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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20230403BHJP
   A61F 13/515 20060101ALI20230403BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
A61F13/511 300
A61F13/511 400
A61F13/515
A61F13/511 110
A61F13/533 100
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019236983
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104201
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野本 貴志
(72)【発明者】
【氏名】七海 久孝
(72)【発明者】
【氏名】木村 明寛
(72)【発明者】
【氏名】出谷 耕
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 友美
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】実公昭47-018800(JP,Y1)
【文献】特開2019-115597(JP,A)
【文献】特開2011-254863(JP,A)
【文献】特開2005-270347(JP,A)
【文献】特開平09-117470(JP,A)
【文献】特開2016-106706(JP,A)
【文献】実公昭47-004218(JP,Y1)
【文献】実公昭39-026277(JP,Y1)
【文献】実公昭39-028899(JP,Y1)
【文献】実公昭15-001553(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、
吸収体と、
前記吸収体よりも前記厚さ方向の肌側に設けられた表面シートと、
前記吸収体よりも前記厚さ方向の非肌側に設けられた裏面シートと
を有する吸収性物品であって、
前記表面シートは、複数の糸が前記厚さ方向に見て互いに交差している織物又は編物を有し、
前記複数の糸は、それぞれ、互いに交差している交差部と、互いに交差していない非交差部とを有し、
前記吸収性物品の前記長手方向の端縁は、前記複数の糸の前記非交差部を有し、
前記表面シートは、不織の繊維集合体をさらに有し、
前記繊維集合体は、前記織物又は前記編物の非肌側面に交絡によって一体化され、一部の構成繊維が前記織物又は前記編物の肌側面よりも前記厚さ方向の肌側へ延在している
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記織物は、複数の経糸と、前記経糸と前記厚さ方向に見て互いに交差している複数の緯糸と、を有し、
前記経糸及び前記緯糸は、それぞれ、前記交差部と前記非交差部とを有し、
前記吸収性物品の前記長手方向の端縁は、前記経糸又は前記緯糸の前記非交差部を有する
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性物品の前記長手方向の両端縁部においては、前記表面シートと前記裏面シートとがホットメルト接着剤によって接合されている
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、
吸収体と、
前記吸収体よりも前記厚さ方向の肌側に設けられた表面シートと、
前記吸収体よりも前記厚さ方向の非肌側に設けられた裏面シートと
を有する吸収性物品であって、
前記表面シートは、複数の糸が前記厚さ方向に見て互いに交差している織物又は編物を有し、
前記複数の糸は、それぞれ、互いに交差している交差部と、互いに交差していない非交差部とを有し、
前記吸収性物品の前記長手方向の端縁は、前記複数の糸の前記非交差部を有し、
前記吸収性物品の前記長手方向の両端縁部においては、前記表面シートと前記裏面シートとがホットメルト接着剤によって接合されており、
前記織物は、複数の経糸と、前記経糸と前記厚さ方向に見て互いに交差している複数の緯糸と、を有し、
前記表面シートと前記吸収体とが圧搾された圧搾部を有し、
前記圧搾部の底部の前記幅方向の長さの平均値は、前記織物の前記経糸と前記緯糸との前記幅方向の交点間の長さの平均値よりも長い
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項4に記載の吸収性物品であって、
前記織物の前記長手方向の伸度は3~8%であり、前記編物の前記長手方向の伸度は80~100%であり、前記圧搾部の深さは均一である
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記織物の構成糸は、複数の原糸からなる撚糸から構成されており、前記撚糸の繊度は、30綿番手以上、100綿番手以下である
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記表面シートは、不織の繊維集合体をさらに有し、
前記繊維集合体は、前記織物又は前記編物の肌側面よりも前記厚さ方向の肌側に位置している肌側延出部分と、前記織物又は前記編物の非肌側面よりも前記厚さ方向の非肌側に位置している非肌側延出部分とを含み、前記非肌側延出部分の最大厚みは、前記肌側延出部分の最大厚みよりも大きい
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記表面シートは、不織の繊維集合体をさらに有し、
