IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEスチール株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社JFEサンソセンターの特許一覧 ▶ 株式会社いけうちの特許一覧 ▶ 大陽日酸株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-空気分離装置及び空気分離方法 図1
  • 特許-空気分離装置及び空気分離方法 図2
  • 特許-空気分離装置及び空気分離方法 図3
  • 特許-空気分離装置及び空気分離方法 図4
  • 特許-空気分離装置及び空気分離方法 図5
  • 特許-空気分離装置及び空気分離方法 図6
  • 特許-空気分離装置及び空気分離方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】空気分離装置及び空気分離方法
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/04 20060101AFI20230330BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
F25J3/04 102
C01B13/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019022774
(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公開番号】P2020133907
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591249828
【氏名又は名称】株式会社JFEサンソセンター
(73)【特許権者】
【識別番号】390002118
【氏名又は名称】株式会社いけうち
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】樋口 彰大
(72)【発明者】
【氏名】清水坊 保人
(72)【発明者】
【氏名】安達 悠
(72)【発明者】
【氏名】梅田 信昭
(72)【発明者】
【氏名】倉本 章正
(72)【発明者】
【氏名】青山 和弘
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-255863(JP,A)
【文献】特表2018-525556(JP,A)
【文献】特開2010-236724(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0211578(US,A1)
【文献】特開2008-70007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 3/00-3/08
B05B 1/00-3/18,7/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮する空気圧縮機と、
外気に開放された空気吸込み口から空気を取り込み、濾布で除塵後の空気を前記空気圧縮機に供給するバグフィルターと、
前記バグフィルターの空気吸込み口の周囲に存在する外気に対し水を噴霧して、前記空気吸込み口の周りに湿度が高い空気領域であるミスト領域を形成するミスト領域形成装置とを有し、
前記ミスト領域形成装置は、
前記外気に水を噴霧する水噴霧装置と、
前記水を噴霧する位置とは離れた位置での前記水噴霧装置による水の噴霧に影響が小さいと考えられる外気の温度及び湿度を測定する温度・湿度測定装置と、
前記温度・湿度測定装置が測定した温度及び湿度から、前記水を噴霧後の相対湿度が予め設定した第1の設定湿度となる噴霧水量を推定する噴霧水量推定部と、
前記水噴霧装置から噴霧される水量を前記噴霧水量推定部が推定した噴霧水量となるように前記水噴霧装置に供給される水量の調整を行う水量調整部と、
前記空気吸込み口の手前、又は前記空気吸込み口から前記濾布までの間に位置する通路内の温度及び湿度を測定する第2の温度・湿度測定装置と、
前記第2の温度・湿度測定装置が測定した温度及び湿度に基づき前記空気吸込み口から吸い込まれる空気の相対湿度を算出し、その算出した相対湿度が予め設定した第2の設定湿度以上と判定したら、前記噴霧水量推定部に対し推定する噴霧水量をゼロに設定する停止指令を供給する噴霧停止判定部と、
を備えることを特徴とする空気分離装置。
【請求項2】
前記水噴霧装置は、前記空気吸込み口の周囲に存在する外気に向けて水を噴霧する噴霧ノズルと、その噴霧ノズルに水を圧送するポンプと、を備え、
前記水量調整部は、前記噴霧ノズルと前記ポンプとの間に並列に配置された複数の水配管と、各水配管にそれぞれ介装された複数の開閉弁と、前記噴霧水量推定部が推定した噴霧水量となるように前記複数の開閉弁の各開閉を制御する流量制御部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載した空気分離装置。
