(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】試験プローブ・チップ
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20230331BHJP
H01R 24/40 20110101ALI20230331BHJP
H01R 13/646 20110101ALI20230331BHJP
【FI】
G01R1/067 J
H01R24/40
H01R13/646
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018091711
(22)【出願日】2018-05-10
【審査請求日】2021-04-22
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイ・メンデ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ティ・エンクイスト
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・エイ・ブーマン
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-213934(JP,A)
【文献】特開2015-179029(JP,A)
【文献】特開平11-326394(JP,A)
【文献】米国特許第05218293(US,A)
【文献】特開平10-038914(JP,A)
【文献】米国特許第06956362(US,B1)
【文献】特開2002-116223(JP,A)
【文献】特開平10-213593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
H01R 24/40
H01R 13/646
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動試験プローブ・チップであって、
信号ピンを受ける凹部を有し、
上記差動試験プローブ・チップの近接端において導電性材料から形成されるソケットと、
該ソケット
の近接端から遠位端までの周りを囲む導電性材料の基準胴体と、
上記
差動試験プローブ・チップの近接端において
上記基準胴体の周りを囲む非導電性材料の絶縁スペーサ要素と
を具え、
該絶縁スペーサ要素が、
上記信号ピンを上記ソケットの中で受けるための信号ポートと、
基準ピンを受けて、該基準ピンの上記基準胴体の近接端との電気的コミュニケーションを維持する基準ポートと
を有する差動試験プローブ・チップ。
【請求項2】
上記絶縁スペーサ要素
の近接壁が、被試験デバイス(DUT)の表面に接し
ているときに、上記信号ピン及び上記基準ピンを
上記差動試験プローブ・チップ中に受け入れるように
上記絶縁スペーサ要素が形作られる請求項1の差動試験プローブ・チップ。
【請求項3】
上記絶縁スペーサ要素は、上記基準ポートの周りを囲んで、上記基準ピン、
上記基準胴体、
上記信号ピン及び
上記ソケットを隣接する被試験デバイス(DUT)のピンから電気的にシールドする請求項1の差動試験プローブ・チップ。
【請求項4】
上記ソケット
の上記近接端は、上記絶縁スペーサ要素
に固定され、上記
差動試験プローブ・チップが、上記ソケットの上記遠位端に直接取り付けられて電気的にコミュニケーションするアッテネータを更に具える請求項1の差動試験プローブ・チップ。
【請求項5】
上記基準ポート内に位置する接点要素を更に具え、該接点要素は、上記基準ピンを上記基準胴体と電気的コミュニケーションをする状態で解放可能に維持する請求項1の差動試験プローブ・チップ。
【請求項6】
試験プローブ・チップであって、
上記試験プローブ・チップの近接端
にあって、遠位端と
、信号ピンを受ける凹部を伴う近接端とを有する
導電性材料のソケットと、
遠位端と
、上記ソケットの上記遠位端に直接取り付けられると共に電気的コミュニケーションをする近接端とを有するアッテネータと、
上記
試験プローブ・チップの遠位端
にあって、上記アッテネータの上記遠位端と電気的コミュニケーションをする
同軸ケーブルと
、
上記ソケットの上記近接端から上記遠位端までの周りを囲む導電性材料の基準胴体と、
上記試験プローブ・チップの近接端において上記基準胴体の周りを囲む絶縁スペーサ要素と
を具える試験プローブ・チップ。
【請求項7】
上記絶縁スペーサ要素が、上記信号ピンを上記ソケット内で受ける信号ポートを有する請求項6の試験プローブ・チップ。
【請求項8】
上記絶縁スペーサ要素は、被試験デバイス(DUT)の表面に接し
ているときに、上記信号ピンを
上記試験プローブ・チップ中に受け入れるように形作られる請求項
6の試験プローブ・チップ。
