在の局部復号ピクチャKを入力する。
【0106】
超解像予測部21は、現在の局部復号ピクチャKを基準ピクチャとし、過去の超解像ピクチャCH,V,Dを参照ピクチャとして、基準ピクチャ及び参照ピクチャに基づいて、所定領域毎に、例えばブロックマッチング法にて、予測画像CYH,V,D、動きベクトルCVH,V,D及び予測誤差CEH,V,Dとして求める。
【0107】
超解像予測部21は、予測画像CYH,V,D、動きベクトルCVH,V,D及び予測誤差CEH,V,Dを選択部16に出力する。
【0108】
ぼやけ予測部22は、フレームメモリ13に格納された3種類のぼやけピクチャBH,V,Dを、過去のぼやけピクチャBH,V,Dとして読み出し、現在の局部復号ピクチャKを入力する。
【0109】
ぼやけ予測部22は、現在の局部復号ピクチャKを基準ピクチャとし、過去のぼやけピクチャBH,V,Dを参照ピクチャとして、基準ピクチャ及び参照ピクチャに基づいて、所定領域毎に、例えばブロックマッチング法にて、予測画像BYH,V,D、動きベクトルBVH,V,D及び予測誤差BEH,V,Dを求める。
【0110】
ぼやけ予測部22は、予測画像BYH,V,D、動きベクトルBVH,V,D及び予測誤差BEH,V,Dを選択部16に出力する。
【0111】
このように、画面間予測処理部14により、局部復号ピクチャの予測画像KY、動きベクトルKV及び予測誤差KEに加え、超解像ピクチャの予測画像CYH,V,D、動きベクトルCVH,V,D及び予測誤差CEH,V,D、並びにぼやけピクチャの予測画像BYH,V,D、動きベクトルBVH,V,D及び予測誤差BEH,V,Dが生成される。
【0112】
〔周波数解析部15〕
次に、図2に示した周波数解析部15について詳細に説明する。図7は、周波数解析部15の処理例を説明する図である。
【0113】
周波数解析部15は、フレームメモリ13に格納された局部復号ピクチャKを、過去の局部復号ピクチャKとして読み出し、現在の局部復号ピクチャKを入力する。
【0114】
周波数解析部15は、現在の局部復号ピクチャKについて、デシメーションを伴わない1階ウェーブレットパケット分解にて周波数解析を行い、現在の局部復号ピクチャKの解析結果を生成する(ステップS701)。これにより、現在の局部復号ピクチャKの空間低周波帯域信号、水平高周波帯域信号、垂直高周波帯域信号及び対角高周波帯域信号が生成される。
【0115】
また、周波数解析部15は、過去の局部復号ピクチャKについて、デシメーションを伴わない1階ウェーブレットパケット分解にて周波数解析を行い、過去の局部復号ピクチャKの解析結果を生成する(ステップS702)。これにより、過去の局部復号ピクチャKの空間低周波帯域信号、水平高周波帯域信号、垂直高周波帯域信号及び対角高周波帯域信号が生成される。
【0116】
周波数解析部15は、周波数帯域毎かつ位相位置毎に、現在の局部復号ピクチャKの解析結果から過去の局部復号ピクチャKの解析結果を減算し、周波数帯域毎かつ位相位置毎のパワー変動情報を求める(ステップS703)。
【0117】
具体的には、周波数解析部15は、現在の局部復号ピクチャKの水平高周波帯域信号における位相位置(画素位置)の要素値(画素値)から、過去の局部復号ピクチャKの水平高周波帯域信号における対応する位相位置の要素値を減算する。そして、周波数解析部15は、減算結果を水平高周波数帯域のパワー変動情報とする。
【0118】
また、周波数解析部15は、現在の局部復号ピクチャKの垂直高周波帯域信号における位相位置の要素値から、過去の局部復号ピクチャKの垂直高周波帯域信号における対応する位相位置の要素値を減算する。そして、周波数解析部15は、減算結果を垂直高周波数帯域のパワー変動情報とする。
【0119】
さらに、周波数解析部15は、現在の局部復号ピクチャKの対角高周波帯域信号における位相位置の要素値から、過去の局部復号ピクチャKの対角高周波帯域信号における対応する位相位置の要素値を減算する。そして、周波数解析部15は、減算結果を対角高周波数帯域のパワー変動情報とする。
【0120】
周波数解析部15は、水平高周波数帯域の各位相位置のパワー変動情報、垂直高周波数帯域の各位相位置のパワー変動情報、及び対角高周波数帯域の各位相位置のパワー変動情報を、周波数帯域毎かつ位相位置毎のパワー変動情報として選択部16に出力する。
【0121】
このように、周波数解析部15により、周波数帯域毎かつ位相位置毎のパワー変動情報が生成される。
【0122】
パワー変動情報は、現在のピクチャが過去のピクチャに比べ、ぼやけているかまたは鮮鋭化しているかを示す指標として扱われる。パワー変動情報から得られた後述するパワー変動量が第1の閾値(正の値)よりも大きい場合、現在のピクチャのパワーが過去のピクチャよりも大きいため、現在のピクチャが過去のピクチャに比べ、鮮鋭化しているものと判断される。また、パワー変動量が第1の閾値(負の値)よりも小さい場合、現在のピクチャのパワーが過去のピクチャよりも小さいため、現在のピクチャが過去のピクチャに比べ、ぼやけているものと判断される。さらに、パワー変動量が第1の閾値と第2の閾値との間にある場合、現在のピクチャのパワーと過去のピクチャのパワーとがほぼ同じであるため、現在のピクチャ及び過去のピクチャにおけるぼやけの程度及び鮮鋭化の程度はさほど変わらないものと判断される。詳細については後述する。
【0123】
〔選択部16〕
次に、図2に示した選択部16について詳細に説明する。図8は、選択部16の構成例を示すブロック図であり、図9は、選択部16の処理例を示すフローチャートである。
【0124】
この選択部16は、動き量算出部30、パワー変動量算出部31、重み算出部32及び予測画像選択部33を備えている。尚、図8には、本発明に直接関連する構成部のみを示しており、直接関連しない構成部は省略してある。
【0125】
選択部16は、画面間予測処理部14から、所定領域毎の予測画像KY,CYH,V,D,BYH,V,D、動きベクトルKV,CVH,V,D,BVH,V,D及び予測誤差KE,CEH,V,D,BEH,V,Dを入力する。また、選択部16は、周波数解析部15から周波数帯域毎かつ位相位置毎のパワー変動情報を入力する(ステップS901)。
【0126】
(動き量算出部30)
