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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】冷凍惣菜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 35/00 20160101AFI20230403BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20230403BHJP
   A23L 3/42 20060101ALN20230403BHJP
   A23B 7/022 20060101ALN20230403BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L3/36 Z
A23L3/42
A23B7/022
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018231336
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020092619
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大西 篤
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/062776(WO,A1)
【文献】特開2015-192604(JP,A)
【文献】特開昭63-164871(JP,A)
【文献】特開昭62-130670(JP,A)
【文献】特開2012-120508(JP,A)
【文献】特開2018-033425(JP,A)
【文献】特開2007-209331(JP,A)
【文献】特開2004-033083(JP,A)
【文献】野菜高騰 乾燥野菜たっぷりの海鮮揚げ餃子,[クックパッド] 簡単おいしいみんなのレシピが366万品[online],2016年11月18日,更新日:2020/2/29[検索日:2022.3.29],https://cookpad.com/recipe/4188812
【文献】大豆ミート+乾燥野菜でつくね風,[クックパッド] 簡単おいしいみんなのレシピが366万品[online],2016年12月24日,[検索日:2022.3.29],https://cookpad.com/recipe/4252771
【文献】乾燥野菜deお手軽餃子,[クックパッド] 簡単おいしいみんなのレシピが366万品[online],2017年07月19日,[検索日:2022.3.29],https://cookpad.com/recipe/4628206
【文献】日本食品標準成分表 五訂,初版二刷,2004年,p.82,84,94,102,106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水することなく水分含量が50~90重量%となるように水分を吸水させたポーラスな構造でない熱風乾燥カット野菜を、微細カット状またはペースト状に加工することなく、含むことを特徴とする冷凍惣菜。
【請求項2】
前記水分含量が50~70重量%であることを特徴とする請求項1記載の冷凍総菜。
【請求項3】
前記吸水させた熱風乾燥カット野菜が水分を吸いきる方法により調整されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の冷凍総菜。
【請求項4】
前記熱風乾燥カット野菜が糖類を含むことを特徴とする請求項1~3何れか一項記載の冷凍惣菜。
【請求項5】
生野菜をカットし、ブランチングした後、必要により糖浸漬または糖混合を行い、40~100℃で風速10m/s以下の熱風により水分重量%以下になるまで乾燥した熱風乾燥カット野菜を、
水分含量が50~90重量%となるように、脱水することなく、水分を吸水させ、
