(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】加飾シートの製造方法、及び加飾シート
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20230328BHJP
【FI】
B41M5/00 700
(21)【出願番号】P 2020113573
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 友美
(72)【発明者】
【氏名】細川 雅司
(72)【発明者】
【氏名】東 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 純子
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2016/013644(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0210388(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
B44C 1/16-1/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面と、前記第1表面と反対側の第2表面とを含む不織布、を有する資材シートと、
前記第1表面に配置された表示層と、
を備える加飾シートの製造方法であって、
箔押し用のパターンを外周面に有するパターンロールと、前記パターンロールに対し対面配置されたアンビルロールと、の間に、箔を有する転写フィルムと前記資材シートとを重ねて搬送して、前記第1表面に、前記転写フィルムから前記パターンに対応した前記箔を圧着して前記表示層を形成する箔押工程を備え、
前記資材シートの圧縮エネルギーWC値が0.294N・m/m
2以上1.960N・m/m
2以下であ
り、
前記資材シートの密度は、70kg/m
3
以上350kg/m
3
以下である、
加飾シートの製造方法。
【請求項2】
前記箔押工程は、前記資材シートに対し張力を搬送方向に与えながら、前記資材シートを前記パターンロールと前記アンビルロールの間に搬送する、請求項1に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項3】
前記不織布の繊維の配向方向は、前記搬送方向に沿っている、請求項2に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項4】
前記資材シートは、前記第2表面にラミネートされたフィルムを有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項5】
前記箔押工程の前に、前記資材シートを予熱する予熱工程を備える、請求項1~
4のいずれか1項に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項6】
前記予熱工程は、前記第1表面を、前記第2表面より高い温度に加熱する、請求項
5に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項7】
前記箔押工程における前記第1表面の温度が、前記不織布の軟化点以上である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の加飾シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シートの製造方法、及び加飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
紙片や革材上に箔押しをして、ラベルやパッケージを製造する方法が知られている。例えば、特許文献1には、転写フィルムを、帯状版材の供給方向と直角な方向に供給し、帯状版材を製品の長さ分だけ前進移動させ、同時に転写フィルムを所定の長さだけ前進移動し、停止した状態で、ダイスが帯状版材にパターンを印刷する方法(以下、「バッチ式方法」という。)が開示されている。バッチ式方法は、安定してパターンを印刷できるものの、製造ラインを一旦停止する必要があるので、生産効率を向上することが困難であるという問題がある。
【0003】
これに対し、特許文献1には、加圧ロールと、加圧ロールと協働する転写ロールとを有し、帯状版材と転写フィルムを加圧ロールと転写ロールの間に通すことによって、帯状版材の表面にパターンを転写する方法(以下、「ロータリー式方法」という。)が開示されている。ロータリー式方法は、製造ラインを止めずに連続して転写することができるので、バッチ式方法に比べ、生産効率を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ロータリー式方法は、紙片や革材にパターンを転写するには適しているものの、不織布にそのまま適用しても、不織布の表面にパターンが十分に定着せず、パターンがはがれてしまう、ということが分かった。
【0006】
本発明は、不織布の表面にパターンを示す表示層を効率的、かつ安定的に形成することができる加飾シートの製造方法、及び加飾シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1表面と、前記第1表面と反対側の第2表面とを含む不織布、を有する資材シートと、前記第1表面に配置された表示層と、を備える加飾シートの製造方法であって、箔押し用のパターンを外周面に有するパターンロールと、前記パターンロールに対し対面配置されたアンビルロールと、の間に、箔を有する転写フィルムと前記資材シートとを重ねて搬送して、前記第1表面に、前記転写フィルムから前記パターンに対応した前記箔を圧着して前記表示層を形成する箔押工程を備え、KES測定で測定される前記資材シートの圧縮エネルギーWC値が0.294N・m/m2以上1.960N・m/m2以下である、加飾シートの製造方法、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る加飾シートの製造方法は、不織布の表面に表示層を効率的、かつ安定的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る加飾シートの模式図である。
