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特許7254428中空電柱の非破壊検査装置および中空電柱の非破壊検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】中空電柱の非破壊検査装置および中空電柱の非破壊検査方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/24 20060101AFI20230403BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20230403BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20230403BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20230403BHJP
   G01N 21/954 20060101ALI20230403BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20230403BHJP
   H04N 23/40 20230101ALI20230403BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20230403BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20230403BHJP
【FI】
G02B23/24 A
G02B23/24 B
G03B15/00 L
G03B17/56 A
G03B15/02 G
G03B15/02 F
G01N21/954 A
H02G1/02
G02B23/24 C
H04N23/40 300
H04N23/56
H04N23/60 500
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019195070
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021067905
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100087468
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 一美
(72)【発明者】
【氏名】中島 慶人
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-227135(JP,A)
【文献】特開2011-024829(JP,A)
【文献】米国特許第05652617(US,A)
【文献】特開昭55-134579(JP,A)
【文献】特開2017-032186(JP,A)
【文献】特開2016-050941(JP,A)
【文献】特開2010-249650(JP,A)
【文献】特開2003-202210(JP,A)
【文献】国際公開第2007/139187(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 23/24 - 23/26
G01N 21/84 - 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空電柱のメンテナンス用孔から前記中空電柱内に挿入されて前記中空電柱の内周面を撮影する内視鏡カメラと、前記内視鏡カメラまたは当該内視鏡カメラのカメラケーブルに装着されて前記内視鏡カメラと共に前記メンテナンス用孔から前記中空電柱内に挿入され、前記中空電柱の内周面に接して前記内視鏡カメラの揺れを抑えると共に、前記内視鏡カメラの向きを下向きに維持するカメラ姿勢安定具と、前記メンテナンス用孔と同一または別のメンテナンス用孔から前記中空電柱内に挿入される照明とを備える中空電柱の内周面撮影装置と、前記中空電柱のメンテナンス用孔から前記中空電柱内に挿入される内側目印部材と、前記内周面撮影装置によって前記内側目印部材とともに撮影された前記内周面の画像または映像に基づき前記内周面の三次元形状を取得する内周面三次元形状化部と、前記中空電柱の外周面を撮影する外周面撮影装置と、前記中空電柱の外側に長手方向に配置される外側目印部材と、前記外周面撮影装置によって前記外側目印部材とともに前記中空電柱の外周面を撮影して三次元形状を取得する外周面三次元形状化部と、前記内側目印部材の画像または映像と前記外側目印部材の画像または映像とに基づき前記内周面の三次元形状と前記外周面の三次元形状とを位置合わせして合成する三次元形状合成部と、合成された三次元形状を表示する表示部とを備えることを特徴とする中空電柱の非破壊検査装置。
【請求項2】
前記カメラ姿勢安定具は、前記内視鏡カメラの向きを下向きに維持する重さを有し、前記中空電柱内で作動流体が供給されると拡がる緩衝部材と、前記中空電柱の外から前記緩衝部材に作動流体を供給するチューブとを備えることを特徴とする請求項1記載の中空電柱の非破壊検査装置
【請求項3】
前記カメラ姿勢安定具は、前記中空電柱内で作動流体が供給されると拡がる緩衝部材と、前記中空電柱の外から前記緩衝部材に作動流体を供給するチューブと、前記内視鏡カメラの向きを下向きに維持する重りとを備えることを特徴とする請求項1記載の中空電柱の非破壊検査装置