動き量算出部30は、所定領域毎に、超解像ピクチャの動きベクトルCVH,V,Dから、水平方向、垂直方向及び対角方向の成分である動き量CVH,V,D-mH,V,Dを算出する。また、動き量算出部30は、所定領域毎に、ぼやけピクチャの動きベクトルBVH,V,Dから、水平方向、垂直方向及び対角方向の成分であるぼやけピクチャの動き量BVH,V,D-mH,V,Dを算出する(ステップS902)。そして、動き量算出部30は、所定領域毎の動き量CVH,V,D-mH,V,D,BVH,V,D-mH,V,Dを重み算出部32に出力する。
【0127】
超解像ピクチャの動き量CVH,V,D-mH,V,Dは、水平超解像ピクチャの水平動き量CVH-mH、垂直動き量CVH-mV及び対角動き量CVH-mDと、垂直超解像ピクチャの水平動き量CVV-mH、垂直動き量CVV-mV及び対角動き量CVV-mDと、対角超解像ピクチャの水平動き量CVD-mH、垂直動き量CVD-mV及び対角動き量CVD-mDとからなる。
【0128】
ぼやけピクチャの動き量BVH,V,D-mH,V,Dは、水平ぼやけピクチャの水平動き量BVH-mH、垂直動き量BVH-mV及び対角動き量BVH-mDと、垂直ぼやけピクチャの水平動き量BVV-mH、垂直動き量BVV-mV及び対角動き量BVV-mDと、対角ぼやけピクチャの水平動き量BVD-mH、垂直動き量BVD-mV及び対角動き量BVD-mDとからなる。
【0129】
水平動き量は、動きベクトルを水平方向に射影したときの大きさを示し、垂直動き量は、動きベクトルを垂直方向に射影したときの大きさを示し、対角動き量は、動きベクトルを対角方向に射影したときの大きさを示す。
【0130】
このように、動き量算出部30により、所定領域毎に、水平超解像ピクチャCHについて、水平動き量CVH-mH、垂直動き量CVH-mV及び対角動き量CVH-mDが算出される。また、垂直超解像ピクチャCVについて、水平動き量CVV-mH、垂直動き量CVV-mV及び対角動き量CVV-mDが算出され、対角超解像ピクチャCDについて、水平動き量CVD-mH、垂直動き量CVD-mV及び対角動き量CVD-mDが算出される。
【0131】
さらに、動き量算出部30により、所定領域毎に、水平ぼやけピクチャBHについて、水平動き量BVH-mH、垂直動き量BVH-mV及び対角動き量BVH-mDが算出される。また、垂直ぼやけピクチャBVについて、水平動き量BVV-mH、垂直動き量BVV-mV及び対角動き量BVV-mDが算出され、対角ぼやけピクチャBDについて、水平動き量BVD-mH、垂直動き量BVD-mV及び対角動き量BVD-mDが算出される。
【0132】
図10は、動き量算出部30により算出される水平超解像ピクチャの動き量CVH-mH,V,Dの例を説明する図である。フレームtの時刻のピクチャを基準ピクチャとし、フレームt-1の時刻におけるピクチャを参照ピクチャとする。α1は、水平超解像ピクチャの動きベクトルCVHにおける水平方向を示し、β1は、水平超解像ピクチャの動きベクトルCVHにおける垂直方向を示し、γ1は、水平超解像ピクチャの動きベクトルCVHにおける対角方向を示す。
【0133】
図10に示すように、動き量算出部30により、基準ピクチャを基準とした参照ピクチャに対する水平超解像ピクチャの動きベクトルCVHから、所定領域毎に、これを水平方向α1に射影したときの水平動き量CVH-mH、垂直方向β1に射影したときの垂直動き量CVH-mV、及び対角方向γ1に射影したときの対角動き量CVH-mDが算出される。
【0134】
(パワー変動量算出部31)
図8及び図9に戻って、パワー変動量算出部31は、周波数帯域毎かつ位相位置毎のパワー変動情報から、所定領域毎に、水平高周波帯域、垂直高周波帯域及び対角高周波帯域の成分であるパワー変動量pH,V,Dを算出する(ステップS903)。そして、パワー変動量算出部31は、所定領域毎のパワー変動量pH,V,Dを重み算出部32に出力する。
【0135】
具体的には、パワー変動量算出部31は、所定領域毎に、周波数帯域毎かつ位相位置毎のパワー変動情報から当該領域のパワー変動情報を抽出する。そして、パワー変動量算出部31は、当該領域のパワー変動情報に含まれる水平高周波帯域の全ての位相位置における要素値を合計し、当該領域の水平パワー変動量pHを求める。
【0136】
また、パワー変動量算出部31は、当該領域のパワー変動情報に含まれる垂直高周波帯域の全ての位相位置における要素値を合計し、当該領域の垂直パワー変動量pVを求める。さらに、パワー変動量算出部31は、当該領域のパワー変動情報に含まれる対角高周波帯域の全ての位相位置の要素値を合計し、当該領域の対角パワー変動量pDを求める。
【0137】
このように、パワー変動量算出部31により、所定領域毎に、水平高周波帯域の成分である水平パワー変動量pH、垂直高周波帯域の成分である垂直パワー変動量pV、及び対角高周波帯域の成分である対角パワー変動量pDが算出される。
【0138】
図11は、パワー変動量算出部31により算出されるパワー変動量pH,V,Dの例を説明する図である。α2はパワー変動情報における水平高周波帯域の方向を示し、β2は、パワー変動情報における垂直高周波帯域の方向を示し、γ2は、パワー変動情報における対角高周波帯域の方向を示す。
【0139】
図11に示すように、パワー変動量算出部31により、周波数帯域毎かつ位相位置毎のパワー変動情報から、所定領域毎に、水平高周波帯域の方向α2の成分である水平パワー変動量pH、垂直高周波帯域の方向β2の成分である垂直パワー変動量pV、及び対角高周波帯域の方向γ2の成分である対角パワー変動量pDが算出される。
【0140】
(重み算出部32)
重み算出部32は、動き量算出部30から所定領域毎の動き量CVH,V,D-mH,V,D,BVH,V,D-mH,V,Dを入力すると共に、パワー変動量算出部31から所定領域毎のパワー変動量pH,V,Dを入力する。また、重み算出部32は、予め設定された超解像ピクチャの強度情報cpH,V,D及びぼやけピクチャの強度情報bpH,V,Dを入力する。
【0141】
超解像ピクチャの強度情報cpH,V,Dは、図2に示した超解像処理部11による超解像ピクチャCH,V,Dの生成の際に用いた水平用強度情報cpH1,V1,D1、垂直用強度情報cpH2,V2,D2及び対角用強度情報cpH3,V3,D3に相当する。また、ぼやけピクチャの強度情報bpH,V,Dは、図2に示したぼやけ処理部12によるぼやけピクチャBH,V,Dの生成の際に用いた水平用強度情報bpH1,V1,D1、垂直用強度情報bpH2,V2,D2及び対角用強度情報bpH3,V3,D3に相当する。
【0142】