【
図2】本実施形態に係る加飾シートの部分拡大断面図である。
【
図3】本実施形態の変形例に係る加飾シートの部分拡大断面図である。
【
図4】本実施形態に係る加飾シートの適用例を示す模式図である。
【
図5】本実施形態に係る加飾シートの製造方法に用いる箔押装置を模式的に示す図である。
【
図6】本実施形態の製造方法に用いる資材シートの模式図(1)である。
【
図7】本実施形態の製造方法に用いる資材シートの模式図(2)である。
【
図8】本実施形態に係る加飾シートの製造方法に用いる製造装置を模式的に示す部分拡大図である。
【
図9】本実施形態の変形例に係る加飾シートの製造方法に用いる製造装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態は、以下の態様に関する。
[態様1]
第1表面と、前記第1表面と反対側の第2表面とを含む不織布、を有する資材シートと、前記第1表面に配置された表示層と、を備える加飾シートの製造方法であって、箔押し用のパターンを外周面に有するパターンロールと、前記パターンロールに対し対面配置されたアンビルロールと、の間に、箔を有する転写フィルムと前記資材シートとを重ねて搬送して、前記第1表面に、前記転写フィルムから前記パターンに対応した前記箔を圧着して前記表示層を形成する箔押工程を備え、前記資材シートの圧縮エネルギーWC値が0.294N・m/m2以上1.960N・m/m2以下である、加飾シートの製造方法。
前記資材シートの圧縮エネルギーWC値が0.294N・m/m2以上1.960N・m/m2以下である。圧縮エネルギーWC値が0.294N・m/m2以上であることによって、資材シートがパターンによって押し込まれ、より確実に変形する。圧縮エネルギーWC値が1.960N・m/m2以下であることによって、パターンが資材シートに深く沈み込むことを防いで、資材シートにパターンをより確実に押し込むことができる。したがって、ロータリー式方法であっても、不織布の表面にパターンを示す表示層を安定的に形成することができる。したがって本加飾シートの製造方法は、不織布の表面に表示層を効率的、かつ安定的に形成することができる。
【0011】
[態様2]
前記箔押工程は、前記資材シートに対し張力を搬送方向に与えながら、前記資材シートを前記パターンロールと前記アンビルロールの間に搬送する、態様1に記載の加飾シートの製造方法。
資材シートは、張力によって幅入りすると同時に、波状の起伏が生じることによって厚みが増す。厚みが増した資材シートは、パターンロールとアンビルロールとの接触時間が増加する。したがって本加飾シートの製造方法は、箔と不織布の表面の密着性が向上することによって、不織布の表面に表示層をより安定的に形成することができる。
【0012】
[態様3]
前記資材シートの密度は、70kg/m3以上350kg/m3以下である、態様1又は2に記載の加飾シートの製造方法。
資材シートの密度が70kg/m3以上350kg/m3以下であるので、不織布の繊維間に空隙が少なく転写フィルムと接触可能な面積が増える。したがって本加飾シートの製造方法は、箔と不織布の表面の密着性が向上することによって、表示層をより安定的に形成することができる。
【0013】
[態様4]
前記不織布の繊維の配向方向は、前記搬送方向に沿っている、態様2に記載の加飾シートの製造方法。
不織布の繊維の配向方向は、前記搬送方向に沿っている。したがって、本加飾シートの製造方法は、資材シートを容易に幅入りさせることができるので、資材シートの厚みをより容易に増すことができる。
【0014】
[態様5]
前記資材シートは、前記第2表面にラミネートされたフィルムを有する、態様1~4のいずれか1項に記載の加飾シートの製造方法。
資材シートは、前記第2表面にラミネートされたフィルムを有することによって、資材シートの圧縮エネルギーWC値を調整することができる。具体的には、圧縮エネルギーWC値が0.294N・m/m2未満の不織布の第2表面にフィルムをラミネートすることによって、圧縮エネルギーWC値を0.294N・m/m2以上とすることができる。このように第2表面にラミネートされたフィルムを有する資材シートは、全体に剛性が増し、クッション性が均一となるので、箔と不織布の表面の密着性がより向上する。したがって本加飾シートの製造方法によれば、不織布の表面に表示層を効率的、かつより安定的に形成することができる。
【0015】
[態様6]
前記箔押工程の前に、前記資材シートを予熱する予熱工程を備える、態様1~5のいずれか1項に記載の加飾シートの製造方法。
箔押工程の前に、前記資材シートを予熱する予熱工程を備えることによって、資材シートを十分に加熱することができる。したがって本加飾シートの製造方法は、箔と不織布の表面の密着性を向上することができる。
【0016】
[態様7]
前記予熱工程は、前記第1表面を、前記第2表面より高い温度に加熱する、態様6に記載の加飾シートの製造方法。
予熱工程は、前記第1表面を、前記第2表面より高い温度に加熱する。すなわち表示層を形成する第1表面をより高い温度に加熱することによって、第2表面への熱影響を抑えることができる。
【0017】
[態様8]
