(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】新規な膜ポリマーおよび膜
(51)【国際特許分類】
C08G 65/40 20060101AFI20230403BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
C08G65/40
C08J5/18 CEZ
(21)【出願番号】P 2019571731
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018066996
(87)【国際公開番号】W WO2019002226
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-25
(32)【優先日】2017-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】カイ-ウーヴェ シェーニング
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン マレツコ
(72)【発明者】
【氏名】ワイ フェン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】タイ-シュン チュン
(72)【発明者】
【氏名】アリ ナデリ
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-168432(JP,A)
【文献】特開2006-077193(JP,A)
【文献】特開2013-159641(JP,A)
【文献】特表2001-509431(JP,A)
【文献】特開2012-136624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65/00-67/04
C08J 5/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の製造方法であって、
I)成分として
(A1)少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホン、
(B1)少なくとも1種のジヒドロキシ成分の総量を基準として少なくとも20モル%のトリメチルヒドロキノンを含む少なくとも1種のジヒドロキシ成分、
(C)少なくとも1種の炭酸塩成分、
(D)少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒
を含む反応混合物(R
G)を変換する工程
を含み、
ここで、成分(D)が、N-メチルピロリドン、N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドからなる群から選択さ
れ、
工程I)で第1のポリマー(P1)が得られ、さらに
II)工程I)で得られた前記第1のポリマー(P1)をハロゲン化アルキルと反応させる工程を含む、方法。
【請求項2】
成分(B1)が、前記少なくとも1種のジヒドロキシ成分の総量を基準として80~100モル%のトリメチルヒドロキノンを含む、請求項
1記載の方法。
【請求項3】
前記反応混合物(R
G)中の成分(A1)に対する成分(B1)のモル比が、1.004~1.08の範囲にある、請求項1
または2記載の方法。
【請求項4】
請求項1から
3までのいずれか1項記載の方法によって得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の膜(M)における使用。
【請求項5】
請求項1から
3までのいずれか1項記載の方法によって得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含む膜(M)。
【請求項6】
非対称である、請求項
5記載の膜(M)。
【請求項7】
高密度膜である、請求項
5または
6記載の膜(M)。
【請求項8】
多孔質膜である、請求項
5または
6記載の膜(M)。
【請求項9】
請求項
5から
8までのいずれか1項記載の膜(M)の製造方法であって、
i)前記ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)および少なくとも1種の溶媒を含む溶液(S)を供給する工程、
ii)前記少なくとも1種の溶媒を前記溶液(S)から分離して前記膜(M)を得る工程
を含む、方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種の溶媒が、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルラクタミドおよびスルホランからなる群から選択される、請求項
9記載の方法。
【請求項11】
工程i)の前記溶液(S)が、前記溶液(S)の総重量を基準として0.1~30重量%の前記ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含む、請求項
9または
10記載の方法。
【請求項12】
工程ii)における前記少なくとも1種の溶媒の分離が転相プロセスを介して実施される、請求項
9から
11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項
1から
3までのいずれか1項記載の方法によって得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、とりわけ、少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホンと、少なくとも1種のジヒドロキシ成分の総量を基準として少なくとも20モル%のトリメチルヒドロキノンを含む少なくとも1種のジヒドロキシ成分とを含む反応混合物(RG)を変換することによるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の製造方法に関する。本発明はさらに、本発明の方法によって得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の膜(M)における使用、本発明の方法によって得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含む膜(M)、ならびに膜(M)の製造方法に関する。
【0002】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、高い耐熱性、良好な機械的性質および固有の難燃性を備えている点で高性能熱可塑性プラスチックである(E. M. Koch, H.-M. Walter, Kunststoffe 80 (1990年) 1146; E. Doering, Kunststoffe 80, (1990年) 1149, N. Inchaurondo-Nehm, Kunststoffe 98, (2008年) 190)。ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、生体適合性が高いため、透析膜を形成するための材料としても使用されている(N. A. Hoenich, K. P. Katapodis, Biomaterials 23 (2002年) 3853)。
【0003】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、とりわけ、ジヒドロキシ成分および水酸化物から最初に塩が形成される水酸化物法により、または炭酸塩法により形成され得る。
【0004】
水酸化物法によるポリアリーレンエーテルスルホンポリマーの形成に関する一般的な情報は、とりわけ、R.N. Johnsonら, J. Polym. Sci. A-1 5 (1967年) 2375に記載されており、炭酸塩法については、J.E. McGrath ら, Polymer 25 (1984年) 1827に記載されている。
【0005】
芳香族ビスハロゲン化合物および芳香族ビスフェノールまたはその塩から、非プロトン性溶媒中、1つまたは複数のアルカリ金属またはアンモニウム炭酸塩または重炭酸塩の存在下でポリアリーレンエーテルスルホンポリマーを形成する方法は、当業者に知られており、例えば、欧州特許出願公開第297363号明細書および欧州特許出願公開第135130号明細書に記載されている。
【0006】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーなどの高性能熱可塑性樹脂は、典型的には、極性非プロトン性溶媒、例えば、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(ジメチルアセトアミド)、スルホラン、DMSO(ジメチルスルホキシド)およびNMP(N-メチルピロリドン)中で高い反応温度で実施される重縮合反応によって形成される。
【0007】
Roseら, Polymer 1996年, 第37, No.9, 1735~1743頁には、炭酸カリウムの存在下で、とりわけトリメチルヒドロキノンおよび4ジクロロジフェニルスルホンを使用する、スルホン化メチル化ポリアリーレンエーテルスルホンの製造が記載されている。重合は、窒素雰囲気下でスルホランおよびトルエンの存在下で実施される。記載されている重合には、水の徹底的な除去および高い反応温度が必要である。