重み算出部32は、超解像ピクチャCH,V,Dについて、所定領域毎に、以下の式にて、超解像ピクチャの動き量CVH,V,D-mH,V,D及び超解像ピクチャの強度情報cpH,V,D(cpH1,V1,D1,cpH2,V2,D2,cpH3,V3,D3)に基づいて、超解像ピクチャCH,V,Dのそれぞれについて重みtCH,V,Dを算出する(ステップS904)。
[数1]
tCH=d/{(a×cpH1×(CVH-mH)+b×cpV1×(CVH-mV)+c×cpD1×(CVH-mD)} ・・・(1)
[数2]
tCV=d/{(a×cpH2×(CVV-mH)+b×cpV2×(CVV-mV)+c×cpD2×(CVV-mD)} ・・・(2)
[数3]
tCD=d/{(a×cpH3×(CVD-mH)+b×cpV3×(CVD-mV)+c×cpD3×(CVD-mD)} ・・・(3)
【0143】
重みtCHは、水平超解像ピクチャCHの重みを示し、重みtCVは、垂直超解像ピクチャCVの重みを示し、重みtCDは、対角超解像ピクチャCDの重みを示す。パラメータa,b,c,dは、予め設定された定数を示す。
【0144】
前記式(1)において、水平超解像ピクチャCHについて、前述したとおり、例えば水平強度cpH1=1.2、垂直強度cpV1=1.0及び対角強度cpD1=1.0が用いられる。
【0145】
前記式(2)において、垂直超解像ピクチャCVについて、前述したとおり、例えば水平強度cpH2=1.0、垂直強度cpV2=1.2及び対角強度cpD2=1.0が用いられる。
【0146】
前記式(3)において、対角超解像ピクチャCDについて、前述したとおり、例えば水平強度cpH3=1.0、垂直強度cpV3=1.0及び対角強度cpD3=1.2が用いられる。
【0147】
このように、前記式(1)(2)(3)に示す重みtCH,V,Dは、超解像ピクチャの動き量CVH,V,D-mH,V,Dに基づいて算出され、動き量CVH,V,D-mH,V,Dが大きいほど、小さい値となり、動き量CVH,V,D-mH,V,Dが小さいほど、大きい値となる。この場合、動き量CVH,V,D-mH,V,Dが大きいほど、基準ピクチャよりも参照ピクチャがぼやけている可能性が高いため、参照ピクチャに対して基準ピクチャが鮮鋭化している可能性が高い。
【0148】
そこで、動き量CVH,V,D-mH,V,Dが大きい方向(水平方向、垂直方向及び対角方向)ほど、重みtCH,V,Dを小さい値とすることで、後述するステップS907において、重み乗算後の予測誤差CEH,V,Dを小さい値とし、その方向に対応する超解像ピクチャの予測画像CYH,V,Dが選択されるようにしている。つまり、基準ピクチャから参照ピクチャへの動き量CVH,V,D-mH,V,Dが大きい方向ほど、ぼやけが大きいと仮定して、鮮鋭化の強い方向の超解像ピクチャの予測画像CYH,V,Dが選択されるようにしている。
【0149】
尚、重み算出部32は、超解像ピクチャCH,V,Dにつき、ステップS904において、超解像ピクチャの動き量CVH,V,D-mH,V,Dの代わりにパワー変動量pH,V,Dを用いるようにしてもよい。すなわち、重み算出部32は、所定領域毎に、以下の式にて、パワー変動量pH,V,D及び超解像ピクチャの強度情報cpH,V,D(cpH1,V1,D1,cpH2,V2,D2,cpH3,V3,D3)に基づいて、超解像ピクチャCH,V,Dのそれぞれについて重みtCH,V,Dを算出するようにしてもよい。
[数4]
tCH=h/(e×cpH1×pH+f×cpV1×pV+g×cpD1×pD) ・・・(4)
[数5]
tCV=h/(e×cpH2×pH+f×cpV2×pV+g×cpD2×pD) ・・・(5)
[数6]
tCD=h/(e×cpH3×pH+f×cpV3×pV+g×cpD3×pD) ・・・(6)
【0150】
パラメータe,f,g,hは、予め設定された定数を示す。
【0151】
前記式(4)において、前記式(1)と同様に、例えば水平超解像ピクチャCHについての水平強度cpH1=1.2、垂直強度cpV1=1.0及び対角強度cpD1=1.0が用いられる。
【0152】
前記式(5)において、前記式(2)と同様に、例えば垂直超解像ピクチャCVについての水平強度cpH2=1.0、垂直強度cpV2=1.2及び対角強度cpD2=1.0が用いられる。
【0153】
前記式(6)において、前記式(3)と同様に、対角超解像ピクチャCDについての水平強度cpH3=1.0、垂直強度cpV3=1.0及び対角強度cpD3=1.2が用いられる。
【0154】
このように、前記式(4)(5)(6)に示す重みtCH,V,Dは、パワー変動量pH,V,Dに基づいて算出され、パワー変動量pH,V,Dが正方向に大きいほど、小さい値となり、パワー変動量pH,V,Dが正方向に小さいほど、大きい値となる。この場合、パワー変動量pH,V,Dが正方向に大きいほど、基準ピクチャよりも参照ピクチャがぼやけている可能性が高いため、参照ピクチャに対して基準ピクチャが鮮鋭化している可能性が高い。
【0155】
そこで、パワー変動量pH,V,Dが正方向に大きい方向(水平方向、垂直方向及び対角方向)ほど、重みtCH,V,Dを小さい値とすることで、後述するステップS907において、重み乗算後の予測誤差CEH,V,Dを小さい値とし、その方向に対応する超解像ピクチャの予測画像CYH,V,Dが選択されるようにしている。つまり、基準ピクチャから参照ピクチャへのパワー変動量pH,V,Dが正方向に大きい方向ほど、ぼやけが大きいと仮定して、鮮鋭化の強い方向の超解像ピクチャの予測画像CYH,V,Dが選択されるようにしている。
【0156】
また、重み算出部32は、超解像ピクチャCH,V,Dにつき、ステップS904において、動き量CVH,V,D-mH,V,Dの代わりに、超解像ピクチャの動き量CVH,V,D-mH,V,D及びパワー変動量pH,V,Dを用いるようにしてもよい。すなわち、重み算出部32は、所定領域毎に、以下の式にて、超解像ピクチャの動き量CVH,V,D-mH,V,D、パワー変動量pH,V,D及び超解像ピクチャの強度情報cpH,V,D(cpH1,V1,D1,cpH2,V2,D2,cpH3,V3,D3)に基づいて、超解像ピクチャCH,V,Dのそれぞれについて重みtCH,V,Dを算出するようにしてもよい。
[数7]
tCH=o/〔{(i×cpH1×(CVH-mH)+j×cpV1×(CVH-mV)+k×cpD1×(CVH-mD)}+(l×cpH1×pH+m×cpV1×pV+n×cpD1×pD)〕