【請求項9】
上記基準胴体が、更に、上記アッテネータ及び上記ケーブルの近接端の周りを囲
む請求項
6の試験プローブ・チップ。
【請求項10】
上記絶縁スペーサ要素が、基準ピンを受けて、上記基準胴体の近接端と電気的コミュニケーションをする状態で上記基準ピンを維持する基準ポートを更に有する請求項
6の試験プローブ・チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験測定プローブの態様に関する機構に関し、特に、被試験デバイス(DUT)に接続するシールドされた試験プローブ・チップに関する。
【背景技術】
【0002】
試験測定システム(例えば、オシロスコープ)は、例えば、DUT(被試験デバイス)からの試験信号を受けるように設計される。いくつかの例示的な回路網では、プローブがDUT上の信号ピンと係合され、その試験信号を試験測定システムへ電気的に伝送するのに利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プローブの複数の構成要素間の寄生容量は、プローブの周波数応答を変更することがあり、これによって、プローブを横断する試験信号を変化させることがある。加えて、隣接するDUTピン間で電流が誘導されることがある。こうした誘導電流は、DUTに最初は存在しておらず、よって、試験信号に悪い影響を与えるノイズである。また、プローブは、露出したワイヤ、クリップなどによってピンに取り付けられることがある。こうしたコンポーネントは、誘導電流の量を増加させることがあり、また、誘導電流の量に変動をもたらすことがある。これらコンポーネントは、試験回路網に一貫性のない信号接続を加えることがあり、よって、試験信号中に対応するノイズを追加することがある。こうした電気的なノイズは、プローブ・システムの性能を制限する要因となってきたが、光学的アイソレーション機能があって高分解能の最新の試験システムは、より大きな電流及びノイズを試験システムに誘導することがある、周囲により大きな信号がある環境で使用されることがある。従って、プローブ・ノイズは、試験測定システムの試験結果に顕著な差を生じさせることがある。
【0005】
本開示の実施例は、これら及び他の課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下では、本願で開示される技術の説明に有益な実施例が提示される。本発明の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0007】
実施例1としては、差動試験プローブ・チップがあり、信号ピンを受ける凹部を有し、プローブ・チップの近接端において導電性材料から形成されるソケットと、該ソケットと隣接する導電性材料の基準胴体と、上記プローブ・チップの近接端において基準胴体の周りを囲む非導電性材料の絶縁スペーサ要素とを具え、該絶縁スペーサ要素が、上記信号ピンを上記ソケットの中で受けるための信号ポートと、基準ピンを受けて、該基準ピンの上記基準胴体の近接端との電気的コミュニケーションを維持する基準ポートとを有している。
【0008】
実施例2としては、実施例1の差動試験プローブ・チップがあり、このとき、上記絶縁スペーサ要素は、被試験デバイス(DUT)の表面に接しながら、上記信号ピン及び上記基準ピンを試験プローブ・チップ中に受け入れるように形作られる。
【0009】
実施例3としては、実施例2の差動試験プローブ・チップがあり、このとき、上記DUTの表面は、ピン・ヘッダ又は回路基板である。
【0010】
実施例4としては、実施例1~3のいずれかの差動試験プローブ・チップがあり、このとき、絶縁スペーサ要素は、上記ソケット及び上記基準胴体の間に広がっている。
【0011】
実施例5としては、実施例1~4のいずれかの差動試験プローブ・チップがあり、このとき、上記絶縁スペーサ要素は、上記基準ポートの周りを囲んで、上記基準ピン、基準胴体、信号ピン及びソケットを隣接する被試験デバイス(DUT)のピンから電気的にシールドする。
【0012】
実施例6としては、実施例1~5のいずれかの差動試験プローブ・チップがあり、このとき、上記ソケットには、遠位端と、絶縁スペーサ要素に取り付けられた近接端とがあり、上記試験プローブ・チップが、上記ソケットの上記遠位端に直接取り付けられて電気的にコミュニケーションするアッテネータを更に具えている。
【0013】
実施例7としては、実施例1~6のいずれかの差動試験プローブ・チップがあり、このとき、上記基準胴体は、上記ソケットに取り付けられた上記アッテネータの周りを囲み、上記基準胴体は、非導電性材料によって上記アッテネータから分離される。
【0014】