前水分を吸水させた熱風乾燥カット野菜を、微細カット状またはペースト状に加工することなく、生野菜の全部または一部代替として、肉類のミンチまたは/及び穀物を原料とするバッターと混合し、加熱調理した後、冷凍することを特徴とする冷凍惣菜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍惣菜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、お好み焼きや餃子、メンチカツ、肉団子、つみれ、ハンバーグなどの冷凍惣菜が上市されている。これらの冷凍惣菜には、カットされた生野菜が含まれているが、冷凍処理や冷凍惣菜を電子レンジ等で調理する際の再加熱処理により、野菜のもつ歯ごたえのある食感が得られにくく、また、野菜から水分が多く出るため、惣菜自体が水っぽくなるといった課題があった。
【0003】
また、家庭とは異なり、機械的に冷凍惣菜を作製する場合、生野菜の添加量を多くすると成形性が悪くなるため、生野菜を混合する量に制限があった。
【0004】
ところで乾燥した野菜を水で半戻しして冷凍する技術が特許文献1に記載されているが、これは、乾燥野菜の保存する技術であり、また、乾燥野菜を直ちに食用できるようにする技術であって、冷凍惣菜に使用するための技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-182464号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、野菜のもつ歯ごたえのある食感を有する冷凍惣菜及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、キャベツやニンジンなどの野菜を含む惣菜について、冷凍惣菜の開発を試みたが、生野菜を原料として使用した場合、惣菜を作製した直後は、野菜のもつ歯ごたえを有しているものの、惣菜を冷凍し、電子レンジ等で再加熱調理すると野菜のもつ歯ごたえが弱くなり、満足のいく野菜のもつ歯ごたえのある食感を有する冷凍惣菜は得ることができなかった。そこで鋭意研究した結果、本発明に至った。
【0008】
すなわち、水分含量が50~90重量%となるように水分を吸水させた熱風乾燥カット野菜を含むことを特徴とする冷凍惣菜である。
【0009】
また、本発明に係る熱風乾燥カット野菜は、キャベツ、チンゲン菜、白菜、タマネギ、ニンジン及びゴボウの少なくとも1つであることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る熱風乾燥カット野菜は、糖類を含むことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る冷凍惣菜は、ミンチした肉類または穀物粉を主原料とするバッターと、野菜と、を混合した食品であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る冷凍惣菜の製造方法は、生野菜をカットし、ブランチングした後、必要により糖浸漬または糖混合を行い、熱風により水分8重量%以下になるまで乾燥した熱風乾燥カット野菜に、水分含量が50~90重量%となるように水分を吸水させ、水分を吸水させた熱風乾燥カット野菜を、生野菜の全部または一部代替として、肉類のミンチまたは穀物を原料とするバッターと混合し、加熱調理した後、冷凍することを特徴とする冷凍惣菜の製造方法であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、野菜のもつ歯ごたえのある食感を有する冷凍惣菜及びその製造方法を提供することができる。また、熱風乾燥カット野菜を使用することで、生野菜を添加する場合と比較して、生野菜換算で多くの野菜を添加することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る冷凍惣菜は、熱風乾燥カット野菜を含む。
【0015】
本発明に係る熱風乾燥カット野菜の種類としては、繊維質な野菜が好ましく、キャベツ、白菜、チンゲン菜などのシャキシャキとした歯ごたえを有する葉物野菜、タマネギなどの鱗茎野菜や、ニンジン、ゴボウなどの繊維質な歯ごたえを有する根菜などが挙げられる。
