(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】電磁界遮蔽板、その製造方法、電磁界遮蔽構造、および半導体製造環境
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
H05K9/00 W
H05K9/00 T
(21)【出願番号】P 2020566353
(86)(22)【出願日】2019-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2019000819
(87)【国際公開番号】W WO2020148796
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-05-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮野 一郎
(72)【発明者】
【氏名】小室 修
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正和
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真志
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-101598(JP,U)
【文献】特開2007-295557(JP,A)
【文献】特表2015-505166(JP,A)
【文献】特開平4-83396(JP,A)
【文献】特開2007-329150(JP,A)
【文献】実開昭58-96295(JP,U)
【文献】特開2007-299923(JP,A)
【文献】特開2000-328691(JP,A)
【文献】実開平6-2789(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0060131(US,A1)
【文献】特開平5-291779(JP,A)
【文献】特開2000-306971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーマロイの板材またはシートからなるパーマロイ層と、Fe-Si-B-Cu-Nb系アモルファスの板材またはシートからなるアモルファス層とを、重ねて構成される電磁界遮蔽板を含む第1遮蔽板と、
別の前記電磁界遮蔽板を含む第2遮蔽板と、
陵部接続部材と
を備える、電磁界遮蔽構造であって、
前記陵部接続部材は、少なくとも、パーマロイの板材またはシートからなる陵部パーマロイ層と、1.8mm~2.4mmの範囲内の厚さのオーステナイト系ステンレス材からなる陵部ステンレス層とを、重ねて構成されており、
前記陵部接続部材は、第1角度をなす陵を有し、前記陵の両側において雌ネジ要素が設けられ、
前記陵部接続部材の前記陵の片側の前記雌ネジ要素と、前記第1遮蔽板の少なくとも一部とが重なるように、前記雌ネジ要素を介して固定され、
前記陵部接続部材の前記陵の他方側の前記雌ネジ要素と、前記第2遮蔽板の少なくとも一部とが重なるように、前記雌ネジ要素を介して固定される、
電磁界遮蔽構造。
【請求項2】
パーマロイの板材またはシートからなるパーマロイ層と、Fe-Si-B-Cu-Nb系アモルファスの板材またはシートからなるアモルファス層とを、重ねて構成される電磁界遮蔽板を含む第1遮蔽板と、
別の前記電磁界遮蔽板を含む第2遮蔽板と、
雄ネジ要素が設けられた複数の第2固定部材と、
複数の雌ネジ要素が設けられたフレーム部材と、
座金と、
を備える、電磁界遮蔽構造であって、
前記パーマロイ層および前記アモルファス層には、それぞれ第2貫通穴部が設けられ、
前記第2貫通穴部の内径は、前記第2固定部材の頭部の外径よりも大きく、
前記座金の外径は、前記第2貫通穴部の内径より大きく、
前記座金の内径は、前記第2固定部材の頭部の外径より小さく、
前記座金は、前記第2貫通穴部において、前記アモルファス層に関して前記パーマロイ層とは反対側に配置され、
ある前記第2固定部材の前記雄ネジ要素は、前記フレーム部材のある前記雌ネジ要素と螺合するとともに、前記座金を前記第1遮蔽板の前記アモルファス層および前記第1遮蔽板の前記パーマロイ層に向けて締め付け固定することができ、
別の前記第2固定部材の前記雄ネジ要素は、前記フレーム部材の別の前記雌ネジ要素と螺合するとともに、前記座金を前記第2遮蔽板の前記アモルファス層および前記第2遮蔽板の前記パーマロイ層に向けて締め付け固定することができる、
電磁界遮蔽構造。
【請求項3】
パーマロイの板材またはシートからなるパーマロイ層と、Fe-Si-B-Cu-Nb系アモルファスの板材またはシートからなるアモルファス層とを、重ねて構成される電磁界遮蔽板を備える電磁界遮蔽構造であって、
前記電磁界遮蔽構造には、ウエハ搬送用の開口部が設けられ、
前記ウエハ搬送用の開口部には、金属製の通気性を有する網目状管部材が、前記開口部とウエハ投入および回収部とを接続するとともに前記電磁界遮蔽板に密着するよう装着されている、
電磁界遮蔽構造。
【請求項4】
第1遮蔽板と、
第2遮蔽板と、
陵部接続部材と
を備える、電磁界遮蔽構造であって、
前記第1遮蔽板および前記第2遮蔽板は、それぞれ電磁界遮蔽板を含み、前記電磁界遮蔽板は、軟磁性材料層と、Fe-Si-B-Cu-Nb系アモルファスの板材またはシートからなるアモルファス層とを、重ねて構成され、
前記陵部接続部材は磁性材からなる電磁界遮蔽部材であり、
前記陵部接続部材は陵を有し、
前記陵部接続部材の前記陵の片側の少なくとも一部と、前記第1遮蔽板の少なくとも一部とが、ボルトを介して重なるよう固定され、
前記陵部接続部材の前記陵の他方側の少なくとも一部と、前記第2遮蔽板の少なくとも一部とが、ボルトを介して重なるよう固定さ
れ、
前記第1遮蔽板および前記第2遮蔽板について、前記軟磁性材料層はパーマロイ層を含み、
雄ネジ要素が設けられた複数の第2固定部材と、
複数の雌ネジ要素が設けられたフレーム部材と、
座金と、
をさらに備え、
前記パーマロイ層および前記アモルファス層には、それぞれ第2貫通穴部が設けられ、
前記第2貫通穴部の内径は、前記第2固定部材の頭部の外径よりも大きく、
前記座金の外径は、前記第2貫通穴部の内径より大きく、
前記座金の内径は、前記第2固定部材の頭部の外径より小さく、
前記座金は、前記第2貫通穴部において、前記アモルファス層に関して前記パーマロイ層とは反対側に配置され、
ある前記第2固定部材の前記雄ネジ要素は、前記フレーム部材のある前記雌ネジ要素と螺合するとともに、前記座金を前記第1遮蔽板の前記アモルファス層および前記パーマロイ層に向けて締め付け固定することができ、
別の前記第2固定部材の前記雄ネジ要素は、前記フレーム部材の別の前記雌ネジ要素と螺合するとともに、前記座金を前記第2遮蔽板の前記アモルファス層および前記パーマロイ層に向けて締め付け固定することができる、
電磁界遮蔽構造。
【請求項5】
請求項
4に記載の電磁界遮蔽構造において、
各前記第2固定部材はカムレバーを備え、
各前記第2固定部材および前記座金は、前記カムレバーの回動動作に応じて前記座金の軸方向位置範囲が規制されるよう構成されている、
電磁界遮蔽構造。
【請求項6】
請求項
4に記載の電磁界遮蔽構造において、前記電磁界遮蔽構造は、
ある第3固定部材が前記第1遮蔽板の前記電磁界遮蔽板を前記フレーム部材に対して固定した状態において、前記第2貫通穴部の軸心が前記ある第2固定部材を通り、
別の第3固定部材が前記第2遮蔽板の前記電磁界遮蔽板を前記フレーム部材に対して固定した状態において、前記第2貫通穴部の軸心が前記別の第2固定部材を通るよう構成されている、電磁界遮蔽構造。
【請求項7】
第1遮蔽板と、
第2遮蔽板と、
陵部接続部材と
を備える、電磁界遮蔽構造であって、
前記第1遮蔽板および前記第2遮蔽板は、それぞれ電磁界遮蔽板を含み、前記電磁界遮蔽板は、軟磁性材料層と、Fe-Si-B-Cu-Nb系アモルファスの板材またはシートからなるアモルファス層とを、重ねて構成され、
前記陵部接続部材は磁性材からなる電磁界遮蔽部材であり、
前記陵部接続部材は陵を有し、
前記陵部接続部材の前記陵の片側の少なくとも一部と、前記第1遮蔽板の少なくとも一部とが、ボルトを介して重なるよう固定され、
前記陵部接続部材の前記陵の他方側の少なくとも一部と、前記第2遮蔽板の少なくとも一部とが、ボルトを介して重なるよう固定さ
れ、
前記電磁界遮蔽構造には、ウエハ搬送用の開口部が設けられ、
前記ウエハ搬送用の開口部には、金属製の通気性を有する網目状管部材が、前記開口部とウエハ投入および回収部とを接続するともに前記電磁界遮蔽板に密着するよう装着されている、
電磁界遮蔽構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電磁界遮蔽板、その製造方法、電磁界遮蔽構造、および半導体製造環境に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の工程品質管理には、計測・検査装置として、電子顕微鏡を応用したウエハ上の素子回路パターンの形状観察及び各種の寸法測定を行う測長SEMが広く利用されている。素子のより高い集積化に追従し、より微細な形状(配線の幅または直径が10nm~20nm前後)の観察と、実形状に対する高精度・高分解能の計測結果とを、再現性良く得ることが求められてきた。