【請求項3】
前記ポンプの吐出圧を一定に設定したことを特徴とする請求項2に記載した空気分離装置。
【請求項4】
バグフィルターの濾布で除塵後の空気を空気圧縮機にて圧縮する工程を有する空気分離方法であって、
前記バグフィルターの空気吸込み口を外気に開放し、
前記空気吸込み口の周囲に存在する外気に対し水を噴霧することで湿度が高くなった外気を、前記空気吸込み口から吸い込む空気の少なくとも一部とし、
前記外気に対する水の噴霧は、水を噴霧する位置とは離れた位置での前記水の噴霧に影響が小さいと考えられる外気の温度及び湿度を測定し、その測定した温度及び湿度から水を噴霧後の相対湿度が予め設定した第1の設定湿度となる噴霧水量を推定し、その推定した噴霧水量に調整され、
更に、前記空気吸込み口の手前又は前記空気吸込み口から前記濾布までの間に位置する通路内の温度及び湿度を測定し、その測定した温度及び湿度に基づき前記空気吸込み口から吸い込まれる空気の相対湿度を算出し、その算出した相対湿度が予め設定した第2の設定湿度以上と判定したら、前記外気に対する水の噴霧を停止することを特徴とする空気分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸点差を利用して空気を分離し、酸素などのガスを製造する空気分離技術に関し、特に空気圧縮機が取り込む空気の性状調整に特徴を有する空気分離技術に関する。
【背景技術】
【0002】
空気分離装置は、バグフィルターで除塵後の空気を空気圧縮機で圧縮し、沸点差を利用して空気を分離することで酸素その他のガスを製造する。製造された酸素は、例えば精錬工場等に供給されて使用される。
ここで、夏場など、取り込む空気の温度が高いと空気圧縮機で圧縮される空気密度が低下することから、外気の気温が上昇すると空気分離装置で製造される酸素量が少なくなる。
【0003】
このため、従来、外気温度が高い夏場での製造能力を高めるために、省電力型の酸素製造設備及びそれを用いた酸素製造方法として水冷塔を有する設備構成を採用する場合がある。この設備構成では、水冷塔の充填材槽の表面に形成された水膜と空気を接触させることで、空気圧縮機に供給する空気の温度を低減させることができる。しかし、この設備構成では、水冷塔の設置によるコスト増加や水冷塔の設置スペースの確保が困難なこと、取り込む空気に対し充填材槽で圧力損失が増大するため、省電力を実現する点で課題がある。
【0004】
これに対し、特許文献1には、空気圧縮機の前段に噴霧室を設けることが記載されている。噴霧室は、空気を取り込むダクト内に噴霧ノズルを設置して構成される。更に、ダクト内における噴霧ノズルの下流側に濾布を設けることで、噴霧室がバグフィルターも兼ねる構成となっている。特許文献1に記載した方法にあっては、バグフィルターを兼ねる噴霧室内に取り込まれた後の空気に水が噴霧されることで、当該空気が気化熱によって冷やされ、冷やされた空気が濾布で除塵された後に空気圧縮機に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-255863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の方法では、水噴霧装置を具備した噴霧室を設置することが必要となる。
また、特許文献1の構成は、バグフィルターを構成するダクト内における濾布の前側に噴霧ノズルを配置した構造となっている。この構造において、ダクト内で水を噴霧した場合、ダクトへの外気吸引によって空気の流速が早くなることから、そのことを考慮して、水の噴霧位置から濾布までの経路長を、噴霧した水が十分に蒸発させるだけの長さとして長く設定する必要がある。このように、特許文献1の構造を適用した場合、外気の取り込みから濾布までの経路(距離)を、噴霧ノズルを設けることで長めに設計する必要がある。
【0007】
また、ダクト内で飽和水蒸気量以上の水が噴霧された場合には、蒸発ができなかった水滴が濾布に持ち込まれ、水滴付着により濾布の通気性が悪化して、圧力損失が増大する可能性がある。特に、外気の取り込みから濾布までの距離が短い場合には、十分に水分が気化しないで、取り込んだ空気の温度低下が十分に行われないと共に、濾布への水滴付着により通気性が悪化し、空気の圧力損失が増大する可能性がある。