前記繊維集合体は、親水性繊維と疎水性繊維とを含む
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項8に記載の吸収性物品であって、
前記親水性繊維は、レーヨン繊維を含む
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の吸収性物品であって、
前記繊維集合体は、親水性油剤を含んでいない
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記繊維集合体において、単位面積当たりに含まれる前記疎水性繊維の重量が、前記単位面積当たりに含まれる前記親水性繊維の重量よりも大きい
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記織物は、複数の経糸と、前記経糸と前記厚さ方向に見て互いに交差している複数の緯糸と、を有し、
前記経糸及び前記緯糸は、それぞれ、前記交差部と前記非交差部とを有し、
前記吸収性物品の前記長手方向の前記端縁のうち、前記表面シートが存在する領域において、
前記幅方向の両端部における、全ての前記非交差部の数のうちの前記緯糸の前記非交差部が占める割合は、前記幅方向の中央部における、全ての前記非交差部の数のうちの前記緯糸の前記非交差部が占める割合よりも大きい
ことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品においては、各シート材を積層させて製品形状に切断した後、外縁部をシールすることで製品前後端部の各シートの積層状態を固定している。例えば、特許文献1には、吸収性物品の表面シートと裏面シートとが、吸収体の長手方向の端部よりも延出する部分において互いにヒートシールされ、吸収性物品の長手方向の両端部それぞれに、一対のシール部が形成された吸収性物品が開示されている。また、特許文献1の表面シートとしては、熱可塑性の合成繊維からなる不織布製シートが好適に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-129019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の吸収性物品によれば、表面シートと裏面シートとの間に防漏シート23を介在させつつシート同士を強固に固定し、シート同士が剥離することを抑制できる。しかしながら、シール部は熱融着によって硬くなり易く、シール部の境界で装着時に折れ曲がりが生じることや、硬いシール部分が使用者の肌に触れて、使用者に不快感を与える虞がある。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、長手方向の端縁が硬くなりにくく、使用者が柔らかさを感じ易い吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、
吸収体と、
前記吸収体よりも前記厚さ方向の肌側に設けられた表面シートと、
前記吸収体よりも前記厚さ方向の非肌側に設けられた裏面シートと
を有する吸収性物品であって、
前記表面シートは、複数の糸が前記厚さ方向に見て互いに交差している織物又は編物を有し、
前記複数の糸は、それぞれ、互いに交差している交差部と、互いに交差していない非交差部とを有し、
前記吸収性物品の前記長手方向の端縁は、前記複数の糸の前記非交差部を有し、
前記表面シートは、不織の繊維集合体をさらに有し、
前記繊維集合体は、前記織物又は前記編物の非肌側面に交絡によって一体化され、一部の構成繊維が前記織物又は前記編物の肌側面よりも前記厚さ方向の肌側へ延在している
ことを特徴とする吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長手方向の端縁が硬くなりにくく、使用者が柔らかさを感じ易い吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、生理用ナプキン1を肌側から見た平面図である。
図2図2は、生理用ナプキン1を非肌側から見た平面図である。
図3図3は、図1のX-X線に沿う断面図である。
図4図4は、表面シート3の一部拡大図である。
図5図5は、表面シート3を織物40と繊維集合体50とに分離した状態を示す図である。
図6図6は、表面シート3の織物40の一部拡大平面図である。
図7図4のY-Y線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、吸収体と、前記吸収体よりも前記厚さ方向の肌側に設けられた表面シートと、前記吸収体よりも前記厚さ方向の非肌側に設けられた裏面シートとを有する吸収性物品であって、前記表面シートは、複数の糸が前記厚さ方向に見て互いに交差している織物又は編物を有し、前記複数の糸は、それぞれ、互いに交差している交差部と、互いに交差していない非交差部とを有し、前記吸収性物品の前記長手方向の端縁は、前記複数の糸の前記非交差部を有することを特徴とする吸収性物品である。
【0010】
このような吸収性物品によれば、糸同士が交差していない非交差部は、糸が一本一本からなる部分である。長手方向の端縁は、そのような糸が一本一本からなる非交差部を有することで硬くなりにくく、使用者は吸収性物品の端まで柔らかさを感じやすい。
【0011】
かかる吸収性物品であって、前記織物は、複数の経糸と、前記経糸と前記厚さ方向に見て互いに交差している複数の緯糸と、を有し、前記経糸及び前記緯糸は、それぞれ、前記交差部と前記非交差部とを有し、前記吸収性物品の前記長手方向の端縁は、前記経糸又は前記緯糸の前記非交差部を有することが望ましい。