【0008】
独国特許第3614753号明細書には、ポリアリーレンエーテルエーテルスルホン単位およびポリアリーレンスルホン単位を含むポリアリーレンエーテルスルホンの製造が記載されている。ジヒドロキシ化合物に由来する単位の総量を基準として12.5モル%のトリメチルヒドロキノンに由来する単位を含むコポリマーが開示されている。
【0009】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーのポリマー膜への適用は、ますます重要になっている。膜材料は、高分子材料と非高分子材料との2つの大きな群に分類される。高分子膜は、比較的低コストで、工業用途の中空糸膜に加工しやすいため、ガス分離に広く使用されている。一方、セラミック、ナノ粒子、有機金属フレームワーク、カーボンナノチューブ、ゼオライトなどに基づく非高分子膜は、熱的および化学的安定性が良好で、ガス分離の選択性が高い傾向がある。それにもかかわらず、機械的脆弱性、かなりのコスト、孔径制御の困難さおよび欠陥のない層の形成という欠点により、商業的魅力が低くなり得る。
【0010】
さらに、膜は、高密度膜と多孔性膜とに分けられる。
【0011】
高密度膜は、実質的に細孔を含まず、特にガス分離に使用される。多孔性膜は、1~10000nmの範囲の直径を有する細孔を含み、主にミクロ濾過、限外濾過およびナノ濾過に使用される。
【0012】
本発明の課題は、従来技術の欠点を保持しないか、または欠点が減少した形でのみポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を形成する方法を提供することである。この方法は、短い反応時間で実行可能でなければならない。さらに、本発明の方法によって得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、膜での使用に適しているものとする。
【0013】
この課題は、
I)成分として
(A1)少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホン、
(B1)少なくとも1種のジヒドロキシ成分の総量を基準として少なくとも20モル%のトリメチルヒドロキノンを含む少なくとも1種のジヒドロキシ成分、
(C)少なくとも1種の炭酸塩成分、
(D)少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒
を含む反応混合物(RG)を変換する工程
を含むポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の製造方法により達成される。
【0014】
驚くべきことに、本発明の方法により、より高い分子量のポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)が得られ、それと同時に、従来技術に記載された方法を用いた場合よりも、反応温度が著しく低くなり、かつ反応時間が短くなることが判明した。
【0015】
さらに、本発明の方法により得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)から製造された膜(M)は、より良好な引張伸びを示し、かつより低い分子量カットオフ(MWCO)を示す。
【0016】
さらに、本発明の方法により得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、最新技術に記載された方法により得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマーよりも著しく高い熱安定性を示す。
【0017】
本発明を、以下により詳細に説明する。
【0018】
方法
本発明のポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の製造方法は、工程I)上記の成分(A1)、(B1)、(C)および(D)を含む反応混合物(RG)を変換することを含む。
【0019】
成分(A1)および(B1)が、重縮合反応に入る。
【0020】
成分(D)は、溶媒として働き、成分(C)は、縮合反応中に成分(B1)を脱プロトン化する塩基として働く。
【0021】
反応混合物(RG)は、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を製造するための本発明による方法で使用される混合物を意味すると理解される。したがって、本発明の場合、反応混合物(RG)に関して示されたすべての詳細は、重縮合の前に存在する混合物に関するものである。重縮合は、反応混合物(RG)が成分(A1)と(B1)との重縮合により反応し、標的生成物であるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を生成する、本発明による方法の間に起こる。重縮合後に得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含む混合物は、生成物混合物(PG)とも呼ばれる。生成物混合物(PG)は、通常、少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒(成分(D))およびハロゲン化物化合物をさらに含む。ハロゲン化物化合物は、反応混合物(RG)の変換中に形成される。変換中、最初に、成分(C)が、成分(B1)と反応して成分(B1)を脱プロトン化する。次に、脱プロトン化された成分(B1)は、ハロゲン化物化合物が形成される成分(A1)と反応する。この方法は、当業者に知られている。
【0022】
本発明の一実施形態では、工程I)で、第1のポリマー(P1)が得られる。この実施形態を、以下により詳細に説明する。この実施形態では、生成物混合物(PG)は、第1のポリマー(P1)を含む。次に、生成物混合物(PG)は、通常、少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒(成分(D))およびハロゲン化物化合物をさらに含む。ハロゲン化物化合物については、上記の詳細が当てはまる。
【0023】
反応混合物(RG)の成分は一般に同時に反応する。個々の成分を、上流の工程で混合し、続いて反応させてもよい。個々の成分を、反応器に供給し、その中でこれらを混合し、次いで反応させることも可能である。
【0024】
本発明による方法では、反応混合物(RG)の個々の成分は、概して工程I)で同時に反応する。この反応は、好ましくは一段階で行われる。これは、成分(B1)の脱プロトン化および成分(A1)と(B1)との間の縮合反応が、中間生成物、例えば成分(B1)の脱プロトン化種の単離なしに単一の反応段階で起こることを意味する。
【0025】
本発明の工程I)による方法は、いわゆる「炭酸塩法」に従って実施される。本発明による方法は、いわゆる「水酸化物法」に従って実施されない。これは、本発明による方法がフェノラートアニオンの単離を伴う二段階で実施されないことを意味する。したがって、好ましい実施形態では、反応混合物(RG)は、実質的に水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムを含まない。より好ましくは、反応混合物(RG)は、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物を実質的に含まない。
【0026】
本発明の場合、「実質的に含まない」という用語は、反応混合物(RG)が、反応混合物(RG)の総重量を基準として、100ppm未満、好ましくは50ppm未満の水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム、好ましくはアルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物を含むことを意味すると理解される。
【0027】
さらに、反応混合物(RG)がトルエンを含まないことが好ましい。反応混合物(RG)が水と共沸混合物を形成する物質を含まないことが特に好ましい。
【0028】
したがって、本発明の別の対象は、反応混合物(RG)が、水と共沸混合物を形成する物質を含まない方法でもある。
【0029】
成分(A1)と成分(B1)との比は、原則として、塩化水素の理論的除去により進行する重縮合反応の化学量論に由来し、当業者により既知の方法で確立されている。
【0030】
好ましくは、成分(B1)に由来するフェノール末端基に対する成分(A1)に由来するハロゲン末端基の比は、出発化合物としての成分(A1)に対して成分(B1)が過剰になるのを制御することにより調整される。
【0031】
より好ましくは、成分(A1)に対する成分(B1)のモル比は、1.004~1.08、特に1.005~1.06、最も好ましくは1.005~1.05である。
【0032】
したがって、本発明の別の対象は、反応混合物(RG)中の成分(A1)に対する成分(B1)のモル比が1.004~1.08の範囲にある方法でもある。
【0033】
好ましくは、重縮合反応における転化率は、少なくとも0.9である。
