(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
H01L21/302 103
(21)【出願番号】P 2022508859
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2021010341
(87)【国際公開番号】W WO2022195662
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江藤 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 翔
(72)【発明者】
【氏名】中元 茂
(72)【発明者】
【氏名】臼井 建人
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-219263(JP,A)
【文献】特開2014-179474(JP,A)
【文献】特開2014-022621(JP,A)
【文献】特開2018-157120(JP,A)
【文献】特開2012-238734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内部の処理室内に配置された処理対象のウエハを当該処理室内に形成したプラズマを用いて処理するプラズマ処理装置であって、
前記処理対象のウエハの処理中の所定の複数の時刻に前記ウエハ
の表面から複数の波長の光を受光する受光器と、
前記受光した複数の波長の光の強度を示すデータと、予め取得された前記複数の波長の光の強度を示す比較データとを比較した結果を用いて、前記処理対象のウエハの処理中の処理の量を検出する検出器とを備え、
前記検出器は、前記予め複数のウエハ各々の処理中に取得された当該各々ウエハの表面からの光の前記複数の波長の光の強度を示すデータに基づいて各ウエハ同士の間の類似度を数値化し、数値化された前記類似度に基づいて少なくとも1つのデータを選択して比較データとし、前記処理対象のウエハの処理中に得られた前記複数の波長の光の強度を示すデータと比較して前記処理の量を検出することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記検出器は、前記予め前記複数のウエハ各々の処理中に取得された前記複数の波長の光の強度を示す複数のデータから、各波長における各々の膜厚のスペクトルの値と、前記スペクトルの平均値との差を誤差として前記類似度を数値化し、前記誤差の総和が最大となるウエハ、最小となるウエハ及びこれらの間の差を実質的に等分するウエハのスペクトルのパターンをデータベースとし、前記データベースに基づいて前記比較データとするデータを選択することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記予め前記複数のウエハ各々の処理中に取得された前記複数の波長の光の強度を示す複数のデータの当該光の強度と、これらの光の強度の平均値との差またはその差の二乗の値を、前記類似度を示す指標として用いることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記予め前記複数のウエハ各々の処理中に取得された前記複数の波長の光の強度を示す複数のデータを主成分分析して得られた主成分値を、前記類似度を示す指標として用いることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記予め前記複数のウエハ各々の処理中に取得された前記複数の波長の光の強度を示す複数のデータに対して次元縮約手法を実施した結果として得られる次元縮約成分の値を、前記類似度を示す指標として用いることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記予め前記複数のウエハ各々の処理中に取得された前記複数の波長の光の強度を示す複数のデータから選択される少なくとも1つのデータは、当該少なくとも1つのデータと他のデータとの間の類似度が予め定められた所定の許容範囲内であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
真空容器内部の処理室内に処理対象のウエハを配置された当該処理室内に形成したプラズマを用いて処理するプラズマ処理方法であって、
前記処理対象のウエハの処理中の所定の複数の時刻に前記ウエハ
の表面から複数の波長の光を受光する測定工程と、
当該受光した複数の波長の光の強度を示すデータと、予め取得された前記複数の波長の光の強度を示す比較データとを比較した結果を用いて、前記処理対象のウエハの処理中の処理の量を検出する検出工程とを有し、
前記検出工程において、前記予め複数のウエハ各々の処理中に取得された当該各々ウエハの表面からの光の前記複数の波長の光の強度を示すデータに基づいて各ウエハ同士の間の類似度を数値化し、数値化された前記類似度に基づいて少なくとも1つのデータを選択して比較データとし、前記処理対象のウエハの処理中に得られた前記複数の波長の光の強度を示すデータと比較して前記処理の量を検出することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項8】
請求項7記載のプラズマ処理方法であって、
前記予め前記複数のウエハ各々の処理中に取得された前記複数の波長の光の強度を示す複数のデータから、各波長における各々の膜厚のスペクトルの値と、前記スペクトルの平均値との差を誤差として前記類似度を数値化し、前記誤差の総和が最大となるウエハ、最小となるウエハ及びこれらの間の差を実質的に等分するウエハのスペクトルのパターンをデータベースとし、前記データベースに基づいて前記
比較データとするデータを選択することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項9】
請求項7記載のプラズマ処理方法であって、
前記予め前記複数のウエハ各々の処理中に取得された前記複数の波長の光の強度を示す複数のデータの当該光の強度と、これらの光の強度の平均値との差またはその差の二乗の値を、前記類似度を示す指標として用いることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項10】
請求項7記載のプラズマ処理方法であって、
前記予め前記複数のウエハ各々の処理中に取得された前記複数の波長の光の強度を示す複数のデータを主成分分析して得られた主成分値を、前記類似度を示す指標として用いることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項11】
請求項7記載のプラズマ処理方法であって、
前記予め前記複数のウエハ各々の処理中に取得された前記複数の波長の光の強度を示す複数のデータに対して次元縮約手法を実施した結果として得られる次元縮約成分の値を、前記類似度を示す指標として用いることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項12】
請求項7記載のプラズマ処理方法であって、
前記予め前記複数のウエハ各々の処理中に取得された前記複数の波長の光の強度を示す複数のデータから選択される少なくとも1つのデータは、当該少なくとも1つのデータと他のデータとの間の類似度が予め定められた所定の許容範囲内であることを特徴とするプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置またはプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造では、半導体ウエハの表面上に、様々な機能を奏する回路の一纏まりとしてのコンポーネントや、複数のコンポーネントを相互接続する配線を形成する工程が行われる。これらコンポーネントや配線の形成は、半導体ウエハ等の基板状の試料表面に予め形成された導体あるいは半導体または絶縁体を含む種々の材料の膜層の形成と、これらの膜層の不要な部分の除去等の処理とを繰り返すことで行われる。このような不要な部分の除去の処理では、プラズマを用いたドライエッチングの処理(プロセス)が広く使用されている。
【0003】
このようなプラズマを用いたエッチング(プラズマエッチングともいう)において、処理装置の真空容器内部に備えられた処理室内に処理用のガスを導入すると共に、処理室内に高周波電源から供給された高周波電力による高周波電界を供給して、導入したガスの原子または分子を励起して電離または解離させてプラズマ化し、試料表面をプラズマに暴露してこれに接触させてプラズマ中の粒子と処理対象の膜層との反応を生起して行われる。この際、プラズマ中のイオン等荷電粒子によるスパッタリング等の物理的反応や、ラジカル(反応活性を有した粒子、活性種)による化学的反応などによって、処理対象の膜層の異方性または等方性のエッチングが行われる。ウエハ表面上には、このような各々に異なる特性を有した処理が適切に選択されて適用され、上記種々の機能を発揮する回路の構造を有したコンポーネントや配線が形成される。
【0004】
プラズマエッチングによる加工形状が設計と異なる場合、形成される各種コンポーネントは、その機能を実現できないおそれがある。そのため、エッチング処理を監視・安定化するプロセスモニタ技術が多数提案されてきた。例えば処理中のウエハからの反射光を計測することにより、ウエハ上に成膜された膜の膜厚や、ウエハ上に形成された溝や穴の深さを測定するプロセスモニタは、膜厚・深さモニタと呼ばれ、エッチング処理の終点判定などに利用されてきた。
【0005】
特許文献1には、この膜厚・深さモニタを用いた加工精度高精度化方法が記載されている。この方法では、プラズマ光を光源とした膜厚・深さモニタを用いて処理対象の膜が完全に除去される直前を検知し、当該エッチング処理を終了する。その後、処理対象部分と処理非対象部分を選択的にエッチングする条件に切り替えてエッチング処理を行うことで、全体の処理時間を短く抑えつつ、ウエハ面内での処理ばらつき無く、処理対象膜の完全な除去を実現する。
【0006】
また特許文献2には、膜厚・深さモニタの膜厚や深さの測定精度の高精度化技術が記載されている。この方法では、ウエハに照射する光源としてプラズマ光の代わりに外部光源を使用する。これにより、光源の光量変動が小さくなり高精度な膜厚・深さの測定を実現する。これら膜厚・深さモニタは、予めエッチング中に得られるウエハからの反射光のパターンをデータベース(DBという)として取得しておき、エッチング中に測定されるウエハの反射光をDBと比較することで、当該ウエハの加工状態を推定する。そのため、DB取得時におけるウエハのデバイス構造と、評価対象のウエハのデバイス構造が異なる場合、DBの反射光パターンと評価対象の反射光パターンに不一致が起き、正確な膜厚・深さ測定が実現できないという問題がある。
【0007】
かかる問題に対し、上記のようなウエハ間でのデバイス構造ばらつきに対応する膜厚・深さの計測方法が、特許文献3に開示されている。この従来技術では、エッチング対象膜の下地膜の膜厚がウエハ毎で異なる場合、下地膜が厚い場合と薄い場合のウエハ反射光パターンをあらかじめDBとして取得し、これら2つのDBを用いることで様々な下地膜の膜厚のウエハに対して正確な膜厚・深さの測定を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-260799号公報
【文献】特表2004-507070号公報
【文献】特開2014-195005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3の従来技術では、次に示す課題があった。