【請求項4】
内視鏡カメラを中空電柱のメンテナンス用孔から前記中空電柱内に挿入すると共に、照明を前記メンテナンス用孔と同一または別のメンテナンス用孔から前記中空電柱内に挿入し、前記内視鏡カメラまたはカメラケーブルに装着したカメラ姿勢安定具を前記中空電柱の内周面に接触させて前記内視鏡カメラの揺れを抑えながら、且つ、前記カメラ姿勢安定具の重さによって前記内視鏡カメラの向きを下向きに維持しながら、前記内視鏡カメラによって前記内周面の前記メンテナンス用孔よりも低い部分を撮影する中空電柱の内周面撮影方法によって前記中空電柱の内周面を内側目印部材とともに撮影して三次元形状を取得すると共に、外周面形状取得部によって前記中空電柱の外周面を外側目印部材とともに撮影して三次元形状を取得した後、三次元形状合成部によって前記内側目印部材の画像または映像と前記外側目印部材の画像または映像とに基づき前記外周面の三次元形状と前記内周面の三次元形状とを位置合わせして合成し、合成した三次元形状を表示部に表示することを特徴とする中空電柱の非破壊検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート柱、台柱部に鋼管部を継ぎ足す複合柱、鋼管柱、鋼板組立柱等の中空電柱の内周面撮影装置および非破壊検査装置、並びに中空電柱の内周面撮影方法および非破壊検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線を空中に架け渡すための柱として電柱が知られている。この種の電柱としてコンクリート柱が汎用されている。かかるコンクリート柱は、上下方向に長尺の多数の鉄筋を円筒状に配筋した後、コンクリートを充填し、鉄筋とコンクリートとを一体化して円筒状に形成したものである。この結果、圧縮力には強いが引張力に弱いコンクリートの弱点を鉄筋で補完して所定の強度を有するコンクリート柱としている。すなわち、鉄筋と一体化することで引張力を鉄筋が受け持ち、引張力にも圧縮力にも充分な強度を持たせるようにしている。
【0003】
この種のコンクリート柱には、製造時において、部位毎に異なる引張り応力や圧縮応力が生じている。また、長年の使用による湾曲や傾斜等によっても部分毎に引張り応力や圧縮応力が生じてしまう。さらに、長年の使用によってコンクリート柱は腐食することもある。これらのため、コンクリート柱には亀裂、剥離、浮き等の異常が発生するが、コンクリート柱の内部空間は閉じられた空間であるため、内周面に発生した異常を外から視認することは困難である。
【0004】
なお、コンクリート柱の鉄筋の破断等の異常状態を非破壊検査する手法としては、特許文献1に開示するような非破壊検査方法が提案されている。この特許文献1では、コンクリート柱の鉄筋の長手方向に沿ってコンクリート体上を永久磁石を移動させることにより、鉄筋を磁化させている。かくして、鉄筋の長手方向に沿って磁界を発生させる。その後、前記永久磁石を取り除いて、磁気センサを鉄筋の長手方向に沿って前記コンクリート体上を移動させながら、前記コンクリート体の表面上での鉄筋の残留磁束密度について、鉄筋の長手方向と直角な方向の磁束密度成分を測定し、該磁束密度成分の前記鉄筋の長手方向に沿った分布に基づいて破断箇所の有無を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006―177841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンクリート柱の内周面の異常を確認する手段として、コンクリート柱内に内視鏡カメラを挿入して内周面を撮影することが考えられる。しかしながら、コンクリート柱の検査では、内周面を撮影する内視鏡カメラとして、先端のカメラの向きを手元でコントロールできる機能を有する医療用の高価な内視鏡カメラを使用することはコスト的にできない。そのため、先端のカメラの向きを手元でコントロールする機能が省かれている安価な内視鏡カメラを使用せざるを得ないが、このような内視鏡カメラではカメラの向きを下向きにコントロールすることができず、内周面を全周にわたって撮影することができない。
【0007】
なお、特許文献1に開示された非破壊検査方法は、内周面に生じた亀裂等の異常を検出するためのものではない。
【0008】
本発明は、安価な装置類を使用して低コストでの撮影を可能にする中空電柱の内周面撮影装置および内周面撮影方法、並びにこれらを使用した中空電中の非破壊検査装置および非破壊検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明の中空電柱の非破壊検査装置は、中空電柱のメンテナンス用孔から中空電柱内に挿入されて中空電柱の内周面を撮影する内視鏡カメラと、内視鏡カメラまたは当該内視鏡カメラのカメラケーブルに装着されて内視鏡カメラと共にメンテナンス用孔から中空電柱内に挿入され、中空電柱の内周面に接して内視鏡カメラの揺れを抑えると共に、内視鏡カメラの向きを下向きに維持するカメラ姿勢安定具と、メンテナンス用孔と同一または別のメンテナンス用孔から中空電柱内に挿入される照明とを有する中空電柱の内周面撮影装置と、中空電柱のメンテナンス用孔から中空電柱内に挿入される内側目印部材と、内周面撮影装置によって内側目印部材とともに撮影された内周面の画像または映像に基づき内周面の三次元形状を取得する内周面三次元形状化部と、中空電柱の外周面を撮影する外周面撮影装置と、中空電柱の外側に長手方向に配置される外側目印部材と、外周面撮影装置によって外側目印部材とともに中空電柱の外周面を撮影して三次元形状を取得する外周面三次元形状化部と、内側目印部材の画像または映像と外側目印部材の画像または映像とに基づき内周面の三次元形状と外周面の三次元形状とを位置合わせして合成する三次元形状合成部と、合成された三次元形状を表示する表示部とを備えている。