・・・(7)
[数8]
tCV=o/〔{(i×cpH2×(CVV-mH)+j×cpV2×(CVV-mV)+k×cpD2×(CVV-mD)}+(l×cpH2×pH+m×cpV2×pV+n×cpD2×pD)〕
・・・(8)
[数9]
tCD=o/〔{(i×cpH3×(CVD-mH)+j×cpV3×(CVD-mV)+k×cpD3×(CVD-mD)}+(l×cpH3×pH+m×cpV3×pV+n×cpD3×pD)〕
・・・(9)
【0157】
パラメータi,j,k,l,m,n,oは、予め設定された定数を示す。
【0158】
前記式(7)において、前記式(1)と同様に、例えば水平超解像ピクチャCHについての水平強度cpH1=1.2、垂直強度cpV1=1.0及び対角強度cpD1=1.0が用いられる。
【0159】
また、前記式(8)において、前記式(2)と同様に、例えば垂直超解像ピクチャCVについての水平強度cpH2=1.0、垂直強度cpV2=1.2及び対角強度cpD2=1.0が用いられる。
【0160】
また、前記式(9)において、前記式(3)と同様に、対角超解像ピクチャCDについての水平強度cpH3=1.0、垂直強度cpV3=1.0及び対角強度cpD3=1.2が用いられる。
【0161】
重み算出部32は、ステップS904から移行して、ぼやけピクチャBH,V,Dについて、所定領域毎に、以下の式にて、パワー変動量pH,V,D及びぼやけピクチャの強度情報bpH,V,D(bpH1,V1,D1,bpH2,V2,D2,bpH3,V3,D3)に基づいて、ぼやけピクチャBH,V,Dのそれぞれについて重みtBH,V,Dを算出する(ステップS905)。
[数10]
tBH=s/(p×bpH1×pH+q×bpV1×pV+r×bpD1×pD) ・・・(10)
[数11]
tBV=s/(p×bpH2×pH+q×bpV2×pV+r×bpD2×pD) ・・・(11)
[数12]
tBD=s/(p×bpH3×pH+q×bpV3×pV+r×bpD3×pD) ・・・(12)
【0162】
重みtBHは、水平ぼやけピクチャBHの重みを示し、重みtBVは、垂直ぼやけピクチャBVの重みを示し、重みtBDは、水平ぼやけピクチャBDの重みを示す。パラメータp,q,r,sは、予め設定された定数を示す。
【0163】
前記式(10)において、水平ぼやけピクチャBHについて、前述したとおり、例えば水平強度bpH1=0.8、垂直強度bpV1=1.0及び対角強度bpD1=1.0が用いられる。
【0164】
前記式(11)において、垂直ぼやけピクチャBVについて、前述したとおり、例えば水平強度bpH2=1.0、垂直強度bpV2=0.8及び対角強度bpD2=1.0が用いられる。
【0165】
前記式(12)において、対角ぼやけピクチャBDについて、前述したとおり、例えば水平強度bpH3=1.0、垂直強度bpV3=1.0及び対角強度bpD3=0.8が用いられる。
【0166】
このように、前記式(10)(11)(12)に示す重みtBH,V,Dは、パワー変動量pH,V,Dに基づいて算出され、パワー変動量pH,V,Dが負方向に大きいほど、絶対値が小さい値となり、パワー変動量pH,V,Dが負方向に小さいほど、絶対値が大きい値となる。この場合、パワー変動量pH,V,Dが負方向に大きいほど、基準ピクチャよりも参照ピクチャが鮮鋭化している可能性が高いため、参照ピクチャに対して基準ピクチャがぼやけている可能性が高い。
【0167】
そこで、パワー変動量pH,V,Dが負方向に大きい値を有する方向(水平方向、垂直方向及び対角方向)ほど、重みtBH,V,Dの絶対値を小さい値とすることで、後述するステップS907において、重み乗算後の予測誤差BEH,V,Dを小さい値とし、その方向に対応するぼやけピクチャの予測画像BYH,V,Dが選択されるようにしている。つまり、基準ピクチャから参照ピクチャへのパワー変動量pH,V,Dが負の大きい値を有する方向ほど、鮮鋭化が大きいと仮定して、ぼやけの強い方向のぼやけピクチャの予測画像BYH,V,Dが選択されるようにしている。
【0168】
尚、重み算出部32は、ぼやけピクチャBH,V,Dにつき、ステップS905において、パワー変動量pH,V,Dの代わりにぼやけピクチャの動き量BVH,V,D-mH,V,D及びパワー変動量pH,V,Dを用いるようにしてもよい。すなわち、重み算出部32は、所定領域毎に、以下の式にて、ぼやけピクチャの動き量BVH,V,D-mH,V,D、パワー変動量pH,V,D及びぼやけピクチャの強度情報bpH,V,D(bpH1,V1,D1,bpH2,V2,D2,bpH3,V3,D3)に基づいて、ぼやけピクチャBH,V,Dのそれぞれについて重みtBH,V,Dを算出するようにしてもよい。
[数13]
tBH=z/〔{(t×bpH1×(BVH-mH)+u×bpV1×(BVH-mV)+v×bpD1×(BVH-mD)}+(w×bpH1×pH+x×bpV1×pV+y×bpD1×pD)〕
・・・(13)
[数14]
tBV=z/〔{(t×bpH2×(BVV-mH)+u×bpV2×(BVV-mV)+v×bpD2×(BVV-mD)}+(w×bpH2×pH+x×bpV2×pV+y×bpD2×pD)〕
・・・(14)
[数15]
tBD=z/〔{(t×bpH3×(BVD-mH)+u×bpV3×(BVD-mV)+v×bpD3×(BVD-mD)}+(w×bpH3×pH+x×bpV3×pV+y×bpD3×pD)〕
・・・(15)
【0169】
パラメータt,u,v,w,x,y,zは、予め設定された定数を示す。
【0170】
前記式(13)において、前記式(10)と同様に、例えば水平ぼやけピクチャBHについての水平強度bpH1=0.8、垂直強度bpV1=1.0及び対角強度bpD1=1.0が用いられる。
【0171】
また、前記式(14)において、前記式(11)と同様に、例えば垂直ぼやけピクチャBVについての水平強度bpH2=1.0、垂直強度bpV2=0.8及び対角強度bpD2=1.0が用いられる。
【0172】
また、前記式(15)において、前記式(12)と同様に、対角ぼやけピクチャBDについての水平強度bpH3=1.0、垂直強度bpV3=1.0及び対角強度bpD3=0.8が用いられる。
【0173】
重み算出部32は、ステップS904にて算出した所定領域毎の超解像ピクチャの重みtCH,V,D、及びステップS905にて算出したぼやけピクチャの重みtBH,V,Dを予測画像選択部33に出力する。
【0174】