【0016】
本発明に係る熱風乾燥カット野菜の製造方法は、上記野菜をカットし、熱風により乾燥して作製される。
【0017】
カット方法は特に限定はなく、みじん切りや、細切り、角切り、ささがき、輪切り、短冊切りなど作製する惣菜に合わせて野菜をカットすればよい。カットした野菜は、酵素失活のため、ブランチング処理を施すことが好ましい。ブランチング条件は野菜やカット方法により変化するため、特に限定はないが、野菜の持つ繊維感がなくならない程度に適宜調整して行えばよい。
【0018】
また、乾燥前のブランチング処理した野菜に対して、糖類を添加することが好ましい。糖類を添加することで、乾燥中の色素の変化が抑制され、保存性が増し、適度な柔軟性を持つことができ、保存中の割れが抑制されるだけでなく、冷凍惣菜中で冷凍保存される際の食感の劣化も抑制される。糖の種類としては、グルコース、ラクトース、マルトースなどの糖や、ソルビトール、還元水あめなどの糖類が挙げられる。添加量としては、脱水後の生野菜の重量に対して、5~25重量%添加することが好ましい。
【0019】
ブランチング処理したカット野菜は、40~100℃の熱風でカット野菜が収縮するようにゆっくりと乾燥し、水分が8重量%以下となるように乾燥することが好ましい。しっかりと水分を低下させることで野菜が収縮し、繊維感を強く感じるようなるだけでなく、保存性が効き、また、水分調整を行いやすい。好ましい熱風の風速としては、10m/s以下、乾燥時間としては1~8時間程度で乾燥することが好ましい。
【0020】
乾燥野菜としては、真空凍結乾燥や高温高風速熱風乾燥、マイクロ波乾燥などで乾燥した乾燥野菜があるが、これらの乾燥野菜は、ポーラスな構造として乾燥されるため、これらの乾燥方法で乾燥させた乾燥野菜に水分を吸水させたものを冷凍惣菜の原料として使用しても、野菜の持つ歯ごたえのある食感を得ることはできない。
【0021】
作製した熱風乾燥カット野菜は、水分含量が50~90重量%となるように水分を吸水させ、生野菜の代わりとして使用する。
【0022】
熱風乾燥カット野菜に水分を吸水させる方法は特に限定はないが、求める水分量に合わせて水等を熱風乾燥野菜に注ぎ、吸い切るまで放置することにより調整する方法が水分量を調整する上で好ましい。
【0023】
また、熱風乾燥カット野菜に吸水させる水分としては、単純に水でもよいが、食塩や糖などを溶解した水溶液やだし汁などで味付けすることも可能である。
【0024】
熱風乾燥カット野菜に水分を吸水させるための水等の温度は特に限定はなく、冷水から沸騰水までいずれも使用できる。温度が高いほど吸水時間は短くなるが、水分量をコントロールするのが難しく、熱による加熱により食感が弱くなるため、できるだけ低温の水で時間をかけて吸水させることが好ましい。具体的には、60℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは、20℃以下の水で水分を吸水させることが好ましい。
【0025】
吸水させた熱風乾燥カット野菜の水分含量が50重量%未満であると、吸水が不十分な場所が発生する可能性があるため好ましくない。また、熱風乾燥カット野菜は、生の水分量よりも低い水分量までしか復元しないため、吸水できる最大の水分量まで吸水させてもよいが、野菜の種類や糖の有無により吸水できる水分の量は異なるため、生野菜の水分値よりも少ない水分値で、水分含量が90重量%以下となるように水分を吸水させればよい。また、吸水させる水分量が少ない方が、食感が好ましく、多く野菜を添加できるため、より好ましくは、70重量%以下となるように熱風乾燥野菜に水分を吸水させることが好ましい。尚、生野菜の水分値については、産地、時期、保管方法により前後するため、日本食品成分表(7訂)の対応する生野菜の部位の水分値を基準とすればよい。
【0026】
次いで水分を吸水させた熱風乾燥カット野菜を冷凍惣菜の原料として使用する。水分を吸水させた熱風乾燥カット野菜は、カットされているため、そのまま使用してもよいが、必要であれば、再度カットして使用することもできる。
【0027】