【0012】
このような吸収性物品によれば、織物の経糸と緯糸とが交差していない非交差部は、経糸又は緯糸が一本一本からなる部分であり、端縁がそのような非交差部を有することで硬くなりにくく、使用者が吸収性物品の端まで柔らかさを感じやすくなる。
【0013】
かかる吸収性物品であって、前記表面シートは、不織の繊維集合体をさらに有し、前記繊維集合体は、前記織物又は前記編物の非肌側面に交絡によって一体化され、一部の構成繊維が前記織物又は前記編物の肌側面よりも前記厚さ方向の肌側へ延在していることが望ましい。
【0014】
このような吸収性物品によれば、交絡により表面シートの強度を保持でき、織物又は編物と繊維集合体とを強固に接着等せずに積層状態を確保できる。それにより、長手方向端部の剛性も高くなりにくい。また、交絡によって織物の緯糸及び経糸の位置ずれ、或いは、編物の糸同士の位置ずれも発生しにくいため、糸間距離を均一に保持しやすく、美観も保持できる。また、排泄液が、肌側に延在した繊維を伝って下方の吸収体へ移行しやすい。
【0015】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品の前記長手方向の両端縁部においては、前記表面シートと前記裏面シートとがホットメルト接着剤によって接合されていることが望ましい。
【0016】
このような吸収性物品によれば、各シートを接合した後に製品形状にカットした際に、織物の経糸及び緯糸、或いは、編物の糸同士がばらけ難くなる。
【0017】
かかる吸収性物品であって、前記織物は、複数の経糸と、前記経糸と前記厚さ方向に見て互いに交差している複数の緯糸と、を有し、前記表面シートと前記吸収体とが圧搾された圧搾部を有し、前記圧搾部の底部の前記幅方向の長さの平均値は、前記織物の前記経糸と前記緯糸との前記幅方向の交点間の長さの平均値よりも長いことが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品によれば、圧搾部は、ある程度太さがあることで折れ曲がり易くなり、体に対するフィット性が向上する。また、圧搾部の幅の中に経糸と緯糸との交点(交差部)が存在することで、圧搾した際に、交点がない部分よりも交点の厚みによって圧搾部の形状が維持されやすい。
【0019】
かかる吸収性物品であって、前記織物の前記長手方向の伸度は3~8%であり、前記編物の前記長手方向の伸度は80~100%であり、前記圧搾部の深さは均一であることが望ましい。
【0020】
このような吸収性物品によれば、織物及び編物の長手方向の伸度が低いことから、織物及び編物のいずれを用いても表面シート全体の伸度は低くなる。伸び難い表面シートに対しては、凹凸のないロール等を用いて圧搾することで、均一な深さを有する圧搾部を設けやすい。圧搾部の底部に凹凸がある場合、すなわち、深さに変化がある場合は圧搾部が硬くなりがちだが、深さが一定であることで圧搾部は柔らかさを保持できる。また、そのような圧搾部は、排泄液を均一に引き込みやすい。
【0021】
かかる吸収性物品であって、前記織物の構成糸は、複数の原糸からなる撚糸から構成されており、前記撚糸の繊度は、30綿番手以上、100綿番手以下であることが望ましい。
【0022】
このような吸収性物品によれば、構成糸が細い糸である程、織物は柔らかさを得られ、当該織物を用いた吸収性物品自体に柔軟性を与える。
【0023】
かかる吸収性物品であって、前記表面シートは、不織の繊維集合体をさらに有し、前記繊維集合体は、前記織物又は前記編物の肌側面よりも前記厚さ方向の肌側に位置している肌側延出部分と、前記織物又は前記編物の非肌側面よりも前記厚さ方向の非肌側に位置している非肌側延出部分とを含み、前記非肌側延出部分の最大厚みは、前記肌側延出部分の最大厚みよりも大きいことが望ましい。
【0024】
このような吸収性物品によれば、非肌側に延出している部分の厚みの方が大きいことで、繊維集合体の繊維を伝ってより多くの液体が、繊維集合体よりも下側(厚さ方向の非肌側)に配置されている吸収体に入り込み易くなる。
【0025】
かかる吸収性物品であって、前記表面シートは、不織の繊維集合体をさらに有し、前記繊維集合体は、親水性繊維と疎水性繊維とを含むことが望ましい。
【0026】
このような吸収性物品によれば、親水性繊維により、表面シートが布地のような肌触りを有し、排泄物の掻き取り性に優れるとともに、疎水性繊維により、繊維同士のくっつきによる折り癖の形成を抑制できる。
【0027】
かかる吸収性物品であって、前記親水性繊維は、レーヨン繊維を含むことが望ましい。
【0028】
このような吸収性物品によれば、レーヨンは、液の引き込み性を向上させるだけでなく、繊維自体が細くて柔らかいため、繊維集合体に柔軟性を与える。
【0029】
かかる吸収性物品であって、前記繊維集合体は、親水性油剤を含んでいないことが望ましい。
【0030】
このような吸収性物品によれば、通常、疎水性の繊維に親水性油剤を用いて親水性能を付与することが多いが、レーヨン等の親水性繊維を含むことで親水性を有するため、親水性油剤を使用せずに繊維集合体を形成できる。よって、油剤が肌に触れることによる肌かぶれ等が起きにくく、肌にやさしい。
【0031】
かかる吸収性物品であって、前記繊維集合体において、単位面積当たりに含まれる前記疎水性繊維の重量が、前記単位面積当たりに含まれる前記親水性繊維の重量よりも大きいことが望ましい。
【0032】
このような吸収性物品によれば、疎水性繊維の重量が大きいことで、繊維集合体が液体を保持しにくくなり、液体は繊維集合体の繊維を伝って吸収体側に誘導される。また、着用中に体圧で液体が逆戻りしようとしても、逆戻りしようとした液体を引き込みにくく、液戻りを抑制する。