前記箔押工程における前記第1表面の温度が、前記不織布の軟化点以上である、態様1~7のいずれか1項に記載の加飾シートの製造方法。
箔押工程における前記第1表面の温度が、前記不織布の軟化点以上であるので、パターンが第1表面に押し込まれた際に、第1表面の繊維が溶融し、箔との密着性をより増すことができる。
【0018】
[態様9]
第1表面と、前記第1表面と反対側の第2表面とを含む不織布、を有する資材シートと、前記第1表面に配置された表示層と、を備える加飾シートであって、前記表示層に対し前記不織布の配向方向に交差する方向の内側であって前記表示層から前記配向方向に平行な方向に離れた位置にある第1領域における前記加飾シートの厚さは、前記表示層に対し前記配向方向に交差する方向の外側の位置にある第2領域における前記加飾シートの厚さより、厚い、加飾シート。
本加飾シートは、第1領域と第2領域に高低差があるので、表示層をより立体的に浮き立たせることができる。
【0019】
[加飾シート]
以下、実施形態に係る吸収性物品について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る加飾シートの模式図である。
図2は、本実施形態に係る加飾シートの部分拡大断面図である。
図1に示す加飾シート10Aは、不織布12を有する資材シート14Aと、表示層16とを備える。以下、必要に応じてxyz座標系を用いて図示および説明を行う。x方向、y方向及びz方向は、互いに直交し、それぞれ逆の二つの向きを含むが、図面において示す場合、紙面に直交する方向については一方の向きのみを示す場合がある。
【0020】
不織布12は、
図2に示すように、xy平面に平行な、第1表面22と、第1表面22と反対側の第2表面24とを有するテープ状の部材であり、例えば、スパンボンド不織布やエアスルー不織布やSMS不織布やスパンレース不織布を用いることができる。不織布12の材料としては、特に制限はなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートのような合成樹脂が挙げられる。不織布12の繊維の配向方向は、y方向に沿っている。繊維の配向方向は、不織布を形成する繊維うち、約50%以上の繊維が配向している方向をいう。不織布12の厚みは、例えば0.02~2mmが挙げられ、0.05~1mmが好ましい。厚みが0.02mm以上であれば、表示層16の材料が不織布12を抜けにくいので表示層16を良好に形成することができる。厚みが2mm以下であれば、表示層16が製品の表面から突出することを抑制できる。
【0021】
不織布12の平均坪量は、いずれも、好ましくは30~250g/m2である。坪量は以下の測定方法に従って測定される。常温(20℃±15℃(5~35℃):JIS Z 8703)の雰囲気で5cm×5cmの大きさに切り出して試料とし、質量を測定する。次いで、測定した質量を試料の面積で割り算して試料の坪量を算出する。10個の試料の坪量を平均した値をシートの坪量とする。
【0022】
資材シート14Aは、クッション性を確保する観点から、圧縮エネルギーWC値が0.294N・m/m2以上1.960N・m/m2以下であり、好ましくは0.343N・m/m2以上0.784N・m/m2以下、より好ましくは0.381N・m/m2以上0.700N・m/m2以下である。圧縮エネルギーWC値は、値が大きいほど圧縮され易いことを意味する。
【0023】
圧縮エネルギーWC値は、サンプルを自動化圧縮試験機「KES FB-3A」(カトーテック(株)製)による圧縮特性評価試験に供することにより取得できる。このとき、上記試験機の圧縮子は、その中心をクッション部の幅方向中心部分に合わせて測定することとする。また、上記圧縮特性評価試験の測定条件は、以下の通りとする。
【0024】
SENS :2
速度 :0.02mm/秒
ストローク:5mm/10V
圧縮子面積:2cm2
取込み間隔:0.1秒
上限荷重 :50gf/cm2
繰返し回数:1回
【0025】
資材シート14Aは、被箔押面23と、被箔押面23と反対側のベース面25とを有する。
図2の場合、被箔押面23は不織布12の第1表面22であり、ベース面25は不織布12の第2表面24である。資材シート14Aの密度は、好ましくは70kg/m
3以上350kg/m
3以下、より好ましくは100kg/m
3以上300kg/m
3以下、さらに好ましくは、180kg/m
3以上200kg/m
3以下である。
図2の場合、資材シート14Aの密度は、不織布12の密度である。資材シート12Aの密度は、坪量(g/m
2)を厚み(m)で除することによって算出する。
【0026】
不織布12の第1表面22は、第2表面24に向かって凹となる凹部26と、凹部26の周囲に位置する凸部28と、を含んでいる。凹部26は、平面視で、凹部26の中央に位置する主要部30と、主要部30の外縁に位置し、凸部28と接する縁部32と、を含んでいる。表示層16は、主要部30及び縁部32に配置されている。凹部26は、不織布12に本来備わる表面の凹凸による凹部、例えば繊維ムラに伴う表面の凹部ではなく、平面方向において、表示層16よりやや大きい程度の大きさで不織布12の第1表面22に形成された凹部26である。凹部26は、凹部26を形成すべき領域を加熱しつつ圧縮することで、繊維同士が融着して、圧縮時の形状が圧縮後に概ね維持されることで、形成し得る。繊維同士の融着により、凹部26の第1表面22における繊維のムラに伴う表面の凹凸をある程度の範囲に抑えることができる。
【0027】