実施例8としては、実施例1~7のいずれかの差動試験プローブ・チップがあり、上記基準ポート内に位置する接点(contact:コンタクト)要素を更に具え、該接点要素は、上記基準ピンを上記基準胴体と電気的コミュニケーションをする状態で解放可能(releasably)に維持する。
【0015】
実施例9としては、実施例8のいずれかの差動試験プローブ・チップがあり、このとき、上記接点要素は、上記基準胴体と電気的コミュニケーションをする導電性材料のメカ的クリップである。
【0016】
実施例10としては、実施例8~9のいずれかの差動試験プローブ・チップがあり、このとき、上記絶縁スペーサ要素には、上記基準ポートに隣接する基準側壁があり、該基準側壁には、上記基準ピンを解放するときに、接点要素の動きをサポートする形状の接点(contact:コンタクト)開口がある。
【0017】
実施例11としては、試験プローブ・チップがあり、プローブ・チップの近接端にある導電性材料のソケットであって、遠位端と信号ピンを受ける凹部を伴う近接端とを有する上記ソケットと、遠位端と上記ソケットの上記遠位端に直接取り付けられると共に電気的コミュニケーションをする近接端とを有するアッテネータと、上記プローブ・チップの遠位端にあるケーブルであって、上記アッテネータの上記遠位端と電気的コミュニケーションをする上記ケーブルとを具えている。
【0018】
実施例12としては、実施例11の試験プローブ・チップがあり、上記プローブ・チップの上記近接端において上記ソケットの周りを囲む非導電性材料の絶縁スペーサ要素を更に具え、該絶縁スペーサ要素が、上記信号ピンを上記ソケット内で受ける信号ポートを有している。
【0019】
実施例13としては、実施例12の試験プローブ・チップがあり、このとき、上記絶縁スペーサ要素は、被試験デバイス(DUT)の表面に接しながら、上記信号ピンを試験プローブ・チップ中に受け入れるように形作られる。
【0020】
実施例14としては、実施例11~13のいずれかの試験プローブ・チップがあり、上記ソケット、上記アッテネータ及び上記ケーブルの近接端の周りを囲む導電性材料の基準胴体を更に具えている。
【0021】
実施例15としては、実施例12~14のいずれかの試験プローブ・チップがあり、このとき、上記絶縁スペーサ要素が、基準ピンを受けて、上記基準胴体の近接端と電気的コミュニケーションをする状態で上記基準ピンを維持する基準ポートを更に有している。
【0022】
実施例16としては、実施例12~15のいずれかの試験プローブ・チップがあり、このとき、上記絶縁スペーサ要素は、隣接するDUTピン、上記基準ピン及び上記信号ピンの間の電気的コミュニケーションを緩和する。
【0023】
実施例17としては、実施例12~16のいずれかの試験プローブ・チップがあり、このとき、上記絶縁スペーサ要素は、隣接するDUTピン、上記ソケット及び上記基準胴体間の電気的コミュニケーションを緩和する。
【0024】
実施例18としては、実施例11~17のいずれかの試験プローブ・チップがあり、基準ポート内に位置する接点要素を更に具え、該接点要素は、上記基準ピンを上記基準胴体と電気的コミュニケーションをする状態で解放可能に維持する。
【0025】
実施例19としては、実施例18の試験プローブ・チップがあり、このとき、上記接点要素は、上記基準胴体と電気的コミュニケーションをする導電性材料のメカ的クリップである。
【0026】
実施例20としては、実施例11~19のいずれかの試験プローブ・チップがあり、このとき、上記信号ポート及び上記基準ポート間の距離は、上記DUTのピン・ピッチに基づいて選択される。
【0027】
本開示の実施形態の態様、特徴及び効果は、添付の図面を参照し、以下の実施形態の説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、例示的なシールド・プローブ・チップの切断側面図である。
【
図2】
図2は、DUTの回路基板上の差動ピンに係合された例示的なシールド・プローブ・チップの切断側面図である。
【
図3】
図3は、DUTの回路基板上のピンに係合された例示的なシールド・プローブ・チップの切断等角図である。
【
図4】
図4は、DUTの回路基板上の差動ピンに係合された例示的なシールド・プローブ・チップの等角側面図である。
【
図5】
図5は、ヘッダのピン及び直接半田付けされたピンに係合された例示的なシールド・プローブ・チップの等角側面図である。
【
図6】
図6は、例示的なシールド・プローブ・チップの等角底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