すなわち、特許文献3では、ウエハ上面の膜の構造が既知の場合において、エッチング対象膜の下地膜の厚さが各々異なる複数のウエハの反射光による干渉光の強度の波長をパラメータとするパターンのデータをデータベース(DB)として用いるものであるが、ウエハの膜構造が未知の場合には正確な膜厚・深さの測定を実現できない。
【0010】
例えば、複数のウエハの間で膜構造のエッチング対象膜以外の膜の厚さや形状にばらつきがある場合には、このようなウエハと同等の膜構造を有する複数の試験用のウエハを予め処理して反射光の干渉光のデータを基準データとして得ておき、これらデータの中から半導体デバイスを製造に用いられるウエハの処理中の処理の深さや残り膜厚さについて、終点の判定に利用するDBとして複数のデータが適宜選択される。
【0011】
一方、ウエハの膜の構造が未知である場合には、ウエハ間の構造の違いに基づいて適切なデータを選択することが困難となる。例えば、任意に選択した複数のデータを用いて処理中の残り膜厚さや処理の深さの検出をする場合には、対応する膜構造と異なる構造を有したウエハにおいて、精度が著しく低下してしまう。
【0012】
このため、発生するウエハの膜構造の形状や寸法、材質等のばらつき全てに対応した反射光の干渉光の強度のデータを予め得ていなければ、このようなデータを有するDBを用いて残り膜厚さや処理深さを高い精度で検出することが出来なという問題があった。このような膜構造のばらつきとしては、エッチング対象膜の下地膜の厚さだけでなく、膜構造を構成するマスク層の厚さや幅等の寸法、エッチング対象膜の下層の膜の形状や寸法、溝やトレンチの幅やピッチ、エッチング対象の膜の周囲の膜層の形状、寸法等の構造も含まれ、エッチング対象膜の残り膜厚さや深さとウエハからの反射光の干渉光の強度との関係に変動を及ぼす全ての要因が含まれる。
【0013】
また、ウエハ上での反射光の検出位置や範囲によって反射光を生起する膜の構造が異なる場合があり、この際にも上記同様に、DBに含まれる反射光の干渉光のデータに対応する膜構造と異なるものを有するウエハの処理中には、当該ウエハからの反射光を用いて高い精度の残り膜厚さや処理の深さの検出を実現することができないという問題があった。また、複数のウエハの各々でエッチング対象膜と、周辺材料のエッチング処理の選択比がばらつく場合においても、反射光による干渉光の強度にもばらつきが発生する。このような選択比のばらつきを有する複数の膜構造に対応した反射光のデータを用いない場合には、上記と同様に処理中の残り膜厚さや処理の深さの検出の精度が損なわれてしまう。
【0014】
さらに、ウエハからの反射光を得るため処理容器の外部に配置された光源からウエハに光を照射する場合には、光源のスペクトルのばらつきや処理中に処理容器内に形成されるプラズマ光の強度の時間の経過に伴う変化がある場合においても、上記と同様の問題が生じてしまう。この問題の原因はウエハ表面の膜ではなく光を変動させるものであり、予めこうした変動のパターンを取得することは困難である。このため、予めウエハを実際に処理して反射光のデータを取得したとしても、光の変動と複数のウエハの各々との間に相関は小さいため、適切に反射光に係るデータを選択することができずこれら変動に対応して残り膜厚さや処理深さを検出する精度が損なわれてしまっていた。
【0015】
以上述べてきたように、従来技術では、ウエハ上の膜構造や反射光の検出する位置や範囲、エッチング対象と他材料の選択比のばらつきや光源のスペクトル、プラズマ光時間変化の変動の大きさの情報を十分に得られない場合には、これらばらつき・変動に対応したウエハ表面から反射光のデータを適切に選択することができず、ウエハの処理中の当該反射光を用いて残り膜厚さや処理深さ等の処理の量の検出の精度が損なわれてしまうという問題が生じていた。
【0016】
本発明の目的は、ウエハ処理中の処理対象の膜層の残り膜厚さ等の処理の量を高い精度で検出できるプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、代表的な本発明のプラズマ処理装置の一つは、
真空容器内部の処理室内に配置された処理対象のウエハを当該処理室内に形成したプラズマを用いて処理するプラズマ処理装置であって、
前記処理対象のウエハの処理中の所定の複数の時刻に前記ウエハの表面から複数の波長の光を受光する受光器と、
前記受光した複数の波長の光の強度を示すデータと、予め取得された前記複数の波長の光の強度を示す比較データとを比較した結果を用いて、前記処理対象のウエハの処理中の処理の量を検出する検出器とを備え、
前記検出器は、前記予め複数のウエハ各々の処理中に取得された当該各々ウエハの表面からの光の前記複数の波長の光の強度を示すデータに基づいて各ウエハ同士の間の類似度を数値化し、数値化された前記類似度に基づいて少なくとも1つのデータを選択して比較データとし、前記処理対象のウエハの処理中に得られた前記複数の波長の光の強度を示すデータと比較して前記処理の量を検出することにより達成される。
【0018】
代表的な本発明のプラズマ処理方法の一つは、
真空容器内部の処理室内に処理対象のウエハを配置された当該処理室内に形成したプラズマを用いて処理するプラズマ処理方法であって、
前記処理対象のウエハの処理中の所定の複数の時刻に前記ウエハの表面から複数の波長の光を受光する測定工程と、
当該受光した複数の波長の光の強度を示すデータと、予め取得された前記複数の波長の光の強度を示す比較データとを比較した結果を用いて、前記処理対象のウエハの処理中の処理の量を検出する検出工程とを有し、
前記検出工程において、前記予め複数のウエハ各々の処理中に取得された当該各々ウエハの表面からの光の前記複数の波長の光の強度を示すデータに基づいて各ウエハ同士の間の類似度を数値化し、数値化された前記類似度に基づいて少なくとも1つのデータを選択して比較データとし、前記処理対象のウエハの処理中に得られた前記複数の波長の光の強度を示すデータと比較して前記処理の量を検出することにより達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ウエハ処理中の処理対象の膜層の残り膜厚さ等の処理の量を高い精度で検出できるプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す図であり、(a)は、その全体図であり、(b)は膜厚・深さ算出部の構成を示している。
【
図2】
図2は、
図1に示す実施形態の処理対象である半導体ウエハ上面に予め配置され処理対象の膜層を含む複数層の膜が積層された膜構造の構成の概略を模式的に示す縦断面図であり、(a)は、処理前後の状態を示し、(b)は膜厚がばらついた状態を示している。
【
図3】
図3は、
図2に示す膜構造を有する処理対象のウエハ複数枚をエッチング処理した場合に得られる反射光およびこれから検出される残り膜厚さの値の変動の例を模式的に示すグラフであり、り、(a)は、波長と反射強度の関係を示し、(b)は、複数枚のウエハを処理中に膜厚・深さを検出して終点判定を実施した結果を示している。
【
図4】
図4は、
図1に示す実施形態が
図2に示す膜構造を備えたウエハにエッチング処理を実施した処理中の残り膜厚さと、複数の波長をパラメータとするウエハからの反射光の強度の値のパターンとを示したグラフであり、(a)は、マップを示し、(b)は膜厚スペクトルを示している。
【
図5】
図5は、
図1に示す本実施形態に係るプラズマ処理装置が処理した複数のウエハの各々の処理中に検出された反射光のスペクトルと、各スペクトル間の差の総和の例を示すグラフであり、(a)は、光強度と波長との関係を示し、(b)は、誤差と波長との関係を示し、(c)は、誤差総和とマスク膜厚との関係を示している。
【
図6】
図6は、
図1に示す本実施形態に係るプラズマ処理装置が処理した複数のウエハの各々の処理中に検出された反射光のスペクトルの誤差の総和を示すグラフであり、(a)は、誤差総和とウエハ番号との関係を示し、(b)は、処理後膜厚と処理ウエハ枚数との関係を示している。
【
図7】
図7は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置の変形例が
図2に示す膜構造を処理した際に得られるウエハ表面からの光に関する量を示すグラフであり、(a)は、光強度と厚さとの関係を示し、(b)は、誤差総和とマスク膜厚との関係を示している。
【
図8】
図8は、
図7に示す変形例が
図2に示す膜構造を有する複数のウエハを処理した処理中に得られた反射光のデータの誤差の総和の値を各ウエハの番号毎に示したグラフである。
【
図9】
図9は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置の別の変形例が
図2に示す膜構造を備えたウエハに対して行ったエッチング処理の処理中の残り膜厚さと、複数の波長をパラメータとするウエハからの反射光の強度の値とパターンとの関係をマップとして示したグラフである。
【
図10】
図10は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置の別の変形例が
図2に示す膜構造を備えたウエハに対して行ったエッチング処理の処理中に得られた処理対象の膜の残り膜厚さの変化に対する特定の波長の光の強度における1次微分の値の変化の一例を示したグラフである。
【
図11】
図11は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置のさらに別の変形例が
図2に示す膜構造を備えたウエハに対して行ったエッチング処理の処理中に得られた処理対象の膜が所定の残り膜厚さである場合の複数の波長の反射光の強度の一例を示したグラフである。
【
図12】
図12は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置のさらに別の変形例が
図2に示す膜構造を備えた複数のウエハに対して行ったエッチング処理の処理中に得られたウエハ表面の膜構造からの反射光の光の強度のデータ複数を主成分分析して得られた第1及び第2の主成分値の各ウエハのマスク層の初期の厚さとの関係の一例を示すグラフであり、(a)は、第1主成分とマスク膜厚との関係を示し、(b)は、第2主成分とマスク膜厚との関係を示している。
【
図13】
図13は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置のさらに別の変形例が
図2に示す膜構造を備えた複数のウエハに対して行ったエッチング処理の処理中に得られたウエハ表面の膜構造からの反射光の光の強度のデータ複数について、Isometric Mappingを用いて得られた各データ同士の距離の分散の最大値と各ウエハのマスク層の初期の厚さとの関係の一例を示すグラフである。
【
図14】
図14は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置のさらに別の変形例が
図2に示す膜構造を備えた複数のウエハに対してエッチング処理を行って、処理中に得られたウエハ表面の膜構造からの反射光の光の強度におけるデータ複数の各々を用いて検出した他のウエハの所定の残り膜厚さの誤差の値を成分とするデータテーブルの一例を示す表である。
【
図15】
図15は、
図14に示す本発明の実施形態の別の変形例に係るデータテーブルから選択されるn個のウエハの残り膜厚さを検出可能なデータベースウエハの組み合わせを示す表である。
【
図16】
図16は、
図1に示す実施形態のさらに別の変形例に係るプラズマ処理装置が