本発明は、前記のような点に着目してなされたもので、既存の空気分離装置に適用しても、空気圧縮機に供給する空気の温度を低下できると共に、バグフィルターでの圧力損失の増大についても、より確実に抑制可能な空気分離技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために、本発明の一態様は、空気を圧縮する空気圧縮機と、外気に開放された空気吸込み口から空気を取り込み、濾布で除塵後の空気を前記空気圧縮機に供給するバグフィルターと、前記バグフィルターの空気吸込み口の周囲に存在する外気に対し水を噴霧して、前記空気吸込み口の周りに湿度が高い空気領域であるミスト領域を形成するミスト領域形成装置とを有し、前記ミスト領域形成装置は、前記外気に水を噴霧する水噴霧装置と、前記水を噴霧する位置とは異なる位置での外気の温度及び湿度を測定する温度・湿度測定装置と、前記温度・湿度測定装置が測定した温度及び湿度から、前記水を噴霧後の相対湿度が予め設定した第1の設定湿度となる噴霧水量を推定する噴霧水量推定部と、前記水噴霧装置から噴霧される水量を前記噴霧水量推定部が推定した噴霧水量となるように前記水噴霧装置に供給される水量の調整を行う水量調整部と、前記空気吸込み口の手前、又は前記空気吸込み口から前記濾布までの間に位置する通路内の温度及び湿度を測定する第2の温度・湿度測定装置と、前記第2の温度・湿度測定装置が測定した温度及び湿度に基づき前記空気吸込み口から吸い込まれる空気の相対湿度を算出し、その算出した相対湿度が予め設定した第2の設定湿度以上と判定したら、前記噴霧水量推定部に対し推定する噴霧水量をゼロに設定する停止指令を供給する噴霧停止判定部と、を備える。
【0009】
また、本発明の他の態様は、バグフィルターで除塵後の空気を空気圧縮機にて圧縮する工程を有する空気分離方法であって、前記バグフィルターの空気吸込み口を外気に開放し、前記空気吸込み口の周囲に存在する外気に対し水を噴霧することで湿度が高くなった外気を、前記空気吸込み口から吸い込む空気の少なくとも一部とし、前記外気に対する水の噴霧は、水を噴霧する位置とは異なる位置での外気の温度及び湿度を測定し、その測定した温度及び湿度から水を噴霧後の相対湿度が予め設定した第1の設定湿度となる噴霧水量を推定し、その推定した噴霧水量に調整され、更に、前記空気吸込み口の手前又は前記空気吸込み口から前記濾布までの間に位置する通路内の温度及び湿度を測定し、その測定した温度及び湿度に基づき前記空気吸込み口から吸い込まれる空気の相対湿度を算出し、その算出した相対湿度が予め設定した第2の設定湿度以上と判定したら、前記外気に対する水の噴霧を停止する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、空気吸込み口から取り込まれる前の空気(外気)に対し大気中で噴霧水を吹き付けることで、バグフィルターに取り込まれる前に空気の温度を下げることが出来ると共に、バグフィルターに取り込まれた空気中の水蒸気が濾布に到達するまでに蒸発することで、更に空気の温度を低下できる。また、本発明の態様によれば、空気圧縮機の前段に空気を冷却する水冷塔のような大掛かりな設備が不要となる。
以上のように、本発明の態様によれば、既存の空気分離装置に適用しても、簡易な構成によって、夏場であっても、空気圧縮機の供給する空気の温度を低下できると共に、バグフィルターでの圧力損失の増大をより確実に抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に基づく実施形態に係る空気分離装置の構成例を示す図である。
図2】バグフィルター及びミスト領域形成装置を説明する図である。
図3】バグフィルター及びミスト領域形成装置を説明する概念図である。
図4】噴霧水量推定部の処理例を示す図である。
図5】段数決定のためのマトリックスの例を示す図である。
図6】噴霧停止判定部の処理例を示す図である。
図7】実施例の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施態様について図面を参照して説明する。
(構成)
本実施形態の空気分離装置は、例えば、図1に示すように、空気圧縮機1の前段にバグフィルター2が配置され、そのバグフィルター2の空気吸込み口21aの近傍に、ミスト領域形成装置の噴霧ノズル30が設けられる。
また空気圧縮機1の後段には、例えば冷却塔3、MS吸着器4、熱交換器5、及び精留塔7がこの順に配置されている。
【0013】
冷却塔3は、空気圧縮機1で圧縮されて温度が上昇した空気を冷却する。MS吸着器4は、不要なCO、CO、HO等を空気から吸着除去する。熱交換器5は、精留塔7で冷却分離した窒素ガスと酸素ガスを用いた熱交換によって、空気を冷却する。なお、この熱交換器5での熱バランスだけでは冷却が不十分となる場合、膨張タービン6により不足する冷却を補う。
精留塔7は、熱交換器5で冷却された空気を更に冷却(深冷)し、液化温度の差を利用して空気を窒素ガスと酸素ガスに精製分離する。精留塔7では、前記の精製分離と同時にアルゴンガスの原料となるガスが分離され、分離されたガスが粗アルゴン塔8に導入される。ここで、アルゴンの液化温度が酸素の液化温度と近いため、粗アルゴン塔8に導入されたガスには多量の酸素が含まれている。このため、アルゴン熱交換器9、アルゴン圧縮機10を介して、水素を添加した後に、アルゴン精製器11で更に精製される。