正方形ピン(Square pin)は、DUT(被試験デバイス)から試験信号を得るのに利用されることがある。DUTに接続する手法の1つでは、DUTに半田付けされた正方形ピンに接続された露出したリード線を利用する。これらリード線には、基準又は差動信号をコモン・モード信号から絶縁する機構はない。加えて、2重リード線の制御できないインピーダンスは、システムの周波数応答に悪い影響を与え、帯域幅の損失、異常の増加につながる。DUT上にマウントされた差動ピンの1対に結合し、こうしたピンを同軸の信号アクイジション(取込み)システムに接続し、このアクイジション・システムが、周波数応答を保持し、コモン・モード干渉に対するシールドを提供し、緩やかな動きと、高い差動定格電圧を実現するのに好ましいクリアランス空間(clearance space)を提供するような機構は、殆どないか、あってもごくわずかである。言い換えると、ある試験システムでは、試験設定において、厳しい制約があることがある。例えば、試験システムの中には、差動入力電圧レンジを1キロ・ボルト(kV)よりも大きく広げるものがある。従って、プローブ・チップの構造には、高い電圧を実現するために緩やかな動きとクリアランス空間を提供するものを利用することがある。この構造は、十分なアイソレーションを提供し、1ギガ・ヘルツ(GHz)より高い信号速度をサポートできる。
【0030】
後述のように、所定間隔で2つの正方形(又は丸形)ピンに係合し、対応する信号を同軸インタフェースに移行させるプローブ・チップを作ることによって、開示される機構は、差動信号を保護(preserve)する一方で、差動信号をコモン・モード干渉からシールドする。このプローブ・チップは、上述の課題にも取り組んでいる。プローブ・チップ本体の構造は、さもなければ信号の品位(integrity:インテグリティ)阻害するであろうコモン・モード干渉からの高いアイソレーションを提供する。同軸インタフェースと、プローブ・チップからセンサ・ヘッドまでのケーブル配線は、DUTからセンサ・ヘッドまで差動信号を保護(preserve:保全)する。プローブ・チップは、複数のピンに対して挿入するように設計される。プローブ・チップは、次いで、回路中に残されてままで回路は通電され、これにより、結果として、プローブ・チップを試験ポイント上に保持する必要が排除される。これは、ショックの危険を低減でき、その領域に危険な電圧が存在する場合には重要であろう。
【0031】
本願では、プローブによって試験信号に加えられるノイズを低減するよう設計されたシールド・プローブ・チップ・インタフェースが開示される。シールド・プローブ・チップは、DUT上のピンを介して差動信号を試験するのに利用でき、差動信号は、試験信号と対応する基準信号を含んでいる。プローブ・チップには、信号ピン用の信号ポートと基準ピン用の基準ポートとを有する絶縁スペーサ要素がある。係合すると、絶縁スペーサ要素は、回路基板やピン・ヘッダに接し、これによって、これらピンは、互いに又は隣接ピンからの電気的干渉からシールドされる。基準ポートには、クリップのような導電性材料の接点(contact:コンタクト)要素もあって良い。この接点要素は、プローブ・チップ内において、基準ピンを基準胴体に直接係合させる。基準ピン及び基準胴体間の、こうした直接の係合は、一貫性のある測定をサポートし、基準パス中のプローブ・チップのインピーダンスを低減する。これは、結果として、基準信号について、測定の精度と試験信号の伝送品質が夫々向上する。更に、試験プローブが、試験信号パスに沿った容量性負荷を最小化するアッテネータを有していても良い。開示されるプローブ・チップは、信号ピンを受けるソケットと、このソケットに直接接続されるアッテネータを有していても良い。アッテネータをソケットに直接接続することによって、信号パスに沿ったインダクタンス及びキャパシタンスが低減される。よって、試験信号パスも、より正確な試験信号を提供する。試験信号及び基準信号の両方の精度が向上することによって、結果としてノイズが低減され、信号対ノイズ比(SNR)、よって、差動信号の信号品質は改善される。
【0032】
図1は、例示的なシールド・プローブ・チップ100の切断側面図である。説明を明確にするため、シールド・プローブ・チップ100及び対応するコンポーネントは、近接端及び遠位端の観点から説明する。本願で用いるように、近接は、係合したときに、コンポーネントのDUT回路基板に最も近い部分を表し、遠位は、係合したときに、コンポーネントのDUT回路基板から最も遠い部分を表す。よって、プローブ・チップ100には、近接端101と遠位端102がある。プローブ・チップ100は、差動信号その他の信号対を受けるように設計される。よって、プローブ・チップ100には、試験信号用の信号パスと、基準信号用の基準パスがある。差動信号は、試験信号の値と基準信号の値の間(例えば、正電圧と負電圧の間)の差である。信号パスには、ソケット110、アッテネータ112、信号カプラ114及びケーブル120がある。基準パスには、接点要素136、基準胴体(reference body)132、基準カプラ134及びケーブル120がある。プローブ・チップ100には、また、信号ポート141及び基準ポート142を有する絶縁スペーサ要素140もある。これら及び他の要素は、以下で更に詳細に説明する。