図2に示す膜構造を備えた複数のウエハに対してエッチング処理を行う際のウエハからの反射光を検出するウエハ表面の位置を模式的に示す上面図である。
【
図17】
図17は、
図1に示す実施形態のさらに別の変形例に係るプラズマ処理装置複数が
図2に示す膜構造を備えた複数のウエハ各々にエッチング処理を行って、処理中に得られたウエハ表面の膜構造からの反射光の光の強度のデータ複数の各々を用いて検出した他のウエハの所定の残り膜厚さの誤差の総和を複数のプラズマ処理装置毎に示したグラフである
【
図18】
図18は、
図1に示す実施形態のさらに別の変形例に係るプラズマ処理装置が
図2に示す膜構造を備えたウエハをエッチングする処理中にウエハからの反射光を用いて検出したウエハ上の処理対象の膜層における残り膜厚の時間の経過に伴う変化の例を示すグラフである。
【
図19】
図19は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置を監視するシステムの構成の概略を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態の概要)
以下に述べる本発明のプラズマ処理方法またはプラズマ処理装置の実施の形態では、複数のウエハにエッチング等の処理を施した際のウエハ表面から反射光の強度またはその変化を示すデータが取得され、当該各ウエハの反射光の強度のデータに基づいて各ウエハ同士の間の類似度が数値として算出される。さらに、算出されたこれらの類似度の数値を用いて、ウエハからの光の波長をパラメータとした光の強度と残り膜厚さ又は処理の深さとの関係付けられた複数のデータが選択または算出され、これらのデータを用いて処理中の残り膜厚さ或いは深さの検出が行われる。
【0022】
その表面からの反射光のデータが取得される複数のウエハは、同一の処理の工程における複数(2枚以上)のウエハであればよく、例えば、製品となる半導体デバイスを量産する工程が施されるウエハ(製品用ウエハ)が好適に用いられる。また、これらの製品用ウエハの使用に代えて、上記反射光のデータを取得する目的のために製品用ウエハの処理の際の条件と同等の条件で処理されるテスト用ウエハを使用してもよい。あるいは、処理の工程が実施中の反射光が再現された、特に処理中に生じるウエハ反射光のばらつきが再現されたシミュレーションに基づいたデータを使用してもよい。
【0023】
反射光のデータとして、処理中のウエハ表面からの反射光の強度の時間の経過に伴う値を示す一纏まりの複数のデータ(データセット)が用いられる。例えば、エッチング中のウエハからの反射光が各時刻毎に予め定められた複数の波長の各々に分光されて、各波長毎に検出された光の強度を示す信号が各時刻毎のものとして関係付けされた、所謂、時系列データを、反射光のデータとして用いてもよい。また、各時間毎に得られる予め定められた波長または所定の範囲の波長毎の光の強度の値の時間変化を示すデータを、反射光のデータとして用いてもよい。
【0024】
各ウエハ間の類似度の算出に用いられるデータは、少なくともエッチング処理の対象となる膜の残りの膜厚さあるいは深さを反映する光の強度を指標として示すものであればよい。例えば、当該データとして、検出した対象の膜層を含むウエハの表面からの反射光の光量の値や、当該光量に対してデジタル信号処理が実施されて重畳されているノイズやオフセットが除去又は低減されて補正されたものを用いてもよい。複数のウエハ毎に光量の倍率の変動やエッチング速度の変動等が発生している場合には、当該データは、特定の光の量を基準として得られた光量を規格化した結果であってもよい。
【0025】
光の強度を示す指標は、複数のウエハ各々の間での違いを比較できる形式に整形されたデータであってもよい。例えば、複数のウエハ同士の間で、各々のエッチング処理中の残り膜厚さの値の範囲やエッチングの速度が異なる場合には、各ウエハの光量を検出する各時刻を残り膜厚さに換算し当該ウエハ同士間で同じ残り膜厚さとなる範囲において、光の強度を示す指標として光量のデータを用いればよい。また、各ウエハの処理中に検出される膜厚さのデータの数(検出が行われる処理中の時刻の点数)が異なる場合には、スプライン補完などの補間の処理によって得られたデータを用いて点数の補間・リサンプリング処理を行い、データ点数を等しくしたものを光の強度を示す指標として用いてもよい。
【0026】
得られる反射光の波長の範囲あるいは波長の個数がウエハで差異のある場合には、上記膜厚さが異なる場合と同様な処理を行うことができる。なお、光の強度を示す指標としては、膜厚と波長とをパラメータとする所謂2次元のデータのみでなく、特定の残り膜厚さにおけるもの或いは特定の波長におけるデータが抽出された1次元のデータであっても良い。
【0027】
各ウエハの処理中に得られる表面から反射された光の強度を用いたウエハ間の類似度の算出は、ウエハ同士の光強度の差の値を算出して行われる。例えば、類似度を算出する対象の全てウエハについて得られる2次元または1次元のデータが示す光の強度の平均値を算出し、各ウエハの光強度データについて当該平均の光強度との誤差絶対値あるいは誤差二乗等を計算して、これらの総和の値を類似度の指標として用いてもよい。あるいは、平均の光強度の値に対する各ウエハから得られる反射光の光強度のコサイン類似度を用いても良い。
【0028】
また、全ウエハの光強度データの主成分分析によって算出される主成分値を類似度の指標としてもよい。更には、全ウエハの光強度データに対して次元縮約手法を適用して得られた値を用いてもよい。具体的にはIsomap,LLE、ラプラシアン固有マップ、ヘシアン固有マップ、スペクトルクラスタリング、拡散マップ、カーネルPCAなどを用いることができる。
【0029】
算出された類似度を示す数値に基づいて選択または算出される複数のデータは、類似度の数値が異なる複数(2つ以上)のウエハから得られたものであって、且つ数値化結果の特定軸の最小および最大またはそれらの近傍のウエハを含むように選択する。例えば、数値化軸の最小および最大を含み、それらに挟まれる数値を持つウエハから数値化軸上で略等間隔に抽出すればよい。
【0030】
また、各ウエハをDBに設定して他のウエハに対して膜厚推定を実施することにより各ウエハのDBで膜厚・深さ測定可能なウエハ範囲を算出し、全ウエハの膜厚・深さ測定を可能とするウエハ組合せを決定し、決定したウエハ組合せの内ウエハ数が最小となる組み合わせを用いて複数DBを選択してもよい。
【0031】
ここで、膜厚・深さの測定可否は、膜厚・深さの推定結果と実測結果との誤差が、任意の目標誤差内に収まるかを基準に決定すればよい。また、決定したウエハ組合せからの複数DBの選択は、ウエハ枚数が最小であり且つ膜厚・深さの測定可能なウエハの延べ枚数が最大となるように選択すればよい。更に、明らかな異常なウエハデータが含まれている場合、当該ウエハは膜厚・深さの測定可否の判断から除外すればよい。
【0032】
これら方法によって設定される複数のDBを用いた膜厚・深さの特定方法は、評価対象ウエハから得られる反射光データを複数のDBと比較することで行えばよい。例えば、評価対象ウエハの反射光を各DBと比較して、各DBにおける膜厚・深さの推定値を算出し、各DBとの反射光のマッチング誤差が最も小さいDBの膜厚・深さの推定値を現時刻の膜厚・深さの値とすればよい。マッチング誤差は当該時刻の誤差だけに限らず、過去時刻を含めた総和としてもよい。
【0033】
本発明の実施形態によれば、複数のウエハをエッチングした際の反射光データを取得し、各ウエハの反射光データの光強度に基づき各ウエハ間の類似度を数値化し、類似度の数値化結果を用いて複数のDBを選択し、選択したDBを用いて膜厚・深さの計測を実施することができる。
【0034】
以下、本発明の実施形態に係る残り膜厚さまたは処理深さを検出しつつ処理対象のウエハを処理するプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、真空容器内部の処理室内に配置されたウエハをエッチング処理するものであって処理中に残り膜厚・処理深さを検出する手段を備えた半導体製造装置が示され、この半導体製造装置の実施するエッチング処理中に残り膜厚さまたは処理深さが検出される工程が説明される。
【0035】
[実施形態1]
以下、
図1乃至
図6を用いて、本発明の実施形態を具体的に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す図である。特に、
図1(a)は、本実施形態に係るプラズマ処理装置の縦断面図の概略が示されている。
【0036】
図に示すプラズマ処理装置において、真空処理室10の内部にガス導入手段(不図示)から導入されたエッチングガスが、高周波電源(不図示)等を用いて発生させた電力やマイクロ波によって励起・分解しプラズマ12となり、このプラズマ12により試料台14に設置された半導体ウエハ等の処理対象16がエッチング処理(プラズマ処理)される。
【0037】
真空処理室10内へのガスの導入、プラズマ12の生成及び制御、図示しない高周波電源等によって行われる処理対象への電圧印加などは制御部40によって行われ、所望のエッチング処理が実現されるように各機器間での同期・タイミング調整が実施される。プラズマ12をパルス化する場合、パルス化の制御も制御部40によって行われる。この時、プラズマ12はエッチングガスをプラズマ化する高周波電源等による電圧印加、マイクロ波照射などの変調によって、これらのオン/オフが切り替わりプラズマはパルス化される。また、エッチングガスの導入を時間変調することによっても、プラズマのパルス化は実施される。
【0038】
プラズマ処理装置は、処理対象16の膜厚・深さを測定する機構を備えている。光源18から射出された光は、光学系50及び導入レンズ20を介して真空処理室10内に導入され、照射光22として処理対象16に照射される。光源部18は紫外から赤外まで波長が連続した連続スペクトル光を用いるが、特定の波長を用いて膜厚・深さ測定を実施する場合には、特定波長の光源を用いれば良い。処理対象16からの反射光24は、検出レンズ26及び光学系50を介して検出部28に導入される。
【0039】
検出部28は、分光器で構成され、導入された光を分光し、波長毎の光量を検出する。特定波長を用いて膜厚・深さ測定を行う場合、検出器は分光器に限らずフォトディテクタ等を用いてもよい。このとき、検出部28に導入される光が所望の特定波長のみであれば直接フォトディテクタを用いればよく、連続スペクトル光が導入される場合には、フォトディテクタ前段にモノクロメータなどで特定波長のみを選択する機構を設ければよい。
【0040】
ここで、
図1(a)では、真空処理室10に光を導入する導入レンズ20と反射光を検出する検出レンズ26はずらした位置に設置している。この構成の場合、反射光24を最も効率よく検出するためには、導入レンズ20と検出レンズ26を、処理対象16を反射面とした同一光線上に向くように傾斜させて設置することが望ましい。
【0041】
導入レンズ20と検出レンズ26の構成は、
図1(a)に限ったものではなく、完全同軸構成として、導入レンズ20と検出レンズ26を1つで共用してもよい。この場合、レンズの光線方向は処理対象16に垂直とし、垂直照射した結果得られる垂直反射光を検出できる構成にすることが望ましい。また、
図1(a)では1対の外部光の導入系統と反射光24の検出系統を記載しているが、処理対象16の複数の位置で膜厚・深さを測定する場合には測定系を複数設ければよい。
【0042】