平面方向、すなわちx方向及びy方向において、凹部26の長さは、表示層16を凹部26に収める観点から、表示層16のx方向及びy方向の長さの100%超であり、好ましくは104%以上であり、より好ましくは108%以上である。凹部26おけるx方向及びy方向の長さは、表示層16を剥がれ難くする観点から、表示層16のx方向及びy方向の長さの140%以下であり、好ましくは130%以下であり、より好ましくは120%以下である。例えば、表示層16のy方向の大きさが約20mm程度の場合、凹部26のy方向の大きさは、約22mm程度である。凸部28は、その凹部26の周りを囲む領域であり、不織布12における凹部26を除いた領域である。
【0028】
表示層16は、不織布12の凹部26に直接配置されている。表示層16は、文字、図形、記号及び色彩又はこれらの結合であるパターンを示す層である。本実施形態では、パターンとして、ハート形が用いられている。ただし、パターンの種類、すなわち、文字、図形、記号及び色彩の各々又はこれらの結合の種類には特に制限はなく、文字としては例えば、アルファベット、アラビア文字、ヒエログラフ、ローマ数字、漢字、ひらがな、カタカナ、又は、特殊文字などが挙げられる。図形としては、例えば、円形、楕円形、多角形、植物形状、動物形状、物品形状、キャラクターデザイン、国旗、又は、紋章などが挙げられる。記号としては、例えば、地図記号、音部記号、案内図記号(ピクトグラム)、又は、標識などが挙げられる。色彩としては、例えば、金色や銀色のような金属光沢を有する色、所定の光沢度を示す色、又は、表示層16の周囲(例示:資材シート)の色に対し、所定の色差を有する色などが挙げられる。金属光沢を有する色や所定の光沢度を示す色は、暗い所でも見易いので視認性が高い。表示層16の周囲の色に対して所定の色差を有する色は、表示層16の周囲の資材に対して識別性が高いので視認性が高い。表示層16に含まれるパターンの数は任意である。また、一つのパターンの大きさとしては、特に制限はないが、例えば、一つのパターンを含み得る最小の矩形(x方向及びy方向に平行な辺で構成)の一辺の長さは、1~100mmが挙げられる。
【0029】
表示層16は、視認性の向上の観点から高い光沢度を有することが好ましい。高い光沢度としては、例えば、7以上であり、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上であり、更に好ましくは30以上である。光沢度が低過ぎると、視認性が低くなり、特に明るさが十分でない環境で、表示層16のパターンを視認することが困難となる。
【0030】
この場合、表示層16の色は、上記の光沢度を示すことができれば、特に制限はないが、上記の光沢度を得易い観点から、金属光沢を示す色、例えば、金色、銀色が好ましく、特に金色が好ましい。金色の光沢がある場合、更に高級感を付与することもできる。ただし、金色や銀色を金又は銀で実現する必要はなく、他の材料で疑似的に金色や銀色の色味を実現してもよい。所定の光沢度を示す金属光沢を実現し得る色又は所定の光沢度を示す色としては、例えば、PANTONE(登録商標)のMetallic Coated CHIPSの色における800番台(C)、8000番台(C)、10000番台(C)の色領域が挙げられる。
【0031】
表示層16は、金属成分を有する箔で形成される。箔は、金属成分を含む薄く平らな層である。箔は、金属を含有する金属層を有する。金属層は、金属を叩いて薄く平らに延ばしたもの、または金属を含む層状のものである。金属を含む層状のものは、例えば、金属粉顔料含有塗布膜、金属蒸着膜である。箔は、金属層単体で用いてもよいし、金属層と、合成樹脂で形成された接着層とを積層したものを用いてもよい。
【0032】
箔は、塗料のような液状の材料と比較して、一定の形状・厚みを有している。そのため、箔を形成する下地の凹凸や空隙に影響され難く、表示層16を所望の厚みで比較的平滑に形成でき、表示層16の光沢度を所望の値に維持し易くできる。表示層(箔)16の厚みとしては、1~1000μmが挙げられ、10~500μmが好ましい。表示層16の厚みが1μm以上であると下地の凹凸に影響されず、光沢を維持することができる。表示層6の厚みが1000μm以下であると触感が硬くなり過ぎず装着者等に違和感を与えることを抑制することができる。
【0033】
加飾シート10は、
図1に示す第1領域18と第2領域20とで、厚みが異なる。第1領域18は、表示層16に対し配向方向(y方向)に平行な、表示層16の外側に位置する。第1領域18は、表示層16に対し配向方向に交差する方向の内側、すなわちx方向内側であって、表示層16から配向方向に平行方向に離れた位置にある領域である。第2領域20は、表示層16に対し配向方向(y方向)に交差する、表示層16の外側に位置する。第2領域20は、表示層16に対し配向方向に交差する方向の外側、すなわちx方向外側にある領域である。第1領域18における加飾シート10の厚みは、第2領域20における加飾シート10の厚みより、厚い。
【0034】
本明細書において、特に断りのない限り、対象物の厚み(mm)は、以下の通り測定される。株式会社大栄科学精器製作所製 FS-60DS[測定面44mm(直径),測定圧3g/cm2]を準備し、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)の下、対象物の異なる5つの部位を加圧し、各部位における加圧10秒後の厚みを測定し、5つの測定値の平均値を対象物の厚みとする。
【0035】
図3は、本実施形態の変形例に係る加飾シート10Bの部分拡大図である。
図3に示す加飾シート10Bは、資材シート14Bと、表示層16とを備える。資材シート14Bは、不織布12と、不織布12の第2表面24に積層(ラミネート)されたフィルム34とを含む。フィルム34は、表面33と裏面35とを有し、表面33において不織布12の第2表面24に接合されている。フィルム34の材料としては、特に制限はなく、例えば合成樹脂が挙げられる。フィルム34の厚みは、例えば、10μm~30μm(もしくは換算で0.010mm~0.030mm)、好ましくは14μm~20μm(もしくは換算で0.014mm~0.020mm)である。資材シート14Bの被箔押面23は不織布12の第1表面22であり、ベース面25はフィルム34の裏面35である。本変形例において、不織布12とフィルム34とを含む資材シート14Bの圧縮エネルギーWC値、及び密度は、上記実施形態における資材シート14Aの範囲と同じである。