【0014】
次に、本実施形態のバグフィルター2及びミスト領域形成装置12について説明する。
本実施形態のバグフィルター2は、図2に示すような原料空気吸入塔2Aからなる。
原料空気吸入塔2Aは、図2及び図3に示すように、空気取り入れ部21、空気室22、濾布収容室23、及び濾布収容室23内に配置された複数の濾布24を備える。
空気取り入れ部21は、吸入塔2Aの天板部2Aaから上方に突出する取込用ダクト21Aと、取込用ダクト21Aの上端開口部を覆うように同軸に配置され上面が閉じた円筒体21Bとを備える。円筒体21Bの内径は取込用ダクト21Aの外径よりも大きく且つ円筒体21Bの上端面が取込用ダクト21Aの上端開口部の高さよりも上方に配置されている。
【0015】
この構成によって、空気取り入れ部21は、取込用ダクト21Aの外壁面と円筒体21Bの内壁面との間に形成された円環状の空間の下端部の位置(空気吸込み口21a)から外気を取り入れ、取り入れられた空気は、前記の円環状の空間に沿って上方に移動し取込用ダクト21A内に移動する。
空気室22は、吸入塔2Aの天板部2Aaの下方に形成され、この空気室22に取込用ダクト21Aの下端部が連通している。
空気室22の下方には濾布収容室23が設けられ、その濾布収容室23に複数の濾布24が配置されている。各濾布24は、軸を上下に向けた筒状となっていて、濾布24の上端開口部が空気室22に連通している。その濾布収容室23の壁面には、空気排出用の開口23Aが形成され、その空気排出用の開口23Aが空気圧縮機1の吸込み部に連通している。
なお、濾布収容室23の下側には集塵用ホッパー25が設けられている。
【0016】
このような構成によって、原料空気吸入塔2Aは、空気取り入れ部21から外気が取り入れられ、取り入れられた空気は、取込用ダクト21Aを通じて空気室22に供給される。空気室22に移動した空気は、各濾布24で除塵された後に、濾布収容室23の壁面に形成された空気排出用の開口を通じて空気圧縮機1に送られる。
ミスト領域形成装置12は、バグフィルター2の空気吸込み口21aの周りに位置する外気に対し水を噴霧することで、バグフィルター2の空気吸込み口21aの周りに湿度が高くなった空気からなるミスト領域MR(ミスト雰囲気状態の空気領域)を形成する装置である。
【0017】
ミスト領域形成装置12は、水噴霧装置、噴霧水量推定部37、水量調整部40、第2の温度・湿度測定装置36、及び噴霧停止判定部41を備える。
水噴霧装置は、外気に向けて水を噴霧する複数の噴霧ノズル30と、噴霧ノズル30に水を供給するポンプ33と、ポンプ33からの水を噴霧ノズル30に送る水配管32とを有する。複数の噴霧ノズル30は、ノズルヘッダ31によって連通されている。
本実施形態では、ポンプ33は、水の吐出圧(供給圧)が一定となるように駆動調整されている。なお、後述のように水配管32を複数列、配設する場合(図3参照)、各水配管32毎にポンプ33を設けても良い。本実施形態では、一つのポンプ33から回路的に並列に設けられた複数の水配管32に水を圧送する構成となっている。
【0018】
複数の噴霧ノズル30は、吸入塔2Aの天板部2Aaに、天板部2Aaの面に沿って並ぶように配置されている。具体的には、吸入塔2Aの天板部2Aa上に対し、平面視でみて、空気取り入れ部21の外周を囲むようにノズルヘッダ31が配置され、そのノズルヘッダ31に複数のノズルが間隔を開けて設けられている。各噴霧ノズル30は、水の噴射口を上方に向けて配置され、上方に位置する外気(空気)に向けて水を噴霧可能となっている。この水の噴霧によって、空気吸込み口21aの周りの外気(空気)をミスト領域MR(ミスト雰囲気状態)とする。なお、各噴霧ノズル30の水の噴霧方向は、空気吸込み口21a側や空気取り入れ部21側に向けない方が好ましい。
【0019】
噴霧ノズル30は、例えば、内部に前記ポンプ33から供給された高圧水が衝突する壁部を有し、高圧水は、壁部への衝突によって噴射した水が霧状となる。高圧水の粒径を細かくする構造は、公知の構造を採用すればよい。例えば、特開2009-36316号公報などに記載の噴霧ノズルを採用する。
噴霧ノズル30への水圧にもよるが、噴霧ノズル30から噴霧される水の粒径は、例えば平均粒子径20.0μm以上23.0μm以下に設定する。
ここで、噴霧ノズル30に供給する高圧水の圧力を一定に設定することで、噴霧ノズル30から噴霧される噴霧水の水滴径を予め設定した仕様水滴径とすることができる。すなわち、安定した粒径の水を空気に与えることができて、空気の湿度のばらつきを小さく抑えることが可能となる。
【0020】
噴霧ノズル30は、ノズルヘッダ31及び水配管32を介して、ポンプ33の吐出口に接続されている。
噴霧水量推定部37は、温度・湿度測定装置35が測定した吸入塔2A周りの外気の温度及び湿度に基づき、ミスト領域MRの相対湿度が予め設定した第1の設定湿度となる噴霧水量を推定する。但し、噴霧水量推定部37は、噴霧停止判定部から停止指令を入力したら、噴霧停止判定部から噴霧再開指令を入力するまで噴霧水量の演算を行わず、演算する噴霧水量をゼロに設定する。