【0033】
かかる吸収性物品であって、前記織物は、複数の経糸と、前記経糸と前記厚さ方向に見て互いに交差している複数の緯糸と、を有し、前記経糸及び前記緯糸は、それぞれ、前記交差部と前記非交差部とを有し、前記吸収性物品の前記長手方向の前記端縁のうち、前記表面シートが存在する領域において、前記幅方向の両端部における、全ての前記非交差部の数のうちの前記緯糸の前記非交差部が占める割合は、前記幅方向の中央部における、全ての前記非交差部の数のうちの前記緯糸の前記非交差部が占める割合よりも大きいことが望ましい。
【0034】
このような吸収性物品によれば、幅方向の両端部は、着用中に着用者の鼠径部が当たりやすい部分であり、緯糸の非交差部があることで緯糸の糸端が鼠径部に触れて、肌当たりがよくなる。
===実施形態===
【0035】
以下、本発明の吸収性物品として、生理用ナプキンを例に挙げて実施形態を説明する。但しこれに限定されず、本発明は、例えば、おりものシートや尿取りパッド等のその他の吸収性物品に対しても適用可能である。
<生理用ナプキン1の基本構成>
【0036】
図1は、生理用ナプキン1(以下「ナプキン1」ともいう)を肌側から見た平面図である。図2は、生理用ナプキン1を非肌側から見た平面図である。図3は、図1のX-X線に沿う断面図である。
【0037】
ナプキン1は、互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有する。ナプキン1の長手方向において、着用者の下腹部に当接する側を前側といい、着用者の臀部に当接する側を後側という。厚さ方向において、着用者に接する側を肌側といい、その反対側を非肌側という。
【0038】
図3に示すように、ナプキン1は、吸収体2と、吸収体2よりも厚さ方向の肌側に設けられた表面シート3と、吸収体2よりも厚さ方向の非肌側に設けられた裏面シート4と、一対のサイドシート5とを有している。表面シート3と吸収体2とは、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート3と裏面シート4とは、平面サイズが吸収体2よりも大きく、吸収体2の平面全体を覆っている。また、互いに積層された表面シート3、裏面シート4及びサイドシート5は、ナプキン1の外周縁に沿って位置する外周シール部8(図2参照)を介して互いに接合されている。
【0039】
一対のサイドシート5は、図1に示すように、表面シート3の幅方向の両側に設けられ、表面シート3よりも厚さ方向の肌側から重なるように長手方向に沿って配置されている。一対のサイドシート5は、表面シート3に公知の接着手段又は溶着手段からなるサイド接合部(図示せず)を介して接合される。
【0040】
また、ナプキン1は、ナプキン1の長手方向の中央領域から幅方向の両外側に延出する一対のウィング部6を有する。ウィング部6は、表面シート3の幅方向の両側部から外側に延出しているサイドシート5、及び、裏面シート4によって形成されている。なお、ナプキン1は、ウィング部6を有さない形態であってもよい。
【0041】
なお、図示していないが、ナプキン1の柔軟性を向上させるために、表面シート3と吸収体2との間に比較的繊維密度の高い不織布等から形成された中間シートを配置しても良い。また、吸収体2と裏面シート4との間において、体液の漏れを抑制するために、好ましくは通気性を有する、液不透過性のプラスチックフィルムや不織布等からなる防漏シートを配置してもよい。
【0042】
図2に示すように、ナプキン1の非肌側面(裏面シート4の非肌側面)には、接着剤の塗布等によって設けられた粘着領域11が設けられている。ナプキン1の使用時に、粘着領域11は下着等の肌側面に貼り付けられ、これによりナプキン1は下着等に固定される。図2では、長手方向に長辺を有する長方形状の6個の粘着領域11が幅方向に間隔を空けて並んでいるが、粘着領域11の形状や数はこれに限定されない。
【0043】
同様に、各ウィング部6の非肌側面(裏面シート4の非肌側面)には、ウィング部用粘着領域12が設けられている。ナプキン1の使用時に、ウィング部用粘着領域12は、下着等の非肌側面に貼り付けられ、これによりナプキン1は下着等に固定される。図2では、長手方向に長辺を有する長方形状のウィング部用粘着領域12を各ウィング部6に一つずつ設けているが、ウィング部用粘着領域12の形状や数はこれに限定されない。また、粘着領域11及びウィング部用粘着領域12は、それぞれ、プラスチックフィルム製のセパレータ(図示せず)によって被覆される。
【0044】
また、ナプキン1は、表面シート3と吸収体2とが圧搾された圧搾部(凹部)7を有している。本実施形態では、表面シート3の肌側面から表面シート3及び吸収体2が厚さ方向に圧搾され、表面シート3及び吸収体2が接合一体化されている。圧搾部7によって、表面シート3の浮き上がりを防止し、経血等が圧搾部7に流入した場合には、吸収体2への浸透を促して、拡散を抑えることができる。
【0045】
表面シート3は透液性であって、厚さ方向において肌側面(上面)3aとその反対側に位置する非肌側面(下面)3bとを有し、織物40と繊維集合体50とによって構成されている。裏面シート4は、不透液性及び透湿性のプラスチックフィルム、不透液性の不織布、それらのラミネートシート等から形成することができる。サイドシート5は、公知の不織布を用いることができるが、体液の横漏れを効果的に防止するために、疎水性若しくは撥水性を有するシート材を用いることが好ましい。
【0046】