【0036】
本明細書において、実施形態と変形例とを特に区別しない場合、加飾シート10A,10Bは加飾シート10、資材シート14A,14Bは資材シート14とする。
【0037】
次に、加飾シート10の適用例について、
図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る加飾シートの適用例を示す模式図である。
図4においてx方向は、幅方向と呼ぶ。
図4に示すテープ型おむつ1は、腹側部2と背側部3とを備える。背側部3は、幅方向外側の両端部から外側に突出した一対の係合テープ37を有する。加飾シート10は、テープ型おむつ1において、ターゲットテープ36に適用することができる。ターゲットテープ36は、非肌側の腹側部2における幅方向の中央部に位置し、幅方向に延在している。ターゲットテープ36は、中央に配置された加飾シート10と、加飾シート10の幅方向両側に一体に配置された一対のテープ部38とを備える。テープ型おむつ1は、例えば、装着者の腹部に腹側部2が当接された後、背側部3の一対の係合テープ37が腹側部2の一対のテープ部38に係合することで装着者に装着される。装着された後のテープ型おむつ1においても、加飾シート10の表示層16は、一対の係合テープ37に隠れることなく、外部から視認することができる。
【0038】
[加飾シートの製造方法]
次に、本実施形態に係る加飾シート10の製造方法について説明する。まず、本製造方法に使用される、箔押装置について説明する。ただし、本明細書において、「材料又は製品の搬送方向」を「MD方向」、「MD方向と水平面上において直交する方向」(すなわち、製造ラインの幅方向)を「CD方向」、「これらMD方向とCD方向と直交する方向」(すなわち、製造ラインの垂直方向)を「TD方向」とそれぞれいう。MD方向、TD方向及びCD方向は、互いに直交し、それぞれ逆の二つの向きを含むが、図面において示す場合、紙面に直交する方向については一方の向きのみを示す場合がある。
【0039】
図5は、箔押装置40を示す模式図である。箔押装置40は、箔形成部42と、資材供給部44と、箔供給部46とを備える。箔形成部42は、パターンロール48と、パターンロール48に対し対面配置されたアンビルロール50とを有する。パターンロール48及びパターンロール48の中心軸は、互いに平行、かつCD方向に平行に配置されている。パターンロール48は、箔押用のパターン(図示しない)を外周面に複数有する。パターンロール48とアンビルロール50とは、それぞれの外周面同士において接触しており、当該接触部分においてTD方向(半径方向)へ所定の荷重(箔押荷重)が互いに作用するように押圧されている。パターンロール48とアンビルロール50は同じ周速度で逆方向(
図5中、矢印方向)へ回転する。
【0040】
資材供給部44は、供給ロール51と、巻き取りロール52とを備える。供給ロール51は、箔形成部42に対し、上流側に配置され、資材シート連続体53がロール状に巻き付けられており、当該資材シート連続体53を供給する。資材シート連続体53は、
図6に示すように、帯状である点を除いて、上記資材シート14と同じ構成である。巻き取りロール52は、箔形成部42に対し、下流側に配置され、資材シート連続体53に箔押しがなされた加飾シート連続体54をロール状に巻き取る。資材供給部44は、資材シート連続体53に対し、MD方向の張力を与えてもよい。張力は、例えば、6N~60Nの範囲としてもよい。資材シート連続体53にMD方向の張力を与える場合、資材シート連続体53の不織布12の配向方向は、MD方向へ沿っているのが好ましい。すなわち資材シート連続体53の不織布12の繊維は、MD方向の配向が、CD方向の配向より相対的に大きい。
【0041】
箔供給部46は、箔供給ロール55と、箔巻き取りロール56とを備える。箔供給ロール55は、箔形成部42に対し、上流側に配置され、転写フィルム57がロール状に巻き付けられており、当該転写フィルム57を供給する。箔巻き取りロール56は、箔形成部42に対し下流側に配置され、パターンに対応した箔を資材シート連続体53に転写後の転写フィルム57をロール状に巻き取る。転写フィルム57は、上記箔を帯状とした部材であって、金属を含有する金属層と、金属層の一側表面に設けられた合成樹脂からなる接着剤を含む接着層とを有する。
【0042】
箔形成部42は、資材シート連続体53を加熱する加熱部(図示しない)を有していてもよい。例えば、加熱部は、パターンロール48及びアンビルロール50の少なくとも一方に設けてもよい。加熱部が設けられたパターンロール48は、第1表面22側から資材シート連続体53を加熱する。加熱部が設けられたアンビルロール50は、ベース面25側から資材シート連続体53を加熱する。加熱部は、例えば電熱ヒータを適用することができる。電熱ヒータは、パターンロール48及びアンビルロール50の内部に一体的に設けてもよい。
【0043】
加熱部は、箔押される側である第1表面22側の温度を、ベース面25側よりも高くなるように、資材シート連続体53を加熱するのが好ましい。資材シート連続体53を加熱する温度は、不織布12の軟化点以上の温度であるのが好ましい。本明細書において、「軟化点」は、示差走査熱量分析計において、昇温速度10℃/分で、固体状から液状に変化する吸熱挙動を測定する際の、「吸熱開始温度」を意味する。