【0033】
ソケット110は、プローブ・チップ100の近接端101に、導電性材料から形成されるコンポーネントである。ソケット110は、DUTからの信号ピンを受けることができ、信号パスに沿って信号ピンからの試験信号を電気的に伝送できる任意の導電性デバイスである。言い換えると、ソケット110は、DUTを離れた後に、差動信号用の中心コンタクトとして機能しつつ、少なくと一部分は絶縁スペーサ要素140を原因とするコモン・モード放射からの高いアイソレーションを提供する。ソケット110には、信号ピンを受けて、プローブ・チップ100が係合しているときに、プローブ・チップ100の他のコンポーネントと電気的な伝導をするように信号ピンを保持する凹部111がある。凹部111は、絶縁スペーサ要素140全体を通過して信号ピンの長さを受けるのに十分な深さを有する大きさとしても良く、結果として、絶縁スペーサ要素140がDUT上の回路基板又はヘッダと隣接し、信号ピンを支持する。
【0034】
ソケット110の遠位端は、アッテネータ112と電気的に結合される。試験信号が試験システムへ送られるとき、電流は、プローブ100を横断して取り出される。こうした電流をDUTから引き出すと、DUTの電気的な状態を変化させる。これは、信号負荷として知られる。アッテネータ112は、インピーダンスを提供する任意の信号コンポーネントであり、よって、電流の引き込みと対応する信号負荷を低減する。アッテネータ112の近接端は、ソケット110との電気的な伝導を維持するために、ソケット110の遠位端に直接付けても良い。電気的伝導は、本願で用いるように、対応するコンポーネント間を電荷が流れるパスを提供する電気的な伝導性の接触を表す。アッテネータ112は、また、アッテネータ112の近接端や遠位端にエラストマがあっても良く、エラストマを介して直接付けられても良い(例えば、ワイヤ/ケーブルを介在することなしに)。エラストマは、導電性であり、製造中、結合されるコンポーネントに対してアッテネータを力で押しつけることが可能になる。アッテネータ112は、アッテネータ112の近接端とソケット110の遠位端の間にインピーダンスを加える。アッテネータ112をソケット110へ直接接続することによって容量が低減されるが、これは、信号パスに沿ったプローブ・チップ100の周波数応答を改善できる。更に、アッテネータ112をソケット110へ直接接続すると、制御できないインピーダンスが減少し、結果として、プローブ・チップ100のインピーダンスが制御しやすくなる。アッテネータ112は、非導電性材料の絶縁部材113に囲まれている。絶縁部材113は、基準胴体132からアッテネータ112を絶縁し、対応する短絡を生じさせる。
【0035】
信号カプラ114は、プローブ・チップ100の遠位端でケーブル120を受けて、その近接端で、アッテネータ112に対してケーブル120のコア(中心)を保持し、アッテネータ112と電気的にコミュニケーション(伝達、通信)する。信号カプラ114は、同軸ケーブル120を通じて差動信号を伝送する無線周波数(RF)コネクタとして機能できる。信号カプラ114は、導電性材料を含み、ケーブル120のコアの導電性の表面積を拡大する効果がある。これは、結果として、ケーブル120のコアとアッテネータ112の間の伝導性を増加させる。ケーブル120には、電気的に試験信号を伝送する内部コアと、電気的に基準信号(例えば、グラウンド)を伝送する外部導電性シールドとがある。図示するように、ケーブル120のコアの近接端は、信号カプラ114を通して挿入されて、アッテネータ112の遠位端に付けられる。よって、ケーブル120は、試験のための試験測定システム(例えば、オシロスコープ)へ向けて、そのコアを通して試験信号を伝送し、外部導電性シールドに沿って基準信号を伝送する。
【0036】
基準パスは、基準胴体132を通過して伸びており、これは、シールドとも呼ばれることがある。基準胴体132は、導電性材料から形成される。基準胴体132は、基準ピンからの基準信号をケーブル120へ向けて伝送できる任意のコンポーネントである。図示のように、基準胴体132は、プローブ・チップ100の近接端101で、ソケット110の周りを囲んでも良い。基準胴体132は、ソケット110に付けられたアッテネータ112の周りも囲んでも良い。いくつかの実施例では、基準胴体132は、ケーブル120の近接端の周りも囲むことがある。基準胴体132は、後述のように、絶縁スペーサ要素140によって、ソケット110から分離されても良い。基準胴体132は、また、アッテネータ112及び信号カプラ114からも非導電性材料(例えば、絶縁部材113)によって分離されている。係合すると、基準ピンが、基準ポート142を介して基準胴体132と隣接する。基準信号は、基準胴体132に沿って基準カプラ134へと伝送される。非導電性材料によって、基準信号が信号パスへのアーク放電を生じるのが防止される。