【0021】
温度及び湿度を測定する外気は、水の噴霧に影響が小さいと考えられる外気である。本実施形態では、吸入塔2A下部周りの外気の温度・湿度を測定するようにしている。すなわち、温度・湿度測定装置35を吸入塔2A下部近傍に設置している。
第1の設定湿度は、例えば80%に設定する。最大の効果を得ようとした場合、第1の設定湿度を露点まで高く設定すればよい。しかし、湿度の目標値を100%に設定した場合、風などによる外気の外乱によって水蒸気の結露が多発して、濾布24の目詰まりによる急激なフィルター差圧上昇が引き起こされることが懸念され、長期操業継続が困難となるケースも考えられる。風向・風速等の外部影響によって湿度が変化することを考慮すると、目標値である第1の設定湿度は、例えば70%以上95%以下の範囲に設定する。好ましくは、75%以上90%以下、より好ましくは80%以上85%以下である。
【0022】
本実施形態では、風向・風速等の外部影響を小さくする意味でも、温度・湿度測定装置35を吸入塔2A下部近傍に設置している。
ここで、本実施形態では、ミスト領域MRを形成するための湿度の基本制御が、ミスト領域MR自体の温度と湿度を測定しその測定値によるフィードバック制御ではなく、ミスト領域MR以外の外気の温度・湿度に基づくフィードフォワード制御としている。
この理由は、外乱がある外気に噴霧水を供給してミスト領域MRを形成しているため、ミスト領域MR内の測定位置(高さ位置も含む三次元的な空間内の位置)によっても湿度が異なっていると共に、外気への風その他の外乱によって噴射した水の向きなどが変化して、同じ位置でも湿度の揺らぎが大きくなる可能性があることを考慮したものである。一方、水噴霧によって形成されたミスト領域MR以外における吸入塔2A周りの外気は、ミスト領域MRに比べると温度及び湿度が安定していることから、本実施形態の噴霧水量推定部37では、ミスト領域MR以外における吸入塔2A周りの外気の温度と湿度から、相対湿度が第1の設定湿度とするための噴霧水量を推定するようにしている。
【0023】
次に、噴霧水量推定部37での噴霧水量の推定方法について説明する。
測定温度T0からその温度T0の飽和水蒸気量mx0を求める。飽和水蒸気量mx0は、湿り空気表などに基づく、公知の換算式や換算表データから算出すればよい。また、測定湿度H0(絶対湿度)に対応する水蒸気量をm0とする。
このとき、測定位置での相対湿度RH0(%)は、下記式で算出できる。
RH0 =m0/mx0 ×100 ・・・(1)式
ミスト領域MRの相対湿度も、水の噴霧がなければ、RH0に近い値となっている。しかし、水の噴霧によって温度低下が発生する。従って、噴霧後のミスト領域MRでの相対湿度RH1(%)については、例えば、下記のような考えから推定することが出来る。
【0024】
すなわち、温度・湿度測定装置35が測定した測定温度T0から、噴霧により温度低下させた後の想定温度T1を想定し、その想定温度T1における飽和水蒸気量mx1を求める。また、温度・湿度測定装置35が測定した測定湿度H0(絶対湿度)に対応する水蒸気量をm0とし、水の噴霧により増加した増加分の水蒸気量をΔmとする。
すると、下記(2)式で、噴霧後の相対湿度RH1(%)を推定できる。
RH1(%) =(m0+Δm)/mx1 ×100 ・・・(2)式
そして、(2)式に基づき、噴霧後の相対湿度RH1が第1の設定湿度(例えば80%)となる、増加分の水蒸気量Δm、若しくは水蒸気量Δm分に応じた水量を、水噴霧量として求める。
【0025】
ここで、想定温度T1は、例えば次のようにして設定する。現在の測定湿度H0に対応する水蒸気量m0で、相対湿度RH0が第1の設定湿度(例えば80%)となる温度を、湿り空気表などに基づく公知の換算式や換算表データから算出し、その算出した温度を想定温度T1とする。この場合、想定温度T1が、実際の温度低下後の温度よりも低めに設定される可能性があるが、実際よりも低めの温度とすることで、より結露し難い水噴霧量を推定することができる。想定温度T1の想定方法は、これに限定されない。例えば、単純に、噴霧する水の温度に予め設定した係数(<1)を乗算した値を温度低下分ΔTとし、測定温度T0から温度低下分ΔTを減算した値を想定温度T1としても良い。また、後述の第2の温度・湿度測定装置36が測定した温度を想定温度T1として採用してもよい。
【0026】
ここで、後述のように、本実施形態では、各水配管32を開閉することによって、噴霧ノズル30に供給する水量を階段状に変化するように調整している。
これを考慮して、本実施形態の噴霧水量推定部37は、噴霧水量を階段状に水量が増加する複数段数として設定しておく。段数TPは、供給する水配管32の本数に対応する。本実施形態では、階段状に増加する水量は等量として説明するが、各段に対応した設定水量(配管の径)が異なっていても良い。予め各段での水量が決まっていれば良い。