【0034】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の製造のための工程段階I)は、典型的には、いわゆる「炭酸塩法」の条件下で実施される。これは、反応混合物(RG)がいわゆる「炭酸塩法」の条件下で反応することを意味する。反応(重縮合反応)は、概して、80~250℃の範囲、好ましくは100~220℃の範囲の温度で行われる。温度の上限は、標準圧力(1013.25ミリバール)での少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒(成分(D))の沸点によって決定される。反応は、概して標準圧力で実施される。反応は、好ましくは、2~12時間、特に3~10時間の範囲の時間間隔で実施される。
【0035】
生成物混合物(PG)中の本発明による方法で得られたポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の単離は、例えば、水中または水と他の溶媒との混合物中の生成物混合物(PG)の沈殿により実施され得る。沈殿したポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、続いて水で抽出され、次いで乾燥され得る。本発明の一実施形態では、沈殿物は、酸性媒体に取り込むこともできる。適切な酸は、例えば有機酸または無機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸またはクエン酸などのカルボン酸および塩酸、硫酸またはリン酸などの鉱酸である。
【0036】
本発明の一実施形態では、工程I)で、第1のポリマー(P1)が得られる。本発明の方法は、次に好ましくは、
II)工程I)で得られた第1のポリマー(P1)をハロゲン化アルキルと反応させる工程
をさらに含む。
【0037】
したがって、本発明の別の対象は、工程I)で第1のポリマー(P1)が得られ、さらに
II)工程I)で得られた第1のポリマー(P1)をハロゲン化アルキルと反応させる工程
を含む方法でもある。
【0038】
当業者にとって、工程II)が実施されない場合、第1のポリマー(P1)がポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)に対応することは明らかである。
【0039】
第1のポリマー(P1)は、通常、反応混合物(RG)に含まれる成分(A1)と成分(B1)の重縮合反応の生成物である。第1のポリマー(P1)は、反応混合物(RG)の変換中に得られる上記の生成物混合物(PG)に含まれ得る。上記のように、この生成物混合物(PG)は、第1のポリマー(P1)、成分(D)およびハロゲン化物化合物を含む。第1のポリマー(P1)は、ハロゲン化アルキルと反応する際に、この生成物混合物(PG)に含まれ得る。
【0040】
一実施形態では、工程I)の後、工程II)の前に、ハロゲン化物化合物を生成物混合物(PG)から分離して、第2の生成物混合物(P2G)を得る。第2の生成物混合物(P2G)は、次いで、少なくとも1種の溶媒(成分(D))、第1のポリマー(P1)および任意で微量のハロゲン化物化合物を含む。
【0041】
本発明の文脈内の「微量のハロゲン化物化合物」とは、第2の生成物混合物(P2G)の総重量を基準として、0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、最も好ましくは0.01重量%未満のハロゲン化物化合物を意味する。第2の生成物混合物(P2G)は、通常、第2の生成物混合物(P2G)の総重量を基準として、少なくとも0.0001重量%、好ましくは少なくとも0.0005重量%、最も好ましくは少なくとも0.001重量%のハロゲン化物化合物を含む。
【0042】
第1の生成物混合物(P1)からのハロゲン化物化合物の分離は、当業者に知られている任意の方法、例えば濾過または遠心分離により実施され得る。
【0043】
第1のポリマー(P1)は、通常、末端ヒドロキシ基を含む。工程II)では、これらの末端ヒドロキシ基は、ハロゲン化アルキルとさらに反応して、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を得る。好ましいハロゲン化アルキルは、特に、1~10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基を有する塩化アルキル、特に第一級塩化アルキル、特に好ましくはハロゲン化メチル、特に塩化メチルである。
【0044】
工程II)による反応は、好ましくは、90℃~160℃の範囲、特に100℃~150℃の範囲の温度で実施される。必要な時間は、広範囲にわたってもよく、通常、少なくとも5分、特に少なくとも15分である。工程II)による反応に必要な時間は、15分~8時間、特に30分~4時間であることが好ましい。
【0045】
ハロゲン化アルキルの添加には、さまざまな方法が使用され得る。さらに、化学量論的量または過剰のハロゲン化アルキルを添加することが可能であり、過剰は、例として5倍までであり得る。1つの好ましい実施形態では、ハロゲン化アルキルは、特にガス流の形での連続的導入により連続的に添加される。
【0046】
工程II)では、通常、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)および成分(D)を含むポリマー溶液(PL)が得られる。工程II)では、工程I)からの生成物混合物(PG)が使用された場合、ポリマー溶液(PL)は、典型的にはハロゲン化物化合物をさらに含む。工程II)の後、ポリマー溶液(PL)を濾過することが可能である。それにより、ハロゲン化物化合物を除去することができる。
【0047】
したがって、本発明はまた、工程II)でポリマー溶液(PL)が得られ、さらに
III)工程II)で得られたポリマー溶液(PL)を濾過する工程
を含む方法を提供する。
【0048】
ポリマー溶液(PL)中の本発明による工程II)で得られたポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の単離は、生成物混合物(PG)で得られたポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の単離として実施され得る。例えば、単離は、水または水と他の溶媒との混合物中のポリマー溶液(PL)の沈殿により実施され得る。沈殿したポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、続いて水で抽出し、次いで乾燥させることができる。本発明の一実施形態では、沈殿物は、酸性媒体に取り込むこともできる。適切な酸は、例えば有機または無機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸またはクエン酸などのカルボン酸および塩酸、硫酸またはリン酸などの鉱酸である。
【0049】
成分(A1)
反応混合物(RG)は、成分(A1)として少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホンを含む。本発明の場合、「少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホン」という用語は、厳密に1種の芳香族ジハロゲンスルホン、また、2種以上の芳香族ジハロゲンスルホンの混合物も意味すると理解される。少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホン(成分(A1))は、好ましくは少なくとも1種のジハロジフェニルスルホンである。
【0050】
したがって、本発明はまた、反応混合物(RG)が成分(A1)として少なくとも1種のジハロジフェニルスルホンを含む方法にも関する。
【0051】
成分(A1)は、好ましくはモノマーとして使用される。これは、反応混合物(RG)がプレポリマーとしてではなくモノマーとして成分(A1)を含むことを意味する。
【0052】
反応混合物(RG)は、好ましくは、反応混合物(RG)中の成分(A1)の総重量を基準として、少なくとも50重量%のジハロジフェニルスルホンを成分(A1)として含む。
【0053】
好ましいジハロジフェニルスルホンは、4,4’-ジハロジフェニルスルホンである。成分(A1)としては、特に、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンおよび/または4,4’-ジブロモジフェニルスルホンが好ましい。4,4’-ジクロロジフェニルスルホンおよび4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンが特に好ましく、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンが最も好ましい。
【0054】
したがって、本発明の対象は、成分(A1)が、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンおよび4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される方法でもある。
【0055】
したがって、本発明は、また、成分(A1)が、反応混合物(RG)中の成分(A1)の総重量を基準として、少なくとも50重量%の、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンおよび4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホンを含む方法にも関する。