【0037】
基準カプラ134は、導電性材料から形成され、ケーブル120の近接端の外部導電性シールドへ基準信号を伝送する。基準カプラ134は、基準胴体132の遠位端及びケーブル120の近接端に対して、半田付けされても良いし、さもなければ、電気的及び物理的に結合されても良い。基準カプラ134は、また、信号カプラ114及びアッテネータ112に対して物理的な圧力を加え、こうしたコンポーネントとソケット110との間の電気的接続を維持する。基準カプラ134は、非導電性材料のプラグ146によって、信号カプラ114から分離されて、基準及び信号パス間でアーク放電が生じるのを防止する。プラグ146は、また、製造中(例えば、基準カプラ134が半田付けされるとき)、これらコンポーネントの位置とアッテネータ112に対する圧力を維持する。
【0038】
絶縁スペーサ要素140は、プローブ・チップ100の近接端101に配置される。絶縁スペーサ要素140は、非導電性材料から形成され、ピン間の緩やかな動きと間隔を維持するように形作られる。絶縁スペーサ要素140は、プローブ・チップ100の近接端101で基準胴体132の周りを囲む。絶縁スペーサ要素140は、また、ソケット110の近接端に付けられる。絶縁スペーサ要素140は、また、プローブ・チップ100の近接端で、ソケット110の周りを囲んでも良い。よって、絶縁スペーサ要素140は、ソケット110及び基準胴体132の間に広がっていても良く、これは、基準胴体132からソケット110を電気的に絶縁し、その逆も同様である。絶縁スペーサ要素140には、信号ピンをソケット110中で受けるための信号ポート141がある。具体的には、信号ポート141は、絶縁スペーサ要素140中の開口部であり、これは、形状、サイズ及び位置がソケット110の近接端の凹部111と整合する。絶縁スペーサ要素140は、ソケット110から下方に突き出るように描かれているが、いくつかの実施例では、ソケット110は、回路基板又はピン・ヘッダに直接隣接しても良いことに留意されたい。更に、絶縁スペーサ要素140には、基準ピンを受け、基準ピンの基準胴体132の近接端との電気的コミュニケーションを維持する基準ポート142がある。言い換えると、基準ポート142は、基準胴体132の側壁と整合する絶縁スペーサ要素140の開口である。
【0039】
動作時、絶縁スペーサ要素140は、DUT表面に接しているときに、試験プローブ・チップ100中に信号ピン及び基準ピンを受けるように形作られる。言い換えると、絶縁スペーサ要素140は、絶縁スペーサ要素140の近接面が回路基板のピンを保持するヘッダに接触するまで、ピンの長さ方向にスライドできる。これにより、絶縁スペーサ要素140は、さもなければ、基準ピン、信号ピン又はこれらの両方に電流(例えば、ノイズ)を誘導するであろう他のDUTのピンに由来する電界から、信号ピンをアイソレーションできる。従って、絶縁スペーサ要素140の近接壁(例えば、これは、DUTに接する)は、基準及び高速試験信号の両方に関する2ピン接触係合面として機能する。
【0040】
プローブ・チップ100には、接点要素136もある。接点要素136は、基準ポート142中に配置される。接点要素136は、基準胴体132との電気的にコミュニケーションする基準ピンを解放可能に維持できる任意のコンポーネントである。例えば、接点要素136は、図示のように、基準胴体132との電気的にコミュニケーションする導電性材料のメカ的なクリップでも良い。しかし、本開示の範囲から離れることなく、他の接点要素136を使用しても良い。接点要素136は、接触前の状態で描かれ、よって、基準胴体132の方向へ内向きに押しつけるように示されている。
図2では、接点要素136が係合状態で描かれている。接点要素136は、基準ピン及び基準胴体132間の直接の確実な係合の維持を支援する。これは、結果として、基準ピン及び基準胴体132間に存在する電気的パスの一貫した安定性を確実なものにする。従って、接点要素136は、ユーザが一貫性のある繰り返し可能な測定を行うのを可能にする。接点要素136は、また、導電性でも良く、従って、基準ピン及び基準胴体132間の付加的なパスとして機能しても良い。このように、基準ピンを基準胴体132に対して維持することによって、基準パスにおけるプローブ・チップのインピーダンスは低減され、これは、基準信号の伝送品質が向上する結果となる。
【0041】