本発明に係る冷凍惣菜は、惣菜の内でもカットされた野菜を含み、野菜の持つ歯ごたえのある食感を有するものであり、例えば、餃子、メンチカツ、肉団子、つみれ、ハンバーグなどのミンチした肉類と野菜との混合食品や、お好み焼きや天ぷら、かき揚げなどの穀物粉を主原料とするバッターと、野菜との混合食品を冷凍したものが挙げられる。
【0028】
これらの冷凍惣菜に使用する生のカット野菜の一部または全部について、水分を吸水させた熱風乾燥カット野菜を使用し、惣菜を作製した後、冷凍し、冷凍惣菜とする。
【0029】
例えば、冷凍お好み焼きを作製する場合には、小麦粉からなる生地に生キャベツの角切りや千切りを加えて混合した後、焼成してお好み焼きを作製し、冷凍して冷凍お好み焼きを作製するが、生キャベツの代わりに水分を吸収させた熱風乾燥カットキャベツを添加することで冷凍お好み焼きを作製することができ、この場合、生キャベツと同量の水分を吸収させた熱風乾燥カットキャベツを冷凍お好み焼きに添加しても製造上問題なく、生キャベツを加えた場合と比較して、生野菜換算した場合に多くのキャベツを加えることができる。
【0030】
また、餃子やメンチカツの場合には、肉にキャベツやタマネギ、ニンジンなどの水分を吸収させた熱風乾燥カット野菜を混ぜて餡を作製し、餡を皮に包んで焼いたり、バッターやパン粉をつけてフライすることにより、冷凍餃子や冷凍メンチカツを作製することができる。
【0031】
冷凍のための手段は、従来技術を適用することができる。例えば、エアブラスト式のトンネルフリーザー、スパイラルフリーザー、ワゴンフリーザーや急速凍結庫、ブライン式のフレキシブルフリーザー等が適用できる。冷凍は、例えば約-30℃で、スパイラルフリーザーを利用して急速に行うことができる。
【0032】
作製した冷凍惣菜は、電子レンジやフライパン調理などの加熱調理により、喫食するが、生野菜のみを使用した場合と比較して、水分を吸収させた熱風乾燥カット野菜を使用した場合は、野菜の持つ歯ごたえのある食感が維持されており、再加熱による野菜からの水分の流出も少なく、冷凍惣菜が水っぽくなることもない。
【0033】
以上のように、水分含量が50~90重量%となるように水分を吸収させた熱風乾燥カット野菜を冷凍惣菜のカット野菜の代わりとして使用することで、生のカット野菜を使用した場合と比較して、野菜のもつ歯ごたえのある食感を有する冷凍惣菜及びその製造方法を提供することができる。
【0034】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例
【0035】
<実験1 乾燥野菜の検討>
(試験例1)熱風乾燥キャベツ1
キャベツを30mm角にカットし、90℃の熱水で3分ブランチング処理したものをブランチング前の重量に対して55重量%となるように脱水し、脱水後のキャベツの重量に対して20重量%のグルコース、ラクトース、マルトース(グルコース:ラクトース:マルトース6:3:1)を粉体混合し、放置した後、液切りし、80℃の熱風で2時間乾燥した後、60℃で4時間乾燥し、熱風乾燥カットキャベツ(水分5重量%)を作製した。
【0036】
(試験例2)熱風乾燥キャベツ2
糖を粉体混合しないのと60℃で4時間乾燥する以外は、試験例1の方法に従って熱風乾燥カットキャベツ(水分5重量%)を作製した。
【0037】
(試験例3)熱風乾燥チンゲン菜
チンゲン菜を20mm角にカットし、80℃で2分ブランチング処理した後、ブランチング前の重量に対して60重量%となるように脱水し、脱水後のチンゲン菜の重量に対して10重量%のグルコースを粉体混合し、30分放置した後、液切りし、80℃で2時間乾燥した後、60℃で4時間乾燥し、熱風乾燥し熱風乾燥カットチンゲン菜(水分4重量%)を作製した。
【0038】
(試験例4)熱風乾燥ハクサイ
ハクサイを20x25mmとなるようにカットし80℃で2分ブランチング処理した後、ブランチング前の重量に対して60重量%となるように脱水し、脱水後のハクサイの重量に対して10重量%のグルコース、ラクトース、マルトース(グルコース:ラクトース:マルトース6:3:1)を粉体混合し、30分放置した後、液切りし、80℃で2時間乾燥した後、60℃で4時間乾燥し、熱風乾燥ハクサイ(水分4重量%)を作製した。