(予測画像選択部33)
予測画像選択部33は、重み算出部32から、所定領域毎の超解像ピクチャの重みtCH,V,D及びぼやけピクチャの重みtBH,V,Dを入力する。また、予測画像選択部33は、画面間予測処理部14から、所定領域毎の予測画像KY,CYH,V,D,BYH,V,D及び予測誤差KE,CEH,V,D,BEH,V,Dを入力する。
【0175】
予測画像選択部33は、ステップS905から移行して、所定領域毎に、超解像ピクチャCH,V,Dにつき、超解像ピクチャの予測誤差CEH,V,Dに、対応する重みtCH,V,Dを乗算する。また、予測画像選択部33は、所定領域毎に、ぼやけピクチャBH,V,Dにつき、ぼやけピクチャの予測誤差BEH,V,Dに、対応する重みtBH,V,Dを乗算する(ステップS906)。
【0176】
これにより、超解像ピクチャの重み乗算後の予測誤差CEH,V,D、及びぼやけピクチャの重み乗算後の予測誤差BEH,V,Dが得られる。
【0177】
予測画像選択部33は、所定領域毎に、局部復号ピクチャの予測誤差KE、超解像ピクチャの重み乗算後の予測誤差CEH,V,D、及びぼやけピクチャの重み乗算後の予測誤差BEH,V,Dのうち、最小の予測誤差を特定する。そして、予測画像選択部33は、最小の予測誤差に対応する予測画像を選択する(ステップS907)。これにより、7種類のピクチャの予測画像KY,CYH,V,D,BYH,V,Dのうち、いずれか一つの予測画像が選択される。
【0178】
予測画像選択部33は、所定領域毎に、選択した予測画像を画面間予測結果としてスイッチ119に出力する(ステップS908)。
【0179】
例えば、ある領域について、水平超解像ピクチャの重み乗算後の予測誤差CEHが、局部復号ピクチャの予測誤差KE、超解像ピクチャの重み乗算後の予測誤差CEH,V,D、及びぼやけピクチャの重み乗算後の予測誤差BEH,V,Dのうちの最小値である場合を想定する。この場合、予測画像選択部33は、当該領域について、局部復号ピクチャの予測画像KY、超解像ピクチャの予測画像CYH,V,D、及びぼやけピクチャの予測画像BYH,V,Dのうち、水平超解像ピクチャの予測画像CYHを選択する。そして、予測画像選択部33は、当該領域について、水平超解像ピクチャの予測画像CYHを画面間予測結果としてスイッチ119に出力する。
【0180】
以上のように、本発明の実施形態の動画像符号化装置1によれば、画面間予測部10の超解像処理部11は、局部復号ピクチャKに超解像処理を施し、3種類の超解像ピクチャCH,V,Dを生成し、フレームメモリ13に格納する。ぼやけ処理部12は、局部復号ピクチャKにぼやけ処理を施し、3種類のぼやけピクチャBH,V,Dを生成し、フレームメモリ13に格納する。
【0181】
画面間予測処理部14は、現在の局部復号ピクチャKである基準ピクチャと、フレームメモリ13から読み出した過去の局部復号ピクチャK、超解像ピクチャCH,V,D及びぼやけピクチャBH,V,Dである参照ピクチャとに基づいて、所定領域毎に、画面間予測を行って動きベクトルKV,CVH,V,D,BVH,V,D、予測画像KY,CYH,V,D,BYH,V,D及び予測誤差KE,CEH,V,D,BEH,V,Dを求める。
【0182】
周波数解析部15は、現在の局部復号ピクチャK及び過去の局部復号ピクチャKについて周波数解析を行い、現在の局部復号ピクチャKの解析結果から過去の局部復号ピクチャKの解析結果を減算し、周波数帯域毎かつ位相位置毎のパワー変動情報を求める。
【0183】
選択部16は、所定領域毎に、超解像ピクチャの動きベクトルCVH,V,D及び超解像ピクチャの強度情報cpH,V,Dに基づいて、超解像ピクチャの重みtCH,V,Dを算出する。また、選択部16は、所定領域毎に、パワー変動情報及びぼやけピクチャの強度情報bpH,V,Dに基づいて、ぼやけピクチャの重みtBH,V,Dを算出する。
【0184】
選択部16は、所定領域毎に、超解像ピクチャの予測誤差CEH,V,Dに、対応する重みtCH,V,Dを乗算し、ぼやけピクチャの予測誤差BEH,V,Dに、対応する重みtBH,V,Dを乗算する。選択部16は、所定領域毎に、局部復号ピクチャの予測誤差KE、超解像ピクチャの重み乗算後の予測誤差CEH,V,D、及びぼやけピクチャの重み乗算後の予測誤差BEH,V,Dのうち、最小の予測誤差に対応する予測画像を選択する。
【0185】
このように、画面間予測処理に用いる参照ピクチャとして、局部復号ピクチャKに加え、3種類の超解像ピクチャCH,V,D及び3種類のぼやけピクチャBH,V,Dが生成される。そして、所定領域毎に、ピクチャのパワー変動量、動き量等が考慮され、ぼやけ及び鮮鋭化、並びにこれらの方向性を考慮した最適なピクチャが予測画像として選択される。
【0186】
これにより、過去のピクチャから現在のピクチャへ向けてオブジェクトのぼやけが起こる場合、予測画像としてぼやけピクチャBが選択され、オブジェクトの鮮鋭化が起こる場合、超解像ピクチャCが選択される。このため、入力動画像と予測画像との間の残差を小さくすることができる。
【0187】
従来技術では、局部復号ピクチャKのみを参照ピクチャとして画面間予測を行うことで、客観的に高画質な動画像を得ることができた。しかし、従来技術では、ぼやけまたは鮮鋭化が起こる動画像と、通常の動画像(ぼやけまたは鮮鋭化が起こらない動画像)とを区別した画面間予測を行うことができない。また、水平方向の動きに伴うぼやけまたは鮮鋭化が起こる動画像と、垂直方向の動きに伴うぼやけまたは鮮鋭化が起こる動画像とを区別した画面間予測を行うことができない。
【0188】
本発明の実施形態では、ぼやけ及び鮮鋭化、並びにこれらの方向性を考慮した画面間予測を行うようにした。したがって、動画像のピクチャ間で領域毎にオブジェクトのぼやけまたは鮮鋭化が起こる場合であっても、画面間予測効率を向上させることができると共に、主観的に高画質な動画像を得ることが可能となる。
【0189】
〔動画像復号装置〕
次に、本発明の実施形態による動画像復号装置について説明する。図12は、本発明の実施形態による動画像復号装置の構成例を示すブロック図である。この動画像復号装置2は、エントロピー復号部50、逆量子化部51、逆直交変換部52、加算部53、画面内予測部54、インループフィルタ55、画面間予測部56及びスイッチ57を備えている。尚、図12には、本発明に直接関連する構成部のみを示しており、直接関連しない構成部は省略してある。
【0190】