図1(a)では光源として外部の光源部18からの光入射した場合について説明したが、光源としてプラズマ12の光を用いる場合には光源部18は使用しなくてもよい。プラズマ12を光源として用いる場合もプラズマ12から放出された光は処理対象16により反射し、反射光24が光源部18を用いた場合と同様に検出される。検出部28のデータは膜厚・深さ算出部30に導入され膜厚・深さが決定される。
【0043】
膜厚・深さ算出部30には、データベース選択部60から膜厚・深さの決定で用いられるデータベースが提供される。データベース選択部60は、複数のデータベース候補となるウエハのデータがある場合、それらウエハデータの光強度を比較することで各候補の類似度を数値化する。例えば、光強度の平均値からの誤差絶対値や誤差二乗の総和、コサイン類似度、主成分分析、Isomap,LLE、ラプラシアン固有マップ、ヘシアン固有マップ、スペクトルクラスタリング、拡散マップ、カーネルPCAなどを用いて類似度の数値化は行われる。数値化した各ウエハの類似度を用いてデータベースの選択は行われる。
【0044】
膜厚・深さ算出部30の構成を、
図1(b)を用いて説明する。本図は、
図1(a)に示す膜厚・深さ算出部30の構成を、各機能を奏する部分毎にブロックとして分けて、これら同士の間のデータや情報のやり取りや流れを線または矢印で示したブロック図である。
【0045】
図に示すように、検出部28から膜厚・深さ算出部30に導入された各波長の光量の時系列データD1は、デジタル信号処理部100により各種ノイズや変動が除去・補正され、時系列データD2として波形比較器102に供給される。デジタル信号処理部100における信号処理は、各波長の時間軸におけるノイズの除去にはローパスフィルタが使用される。ローパスフィルタは、例えば2次バタワース型のローパスフィルタを用いることができ、時系列データD2は次式により求められる。
D2(i) = b1・D1(i) + b2・D1(i-1) + b3・D1(i-2) - [ a2・D2(i-1) + a3・D2(i-2)]
【0046】
ここで、Dk(i)は各データDkの任意のサンプリング時刻iのデータを示し、係数a,bはサンプリング周波数およびカットオフ周波数により数値が異なる。またデジタルフィルタの係数値は、例えば、a2=-1.143,a3=0.4218,b1=0.067455,b2=-0.013491,b3=0.067455(サンプリング周波数10Hz、カットオフ周波数1Hz)である。
【0047】
各サンプリング時刻に得られた光の強度を示すデータDkの特定の波長域でのノイズの除去を行う場合は、データDkをローパスフィルタに通してフィルタリングを実施しても良いし、S-G法(Savitzky-Golay-Method)を用いても良い。また、データDkについて各波長の光量オフセットを除去し、時間の経過に対する光量の変化(時間変化)を検出する場合においては、複数の時刻iのデータDk(i)同士の間の光量(光の強度)の差分や各時刻i毎の光強度の変化率(微分値)を算出する信号処理を用いることができる。例えば、各サンプリング時刻iにおいて得られたデータDk(i)と前後の所定の点数のサンプリング時刻でのデータとを用いてS-G法を適用して、データDk(i)を多項式化且つ平滑化して微分値を算出することで、各サンプリング時刻iごとの微分値の時系列データD2(i)が得られる。
【0048】
このようなデータの処理は多項式適合平滑化微分法と呼べるもので、次式により与えられる。
【0049】
【0050】
ここで重み係数wjに関して、1次微分計算では、例えばw-2=-2,w-1=-1,w0=0,w1=1,w2=2が用いられる。また、2次微分計算では、例えばw-2=2,w-1=-1,w0=-2,w1=-1,w2=2が用いられる。
【0051】
また、何れかのサンプリング時刻のデータDk(i)において、そのデータのうち検出する対象の全ての波長の光量の値が同じ割合で時間変化している場合には、各波長の光量の値を当該全ての波長の光量の平均値や絶対値の総和の値により規格化する処理を適用することができる。
【0052】
本実施形態において、デジタル信号処理部100から出力された時系列データD2(i)は波形比較器102で受信されて、当該波形比較器102において、波形パターンデータベース122内に格納されたデータであって予め取得された膜厚・深さと各波長の光量との相関を示す少なくとも1つのパターンデータとの比較が演算器を用いて行われる。ここでは、パターンとはスペクトルパターンを意味する。
【0053】
波形比較器102では、波形パターンデータベース122内の膜厚あるいは処理の深さまたは処理の開始後の時間の複数の値と、複数の波長の光の強度の値とが対応付けられた波長をパラメータとするパターンデータと、時系列データD2の各サンプリング時刻iのデータD2(i)とが比較され、各膜厚あるいは処理の深さまたは処理の開始後の時間毎の複数の波長の光量(光の強度)のパターンデータのうちでデータD2(i)のパターンとの差が最も小さいものが、最も近いパターンデータとして検出される。
【0054】
差が最も小さいパターンのデータとしては、例えば、複数の波長のデータ同士の間の標準偏差が最小となるものを用いることができる。この最も近いパターンのデータの対応する膜厚あるいは処理の深さが当該サンプリング時刻iの残り膜厚または処理の深さとして算出される。波形比較器102において算出された各サンプリング時刻iの残り膜厚または処理の深さの値は、膜厚・深さ記憶部104に送信され、時系列データD3(i)として、膜厚・深さ記憶部104とデータを通信可能に接続されたハードディスクや半導体製のRAMやROM等の記憶装置内に格納される。
【0055】
波形パターンデータベース122における各波長の光量データは、デジタル信号処理部100で実施される信号処理で処理されたデータである。ここで、波形パターンデータベース122に膜厚・深さと各波長の光量のパターンデータのデータベースが複数存在する場合、各データベースを用いて決定される膜厚・深さD3が、膜厚・深さ記憶部104に供給される場合がある。
【0056】
膜厚・深さ記憶部104は、膜厚・深さの時系列データD4を最適膜厚・深さ決定器106に供給する。
【0057】
最適膜厚・深さ決定器106では、最適データベース決定器124から供給されるデータを用いて最適な膜厚・深さを決定し、膜厚・深さ算出部30の外部に出力する。例えば、最適データベース決定器124から供給されたデータベース番号により決定された膜厚・深さを、最適膜厚・深さ決定器106から出力する。
【0058】
ここで、最適データベース決定器124では、波形比較器102及び/又は膜厚・深さ記憶部104から供給されるデータを用いて最適データベースを決定する。例えば、波形比較器102から供給される各データベースの最も近いパターンと、現在のパターンとパターンマッチングを行った結果としての相互の差が最も小さいパターンのデータを、「最適な」データとして判定してこれを残り膜厚さ・処理深さの検出に用いるパターンデータとして選択する。パターンデータの選択には、処理中の現在の時刻iに得られた光強度のデータだけでなく、過去の時刻における当該光強度のデータに対してパターンマッチングの結果得られた差の合計を用いてもよい。この場合には、過去の時刻も含めた複数の時刻での波長をパラメータとする光強度のパターンデータに対して差が最小となるパターンデータが選択される。
【0059】
また、例えば、膜厚・深さ記憶部104から供給される各データベースの膜厚・深さの時系列データを用いて、時間と膜厚・深さの相関係数が最も小さいデータベースを最適データベースと決定してもよい。
【0060】
波形パターンデータベース122は、適合データベース算出器120から供給される複数のデータ含むものをデータベースとして用いてもよい。例えば、適合データベース算出器120では、時系列データD1及び/又は時系列データD2、及び波形パターンデータベース122から供給されたデータを用いて、現在の時刻iで得られた光強度を示すデータのパターンと一致するまたはパターンマッチングの結果の差の値が所定の許容範囲内となるパターンデータを含むデータベースが生成され、波形パターンデータベース122に送信され供給される。また、例えば、適合データベース算出器120において予め決められた演算に基づいて生成されたデータベースが、波形パターンデータベース122に供給されてもよい。データベースを算出する予め決められた演算として、2つのデータベースを線形補間する方法や、2つ以上のデータベースを多項式で補間する演算処理を使用可能である。
【0061】
図1(b)の膜厚・深さ算出部30では、波形パターンデータベース122に複数のデータベースが存在する場合だけでなく、1つのデータベースのみを用いる場合においても、処理中の任意の時刻iで検出された処理対象16からの反射光の強度から、残り膜厚あるいは処理の深さを検出してこれを示すデータが出力される。波形パターンデータベース122に格納されているデータベースが1つの場合には、適合データベース算出器120、最適データベース決定器124は使用されず、膜厚・深さ記憶部104で検出あるいは算出された膜厚・深さの値を示すデータは、そのまま膜厚・深さ算出部30から出力される。
【0062】
図1(a)に示すプラズマ処理装置は、膜厚・深さ算出部30から出力された膜厚・深さを示す信号を用いて終点判定を実施する。すなわち、膜厚・深さ算出部30からの信号を受信した終点判定器において、当該信号の示す残り膜厚さまたは処理深さの値が予め定められた目標の膜厚さまたは処理深さの値とが比較されて、所定の許容範囲内であると判定された場合には、処理が終点へ到達したと判定され、また許容範囲外である場合には到達していないと判定される。目標の残り膜厚さまたは処理深さへの到達が判定された場合には、図示しないモニタやランプ、信号機等の報知器によって上記到達が報知されるとともに、到達を示す信号を受信した制御部40によって、エッチング処理の停止または処理の条件を変更する信号をプラズマ処理装置に発信する。
【0063】
プラズマ処理装置では、受信したエッチング停止信号に基づいて当該膜厚さまたは処理深さを検出した処理対象16の表面の対象膜層のエッチング処理を停止させ、あるいは、処理の条件を変更した後に次の処理対象16に対する処理の工程を実施する。この動作により、本実施形態のプラズマ処理装置は膜厚・深さを検出した結果を用いて終点判定が可能である。
【0064】
上記実施形態に係るプラズマ処理装置を用いた膜厚・深さを検出しつつ実施されるエッチング処理の対象である処理対象16の表面に予め形成された複数層の膜が積層された膜の構造を、
図2を用いて説明する。
図2は、
図1に示す実施形態が処理する処理対象である半導体ウエハ上面に予め配置され処理対象の膜層を含む複数層の膜が積層された膜構造の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
【0065】
図2(a)の左図に示す通り、当該処理対象16の表面の処理前の膜構造において、Si製の基板1の上面上に下地膜2、処理対象膜3が下層及び上層として上下方向に積み重ねられて製膜されている。処理対象膜3の上面上方には覆われていない箇所、領域の処理対象の膜層に、予め定められた回路のパターンを形成するための樹脂または処理対象の膜の材料から高い選択比を有する材料で構成されたマスク4が配置されている。
【0066】
このような膜構造をエッチング処理した結果として
図2(a)の右図に示されるように、処理後の膜構造では処理対象膜3の一部が除去された構造が形成される。一方、このようなエッチング処理の対象となる実際の膜構造では、
図2(b)に示されるようにマスク4の膜厚さの大きさにバラつきを有する。すなわち、複数の処理対象16であるウエハについて処理前の(処理の初期の)マスク層の膜層さは、平均厚さより薄い(厚さが小さい)場合や、平均厚さより厚い(大きい)場合が存在する。