【0039】
(試験例5)真空凍結乾燥ハクサイ
ハクサイを20x25mmとなるようにカットし、80℃で2分間ブランチング処理した後、ブランチング前の重量に対して60重量%となるように脱水し、20重量%グルコース溶液に30分間浸漬した後、3分間液切りし、凍結した後、真空凍結乾燥し、真空凍結乾燥ハクサイ(水分1重量%)を作製した。
【0040】
(試験例6)熱風乾燥ニンジン
ニンジンを10x10x3mmとなるようにカットし、95℃で2分間ブランチング処理した後、軽く脱水し、脱水後の重量に対して20重量%のグルコースを粉体混合し、30分放置した後、90℃1.5時間、80℃2時間、60℃3時間熱風乾燥し、熱風乾燥ニンジン(水分5重量%)を作製した。
【0041】
(試験例7)高温高風速熱風乾燥ニンジン
ニンジンを10x10x3mmとなるようにカットし、蒸煮庫で95℃2分間蒸した後蒸し後重量に対して10重量%のグルコースを粉体混合し、30分放置した後、90℃風速15m/sで2時間の高温高風速熱風乾燥し、高温高風速熱風乾燥ニンジン(水分3重量%)を作製した。
【0042】
(試験例8)熱風乾燥ゴボウ
ゴボウを15x10x5mmとなるようにカットし、0.05重量%クエン酸水溶液で90℃2分間ブランチング処理した後、ラクトース5重量%、醤油5重量%の水溶液で80℃2分間調味加熱処理し、液切りした後、80℃で2時間乾燥し、その後さらに60℃で4時間熱風乾燥し、熱風乾燥ゴボウ(水分4重量%)を作製した。
【0043】
(試験例9)熱風乾燥タマネギ
タマネギを5mm角となるようにカットし、80℃で2時間乾燥した後、60℃で4時間熱風乾燥し、乾燥タマネギ(水分5重量%)を作製した。
【0044】
(試験例10)真空凍結乾燥タマネギ
タマネギを5mm角となるようにカットし、カットしたタマネギの重量に対してトレハロースを10重量%添加混合し、蒸煮庫にて70℃で10分間蒸煮した後、凍結し、真空凍結乾燥して、真空凍結乾燥タマネギ(水分2重量%)を作製した。
【0045】
試験例1~10で作製した乾燥野菜の重量に対して、x1倍、x1.2倍、x2倍、x4倍、x8倍の水を添加し、10℃以下に管理された低温庫に16時間おいて水分を吸収させた。水分を吸収させた乾燥野菜の水分値を測定した。測定方法は、乾燥減量法で行い、105℃で4時間の条件で測定した。
【0046】
水分測定結果を下記表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
次いで、中力粉2.7Kg、砂糖0.2Kg、食塩0.1Kg、卵白粉0.05Kg、液卵3.0Kg、ラード0.15Kg、水3.8Kgを生地調製用のタンクに入れ、ハンドミキサーにてよく攪拌してお好み焼き用の生地を作製した。
【0049】
次いで、作製した生地と水で復元した試験例1~10の乾燥野菜とを混合し、お好み焼きを作製した。また、比較として乾燥野菜と同様にカットした生野菜を用いたお好み焼きも製造した。具体的な製造方法は、生地190gと120gの生の千切りキャベツと試験例1~10の野菜及び生野菜をそれぞれ70g攪拌機でよく混ぜて生地具材混合物を作製し、直径15cmのリング状の型枠を予め油を引いて220℃に加熱した鉄板に置き、型枠内に作製した生地具材混合物を充填し、型枠内に広く延ばした後、蓋をして4分間加熱し、裏返して4分間焼成し、さらに裏返して30秒加熱後し、お好み焼きを作製した。
【0050】
焼成したお好み焼きを-35℃のエアブラスト式の凍結庫に40分入れ凍結し、冷凍お好み焼きサンプルを作製した。
【0051】
各試験例の野菜を含む冷凍お好み焼きサンプルについて、電子レンジ調理を行い、お好み焼きの中に含まれる野菜の食感について官能評価を行った。調理方法は、電子レンジで500W8分間加熱し、5人のベテランパネラーにより評価を行った。評価方法については、5点評価で行い、歯ごたえを強く感じ非常に良好なものを5、歯ごたえがあり良好なものを4、歯ごたえを感じるが普通のものを3、柔歯ごたえが弱く劣るものを2、歯ごたえがなく著しく劣るものを1とした。