エントロピー復号部50は、図1に示した動画像符号化装置1から出力された符号化信号を入力し、図1に示したエントロピー符号化部120の逆の処理を行うことで、符号化信号に対しエントロピー復号を行い、量子化インデックス列及びパラメータを生成する。
【0191】
エントロピー復号部50は、量子化インデックス列を逆量子化部51に出力し、所定領域毎に選択された予測画像の種類及び算出された動きベクトルを含むパラメータを画面間予測部56に出力すると共に、他のパラメータを逆量子化部51等に出力する。
【0192】
逆量子化部51は、エントロピー復号部50から量子化インデックス列を入力し、図1に示した量子化部112の逆の処理を行うことで、量子化インデックス列を逆量子化し、変換係数列を生成する。そして、逆量子化部51は、変換係数列を逆直交変換部52に出力する。
【0193】
逆直交変換部52は、逆量子化部51から変換係数列を入力し、図1に示した直交変換部111の逆の処理を行うことで、変換係数列を逆直交変換し、復号残差画像を生成する。そして、逆直交変換部52は、復号残差画像を加算部53に出力する。
【0194】
加算部53は、逆直交変換部52から復号残差画像を入力すると共に、スイッチ57から予測画像を入力する。そして、加算部53は、予測画像に復号残差画像を加算し、加算後の画像を画面内予測部54及びインループフィルタ55に出力する。
【0195】
画面内予測部54は、加算部53から加算後の画像を入力し、図1に示した画面内予測部116と同様の処理を行うことで、所定領域毎に、加算後の画像に画面内予測処理を施し、所定領域毎の画面内予測結果をスイッチ57に出力する。また、画面内予測部54は、加算後の画像を復号画像として出力する。これにより、元の動画像が復元される。
【0196】
インループフィルタ55は、加算部53から加算後の画像を入力し、図1に示したインループフィルタ117と同様の処理を行うことで、加算後の画像にフィルタ処理を施し、復号ピクチャK’を生成する。そして、インループフィルタ55は、復号ピクチャK’を画面間予測部56に出力する。
【0197】
画面間予測部56は、インループフィルタ55から復号ピクチャK’を入力すると共に、エントロピー復号部50から、所定領域毎に選択された予測画像の種類及び算出された動きベクトルを含むパラメータを入力する。そして、画面間予測部56は、所定領域毎に、パラメータに基づいて所定の画面間予測処理を行うことで、局部復号ピクチャの予測画像KY’、3種類の超解像ピクチャの予測画像CYH,V,D’(水平超解像ピクチャの予測画像CYH’、垂直超解像ピクチャの予測画像CYV’及び対角超解像ピクチャの予測画像CYD’)、及び3種類のぼやけピクチャの予測画像BYH,V,D’(水平ぼやけピクチャの予測画像BYH’、垂直ぼやけピクチャの予測画像BYV’及び対角ぼやけピクチャの予測画像BYD’)のうちのいずれか一つの予測画像を生成し、これを所定領域毎の画面間予測結果としてスイッチ57に出力する。また、画面間予測部56は、復号ピクチャK’を復号画像として出力する。これにより、元の動画像が復元される。画面間予測部56の詳細については後述する。
【0198】
スイッチ57は、画面内予測部54から所定領域毎の画面内予測結果を入力すると共に、画面間予測部56から所定領域毎の画面間予測結果を入力し、いずれか一方を選択し、予測画像として加算部53に出力する。
【0199】
〔画面間予測部56〕
次に、図12に示した画面間予測部56について詳細に説明する。図13は、動画像復号装置2に備えた画面間予測部56の構成例を示すブロック図である。この画面間予測部56は、超解像処理部60、ぼやけ処理部61、フレームメモリ62、画面間予測処理部63及びパラメータ処理部64を備えている。尚、図13には、本発明に直接関連する構成部のみを示しており、直接関連しない構成部は省略してある。
【0200】
画面間予測部56は、インループフィルタ55から復号ピクチャK’を入力し、復号ピクチャK’をフレームメモリ62に格納する。また、画面間予測部56のパラメータ処理部64は、エントロピー復号部50から、所定領域毎に選択された予測画像の種類及び算出された動きベクトルを含むパラメータを入力し、パラメータを画面間予測処理部63に出力する。予測画像の種類は、局部復号ピクチャK、3種類の超解像ピクチャCH,V,D及び3種類のぼやけピクチャBH,V,Dのうちのいずれか一つ(7種類のピクチャのうちのいずれか一つ)を示している。
【0201】
超解像処理部60は、復号ピクチャK’に対し、図2に示した超解像処理部11と同様の超解像処理を施し、3種類の超解像ピクチャCH,V,D’(水平超解像ピクチャCH’、垂直超解像ピクチャCV’及び対角超解像ピクチャCD’)を生成する。超解像処理部60は、3種類の超解像ピクチャCH,V,D’をフレームメモリ62に格納する。
【0202】
ぼやけ処理部61は、復号ピクチャK’に対し、図2に示したぼやけ処理部12と同様のぼやけ処理を施し、ぼやけピクチャBH,V,D’(水平ぼやけピクチャBH’、垂直ぼやけピクチャBV’及び対角ぼやけピクチャBD’)を生成する。ぼやけ処理部61は、3種類のぼやけピクチャBH,V,D’をフレームメモリ62に格納する。
【0203】
フレームメモリ62には、復号ピクチャK’、3種類の超解像ピクチャCH,V,D’及び3種類のぼやけピクチャBH,V,D’がフレーム毎に格納される。
【0204】
画面間予測処理部63は、パラメータ処理部64からパラメータを入力し、パラメータに含まれる予測画像の種類が局部復号ピクチャKを示している場合、フレームメモリ62に格納された復号ピクチャK’を過去の復号ピクチャK’として読み出す。
【0205】
また、画面間予測処理部63は、パラメータに含まれる予測画像の種類が水平超解像ピクチャCH、垂直超解像ピクチャCV及び対角超解像ピクチャCDのいずれかを示している場合、フレームメモリ62に格納された対応する超解像ピクチャC’(予測画像の種類に対応する、水平超解像ピクチャCH’、垂直超解像ピクチャCV’及び対角超解像ピクチャCD’のうちのいずれか一つのピクチャ)を、過去の超解像ピクチャC’として読み出す。
【0206】
また、画面間予測処理部63は、パラメータに含まれる予測画像の種類が水平ぼやけピクチャBH、垂直ぼやけピクチャBV及び対角ぼやけピクチャBDのいずれかを示している場合、フレームメモリ62に格納された対応するぼやけピクチャB’(予測画像の種類に対応する、水平ぼやけピクチャBH’、垂直ぼやけピクチャBV’及び対角ぼやけピクチャBD’のうちのいずれか一つのピクチャ)を、過去のぼやけピクチャB’として読み出す。