【0003】
他方、近年の半導体製造では、回路や素子の寸法の微細化に伴う性能限界を回避して、さらなる集積度を達成する為に、半導体回路が形成された構成単位の層を、層間を導通する金属電極等を介して複数層積層する三次元的構造が採用されてきている。この構造の半導体製造ラインでは、CVD製膜装置、プラズマエッチャー、イオン打込み装置、高周波誘導加熱方式の膜質改善装置、ウエハ表面洗浄装置、さらには、エキシマレーザ光源を内蔵した露光装置や光学式検査装置が密接して設置された状況にある。測長SEMは、この様な製造ラインにおいて、形成された半導体回路の品質管理に供用される為に、周囲装置が発生する電磁界(AC磁場;交番電磁界、10Hzを超える周波数(電源周波数50Hz~60Hzを含む)で500nT~1μT前後。DC磁場;静磁界、10Hz未満の周波数で300nT~650nT前後)や、FA設備に使用される構内無線LAN(2.4GHz帯域)からの影響を受ける状態となる。電子線を指定範囲内で高速走査し、被観察物であるウエハ表面の細線及び穴といった回路要素の画像を実物に忠実に取得するには、装置外部の電磁界の影響を抑制する電磁界遮蔽板が必須となる。
【0004】
特許文献1では、非晶質材料を応用した板材を構成し、パーマロイやケイ素鋼板と比較して高性能なシールド室を構成する発明が示されている。特許文献2には、非晶質板材を取り扱いやすくし、形状の制約を低減した発明が示されている。特許文献3では、アモルファス磁性薄板と強磁性体薄板材とを複合金属板として、積層一体化した後、外部の電磁界を相殺した状況で焼鈍して構成する、磁場遮蔽材の発明が示されている。
【0005】
また、特許文献4~6には、アモルファス材にケイ素鋼板を重ねることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭62-221199号公報
【文献】特開平11-26981
【文献】特開平4-266092号公報
【文献】特開平7-231191号公報
【文献】特許第2837595号公報
【文献】特許第2606971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の電磁界遮蔽板において、比較的高周波の電磁界に対して高い遮蔽性能を得るためには、要求される材料の重量が大きくなるという問題があった。
【0008】
たとえば、半導体製造環境の電磁波による外乱を抑制する目的では、軟磁性体のPCパーマロイやミューメタル、さらには珪素鋼(電磁鋼)が電磁界遮蔽板の材料として多用されている。これらの材料を用いて静磁場から数十Hzの周波数帯域の比較的穏やかな交番磁場に関する遮蔽性能を得るには、厚さ1mm前後の材料を使用することが一般的であった。この為、横幅×奥行き×高さが、それぞれ数千mm規模の外形をもつ装置を想定すると、PCパーマロイ材を選択した場合にはその比重が約8.62である為、6面を囲む為の遮蔽板の重量が300kg~400kgとなる。装置自体の重量が1,500kg~2,500kgである場合、この4分の1から5分の1に相当する重量を、遮蔽材の重量により増加させていた。半導体製造環境の床面は、浮遊塵埃低減の為、穿孔された床板による、床面から床下への排気を伴ったグレーチング構造の場合が多く、耐荷重に制約がある為、装置重量の低減は重要な設計項目となっている。本発明が適用可能な測長SEM装置は、工程・品質管理に供用される為、一つの製造ラインに複数台の装置が隣接して設置される状況が多い為、装置の重量低減がより重要となる。
【0009】
PCパーマロイ材は、初透磁率が高く、保磁力が小さく(外部磁場の消失時、着磁・帯磁が発生しづらい)、電磁界遮蔽材として多用される。PCパーマロイ材は、重量比で75%~80%のニッケル元素を含有する。この為、ニッケル材の国際市場相場の影響を受けて、比較的大きな価格変動が発生する傾向があり、材料コストも比較的高い状況にある。
【0010】
パーマロイ材を用いた電磁界遮蔽材では、高い透磁率により磁束をパーマロイ材に集中させ、パーマロイ材で周囲を囲まれた空間内への磁束密度を低減させる原理を利用する。この為、静磁界から10Hzより低い周波数までの帯域の遮蔽に有効であっても、50Hz~60Hzの電源同期周波数から、それより高い周波数帯域のAC磁場(交番磁界)に対し遮蔽性能が低下する傾向があった。この為、より高周波数な帯域での電磁界の遮蔽の為に、導電性の高いアルミ材等をパーマロイ材のさらに外表面に装着して、アルミ材の導電性による静電遮蔽を利用することが併用されてきた。最外層に装着されたアルミ材の静電遮蔽効果により、MHz帯域電界の遮蔽が可能であっても、kHz帯域の電磁界に対しては、パーマロイ材の特性として、電磁界の表皮効果と材料中に生じる渦電流との悪影響により、素材重量および材料コストに見合った遮蔽性能が得られなかった。
【0011】
測長SEMの電子線走査速度は、単位時間あたりの処理数の増大化と、ウエハ上のより微細なパターンでの高精度な寸法計測を実現するSEM像の高分解能化(画素数の増大化)との為、より高速化しており、電源周波数の5倍から10倍、さらに高い周波数帯域の電磁界からの外乱影響を受け易い状況となっている。しかしながら、従来の遮蔽材では、前述のとおりに、充分な遮蔽効果が得られなかった。
【0012】
また、特許文献4および5に記載される技術では、補強材としてケイ素鋼板を用いているが、ケイ素鋼板では重量に対する遮蔽性能が制限される。たとえば、ケイ素鋼板の比透磁率は、パーマロイ材と比較して概ね1桁(約10倍)違うことから、同等の遮蔽性能を得るためには、パーマロイ材で構成した場合に比べて、板材厚さを増大させた設計となる。この為、重量軽減を優先してケイ素鋼板を設計した場合には、遮蔽性能が制限されてしまう。
【0013】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、比較的高周波の電磁界に対して高い遮蔽性能を得ながら、重量を軽くできる、電磁界遮蔽板、その製造方法、電磁界遮蔽構造、および半導体製造環境を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係る電磁界遮蔽板は、パーマロイの板材またはシートからなるパーマロイ層と、Fe-Si-B-Cu-Nb系アモルファスの板材またはシートからなるアモルファス層とを、重ねて構成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電磁界遮蔽板、その製造方法、電磁界遮蔽構造、および半導体製造環境によれば、比較的高周波の電磁界に対して高い遮蔽性能を得ながら、重量を軽くすることができる。
【0016】
より具体的な効果の例を以下に説明する。ただし、効果はこれらに限られず、また、以下の効果のいずれも得られない実施例も、本発明の範囲に含まれる場合がある。
【0017】
電磁界の遮蔽性能に関して、PCパーマロイ等のパーマロイを用いた電磁界遮蔽板では、50Hz未満の周波数帯域では、材料のもつ高い透磁率を利用して材料中へ磁束を集中させることができて、材料の厚さに応じて比較的効率良く遮蔽効果が得られていた。しかし、電源周波数(50Hz~60Hz)から500Hzまでの帯域や、kHzの帯域に関しては、遮蔽材の重量に対して、充分な遮蔽性能を得られていなかった。
【0018】
本発明の特定の実施例に係る積層構造では、アモルファス層での減衰遮蔽効果と、PCパーマロイ層およびアモルファス層の積層界面での反射効果による遮蔽効果と、PCパーマロイ層での磁束の集中効果とを併用出来る。このため、電源周波数(50Hz~60Hz)以上の周波数帯域において、PCパーマロイ材の素材厚さに応じて増加する渦電流や、高周波帯域での電磁界の表皮効果に起因した透磁率の減少を補完するので、より高い周波数の交番電磁界に対し、PCパーマロイ単層で構成した電磁界遮蔽板に比較して、遮蔽性能を向上することができる。
【0019】
また、アモルファス材との積層化により、遮蔽性能を確保した状態でPCパーマロイ層の板厚さを減少させることが出来る。PCパーマロイはニッケル含有量が大きい為に質量が大きいので、PCパーマロイ材の使用量を抑制できれば、遮蔽部材の重量を30~40%低減できる場合がある。
【0020】
また、パーマロイ材使用量の削減により、ニッケル材相場の価格変動の影響を低減でき、遮蔽材のコスト安定化と低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例1に係る電磁界遮蔽板を製造する方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図2】アモルファス層の端部からの発塵防止対策の例を示す図である。