【0056】
特に好ましい実施形態では、成分(A1)は、反応混合物(RG)中の成分(A1)の総重量を基準として、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも98重量%の、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンおよび4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される芳香族ジハロゲンスルホンを含む。
【0057】
さらに特に好ましい実施形態では、成分(A1)は、ジハロゲン4,4’-ジクロロジフェニルスルホンおよび4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホンから実質的になる。本発明の場合、「~から実質的になる」は、成分(A1)が、それぞれの場合に反応混合物(RG)中の成分(A1)の総重量を基準として、99重量%を上回る、好ましくは99.5重量%を上回る、特に好ましくは99.9重量%を上回る、ジハロゲン4,4’-ジクロロジフェニルスルホンおよび4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホン化合物を含むことを意味すると理解される。これらの実施形態では、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンが成分(A1)として特に好ましい。
【0058】
さらに特に好ましい実施形態では、成分(A1)は、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンからなる。
【0059】
成分(B1)
反応混合物(RG)は、成分(B1)として、少なくとも1種のジヒドロキシ成分の総量を基準として、少なくとも20モル%のトリメチルヒドロキノンを含む少なくとも1種のジヒドロキシ成分を含む。本発明の場合、「少なくとも1種のジヒドロキシ成分」という用語は、正確に1種のジヒドロキシ成分と、2種以上のジヒドロキシ成分の混合物を意味すると理解される。好ましくは、成分(B1)は、正確に1種のジヒドロキシ成分または正確に2種のジヒドロキシ成分の混合物である。最も好ましい成分(B1)は、正確に1種のジヒドロキシ成分である。
【0060】
使用されるジヒドロキシ成分は、典型的には、2つのフェノール性ヒドロキシル基を有する成分である。反応混合物(RG)が少なくとも1種のカーボネート成分を含むため、反応混合物(RG)中の成分(B1)のヒドロキシル基は、部分的に脱プロトン化された形で存在し得る。
【0061】
成分(B1)は、好ましくはモノマーとして使用される。これは、反応混合物(RG)がプレポリマーとしてではなくモノマーとして成分(B1)を含むことを意味する。
【0062】
成分(B1)は、少なくとも1種のジヒドロキシ成分の総量を基準として少なくとも20モル%のトリメチルヒドロキノンを含む。好ましくは、成分(B1)は、反応混合物(RG)中の少なくとも1種のジヒドロキシ成分の総量を基準として、50~100モル%、より好ましくは80~100モル%、最も好ましくは95~100モル%のトリメチルヒドロキノンを含む。
【0063】
したがって、本発明の別の対象は、成分(B1)が少なくとも1種のジヒドロキシ成分の総量を基準として80~100モル%のトリメチルヒドロキノンを含む方法でもある。
【0064】
好ましい実施形態では、成分(B1)は、トリメチルヒドロキノンから実質的になる。
【0065】
本発明の場合、「~から実質的になる」は、成分(B1)が、それぞれの場合に反応混合物(RG)中の成分(B1)の総量を基準として、99モル%を上回る、好ましくは99.5モル%を上回る、特に好ましくは99.9モル%を上回るトリメチルヒドロキノンを含むことを意味すると理解される。
【0066】
さらに好ましい実施形態では、成分(B1)は、トリメチルヒドロキノンからなる。トリメチルヒドロキノンは、2,3,5-トリメチルヒドロキノンとしても知られている。これはCAS番号700-13-0を有する。この製造方法は、当業者に知られている。
【0067】
成分(B1)として構成され得る好適なさらなるジヒドロキシ成分は、当業者に知られており、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニルおよび4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンからなる群から選択される。原則として、ビスフェノールA(IUPAC名:4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール)などの他の芳香族ジヒドロキシ化合物も含まれ得る。
【0068】
成分(C)
反応混合物(RG)は、成分(D)として少なくとも1種のカーボネート成分を含む。本発明の場合、「少なくとも1種の炭酸塩成分」という用語は、正確に1種の炭酸塩成分および2種以上の炭酸塩成分の混合物も意味すると理解される。少なくとも1種の炭酸塩成分は、好ましくは少なくとも1種の金属炭酸塩である。金属炭酸塩は、好ましくは無水である。
【0069】
金属炭酸塩としては、アルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ土類金属炭酸塩が好ましい。炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属炭酸塩が、金属炭酸塩として特に好ましい。炭酸カリウムが最も好ましい。
【0070】
例えば、成分(C)は、反応混合物(RG)中の少なくとも1種の炭酸塩成分の総重量を基準として少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の炭酸カリウムを含む。
【0071】
したがって、本発明の別の対象は、成分(C)が、成分(C)の総重量を基準として、少なくとも50重量%の炭酸カリウムを含む方法でもある。
【0072】
好ましい実施形態では、成分(C)は、炭酸カリウムから実質的になる。
【0073】
本発明の場合、「~から実質的になる」は、成分(C)が、それぞれの場合に反応混合物(RG)中の成分(C)の総重量を基準として、99重量%を上回る、好ましくは99.5重量%を上回る、特に好ましくは99.9重量%を上回る炭酸カリウムを含むことを意味すると理解される。
【0074】
特に好ましい実施形態では、成分(C)は、炭酸カリウムからなる。
【0075】
200μm未満の体積加重平均粒径を有する炭酸カリウムは、炭酸カリウムとして特に好ましい。炭酸カリウムの体積加重平均粒径は、粒径分析器を使用して、N-メチルピロリドン中の炭酸カリウムの懸濁液で測定される。
【0076】
好ましい実施形態では、反応混合物(RG)は、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含まない。
【0077】
成分(D)
反応混合物(RG)は、成分(D)として少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒を含む。本発明によれば、「少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒」は、正確に1種の非プロトン性極性溶媒、また、2種以上の非プロトン性極性溶媒の混合物も意味すると理解される。
【0078】
適切な非プロトン性極性溶媒は、例えば、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンおよびN-ジメチルアセトアミドからなる群から選択される。
【0079】
好ましくは、成分(D)は、N-メチルピロリドン、N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドからなる群から選択される。N-メチルピロリドンが、特に成分(D)として好ましい。
【0080】
したがって、本発明の別の対象は、成分(D)がN-メチルピロリドン、N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドからなる群から選択される方法でもある。
【0081】
成分(D)がスルホランを含まないことが好ましい。さらに、反応混合物(RG)がスルホランを含まないことが好ましい。
【0082】
成分(D)が、反応混合物(RG)中の成分(D)の総重量を基準として、少なくとも50重量%の、N-メチルピロリドン、N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を含むことが好ましい。N-メチルピロリドンが、特に成分(D)として好ましい。
【0083】
さらに好ましい実施形態では、成分(D)は、N-メチルピロリドンから実質的になる。
【0084】
本発明の場合、「~から実質的になる」は、成分(D)が、98重量%を上回る、特に好ましくは99重量%を上回る、より好ましくは99.5重量%を上回る、N-メチルピロリドン、N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒(N-メチルピロリドンが好ましい)を含むことを意味すると理解される。