【0207】
画面間予測処理部63は、過去の復号ピクチャK’、超解像ピクチャC’またはぼやけピクチャB’、及びパラメータに含まれる動きベクトルに基づいて、画面間予測を行い、所定領域毎に、予測画像を求める。所定領域は、図2と同様に、例えばslice(スライス)領域、CTU(Coding Tree Unit:コーディングツリーユニット)領域、CU(Coding Unit:コーディングユニット)領域である。
【0208】
画面間予測処理部63は、所定領域毎の予測画像を画面間予測結果としてスイッチ57に出力する。
【0209】
また、図示しない読み出し部は、フレームメモリ62から復号ピクチャK’を読み出し、これを復号画像Oとして出力する。
【0210】
以上のように、本発明の実施形態の動画像復号装置2によれば、画面間予測部56の超解像処理部60は、復号ピクチャK’に基づいて3種類の超解像ピクチャCH,V,D’を生成し、フレームメモリ62に格納する。ぼやけ処理部61は、復号ピクチャK’に基づいて3種類のぼやけピクチャBH,V,D’を生成し、フレームメモリ62に格納する。
【0211】
画面間予測処理部63は、パラメータに含まれる予測画像の種類に従い、フレームメモリ62から復号ピクチャK’、超解像ピクチャC’(水平超解像ピクチャCH’、垂直超解像ピクチャCV’及び対角超解像ピクチャCD’のうちのいずれか一つのピクチャ)またはぼやけピクチャB’(水平ぼやけピクチャBH’、垂直ぼやけピクチャBV’及び対角ぼやけピクチャBD’のうちのいずれか一つのピクチャ)を読み出し、読み出したピクチャ、及びパラメータに含まれる動きベクトルに基づいて、所定領域毎に予測画像を求める。
【0212】
このように、動画像符号化装置1において、画面間予測処理に用いる参照ピクチャとして、局部復号ピクチャK、3種類の超解像ピクチャCH,V,D及び3種類のぼやけピクチャBH,V,Dが生成され、領域単位で、ピクチャのパワー変動量、動き量等が考慮され、最適なピクチャが予測画像として選択された場合、動画像復号装置2では、動画像符号化装置1から入力したパラメータに含まれる予測画像の種類に従い、動画像符号化装置1にて選択された予測画像と同じ種類の予測画像が生成され、復号画像が生成される。
【0213】
これにより、過去のピクチャから現在のピクチャへ向けてオブジェクトのぼやけが起こる場合、ぼやけピクチャB’が選択され、オブジェクトの鮮鋭化が起こる場合、超解像ピクチャC’が選択され、予測画像が生成される。つまり、ぼやけ及び鮮鋭化、並びにこれらの方向性を考慮した予測画像が生成される。
【0214】
したがって、動画像のピクチャ間で領域毎にオブジェクトのぼやけまたは鮮鋭化が起こる場合であっても、画面間予測効率を向上させることができると共に、主観的に高画質な動画像を得ることが可能となる。
【0215】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0216】
(超解像処理部11,60及びぼやけ処理部12,61のいずれか一方を備える例)
前記実施形態では、図2に示したとおり、動画像符号化装置1の画面間予測部10は、超解像処理部11及びぼやけ処理部12を備えるようにした。また、図13に示したとおり、動画像復号装置2の画面間予測部56は、超解像処理部60及びぼやけ処理部61を備えるようにした。
【0217】
これに対し、画面間予測部10は、超解像処理部11及びぼやけ処理部12のうちのいずれか一方を備えるようにしてもよい。また、画面間予測部56は、画面間予測部10に対応して、超解像処理部60及びぼやけ処理部61のうちのいずれか一方を備えるようにしてもよい。
【0218】
動画像符号化装置1の画面間予測部10が超解像処理部11を備え、ぼやけ処理部12を備えていない場合、画面間予測部10の画面間予測処理部14は、基準ピクチャ、及び、過去の局部復号ピクチャK及び超解像ピクチャCH,V,Dである参照ピクチャに基づき、画面間予測を行い、所定領域毎に、動きベクトルKV,CVH,V,D、予測画像KY,CYH,V,D及び予測誤差KE,CEH,V,Dを求める。
【0219】
選択部16は、所定領域毎に、前述と同様の処理にて、局部復号ピクチャの予測誤差KE及び超解像ピクチャの重み乗算後の予測誤差CEH,V,Dのうち、最小の予測誤差に対応する予測画像を選択する。
【0220】
動画像復号装置2の画面間予測部56が超解像処理部60を備え、ぼやけ処理部61を備えていない場合、画面間予測部56の画面間予測処理部63は、パラメータに含まれる予測画像の種類に従い、フレームメモリ62から復号ピクチャK’及び超解像ピクチャC’のうちのいずれか一つのピクチャを読み出し、読み出したピクチャ、及びパラメータに含まれる動きベクトルに基づいて、所定領域毎に予測画像を求める。
【0221】
一方、動画像符号化装置1の画面間予測部10がぼやけ処理部12を備え、超解像処理部11を備えていない場合、画面間予測部10の画面間予測処理部14は、基準ピクチャ、及び、過去の局部復号ピクチャK及びぼやけピクチャBH,V,Dである参照ピクチャに基づき、画面間予測を行い、所定領域毎に、動きベクトルKV,BVH,V,Dを求め、予測画像KY,BYH,V,D及び予測誤差KE,BEH,V,Dを求める。
【0222】
選択部16は、所定領域毎に、前述と同様の処理にて、局部復号ピクチャの予測誤差KE及びぼやけピクチャの重み乗算後の予測誤差BEH,V,Dのうち、最小の予測誤差に対応する予測画像を選択する。
【0223】
動画像復号装置2の画面間予測部56がぼやけ処理部61を備え、超解像処理部60を備えていない場合、画面間予測部56の画面間予測処理部63は、パラメータに含まれる予測画像の種類に従い、フレームメモリ62から復号ピクチャK’及びぼやけピクチャB’のうちのいずれか一つのピクチャを読み出し、読み出したピクチャ、及びパラメータに含まれる動きベクトルに基づいて、所定領域毎に予測画像を求める。
【0224】
(予測画像の他の選択処理)
また、前記実施形態では、動画像符号化装置1の画面間予測部10に備えた選択部16は、所定領域毎に、超解像ピクチャの重みtCH,V,D及びぼやけピクチャの重みtBH,V,Dを算出し、局部復号ピクチャの予測誤差KE、超解像ピクチャの重みtCH,V,Dを乗算した後の予測誤差CEH,V,D、及び、ぼやけピクチャの重みtBH,V,Dを乗算した後の予測誤差BEH,V,Dのうち、最小の予測誤差に対応する予測画像を選択するようにした。