【0012】
ここで、カメラ姿勢安定具は、内視鏡カメラの向きを下向きに維持する重さを有し、中空電柱内で作動流体が供給されると拡がる緩衝部材と、中空電柱の外から緩衝部材に作動流体を供給するチューブとを備える構成にしても良い。
【0013】
この場合には、内視鏡カメラおよびカメラ姿勢安定具を中空電柱内に挿入した後、チューブから緩衝部材に作動流体を供給すると、中空電柱内で緩衝部材を拡げることができる。内視鏡カメラは緩衝部材の重さによって下向きの状態を維持されると共に、拡がった緩衝部材が中空電柱の内周面に接触することで、その摩擦力によって内視鏡カメラの揺れが抑制される。
【0014】
また、カメラ姿勢安定具は、中空電柱内で作動流体が供給されると拡がる緩衝部材と、中空電柱の外から緩衝部材に作動流体を供給するチューブと、内視鏡カメラの向きを下向きに維持する重りとを備える構成にしても良い。
【0015】
この場合には、内視鏡カメラおよびカメラ姿勢安定具を中空電柱内に挿入した後、チューブから緩衝部材に作動流体を供給すると、中空電柱内で緩衝部材を拡げることができる。内視鏡カメラは重りの重さによって下向きの状態を維持される。また、拡がった緩衝部材が中空電柱の内周面に接触することで、その摩擦力によって内視鏡カメラの揺れが抑制される。
【0017】
さらに、中空電柱の非破壊検査方法は、内視鏡カメラを中空電柱のメンテナンス用孔から中空電柱内に挿入すると共に、照明をメンテナンス用孔と同一または別のメンテナンス用孔から中空電柱内に挿入し、内視鏡カメラまたはカメラケーブルに装着したカメラ姿勢安定具を中空電柱の内周面に接触させて内視鏡カメラの揺れを抑えながら、且つ、カメラ姿勢安定具の重さによって内視鏡カメラの向きを下向きに維持しながら、内視鏡カメラによって内周面のメンテナンス用孔よりも低い部分を撮影することによって中空電柱の内周面を内側目印部材とともに撮影して三次元形状を取得すると共に、外周面撮影装置によって中空電柱の外周面を外側目印部材とともに撮影して三次元形状を取得した後、三次元形状合成部によって内側目印部材の画像または映像と外側目印部材の画像または映像とに基づき外周面の三次元形状と内周面の三次元形状とを位置合わせして合成し、合成した三次元形状を表示部に表示するものである。
【0018】
したがって、内周面撮影装置によって内側目印部材とともに撮影された中空電柱の内周面の映像または画像は内周面三次元形状化部に供給され、内周面の三次元画像が形成される。また、外周面撮影装置によって外側目印部材とともに撮影された中空電柱の外周面の映像または画像は外周面三次元形状化部に供給され、外周面の三次元画像が形成される。内周面の三次元画像と外周面の三次元画像は三次元形状合成部によって合成され、表示部に表示される。三次元形状合成部が内周面の三次元画像と外周面の三次元画像を合成する際、各三次元画像に映り込んでいる内側目印部材と外側目印部材に基づいて正確に位置合わせをすることができる。
【発明の効果】
【0020】
また、本発明の中空電柱の非破壊検査装置および非破壊検査方法によれば、表示部に表示される中空電柱の三次元画像には亀裂、剥離、浮き等の異常も再現されているので、この三次元画像を確認することで中空電柱を非破壊検査することができる。表示部に表示される中空電柱の三次元画像は、その内周面の三次元画像と外周面の三次元画像とが正確に位置合わせされているので、生じている異常が表面だけの浅いものであるか、内周面から外周面まで貫通した深いものであるかを簡単に判別することができ、その異常に対する処置の緊急性を判断することが可能になる。さらに、上述の内周面撮影装置を採用するので、非破壊検査装置の製造コストを安く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の中空電柱の内周面撮影装置の実施形態の一例を示す概念図である。
図2図1の内周面撮影装置のカメラ姿勢安定具を示す側面図である。
図3】カメラ姿勢安定具の役割を説明するための図で、内視鏡カメラをそのまま中空電柱内に挿入した様子を示す概念図である。
図4】カメラ姿勢安定具の役割を説明するための図で、内視鏡カメラに重りをつけて中空電柱内に挿入した様子を示す概念図である。
図5】本発明の中空電柱の非破壊検査装置の実施形態の一例を示す概念図である。
図6図5の内周面撮影装置を示す概念図である。
図7図6の内側目印部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1および図2に、本発明の中空電柱の内周面撮影装置の実施形態の一例を示す。中空電柱1の内周面撮影装置2は、中空電柱1のメンテナンス用孔1aから中空電柱1内に挿入されて中空電柱1の内周面11を撮影する内視鏡カメラ3と、内視鏡カメラ3または当該内視鏡カメラ3のカメラケーブル3aに装着されて内視鏡カメラ3と共にメンテナンス用孔1aから中空電柱1内に挿入され、中空電柱1の内周面11に接して内視鏡カメラ3の揺れを抑えると共に、内視鏡カメラ3の向きを下向きに維持するカメラ姿勢安定具4と、メンテナンス用孔1aと同一または別のメンテナンス用孔1aから中空電柱1内に挿入される照明5とを備えている。