【0027】
そして、本実施形態の噴霧水量推定部37では、測定した外気の温度T0と湿度H0の二つをパラメータとして、測定湿度を第1の設定湿度若しくは第1の設定湿度近傍となる段数TPを予め実験や理論式で求めて、その外気の測定温度と測定湿度の2つパラメータから段数TPを換算する換算式若しくはマトリックス表のデータを求め記憶しておく。例えば、測定した温度と湿度の2つのパラメータから相対湿度RHが第1の設定湿度までに低減可能な温度を算出し、それに応じた段数TPを実験値による噴霧水の有効蒸発率と、理論式(水噴霧前後空気の保有する熱量差と水の蒸発潜熱)で求められる温度低下に要する噴霧水量で予め推定して、マトリックスの段数TPを決定する。
【0028】
そして、噴霧水量推定部37は、実際に測定した外気の温度T0と湿度H0を入力し(図4:ステップS20)、入力した外気の温度T0と湿度H0をパラメータとして、設定した換算式若しくはマトリックス表のデータを参照して噴霧水量の対応する段数TPを求める(図4:ステップS30)。
例えば、段数TPを3段としたマトリックス表の例を図5に示す。
図5示すマトリックス表から分かるように、気温が高いほど、且つ測定湿度が低いほど、段数TPが高くなるように設定する。段数TPは4段以上であってもよい。
【0029】
また、噴霧水量推定部37は、噴霧停止判定部41から噴霧停止指令を入力すると(図4:ステップS10)、推定した噴霧水量をゼロ(段数TP=0)とし、噴霧停止判定部41から噴霧再開指令を入力するまで、推定した噴霧水量をゼロ(段数TP=0)に設定する(図4:ステップS40)。
水量調整部40は、水噴霧装置の噴霧ノズル30から噴霧される水量が、噴霧水量推定部37が推定した水量(例えば段数TPに対応する水量)となるように水量調整を行う。水量調整部40は、流量調整弁と流量制御部38とを備える。すなわち、水量調整部40は、水配管32に設けられた流量調整弁を有し、流量制御部38が、噴霧水量推定部37が求めた水量となる開度指令を流量調整弁に供給し、流量調整弁がその開度指令の開度となる。
【0030】
本実施形態では、図3に示すように、ノズルヘッダ31に接続する水配管32を回路的に2本並列に設け、各水配管32にそれぞれ開閉弁34を設け、その複数の開閉弁34で流量調整弁を構成させた例である。なお、ポンプ33からの各水配管32への水圧は同じ圧に設定されていて、その水配管32による水の供給量が一定となるように設定されている。これによって、その開閉弁34を開閉操作することで、噴霧ノズル30への水の供給量が変化しても水圧が一定となるように設定される。
【0031】
そして、流量制御部38は、噴霧水量推定部37が求めた水量に対応する段数TP分に応じた数の開閉弁34に開指令を供給する。開閉弁34は閉を初期値とする。すなわち、降雨などによって湿度が高く段数TPが「0」であれば、2つの開閉弁34に共に閉指令を供給する。段数TPが「1」であれば、一方の開閉弁34にだけ開指令を供給し、段数TPが2以上であれば、2つの開閉弁34に共に開指令を供給する。ここで、2つの開閉弁34に共に閉指令を供給する場合には、水の噴霧を行わないのでポンプ33にも駆動停止指令を供給しても良い。
また、本実施形態では、過剰に水噴霧を行わないように、段数TPが3以上でも段数TPを2とみなして、2つの開閉弁34を開とするように設定している。水配管32を3本以上並列に配置すると共に各水配管32に開閉弁34を設けておき、段数TP分の数だけ開閉弁34を開とするように制御しても良い。
【0032】
図3のように、第2の温度・湿度測定装置36が、バグフィルター2の空気吸込み口21aの手前に設置されて、バグフィルター2に吸い込まれる空気の温度及び湿度を測定する。例えば第2の温度・湿度測定装置36を、取込用ダクト21Aの外壁面と円筒体21Bの内壁面との間に形成された円環状の空間より下方に位置する取込用ダクト21Aの外壁面に取り付ける。
【0033】
第2の温度・湿度測定装置36で、バグフィルター2の空気吸込み口21aから濾布24までの間に位置する通路内の温度及び湿度を測定するようにしても良い。すなわち、第2の温度・湿度測定装置36を、取込用ダクト21Aの外壁面と円筒体21Bの内壁面との間に形成された円環状の空間、取込用ダクト21A内、若しくは空気室22に設けても良い。但し、早めに温度及び湿度を取得することが好ましいため、バグフィルター2の空気吸込み口21aの手前で測定することが好ましい。第2の温度・湿度測定装置36をバグフィルター2の空気吸込み口21aから濾布24までの間に位置する通路に設ける場合であっても、取込用ダクト21Aの外壁面と円筒体21Bの内壁面との間に形成された円環状の空間に第2の温度・湿度測定装置36を設置することが好ましい。