【
図3】縁部周辺と固定穴の周囲に樹脂テープ素材による被覆層を設けたアモルファス層の例を示す図である。
【
図4】耐蝕アルミ板材層とアモルファス材層とパーマロイ材層3の三層からなる遮蔽板拡大断面図である。
【
図6】従来の電磁界遮蔽板の構成の例を示す図である。
【
図7】電磁界遮蔽板を備える電磁界遮蔽構造の例を示す図である。
【
図8】遮蔽モデルを用いた実験結果を示すグラフである。
【
図9】積層材料の積層固定に両面接着テープを用いる場合の構成の例を示す図である。
【
図10】比較例として、パーマロイ層を用いない場合の実験結果を示す図である。
【
図11】複数の電磁界遮蔽板の継ぎ合わせ構造の例を示す図である。
【
図12】開口部を備える電磁界遮蔽構造の例を示す図である。
【
図13】別の開口部を備える電磁界遮蔽構造の例を示す図である。
【
図14】
図13のハニカム材の構造をより具体的に示す図である。
【
図15】電磁界遮蔽構造にウエハ搬送用の開口部が設けられている場合の構造の例を示す図である。
【
図16】本発明の実施例2に係る陵部接続部材の構成の例を示す図である。
【
図17】本発明の実施例3に係る電磁界遮蔽板の構成の例を示す図である。
【
図18】本発明の実施例4に係る電磁界遮蔽構造の構成の例を示す図である。
【
図21】本発明の実施例5に係る電磁界遮蔽板の構成の例を示す図である。
【
図22】
図21の電磁界遮蔽板を製造する方法の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。本発明はたとえば電磁界遮蔽板に関する。この電磁界遮蔽板は、Fe-Si-B-Cu-Nb系アモルファス材と、パーマロイ(PCパーマロイ、ミューメタル等)とを、少なくとも1層ずつ積層して構成した積層材を基本構成とする。以下、電磁界遮蔽板を、単に「遮蔽板」と称する場合がある。
【0023】
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係る電磁界遮蔽板を製造する方法の一例を説明するフローチャートである。本実施例では、パーマロイの例としてPCパーマロイを選択した。まず、パーマロイ材およびアモルファス材の成形が行われる(ステップS1)。ステップS1では、パーマロイ材の板材またはシート(本実施例では板材とする)からなるパーマロイ層と、Fe-Si-B-Cu-Nb系アモルファスの板材またはシート(本実施例ではシートとする)からなるアモルファス層とが形成される。パーマロイ層は、上述のようにたとえばPCパーマロイまたはミューメタルの板材またはシートによって構成することが可能である。
【0024】
ステップS1の成形処理は、必要に応じて、切り出し、外形形状の加工、穿孔加工、等を含む。パーマロイ層については、ステップS1の後に、材料に適した温度で磁性焼き鈍しを行ってもよい(ステップS2)。このようにすると、ステップS1(とくに形状加工等)で生じた、透磁率等の材料特性を劣化させる金属組織の歪や転移を除くことができる。
【0025】
次に、アモルファス層の端部からの発塵防止対策を行ってもよい(ステップS3)。アモルファス材(板材等)を取り扱う際、材料に対して屈曲や変形等を与えると、アモルファスを構成する金属元素が微小な粉塵となって分離飛散することが懸念される。微細電子回路をリソグラフィや物理的加工で形成する半導体製造の環境では、この様な粉塵や金属異物(パーティクル)の発生の抑制を行うことが好ましい場合がある。
【0026】
図2はこのような対策の例を示す。アモルファス層1を構成する材料(たとえば板材)の、加工または切断された端面(積層固定時に使用する固定用穴を含む)およびその周辺に、樹脂テープ素材2が装着される。
図2のB部はアモルファス層1の縁部周辺であり、
図2のC部はアモルファス層1の固定用穴の周辺である。樹脂テープ素材2は、アモルファス層1の端部または開口部が露出しないよう被覆する、被覆層の例である。
【0027】
被覆層は、たとえば、アモルファス層1の片面から、他方の面まで、端部または開口部を介して覆う。被覆層は、アモルファス層1の加工された端部を露出させずに、端部の全体を被覆するよう構成することができる。端部または開口部が複数ある場合には、それらすべてについて被覆層を設けると好適であるが、そうでない場合でもある程度の効果を得ることができる。
【0028】
樹脂テープ素材2はたとえば片面に接着層をもつ樹脂テープ素材である。このように、アモルファス層1の加工または切断された端面が露出しない構造とすることで、アモルファス層1からの金属異物の発生を抑制出来る。
【0029】
装着する樹脂テープ素材2の導電性の有無は、遮蔽性能には影響がない模様である。但し、アモルファス層1とパーマロイ層3とを積層した状態で、より高い遮蔽特性を得るためには、アモルファス層1およびパーマロイ層3の両材料の接触面積が出来るだけ広く確保される様に、樹脂テープ素材2の幅および厚さを選択および設計することが好ましい。
【0030】
なお、ステップS2およびS3の双方を実行する場合には、これらを同時に実行してもよく、
図1とは逆の順序で実行してもよい。
【0031】
次に、補強材を用いるかどうかの判断が行われる(ステップS4)。この判断は、遮蔽板の用途および要求される性能等に応じ、当業者が適宜行うことができる。
【0032】
補強材を用いる場合には、たとえば耐蝕アルミ材の成形品を用いて補強材が形成される(ステップS5)。この耐蝕アルミ材の詳細については、
図4等を用いて後述する。
【0033】
ステップS4またはステップS5の後に、パーマロイ層とアモルファス層とを(必要に応じてさらに補強材を)重ねて固定し、遮蔽板を構成する(ステップS6)。固定にはたとえばボルトを用いることができる。本実施例では、この際に両層の界面には他の材料を介在させず、両層の対向する表面が直接接触する状態として、できるだけ隙間(空間)を作らず、積層および固定する。
【0034】
たとえば、遮蔽板が、所定の遮蔽性能を有する電磁界遮蔽領域を有し、パーマロイ層とアモルファス層とは、この電磁界遮蔽領域の全体において接触する。電磁界遮蔽領域とは、遮蔽板が電磁界を遮蔽する機能を有するよう設計される領域を意味し、たとえば遮蔽板の周縁、固定部位、開口部等において電磁界を遮蔽する機能を必要としない領域が存在する場合には、そのような領域は電磁界遮蔽領域には含まれない。電磁界遮蔽領域は、遮蔽板のほぼ全面を占めるものであってもよい。
【0035】
図3および
図4に、パーマロイ層3とアモルファス層1とを積層および固定するための構成の例を示す。
図3は縁部周辺を含み、固定穴の周囲に樹脂テープ素材2による被覆層を設けたアモルファス層1のみを表示している。
図4は、耐蝕アルミ板材4、アモルファス層1、パーマロイ層3の三層からなる遮蔽板の一部拡大断面図を含む図である。この例では、パーマロイ層3およびアモルファス層1が、それぞれマトリックス状に穿孔されている。穿孔の間隔は、縦方向ではbであり、横方向ではcである。遮蔽板は、非磁性材料からなる固定部材(第1固定部材)を備え、穿孔された穴部H(第1貫通穴部)にこの固定部材が配置される。非磁性材料としては、たとえばSUS316材またはSUS304材を用いることができる(SUS304材の非磁性特性は、SUS316材よりは劣る)。
【0036】
なお
図4の例では、遮蔽板は耐蝕アルミ板材4を備える。耐蝕アルミ板材4は、
図1のステップS5において配置される耐蝕アルミ材の成形品である。
【0037】
第1固定部材は、たとえば非磁性材料のボルト5およびナット15からなる。ボルト5が穴部Hを貫通してナット15と螺合し締結されることにより、ボルト5およびナット15が各穴部Hにおいてアモルファス層1およびパーマロイ層3を互いに固定する。このようにすると、積層材(アモルファス層1およびパーマロイ層3)を一体化して保持出来る。
【0038】
両層の積層固定に際し、第1固定部材として、ボルトおよびナットに代えて、またはこれに加えて、他の構成を用いてもよい。
図4の例では、穴部Hの周辺に、補強材からなる補強層として補強用板材6が配置されている。補強用板材6は、アモルファス層1またはパーマロイ層3と面で接触する。補強用板材6は、外力による変形を抑制するために用いることができ、磁性特性の劣化を抑制することができる。
【0039】
図5に、ナットを用いない構成の例を示す。この例では、ナットの代わりに、雌ネジ要素を形成した板材19が配置されている。雌ネジ要素を形成した板材19を用いる場合は、たとえば電磁界遮蔽空間の内側(具体例として、パーマロイ層3に関してアモルファス層1と反対側)に板材19を配置することができる。このように配置すると、MHz帯域の周囲の電磁界を遮蔽する際に、部品端面長さと外部電磁界の波長の整合により発生する共振による遮蔽性能の低下を抑制できる。
【0040】
パーマロイ層3を構成する板材またはシートの厚さは任意に設計可能であるが、切断や曲げといった形状加工での取り扱い、形状加工後の磁性焼鈍工程での熱による変形、アモルファス層1との積層組立の作業性、等を考慮すると、0.3mm程度以上とすることが好ましい。