【0024】
中空電柱1は、例えば地面に立てられたコンクリート製の台柱の上に鋼管柱を継ぎ足した複合柱である。ただし、複合柱に限るものではなく、コンクリート柱、鋼管柱、鋼板組立柱等の中空の電柱であれば適用可能である。中空電柱1には足場用の棒状部材が所定間隔で複数設けられており、作業者が中空電柱1に登る際に手足を掛ける足場として使用される。各棒状部材は中空電柱1に対してねじ込まれる。各棒状部材をねじ込む孔が本実施形態ではメンテナンス用孔1aとして利用される。ただし、専用のメンテナンス用孔1aが設けられている場合には、このメンテナンス用孔1aを使用しても良い。
【0025】
内視鏡カメラ3は、中空電柱1のメンテナンス用孔1aから中空電柱1内に挿入される。内視鏡カメラ3としては、例えば安価な普及品、すなわち、先端のカメラの向きをコントロールできる機能が省略されているものの使用が好ましい。例えば、ファイバースコープと称されて市販されているものの使用が可能である。安価な内視鏡カメラ3を使用することで、内周面撮影装置2の製造コストを下げることができる。勿論、先端のカメラの向きをコントローラできる機能を有する内視鏡カメラの使用を否定するものではない。内視鏡カメラ3は、画像表示手段例えばスマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン等に有線接続(USB接続等)または無線接続(Wi-Fi接続、Bluetooth(登録商標)接続等)され、付属画面に撮影した映像を映すことができる。本実施形態では、内視鏡カメラ3はスマートフォン8に接続されており、スマートフォン8の画面に内視鏡カメラ3が撮影した映像が映し出される。作業者は、映し出された映像を見ることで、中空電柱1の内周面11の状態を確認することができる。この場合、内視鏡カメラで撮影した映像をスマートフォン等の画面に映すことができるので、特別な表示部が不要になり、このことからも内周面撮影装置の製造コストを安く抑えることができる。
【0026】
カメラ姿勢安定具4は、内視鏡カメラ3を下向きの姿勢に維持するためのものであり、内視鏡カメラ3を鉛直方向に垂れ下がるような力を付与する手段例えば重さを備えるものである。本実施形態の場合、内視鏡カメラ3の向きを下向きに維持する重さを有し、中空電柱1内で作動流体が供給されると拡がる緩衝部材9と、中空電柱1の外から緩衝部材9に作動流体を供給するチューブ10とを備えている。緩衝部材9は、例えばドーナツ形状の袋状部材で、内視鏡カメラ3の先端のカメラ部分またはカメラ部分近傍のカメラケーブル3aを囲むように装着されている。緩衝部材9は、通常状態では折り畳まれて萎んでおり、メンテナンス用孔1aの中を通過することができる。また、緩衝部材9に作動流体が供給されると、緩衝部材9は拡がって膨らむ(図2の状態)。
【0027】
緩衝部材9にはチューブ10の先端が接続されており、チューブ10を通じて作動流体が供給・排出される。作動流体は、例えば空気(大気)である。空気であれば現場での調達および廃棄が極めて容易であるため、空気の使用が好ましい。ただし、空気に限るものではなく、例えばボンベ等に封入された気体でも良く、あるいは水などの液体若しくは気体と液体との混合物でも良い。
【0028】
チューブ10の基端には、例えばポンプおよび逆止弁(いずれも図示せず)が接続されており、ポンプを作動させることで作動流体を緩衝部材9に供給することができる。そして、緩衝部材9が十分拡がった後、ポンプを停止させても、逆止弁の働きによって緩衝部材9内からの作動流体の抜けが防止されるので、緩衝部材9の拡がった状態は維持される。そして、この状態で逆止弁を開くと、緩衝部材9の弾性力によって作動流体が緩衝部材9内から押し出されてチューブ10の基端から排出される。これにより、緩衝部材9が元の折り畳まれて萎んだ形状に戻る。ポンプは、例えば手動ポンプまたは電動ポンプである。
【0029】
照明5は、本実施形態では、LEDバーライト5aとLEDテープライト5bを使用している。ただし、これらに限るものではなく、メンテナンス用孔1aから中空電柱1内に挿入できて内視鏡カメラ3の撮影範囲を照らすことができるものであればこれらに限るものではない。また、内視鏡カメラ3の撮影範囲を十分に照らすことができれば、LEDバーライト5aとLEDテープライト5bのいずれか一方のみの使用でも良い。
【0030】
本実施形態では、内視鏡カメラ3を挿入したメンテナンス用孔1aと同一の孔から照明5としてのLEDバーライト5aとLEDテープライト5bが中空電柱1内に挿入されている。ただし、LEDバーライト5aとLEDテープライト5bの双方またはいずれか一方を、内視鏡カメラ3を挿入したメンテナンス用孔1aとは別のメンテナンス用孔1aから中空電柱1内に挿入しても良い。LEDバーライト5aはメンテナンス用孔1aに挿入されて中空電柱1内を径方向に横切るように配置され、LEDテープライト5bはメンテナンス用孔1aに挿入されて中空電柱1内につり下げられるように配置されている。