【0085】
好ましい実施形態では、成分(D)は、N-メチルピロリドンからなる。N-メチルピロリドンは、また、NMPまたはN-メチル-2-ピロリドンとも呼ばれる。
【0086】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)
本発明の方法により得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、成分(A1)に由来する単位および成分(B1)に由来する単位を含む。好ましい実施形態では、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、成分(A1)に由来する単位および成分(B1)に由来する単位からなる。本発明の一実施形態で、工程II)が実施される場合、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)末端基の少なくとも一部が成分(A1)および(B1)に由来しないことは、当業者には明らかである。
【0087】
さらに好ましい実施形態では、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、式(Ia)および/または式(Ib)の単位を含む。
【化1】
【0088】
式(Ia)および(Ib)では、*は結合を示す。この結合は、例えば、式(Ia)または(Ib)の別の単位への連結、または以下に記載のアルキル末端基またはアルコキシ末端基への連結であり得る。
【0089】
式(Ia)および(Ib)が式の可能な異性体も同様に包含することは、当業者には明らかである。
【0090】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)が、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の総重量を基準として、少なくとも50重量%の式(Ia)および/または(Ib)の単位、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の式(Ia)および/または(Ib)の単位を含むことが好ましい。
【0091】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)が、式(Ia)および/または(Ib)の単位から実質的になることはさらに好ましい。
【0092】
本発明の文脈内で「~から実質的になる」は、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)が、99重量%を上回る、好ましくは99.5重量%を上回る、最も好ましくは99重量%を上回る式(Ia)および/または(Ib)の単位を含むことを意味する。
【0093】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)が、式(Ia)および/または(Ib)の単位からなることはさらに好ましい。
【0094】
当業者には、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)が式(Ia)および/または(Ib)の単位からなる場合であっても、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)が式(Ia)および/または(Ib)の単位とは異なる末端基を含むことは明らかである。
【0095】
本発明の方法により得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定して、15000~180000g/モルの範囲、より好ましくは20000~150000g/モルの範囲、特に好ましくは25000~125000g/モルの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。GPC分析は、溶媒として0.5重量%のLiBrを含むジメチルアセトアミドを使用して行われ、ポリマー濃度は4mg/mLである。システムはPMMA標準で較正された。カラムとして、3つの異なるポリエステルコポリマーベース単位を使用した。材料を溶解した後、得られた溶液を、孔径0.2μmのフィルターを使用して濾過し、次いで100μLの溶液をシステムに注入し、溶出速度を1mL/分に設定した。
【0096】
さらに、本発明の方法により得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定して、好ましくは5000~75000g/モルの範囲、より好ましくは6000~60000g/モルの範囲、特に好ましくは7500g/モル~50000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)を有する。GPC分析は、上記のように実施される。
【0097】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)のガラス転移温度(TG)は、第2の加熱サイクルで10K/分の加熱速度で示差走査熱量測定(DSC)により測定して、典型的には230~260℃の範囲、好ましくは235~255℃の範囲、特に好ましくは240~250℃の範囲である。
【0098】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の粘度数(V.N.)は、25℃のN-メチルピロリドンの1%溶液として測定される。粘度数(V.N.)は、典型的には50~120ml/gの範囲、好ましくは55~100ml/gの範囲、最も好ましくは60~90ml/gの範囲である。
【0099】
上記の工程II)が、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の製造のために本発明の方法で実施される場合、得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、通常、アルコキシ末端基を含む。アルコキシ末端基は、ハロゲン化アルキルと、工程I)で本発明のこの実施形態で得られた第1のポリマー(P1)のヒドロキシ末端基の少なくとも一部との反応から生じる。ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、成分(A1)由来のハロゲン末端基および/または成分(B1)由来のヒドロキシ末端基をさらに含み得る。これは、当業者に知られている。
【0100】
本発明の文脈内の「アルコキシ末端基」は、酸素に結合したアルキル基である。アルキル基は、特に1~10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、特にメチル基である。したがって、アルコキシ基は、好ましくはメトキシ(MeO)基である。
【0101】
次に、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、通常、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)のすべての末端基の合計を基準として、少なくとも50%のアルコキシ末端基、好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも65%のアルコキシ末端基を含む。次に、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、通常、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)のすべての末端基の合計を基準として、最大100%、好ましくは最大80%、最も好ましくは最大75%のアルコキシ末端基を含む。
【0102】
したがって、本発明の別の対象は、本発明の方法により得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)でもある。
【0103】
膜(M)
本発明の方法により得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、膜(M)に使用され得る。
【0104】
したがって、本発明の別の対象は、膜(M)における本発明の方法により得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の使用でもある。
【0105】
本発明のさらなる対象は、上記の方法により得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含む膜(M)である。
【0106】
したがって、本発明の別の対象は、本発明の方法により得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含む膜(M)でもある。
【0107】
膜(M)は、膜(M)の総重量を基準として、好ましくは少なくとも50重量%のポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%のポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含む。
【0108】
さらに好ましい実施形態では、膜(M)は、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)から実質的になる。