【0225】
これに対し、選択部16は、先に、選択されるべき予測画像の種類を判定し、当該種類の中で、予測画像を選択するようにしてもよい。予測画像の種類は、局部復号ピクチャK、超解像ピクチャC及びぼやけピクチャBのうちのいずれか一つ(3種類のうちのいずれか一つ)である。
【0226】
具体的には、選択部16は、パワー変動情報から算出したパワー変動量pH,V,Dを用いて、所定領域毎に、その水平パワー変動量pH、垂直パワー変動量pV及び対角パワー変動量pDの合計または平均をパワー変動量として求め、パワー変動量の閾値処理を行う。
【0227】
選択部16は、パワー変動量が第1の閾値(予め設定された正の値)よりも大きいと判定した場合、予測画像の種類として超解像ピクチャCを判定する。パワー変動量が第1の閾値よりも大きい場合は、現在のピクチャのパワーが過去の画像よりも大きいため、現在の画像が過去の画像に比べ、鮮鋭化していると判断できるからである。この場合、選択部16は、前述と同様の処理にて、超解像ピクチャの重みtCH,V,Dを乗算した後の予測誤差CEH,V,Dのうち、最小の予測誤差に対応する予測画像を選択する。
【0228】
また、選択部16は、パワー変動量が第1の閾値と第2の閾値(予め設定された負の値)との間にあると判定した場合、予測画像の種類として局部復号ピクチャKを判定する。パワー変動量が第1の閾値と第2の閾値との間にある場合は、現在のピクチャのパワーと過去のピクチャのパワーとがほぼ同じであるため、現在の画像が過去の画像に比べ、ぼやけておらず、かつ鮮鋭化していないと判断できるからである。この場合、選択部16は、局部復号ピクチャKを予測画像として選択する。
【0229】
また、選択部16はパワー変動量が第2の閾値よりも小さいと判定した場合、予測画像の種類としてぼやけピクチャBを判定する。パワー変動量が第2の閾値よりも小さい場合は、現在のピクチャのパワーが過去の画像よりも小さいため、現在の画像が過去の画像に比べ、ぼやけていると判断できるからである。この場合、選択部16は、前述と同様の処理にて、ぼやけピクチャの重みtBH,V,Dを乗算した後の予測誤差BEH,V,Dのうち、最小の予測誤差に対応する予測画像を選択する。
【0230】
また、本発明の実施形態は、例えば、ピクチャ間で被写界深度内外に移動するオブジェクトを含む場合、オブジェクトが静止状態から動作状態に変化し、またはその逆の状態に変化した場合に適用がある。例えばカメラが突然パンまたはチルトの動作をした場合、これらの動作が停止した場合、画面内でオブジェクトが奥から手前へ移動した場合、この逆に移動した場合等に適用がある。
【0231】
尚、本発明の実施形態による動画像符号化装置1及び動画像復号装置2のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。動画像符号化装置1及び動画像復号装置2は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。
【0232】
動画像符号化装置1に備えた減算部110、直交変換部111、量子化部112、逆量子化部113、逆直交変換部114、加算部115、画面内予測部116、インループフィルタ117、画面間予測部10、スイッチ119及びエントロピー符号化部120の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0233】
また、動画像復号装置2に備えたエントロピー復号部50、逆量子化部51、逆直交変換部52、加算部53、画面内予測部54、インループフィルタ55、画面間予測部56及びスイッチ57も、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0234】
これらのプログラムは、前記記憶媒体に格納されており、CPUに読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。
【符号の説明】
【0235】
1,100 動画像符号化装置
2 動画像復号装置
10,56,118, 画面間予測部
14,63,121 画面間予測処理部
11,60 超解像処理部
12,61 ぼやけ処理部
13,62,122 フレームメモリ
15 周波数解析部
16 選択部
17,64 パラメータ処理部
20 復号ピクチャ予測部
21 超解像予測部
22 ぼやけ予測部
30 動き量算出部
31 パワー変動量算出部
32 重み算出部
33 予測画像選択部
50 エントロピー復号部
51,113 逆量子化部
52,114 逆直交変換部
53,115 加算部
54,116 画面内予測部
55,117 インループフィルタ
57,119 スイッチ
110 減算部
111 直交変換部
112 量子化部
120 エントロピー符号化部
K 局部復号ピクチャ
K’ 復号ピクチャ
C,CH,V,D,C’,CH,V,D’ 超解像ピクチャ
H,CH’ 水平超解像ピクチャ
V,CV’ 垂直超解像ピクチャ
D,CD’ 対角超解像ピクチャ
B,BH,V,D,B’,BH,V,D’ ぼやけピクチャ
H,BH’ 水平ぼやけピクチャ
V,BV’ 垂直ぼやけピクチャ
D,BD’ 対角ぼやけピクチャ
KY,KY’ 局部復号ピクチャの予測画像
CYH,V,D,CYH,V,D’ 超解像ピクチャの予測画像
BYH,V,D,BYH,V,D’ ぼやけピクチャの予測画像
KV 局部復号ピクチャの動きベクトル
CVH,V,D 超解像ピクチャの動きベクトル
BVH,V,D ぼやけピクチャの動きベクトル
KE 局部復号ピクチャの予測誤差
CEH,V,D 超解像ピクチャの予測誤差
BEH,V,D ぼやけピクチャの予測誤差
CVH,V,D-mH,V,D 超解像ピクチャの動き量
BVH,V,D-mH,V,D ぼやけピクチャの動き量
H,V,D パワー変動量
cpH,V,D,cpH1,V1,D1,cpH2,V2,D2,cpH3,V3,D3 超解像ピクチャの強度情報
bpH,V,D,bpH1,V1,D1,bpH2,V2,D2,bpH3,V3,D3 ぼやけピクチャの強度情報
tCH,V,D,超解像ピクチャの重み
tBH,V,D,ぼやけピクチャの重み
図1
図2
図3
図4
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