【0031】
次に、中空電柱1の内周面撮影方法について説明する。この内周面撮影方法の実施には内周面撮影装置2の使用が適している。中空電柱1の内周面撮影方法は、内視鏡カメラ3を中空電柱1のメンテナンス用孔1aから中空電柱1内に挿入すると共に、照明5をメンテナンス用孔1aと同一または別のメンテナンス用孔1aから中空電柱1内に挿入し、内視鏡カメラ3またはカメラケーブル3aに装着したカメラ姿勢安定具4を中空電柱1の内周面11に接触させて内視鏡カメラ3の揺れを抑えながら、且つ、カメラ姿勢安定具4の重さによって内視鏡カメラ3の向きを下向きに維持しながら、内視鏡カメラ3によって内周面11のメンテナンス用孔1aよりも低い部分を撮影するものである。
【0032】
先ずはじめに、カメラ姿勢安定具4の緩衝部材9が折り畳まれている状態の内視鏡カメラ3と、LEDテープライト5bと、LEDバーライト5aをメンテナンス用孔1aから中空電柱1内に挿入する。本実施形態では、内視鏡カメラ3、LEDテープライト5b、LEDバーライト5aを同一のメンテナンス用孔1aから挿入しているが、別々のメンテナンス用孔1aから挿入しても良い。LEDテープライト5bは中空電柱1内の空間の下の方まで十分に照らすことができるように所定の位置まで降ろされる。
【0033】
内視鏡カメラ3は、メンテナンス用孔1aから挿入される。このとき、メンテナンス用孔1aは横向き(径方向の向き)に設けられているので、仮にカメラ姿勢安定具4が装着されていない場合には、内視鏡カメラ3の向きを下向きにし難い。すなわち、内視鏡カメラ3のカメラケーブル3aは所定の強度を有しているため、図3に示すように、横向きのメンテナンス用孔1aから挿入された内視鏡カメラ3はすぐには下向きにはならず、内周面11に接しながら螺旋状に下降する。この状態では、中空電柱1内に内視鏡カメラ3をいくら送り込んでも内視鏡カメラ3を下向きにすることは難しく、内周面11の全周を同時に内視鏡カメラ3の視野に収めることができない。また、螺旋状のカメラケーブル3aが柔らかいコイルのように揺れてしまうので、内視鏡カメラ3の揺れを素早く止めて安定させることが難しい。内視鏡カメラ3はオートフォーカス機能を有しており、ピントを自動的に合わせながら撮影を行うことができるが、内視鏡カメラ3が揺れているとピント合わせが難しくなる。
【0034】
本発明では、図1に示すように、カメラ姿勢安定具4を備えているので、横向きのメンテナンス用孔1aから内視鏡カメラ3を挿入しても、内視鏡カメラ3の向きを下向きにすることができると共に、内視鏡カメラ3の揺れを抑えることができる。すなわち、内視鏡カメラ3をある程度まで奥に挿入すると、カメラ姿勢安定具4の重さで内視鏡カメラ3が下向きになる。また、作動流体を供給して緩衝部材9を拡げることで、緩衝部材9をある程度広い面積で内周面11に接触させることができ、その摩擦力で内視鏡カメラ3の揺れを素早く抑えることができる。緩衝部材9はクッションのように弾性力を有しており、内周面11に対する接触面積をある程度広く確保することができるので、内周面11との間に大きな摩擦力を発生させることができ、この摩擦力によって内視鏡カメラ3の揺れを効果的に抑えることができる。また、緩衝部材9は内視鏡カメラ3の先端のカメラ部分またはカメラ部分近傍をドーナツ状に囲んでいるので、内視鏡カメラ3が捻れても内周面11への接触は良好に保たれ、その摩擦力で常に内視鏡カメラ3の揺れを素早く抑えることができる。
【0035】
中空電柱1内への内視鏡カメラ3の挿入量を調整し、内視鏡カメラ3の高さを変えながら撮影を行う。すなわち、内視鏡カメラ3を下に降ろすときに撮影を行っても良いし、いったん降ろした後に引き上げながら撮影を行っても良い。あるいは、内視鏡カメラ3を降ろすときと引き上げるときの両方で撮影を行っても良い。内視鏡カメラ3は緩衝部材9を内周面11に接触させながら昇降する。また、カメラケーブル3aを捻ることで内視鏡カメラ3および緩衝部材9を捻るように回転させることができるので、緩衝部材9を車輪のように利用して内視鏡カメラ3を周方向に移動させることができる。そのため、内視鏡カメラ3を周方向にずらしながら昇降させて内周面11を撮影することができ、内周面撮影時のLEDテープライト5bによる死角を無くすことができる。内視鏡カメラ3によって撮影された映像または画像は、スマートフォン8の画面に映し出される。
【0036】
カメラ姿勢安定具4によって内視鏡カメラ3の向きを下向きに維持することができるので、内周面11の全周を視野に収めながら撮影することができる。また、カメラ姿勢安定具4によって内視鏡カメラ3の揺れを抑えることができるので、内視鏡カメラ3のオートフォーカス機能によってピントの合った映像または画像を取得することができる。
【0037】
作業者はスマートフォン8の画面に映し出された映像または画像を見ることで、中空電柱1の内周面11の状態を確認することができる。このとき、作業者は、スマートフォン8の画面の映像を見ながら内視鏡カメラ3を移動させることで、内周面11の撮影位置を調節し、見たい部位を観察することができる。
【0038】
撮影終了後、カメラ姿勢安定具4の緩衝部材9を元の折り畳まれた形状に戻し、内視鏡カメラ3をメンテナンス用孔1aから引き抜く。同様に、LEDバーライト5aとLEDテープライト5bも引き抜く。その後、メンテナンス用孔1aを塞げば作業を終了させることができる。