【0109】
「~から実質的になる」は、膜(M)が、膜(M)の総重量を基準として、99重量%を上回る、好ましくは99.5重量%を上回る、最も好ましくは99.9重量%を上回るポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含むことを意味する。
【0110】
膜(M)の形成中に、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、少なくとも1種の溶媒から分離される。したがって、得られた膜(M)は、少なくとも1種の溶媒を実質的に含まない。
【0111】
本発明の文脈内で「実質的に含まない」は、膜(M)が、膜(M)の総重量を基準として、最大1重量%、好ましくは最大0.5重量%、特に好ましくは最大0.1重量%の少なくとも1種の溶媒を含むことを意味する。膜(M)は、膜(M)の総重量を基準として、少なくとも0.0001重量%、好ましくは少なくとも0.001重量%、特に好ましくは少なくとも0.01重量%の少なくとも1種の溶媒を含む。
【0112】
膜(M)の製造中、溶媒交換は、通常、非対称膜構造をもたらす。これは、当業者に知られている。したがって、膜(M)は、好ましくは非対称である。非対称膜では、分離に使用される最上層から膜の底部に向かって孔径が増加する。
【0113】
したがって、本発明の別の対象は、膜(M)が非対称である膜(M)である。
【0114】
本発明の一実施形態では、膜(M)は多孔質である。
【0115】
したがって、本発明の別の目的は、膜(M)が多孔質膜である膜(M)である。
【0116】
膜(M)が多孔質膜である場合、膜(M)は、通常、細孔を含む。細孔は、通常、300~1000000g/モルの分子量をカバーするさまざまなPEGを含む溶液を使用する濾過実験により測定して1nm~10000nmの範囲、好ましくは2~500nmの範囲、特に好ましくは5~250nmの範囲の直径を有する。供給およびろ液のGPCトレースを比較することにより、各分子量の膜の保持を判断することができる。膜が90%の保持を示す分子量は、所定の条件下でのこの膜の分子量カットオフ(MWCO)と見なされる。PEGのストーク直径とそれらの分子量との間の既知の相関関係を使用して、膜の平均孔径を求めることができる。この方法の詳細は、文献(Chung, J. Membr. Sci. 531 (2017年) 27~37頁)に記載されている。
【0117】
多孔質膜は、典型的には、膜(M)が転相プロセスで製造される場合に得られる。
【0118】
本発明の別の実施形態では、膜(M)は高密度膜である。
【0119】
したがって、本発明の別の対象は、高密度膜である膜(M)でもある。
【0120】
膜(M)が高密度膜である場合、膜(M)は、典型的には、実質的に細孔を含まない。
【0121】
高密度膜は、典型的には、キャスト溶液に含まれる溶媒を蒸発させる溶液キャストプロセスによって得られる。通常、分離層(溶媒の分離後に膜(M)を与える溶液)は、ポリスルホンや酢酸セルロースなどの別のポリマーである可能性のある支持体にキャストされる。分離層の上に、場合により、ポリジメチルシロキサンの層が塗布される。
【0122】
膜(M)の厚さは任意である。例えば、膜の厚さ(M)は、2~150μmの範囲、好ましくは3~100μmの範囲、最も好ましくは5~60μmの範囲である。
【0123】
本発明の膜(M)は、膜が使用される当業者に公知の方法で使用され得る。
【0124】
特に、膜(M)が高密度の膜である場合、ガス分離に特に適している。
【0125】
したがって、本発明の別の対象は、ガス分離のための膜(M)の使用でもある。
【0126】
別の実施形態では、膜(M)は、ナノ濾過、限外濾過および/または精密濾過に使用される。膜(M)が多孔質膜である場合、膜(M)はナノ濾過、精密濾過および/または限外濾過に特に適している。
【0127】
典型的なナノ濾過、限外濾過および精密濾過プロセスは、当業者に知られている。例えば、膜(M)は、透析膜として透析プロセスで使用され得る。
【0128】
本発明の方法により得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、その良好な生体適合性のために透析膜に特に適している。
【0129】
膜の製造
膜(M)は、本発明に従って当業者に公知の方法によりポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)から製造され得る。
【0130】
好ましくは、本発明の方法により得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含む膜(M)は、
i)ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)および少なくとも1種の溶媒を含む溶液(S)を供給する工程、
ii)少なくとも1種の溶媒を溶液(S)から分離して膜(M)を得る工程
を含む方法により製造される。
【0131】
したがって、本発明の別の対象は、本発明の膜(M)の製造方法であって、
i)ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)および少なくとも1種の溶媒を含む溶液(S)を供給する工程、
ii)少なくとも1種の溶媒を溶液(S)から分離して膜(M)を得る工程
を含む、製造方法である。
【0132】
工程i)
工程i)では、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)および少なくとも1種の溶媒を含む溶液(S)が供給される。
【0133】
本発明の文脈内の「少なくとも1種の溶媒」とは、正確に1種の溶媒、また、2種以上の溶媒の混合物も意味する。
【0134】
溶液(S)は、当業者に知られている任意の方法によって工程i)で供給され得る。例えば、溶液(S)は、撹拌装置および好ましくは温度制御装置を含み得る通常の容器内の工程i)で供給され得る。好ましくは、溶液(S)は、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を少なくとも1種の溶媒に溶解することにより供給される。
【0135】
溶液(S)を供給するための少なくとも1種の溶媒中のポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の溶解は、好ましくは撹拌下で行われる。
【0136】
工程i)は、好ましくは高温、特に20~120℃の範囲、より好ましくは40~100℃の範囲で実施される。当業者は、少なくとも1種の溶媒に従って温度を選択するであろう。
【0137】
溶液(S)は、好ましくは、少なくとも1種の溶媒に完全に溶解したポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含む。これは、溶液(S)が好ましくはポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の固体粒子を含まないことを意味する。したがって、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)は、好ましくは、濾過によって少なくとも1種の溶媒から分離することができない。
【0138】
溶液(S)は、好ましくは、溶液(S)の総重量を基準として0.001~50重量%のポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含む。より好ましくは、工程i)の溶液(S)は、溶液(S)の総重量を基準として0.1~30重量%のポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含み、最も好ましくは、溶液(S)は、0.5~25重量%のポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含む。
【0139】
したがって、本発明の別の対象は、工程i)における溶液(S)が、溶液(S)の総重量を基準として、0.1~30重量%のポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を含む、膜(M)の製造方法でもある。
【0140】
少なくとも1種の溶媒としては、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)について当業者に知られている任意の溶媒が適切である。好ましくは、少なくとも1種の溶媒は、水に可溶である。したがって、少なくとも1種の溶媒は、好ましくは、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルラクタミド、ジメチルホルムアミドおよびスルホランからなる群から選択される。N-メチルピロリドンおよびジメチルラクタミドが、特に好ましい。ジメチルラクタミドが、少なくとも1種の溶媒として最も好ましい。
【0141】
したがって、本発明の別の対象は、少なくとも1種の溶媒が、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルラクタミドおよびスルホランからなる群から選択される膜(M)の製造方法でもある。
【0142】