【0044】
資材シート連続体53は、第1表面22(被箔押面23)をパターンロール48側に向けた状態で、MD方向へ連続的に供給される。転写フィルム57は、パターンロール48と資材シート連続体53の第1表面22の間に、MD方向へ連続的に供給される。これにより、資材シート連続体53は、第1表面22に転写フィルム57を重ねた状態で、パターンロール48とアンビルロール50の間に搬送される。資材シート連続体53は、ベース面25において、アンビルロール50に接する。
【0045】
資材シート連続体53が、箔形成部42を通過する際、パターンロール48とアンビルロール50は、所定の荷重で互いに押圧されているので、パターンロール48のパターンが転写フィルム57を介して資材シート連続体53に押し込まれる。次いで、資材シート連続体53は、箔形成部42を通過することによって、パターンが第1表面22から離れる。転写フィルム57を箔巻き取りロール56が巻き取ることによって、密着した箔以外の転写フィルムが第1表面22から引き離され、密着した部分の箔が第1表面22に残留し、表示層16が形成される。表示層16が形成された加飾シート連続体54は、巻き取りロール52によって巻き取られる。加飾シート連続体54を所定のサイズに切断することによって、加飾シート10が得られる。このように、パターンに対応した部分が資材シート連続体53に密着することによって、表示層16が第1表面22に形成され、加飾シート10が得られる。
【0046】
資材シート連続体53は、上述の試験方法で測定される圧縮エネルギーWC値が0.294N・m/m2以上1.960N・m/m2以下である。圧縮エネルギーWC値が0.294N・m/m2以上であることによって、資材シート14は十分なクッション性を有するのでパターンによって押し込まれ、より確実に変形する。圧縮エネルギーWC値が1.960N・m/m2以下であることによって、パターンが資材シート14に深く沈み込むことを防いで、資材シート14にパターンをより確実に押し込むことができる。圧縮エネルギーWC値が上記範囲内の不織布12を用いることによって、ロータリー式方法であっても、不織布12を確実に変形させることができるので、表示層16を第1表面22に密着させることができる。したがって、ロータリー式方法であっても、第1表面22にパターンを示す表示層16を安定的に形成することができる。このようにして加飾シート10の製造方法は、第1表面22に表示層16を効率的、かつ安定的に形成することができる。圧縮エネルギーWC値が0.343N・m/m2以上0.784N・m/m2以下であると、不織布12をより確実に変形させることができるので、第1表面22に対する表示層16の密着性がより向上する。
【0047】
資材シート14の密度が、70kg/m3以上350kg/m3以下であることによって、不織布12の繊維間に空隙が少なく転写フィルムと接触可能な面積が増える。したがって加飾シート10の製造方法は、資材シート14の密度が上記範囲内であると、圧縮エネルギーWC値が上記範囲内であることによって得られる効果と相まって、箔と不織布12の接触面積が増えるので、表示層16と第1表面22の密着性がより向上する。資材シート14の、圧縮エネルギーWC値が0.381N・m/m2以上0.700N・m/m2以下であり、密度が180kg/m3以上200kg/m3以下であると、箔と不織布12の接触面積がより増えるので、圧縮エネルギーWC値が上記範囲内であることによって得られる効果と相まって、表示層16と第1表面22の密着性がより向上する効果がより確実に得られる。
【0048】
資材シート連続体53は、不織布12の第2表面24に接合されたフィルム34を有することによって、資材シート連続体53の圧縮エネルギーWC値を調整することができる。具体的には、圧縮エネルギーWC値が0.294N・m/m2未満の不織布12の第2表面24にフィルム34を接合することによって、圧縮エネルギーWC値を0.294N・m/m2以上とすることができる。このように第2表面24に接合されたフィルム34を有する資材シート連続体53は、全体に剛性が増し、クッション性が均一となるので、箔と不織布12の第1表面22の密着性がより向上する。したがって加飾シート10の製造方法によれば、不織布12の第1表面22に表示層16を効率的、かつより安定的に形成することができる。
【0049】
資材シート14Bは、不織布12の第2表面24にフィルム34を含むことによって、表示層16の平滑性が、資材シート14Bよりも下方の下地の凹凸の影響を受けることをより抑制できる。それゆえ、表示層16が不織布12の上にムラなく接合され、視認性を高めることができると共に、剥がれ難くすることができる。資材シート14Bの厚みが、積層されたフィルム34の分だけ厚くなるので、表示層16の箔押工程の際に、箔と資材シート14Bとの間に圧力が加わり易く、箔が資材シート14Bに載り易くなる。
【0050】
加熱部が資材シート連続体53を加熱すると、その熱によって転写フィルム57の接着層が溶融し、第1表面22により確実に密着する。したがってパターンロール48またはアンビルロール50によって資材シート連続体53を加熱することによって、第1表面22に表示層16をより安定的に形成することができる。
【0051】
加熱部が不織布12の軟化点以上に資材シート連続体53を加熱すると、パターンロール48によって押し込まれた資材シート連続体53は溶融する。同時に、パターンに対応した転写フィルム57の接着層が溶融し、第1表面22に密着する。次いで、資材シート連続体53は、箔形成部42を通過することによって、パターンが第1表面22から離れる。資材シート連続体53は、パターンロール48とアンビルロール50の表面から離れることによって冷却され、溶融した接着層が第1表面22に固着する。軟化点以上に加熱された不織布12の繊維は、固体状から液状に変化する。不織布12は紙片や革材に比べ目付のばらつきや表面の凹凸が大きいものの、熱によって平滑化する。不織布12の液状に変化した部分と転写フィルム57の溶融した接着層とが相互に接着することによって、第1表面22に表示層16がより強固に密着する。