【0041】
厚さ0.3mmのパーマロイ材(たとえばPCパーマロイ材)は、用途によっては単層では遮蔽材の面として機械的強度が不充分な場合がある。たとえば、磁性特性を劣化させる板材の変形や歪が、外力の負荷で容易に発生する状況になる。これに対応する為に、板材の変形抑制と、面部材としての補強とを目的とし、耐蝕アルミ板材4を用いてもよい。
【0042】
耐蝕アルミ板材4は、たとえば5000系の材料から構成される。耐蝕アルミ板材4の厚さは適宜設計可能であるが、用途に応じ、1mm以上とすると十分な強度が得られる場合があり、また、1.5mm以下とすると重量が許容範囲に収まる場合がある。このため、耐蝕アルミ板材4の厚さはたとえば1mm~1.5mmの範囲内とすることができる。
【0043】
耐蝕アルミ板材4は、電磁界遮蔽空間の最外表面(具体例として、アモルファス層1に関してパーマロイ層3と反対側)に装着され、積層遮蔽板が構成される。すなわち、層構成は
図4に示す様に、耐蝕アルミ板材4(最外面)+アモルファス層1(中間層)+パーマロイ層3(内面)からなる3層の構成となる。この例では、中間層にアモルファス層1が配置され、最外面の補強材となる耐蝕アルミ板材4と、内面のパーマロイ層3とにより、アモルファス層1が挟み込まれて固定される。なお、図から明らかなように、この場合には、耐蝕アルミ板材4にも穿孔された穴部H(第1貫通穴部)が設けられており、ボルト5および板材19(またはボルト5およびナット15)は、各穴部Hにおいて、耐蝕アルミ板材4、アモルファス層1およびパーマロイ層3を互いに固定する。
【0044】
図6に、対比のための従来の構成の例を示す。この例はアモルファス層1を備えておらず、耐蝕アルミ板材4、パーマロイ層3および補強用板材6が、ボルト5およびナット15により固定されている。
【0045】
図7に、本実施例に係る電磁界遮蔽板を備える電磁界遮蔽構造の例を示す。この例では、横幅×奥行き×高さが831mm×1071mm×1028mmの寸法である。以下、
図7の電磁界遮蔽構造を用いて遮蔽モデルを構成し、遮蔽効果を確認した実験の結果を記載する。
【0046】
ヘルムホルツコイルを応用した磁場発生ケージの内部に遮蔽モデルを設置して、遮蔽モデルの外部から磁場を印加する。磁場の印加方向は、X方向(たとえば横幅方向)、Y方向(たとえば奥行き方向)、およびZ方向(たとえば高さ方向)の3パターンを用いた。磁場の磁束密度は1μTとし、磁場の周波数は、静磁場(周波数1Hz)及び交番磁場(周波数50Hz~500Hz)とした。遮蔽モデルの内部空間に、静磁場ではフィールドゲートコイル型磁界センサ7を配置し、周波数5Hz以上の帯域の交番磁場では、三次元電磁界センサを設置して、遮蔽モデル内部の磁束密度を実測した。
【0047】
図8に、この実験の結果を示す。横軸はパーマロイ層3の厚さを表し、縦軸は遮蔽率を表す。遮蔽率は、遮蔽モデルの外部の磁束密度を、遮蔽モデルの内部空間の磁束密度で除した値である。パーマロイ層にはPCパーマロイを用いた。丸印(白丸および黒丸)は、比較例としての、パーマロイ単層からなる遮蔽板(たとえば
図6)を用いた場合の測定結果である。四角印(白四角および黒四角)は、本発明の実施例に係る遮蔽板を用いた場合の測定結果である。
【0048】
電源周波数(50Hzまたは60Hz)では、従来技術に係る厚さ1mmのPCパーマロイ層のみを含む遮蔽板が、6.7の遮蔽率を得た。また、従来技術に係る厚さ0.5mmのPCパーマロイ層のみを含む遮蔽板も、同じく6.7の遮蔽率を得た。
【0049】
これに対し、本発明の一実施例として、厚さ0.5mmのPCパーマロイ層と、アモルファス層との積層構造を用いると、遮蔽率が8.6となった(なお、アモルファス層の厚さは結果にそれほど影響を与えないが、たとえば厚さ0.4mm~0.5mm程度である。以下同じ)。さらに、本発明の別の実施例として、厚さ0.3mmのPCパーマロイ層と、アモルファス層との積層構造を用いると、遮蔽率が7.2となった。すなわち、パーマロイ層の厚さを、約三分の一にまで減少させても、同等以上の遮蔽性能が得られたということができる。
【0050】
このように、本発明の一実施例に係る遮蔽板は、少なくとも電源周波数において、高い遮蔽性能を有する。このため、電源周波数の交番磁場から影響を受けやすい装置に対する電磁界遮蔽において有用である。たとえば、走査型電子顕微鏡用の電磁界遮蔽板として顕著な効果を奏すると考えられる。しかしながら、本発明の一実施例に係る遮蔽板は、走査型電子顕微鏡に限られず、荷電粒子ビーム装置にも適用が可能である。荷電粒子ビーム装置は、透過型電子顕微鏡と、集束イオンビーム装置と、電子顕微鏡を応用した半導体検査装置等とを含む。また、本発明の一実施例に係る遮蔽板は、当該遮蔽板と、50Hz以上の周波数の交流電源によって駆動される半導体製造関連装置とを備える、半導体製造環境において、顕著な効果を奏すると考えられる。
【0051】
静磁場(1Hz)では、厚さ1mmのPCパーマロイ層のみを含む、従来技術に係る遮蔽板が、10.4の遮蔽率を得た。また、厚さ0.5mmのPCパーマロイ層のみを含む、従来技術に係る遮蔽板は、7.4の遮蔽率を得た。
【0052】
これに対し、本発明の一実施例として、厚さ0.5mmのPCパーマロイ層と、アモルファス層との積層構造を用いると、遮蔽率が7.8となった。さらに、本発明の別の実施例として、厚さ0.3mmのPCパーマロイ層と、アモルファス層との積層構造を用いると、遮蔽率が6.1となった。
【0053】
この状態での遮蔽板の重量を比較する。遮蔽板のサイズを、横幅980mm×高さ940mmとする。比較例と本発明の実施例との条件同一化の為に、双方のケースにおいて最外層に1.5mmの厚さの耐蝕アルミ板材を装着した。比較例(厚さ1mmのPCパーマロイ材単層)の遮蔽板では、パーマロイ材の重量7.47kgと、耐蝕アルミ板材の重量3.7kgとを合計し、総重量が約11.2kgとなる。
【0054】
これに対し、本発明の実施例では、同サイズの遮蔽板において、厚さ0.3mmのPCパーマロイ層の重量が2.42kgであり、積層されるアモルファス層の重量が0.703kgであり、耐蝕アルミ板材の重量が比較例と同じく3.7kgであり、総重量は約6.8kgとなる。このように、比較例(厚さ1mmのPCパーマロイ)の重量約11.2kgに対し、約40%の重量低減が達成される。
【0055】
パーマロイ層の厚さは、静磁界~数十Hz程度の帯域の比較的緩やかな交番磁界に対する遮蔽性能を規定する。この帯域では、パーマロイ層が厚い方が、透磁率の高いパーマロイ材中により磁束が集中する為、遮蔽空間内部へ漏洩する磁束が減少した状態となって、遮蔽性能が向上する。しかし、周波数が高くなるに従って、パーマロイ層の遮蔽性能は低下する傾向がある。その理由としては、電磁界で素材中に励起される渦電流による逆起電力の影響、高周波電磁界での表皮効果、パーマロイ自体の電気抵抗等物性、等がある。
【0056】
遮蔽板の重量低減化と、周波数が10Hzより低い電磁界での遮蔽性能と、電源周波数より高い周波数帯域での遮蔽性能とのバランスを取るための一例として、パーマロイ層の厚さを0.5mm前後の範囲内で選択することができる。厚さを0.5mm以上とすると、用途によっては十分な遮蔽性能を得ることができ、厚さを0.635mm以下とすると、用途によっては重量を十分に軽くすることができる。このように、一実施例では、パーマロイ層の厚さは0.500mm~0.635mmの範囲内とすると好適である。この場合には、パーマロイ材の透磁率の寄与による低い周波数帯域での磁束集中による遮蔽性能と、アモルファス材との積層効果による高周波帯域(電源同期周波数50Hzまたは60Hzより高い周波数帯域)での交番磁界での遮蔽性能とを、合わせて得ることができるので、静磁界から交番磁界にかけての遮蔽性能の両立が可能となる。パーマロイ層の例として、厚さ0.5mmのPCパーマロイ材は、外形加工、磁性焼鈍工程、および積層組立て工程での板材の剛性が適度であり、厚さ0.3mmのPCパーマロイ材よりも作業性が良好な為、量産の観点で有効と考えられる。
【0057】
図8のグラフに示すように、1Hzの静磁界に対しては、従来の遮蔽板(厚さ1mmのPCパーマロイ層)の遮蔽率が10.4となるのに対して、本発明の一実施例に係る遮蔽板(厚さ0.5mmのPCパーマロイ層と、アモルファス層)の遮蔽率は7.8と低減する。しかし、周波数50Hz~60Hzの交番電磁界に対しては、従来の遮蔽板が、6.7と低下するのに対し、本発明の一実施例に係る遮蔽板の遮蔽率が8.6となり、遮蔽性能が逆転し、積層構造で得られる遮蔽率の方が、パーマロイ単層で得られる遮蔽率よりも高い状況となる。このときの遮蔽板の重量は、厚さ1.5mmの耐蝕アルミ板材(補強材)の重量3.7kgと、厚さ0.5mmのPCパーマロイ層の重量3.74kgと、アモルファス層の重量0.703kgとの合計で約8.2kgとなり、従来の遮蔽板(厚さ1mmのパーマロイ層と、条件を同一化する為の最外層のアルミとで構成する遮蔽板)の約11.2kgと比較して、約30%の重量低減が達成できた。