【0067】
このようなマスク膜厚のばらつきが処理対象16の処理の残り膜厚・深さ或いは終点の判定に与える影響を、
図3を用いて説明する。
図3は、
図2に示す膜構造を有する処理対象のウエハ複数枚をエッチング処理した場合に得られる反射光およびこれから検出される残り膜厚さの値の変動の例を模式的に示すグラフである。
【0068】
図3(a)は、処理対象16のウエハ表面の処理対象膜の残り膜厚さが同じであって、マスクの初期の膜厚さが異なる場合のウエハ複数からの反射光の量を示すグラフである。本図において、縦軸は反射光の量をウエハ反射率に変換した際の値である。
図3(a)によれば、マスクの膜厚さが変動することにより処理対象膜の残り膜厚さの値が同一であっても反射率の大きさが異なることが看取される。すなわち、残り膜厚さを示す複数の波長の反射光の強度の分布、プロファイル(スペクトル)がマスクの厚さに応じて異なることが分かる。
【0069】
上記膜構造のマスクの初期の膜厚さにバラつきを有する複数枚の処理対象16のウエハに対して、初期の膜厚さの平均値を有したマスクを備えた膜構造を有するウエハ1枚を処理した際に、処理中の各サンプリング時刻毎に得られる、ウエハからの複数波長の反射光の量の値のパターンとこれらから検出される各時刻の残り膜厚さまたは処理深さとの相関関係を示すパターンのデータを予め取得して、このデータ1つのみを用いて複数枚の処理対象16のウエハを処理中に膜厚・深さを検出して終点判定を実施した結果を
図3(b)に示す。
【0070】
本例では、マスクの膜厚さのばらつきを有する複数枚のウエハをエッチング処理した場合であって、終点判定の目標となる残り膜厚さを130nmとしたものである。図中では縦軸を残り膜厚さとして採り、各ウエハのエッチング処理後に破壊検査等により電子顕微鏡を用いて残り膜厚さを測定した結果の値を図中のドットとして示している。
【0071】
本図に示す通り、予め取得した1枚のウエハに対する処理から得られた1つのパターンデータを用いて検出された残り膜厚または処理深さを用いて終点の判定した場合には、各ウエハ毎に処理後の実際の処理対象の膜の厚さが目標膜厚(130nm)に対してばらついており、エッチング処理による膜構造の加工の精度が損なわれていることが判る。
【0072】
このように、処理対象16毎にマスクの初期の膜厚さに大きな変動がある場合には、特定のウエハの処理から1例として得られたデータを用いて膜厚・深さを検出すると、終点判定の精度と加工の精度ひいては処理の歩留まりが損なわれ、高い集積度の半導体デバイスの製造が実現できない虞がある。
【0073】
そこで、本実施形態に係るプラズマ処理装置では、各処理対象16のウエハの処理中に得られる反射光から複数のパターンデータを用いて膜厚・深さを検出し、検出した残り膜厚または処理深さに基づいて処理の終点を判定する。本実施形態では、
図3(b)の例で示したものと同等に、同じ材料の膜層が上下方向に積層された同じ種類の膜構造を有する複数枚の処理対象16のウエハをエッチング処理した際の、処理中の複数の時刻にウエハ表面から得られた複数の波長の反射光の強度のデータと残り膜厚(または処理の工程が開始された後の時間)とが相関付けられた複数のパターンデータについて、予めウエハ相互の類似度が数値として算出される。
【0074】
図4(a)は、処理対象16のウエハに対して施されたエッチング処理の処理中の残り膜厚さと複数の波長をパラメータとするウエハからの反射光の強度の値と、パターンとの関係をマップで示したグラフである。
【0075】
この図において、処理中に検出される反射光の強度を示すデータは、残り膜厚さと対応付けられて検出されるのではなく、処理の工程が開始された後の処理中の各サンプリング時刻で複数の波長の反射光のスペクトルとして取得される。各サンプリング時刻を残り膜厚さに換算する処理では、初期(時刻0)の膜厚と最終(最終の時刻)の膜厚との値から線形内挿により各時刻の膜厚の値が割り当てられる。各ウエハの処理毎に、
図4(a)で示すようなマップのデータが得られるが、各ウエハで処理後膜厚やエッチング速度が異なるため、図上横軸に取られた膜厚さの範囲やその点数が異なる虞がある。
【0076】
そこで、本実施形態では、予め得られた複数の処理対象16のウエハについての上記反射光のデータを用いて、これら全てのウエハで共通した膜厚範囲を設定する。これにより、その膜厚範囲内において膜厚1nm毎の所定の複数の波長の光の強度を示すパターンデータが作成される。任意の膜厚の値について予め得られたデータの値を利用できる場合には当該データの値が利用され、当該膜厚さが予め得られたデータに無い場合には前後の膜厚についてのデータから補間処理によって算出される値が用いられる。補間処理には、例えばスプライン補完が使用される。
【0077】
このように、膜構造のマスクの初期の膜厚さがバラついているこれら複数枚のウエハについて、処理中の波長をパラメータとする反射光のパターンデータが、必要に応じ補間処理を用いて作成される。作成されたこれらのパターンデータの中から、上記のように任意の1つの同じパターンデータを用いて終点判定した際の、処理後の実際の残り膜厚さが最も小さいウエハに対応するデータが抽出される。このデータを基準として他のウエハに対応するパターンデータが比較され、パターンデータに基づいたウエハ間の類似度が算出される。
【0078】
このように算出された、或る1つの残り膜厚における波長をパラメータとする光の強度のデータ(膜厚のスペクトル)の例を
図4(b)に示す。
図4(b)の膜厚スペクトルは
図4(a)における特定の1つの膜厚のスペクトルである。
【0079】
図5は、
図1に示す本実施形態に係るプラズマ処理装置が処理した複数のウエハの各々の処理中に検出された反射光に基づいて得られた膜厚のスペクトルと、各スペクトル間の差の総和の例を示すグラフである。
図5(a)には、複数のウエハ各々から得られた所定の膜厚のスペクトルが重ねて表示されている。本図のように、各々のウエハに対応した膜厚のスペクトルは複数の波長において異なる値を示している。
図5(b)には、各波長において各々の膜厚のスペクトルの値とこれらの平均値との差の値(誤差量)とが示されている。この図において、誤差量の大きさとして各ウエハ同士の間の類似度が数値として示される。
【0080】
さらに、各ウエハについて全波長の誤差の絶対値の総和を算出し、これらの値と各ウエハのマスクの初期の膜厚さと対応付けた結果が
図5(c)に示されている。図上の縦軸は誤差総和の量を示す値であり、横軸は各ウエハのエッチング処理工程の開始前のマスクの膜厚(初期の残り膜厚さ)の値である。
【0081】
本例では、各ウエハの膜構造を構成する各膜層の仕様のバラつき、例えばマスクの初期の膜厚のバラつきの大きさは未知であることを前提としているが、上記算出されたウエハ毎の類似度の値がマスクの初期の膜厚と対応していることが、
図5(c)において示されている。本図では、便宜上各ウエハのマスクの初期の膜厚の値と当該各ウエハの任意の膜厚のスペクトルにおける複数の波長毎の誤差の総和の値とが対応付けられてプロットされており、各ウエハの膜厚のスペクトルにおける所定の複数の波長の誤差の総和は、当該ウエハ各々のマスクの初期の膜厚を高い相関があることが示されている。本図により、各ウエハの膜厚のスペクトルの類似度を用いて各ウエハの膜構造間の構造上の差異の大きさを検出できることが判る。
【0082】
次に、複数のウエハを所定の順に並べ替えて符号または番号をつけて序列化する。例えば、複数のウエハを各ウエハから算出された誤差の総和の値が小さい順に序列化する。このように並べ替えて序列化した複数のウエハの各ウエハの番号と誤差の総和との関係を、
図6(a)に示す。上述したように、誤差の総和はマスクの初期の膜厚と高い相関があるため、本例ではウエハの番号が小さいほどマスクの初期の膜厚が厚く、大きいほどマスクの初期の膜厚が小さい順に順序付けられている。
【0083】
本実施形態では、このように序列化された複数のウエハの最大番号が付けられたウエハと、最小番号のウエハと、これらウエハの間の番号のウエハであってその誤差の総和の最大番号および最小番号のウエハの誤差の総和との差が等しいウエハとが選択され、これら3つの選択したウエハに対応する上記必要に応じて補間を用いて算出した波長をパラメータとする反射光の強度のパターンの3つのデータを、データベースとして用いる。このようにデータベースとして用いる反射光におけるスペクトルのパターンのデータを選択することで、ばらつきを有するマスクの初期の膜厚さの最小および最大のものに対応する反射光のデータをデータベースとして使用することが可能となる。
【0084】
このように選択され得られたデータベースを用いて比較データを選択し、この比較データを実測データと比較することによってウエハの膜厚・深さを検出し、その結果に基づいて終点判定を実施した結果を、
図6(b)に示す。本例では、
図1(a)に示す、最適データベース決定器124により、各データベースとのマッチング残差が最小となるパターンデータが選択される。さらに、本例では、
図3(b)と同様に、マスクの初期の膜厚にばらつきを有する複数のウエハを用いる。
【0085】
本図に示すように、全てのウエハで処理後の残り膜厚は、その目標の130nmの前後であって、その誤差の大きさも所定の許容範囲内である0.5nm以下となっており、高い精度で目標の処理対象の膜層の加工が実現できていることが分かる。この結果から、上記本実施形態により、処理対象の膜層を含むウエハ上の膜構造の寸法や形状、材質等のばらつきが未知である場合においても、処理中の残り膜厚さや処理深さ等の処理に関する量(以下、処理量)を高い精度で検出することが出来、これを用いて高い精度で処理の終点の判定を行えることが明らかとなった。
【0086】
上記複数のウエハ同士の間での膜構造の形状、寸法や材質等のばらつきは、処理中に処理の量を検出する上でのストレス要因の一つであり、本実施形態は上記の種類のばらつきに限ったものではなく、複数のウエハ同士の間で、エッチング処理対象膜の下地膜厚さ、トレンチ幅や深さ、処理対象膜の下方の膜の構造や周辺の構造等といった膜構造の特性のばらつき、反射光を検出する位置や範囲の変動、エッチング対象膜と他の膜の材料の選択比の変動、光源スペクトルの変動、プラズマ光の時間変化の変動等の処理の条件の変動が生じる場合に対しても適用することが可能である。また、本実施形態の光強度の指標、各ウエハのデータ整形や信号処理、ウエハ類似度の数値化方法、複数データベースの選択方法も上記に限ったものではないことは明らかである。
本実施形態では序列化した複数のウエハから選択した3つのウエハのデータをデータベースとして用いたが、データベース数は3つに限ったものではない。例えば、序列化したウエハ番号の最大、最小およびこれらの番号を略等間隔に分割する番号のウエハの反射光の強度のパターンの3つ以上のデータをデータベースとして用いることによっても、本実施形態と同様な効果が得られることは明らかである。また、序列化したウエハの誤差の総和の最大値、最小値及びこれらの値を実質的に等間隔に分割する誤差の総和の値を持つ複数のウエハのデータをデータベースに用いることによっても、本実施形態と同様な効果が得られることは明らかである。
【0087】
以下に、各ウエハの類似度の数値として、ウエハからの特定波長の反射光の強度の時間経過に対する変化(時間変化)の値を用いた場合の例を述べる。本例でも、複数のデータを用いて検出したウエハの処理中の処理の量に基づいた処理の終点の判定が行われる。これら以外の条件に関しては、上記の実施形態1と同じ構成とした。