【0039】
次に、中空電柱1の非破壊検査装置について説明する。非破壊検査装置14は、図5および図6に示すように、内周面撮影装置2と、地面6に立てられた中空電柱1のメンテナンス用孔1aから中空電柱1内に挿入される内側目印部材15と、内周面撮影装置2によって内側目印部材15とともに撮影された内周面11の画像または映像に基づき内周面11の三次元形状を取得する内周面三次元形状化部16と、中空電柱1の外周面12を撮影する外周面撮影装置22と、中空電柱1の外側に長手方向に配置される外側目印部材17と、外周面撮影装置22によって外側目印部材17とともに中空電柱1の外周面12を撮影して三次元形状を取得する外周面三次元形状化部23と、内側目印部材15の画像または映像と外側目印部材17の画像または映像とに基づき内周面11の三次元形状と外周面12の三次元形状とを位置合わせして合成する三次元形状合成部19と、合成された三次元形状18を表示する表示部20とを備えている。
【0040】
内周面撮影装置2の内視鏡カメラ3はコンピュータ21に有線接続または無線接続されており、撮影された映像または画像のデータは後述するようにコンピュータ21によって実現される内周面三次元形状化部16に供給される。
【0041】
コンピュータ21は、図示していないが、通常、制御部(中央演算処理部),記憶部,入力部,表示部,及びメモリを備え、これらが相互にバス等の信号回線によって接続されている。市販されているスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末は、コンピュータとして十分な機能を備えている。そこで、本実施形態の場合、例えばスマートフォンやタブレット端末などに必要なアプリケーションソフト(三次元画像処理ソフトなど)をインストールすることにより、コンピュータ代わりとして使用するようにしている。
【0042】
本実施形態の場合、図5に示すように、アプリケーションソフト例えば三次元画像処理ソフトなどを実行させることで、コンピュータを上述の内周面三次元形状化部16と、外周面三次元形状化部23と、三次元形状合成部19として機能させるようにしている。そして、合成された三次元形状18が画面(表示部20)に表示されるようにしている。
【0043】
また、本実施形態では、内側目印部材15として中空電柱1内に挿入されるLEDテープライト5bを使用している。LEDテープライト5bには、図7に示すように、所定間隔で複数のLEDライト24が設けられているが、本実施形態では複数の色のLEDライト24が採用されている。各LEDライト24の色と位置は既知であり、また、中空電柱1内につり下げられているLEDテープライト5bは動かないので、撮影時に内周面11と一緒に内側目印部材15としてのLEDテープライト5bを映り込ませることで、映像中または画像中の内周面11の位置関係が明らかになり、内周面11の三次元形状(三次元画像)と後述する外周面12の三次元形状(三次元画像)とを合成する際の基準として機能させることができる。
【0044】
内周面三次元形状化部16は、内視鏡カメラ3によって撮影された内周面11の映像または画像に基づき内周面11の三次元画像を生成するもので、例えばコンピュータ21による画像処理によって実現される。内視鏡カメラ3によって撮影された映像または画像には内側目印部材15も一緒に映り込んでいるので、内周面三次元形状化部16によって生成された三次元画像には、内側目印部材15の三次元画像も含まれている。内周面三次元形状化部16によって生成された三次元画像のデータは三次元形状合成部19に供給される。
【0045】
外周面撮影装置22は、中空電柱1の外周面12を撮影するものであり、中空電柱1の外周面12と共に中空電柱1の外側に長手方向に配置された外側目印部材17をも撮影して、コンピュータ21に取り込ませ、中空電柱1の外周面12の三次元形状を生成する外周面三次元形状化部23で外周面三次元形状化処理をさせるようにしている。
【0046】
外周面撮影装置22は、例えば独立したデジタルカメラやビデオカメラ等であっても良いが、その他の撮像手段例えばスマートフォン、タブレット端末、携帯電話等の携帯端末に内蔵されているカメラであっても良い。中空電柱1の外周面12を全周にわたり三次元形状化するためには外周面12の全周の映像または画像が必要になるが、1台の外周面撮影装置22を使用し、外周面撮影装置22を移動させることで外周面12の全周の映像または画像を取得しても良いし、外周面12を囲むように複数台の外周面撮影装置22を配置して撮影することで外周面12の全周の映像または画像を取得しても良い。
【0047】
外側目印部材17は、例えばテープ状の目盛、一定間隔で目印となる模様等がついた紐状部材等である。外側目印部材17は、例えばメンテナンス用孔1aに挿入されているLEDバーライト5aの突出部分につり下げられている。外側目印部材17に付されている目盛や模様等の位置は既知であり、また、中空電柱1の外につり下げられている外側目印部材17は動かないので、撮影時に外周面12と一緒に外側目印部材17を映り込ませることで、映像中または画像中の外周面12の位置関係が明らかになり、内周面11の三次元形状(三次元画像)と外周面12の三次元形状(三次元画像)とを合成する際の基準として機能させることができる。