【0052】
評価結果を下記表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2で示すように、野菜により食感に若干差があるものの、試験1~4、試験6、8、9で分かるように、熱風乾燥したカット野菜を用いることにより、生のカット野菜を冷凍惣菜(お好み焼き)に使用する場合よりも野菜のもつ歯ごたえが得られることがわかる。また、試験5、7、10の真空凍結乾燥や高温高風速熱風乾燥で乾燥した乾燥カット野菜と比較して、試験例4,6,9で示すように、熱風乾燥により乾燥したカット野菜の方が冷凍惣菜(お好み焼き)に使用した場合、野菜のもつ歯ごたえがよくなることがわかる。
【0055】
表2では示していないが各試験例ともに乾燥野菜の重量と等倍量(x1)未満の水で水分を吸収させた場合、水分が吸収されていない部分があるものがあり、硬い部分が存在したが、等倍以上の水を加えて水分を吸水させると水分が吸収されていない部分はなかった。ただ、等倍では、全体的に水に浸かっておらず水分の吸収度合いにムラがなくなるように頻繁に混ぜる必要があるため、x1.2倍程度以上の水を添加する方が全体的に水に浸かり、頻繁に混ぜなくても水分の吸収度合いにムラがなくなるため好ましい。
【0056】
試験例1~4、6、8、9で示すように、水の添加量を増加するにつれて熱風乾燥カット野菜の水分量が増加していくが、試験例2、9を除いて、乾燥野菜の重量のx4倍の水を添加することで乾燥野菜に吸い切れない水が発生し始め、乾燥野菜の重量のx8倍となると、どの試験例も吸い切れない水が発生した。熱風乾燥カット野菜に十分な水分を吸収させても生のカット野菜と比べて水分量は低く、食感も良好なものが得られたが、試験例1~4、6、8、9で示すように、復元した熱風乾燥カット野菜の水分含量が低いほど、得られる食感は好ましく、完全に水分を吸水していない状態で使用することが好ましいことがわかる。野菜の種類や糖の有無により完全に水分を吸収した状態の水分値は異なるが概ね70~90重量%以下であり、水分70重量%以下の水分量となるように熱風乾燥カット野菜に水分を吸水させればより好ましいことがわかる。
【0057】
試験例1、2で示すように乾燥時の糖の添加に関わらず、効果が得られることがわかる。糖を添加していない場合は、糖を添加している場合と比較して、多くの水を吸水でき、水を多く吸水しても野菜のもつ食感が得られやすいが、乾燥品が壊れやすく、乾燥時や保存時に褐色に変色しやすいため、糖を添加した方が好ましい。
【0058】
<実験2 惣菜の検討>
(試験例2-1)
実験1で使用した試験例1の熱風乾燥カット野菜(キャベツ)を重量の2倍の水で水分を吸水させしたもの(150g)をさらにみじん切りし、生のキャベツのみじん切り150gと合わせ、そこに300gの合いびき肉とタマネギのみじん切り100g、液卵50g、塩3g、胡椒1gを入れ混ぜ、直径4cm、厚み9mm円筒形の形状に成形し、小麦粉を表面に付着させ、さらに溶き卵を付着させ、その上からパン粉を付着させて170℃の油で90秒分フライし、粗熱を取った後、トンネルフリーザーにてー35℃で25分凍結して冷凍メンチカツを作製した。
【0059】
(比較例2-1)
実験1で使用した試験例1の熱風乾燥カット野菜(キャベツ)を重量の2倍の水で水分を吸水させたもの(300g)の代わりに生キャベツを300gみじん切りにしたものを使用する以外は、実施例2-1の方法に従って、冷凍メンチカツを作製した。
【0060】
作製した冷凍メンチカツを電子レンジにて500W 40秒分加熱調理し、実験1と同様に評価を行ったが、乾燥キャベツを用いた実施例2-1は、キャベツの持つシャキシャキとした食感を非常に強く感じるのに対して、比較例2-1は、キャベツの歯ごたえはあるものの普通であった。
【0061】
また、加えているキャベツ重量は、実施例2-1と比較例2-1とでは同じであるが、加えている生野菜換算としては、実施例2-1の方が多く、製造適正を維持したまま生野菜換算として多くの野菜を加えることができた。