吸収体2は、経血等の排泄物を吸収して内部に保持する部材であり、図3に示すように、液体を吸収する吸収性コア10と、吸収性コア10の保形性及び液拡散性の向上のために吸収性コア10全体を包被する透液性のコアラップシート20とを有している。
【0047】
吸収性コア10は、液体吸収性繊維であるパルプ繊維やセルロール系吸収性繊維等に、液体吸収性粒状物である高吸収性ポリマー(所謂SAP)等が加えられ、所定の形状に成形されたものである。コアラップシート20は、液透過性のシートであり、ティッシュペーパー、親水性の不織布、エアレイド等を例示できる。
【0048】
コアラップシート20は、吸収性コア10の全体を覆うように配置され、コアラップシート20のうち、長手方向に沿った両側縁部20a、20b同士が吸収性コア10の幅方向の中央部分における非肌側において互いに積層されている(図3参照)。本実施形態において、コアラップシート20は一枚の連続するシートから形成されているが、吸収性コア10の肌側面を覆うシート部材と、非肌側面を覆うシート部材とが分かれて構成されてもよい。
<表面シート3の織物40及び繊維集合体50>
【0049】
図4は、表面シート3を肌側から見た一部拡大図であり、図5は、表面シート3を織物40と繊維集合体50とに分離した状態を示す図である。図3図4及び図5に示すように、表面シート3は、肌側面に位置する織物40と、非肌側面に位置する繊維集合体50とを有している。織物40は、図3における部分拡大図及び図5に示すように、繊維集合体50と対向する下面40aと、その反対の肌と接触する面となる上面40bとを有する。織物40と繊維集合体50とは、互いに絡み合う(交絡する)ことによって一体化されている。織物40と繊維集合体50を交絡させる方法については、後述する。
【0050】
織物40は、図4に示すように、格子状に織り込まれた構成糸41から構成される。構成糸41は、複数の経糸42と、経糸42と厚さ方向に見て互いに交差している複数の緯糸43とを有し、当該交差によって複数の織目45が形成される。織物40の構成糸41は、綿糸(コットン繊維)からなる原糸を撚って形成された撚糸である。原糸の材料には、コットン繊維のほかに、麻やパルプ繊維等の天然セルロース繊維、レーヨン等の再生セルロース繊維、アセテート等の半合成セルロース繊維等のセルロース系繊維が好適に使用される。また、原糸に使用される綿糸としては、30綿番手以上、100綿番手以下であることが好ましい。構成糸41が細い糸である程、織物40は柔らかさを得られる。
【0051】
主に綿素材等からなる織物40が表面シート3の肌側に位置していることで、使用者は心地よい肌触りを得られ、肌トラブルも起こりにくくなる。また、織物40の織り方は、上述のように格子状に織り込まれた平織りに限定されず、綾織り、朱子織り、絡み織りなどの公知の織り方を適宜採用することができる。
【0052】
また、本実施形態の表面シート3は織物40を有しているが、織物40は、編物であってもよい。編物は、多数の繊維を束ねて撚られた糸を編むことによって構成されるが、織物と同様に、複数の糸が厚さ方向に見て互いに交差している。編物は、経編、緯編のいずれの編み方でもよく、例えば、天竺、トリコット、フライス、鹿の子、ハニカムメッシュ、ダンボールニット、裏毛等が挙げられる。
【0053】
繊維集合体50は、長繊維を使用したスパンボンド法や短繊維をカード機で一定方向へカーディングを行い、繊維を整えてウェッブを形成する乾式法等の公知の製法によって形成された、フォーミングされて不織布となる前の段階の繊維集合体である。また、繊維集合体50は、親水性繊維を含む構成繊維51から形成される。本実施形態の親水性繊維としては、レーヨン繊維を使用している。レーヨン繊維によって液体の引き込み性を向上させるだけでなく、レーヨン繊維は、繊維自体が細くて柔らかいため、繊維集合体50に柔軟性を付与する。尚、親水性繊維はレーヨン繊維に限らず、例えば、フィブリルレーヨン等の再生セルロース繊維、コットン、粉砕パルプ等の天然セルロース繊維、アセテート等の半合成セルロースなどであってもよい。
【0054】
織物40と繊維集合体50とを交絡一体化する方法としては、例えば公知の水流交絡法を用いることができる。水流交絡法による透液性シートの製造工程では、織物40の資材である連続した格子状の織物の上面に繊維集合体50の資材である連続した繊維の集合体を積層してなる連続積層体に対して、連続積層体の搬送方向と交差する方向に間隔を空けて配置された複数のノズルから高圧水流を噴射する。それにより、繊維集合体50の構成繊維51と織物40の構成糸41とが絡み合い、一体化させることができる。また、水の圧力によって、一体化したシートに柄を付与することもできる。尚、織物40が編物である場合も、同様の方法により、編物と繊維集合体50とを交絡一体化させることができる。
【0055】
肌側に位置する織物40と、織物40の下面(非肌側面)40aに位置する繊維集合体50とを交絡させることによって形成された本実施形態の表面シート3は、不織布のみから形成された場合の表面シート3に比べて強度が高い。また、繊維集合体50が接着剤等を介さずに織物40と一体化されているので、接着剤等を介して互いに接合する場合に比べて柔軟性に優れている。よって、そのような表面シート3を用いたナプキン1は、長手方向の端部1epまで柔らかさを保持し易い。また、交絡により、織物40の経糸42及び緯糸43の位置ずれ(編物の場合は、糸同士の位置ずれ)も発生しにくくなるため、各糸間距離を均一に保持しやすく、表面シート3の美観も保てる。
【0056】