【0088】
図7は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置の変形例が
図2に示す膜構造を処理した際に得られるウエハ表面からの光に関する量を示すグラフである。
図7(a)は、ウエハの処理中にウエハ表面からの反射光の特定波長の光の強度の時間変化の一例を示すグラフである。本図では、時間変化を示すパラメータとして処理中の残り膜厚さを横軸とし光の強度の変化を表している。
【0089】
上記の実施形態と同様に、複数のウエハの処理中に得られた各々のウエハの反射光のスペクトルを示すデータに対し、膜厚の割り当て、膜厚範囲の決定、スペクトルデータを補間処理し、得られた補間処理データの特定波長における膜厚による光強度の変化の一例を、
図7(a)に示す。光強度は膜厚により振動するように変化することが分かる。
【0090】
図7(b)は、
図7(a)に示す特定の波長の反射光の光における強度の時間変化の全ウエハの平均に対する各ウエハの誤差とマスク膜厚の相関を示す一例のグラフである。上記実施形態の特定膜厚におけるウエハ間のスペクトル比較と同様に、各ウエハの同一波長における光量の時間変化を抽出し、その平均値からの二乗誤差の総和を各ウエハに関して算出した結果が、
図7(b)に示されている。この図から、光量の時間変化を用いた場合でも各ウエハにおける誤差の総和はマスク膜厚と高い相関を示しており、各ウエハのスペクトルの類似度から構造の違いを明確化できることが分かる。
【0091】
複数のウエハの各々に誤差の総和の値が小さい順に番号付けして序列化し、当該ウエハの番号と誤差の総和値との関係をプロットした結果を、
図8に示す。
図7(b)に示されているように、誤差の総和の値はマスクの膜厚さと高い相関があり、ウエハの番号が小さい程マスクの膜厚さが大きく、番号が大きい程マスクの膜厚さが小さい。このことから、
図8ではウエハの番号の順に誤差の総和の値が一様に増大していることが示されている。
【0092】
本例では、このように序列化した結果を用いて、複数のウエハからそれらの番号の最大および最小のものと、これらの間のウエハで誤差の総和の値(
図8の縦軸の値)が等しいか、またはこれとみなせる程度に近似した間隔になるウエハの3つを選択し、これら選択されたウエハのデータを波形パターンデータベース122のデータとして用いるものとした。このようなデータを用いることで、値がばらつく初期のマスク膜厚さの最小値および最大値に対応して、ウエハからの反射光を用いる処理量の検出を高い精度で行うことが可能となる。
【0093】
このように選択され決定された複数のデータを含んで構成されたデータベースを用いて処理中に処理量を検出した結果を基づいて終点判定を実施した結果、実施形態1の
図6(b)と同様に処理後の膜厚は全てのウエハで目標130nm近傍であり、誤差も0.5nm以下であった。従って、本実施形態の複数のデータを用いた処理量の検出においても、構造ばらつきが未知の場合においても正確な処理量の検出が可能であり、高精度な終点判定が実現できることが明らかである。
【0094】
次に、予め処理された各ウエハの類似度を数値として表すためのパラメータとして、ウエハ上の膜構造に含まれる処理対象の残り膜厚さと当該膜構造からの反射光の複数の波長の2次元データ(マップ)との相関を用いた場合の例を説明する。複数のウエハについてそれらの類似度を算出するパラメータを除いた条件に関しては、上記実施形態や
図7,8に示す実施形態と同じ構成とした。
【0095】
上記の実施形態と同様に、処理された複数のウエハ各々のスペクトルのデータに対し、膜厚の割り当て、膜厚範囲の決定、スペクトルデータを補間処理することによって得られた膜厚と波長と強度の補間処理データの一例を
図9に示す。
図9は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置の別の変形例が
図2に示す膜構造を備えたウエハに対して行ったエッチング処理の処理中の残り膜厚さと、複数の波長をパラメータとするウエハからの反射光の強度の値とパターンとの関係をマップとして示したグラフである。
【0096】
本図に示されるデータは、
図4(a)のマップの一部を切り出したものと同様なグラフである。本図のデータからは、
図4に係る上記実施形態の特定膜厚におけるウエハ間のスペクトル比較と同様に、補間処理データの全ウエハ平均値と各ウエハの誤差絶対値の総和を算出した結果、
図5(c)と同様なマスク膜厚と誤差量の相関が得られた。
【0097】
そのため、このような誤差量を用いることによっても
図6(a)と同様な波形パターンデータベース122のデータベースを決定することが可能であり、その結果、
図6(b)と同様にマスクばらつきに対しても高精度な膜厚推定が実現できることが分かった。従って、本例においても、処理対象の膜を含む膜構造の特性のばらつきが未知の場合においても正確な処理量の検出が可能であり、高精度な終点判定が実現できることが明らかである。
【0098】
次に、予め処理した複数のウエハ各々の反射光のデータにローパスフィルタリングや、微分値算出、光量規格化などの信号処理を施して、当該信号処理をしたデータに基づき各ウエハの類似度を数値として表して得られた反射光の光の強度を示すデータを用いて処理中の処理の量を検出した結果により終点判定を行った例について説明する。本例では、上記の信号処理を施した以外の条件に関しては、
図1乃至9に示した実施形態または変形例と同じ構成とした。
【0099】
実施形態と同様に各ウエハの処理中の複数のサンプリング時刻において得られたスペクトルデータに対し、残り膜厚さの対応付け、残り膜厚さ範囲の決定、スペクトルデータを補間処理して得られたデータの各時刻において、反射光の複数の波長の光の量の平均値で複数の各波長の光の量を規格化した。さらに、各ウエハについて、当該規格化して得られたデータから残り膜厚さの変化に対する特定の波長の光の強度の変化を抽出し、抽出した各ウエハの光の量の時間変化について時間方向にLPF,S-G法による1次微分値を算出した。その結果の例を
図10に示す。
【0100】
図10は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置の別の変形例が
図2に示す膜構造を備えたウエハに対して行ったエッチング処理の処理中に得られた処理対象の膜の残り膜厚さの変化に対する特定の波長の光における強度の1次微分の値の変化の一例を示したグラフである。
図10に示す反射光の特定の波長の光に関する光の強度の量の時間変化は、
図7(a)を膜厚さ方向について微分した形状をしている。この光の量の時間変化の微分値の全ウエハ平均値と各ウエハの誤差二乗和の総和を算出した結果、
図7(b)と同じ誤差総和とマスク膜厚の相関が得られた。
【0101】
そのため、この誤差量を用いることによっても
図8と同様な波形パターンデータベース122のデータを選択することが可能であり、その結果、
図6(b)と同様にマスクばらつきに対しても高精度な膜厚推定が実現できることが分かった。従って、本例においても、構造ばらつきが未知の場合においても正確な処理量の検出が可能であり、高精度な終点判定が実現できることが明らかである。
【0102】
次に、波長軸に関するデータ整形を施したウエハからの反射光のデータを用いて予め処理した複数のウエハ同士の類似度を数値として表して得られた反射光の光の強度を示すデータを用いて処理中の処理の量を検出し、その結果を用いて終点判定を行った例について説明する。本例では、上記の信号処理を施した以外の条件に関しては、
図1乃至9に示した実施形態または変形例と同じ構成とした。
【0103】
本例では、上記の例と同様に処理を行った複数のウエハ各々の処理中の各々のサンプリング時刻に得られた反射光のスペクトルのデータに対し、残り膜厚さを対応付けし、残り膜厚さの範囲の決定、スペクトルデータの時間軸(膜厚軸)方向の補間処理を実施した。さらに、波長軸に関しても波長240~840nmで波長刻みが5nmとなるように波長方向のデータを補間処理し、データを削減した。その結果として得られる、複数のウエハのうちで任意の1つのウエハの最も薄い残り膜厚さに対応するスペクトルのデータの一例を
図11に示す。
【0104】
図11は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置のさらに別の変形例が
図2に示す膜構造を備えたウエハに対して行ったエッチング処理の処理中に得られた処理対象の膜が、所定の残り膜厚さである場合の複数の波長の反射光の強度の一例を示したグラフである。このスペクトルは
図4(b)におけるスペクトルの一部分を切り出した形状をしている。
【0105】
本例においても、このスペクトルのデータを用いて、上記実施形態と同様に複数のウエハの各々同士の間の構造の類似度を序列化してデータ選択し、当該選択したデータを用いて処理中のウエハの残り膜厚さを検出し終点の判定を行った。その結果、上記実施形態と同様なウエハの処理後の残り膜厚さのばらつきが得られた。従って、本例においても、構造ばらつきが未知の場合においても正確な処理量の計測が可能であり、高精度な終点判定が実現できることが明らかである。
【0106】
次に、予め処理した各ウエハの類似度を数値として表すためのパラメータとして、主成分分析の主成分値を用いた場合の例を説明する。ウエハ間の類似度を示すため主成分分析を用いた点以外は、上記の
図1乃至12に示した実施形態や変形例と同じ構成とした。
【0107】
上記実施形態と同様に、複数のウエハ各々の処理中の複数のサンプリング時刻に得られた反射光のスペクトルを示すデータに対し、処理対象の残り膜厚さの対応付け、残り膜厚さの範囲の決定、スペクトルデータの補間処理を行い、同一の残り膜厚さに対応する反射光のスペクトルのデータを各ウエハから抽出した。抽出した各ウエハのスペクトルを用いて主成分分析を実施し、各ウエハのマスク膜層の初期の膜厚さと第1主成分、第2主成分の関係を
図12(a),(b)に示す。
【0108】
図12は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置のさらに別の変形例が
図2に示す膜構造を備えた複数のウエハに対して行ったエッチング処理の処理中に得られたウエハ表面の膜構造からの反射光における光の強度のデータ複数を主成分分析して得られた第1及び第2の主成分値の各ウエハのマスク層の初期の厚さとの関係の一例を示すグラフである。
【0109】
これらの図において、
図12(a)に示される第1主成分値、
図12(b)の第2主成分値は、何れもマスク層の初期の膜厚さと高い相関を示していることが分かる。さらに、第1主成分値はマスクの初期の膜厚さの値に対して極小値を含んで増減する2次関数のように変化している。このため、
図12(a)のような相関を有する複数のウエハの反射光のスペクトルを示すデータの第1主成分値からは、マスク層の初期の膜厚は一意に定められない。
【0110】
一方、
図12(b)に示される第2主成分値は、マスクの初期の膜厚さの変化に対して、1次関数のように実質的に一定の傾きを有して変化している。このことから、本図に示される第2主成分値とマスク層の初期の膜厚さとの対応付けを用いて、複数のウエハ各々マスク層の初期の膜厚さと、これに基づいたウエハの類似度とを検出することができる。そこで、本例では、複数のウエハ各々の処理中の各サンプリング時刻に得られた反射光のデータから第2主成分値を算出し、これに基づいて得られた各ウエハ同士の間の類似度を用いて複数のウエハを序列化した。さらに、当該序列化した結果に基づいて反射光の複数の波長の光の強度のパターンを示すデータを選択し、当該選択したウエハのデータを波形パターンデータベース122のデータとして用いた。