【0048】
なお、中空電柱1内に設けられた内側目印部材15と外に設けられた内側目印部材15との位置関係は予め明らかになっている。このため、後述する三次元形状合成部19が内周面11の三次元形状(三次元画像)と外周面12の三次元形状(三次元画像)とを合成する際、両者を正確に位置合わせすることができる。
【0049】
外周面三次元形状化部23は、外周面撮影装置22によって撮影された外周面12の映像または画像に基づき外周面12の三次元画像を生成するもので、所定のアプリケーションソフトを実行させることでコンピュータ21を機能させて実現される。コンピュータ21にはソフトウェアが予めインストールされており、ソフトウェアの実行により所定の画像処理が行われ、外周面三次元形状化部23が実現される。外周面撮影装置22によって撮影された映像または画像には外側目印部材17も一緒に映り込んでいるので、外周面三次元形状化部23によって生成された三次元画像には、外側目印部材17の三次元画像も含まれている。外周面三次元形状化部23によって生成された三次元画像のデータは三次元形状合成部19に供給される。
【0050】
三次元形状合成部19は、内周面三次元形状化部16によって生成された内周面11の三次元画像と、外周面三次元形状化部23によって生成された外周面12の三次元画像とを合成し、内周面と外周面とからなる中空電柱1の三次元画像を再現するもので、コンピュータ21によって実現される。コンピュータ21には所定のソフトウェアが予めインストールされており、ソフトウェアの実行により所定の画像処理が行われ、三次元形状合成部19が実現される。三次元形状合成部19によって形成された中空電柱1の三次元画像は、表示部20に供給される。
【0051】
表示部20は、例えばコンピュータ21のディスプレイあるいはスマートフォンなどの携帯端末をコンピュータ代わりとして利用する場合にはその画面である。表示部20に表示された中空電柱1の三次元画像は、図示しないマウスやキーボード等の入力装置の操作によって回転させたり、移動させたり、拡大・縮小するなど、動かすことができる。
【0052】
次に、中空電柱1の非破壊検査方法について説明する。この非破壊検査方法の実施には非破壊検査装置14の使用が適している。中空電柱1の非破壊検査方法は、上述の内周面撮影方法によって中空電柱1の内周面11を内側目印部材15とともに撮影して三次元形状を取得すると共に、外周面撮影装置22によって中空電柱1の外周面12を外側目印部材17とともに撮影して外周面三次元形状化部23で三次元形状を取得した後、三次元形状合成部19によって内側目印部材15の画像または映像と外側目印部材17の画像または映像とに基づき外周面12の三次元形状と内周面11の三次元形状とを位置合わせして合成し、合成した三次元形状を表示部20に表示するものである。
【0053】
まず最初に、中空電柱1の内周面11と外周面12をそれぞれ別々に撮影する。内周面11の撮影には内周面撮影装置2が使用され、上述の手順で撮影が行われる。一方、外周面12の撮影には外周面撮影装置22としてのデジタルカメラあるいはスマートファンなどに内蔵されたカメラが使用される。中空電柱1には外側目印部材17が設けられており、この外側目印部材17とともに外周面12を撮影する。
【0054】
内周面撮影装置2の内視鏡カメラ3によって撮影された内周面11の映像または画像は内周面三次元形状化部16に供給される。内周面三次元形状化部16は所定の画像処理を行い、内周面11の三次元画像を生成する。生成された三次元画像は、三次元形状合成部19に供給される。
【0055】
また、外周面撮影装置22によって撮影された外周面12の映像または画像は外周面三次元形状化部23に供給される。外周面三次元形状化部23は所定の画像処理を行い、外周面12の三次元画像を生成する。生成された三次元画像は、三次元形状合成部19に供給される。
【0056】
三次元形状合成部19は、内周面11の三次元画像と外周面12の三次元画像を合成し、内周面11と外周面12とから成る中空電柱1の三次元画像を形成する。例えば、内周面11の三次元画像に映り込んでいる内側目印部材15と外周面12の三次元画像に映り込んでいる外側目印部材17とに基づいて内周面11の三次元画像と外周面12の三次元画像の高さ方向の位置と周方向の角度を合わせた後、内周面11の三次元画像の中心と外周面12の三次元画像の中心を合わせて両三次元画像を合成することで、内周面と外周面とから成る中空電柱1の三次元画像を形成することができる。
【0057】
形成された中空電柱1の三次元画像は表示部20に表示される。作業者は、マウス等を操作し、表示されている中空電柱1の三次元画像を動かしたり拡大・縮小させながら検査を行う。
【0058】
中空電柱1の内周面11に亀裂、剥離、浮き等の異常が生じている場合、内視鏡カメラ3によって撮影された映像または画像にはこれらの異常が映り込んでいるので、これらの異常は内周面11の三次元画像に再現される。同様に、中空電柱1の外周面12に亀裂、剥離、浮き等の異常が生じている場合、カメラ22によって撮影された映像または画像にはこれらの異常が映り込んでいるので、これらの異常は外周面12の三次元画像に再現される。したがって、作業者は、表示部20に表示された中空電柱1の三次元画像を見ることで内周面11と外周面12の亀裂や剥離等の異常を確認することができ、それら亀裂などの欠陥が肉厚方向に貫いているのかどうかを非破壊で検査することができる。