また、図4に示すように、構成繊維51の一部が、織物40の経糸42と緯糸43とに絡んだり、まとわり付くように巻回していたり、さらには、経糸42と緯糸43との原糸間に入り込むようにして交絡していることがある。これにより、繊維集合体50と織物40とは、安定して一体化される。そして、一部の構成繊維51は、織物40の肌側面(上面)40bよりも厚さ方向の肌側へ延在しており(図3の一部拡大図)、表面シート3に排泄された体液は、織物40の経糸42と緯糸43とに沿って拡散されるとともに、肌側に延在している繊維集合体50の構成繊維51をつたって下方の吸収体2へ速やかに移行される。尚、繊維集合体50の構成繊維51は、繊維長が25~64mm、好ましくは、32~58mm、さらに好ましくは38~51mmの短繊維である。
【0057】
また、仮に表面シート3が織物40のみで構成されると、製品端部を製品形状に切断する際に、織物40の構成糸41がナプキン1の長手方向の端縁1ed(図1)のところで寄れてしまう虞があるが、織物40と繊維集合体50とを交絡一体化させることで、織物40の織目45が安定し、切断時にも構成糸41は寄れにくい。故に、製品端部(ここでは1ep)を綺麗にカットできる。
【0058】
上述したように、本実施形態のナプキン1は、織物40と繊維集合体50とを交絡一体化させた表面シート3を使用者の肌に触れる側に使用している。一方で、一般的な生理用ナプキンの表面シートは不織布のみで形成されていることが多く、製造時に、各シート材を接着して製品端部を製品形状に切断した後、外縁部を熱融着させて各シート材同士を固定する場合がある。熱融着によってシールされた部分は強固に接合されるが、接合した部分が硬くなりがちであることから、接合した部分との境目で装着時に折れ曲がる虞や、使用者の肌に触れた際に不快感を与える虞がある。
【0059】
この点につき、本実施形態のナプキン1では、表面シート3における外周シール部8において、綿糸からなる織物40が熱融着されずに表面シート3と裏面シート4とが接合されるため、長手方向の外縁部(端部1ep)は硬くならずに柔らかさを保持している。また、表面シート3の織物40がナプキン1の長手方向の端縁1ed(図1)まで存在していることで、次のような効果が得られる。
【0060】
図6は、表面シート3の織物40の一部拡大平面図である。図6では、織物40の経糸42及び緯糸42の状態を説明するために、便宜上、繊維集合体50及びサイドシート5を省略している。図6に示すように、織物40の経糸42及び緯糸43は、それぞれ、互いに交差している交差部cxと、互いに交差していない非交差部nxとを有している。そして、ナプキン1の幅方向の中央位置CL付近においては、ナプキン1の長手方向の端縁1edは、複数の経糸42の非交差部nxを有している。また、幅方向の外側において、端縁1edは、複数の緯糸43の非交差部nx及び経糸42の非交差部nxを有している。
【0061】
織物40の経糸42と緯糸43とが交差していない非交差部nxは、経糸42又は緯糸43が一本一本からなる部分である。長手方向の端縁1edが、そのような糸が一本一本からなる非交差部nxを複数有していることから、端縁1edは硬くなりにくくなる。ナプキン1の端縁1edまで柔軟性を保持できることで、使用者は柔らかさを感じやすくなる。
【0062】
なお、織物40が編物であった場合、編物を構成する複数の糸がそれぞれ互いに交差している部分を交差部cx、互いに交差していない部分を非交差部nxとし、ナプキン1の長手方向の端縁1edが当該複数の糸の非交差部nxを有することで、織物40を使用した場合と同様の効果を奏する。
【0063】
また、本実施形態のナプキン1は、長手方向の両端縁部(各端縁1edを含む)において、表面シート3と裏面シート4とがホットメルト接着剤(不図示)によって接合されている。具体的には、表面シート3の長手方向の一端から他端に亘る領域内において、ホットメルト接着剤が例えばΩパターンやスパイラルパターン等を描いて設けられている。表面シート3と裏面シート4とが端縁1edまでホットメルト接着剤で固定されていることで、固定後に製品端部を製品形状に切断した際にも、織物40の経糸42及び緯糸43はばらけ難くなる。端縁1edにおいて経糸42及び緯糸43のほつれ等が発生しないことで、ナプキン1の美観も保持できる。
【0064】
尚、本実施形態では外周シール部8を設けているが、織物40と繊維集合体50とを交絡一体化させて表面シート3を形成していることから、互いに積層された表面シート3、裏面シート4及びサイドシート5を上述のホットメルト接着剤等の接着剤で接合させれば、外周シール部8を設けなくとも、製品形状を維持できる。それにより、製品端部の柔軟性を確保できる。
【0065】
また、図1及び図4の部分拡大図に示すように、ナプキン1の長手方向の端縁1edのうち、表面シート3が存在する領域において、幅方向の中央を中央部1chとし、幅方向の両端部をそれぞれ端部1etとすると、織物40の経糸42及び緯糸43は次のように配置されている。尚、ここでいう中央部1chは、ナプキン1の長手方向の端縁1edにおける表面シート3の幅方向の全長のうちの10%分、中央位置CLから幅方向の両側(外側)に向かった部分であり、両端部1etは、同様に、端縁1edにおける表面シート3の幅方向の全長のうちの10%分、表面シート3の幅方向の外端1ee(図4)から幅方向内側に向かった部分である。そして、本実施形態の中央部1chにおいては、端縁1edに配された交差部cx及び非交差部nxの合計の数は12個であり、全てが経糸42の非交差部nxである。また、端部1etでは、端縁1edに配された交差部cx及び非交差部nxの合計の数は18個であり、そのうち15個が非交差部nxであり、3個が交差部cxである。また、端部1etの非交差部nxのうち、緯糸43の非交差部nxの数は7個である。すなわち、端部1etにおける、全ての非交差部nxの数(15個)のうちの緯糸43の非交差部nxが占める割合(すなわち、7/15個=約47%)は、幅方向の中央部1chにおける、全ての非交差部nxの数(12個)のうちの緯糸43の非交差部nx(0個)が占める割合(0/12=0%)よりも大きい。幅方向の両端部1etは、ナプキン1の着用中に着用者の鼠径部が当たりやすい部分である。本実施形態のように、中央部1chと比較して、そのような両端部1etにおける緯糸43の非交差部nxの割合が大きいことで、緯糸43の糸端が鼠径部に触れ易くなり、肌当たりがよくなる。