【0111】
本例において、これらの波形パターンデータベース122の複数のデータを用いて、任意のウエハの処理中に得られたウエハからの反射光の光の強度を示すデータから処理中の各サンプリング時刻の処理量を検出し処理の終点の判定を実施した。この結果、
図6(b)と同様に、処理後の残り膜厚さは全てのウエハで目標130nm近傍であり、誤差も0.5nm以下であった。従って、本例においても、膜構造の特性のばらつきが未知の場合においても、正確な処理量の検出が可能であり、高精度な終点判定が実現できることが明らかである。
【0112】
次に、ウエハの膜構造を構成するマスク層の初期の膜厚さと、処理対象膜の下方に配置された下地の膜厚さにばらつきを有している場合において、予め処理した複数のウエハからの干渉光のデータの類似度を多様体学習を用いて数値化した場合の例を説明する。本例においても、類似度を多様体学習を用いて数値化した点以外の条件に関しては、
図1乃至12に示した実施形態および変形例と同じ構成とした。
【0113】
本例においても、上記の例と同様に、予め処理された複数のウエハ各々の処理中の複数のサンプリング時刻に得られた反射光のスペクトルを示すデータに対し、処理対象の残り膜厚さの対応付け、残り膜厚さの範囲の決定、スペクトルデータの補間処理を行い、同一の残り膜厚さのスペクトルのデータを各ウエハから抽出した。
【0114】
さらに本例では、当該抽出したスペクトルのデータを用いて各ウエハの類似度を多様体学習の非線形次元縮約手法であるIsometric Mappingを使用して数値化した。Isometric Mappingでは、各ウエハのスペクトルを各データ点とし、このデータ点を用いてK近傍法(K-nearest neighbor algorithm)による各データ点の近傍関係を値として算出する。
【0115】
次に、算出した近傍関係の値を用い、K近傍グラフ上での各データ点間の測地線距離(Geodesic Distance)を算出して、これらの測地線距離の値を成分とする測地線距離行列を作成する。作成した測地線距離行列に対して多次元尺度構成法(MDS:Multi Dimensional Scaling)により各データ点を低次元の空間に射影する。以上の手順により、各ウエハは対応するスペクトルのデータの類似度に基づいて低次元の空間にマッピングされることとなり、マッピング結果を用いて残り膜厚さ等の処理の量を推定するために用いられるデータベースの複数のデータを選択することが可能となる。
【0116】
本例では、Isometric Mappingを用いて予め処理した複数のウエハ各々の反射光のスペクトルのデータが類似度に基づいてマッピングされる。さらに、マッピングされた低次元の空間上で各ウエハに対応する複数のデータの分散が最大となる第1成分と各ウエハのマスク層の初期の膜厚さとの相関をプロットした結果を、
図13に示す。
【0117】
図13は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置のさらに別の変形例が
図2に示す膜構造を備えた複数のウエハに対して行ったエッチング処理の処理中に得られたウエハ表面の膜構造からの反射光における光の強度のデータ複数について、Isometric Mappingを用いて得られた各データ同士の距離の分散の最大値と各ウエハのマスク層の初期の厚さとの関係の一例を示すグラフである。Isometric Mappingによる第1成分はマスク膜厚と高い相関を示していることが確認できる。
【0118】
本例ではさらに、得られた第1成分値に基づきウエハ各々の間の類似度の値に応じてこれらウエハを序列化し、その結果に基づいて反射光のスペクトルのデータベースを波形パターンデータベース122のデータとして選択した。これら複数のデータを用いて、任意のウエハの処理中の複数のサンプリング時刻に処理量を検出し、その結果を用いて終点判定を実施した結果、
図6(b)と同様に処理後の残り膜厚さは全てのウエハで目標130nm近傍であり、誤差も0.5nm以下であった。従って、本例においても、膜構造の特性のばらつきの量が未知の場合においても、正確な処理量の検出が可能であり、高精度な終点判定が実現できることが明らかである。
【0119】
上記した実施形態あるいは変形例では、
図6または
図8に示されたように、予め処理した複数のウエハ各々の処理中に得られたウエハからの反射光のデータの間の類似度を示すパラメータの値の大きさに応じて当該複数のウエハに番号付けして序列化し、複数のウエハについての当該番号に応じて変化するパラメータの値各々と当該パラメータの値の平均値と差(誤差)或いは誤差の総和の値のうち、最大値および最小値とこれらの間の差を実質的に等分するパラメータ値に対応するウエハの反射光のデータを、任意のウエハの処理中の複数のサンプリング時刻での処理の量の検出に用いていた。
【0120】
このようなデータの選択に代えて、上記予め処理された複数のウエハに係るデータのうちから或るウエハに対応する反射光のデータを処理の量の検出に用いるものとして選択した場合に、所定の許容範囲内の誤差で処理の量を検出することの可能なウエハの範囲の情報を用いて、波形パターンデータベース122のデータを選択しても良い。以下に、このようなデータを選択して処理の量を検出する例を説明する。
【0121】
本例では、波形パターンデータベース122のデータを選択するに先立ち、データベースの候補となる複数のウエハの処理中に得られた複数波長の反射光の光の強度データに対し、任意の1つのウエハに対応するデータを基準データとして残る他のウエハを検出する対象として、その処理中の所定の処理の量(例えば、終点等の特定の残り膜厚さ)を推定膜厚さとしてシミュレーション等の手法により算出する。さらに、検出の対象である他のウエハの各々について特定の残り膜厚さの実際の値と推定膜厚さとの誤差を算出する。
【0122】
上記の誤差の算出を、複数のウエハの各々を基準データ用のウエハとし、他のウエハを検出の対象のウエハとして繰り返すことで、複数のウエハ各々についてこれを基準として検出した他のウエハ各々の所定の残り膜厚さの誤差の値を成分とするテーブルまたは行列が得られる。このようなテーブルの例を
図14に示す。
【0123】
図14は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置のさらに別の変形例が
図2に示す膜構造を備えた複数のウエハに対してエッチング処理を行って、処理中に得られたウエハ表面の膜構造からの反射光の光の強度のデータ複数の各々を用いて検出した他のウエハの所定の残り膜厚さの誤差の値を成分とするデータテーブルの一例を示す表である。本例では、
図14に示すテーブルを用いて波形パターンデータベース122のデータを選択する。
【0124】
さらに、本例では、
図14に示すテーブルの推定膜厚さの誤差が所定の許容範囲(例えば1nm以下)である場合には、残り膜厚さを検出することが可能であると判定される。すなわち、各々に1つの番号(データベースウエハ番号)が付されたn個のウエハのうちの任意の1つのウエハに対応する反射光のデータを用いて検出した他の(n-1)個のウエハの推定膜厚さの誤差と、許容範囲の上限値である1nmとを比較することで、上記任意の1つのウエハに対して他の(n-1)個のウエハのうちで当該1つのウエハのデータ(比較データ)を用いて残り膜厚さを検出することが可能と判定されるウエハの組み合わせが得られる。言い換えれば、n個の膜厚推定対象のウエハについて、上記の許容範囲内の誤差で膜厚の検出を可能とするデータベースウエハの組み合わせを選択することができる。
【0125】
このようなデータベースウエハの組み合わせは複数存在し、これらの組合せは
図15に示すデータテーブルとなる。
図15は、
図14に示す本発明の実施形態の別の変形例に係るデータテーブルから選択されるn個のウエハの残り膜厚さを検出可能なデータベースウエハの組み合わせを示す表である。ここで、
図15の表(テーブル)は、複数の組合せのうちで用いられるデータベースウエハの数が少ないものから順に並べられている。例えば、最もデータベースウエハの数が少ない
図15の1番目上の組み合わせが選択されると、データベースウエハに対応する反射光のデータが波形パターンデータベース122のデータとして選択される。
【0126】
このように選択された波形パターンデータベース122のデータを用いて、任意のウエハの処理中の処理の量を検出し終点判定を実施した結果、
図6(b)と同様に処理後の膜厚は全てのウエハで目標130nm近傍であり、誤差も0.5nm以下であった。従って、本例においても、膜構造の特性のばらつきが未知の場合においても正確な処理量の検出が可能であり、高精度な終点判定が実現できることが明らかである。
【0127】
次に、
図1(b)の適合データベース算出器120を用いて、ウエハの処理中の複数のサンプリング時刻において処理の量を検出して処理の終点判定を行う例について説明する。本例においても、適合データベース1算出器20を用いること以外の条件に関しては、上記
図1乃至15に示した実施形態または変形例と同じ構成とした。
【0128】
実施形態1と同様にデータベースを選択して、選択したウエハのデータを波形パターンデータベース122のデータベースとして決定した。決定した複数のデータベースを用いて処理量モニタによる終点判定を実施するが、本実施形態では、
図1(b)の適合データベース算出器120を用いて膜厚推定で使用される波形パターンデータベース122のデータベースを算出し、膜厚推定に使用した。具体的な手順を以下に述べる。
【0129】
膜厚推定対象のウエハから測定される1時刻のスペクトルを取得し、そのスペクトルをデジタル信号処理部100で信号処理したデータD2が、適合データベース算出器120に供給される。適合データベース算出器120では波形パターンデータベース122からも複数のデータベースが供給されており、例えば各2組のデータベースDBnとDBmを任意の混合率αで混合した混合データベースDBnm(α)(=α×DBn+(1-α)×DBm)が生成される。適合データベース算出器120ではデータD2と混合データベースDBnm(α)を比較し、データD2と誤差が最も小さいデータベース番号nとmの組み合わせ、及び混合率αを決定する。
【0130】
決定した混合データベースDBnm(α)は波形パターンデータベース122に供給され、波形比較器102では混合データベースDBnm(α)を含む波形パターンデータベース122のデータベースを用いて現時刻の膜厚を決定する。また、現時刻で使用した混合データベースDBnm(α)はデータベース番号nとmの組み合わせ、及び混合率αと共に最適データベース決定器124に供給される。
【0131】
最適データベース決定器124における最適データベースの決定は、実施形態1と同様に測定スペクトルとの誤差が最小となるデータベースを選択してもよい。また、本実施形態では各時刻の測定スペクトルと近いスペクトルを有する混合データベースを生成しているため、各時刻の混合データベースを最適データベースと決定してもよい。
【0132】
決定した最適データベースに基づき最適膜厚・深さ決定器106から各時刻の膜厚が決定される。本実施形態では各時刻の混合データベースを最適データベースとして膜厚推定を実施した結果、実施形態1の
図6(b)と同様に、処理後の膜厚は全てのウエハで目標130nm近傍であり、膜厚推定誤差は実施形態1よりも低減された。
【0133】