図2は、DUTの回路基板212上の差動ピンに係合された例示的なシールド・プローブ・チップ100の切断側面図である。DUTの回路基板212には、図示のように、複数ピンからなる配列があっても良い。これらピンは、いくつかの実施例では、回路基板212に直接半田付けされても良い。別の実施例では、これらピンは、ヘッダ210に装着されても良い。図示の実施例では、信号ピン201には試験信号があり、基準ピン202には基準信号がある。他の隣接するピン205には、試験対象の差動信号と関係のない他の信号があっても良い。図示のように、絶縁スペーサ要素140は、DUT表面、この場合、ヘッダ210に接しているときに、試験プローブ・チップ100中に信号ピン201及び基準ピン202を受けるように形作られる。
【0042】
具体的には、信号ピン201は、信号ポート141を介して、絶縁スペーサ要素140を通過し、ソケット110の中へとスライドしても良い。絶縁スペーサ要素140は、ヘッダ210と接し、これによって、信号ピン201及び隣接ピン205間の望ましくない電気的コミュニケーション/干渉を低減する。更に、基準ピン202が、基準ポート142を介して、絶縁スペーサ要素140を通過してスライドし、基準胴体132に対して押しつけられるようにしても良い。接点要素136は、基準ピン202が基準ポート142に入ることができるように動いても良く、そして、メカ的な圧力を利用して、基準ピン202及び基準胴体132間の接触を維持するようにしても良い。絶縁スペーサ要素140は、基準ポート142の周りを囲んでも良く、ヘッダ210と接しても良い。よって、絶縁スペーサ要素140は、隣接ピン205及び基準ピン202間の電気的接触も緩和する。絶縁スペーサ要素140は、隣接ピン205より上に広がり、ソケット110及び基準胴体132の近接端の周りを囲んでいるので、絶縁スペーサ要素140は、隣接ピン205、ソケット110及び基準胴体132間の電気的接触も緩和する。言い換えると、絶縁スペーサ要素140は、基準ピン202、基準胴体132、ソケット110及び信号ピン201を隣接ピン205から電気的に絶縁するよう設計されている。この構成は、隣接ピン205からの干渉を効果的に除去できる。
【0043】
絶縁スペーサ要素140の複数の側壁の厚さ及び間隔に加えて、信号ポート141及び基準ポート142の位置は、信号ピン201、基準ピン202及び複数の隣接ピン205の相対的な位置に依存して変更されても良い。例えば、信号ポート141及び基準ポート142間の距離は、DUTの複数のピンのピン・ピッチに基づいて選択される。図示の実施例では、ピン・ピッチは、0.100インチであり、これは、信号ピン201の中心と基準ピン202の中心との間の2.54ミリメータ(mm)の距離を表す。ピン・ピッチがもっと広い場合には、結果として、信号ポート141及び基準ポート142の間の間隔がもっと広くなる。更に、絶縁スペーサ要素140の側壁の幅を、ピン・ピッチに基づいて選択しても良い。図示のように、信号ポート141と、信号ポート141に隣接する絶縁スペーサ要素140の側壁との間の幅は、絶縁スペーサ要素140が隣接ピン205に対してメカ的な圧力を与えることがないように選択される。同様に、基準ポート142と、基準ポート142に隣接する絶縁スペーサ要素140の側壁との間の幅は、絶縁スペーサ要素140が隣接ピン205に対してメカ的な圧力を与えることがないように選択される。これは、隣接ピン205があっても、絶縁スペーサ要素140が、ヘッダ210に接するのを可能にする。
【0044】
図3は、DUTの回路基板212上のピンに係合された例示的なシールド・プローブ・チップ100の切断等角図である。具体的には、
図3は、異なる配置でピンに結合された同じプローブ・チップ100(又は、実質的に同様のプローブ・チップ100)を示す。図示するように、絶縁スペーサ要素140の形状によって、プローブ・チップ100が、3行のピン、図示のような2行のピン等の水平又は垂直方向で異なるピンへの結合が可能なる。更に、絶縁スペーサ要素140の形状は、プローブ・チップ100のピンへの取り付け/係合するときのガイド(guidance:案内、誘導)を提供する。加えて、絶縁スペーサ要素140がピンの周りにぴったり収まることで、信号ピンと基準ピンを関係のないピンから絶縁できる。
【0045】
図4は、DUTの回路基板212上の差動ピンに係合された例示的なシールド・プローブ・チップ100の等角側面図である。
図4に更に示すように、プローブ・チップ100は、複数の配置において、隣接ピン205(例えば、正方形又は丸形)の配列内にぴったりと収まりつつ、信号ピン及び基準ピンとだけ電気的接触を形成しても良い。
図4では、信号ピン及び基準ピンは、絶縁スペーサ要素140中に収納されているので、図示されていない。