【0066】
<圧搾部7>
上述したように、ナプキン1は、表面シート3と吸収体2とが圧搾された圧搾部7を有している。本実施形態の圧搾部7は、吸収体2の外周縁部に沿って複数連なって線状に形成されていて、これにより、全体として長手方向に長い略環状をなしている。尚、圧搾部7の形状及び配置はこれに限らず、所望の形状に形成することが可能である。
【0067】
また、圧搾部7は底部7dを有し(図3参照)、底部7dの幅L(幅方向の長さL)の平均値は、織物40の経糸42と緯糸43との幅方向の交点間の長さM(図4及び図6参照)の平均値よりも長くなっている。それぞれの長さの平均値の求め方は、次の通りである。先ず、圧搾部7及び織物40を含む表面シート3の拡大写真をキーエンス社製のデジタルマイクロスコープVHX-1000等を用いて撮影する。織物40については、図4に示すように、織目45のうち、1つの織目45において、1本の緯糸43に対して隣り合う経糸42同士のそれぞれの緯糸43との交点をC1及びC2とする。幅方向の交点間であるC1とC2とを直線で結び、その直線の長さが幅方向の交点間の長さMとなる。図4では、更に一例として、別の緯糸43に対して隣り合う経糸42同士のそれぞれの緯糸43との交点をC3とC4とし、同様にC3とC4とを結ぶ直線を交点間の長さMとして示している。上述の拡大写真に基づいて、当該長さMを、不作為に例えば10箇所計測し、計測した値の平均値を求める。圧搾部7についても、表面シート3の肌側から見た拡大写真において、底部7dの幅方向の長さLを不作為に例えば10箇所計測し、計測した値の平均値を求める。
【0068】
圧搾部7は、ある程度太さがあることで折れ曲がり易くなり、ナプキン1の体に対するフィット性が向上する。また、圧搾部7の底部7dの幅Lの方が経糸42及び緯糸43の幅方向の交点間の長さMよりも長いことで、圧搾部7の幅(幅方向の長さ)の中に経糸42と緯糸43との交点(交差部cx)が存在することになる。圧搾部7を形成する際に、圧搾した箇所に交点(交差部cx)がある方が、糸が重なっている交点の厚みによって圧搾部7の形状が維持されやすくなる。
【0069】
また、圧搾部7は、表面シート3と吸収体2とを厚さ方向に圧搾することで形成されるが、その際、表面シート3が有する織物40の長手方向の伸度は、3~8%であり、より好ましくは5~6%である。また、織物40の幅方向の伸度は、15~30%であり、より好ましくは19~26%である。表面シート3の織物40が編物である場合、編物の長手方向の伸度は、好ましくは80~100%であり、より好ましくは85~95%であり、幅方向の伸度は、150~160%であることが好ましい。
【0070】
ここで、上述の「伸度」とは、織物40(又は編物)の伸び率(%)であり、JIS L1906「織物及び編物の生地試験方法」に準拠して測定することが可能である。具体的には、繊維集合体50と交絡する前の状態の織物40(又は編物)を幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出して試験片を作成し、所定の引張速度(例えば100mm/min)で伸長させ、破断時の伸度の値を求める。引張試験機としては、例えば、株式会社島津製作所製オートグラフ型引張試験機(型名:AG-I)を用いることができる。測定は3回行い、その平均値を織物40(又は編物)の伸度とする。
【0071】
圧搾部7を形成する際には、ナプキン1をMD方向(長手方向)に搬送させながら圧搾部を設けるため、織物40又は編物の長手方向の伸度が低いことで、圧搾部7の底部7dに凹凸を設けることなく形成することができる。具体的には、本実施形態の織物40の長手方向の伸度が低いことから、当該織物40と繊維集合体50とを交絡してなる表面シート3全体の伸度も低くなる。そのような伸び難い表面シート3に対して、凹凸があるエンボスロール等で圧搾部7を形成しようとすると、表面シート3が凹凸に合わせて伸びずに織物40の糸が切れてしまう虞がある。しかし凹凸のない表面が一様なロール等で圧搾部7を形成することで、均一な深さの圧搾部7を形成できる。
【0072】
圧搾部7の深さとは、圧搾部7の底面(底部)7dに直交する方向における圧搾部7の底面(底部)7dから外周縁までの長さP(図3)である。また、ここでいう「均一」とは、圧縮部7の深さがいずれの位置においても完全に同一であるといった厳密な均一性ではなく、表面シート3を肌側から視覚的に確認した際に、圧搾部7の底部7dに凹凸が認められず、また、底部7dまでの深さに変化が認められない状態をいう。仮に、伸度が高いシート材に対して、底部に凹凸を形成するように圧搾しながら線状の圧搾部を形成した場合、形成された凹凸によって圧搾部は硬くなりがちである。一方で、本実施形態の圧搾部7のように、底部7dに凹凸がなく深さが一定であることで底部7dの表面は滑らかになり、圧搾部7は、柔らかさを保持できる。また、均一な深さにより、圧搾部7に溜まる排泄液を均一に引き込み易い。
【0073】