【0058】
図9は、積層材料の積層固定に接着剤を用いる構成の例を示す。この例では接着剤の例として両面接着テープ8を用い、アモルファス層1と耐蝕アルミ板材4との間に両面接着テープ8を用いて、これらの層を接着し固定している。なお、アモルファス層1とパーマロイ層3との間に両面接着テープ8を介在させると、遮蔽性能が劣化する場合がある。アモルファス層1とパーマロイ層3との間に両面接着テープ8が介在する状態では、透磁率が低い接着テープ層からなる隙間(空間)が存在した状況となり、実測では10%程度の遮蔽性能の低下をもたらした。
【0059】
図9に示す様に、最外表面となる耐蝕アルミ板材4への、アモルファス層1の積層固定には、両面接着テープ8の使用が可能である。すなわち、耐蝕アルミ板材4と、アモルファス層1とが、両面に接着層を持つテープ材を介して接着される。ただし、アモルファス層1とパーマロイ層3との間には、両材料界面での磁壁の移動等を阻害しないように、テープ材を用いず、両材料の対向する面どうしができるだけ広い面積で、直接接触する構造にすると、遮蔽性能をより高めることができる。
【0060】
なお、ある程度(たとえば10%程度)の遮蔽性能の低下を許容できる用途では、両面接着テープ8を用いてアモルファス層1とパーマロイ層3とを接着し、本発明の実施例とすることも可能である。とくに、そのような構成では剛性が増加し、音波振動に対してより強くなる。
【0061】
パーマロイ層3とアモルファス層1との積層構造による遮蔽板で得られる、交番磁界に対しての遮蔽性能の向上は、両材料の積層界面での位相変化や反射損失による遮蔽効果と、アモルファス層1での電磁界の吸収損失による遮蔽効果とが、パーマロイ層3中への磁束の集中とが、複合的に作用して得られたものと推測される。
【0062】
図10に、比較例として、パーマロイ層3を用いない場合の実験結果を示す。対照比較の為に、アモルファス磁性材のみを補強材の耐蝕アルミ材と積層した層構成とし、遮蔽率を測定した。遮蔽率の測定は、アモルファス層を1枚(単層)とした場合と、2枚積層した場合と、3枚積層した場合とで、それぞれ実測により行った。結果として、僅かな遮蔽率の増加が観測されたが、
図10のグラフの様に、遮蔽率は2.1~3.5の範囲内であった。本発明の実施例に係るパーマロイ層とアモルファス層との積層材で得られる8.0前後の遮蔽率は、静磁界でも、交番磁界でも得られなかった。
【0063】
図8に示す対照実験でも、PCパーマロイ材を用いて構成した遮蔽板では、1Hz静磁界の遮蔽率については、PCパーマロイ材の透磁率による磁束の集中効果で遮蔽率が10.4となるのに対し、PCパーマロイ材の厚さを2分の1の0.5mmとすると、板厚さの減少により、材料中を透過する磁束が減少し、遮蔽率が7.4と低下する。しかし、周波数50Hz~60Hzの電源周波数の交番磁界に関しては、厚さ1mmのPCパーマロイ材の遮蔽率が6.7となるのに対し、厚さ0.5mmのPCパーマロイ材の遮蔽率でも6.7と、静磁界の場合とは異なり、パーマロイ材の厚さが二分の一に減少したにもかかわらず、略同等の遮蔽率となる。
【0064】
これに対して、本発明の一実施例に係る厚さ0.5mmのPCパーマロイ層とアモルファス層との積層材では、50Hz~60Hzの交番磁界の遮蔽率が8.6となり、厚さ1mmのPCパーマロイ単層の遮蔽板で得られた遮蔽率6.7より向上する。電源周波数(50または60Hz)以上の交番磁界の遮蔽性能では、PCパーマロイ材での1mmという厚さは、必須ではないと判断される。
【0065】
以上の様に、アモルファス層と、PCパーマロイ材に代表されるパーマロイ材の層とを積層する遮蔽板の利点は、電源周波数以上における高周波の交番磁界での遮蔽性能の向上と、遮蔽板の重量低減との両観点で明確となる。なお、重量が問題にならず遮蔽率向上のみが要求される場合等には、パーマロイ層の厚さを1mm以上としてもよい。
【0066】
本発明の一実施例に係る積層構造の電磁界遮蔽板は、パーマロイ材と補強用の耐蝕アルミといった、音波の共鳴が発生し易い、比較的に薄い金属層だけが積層された状態ではなく、アモルファス層に含まれる樹脂材料が積層される構造である為、外来音波による遮蔽板内での音波共鳴に対しても、その耐性が向上する。
【0067】
パーマロイ材と積層するアモルファス材としては、Fe-Si-B-Cu-Nb系のものを用いると、Co系のものを用いた場合と比較して大きな飽和磁束密度が得られる為、飽和磁束密度が重要となる用途では適切と判断される。Co系アモルファス材では、遮蔽性能に関して、経時変化も発生する様である。
【0068】
アモルファス層1の内部構造は、当業者が適宜設計可能であるが、一例として、アモルファス材の薄膜テープ(条)を用いて層を構成してもよい。たとえば、薄膜テープを、各層毎に配向が変化する様に配置し、4層程度積層して一体化して板材としてもよい。このような板材では、磁性特性の異方性が相殺され、透磁率も略無指向性になるので、異方性を抑制すべき用途では有効である。
【0069】
図8および
図10に係る実験では、アモルファス層のモデル評価のために、光洋産業株式会社から、商品名「MSシート」として販売される製品を使用した。同様の製品は、日立金属株式会社からも商品名「FM SHIELD」として販売されており、両者の併用も可能である。
【0070】
複数の遮蔽板を継ぎ合わせて用いる場合において、継ぎ合わせ部分の具体的構造は適宜設計可能であるが、一例を以下に説明する。
【0071】
図11に、継ぎ合わせ構造の例を示す。この例では、A部拡大図に示すように、平面状の遮蔽板と、陵部接続部材(
図16等に関連して後に詳述する)とが継ぎ合わせられている。遮蔽板は、アモルファス層1と、パーマロイ層3と、樹脂テープ素材2とを備える。陵部接続部材は、陵部耐蝕アルミ板材4aと、陵部パーマロイ層3aと、陵部ステンレス層14とを備える。陵部ステンレス層14には、ボルト5の雄ネジ要素と螺合する雌ネジ要素16が設けられる。ここで、遮蔽板のパーマロイ層3と、陵部接続部材の陵部パーマロイ層3aとが、それぞれの端面に近い領域で重ね合わされている。この構造とすれば、外部から電磁界が印加された状況で、遮蔽板と陵部接続部材との間の磁壁移動が容易となり、前述の様な、遮蔽性能が確保できる。
【0072】
より高い周波数(たとえばkHz、MHz、またはそれ以上の周波数の帯域)の電磁界の遮蔽に関しては、空間として密閉状態となる遮蔽構造が望ましいが、実際の装置に用いる電磁界遮蔽構造では、開口部が必要となる場合がある。開口部は、たとえば、遮蔽空間内部への半導体ウエハの投入と回収、機構部や制御回路部からの放熱、さらにはクリーンルーム環境での塵埃の滞留防止を目的とした遮蔽板空間内部での気流確保、等の目的で必要となる。このような開口部では、アモルファス層1とパーマロイ層3とを積層した電磁界遮蔽領域と比較すると遮蔽性能が低下する可能性があるが、開口部の構造によっては、遮蔽性能の低下を比較的小さく抑制できる可能性がある。
【0073】
図12~
図15に、開口部を備える電磁界遮蔽構造の例を示す。開口部はたとえば放熱用のものであるが、気流の確保のためのものであってもよい。
図12の例では、遮蔽構造は、寸法8mm~10mmまたはその前後の穴(たとえば円形の穴)を多数個設けた軟磁性材料の板9を備える。軟磁性材料の板9は、たとえばパーマロイからなる。軟磁性材料の板9は開口部に装着されるものであり、遮蔽板に対し、たとえば耐蝕アルミ板材4側から開口部を覆う位置に固定される。この構造では、穴の寸法、穴の数、外部の電磁界の周波数等により遮蔽率が変動するが、開口部の無い密閉状態と比較して、約7%前後の電磁界遮蔽率の低下をもたらす場合がある。
【0074】
図13は、開口部の別の例を示す。この例では、電磁界遮蔽構造は、アルミ基材のハニカム材10(ハニカム構造部材)を備える。
図14はハニカム材10の構造をより具体的に示す。
図14(b)は
図14(a)のA-A部断面図であり、
図14(c)は部分斜視図である。
【0075】
ハニカム材10は開口部に装着されるものであり、遮蔽板に対し、たとえば耐蝕アルミ板材4側から開口部を覆う位置に固定される。ハニカム材10は、その外周部に、板金部材によって構成される補強部10aを備える。このような構造では、遮蔽率の低下は約3%前後となり、
図12の構造と比較すると、開口部の影響による遮蔽性能の低下を抑制することが出来る。
【0076】
遮蔽空間内へのウエハ投入および回収の為の比較的大きな開口部を設ける場合には、遮蔽性能が低下する傾向が観られる。低下の原因は、開口部がある事によって、遮蔽領域の面積と、総量としての磁性材の体積とが減少することと考えられる。特に、開口率の大きな面では、静磁界から数十Hz程度までの帯域の遮蔽性能に関して、遮蔽板への磁束の集中による遮蔽効果が減少する為に、遮蔽性能が低下する。しかし、50Hz~500Hzの周波数帯域の電磁界では、密閉状態の遮蔽率と比較して開口の影響が明確には観られない為、交番電磁界の遮蔽性能の観点では、開口の影響は小さいようである。
