IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図1
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図2
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図3
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図4
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図5
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図6
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図7
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図8
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図9
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図10
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図11
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図12
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図13
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図14
  • 特許-プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-31
(45)【発行日】2023-04-10
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230403BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20230403BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
H01L21/302 103
H01L21/302 105A
H01L21/316 X
H01L21/318 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021576611
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2020046976
(87)【国際公開番号】W WO2022130536
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松井 都
(72)【発明者】
【氏名】臼井 建人
(72)【発明者】
【氏名】桑原 謙一
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/121540(WO,A1)
【文献】特開2018-137435(JP,A)
【文献】米国特許第06355581(US,B1)
【文献】特開2003-229414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/31
H01L 21/312-21/32
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469-21/475
H01L 21/86
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源と、前記試料が載置される試料台とを備えるプラズマ処理装置において、
前記試料に紫外線を照射することにより前記試料から反射された干渉光を用いて、前記試料の所望の材料に選択的に形成された保護膜の厚さを計測する、または
前記試料に紫外線を照射することにより前記試料から反射された干渉光を用いて前記保護膜の選択性を判断する制御装置をさらに備え、
前記保護膜は、四塩化シリコンガス(SiCl )と臭化水素ガス(HBr)と塩素ガス(Cl )を用いて形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記制御装置は、モニタされた前記干渉光のスペクトルと、前記保護膜が形成された場合の予め取得された前記干渉光のスペクトルとの比較結果を基に前記保護膜の厚さを計測する、または前記保護膜の選択性を判断することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマ処理装置において、
前記モニタされた干渉光のスペクトルおよび前記予め取得された干渉光のスペクトルは、プラズマ処理がされていない前記試料の前記干渉光のスペクトルにより規格化されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載のプラズマ処理装置において、
前記制御装置は、前記規格化されモニタされた干渉光のスペクトルが所定値より大きい場合、前記保護膜が前記試料の所望の材料に選択的に形成されたと判定することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
所望の材料に選択的に保護膜を形成することにより被エッチング膜をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、
四塩化シリコンガス(SiCl)と臭化水素ガス(HBr)と塩素ガス(Cl)を用いて所望の材料に選択的に保護膜を形成することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマ処理方法において、
前記所望の材料は、酸化膜(SiO)であることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項7】
所望の材料に選択的に保護膜を形成することにより被エッチング膜をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、