尚、一般に、編物は織物と比較すると伸び易い傾向があるが、例えば、経編であるトリコット編み等によって形成された編物であれば、上述のように、長手方向に伸び難い性質を有し、そのような編物を含む表面シート3に、織物40の場合と同様の方法で圧搾部7を形成することで、同様の効果を奏することができる。また、緯編みで形成される編物は、通常、伸度が高いが、そのような緯編みの編物を使用した場合は、圧搾部7を形成する際に破れにくくなるという利点がある。
【0074】
また、繊維集合体50は、上述のように親水性繊維を含んでいるが、親水性繊維だけでなく、疎水性繊維も含んでいる。疎水性繊維としては、ポリエステル系の熱可塑性樹脂繊維が好適であるが、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)を含むポリオレフィン系の熱可塑性繊維や、PPとPEとからなる芯鞘構造の複合繊維、サイド・バイ・サイド型複合繊維等の複合繊維を用いることもできる。
【0075】
繊維集合体50が親水性繊維及び疎水性繊維を含むことで、親水性繊維により、表面シート3が布地のような肌触りを有し、排泄物の掻き取り性に優れるとともに、疎水性繊維により、繊維同士のくっつきによる折り癖の形成を抑制できる。
【0076】
また、疎水性の繊維に対しては、親水性油剤を用いて親水性能を付与する場合もあるが、本実施形態の繊維集合体50は、親水性油剤を含んでいない。すなわち、繊維集合体50は、親水性繊維であるレーヨン繊維を含むことで親水性を有しているため、親水性油剤を使用していない。従って、油剤が肌に触れることによる肌かぶれ等が起きにくく、肌にやさしい。
【0077】
また、繊維集合体50が疎水性繊維を含む場合の親水性繊維と疎水性繊維の配合割合は、単位体積当たりに含まれる疎水性繊維の重量が、単位体積当たりに含まれる親水性繊維の重量よりも大きいことが好ましい。一例として、疎水性繊維が70重量%、親水性繊維が30重量%の割合で配合されることが好ましい。繊維集合体50に疎水性繊維が含まれることにより、繊維集合体50自体が液体を保持しにくくなり、液体は繊維集合体50の構成繊維51を伝って吸収体2側に誘導され易くなる。また、ナプキン1を着用中に体圧で液体が逆戻りしようとしても、繊維集合体50の繊維の構成割合として、単位体積当たりに含まれる疎水性繊維の重量の方が大きいため、逆戻りしようとした液体を引き込みにくく、液戻りを抑制する。
【0078】
図7は、図4のY-Y線に沿う断面図であり、表面シート3の非肌側に位置するコアラップシート20及び吸収性コア10を仮想線で示している。図7を参照すると、表面シート3において、繊維集合体50の一部の構成繊維51は、織物40よりも厚さ方向において肌側若しくは非肌側に延出している。具体的には、繊維集合体50は、織物40の上面(肌側面)40bよりも厚さ方向の肌側に位置している肌側延出部分52と、織物40の下面(非肌側面)40aよりも厚さ方向の非肌側に位置している非肌側延出部分53とを含んでいる。非肌側延出部分53は、水流交絡法によって形成される時に、高圧水流が直接噴射された部分である。一方で肌側延出部分52は、高圧水流が噴射された際に下方に位置していた織物40の格子状の構成糸41及び構成糸41間を貫通して搬送手段であるメッシュベルト側に延出した部分である。
【0079】
また、図7に示すように、織物40の上面(肌側面)40bから肌側延出部分52の最も肌側に延出している点51aまでの厚みを肌側延出部分52の最大厚みD1とし、織物40の下面(非肌側面)40aから非肌側延出部分53の最も非肌側に延出している点51bまでの厚みを非肌側延出部分53の最大厚みD2とすると、非肌側延出部分53の最大厚みD2は、肌側延出部分52の最大厚みD1よりも大きいことが好ましい。
【0080】
最大厚みD1及び最大厚みD2は見掛けの厚さであり、その厚さ寸法の測定は、図7に示すように、まず表面シート3を好ましくは繊維集合体50の厚さ方向に沿って切断して、切断面の拡大写真をキーエンス社製のデジタルマイクロスコープVHX-1000等を用いて撮影する。この拡大写真に基づいて、織物40の上面40bから肌側延出部分52の最も肌側に延出している点51aまでの離間寸法(D1)を測定し、織物40の下面40aから非肌側延出部分53の最も非肌側に延出している点51bまでの離間寸法(D2)を測定する。
【0081】
このように、繊維集合体50の非肌側延出部分53の最大厚みD2の方が大きいことによって、繊維集合体50の繊維51を伝ってより多くの液体が非肌側に引き込まれ、繊維集合体50よりも非肌側に配置されている吸収体2に液体を速やかに移行できる。
===その他の実施の形態===
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0083】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
1ch 幅方向の中央部、1ed 端縁
1ee 外端、1ep 端部
1et 幅方向の端部
2 吸収体
3 表面シート
3a 肌側面(上面)
3b 非肌側面(下面)
4 裏面シート
5 サイドシート
6 ウィング部
7 圧搾部
7d 底部(底面)
8 外周シール部
10 吸収性コア
11 粘着領域
12 ウィング部用粘着領域
20 コアラップシート
20a、20b 両側縁部
40 織物
40a 下面(非肌側面)
40b 上面(肌側面)
41 構成糸
42 経糸
43 緯糸
45 織目
50 繊維集合体
51 構成繊維
52 肌側延出部分
53 非肌側延出部分
60 親水性繊維
C1~C4 交点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7