【0077】
遮蔽空間内に配置される装置等の特性によっては、数十Hzまでの帯域の静磁界の遮蔽性能が重視される。そのような場合には、開口部(磁性材料の体積が減少する)が有る面での遮蔽性能を補完する手段として、この面のパーマロイ層の厚さを厚くすることで、遮蔽性能を補完することも可能となる。
【0078】
図15は、遮蔽構造にウエハ搬送用の開口部が設けられている場合の構造の例を示す。より高い周波数帯域(80MHz~2.4GHz)の電界外乱が遮蔽空間の内部に侵入することを防止するための策として、導電性を有する金属製メッシュ11によって開口部の周辺を巾着状に囲んでいる。金属製メッシュ11は、メッシュ構造により通気性を有しており、管状に形成される網目状管部材である。金属製メッシュ11は、開口部を覆うとともに、遮蔽板に密着するよう(この例では最外層の耐蝕アルミ板材4と密着するよう)装着されている。金属製メッシュ11は、遮蔽板の開口部と、ウエハ投入および回収部20とを接続する。
【0079】
このような構造とすると、クリーンルーム環境での塵埃の滞留防止の為の通気性を維持した状態で、電磁界遮蔽に関しては、部材の長さに関係した特定周波数での共振現象を防止することが可能となり、開口部からの直接の遮蔽空間内部への電波の侵入に対しても静電遮蔽効果を作用させることができて、遮蔽率の低下を抑制できる。
【0080】
また、従来の遮蔽板と比較して重量を低減することも可能である。このため、半導体製造環境の床面を排気のためのグレーチング構造とする場合であっても、床面の耐荷重制約に適合することがより容易となる。
【0081】
[実施例2]
実施例2は、実施例1に係る電磁界遮蔽板を備える電磁界遮蔽構造に係るものである。とくに、実施例2に係る電磁界遮蔽構造は陵部を備え、内部空間を囲む形状に構成される。
【0082】
図16に、陵部に配置される陵部接続部材の構成の例を示す。この陵部接続部材は、平面状の複数の遮蔽板を、互いに角度をなす配置で固定するための部材である。陵部接続部材は、ある角度(第1角度)をなす陵を有する。この角度は、
図16の例では90度であるが、0度でない角度であれば任意に変更可能である。
【0083】
陵部接続部材は、少なくとも、陵部パーマロイ層3aと、陵部ステンレス層14とを重ねて構成される。さらに陵部耐蝕アルミ板材4aを重ねてもよい。陵部パーマロイ層3aは、パーマロイの板材またはシートからなる。陵部パーマロイ層3aの厚さは、遮蔽板のパーマロイ層3と同様の範囲から選択することができる。陵部ステンレス層14は、たとえば1.8mm~2.4mmの範囲内の厚さのオーステナイト系ステンレス材からなる。
【0084】
この例では、陵部接続部材は、外側から内側に向かって、陵部耐蝕アルミ板材4aと、陵部パーマロイ層3aと、陵部ステンレス層14とを、重ねて構成されている。なお、「外側」とはたとえば稜の凸側を意味し、「内側」とはたとえば稜の凹側を意味する。陵部接続部材は、これら以外の層を内側または外側に含んでもよい。
【0085】
陵部接続部材には、陵の両側において雌ネジ要素16が設けられる。雌ネジ要素16はたとえば陵部ステンレス層14に設けられる。陵部パーマロイ層3aにおいて、雌ネジ要素16に対応する位置には貫通穴が設けられてもよい。
【0086】
陵部接続部材の陵の片側の少なくとも一部と、電磁界遮蔽板(第1遮蔽板)の少なくとも一部とが重なるよう固定され、陵部接続部材の陵の他方側の少なくとも一部と、別の電磁界遮蔽板(第2遮蔽板)の少なくとも一部とが重なるよう固定される。
図11はこのような構成の例を示す。
図11のA部拡大図において、陵部パーマロイ層3aの一部と、遮蔽板(とくに遮蔽板のアモルファス層1およびパーマロイ層3)の一部とが重なるように、ボルト5および陵部ステンレス層14によって固定されている。
【0087】
陵部接続部材は、陵部パーマロイ層3a等の遮蔽効果により、それ自身遮蔽板としての機能をある程度有する。陵部接続部材は、各層の材料を所定角度(たとえば90度)曲げた状態としておき、これらを直接接触する状態で積層することにより、構成することができる。
【0088】
このような電磁界遮蔽構造の全体的な形状は適宜設計可能であるが、たとえば、パーマロイ層3および陵部パーマロイ層3aが、各辺で隙間なく重ね合わされるように配置し、各遮蔽板を締結固定して構成することができる。
【0089】
陵部接続部材は、さらにアモルファス層を備えてもよい。しかし、アモルファス材は脆性材である為、曲げ加工すると、材料が破断する可能性がある。アモルファス材の曲げ加工が不可能な場合、
図16のようにアモルファス材を省いても、実質的に本発明の効果を得られる場合がある。たとえば、陵部接続部材と遮蔽板の間を、磁壁が移動できる状況があれば、面積・体積とも遮蔽構造の外表面の殆どの面を占める平面部分を、パーマロイ材とアモルファス材の積層材で構成できる為、本発明としての遮蔽効果が少なくともある程度得られる。
【0090】
[実施例3]
実施例3は、複数のパーマロイ層を接続することにより、より大きな遮蔽板を構成するものである。
図17に、実施例3に係る遮蔽板の例を示す。
【0091】
PCパーマロイ材等の軟磁性材では、材料の形成に圧延加工が行われるが、その圧延ロール幅に起因して、材料が定尺の幅を持つ場合がある。遮蔽板の幅を、この定尺の幅よりも大きく構成する場合には、材料を継ぎ足す構造が必要となる。
【0092】
図17(a)は、このような遮蔽材の層構成を示す。アモルファス層1および耐蝕アルミ板材4はそれぞれ1枚の板またはシートであるが、パーマロイ層3は複数枚の板が接合されて形成される。
【0093】
図17(b)は、
図17(a)のパーマロイ層3を抜き出して示す図である。パーマロイ層3は、第1パーマロイ層3xと、第2パーマロイ層3yとが突き合わせられて構成される。第1パーマロイ層3xおよび第2パーマロイ層3yに対して、磁性焼き鈍しが完了した後に、条材18(帯状の板)を使用してこれらが継ぎ足される。この際の寸法および配置は、第1パーマロイ層3xおよび第2パーマロイ層3yそれぞれについて、他の層(たとえばアモルファス層1)と重ね合わせられるように設計される。第1パーマロイ層3x、第2パーマロイ層3yおよび条材18は、いずれも同一の材料(たとえばPCパーマロイ)から構成され、たとえばスポット溶接あるいはネジ固定により接合することができる。
【0094】
なお、スポット溶接工程を採用しても、作業中の外力によりパーマロイ層に対して極端な変形が加わらなければ、溶接により局部的に発生する熱の影響は抑制された状態で継ぎ足しを構成できる。また、磁性焼き鈍し工程の後にスポット溶接による継ぎ足しを行うことにより、焼き鈍し工程の熱による膨張と収縮による変形を抑制することができる。
【0095】
積層固定の際に、アモルファス層1とパーマロイ層3との接触面積をできるだけ大きく確保するべきであるが、撓み変形があると、接触面積の確保に関して不利な状態となる。パーマロイ層が材料の定尺寸法を超えた場合の継ぎ足しにおいて、条材18を装着する面は、アモルファス層1とパーマロイ層3との接触面積を増大させる目的で、アモルファス層1を積層する側の表面を避けて、反対側の表面(たとえば遮蔽空間の内部側の表面)とする。これにより、パーマロイ層3において、アモルファス層1に接触する側の表面の凹凸を減少できて、継ぎ足しの無い一枚のパーマロイ層とほぼ同等の性能を得られる。
【0096】
図17に示す遮蔽板の製造方法の一例を、以下に説明する。まず、パーマロイ層として、第1パーマロイ層3xおよび第2パーマロイ層3yを形成する。次に、第1パーマロイ層3xおよび第2パーマロイ層3yに対して磁性焼き鈍し工程を実行する。その後に、第1パーマロイ層3xの端面と第2パーマロイ層3yの端面とを突き合わせて配置するとともに、突き合わせられた端面に隣接する片面(たとえば上述のようにアモルファス層1に接触しない側の面)の少なくとも一部を覆うように、条材18を配置する。
【0097】
このように条材18が配置された状態で、第1パーマロイ層3xと、第2パーマロイ層3yと、条材18とを、スポット溶接により一体化する。このようにして、パーマロイ材の定尺以上の寸法を持つ遮蔽板を製造することができる。
【0098】
なお、条材18の形成は、スポット溶接より前の任意の時点で実行することができる。また、パーマロイ層3とアモルファス層1との積層固定は、スポット溶接の前に行ってもよいし、スポット溶接の後に行ってもよい。
【0099】
本実施例でも、各板材の積層固定には、実施例1で記載した様に、各材料の表面が直接接触した状態とする。なお、遮蔽性能の低下をある程度許容できる場合等には、層間に両面接着テープ等を使用してもよい。
【0100】
アモルファス材では影響が無いが、PCパーマロイ材等の軟磁性材料では、磁性焼き鈍しの後に外力による変形を受けると、金属組織の転移が発生するなどして透磁率が減少する場合がある。この為、点検整備の際の装置からの着脱の作業も含み、パーマロイ層3に対して、変形を生じる様な外力が加わらない構造とすることが好ましい。