前記被エッチング膜が成膜された試料に紫外線を照射することにより前記試料から反射された干渉光を用いて前記保護膜の厚さを計測する、または
前記試料に紫外線を照射することにより前記試料から反射された干渉光を用いて前記保護膜の選択性を判断し、
前記保護膜は、四塩化シリコンガス(SiCl )と臭化水素ガス(HBr)と塩素ガス(Cl )を用いて形成されていることを特徴とするプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に係り、特にウエハ上のパターンの上面に所望のエッチング保護膜を形成可能なプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の機能素子製品の微細化、及び、三次元化により、半導体製造におけるドライエッチング工程では、薄膜スペーサやメタル等の各種材料をマスクとした溝やホールの三次元加工技術が重要となっている。半導体デバイスのパターンにおけるマスクやゲート絶縁膜、エッチストッパ等の厚さは薄くなっており、原子層レベルで形状を制御する加工技術が要求されている。さらに、デバイスの三次元化に伴って、複雑な形状を加工する工程が増加している。
【0003】
このようなデバイスをドライエッチング工程で加工する際に、パターンの寸法を制御して加工するために、エッチング装置内でパターン上に保護膜を形成してパターン寸法を均一に調整し、寸法のばらつきを抑制する技術として、特許文献1では、マスクパターンの寸法ばらつきを抑えるために、ドライエッチング前に、マスクパターンの上に、保護膜を形成する手法について開示されている。特許文献1の技術では、初期のマスクパターンの幅の寸法ばらつきを抑えるように保護膜を形成可能となるように、ウエハ内に温度分布を与えることによって、ウエハ内の寸法ばらつきを抑制している。
【0004】
また特許文献2では、マスク等の対エッチング材料をできるだけエッチングすることなく、高選択比で所望のパターンを加工するために、エッチング装置内でパターン上に保護膜を形成した後、保護膜をマスクにエッチングする技術が開示されている。特許文献2では、保護膜の膜厚と寸法を均一にするために、ドライエッチング前にパターン上に保護膜を形成し、さらに、形成した保護膜の膜厚と寸法がウエハ面内で均一となるように保護膜の一部を除去し、ウエハ面内で均一化された保護膜をマスクにドライエッチングする技術について、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-212331号公報
【文献】国際公開第2020/121540号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、三次元デバイスでのパターンの微細化と複雑化とともに、微細で複雑な構造のデバイスの加工形状を原子層レベルで制御し、且つ、多種類の膜に対して高選択比で加工する技術が重要となっている。そのような加工を行うために、ドライエッチング装置でパターンを加工する前に、ドライエッチング装置内でパターン上に保護膜を形成した後、エッチングを行う手法が開示されている。
【0007】
まず、特許文献1では、パターンの最小線幅のバラツキを抑制する方法として、エッチング前にマスクパターン表面に膜を堆積する手法が開示されている。このとき、堆積膜の堆積レートがウエハ温度に依存するため、堆積レートと温度との関連、予め測定したパターン寸法のばらつきを補正するようにウエハ温度を各領域で変化させることで、溝幅のばらつきを補正するための薄い膜を形成して、ウエハ面内での溝幅を調整している。パターンの上面のエッチングを抑制するには、プラズマから照射されるイオンのエネルギーが保護膜とパターン表面との界面に供給できない程度の厚さの保護膜を形成することが必要である。特許文献1の手法では、図2に示したように、基板103上に形成されたパターン102の上面121には、側面122と同程度の膜厚の堆積膜120が形成されるため、パターン102の寸法ばらつきを低減することはできた。しかし、側面120の堆積膜の厚さと上面122の厚さを独立に調整できないため、上面121に照射されるイオン、及び、ラジカルによるエッチングを抑制するのに十分な厚さの膜をパターン102の上面121に堆積することができなかった。
【0008】
特許文献2では、パターンの溝底に膜を堆積させることなくパターン上部にパターン上部の幅よりも大きい幅の保護膜を形成する保護膜堆積工程と、堆積工程で形成した堆積膜のウエハ面内分布におけるウエハ中央部分の過剰な堆積膜を除去し、ウエハ面内均一性、及び、保護膜の幅のウエハ面内ばらつきを制御する保護膜部分除去工程とを有する保護膜形成方法が開示されている。半導体装置製造工程途中のパターンは、密度の高いパターンが形成されている領域とパターンが無い領域とが混在している場合がある。このようなウエハを加工する場合において、特許文献2に記載されている手法では、例えば、図3に示したように、パターン102が密な領域107では、パターン102の上面に厚い保護膜101を形成することができる。しかし、同時に、パターン102の無い領域108の表面上109にも厚い保護膜104が形成されてしまい、パターン102の無い領域108のエッチングを阻害するので、パターン102の底106とパターン102の無い領域108の表面109を同時にエッチングすることは困難であった。図3は、パターン102の底106の表面上にも、薄い保護膜105の形成された状態を示している。
【0009】
本発明の目的は、エッチング前にウエハ上のパターンの少ない領域やパターンの無い領域に不要な保護膜を堆積させることなく、パターンの所望の材料上のみにエッチングを抑制するための保護膜を堆積することのできる保護膜堆積方法を提供する、また、その保護膜堆積方法を用いパターンをエッチング処理するプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した従来技術の課題を解決するために、本発明に係るプラズマ処理装置は、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源と、前記試料が載置される試料台とを備える。プラズマ処理装置は、さらに、前記試料に紫外線を照射することにより前記試料から反射された干渉光を用いて、前記試料の所望の材料に選択的に形成された保護膜の厚さを計測する、または、前記試料に紫外線を照射することにより前記試料から反射された干渉光を用いて前記保護膜の選択性を判断する制御装置を備える。