そして、第2の温度・湿度測定装置36は、空気吸込み口21aから吸い込まれる空気の実際の温度及び湿度を測定する。
【0034】
噴霧停止判定部41は、第2の温度・湿度測定装置36が測定した温度と湿度を入力し(図6:ステップS100)、入力した温度と湿度に基づき、バグフィルター2の空気吸込み口21aから吸い込まれる空気の相対湿度RH2を算出する(図6:ステップS110)。更に、算出した相対湿度RH2が、予め設定した第2の設定湿度以上と判定したら(図6:ステップS120)、噴霧水量推定部37に噴霧停止指令を供給する(図6:ステップS130)。第2の設定湿度は、第1の設定湿度よりも高く、例えば90%に設定する。
【0035】
更に、噴霧停止判定部41は、第2の温度・湿度測定装置36が測定した温度と湿度から算出した相対湿度RH2が予め設定した第3の設定湿度以下と判定したら(図6:ステップS140)、噴霧水量推定部37に噴霧再開指令を供給する(図6:ステップS150)。第3の設定湿度は、第2の設定湿度よりも低い値とし、例えば第1の設定湿度と同じ80%に設定する。
ここで、相対湿度RH2(%)は、例えば測定した温度からその温度の飽和水蒸気量MX2を公知の換算式や換算表データから算出し、算出した飽和水蒸気量MX2と測定湿度(絶対湿度)に対応する水蒸気量M2から、下記の式に基づき求める。
RH2(%) =(M2/MX2)×100
【0036】
(動作その他)
本実施形態では、バグフィルター2の上流に水冷塔を配置することなく、バグフィルター2の空気吸込み口21aを外気に開放した構成としている。そして、空気圧縮機1を駆動することで、空気(外気)が、バグフィルター2を介して空気圧縮機1に吸引される。
このとき、本実施形態では、バグフィルター2の空気吸込み口21aから吸引される空気のうちの少なくとも一部の空気が、噴霧水を噴霧してミスト領域MRを形成する湿度が高い空気(外気)となっている。バグフィルター2の空気吸込み口21aから吸引される空気の50%以上好ましくは90%以上が、ミスト領域MRを形成する湿度が高い空気であることが好ましい。
【0037】
ミスト領域MRを形成する空気(外気)は、水の噴霧によって温度が低下すると共に、湿度が高い空気の状態で空気吸込み口21aからバグフィルター2内に取り込まれる。このとき、吸い込まれる空気は、バグフィルター2内に取り込まれる前にも気化熱によって温度低下すると共に、バグフィルター2内に取り込まれた後も当該空気が濾布24に到達するまでの移動中に、当該空気内の水蒸気が蒸発する際の気化熱によって空気の温度が低下する。水蒸気の蒸発は、空気の流速や気温が高いほど、また圧力が高いほど促進する。従って、外気温が高いほどミスト領域MRが目標とする相対湿度を高くなるように設定してもよい。
【0038】
ミスト領域MRの空気(外気)を取り込むことで、外気温よりも温度が低い空気が濾布24で除塵された後に、空気圧縮機1に供給される。すなわち、既存のバグフィルターを使用しても、空気圧縮機1に取り込まれる空気を効率的に冷やすことができる。
ここで、従来のようにバグフィルター2内に噴霧用のノズルを設置した場合、バグフィルター2内は、空気の吸引によって空気の流速が早くなっていることから、水蒸気の十分な蒸発を確保しようとすると、バグフィルター2内におけるノズル設置位置から濾布24までの経路が長くなるように設計するか、濾布24までの経路に応じてノズルの噴霧を抑える必要がある。
【0039】
これに対し、本実施形態では、バグフィルター2の外に存在する外気(空気)に対し水を噴霧することで、流速が遅い空気吸込み口21aまでの移動の間にも空気中の水蒸気の蒸発が発生し、更に、空気吸込み口21aに取り入れられるときから水蒸気の蒸発が発生する。このため、濾布24までに確実に空気中の水蒸気が十分に蒸発させるように設計することができる。なお、バグフィルター2内に噴霧ノズルを配置する発想の場合には、空気吸込み口21aから所定長さだけ濾布24側の位置にノズルを配置するため、空気吸込み口21aからノズル設置位置までの経路を蒸発用の経路として使用されない。
【0040】
このように、バグフィルター2の空気吸込み口21aの手前など、空気吸込み口21aの周りに噴霧ノズル30を設置することで、水蒸気の十分な蒸発に必要な経路スペースが、既設のバグフィルター2のスペースで実現可能となる。更に、空気の気化熱による温度低下分をバグフィルター2内に設ける場合よりも大きく設計できて、より空気圧縮機1に取り込む空気を効率的に冷やすことが出来る。なお、噴霧ノズル30の噴霧方向は、噴霧した水が空気吸込み口21aに掛からないように、空気吸込み口21a側とは異なる方向に向けることが好ましい。このため、本実施形態では、噴霧ノズル30の噴霧方向を上方に設定している。なお、吸入塔2Aの天板部2Aaに屋根を設け、その屋根に噴霧ノズル30を支持させて、下方に向けて水を噴霧させるようにしても良い。屋根を設けた場合、吸い込む外気に対する風などによる外乱を抑制することに繋がる。