【0101】
遮蔽板の変形防止を目的とした補強の例として、重量増加を抑制するとともに、高周波電界に対する静電遮蔽効果を補足するような補強材を用いることができる。たとえば、1.0mm~1.5mmの範囲内の厚さの耐蝕アルミ材(たとえば5000系アルミ)を補強材として用い、遮蔽板の最外層として配置すると好適である。このような構成の例は
図4に示される。このような構成は、
図7に示す実験用の遮蔽モデルでも用いた。
【0102】
このような構造を利用すると、例えば補強材の一辺を構成する端部に、上下一対の蝶番部品を設けることにより、遮蔽板を片開きドアの構造に用いることもできる。
【0103】
また、性能劣化防止等の為に、さらに機械的補強が必要な場合は、重量は比較的大きく増加する可能性はあるが、厚さ1mm程度のSUS316またはSUS304材のオーステナイト系ステンレス材を、アルミ材のさらに外層へ配置してもよい。このようにすると、さらに補強が強化される。
【0104】
[実施例4]
実施例4は、実施例1に係る電磁界遮蔽板を備える電磁界遮蔽構造に係るものである。とくに、実施例4に係る電磁界遮蔽構造は、遮蔽板を脱着可能に固定するための構造を含む。
【0105】
図18および
図19に、実施例4に係る電磁界遮蔽構造の構成の例を示す。
図18は固定構造周辺の拡大図であり、
図19は全体図を含む図である。この例は正方形の遮蔽板を各面に用いた立方体形状の電磁界遮蔽構造に係るものである。1つ以上の遮蔽板に開口部が設けられていてもよい。
【0106】
各遮蔽板において、パーマロイ層およびアモルファス層には、それぞれ穿孔された穴部(第2貫通穴部)が設けられる。実施例1における第1貫通穴部(穴部H)の一部または全部が、実施例4に係る第2貫通穴部として機能してもよい。また、遮蔽板を固定する際に、遮蔽構造を構成する陵部(角部)にあたるフレーム部材に各々雌ネジ要素を設けることにより、各面の4辺の端部に固定用のネジ穴が配置された状態にする。たとえば実施例2の陵部接続部材を用いてフレーム部材を構成してもよい。
【0107】
実施例4に係る遮蔽構造は、遮蔽板をフレーム部材に固定するための固定部材(第2固定部材)と、座金とを備える。固定部材は雄ネジ要素を備える。
図18および
図19の例では、第2固定部材はボルト5aによって構成され、座金は座金12によって構成される。
【0108】
図18(a)は、ボルト5aが座金12を固定した状態を示す。
図18(b)は、ボルト5aが緩められ、座金12の固定が解除された後に、座金12が取り外される工程を示す。
図18(c)は、座金12が取り外された後に、耐蝕アルミ板材4が取り外される工程を示す。
【0109】
遮蔽板の穴部の内径は、ボルト5aの頭部の外径よりも大きく、ボルト5aを配置する際に精密な位置決めが不要となるようになっている。座金12には、所定の内径を有する切り欠きが設けられる。切り欠きは、座金12の周から径方向内側に向かって中央まで延びる。切り欠きは一定の幅を有し、座金12の軸心が切り欠きに含まれるよう形成される。
【0110】
座金12の外径は穴部の内径より大きく構成され、穴部を通過できないようになっている。また、座金12の内径(すなわち切り欠きの内径)は、ボルト5aの頭部の外径より小さく構成され、座金12の切り欠きを通してボルト5aを挿入できるようになっている。また、ボルト5aは、その軸部(とくに頭部に近い位置)を座金12の切り欠きに径方向外側から内側に向けて挿入できるように構成されている。言い換えると、ボルト5aおよび座金12は、座金12の切り欠きを、ボルト5aの軸部(とくに頭部に近い位置)に径方向外側からスライドさせて嵌められるように構成されている。
【0111】
座金12は、穴部において、アモルファス層に関してパーマロイ層とは反対側に配置される。たとえば
図18に示すように、耐蝕アルミ板材4に外側から接触するよう配置される。ボルト5aの雄ネジ要素は、フレーム部材の雌ネジ要素(たとえば陵部ステンレス層14に設けられる)と螺合するとともに、座金12を(この例では耐蝕アルミ板材4を介して)アモルファス層1およびパーマロイ層3に向けて締め付け固定することができる。
【0112】
ボルト5aは、フレーム部材および遮蔽板のそれぞれ対向する面の接触面積ができるだけ大きくなるように、配列することができる。ボルト5aの配列間隔は、たとえばおよそ200mm~250mmの範囲内で選択出来る。各々のボルト5aの締結作業では、トルクドライバー等を使用して、一定の軸力で各部を固定することにより、遮蔽板の脱着の前後で、より安定した遮蔽性能を得ることが出来る。
【0113】
図19の例において、縦(高さ)900mm×横(幅)940mmの遮蔽板を用いる場合を考える。
図19の様に、上、下、左、右各辺に5ヶ所の合計16ヶ所(角部四ヶ所は重複する)のボルト5aを配することができる。このようにして遮蔽板がフレーム部材に固定される。
図7のモデルを用いた実験では、呼び径が4mmのボルト(M4ボルト)に対し、締め付けトルク0.7N/mで管理して遮蔽性能を実測した。この締め付けトルクを用いれば、M4ボルトでの降伏応力の2分の1程度の軸力となるので、ボルトの破断に関しても充分余裕がある。このため、遮蔽板の繰り返しの脱着が可能となり、遮蔽板と遮蔽板の接触も充分確保される。
【0114】
MHz帯域の電磁界遮蔽に関して、遮蔽板どうしの微細な隙間によりスロットアンテナを構成した状態となって共振が生じる場合がある。このような場合には、0.5mm~1mm程度の導電性フォーム材を、最外層のアルミ板の周囲端部に装着してもよい。
【0115】
たとえば
図11の例では、導電性フォーム材は、最外層を構成する遮蔽板の耐蝕アルミ板材4と、陵部接続部材の陵部耐蝕アルミ板材4aとの間の隙間領域Xに、導電性フォーム材が配置される。導電性フォーム材の厚さおよび幅は、パーマロイ層3と陵部パーマロイ層3aとの間の接触が充分に確保できるように選定することが好ましい。
【0116】
遮蔽構造の保守または点検の際は、これらのボルト5aおよび座金12による固定を解除する作業が発生する。たとえば遮蔽板の穴部の内径がボルト5aの頭部の外径よりも小さい場合には、ボルト5aを取り外し、再び締結するという作業を、遮蔽板1枚毎に繰り返す作業が発生する。1枚の遮蔽板あたり12~16本のボルト5aを完全に取り外す作業が生じることとなるが、たとえば遮蔽構造1台で、左・右、前・後の四方向に遮蔽板が十枚以上配置される場合には、遮蔽板の脱着だけで膨大な作業を発生させることになる。
【0117】
図18に示すように、ボルト固定位置において遮蔽板に設ける穴部の内径は、ボルト5aの頭部の外径よりも大きくなるよう構成することができる。このようにすると、板金成形および穴開け加工時の寸法バラツキを考慮しても、遮蔽板固定の際の精密な位置決めが不要となり、作業効率が向上する。加えて、座金12はボルト5aの軸部からスライドして抜き差しできる形状に構成されており、遮蔽板の脱着作業性の向上が可能となる。
【0118】
この構造では、ボルト1本1本について、軸部全体を抜き取るまで回転させる必要は無い。抜き差し可能な座金12を無理なくスライドさせることが可能な程度まで、ボルト5aを回転して緩めることにより、抜き差し可能な座金12を抜き取ることができ、ボルト5aを抜き取らずに遮蔽板を取り外すことが可能となる。
【0119】
なお、穴部とボルト5aとの位置合わせに関して、何らかの支持構造を設けてもよい。例えば、
図19に示すように、フレーム部材に遮蔽板支持部材17(第3固定部材)を配置してもよい。遮蔽板支持部材17は、たとえば雄ネジ要素を有する構造(ボルト等)と、雌ネジ要素を有する構造(ナットまたはステンレス層等)により構成することができる。遮蔽板支持部材17は、遮蔽板の下辺を支持できるように配置することができる。まず、この遮蔽板支持部材17上に、遮蔽板を、搭載すべき位置で仮置きしておく。次に、その状態で、抜き差し可能な座金12を、ボルト5aの頭部に挟みこんで遮蔽板を仮固定する。その後、各ボルトを所定の締め付けトルクで固定するという方法により、遮蔽構造を組み立てることができる。
【0120】
なお、この電磁界遮蔽構造において、遮蔽板支持部材17が遮蔽板をフレーム部材に対して(たとえばステンレス層に対して)固定した状態において、穴部の軸とボルト5aの軸とがある程度整合するよう構成されている。たとえば、穴部の軸心がボルト5aを通るよう構成されている。このようにすると、遮蔽板の取り外し作業がより効率的となる。
【0121】
また、実施例4において、さらに作業性を改善するために、
図18に示すボルト5aとともに、
図19のA部拡大図に示すボルト13を用いている。
図20に、ボルト13の形状および作用を示す。ボルト13は、カムレバーを含むカム式の開閉機構を備える。カムレバーはボルト13の頭部に形成される。
【0122】