溶液(S)は、好ましくは、溶液(S)の総重量を基準として、50~99.999重量%の範囲の少なくとも1種の溶媒、より好ましくは70~99.9重量%の範囲、最も好ましくは75~99.5重量%の範囲の少なくとも1種の溶媒を含む。
【0143】
工程i)で供給された溶液(S)は、膜の製造のための添加剤をさらに含み得る。
【0144】
膜の製造に適した添加剤は、当業者に知られており、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドコポリマー(PEO-PPO)およびポリ(テトラヒドロフラン)(ポリTHF)である。ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキシド(PEO)は、膜の製造のための添加剤として特に好ましい。
【0145】
膜の製造のための添加剤は、例えば、溶液(S)の総重量を基準として、0.01~20重量%、好ましくは0.1~15重量%の範囲、より好ましくは1~10重量%の範囲の量で溶液(S)中に含まれ得る。
【0146】
少なくとも1種の溶媒中のポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)と、溶液(S)に含まれる膜の製造のための任意に含まれる添加剤との重量パーセントが、典型的には合計で100重量%になることは、当業者には明らかである。
【0147】
工程i)の時間は、広い範囲で変わり得る。工程i)の時間は、好ましくは10分~48時間(時間)の範囲、特に10分~24時間の範囲、より好ましくは15分~12時間の範囲である。当業者は、少なくとも1種の溶媒中のポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の均一な溶液が得られるように、工程i)の時間を選択するであろう。
【0148】
溶液(S)に含まれるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の場合、本発明の方法で得られたポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)について示された実施形態および選択が有効である。
【0149】
工程ii)
工程ii)では、少なくとも1種の溶媒が、溶液(S)から分離されて、膜(M)が得られる。工程ii)で溶液(S)から少なくとも1種の溶媒を分離して濾過溶液(fS)を得る前に、工程i)で供給された溶液(S)を濾過することが可能である。溶液(S)から少なくとも1種の溶媒を分離するための以下の実施形態および選択は、本発明のこの実施形態で使用される濾過溶液(fS)から少なくとも1種の溶媒を分離するために同様に有効である。
【0150】
溶液(S)からの少なくとも1種の溶媒の分離は、溶媒をポリマーから分離するのに適した、当業者に知られている任意の方法によって実施され得る。
【0151】
好ましくは、溶液(S)からの少なくとも1種の溶媒の分離は、転相プロセスを介して実施される。
【0152】
したがって、本発明の別の対象は、工程ii)における少なくとも1種の溶媒の分離が転相プロセスを介して実施される膜(M)の製造方法でもある。
【0153】
少なくとも1種の溶媒の分離が転相プロセスを介して実施される場合、得られる膜(M)は、典型的には多孔質膜である。
【0154】
本発明の文脈内の転相プロセスは、溶解したポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)が固相に変換されるプロセスを意味する。したがって、転相プロセスは、沈殿プロセスと呼ぶこともできる。工程ii)によれば、変換は、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)からの少なくとも1種の溶媒の分離によって実施される。当業者は、適切な転相プロセスを知っている。
【0155】
転相プロセスは、例えば、溶液(S)を冷却することにより実施され得る。この冷却中に、この溶液(S)に含まれるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)が沈殿する。転相プロセスを実施する別の可能性は、溶液(S)をポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)のための非溶媒である気体液と接触させることである。次にポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)が同様に沈殿する。ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)の非溶媒である適切な気体液は、例えば、気体状態の以下に記載されるプロトン性極性溶媒である。本発明の文脈内で好ましい別の転相プロセスは、溶液(S)を少なくとも1種のプロトン性極性溶媒に浸漬することによる相反転である。
【0156】
したがって、本発明の一実施形態では、工程ii)では、溶液(S)に含まれる少なくとも1種の溶媒は、溶液(S)を少なくとも1種のプロトン性極性溶媒に浸漬することにより溶液(S)に含まれるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)から分離される。
【0157】
これは、溶液(S)を少なくとも1種のプロトン性極性溶媒に浸漬することにより、膜(M)が形成されることを意味する。
【0158】
適切な少なくとも1種のプロトン性極性溶媒は、当業者に知られている。少なくとも1種のプロトン性極性溶媒は、好ましくは、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)のための非溶媒である。
【0159】
好ましい少なくとも1種のプロトン性極性溶媒は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、エチレングリコールおよびそれらの混合物である。
【0160】
工程ii)は、通常、工程ii)で得られた膜(M)の形に対応する形の溶液(S)の供給を含む。
【0161】
したがって、本発明の一実施形態では、工程ii)は、溶液(S)をキャスティングして溶液(S)のフィルムを得ること、または溶液(S)を少なくとも1つの紡糸口金に通して少なくとも1種の溶液(S)の中空糸を得ることを含む。
【0162】
したがって、本発明の好ましい一実施形態では、工程ii)は、
ii-1)工程i)で供給された溶液(S)をキャストして、溶液(S)のフィルムを得る工程、
ii-2)工程ii-1)で得られた溶液(S)のフィルムから少なくとも1種の溶媒を蒸発させて、フィルムの形の膜(M)を得る工程
を含む。
【0163】
これは、溶液(S)のフィルムから少なくとも1種の溶媒を蒸発させることにより膜(M)が形成されることを意味する。
【0164】
工程ii-1)では、溶液(S)は、当業者に知られている任意の方法によりキャストされ得る。通常、溶液(S)は、20~150℃の範囲、好ましくは40~100℃の範囲の温度に加熱されるキャスティングナイフでキャストされる。
【0165】
溶液(S)は、通常、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)または溶液(S)に含まれる少なくとも1種の溶媒と反応しない基材上にキャストされる。
【0166】
適切な基材は、当業者に知られており、例えば、ガラス板および不織材料などのポリマー織物から選択される。
【0167】
高密度膜を得るために、工程ii)の分離は、典型的には、溶液(S)に含まれる少なくとも1種の溶媒の蒸発により実施される。
【0168】
本発明は、それに限定されることなく、以下の実施例によりさらに説明される。
【0169】
実施例
使用する成分
DCDPS:4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、
TMH:トリメチルヒドロキノン、
DHDPS:4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、
ビスフェノールA:4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール、
炭酸カリウム:K2CO3;無水;体積平均粒子径32.4μm、
NMP:N-メチルピロリドン、
PESU:ポリエーテルスルホン(ULTRASON(登録商標)E3010)、
PPSU:ポリフェニレンスルホン(ULTRASON(登録商標)P3010)、
PVP:ポリビニルピロリドン;(Luvitec(登録商標)K40)、
PEG:ポリエチレングリコール、
DMAc:ジメチルアセトアミド
【0170】
一般的な手順
ポリマーの粘度数を、25℃のNMPの1%溶液で測定する。
【0171】
ポリマーのNMP溶液を室温(25℃)の脱塩水に滴下することによりポリマーの単離を行う。落下高さは0.5mであり、スループットは約2.5l/hである。次に、得られたビーズを、85℃で20時間、水で抽出する(水のスループット160l/h)。ビーズを、減圧(<100ミリバール)下にて150℃で24時間(時間)乾燥させる。
【0172】
得られた生成物のガラス転移温度を、第2の加熱サイクルで10K/分の加熱ランプで示差走査熱量測定によって求める。
【0173】