【0041】
ここで、フィードフォワード制御で噴霧すると、ミスト領域MRを形成する空気(外気)に、飽和水蒸気量以上の水が噴霧される可能性がある。
飽和水蒸気量以上の水が噴霧されたとしても、本実施形態では、バグフィルター2の外である外気に対して水を噴霧するため、結露した水の一部はバグフィルター2の外で落下して、空気吸込み口21aからバグフィルター2内へ取り込まれる結露した水分の取込量を抑えることが出来る。
更に、本実施形態では、空気吸込み口21aから取り込む空気が、円環状の空間を一旦上昇させてから取込用ダクト21Aの上端開口部に移動して空気室22に向かう設計となっている。空気が、円環状の空間を上方に移動する際にも、結露した水滴のうち、取込用ダクト21A内への移動量が抑制されるようになっている。
【0042】
ここで、バグフィルター2への空気取込までの気化熱による温度低下分や、飽和水蒸気量以上の水が噴霧された場合における結露した水の取込防止などの観点を考えると、平面視における、空気吸込み口21aから噴霧ノズル30の位置までの距離は、例えば、好ましくは50cm以上、より好ましくは1m以上離す方が良い。但し、余り離すとミスト領域MRを形成した空気の空気吸込み口21aからの取込量が十分でないおそれもあるため、平面視における、空気吸込み口21aからノズル位置までの距離は、例えば5m以下、より好ましくは3m以下とする方が良い。
【0043】
また、蒸発ができなかった水滴がバグフィルター2へ持ち込まれ、濾布24に水滴が付着すると、通気性悪化による圧力損失が増大する。これに対し、本実施形態では、外気の温度・湿度から求められる相対湿度が第1の設定湿度となるように噴霧水の水量を調整している。これによって、ミスト領域MRに飽和水蒸気量以上の水を供給されることが抑制される。更に、バグフィルター2の空気吸込み直近に第2の温度・湿度測定装置36を設け、第2の温度・湿度測定装置36の測定値に基づく相対湿度が第2の設定湿度以上となったら、水の噴霧を停止するフィードバック制御によって、バグフィルター2内の空気が結露することを防止している。なお、第2の温度・湿度測定装置36の測定値に基づく相対湿度が、第2の設定湿度以上となった後に、バグフィルター2内に取り込まれる空気の相対湿度が第3の設定湿度以下となって、バグフィルター2内の湿度雰囲気が低下したら、外気への水噴霧を再開する。
【0044】
ここで、第2の温度・湿度測定装置36の測定値に基づく相対湿度だけで水噴霧の制御することも可能ではあるが、制御の切替えが頻繁に起こる可能性があり、また取り込まれる空気の湿度自体の変動も大きくなる可能性がある。
また、本実施形態では、水配管32を複数並列状態として、各水配管32へのポンプ33の吐出圧を一定に設定しつつ、各水配管32の流路のオンオフによって、ノズルへの高圧水の圧力が一定となるように調整している。
これによって、水噴霧時の水滴径を所定の粒径の範囲に安定させることが可能となる。
【0045】
ここで、噴霧水の仕様粒子径により算出された蒸発時間を確保するように噴霧ノズル30の位置を決定するが、粒子径が仕様値より大きくなると、濾布24に到達するまでに空気中の水蒸気が十分に蒸発できない可能性がある。
これに対し、本実施形態では、水噴霧時の水滴径を安定させることで、より確実に、濾布24に到達するまでに空気中の水蒸気を十分に蒸発させることが可能となる。
またこの構成によれば、調整弁等での水量制御が不要となり、減圧ロスが生じないか小さい。
【0046】
ここで、前記構成の空気分離装置において、外気温度、バグフィルター2における第2の温度・湿度測定装置36の測定に基づくバグフィルター2に取り込まれる空気の相対湿度と、第2の温度・湿度測定装置36が測定した温度である吸込温度の変化について求めてみた。その結果を図7に示す。なお、この例は夏期に実施したものである。
図7から分かるように、本実施形態を採用すると、バグフィルター2に取り込まれた空気の相対湿度が約80%~90%の範囲に制御されて、結露を起こしていなかった。また、外気温度に対して吸い込み温度が低くなっているので、夏季の製造能力を高めることができ、更に空気圧縮機1の電力使用量を削減することができた。
【符号の説明】
【0047】
1 空気圧縮機
2 バグフィルター
2A 原料空気吸入塔
2Aa 天板部
21 空気取り入れ部
21A 取込用ダクト
21B 円筒体
21a 空気吸込み口
22 空気室
23 濾布収容室
23A 開口
24 濾布
25 集塵用ホッパー
30 噴霧ノズル
31 ノズルヘッダ
32 水配管
33 ポンプ
34 開閉弁
35 温度・湿度測定装置
36 第2の温度・湿度測定装置
37 噴霧水量推定部
38 流量制御部
40 水量調整部
41 噴霧停止判定部
MR ミスト領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7