【0059】
三次元形状合成部19によって形成された中空電柱1の三次元画像は、その内周面11と外周面12とが正確に位置合わせされているので、生じている異常が表面だけの浅いものであるか、内周面11から外周面12まで貫通した深いものであるかを簡単に判別することができる。すなわち、内周面11と外周面12の対応する位置に同一形状または類似形状の亀裂が確認できた場合、その亀裂は内周面11から外周面12まで貫通していると判断できる。また、内周面11と外周面12のいずれか一方にしか亀裂が確認できなければ、その亀裂は表面だけの浅いものであると判断できる。したがって、亀裂や剥離等の異常を見つけることができるだけでなく、その異常に対する処置の緊急性も判断することが可能になる。
【0060】
また、本発明では、中空電柱1の内周面11と外周面12を撮影した映像または画像に基づいて非破壊検査を行うので、遠隔地の中空電柱1についても容易に非破壊検査を行うことができる。すなわち、中空電柱1の内周面11と外周面12を撮影した映像または画像を準備できれば現場以外の場所でも非破壊検査を行うことができるので、例えば、地方の駐在員等に撮影を依頼して映像または画像を送ってもらうことで、地方の中空電柱1についても非破壊検査を行うことができる。
【0061】
また、本発明では、内周面撮影装置2を安価な工業用内視鏡カメラ3や照明5とスマートフォン等の汎用機器類で構成することができる。また、外周面撮影装置22及び三次元画像処理を関連するソフトウェアをインストールしたスマートフォン等の汎用機器類で代用することができる。したがって、内周面撮影装置2およびこれを使用した非破壊検査装置14の製造コストを安くすることができる。
【0062】
なお、上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例であるがこれに限るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0063】
例えば、上述の実施形態では、カメラ姿勢安定具4は、緩衝部材9の重さによって内視鏡カメラ3の向きを下向きに維持するようにしているが、この構成に限られるものではない。例えば、図4に示すように、内視鏡カメラ3の先端近傍に重り13を付けることも可能である。この場合には内視鏡カメラ3の向きを下向きにし且つ内視鏡カメラ3の揺れを迅速に抑えることができるに十分な重さの重りとすることが望まれる。
【0064】
また、重り13だけでは中空電柱1の内周面11からの間隔を一定に保ったり、中空電柱1の内周面11に対して平行に光軸を保つことが難しい場合には、緩衝部材9を併用することが好ましい。すなわち、カメラ姿勢安定具4は、中空電柱1内で作動流体が供給されると拡がる緩衝部材9と、中空電柱1の外から緩衝部材9に作動流体を供給するチューブ10と、内視鏡カメラ3の向きを下向きに維持する重り13とを備える構成にしても良い。重り13の大きさ・形状は、メンテナンス用孔1aを通過できる大きさ・形状であれば良い。この場合も、重り13によって内視鏡カメラ3の向きを下向きに維持することができるので、内周面11の全周を視野に収めながら撮影することができる。また、緩衝部材9によって内視鏡カメラ3の揺れを抑えることができるので、内視鏡カメラ3のオートフォーカス機能によってピントの合った映像または画像を撮影することができる。さらに、必要な重さを重りによって得ることができるので、緩衝部材9をわざわざ重くする必要がなくなる。
【0065】
また、上述の説明では、内側目印部材15としてLEDテープライト5bを使用していたが、内周面11の三次元形状と外周面12の三次元形状とを合成する際の基準となるものであればLEDテープライト5bに限るものではない。例えば、テープ状の目盛、一定間隔で目印となる模様等がついた紐状部材等の使用も可能である。
【0066】
また、内視鏡カメラ3や照明5をメンテナンス用孔1aから中空電柱1内に挿入する際、ガイドを使用しても良い。例えば、樋状のガイドをメンテナンス用孔1aに挿入し、ガイド上を滑らせるようにして内視鏡カメラ3や照明5を挿入しても良い。ガイドを設けることで、内視鏡カメラ3や照明5の挿入が容易になる。また、照明5としてのLEDテープライト5bをガイドの先端から垂らすようにすれば、ガイドの先端位置を変化させることでLEDテープライト5bのつり下げ位置を調節することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
中空電柱1の非破壊検査に使用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 中空電柱
1a メンテナンス用孔
2 内周面撮影装置
3 内視鏡カメラ
3a カメラケーブル
4 カメラ姿勢安定具
5 照明
9 緩衝部材
10 チューブ
11 内周面
12 外周面
13 重り
14 非破壊検査装置
15 内側目印部材
16 内周面三次元形状化部
17 外側目印部材
19 三次元形状合成部
20 表示部
21 コンピュータ
22 外周面撮影装置
23 外周面三次元形状化部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7