数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を、PMMA(ポリ(メチルメタクリレート))標準を用いるDMAc/LiBrのGPCにより求める。
【0174】
メチル末端基の含有量を1H-NMRで測定し、3.8~4ppmのシグナルを積分する(CDCl3/TMS)。Cl末端基の含有量を、サンプルのCl含有量によって測定し、ハロゲンクーロメトリーにより求める。
【0175】
OH-末端基の含有量を、電位差滴定により求める。
【0176】
得られたポリマーの熱安定性を、熱重量分析によって測定する。測定には、Netsch STA 449F3機器を使用した。測定を、次の方法で行った:サンプルを、真空(圧力<1ミリバール)下にて150℃で24時間乾燥させた。次に、空気下でサンプルを20K/分の加熱速度で380℃に加熱し、この温度で30分間保持する。「加熱損失(loss heating)」は、加熱中の質量損失を指し;「アニーリング損失(loss annealing)」は、30分間の保持中の質量損失を指す。
【0177】
実施例1:ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)
温度計、ガス導入管、ディーンスタークトラップを備えた4リットルのガラス製反応器で、574.34g(2.00モル)のDCDPS、304.38g(2.00モル)のTMHおよび290.24g(2.10モル)の炭酸カリウムを、窒素雰囲気下で950mlのNMPに懸濁する。混合物を1時間以内に190℃に加熱する。反応水を連続的に留去する。8時間(時間)の反応時間後、NMP(2050ml)の希釈により反応を停止する。反応時間は、190℃での滞留時間と見なされる。混合物を1時間以内に室温まで冷却し、生成した塩化カリウムを濾別する。
【0178】
実施例2:ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)
温度計、ガス導入管、ディーンスタークトラップを備えた4リットルのガラス製反応器で、574.34g(2.00モル)のDCDPS、304.38g(2.00モル)のTMHおよび290.24g(2.10モル)の炭酸カリウムを、窒素雰囲気下で950mlのNMPに懸濁する。混合物を1時間以内に190℃に加熱する。反応水を連続的に留去する。8時間(時間)の反応時間の後、生成物混合物を、NMP(1000ml)の添加により130℃に冷却する。反応時間は190℃での滞留時間と見なされる。次に、50gの塩化メチルを60分間かけて反応器に加え、次いで混合物を窒素で30分間パージし、最後にNMP(1050ml)を加えて室温まで冷却する。生成した塩化カリウムを濾別する。
【0179】
実施例3:ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)
温度計、ガス導入管およびディーンスタークトラップを備えた4リットルのガラス製反応器で、574.34g(2.00モル)のDCDPS、305.84g(2.01モル)のTMHおよび290.24g(2.10モル)の炭酸カリウムを、窒素雰囲気下で950mlのNMPに懸濁する。混合物を1時間以内に190℃に加熱する。反応水を連続的に留去する。8時間(時間)の反応時間の後、生成物混合物を、NMP(1000ml)の添加により130℃に冷却する。反応時間は190℃での滞留時間と見なされる。次に、50gの塩化メチルを60分間かけて反応器に加え、次いで混合物を窒素で30分間パージし、最後にNMP(1050ml)を加えて室温まで冷却する。生成した塩化カリウムを濾別する。
【0180】
実施例4:ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)
温度計、ガス導入管およびディーンスタークトラップを備えた4リットルのガラス製反応器で、574.34g(2.00モル)のDCDPS、307.36g(2.02モル)のTMHおよび290.24g(2.10モル)の炭酸カリウムを、窒素雰囲気下で950mlのNMPに懸濁する。混合物を1時間以内に190℃に加熱する。反応水を連続的に留去する。8時間(時間)の反応時間の後、生成物混合物を、NMP(1000ml)の添加により130℃に冷却する。反応時間は、190℃での滞留時間と見なされる。次に、50gの塩化メチルを60分間かけて反応器に加え、次いで混合物を、窒素で30分間パージし、最後にNMP(1050ml)を加えて室温まで冷却する。生成した塩化カリウムを濾別する。
【0181】
比較例5
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーを、文献に記載された手順(Roseら, Polymer 1996, 37, 1735)に従って調製した。DCDPS、TMHおよび炭酸カリウムを、スルホランで溶媒として使用し、トルエンで共沸剤として使用した。比較例4では、反応時間は、250℃で8時間であり、比較例5では、反応時間は、250℃で10時間であった。
【0182】
比較例6
温度計、ガス導入管およびディーンスタークトラップを備えた4リットルのガラス製反応器で、574.34g(2.00モル)のDCDPS、250.28g(1.00モル)のDHDPS、171.21g(0.75モル)のビスフェノールA、38.04g(0.25モル)のTMHおよび304.06g(2.20モル)の炭酸カリウムを、窒素雰囲気下で950mlのNMPに懸濁する。混合物を1時間以内に190℃に加熱する。反応水を連続的に留去する。8時間(時間)の反応時間の後、生成物混合物を、NMP(1000ml)の添加により130℃に冷却する。反応時間は、190℃での滞留時間と見なされる。次に、50gの塩化メチルを60分間かけて反応器に加え、次いで混合物を窒素で30分間パージし、最後にNMP(1050ml)を加えて室温まで冷却する。生成した塩化カリウムを濾別する。
【0183】
比較例7として調製したポリマーおよびニートPESUの得られた特性を第1表に示す。
【表1】
【0184】
本発明の方法により、ポリマーのより高い分子量およびより狭い分子量分布が得られることが明らかに分かる。さらに、本発明の方法により得られるポリマーの熱安定性は顕著に高い。
【0185】
膜の製造
磁気撹拌機を備えた三口フラスコに78mlのNMP、5gのPVPおよび17gのポリマーを加えることにより、膜を製造した。次に、この混合物を、均質で透明な粘性溶液が得られるまで、60℃で穏やかに撹拌しながら加熱する。溶液を室温で一晩脱気する。その後、溶液を60℃で2時間再加熱し、5mm/分の速度で60℃のキャスティングナイフ(300ミクロン)を用いてガラス板にキャストする。次に、得られたフィルムを30秒間静置し、続いて25℃の水浴に10分間浸漬する。膜をガラス板から取り外した後、膜を12時間かけて慎重に水浴に移す。その後、膜を、50℃で250ppmのNaOClを含む浴に4.5時間かけて移す。膜を、60℃の水および0.5重量%の亜硫酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、活性塩素を除去する。少なくとも10×15cmの寸法の膜が得られる。
【0186】
膜の純水透過性(PWP)を試験するために、直径60mmの圧力セルを使用した超純水(Millipore UFシステムで濾過した無塩水)を使用する。その後の試験では、さまざまなPEG標準の溶液を、0.15バールの圧力で濾過する。フィードおよび透過液のGPC測定により、分子量カットオフ(MWCO)を求める。
【0187】
引張伸びを、フラットシートメンブレンから打ち抜かれた5つのサンプルで試験し、試験方法は、ISO527-1(2012);サンプルタイプ5Aおよび試験速度50mm/分である。
【0188】
【0189】
本発明の方法により得られるポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)により製造された膜(M)が、公知の方法により得られたポリアリーレンエーテルスルホンポリマーから製造された膜よりも顕著に改善された引張伸びを示し、また、より低い分子量カットオフを示すことが、第2表から明らかに分かる。
【0190】
ガス分離膜
各ポリマーの2重量%溶液をNMPで調製し、混合物を一晩撹拌し、5μmのPTFEフィルターで濾過し、ペトリ皿にキャストする。これらのペトリ皿を60℃の真空オーブンに24時間入れて、溶媒を徐々に蒸発させる。真空オーブンの温度を30℃/30分の加熱速度で上昇させて200℃に到達させ、8時間保持して残留溶媒を完全に除去し、続いて周囲温度まで冷却する。得られた膜の厚さを、デジマチックインジケータ(IDC-112B-5)によって測定する。すべてのサンプルについて、55+/-5μmの厚さが得られる。得られた膜は高密度膜である。
【0191】
膜の純粋なガス透過性を、可変圧力の定容量ガス透過セルで試験する。高密度膜を透過セルに入れ、試験前に35℃で8時間真空引きする。ガスの透過性を、O
2、N
2、CH
4およびCO
2の順に測定する。O
2/N
2およびCO
2/CH
4の組み合わせの場合に得られた理想的な選択性を、第3表に示す。PESUおよびPPSUを基準材料として使用する。
【表3】
【0192】
本発明の膜が、O2/N2およびCO2/CH4の混合物の場合に、参照膜よりも良好な選択性を示すことが、第3表から明らかに分かる。