本実施形態のように、膜厚推定対象のウエハのスペクトルに近いデータベースを適合データベース算出器120により生成することで、予め処理したウエハのデータをデータベースに設定するよりも高精度な膜厚推定が可能である。以上から、本実施形態の複数のデータベースを用いた処理量モニタにおいても、構造ばらつきが未知の場合においても正確な処理量の計測が可能であり、高精度な終点判定が実現できることが明らかである。
【0134】
上記の例では、ウエハの膜構造の特性の情報が未知の場合において、ウエハの処理中の処理量を検出する技術について説明した。次に、ウエハの処理対象膜以外の膜構造の特性についての情報が当該ウエハの処理の開始前に取得できる場合について説明する。本例では、この点以外の条件に関しては、実施形態1と同じ構成とした。
【0135】
本例は、処理対象膜以外の膜構造の特性の情報として、例えば各ウエハのマスク層の初期膜厚が処理開始前に得られている場合に、当該マスク層の初期膜厚さの情報を用いて波形パターンデータベース122に格納され処理量の検出に用いられるデータが決定される。まず、各ウエハのマスク層の初期の膜厚さの値の大きさに応じてウエハを序列化し、膜厚さが大きい順にウエハ番号が付与され複数のウエハ各々に
図6(a)における横軸と同様なウエハ番号が決定される。上記実施形態と同様に、マスク層の初期の膜厚さの最大、最小値およびこれらの間を実質的に等間隔に分割する値の各々に対応する番号のウエハの反射光のデータが波形パターンデータベース122のデータとして選択される。
【0136】
選択された複数のデータを用いて、対象のウエハを処理し処理中の処理量を検出し、その結果に基づいて終点判定を実施した結果、上記実施形態の
図6(b)と同様に処理後の膜厚は全てのウエハで目標130nm近傍であり、誤差も0.5nm以下であった。従って、本実施形態の複数のデータベースを用いた処理量モニタにおいても、構造ばらつきが未知の場合においても正確な処理量の計測が可能であり、高精度な終点判定が実現できることが明らかである。
【0137】
本実施形態のように、処理前に当該ウエハの情報、特に膜構造の特性に関する情報が取得できる場合の処理装置及び処理装置間の情報を管理する監視システムの構成の例を
図19に示す。
図19は、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置を監視するシステムの構成の概略を模式的に示すブロック図である。
【0138】
この図に示す例では、処理装置Aにおいて図示しない検出器により、加工状態1にあるウエハの処理前におけるマスクの初期の膜厚さを含む膜構造の寸法等の特性が検出され、当該検出された結果を示すデータが処理装置Aに供給され、当該データを用いて処理装置Aにおいてウエハが処理される。この加工状態1にあるウエハの膜構造の特性の情報や、処理中の処理対象の膜層の処理量を含む処理の状態の情報は、各処理装置に通信可能に接続されている監視システム、例えば監視装置AまたはBに供給されることにより、これらの監視装置と通信可能に接続された他の処理装置、例えば処理装置B,C,Dなどでも利用することが可能である。
【0139】
また、各処理装置における各ウエハの処理の条件などの情報も監視システムを経由して、続く処理装置で利用することが可能である。そのため、各処理装置では当該処理よりも前の処理や計測の情報に基づき、本例と同様なデータベースの選択が可能であり、各処理装置で当該ウエハの加工状態の情報を利用したデータベースの選択などを実施することにより、高精度な加工を実現することが可能となる。
【0140】
次に、処理中のウエハの反射光を検出するウエハ上の位置や範囲が変動する場合に処理量の検出に用いる反射光のデータを選択する例を説明する。この点以外の条件に関しては、
図1乃至15に示す実施形態または変形例と同じ構成とした。
【0141】
図16は、
図1に示す実施形態のさらに別の変形例に係るプラズマ処理装置が
図2に示す膜構造を備えた複数のウエハに対してエッチング処理を行う際のウエハからの反射光を検出するウエハ表面の位置を模式的に示す上面図である。特に、本図は異なる2つのプラズマ処理装置がウエハ上の反射光を検出する位置を1つの仮想のウエハ上に示したものである。
【0142】
本例のように複数のプラズマ処理装置の各々で反射光を検出する位置や検出する波長や光強度の範囲が異なる場合には、検出されるマスクの初期の膜厚さは
図2(b)に示すようなばらつきが生じる虞があり、このばらつきにより各装置におけるエッチング対象膜の膜厚さとこれからの反射光のスペクトルとの相関が変化する。また、反射光のスペクトルの波長や強度の範囲が異なることで、検出可能な範囲内に入る
図2(a)に示すパターンの割合、その他パターンの割合が変化するため、エッチング対象膜の膜厚と反射光のスペクトルとの関係がウエハによって変動する虞がある。
【0143】
発明者らは、
図1に示す実施形態に係るプラズマ処理装置と同等の構成を備え且つ各々で反射光を検出する位置が異なる10台のプラズマ処理装置において、実施形態と同様に、各々のプラズマ処理装置が予め処理した複数のウエハ各々の処理中に得られた反射光のスペクトルのデータに対し残り膜厚さの対応付け、残り膜厚さの範囲の決定、スペクトルデータの補間処理を行い、複数のウエハのもので同じ残り膜厚さに対応する反射光のスペクトルのデータを抽出した。抽出したデータを用いて実施形態と同様な方法で各プラズマ処理装置が処理したウエハのスペクトルの誤差量を算出し、プラズマ処理装置の識別用の番号ごとに当該誤差量との関係をプロットした結果を
図17に示す。
【0144】
図17は、
図1に示す実施形態のさらに別の変形例に係るプラズマ処理装置複数が
図2に示す膜構造を備えた複数のウエハ各々にエッチング処理を行って、処理中に得られたウエハ表面の膜構造からの反射光の光の強度のデータ複数の各々を用いて検出した他のウエハの所定の残り膜厚さの誤差の総和を複数のプラズマ処理装置毎に示したグラフである。誤差の総和の値は各プラズマ処理装置で異なっており、同一の残り膜厚さに対応する反射光スペクトルが装置毎に異なっていることが分かる。本例では、このような誤差量の最大値および最小値並びにその中間の値に対応するプラズマ処理装置のウエハの反射光のデータが、波形パターンデータベース122に格納され処理量の検出に用いられるデータとして選択された。
【0145】
選択した複数のデータを用いて、任意のウエハの処理中の複数のサンプリング時刻での処理の量を検出し、検出結果を用いて終点判定を実施した結果、実施形態の
図6(b)と同様に処理後の膜厚は全てのウエハで目標130nm近傍であり、誤差も0.5nm以下であった。従って、装置間において膜厚とスペクトルの関係が異なる場合においても、本例において正確な処理量の計測が可能であり、高精度な終点判定が実現できることが明らかである。
【0146】
次に、ウエハ上の膜構造の処理対象の膜層と他の膜層の材料の選択比が変動する場合に、処理量の検出に用いる反射光のデータを選択する例を説明する。この点以外の条件に関しては、
図1乃至17に示す実施形態または変形例と同じ構成とした。
【0147】
本例においても、ウエハ上のエッチング対象の膜層を含む膜構造は
図2(a)に示されたものと同様であり、マスク層の初期の膜厚さは複数のウエハ間で実質的に同一である。一方、本例では、各ウエハの処理において、マスク層と処理対象の膜層との選択比が変動する。このため、各ウエハで処理対象の膜層の残り膜厚さが同じとき、マスク層の削れ量がこれらウエハの間で異なって各ウエハのマスクの残り膜厚さが異なる場合がある。この場合には、複数のウエハで処理対象の膜層の残り膜厚さが同じであってもこれらウエハ表面からの反射光のスペクトルのデータは異なるものとなり、上記実施形態におけるマスク層の初期の膜厚さに変動が有る場合と同様な課題が生じる。
【0148】
本例では、
図1の実施形態と同様に予め処理された複数のウエハ各々の処理中に得られた反射光のスペクトルのデータについて、残り膜厚さの対応付け、膜厚さ範囲の決定、スペクトルデータの補間処理を行い、複数のウエハ各々の処理中のデータから同一の残り膜厚さのスペクトルのデータを抽出した。抽出したスペクトルのデータについて全てのウエハの平均との誤差の値を算出し、算出した誤差と各ウエハのマスクの膜厚さとを対応付けた結果、
図5(c)と同様に誤差とマスクの残り膜厚さは高い相関が得られた。誤差量に基づきウエハを並び替えて序列化して、並び替えた結果に基づき実施形態と同様に複数のウエハに対応する反射光のスペクトルのデータを波形パターンデータベース122のデータとして選択した。
【0149】
選択した複数のデータを用いて終点判定を実施した結果、実施形態の
図6(b)と同様に処理後の膜厚は全てのウエハで目標130nm近傍であり、誤差も0.5nm以下であった。従って、装置間において膜厚とスペクトルの関係が異なる場合においても、本例において正確な処理量の計測が可能であり、高精度な終点判定が実現できることが明らかである。
【0150】
次に、
図1(b)に示した最適データベース決定器124の最適データベース決定に検出した残り膜厚さの時間推移を用いた例について説明する。この点以外の条件に関しては、実施形態1と同じ構成とした。
【0151】
図1に示す膜厚・深さ算出部30においてデータベースを用いて検出されるエッチング中の各サンプリング時刻の残り膜厚さの時間変化は、例えば
図18のデータ1および2となる。
図18は、
図1に示す実施形態のさらに別の変形例に係るプラズマ処理装置が
図2に示す膜構造を備えたウエハをエッチングする処理中にウエハからの反射光を用いて検出したウエハ上の処理対象の膜層の残り膜厚の時間の経過に伴う変化の例を示すグラフである。本例では、各データで示される検出した残り膜厚さと処理中の時刻との間の一次直線的に示される相関性に基づいて残り膜膜厚さを推定する。
【0152】
例えば、処理中の各サンプリング時刻において、当該時刻までの処理中の過去の複数の時刻に検出された複数の残り膜さの値と当該過去の時刻とから相関係数を算出し、相関係数が大きいデータを最適データベースのデータとして選択する。例えば、
図18に示した2つのデータ1,2に示されるような実質的に一次直線として表され得る相互の関係が得られた場合では、データ1の相関係数の絶対値は0.99であるが、データ2の相関係数の絶対値は0.95である。したがって、本例では相関係数の大きいデータ1を最適データベースのデータとして選択する。
【0153】
このように最適データベースのデータとして選択された反射光のスペクトルのデータを用いて、任意の処理中の複数のサンプリング時刻で処理の量を検出しその結果を用いて終点判定を実施した結果、実施形態の
図6(b)と同様に処理後の膜厚は全てのウエハで目標130nm近傍であり、誤差も0.5nm以下であった。従って、本例においても、構造ばらつきが未知の場合においても正確な処理量の計測が可能であり、高精度な終点判定が実現できることが明らかである。
【符号の説明】
【0154】
10…処理室
12…プラズマ
14…試料台
16…処理対象
18…光源部
20…導入レンズ
22…照射光
24…反射光
26…検出レンズ
28…検出部
30…膜厚・深さ算出部
40…制御部
50…光学系
60…データベース選択部
100…デジタル信号処理部
102…波形比較器
104…膜厚・深さ記憶部
106…最適膜厚・深さ決定器
120…適合データベース算出器
122…波形パターンデータベース
124…最適データベース決定器
D1…検出部から供給される時系列データ
D2…デジタル信号処理部から供給される時系列データ
D3…波形比較器から供給される膜厚・深さデータ
D4…膜厚・深さ記憶部から供給される膜厚・深さデータ