【0052】
資材供給部44が、資材シート連続体53に対し、MD方向の張力を与えると、
図7に示すように、資材シート14は、張力によって幅入り(CD方向の長さが収縮)すると同時に、波状の起伏が生じることによって厚みが増す。すなわち、張力が生じていない場合、資材シート14の厚みは不織布(フィルム34を含む場合はその合計)12の厚みT1そのもの(
図6)である。資材シート14は、MD方向の張力が与えられると、繊維の目付が低く強度が弱い部分が山39又は谷41となり、張力の方向(MD方向)と交差する方向(CD方向)に複数の起伏が生じる。したがって、波状の起伏がある場合の資材シート14の厚みは、起伏の高低差である。これによって、起伏の分だけ、資材シート14の見かけ上の厚み、すなわち嵩が増すと共に、CD方向において繊維間の距離が縮まるので繊維の目付がより均一化する。
【0053】
垂直方向の嵩が増した資材シート14は、
図8に示すように、パターンロール48とアンビルロール50の接点より上流側及び下流側のより広い範囲で、すなわちパターンロール48及びアンビルロール50と面で、接触する。そうすると、資材シート連続体53は、パターンロール48とアンビルロール50との接触時間が増加するので、パターンロール48及びアンビルロール50から伝達される熱量が増加する。資材シート連続体53と転写フィルム57がより確実に加熱されるので、箔と不織布12の第1表面22の密着性が向上する。したがって加飾シート10の製造方法は、第1表面22に表示層16をより安定的に形成することができる。この場合、不織布12の繊維の配向方向が、MD方向へ沿っていると、MD方向へ張力を与えることによって資材シート14を容易に幅入りさせることができる。したがって、資材シート14の垂直方向の嵩をより容易に増すことができ、結果として箔と不織布12の第1表面22の密着性をより向上することができる。
【0054】
加熱部は、箔押される側である第1表面22側の温度を、ベース面25側よりも高くなるように、資材シート連続体53を加熱することによって、転写フィルム57を効率的に加熱することができる。転写フィルム57を効率的に加熱することによって、転写フィルム57の接着層を確実に溶融することができるので、表示層16の密着性をより高めることができる。不織布12の第2表面24にフィルム34を有する資材シート連続体53を用いる場合、第1表面22側の温度に比べ、ベース面25側の温度をより低くすることによって、不織布12に比べ熱収縮しやすいフィルム34が、熱収縮することを避けることができる。
【0055】
加飾シート10の製造方法は、箔形成部42において箔を形成する工程(箔押工程)の手前において、資材シート連続体53を予熱する工程(予熱工程)を備えることとしてもよい。予熱工程は、特に限定されず、例えば、箔形成部42の上流側において資材シート連続体53に、所定の温度に加熱された気体を当てることによって、資材シート連続体53を加熱してもよい。また、
図9に示すように、資材シート連続体53をアンビルロール50に対し折り返すように巻き掛けて、予熱してもよい。この場合、資材シート連続体53は、箔形成部42に対し、上流側から供給され、TD方向の下側からアンビルロール50に巻き掛けられ、アンビルロール50のTD方向の上側から上流側へ搬送される。資材シート連続体53のベース面25は、アンビルロール50の外周面の半周にわたって接する。このように、資材シート連続体53がアンビルロール50に接する時間を長くすることによって、資材シート連続体53を予熱することができる。予熱された資材シート連続体53は、アンビルロール50のTD方向の上側においてパターンロール48によって箔押しがなされる。資材シート連続体53を予熱することによって、箔押工程において転写フィルム57の接着層が十分に溶融されるので、接着材が第1表面22へ浸透する。したがって、箔と第1表面22との密着性を向上することができる。
【0056】
資材シート連続体53を予熱すると、予熱しない場合に比べ、パターンロール48及びアンビルロール50の加熱温度をより低くすることも可能であるので、資材シート連続体53に対する熱ダメージを抑制することができる。予熱することによって、箔形成部42を通過する速度を高めても、所定の熱量を資材シート連続体53に伝達することができ、表示層16を第1表面22に安定的に形成できるので、生産効率を向上することができる。
【0057】
予熱する温度は、不織布12の軟化点より低く、かつ軟化点により近い温度であるのが好ましい。予熱温度をtp、軟化点をtとすると、予熱温度tpは、(t-10)≦tp<tの範囲とするのが好ましい。不織布12の軟化点により近い温度に予熱しておくことで、箔形成部42において、より短時間で不織布12の軟化点に到達することができるので、表示層16を第1表面22により効率的に密着させることができる。
【0058】
(加飾シート)
箔押しがされた従来の紙片や革材などは、箔押しされた部分は凹となるが、箔押以外の部分は、平坦であり、単純な印象を与えるものといえる。
【0059】
これに対し本実施形態の製造方法によって製造された加飾シート10は、第1領域18と第2領域20に高低差があるので、表示層16をより立体的に浮き立たせることができる。したがって、加飾シート10は、表示層16の視認性をより向上でき、高級感を発することができる。さらに、加飾シート10は、上記実施形態の製造方法によって製造されているので、不織布12の表面にパターンを示す表示層16が安定的に形成されている。