ボルト13および座金12は、カムレバーの回動動作に応じて座金12の軸方向位置範囲が規制されるよう構成されている。たとえば、
図20(a)に示すようにカムレバーが閉位置にある場合には、座金12が遮蔽板に押し付けられて固定される。一方で、
図20(b)に示すようにカムレバーが開位置にある場合には、座金12が遮蔽板に押し付けられず(たとえば軸方向にわずかに移動可能となり)、
図20(c)に示すように座金12を容易に抜き取ることができる。
【0123】
また、カムレバーが開位置にある状態では、ボルト13の最大外径が、遮蔽板の穴部の内径より小さくなるよう構成されており、これによって、ボルト13の全体が軸方向に遮蔽板の穴部を通過できるようになっている。このため、座金12を抜き取った後には、
図20(d)に示すように、ボルト13を配置したままで遮蔽板を取り外すことができる。この構造は、遮蔽板を再び取り付ける際の固定作業でも、カムレバーの操作による締め付けにより圧接が完了するので、遮蔽板の脱着作業がさらに簡易化できる。
【0124】
なお、実施例4のボルト5aおよびボルト13は併用する必要はなく、いずれか一方のみを用いてもよい。
【0125】
[実施例5]
実施例5は、実施例1~4において、パーマロイ層3を軟磁性材層に変更するものである。「軟磁性材」の意味および範囲は、当業者が適宜定義可能であるが、たとえば、保持力が比較的小さく、透磁率が比較的大きいことを特徴とする材料をいう。または、たとえば、「硬磁性材」の対義語である(硬磁性材とは、たとえば、磁極が簡単に消えたり反転したりしない材料、すなわち保磁力が大きい材料をいい、いわゆる「磁石」がこれに含まれる)。ただし、パーマロイ材は非常に透磁率が高く保磁力が小さいので、パーマロイ材と比較した場合には、軟磁性材は透磁率が比較的小さく保持力が比較的大きい。以下、実施例1~4との相違を説明する。
【0126】
図21に、実施例5に係る電磁界遮蔽板の構成の例を示す。実施例5に係る電磁界遮蔽板は、軟磁性体の電磁鋼板材またはシートからなる電磁鋼層3bと、Fe-Si-B-Cu-Nb系アモルファスの板材またはシートからなるアモルファス層1とを、機械的な手段で重ねて構成される。機械的な手段とは、たとえばボルトを用いた締結固定によるものをいうが、これに限らない。
【0127】
「電磁鋼」の意味および範囲は、当業者が適宜定義可能であるが、たとえば、電磁エネルギーと磁気エネルギーとの変換効率が高い鋼材をいう。または、たとえば、大きな抵抗なく磁気を通す、鉄損の少ない鋼材をいう。電磁鋼の具体例は、純鉄、磁性ステンレス、ケイ素鋼、等を含む。電磁鋼によって構成される板材が電磁鋼板である。
【0128】
軟磁性体の電磁鋼板材は、所望の性能が得られるものであれば、いかなる材料を用いてもよい。たとえば、圧延後の磁性焼き鈍しまでの加工を完了したフルプロセス材の無方向性電磁鋼板(磁性ステンレスや珪素鋼板等)を採用してもよい。また、ファイバーレーザ加工機による成形または切断を応用してもよい。その場合には、外形加工時に、材料切断部周辺での加熱溶断に伴う局部的な特性変化が発生しても、その他の部分では磁性性能を加工以前の状態で略維持することができる為、焼き鈍し工程を省くことも可能となる。
【0129】
軟磁性体の電磁鋼板材を用いると、パーマロイ材(たとえばPCパーマロイ材)と比べ、材料のコストが大幅に低減され、さらに板材の製造工程での磁性焼き鈍しを省略できるので、遮蔽板の製造プロセスが低コスト化され、かつ簡略化される。なお、ここでの磁性焼き鈍しは、たとえば板材の切断成形後に実施されるものであり、たとえば所定の昇温時間および冷却時間を含むものであり、たとえば非酸化性雰囲気中において730℃~1100℃で焼き鈍しを実施するものである。
【0130】
但し、実施例5に係る遮蔽板では、軟磁性体の電磁鋼板材をアモルファス材1と積層しているので、アモルファス層1と電磁鋼層3bとの積層化による遮蔽効果が得られるものの、極端に大きな外部磁界が発生した場合には、その後に外部磁界が減少した後も、遮蔽板に磁場が残留した状況となる可能性が想定される。その理由は、電磁鋼板材ではパーマロイ材よりも透磁率が小さいこと、および、保磁力がパーマロイ材よりも大きいことである。
【0131】
電磁鋼層3bの厚さは任意に設計可能であるが、厚さを0.5mm以上とすると、用途によっては十分な遮蔽性能を得ることができ、厚さを0.635mm以下とすると、用途によっては重量を十分に軽くすることができる。このように、一実施例では、電磁鋼層3bの厚さは0.500mm~0.635mmの範囲内とすると好適である。
【0132】
以下、実施例5に係る遮蔽板と、従来技術に係る遮蔽板とを比較する。まず特許文献4には、鉄道の床下に設置される力率改善用のリアクトル(コイル様部品)からの放射電磁界を、客室において、ペースメーカ等機器へ悪影響を与えない程度にまで、低減することを目的とする遮蔽板が記載されている。
【0133】
特許文献4の遮蔽板は、Co系アモルファス材を用いており、実施例5のようなFe-Si-B-Cu-Nb系アモルファス材を用いるものではない。Co系アモルファス材はコストが高く、磁性の経時劣化が大きいという欠点がある。
【0134】
また、特許文献4の遮蔽板は、鉄道車両に用いられるものであり、とくに床面外部に装着されるものであるため、他の用途に用いるには厚さが大きすぎるという欠点がある。特許文献4に記載される遮蔽板の一例は、厚さ0.35mmのケイ素鋼鈑25枚と、厚さ0.5mmのCo系アモルファスシート5枚と、厚さ3.2mmのカバー部材2枚とを備え、合計の厚さが17.65mmとなる。また、この例では、1600×1300mmの寸法の部材で、重量は248kgとなる。
【0135】
これに対し、本発明の実施例5では厚さがはるかに小さい。たとえば、補強等の目的で追加される耐蝕アルミ板材4を含めても、厚さ1.2mmの耐蝕アルミ板材4と、厚さ0.5mmのアモルファス層1と、厚さ0.5mmの電磁鋼層3bとで、合計の厚さが2.2mm程度に留まる。電磁鋼層3bの厚さの範囲を考慮しても、アモルファス層1と電磁鋼層3bとを合わせた厚さが1.0mm以下、1.1mm以下、1.2mm以下、1.3mm以下、1.4mm以下、または1.5mm以下になるように、設計することが可能である。また、電磁鋼層3bの厚さも、1.0mm以下、1.1mm以下、1.2mm以下、1.3mm以下、1.4mm以下、または1.5mm以下になるように、設計することが可能である。このため、重量についても軽くなる。このように薄く軽い遮蔽板は、半導体製造検査装置の外周部における交番磁界(AC磁場)および電界の遮蔽に有効である。
【0136】
また、特許文献6には、核磁気共鳴測定や、SQUIDセンサの応用による生体磁気測定の際に用いられる遮蔽板が記載されている。特許文献6の遮蔽板は、極めて微弱な磁場を測定する際の外乱の抑制を目的とするものである。
【0137】
特許文献6の遮蔽板は、アモルファスと強磁性体とを積層するものであり、本発明の実施例5のように、保磁力が小さく、透磁率が高い軟磁性材を用いるものではない。
【0138】
また、特許文献6の遮蔽板は、磁性焼き鈍し工程を必須とする。たとえば、冷間圧延により素材を積層した後に、磁性焼き鈍しが行われる。磁性焼き鈍しは、非酸化雰囲気中、350℃で、30分間、15エルステッドの直流磁界中において行われる。このように調定された外部磁場を印加しながら、あるいは磁場の極めて小さい状態で、磁性焼き鈍しを行うのは手間がかかる。
【0139】
これに対し、本発明の実施例5では、各層が成形された後には、いずれの層に対しても磁性焼き鈍し工程を行わずに遮蔽板を製造することが可能である。
【0140】
図22は、実施例5に係る遮蔽板を製造する方法の一例を説明するフローチャートである。たとえば、アモルファス材を成型してアモルファス層1を製造する工程(ステップS11)と、電磁鋼材を成型して電磁鋼層3bを製造する工程(同じくステップS11)と、アモルファス層1および電磁鋼層を重ねる工程(ステップS12)とを含む方法によって、遮蔽板を製造することができる。すなわち、遮蔽板を製造する方法は、アモルファス層1を製造する工程(ステップS11)および電磁鋼層3bを製造する工程(同じくステップS11)より後には、電磁鋼層3bに対する磁性焼き鈍し工程を含まない。このため、製造工程および構造が極めて単純なものとなる。
【符号の説明】
【0141】
1 アモルファス層、2 樹脂テープ素材(被覆層)、3 パーマロイ層、3a 陵部パーマロイ層、3b 電磁鋼層、3x 第1パーマロイ層、3y 第2パーマロイ層、4 耐蝕アルミ板材、4a 陵部耐蝕アルミ板材、5 ボルト(第1固定部材)、5a ボルト(第2固定部材)、6 補強用板材(補強層)、10 ハニカム材(ハニカム構造部材)、10a 補強部、11 金属製メッシュ(網目状管部材)、12 座金、13 ボルト(第2固定部材)、14 陵部ステンレス層、15 ナット、16 雌ネジ要素、17 遮蔽板支持部材(第3固定部材)、18 条材、19 板材、H 穴部(第1貫通穴部、第2貫通穴部)。