【0046】
図5は、ヘッダ210のピン及び直接半田付けされたピン502に係合された例示的なシールド・プローブ・チップ100の等角側面図である。具体的には、
図5は、異なる配置でピンに結合された同じプローブ・チップ100(又は、実質的に同様のプローブ・チップ100)を示す。図示するように、回路基板212には、複数の基準ピン202、複数の信号ピン201及び複数の隣接ピン205を有するヘッダ210があっても良い。回路基板212には、また、直接半田付けされた複数のピン502があっても良く、これらは、ヘッダ210を介することなく回路基板212に直接取り付けられた任意の信号/基準ピンである。プローブ・チップ100は、こうした複数のピンのどれとでも係合して良い。プローブ・チップ100が直接半田付けされたピン502と係合する場合、絶縁スペーサ要素が接するDUTの面は、回路基板212である。プローブ・チップ100が、ヘッダ210に係合するピンと係合する場合、絶縁スペーサ要素が接するDUTの面は、ヘッダ210である。複数の直接半田付けされたピン502は、ヘッダ210にマウントされたピンよりも、若干良い性能を提供することがある。しかし、こうした差は、DUTの性質に依存し、プローブ・チップ100では制御できない。
【0047】
図6は、例示的なシールド・プローブ・チップ100の等角底面図である。絶縁スペーサ要素140には、夫々、信号ポート141に隣接する信号側壁と、基準ポート142に隣接する基準側壁644とがある。絶縁スペーサ要素140には、また、第1グリップ側壁及び第2グリップ側壁があっても良い。これら側壁の夫々は、隣接ピンに接していても良い。更に、基準側壁644には、接点(contact:コンタクト)開口643があっても良い。接点開口643は、基準ピンの解放(release:解除)又は係合の間の接点要素136の動きをサポートする形状をしている。例えば、接点要素136が図示するようなクリップなら、基準ピンを基準ポート142内に入れ込む場合には、接点要素136は、外側へ広がっても良い。接点要素136は、次いで、戻ろうとすることによって、メカ的な圧力を基準ピンに苦与えることができる。この機構によって、基準ピンが適切な位置に維持される。接点開口643は、そのクリップが広がったときに、接点要素136の近接部分が動く空間を提供する。
【0048】
本願発明の態様は、様々な変更及び代替形態で動作する。特定の態様は、図面に例として示されており、詳細に説明した。しかしながら、本願に開示された実施例は、説明を明確にする目的で提示されており、明示的に限定されない限り、開示される一般的概念の範囲を本願に記載の具体例に限定することを意図していない。このように、本開示は、添付の図面及び特許請求の範囲に照らして、記載された態様のすべての変更、均等物及び代替物をカバーすることを意図している。
【0049】
明細書における実施形態、態様、実施例などへの言及は、記載された項目が特定の特徴、構造又は特性を含み得ることを示す。しかしながら、開示される各態様は、そうした特定の特徴、構造又は特性を含んでいても良いし、必ずしも含んでいなくても良い。更に、このような言い回しは、特に明記しない限り、必ずしも同じ態様を指しているとは限らない。更に、特定の態様に関連して特定の特徴、構造又は特性が記載されている場合、そのような特徴、構造又は特性は、そのような特徴が他の開示された態様と明示的に関連して記載されているか否かに関わらず、そうした他の開示された態様と関連して使用しても良い。
【0050】
開示された主題の上述の実施例は、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0051】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例の状況において開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例の状況においても利用できる。
【0052】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0053】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0054】
100 シールド・プローブ・チップ
101 近接端
102 遠位端
110 ソケット
111 凹部
112 アッテネータ
114 信号カプラ
120 ケーブル
132 基準胴体
134 基準カプラ
136 接点要素
140 絶縁スペーサ要素
141 信号ポート
142 基準ポート
201 信号ピン
202 基準ピン
205 隣接ピン
210 ヘッダ
212 回路基板
502 直接半田付けされたピン
643 接点開口
644 基準側壁