【0060】
加飾シート10は、表示層16が、凹部26の主要部30だけでなく、縁部32にも形成されている。ここで、縁部32の表面は主要部30の表面に対して傾斜した傾斜面である。そのため、表示層16に入射した光の反射方向は、主要部30と縁部32とで異なる。更に、縁部32が主要部30を囲んでいる場合、主要部30に対する縁部32の位置によって、傾斜面が様々な方向に向くことになる。その場合、表示層16に入射した光の反射方向は、縁部32の位置によって、様々な方向に向く。このように、表示層16が縁部32にも形成されることで、表示層16を様々な方向から視認することができ、表示層16の視認性を向上できる。
【0061】
[変形例]
不織布12は、熱圧縮(プレス)されていてもよい。その場合、不織布12の繊維が熱融着・熱圧着することで、平滑性を向上できる。それゆえ、表示層16の平滑性が、資材シート14よりも下方の下地の凹凸の影響を受けることをより抑制できる。それゆえ、表示層16が不織布12の上にムラなく接合され、視認性を高めることができると共に、剥がれ難くすることができる。また、加飾シート10が熱プレスなどで平滑化されている場合(資材シート14が元々平滑な場合を含む)、表示層16を含めて表示層16全体が非常に平滑になるため、触覚的にも表示層16をより容易に確認することができる。
【0062】
不織布12と表示層16との間にベースコート層(図示されず)を更に備えてもよい。その場合、不織布12の第1表面22がベースコートで覆われて、平滑性を向上できる。それゆえ、表示層16の平滑性が、資材シート14よりも下方の下地の凹凸の影響を受けることをより抑制できる。それゆえ、表示層16の視認性を高めることができると共に、剥がれ難くすることができる。
【0063】
不織布12上の表示層16の上にトップコート層を(図示されず)更に備えてもよい。その場合、表示層16の上にトップコート層を備えているので、表示層16の変形が抑制され、凹凸や皺の発生を抑制できる。そのため、表示層16の表面の平滑性が維持されるため、表示層16の視認性を高めることができると共に、剥がれ難くすることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
(A)試料
種類、坪量が異なる複数の不織布からなる不織布連続体と、厚みの異なるフィルム(PP:ポリプロピレン)からなるフィルム連続体とを用意し、不織布連続体を単独で用いて、または、必要に応じ不織布連続体にフィルム連続体をラミネートして、複数種類の資材シート連続体を用意した。転写フィルムは、ベースフィルム、離型層、着色層、蒸着層、接着層からなる厚み0.017mmのものを用意した。資材シート連続体と転写フィルムを用いて、上記製造方法で説明した手順にしたがって、加飾シートを製造した。パターンロールの加熱温度は140℃、アンビルロールの加熱温度は80℃とした。資材シート連続体を張力30N、搬送速度20m/minにて、箔押圧力0.3MPaとしたパターンロールとアンビルロールの間に搬送した。
【0065】
(B)評価
実施例1~10、比較例1~9の加飾シートに対し、密着性を評価した。評価の結果を表1に示す。密着性は、得られた加飾シートの表示層に対し、外観観察、及び引き剥がし試験を行うことによって評価した。外観観察において表示層が密着していないものを密着性が不良と評価し×、外観観察において表示層に欠けが生じているものを表示層としては不適切と評価し△とした。外観観察において表示層に欠けが生じていないものについて、引き剥がし試験を行った。引き剥がし試験は、ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)で表示層を覆うように貼り付けて指圧し、一端から表示層の表面に対し90度方向にゆっくりと引き剥がした。その結果、引き剥がし試験において少量の金属粉が粘着テープに付着する程度の剥がれが生じるものを密着性が良好と評価し○、引き剥がし試験において剥がれが生じないものを密着性が優れていると評価し◎とした。その結果を表1に示す。
【0066】
【0067】
実施例1~10は、資材シートの圧縮エネルギーWC値が0.294N・m/m2以上1.960N・m/m2以下であり、良好な密着性が得られた。
実施例1~10は、資材シートの密度が70kg/m3以上350kg/m3以下であり、良好な密着性が得られた。
実施例1~4は、資材シートの圧縮エネルギーWC値が0.343N・m/m2以上0.784N・m/m2以下、資材シートの密度が180kg/m3以上200kg/m3以下であり、密着性がより優れていた。
一方、比較例1~9は、いずれも資材シートの圧縮エネルギーWC値が0.294N・m/m2以上1.960N・m/m2以下の範囲外であったため、良好な密着性が得られなかった。
【0068】
上記実施例に係る加飾シートのうち10個の試料について、表示層に対し配向方向に平行な、表示層の外側の位置にある第1領域における加飾シートの厚みを測定した。次いで、表示層に対し配向方向に交差する、表示層の外側の位置にある第2領域における加飾シートの厚みを測定した。その結果、第1領域の厚みは、第2領域の厚みに対し、平均で134%であった。したがって、本実施形態の製造方法によって、第1領域の方が第2領域より厚く、表示層が立体的に浮き立って見える加飾シートを得られることが確認できた。
【符号の説明】
【0069】
10 加飾シート
12 不織布
14 資材シート
16 表示層
22 第1表面
24 第2表面
34 フィルム
48 パターンロール
50 アンビルロール
53 資材シート連続体
54 加飾シート連続体
57 転写フィルム