【0011】
また、上記した従来技術の課題を解決するために、本発明に係るプラズマ処理方法は、所望の材料に選択的に保護膜を形成することにより被エッチング膜をプラズマエッチングするプラズマ処理方法であって、四塩化シリコンガス(SiCl)と臭化水素ガス(HBr)と塩素ガス(Cl)を用いて所望の材料に選択的に保護膜を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エッチング処理前にパターンの形成されていない領域に不要な保護膜を形成することなく、パターンを構成する対エッチング材料(マスク)上に選択的に保護膜を再現性良く形成することが可能となり、微細パターンを高選択比に、且つ、高精度に再現性良くエッチング加工できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のプラズマ処理装置の一例を示す全体図。
図2】従来方法の課題を説明するための説明図。
図3】他の従来方法の課題を説明するための説明図。
図4】実施例の保護膜形成方法の説明図。
図5】実施例の保護膜形成方法のプロセスフローの一例を示す図。
図6】実施例の保護膜形成方法のプロセスフローの一例を説明するパターン断面図。
図7】SiO上に選択的に保護膜を形成した場合の一例の説明図。
図8】実施例の選択的保護膜形成判定方法の一例の説明図。
図9】実施例の選択的保護膜形成判定方法の一例の説明図。
図10】実施例の選択的保護膜形成判定方法の一例の説明図。
図11】実施例の選択的保護膜形成判定方法の他の一例の説明図。
図12】実施例の選択的保護膜形成判定方法の他の一例の説明図。
図13】本発明を適用する他のパターンの例の説明図。
図14】実施例のサイクル処理による方法のプロセスフローの一例を示す図。
図15】実施例のサイクル処理方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。なお、全ての図において、同一の機能を有するものは同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例
【0015】
まず、図4を用いて実施例の保護膜形成方法を説明する。図4に、実施例の保護膜形成方法の説明図を示す。図4に示すように、本発明によれば、パターン102が密な領域107では、パターン102の上面に厚い保護膜101を形成することができるが、パターン102の無い領域108の表面上109には保護膜104は形成されない。そのため、パターン102の上面をエッチングすることなく、パターン102の底106とパターン102の無い領域108の表面109を同時にエッチングすることが可能となり、微細パターンを高選択比に、且つ、高精度に再現性良くエッチング加工できるようになった。ここで、パターン102が密な領域107はパターンが密集した領域または密パターンということもできる。また、パターン102の無い領域108は、パターンが疎である領域ということもできる。
【0016】
実施例に係るエッチング装置(30)は、試料としてのウエハ(100)上に形成された微細なパターンの表面の所望の材料上に選択的に保護膜を堆積させ、保護膜を形成したパターンの下層の被エッチング膜の材料(被エッチング材料)をエッチングして除去することが可能に構成されている。
【0017】
図1に、本実施例のプラズマ処理装置の一例の一全体構成を示す。プラズマ処理装置であるエッチング装置30は、処理室31、ウエハステージ32、ガス供給部33、光学系38、光学系制御部39、バイアス電源40、高周波印加部41、装置制御部42などを備えている。装置制御部(制御装置とも言う)42は、処理室31、ウエハステージ32、ガス供給部33、光学系38、光学系制御部39、バイアス電源40、高周波印加部41を制御することで、エッチング装置30の動作及びエッチング装置30によって実施される各工程(図5で説明する各工程)の実行を制御する。装置制御部42は、ガス制御部43、排気系制御部44、高周波制御部45、バイアス制御部46、堆積工程制御部47、記憶部50、クロック51などの機能ブロックを備えている。これらの装置制御部42を構成する各機能ブロックは、一台のパーソナルコンピュータ(PC)で実現することができる。堆積工程制御部47は判定部48、データベース保存部49を含んでおり、光学系制御部39から送られた信号をデータベース49と参照することによって、判定部48で所望の材料上にのみ、保護膜を形成したことを判定することができる。ウエハステージ32は、試料であるウエハ100を載置するための載置台または試料台である。エッチング装置30を用いてウエハ100をプラズマエッチング処理する場合、ウエハ100が、処理室31の外部から処理室31内に導入され、試料台であるウエハステージ32の上に載置される。
【0018】
エッチング装置30は、処理室31内に設けられたウエハステージ32と、ガスボンベやバルブを備えたガス供給部33が設けられている。ガス供給部33は、複数の処理ガス(34、35、36、37)を切替えて処理室31内に供給可能である。ガス供給部33は、装置制御部42からの制御信号54に基づき、保護膜形成用ガス34、保護膜形成用ガス35、保護膜を除去するための除去用ガス36、エッチング用ガス37、それぞれが、処理ステップに応じて処理室31に供給される。
【0019】
処理室31に供給された処理ガスは、装置制御部42で制御された高周波電源63から高周波印加部41に印加される高周波電力52、および、バイアス電源40からウエハステージ32に印加されるバイアス電圧53によって、処理室31内でプラズマに分解される。また、処理室31内の圧力は、処理室31に接続された、図示を省略した可変コンダクタンスバルブと真空ポンプにより、所望の流量の処理ガスを流した状態で、一定に保つことができる。高周波電源63、高周波印加部41および高周波電力52はプラズマ発生部とみなすことができる。
【0020】
光学系38は、ウエハ100上に形成された保護膜の堆積状態を評価するためのものであって、光学系38から発射されてウエハ100で反射した光スペクトルを光学系38で取得またはモニタすることによって、保護膜がウエハ上に形成されたパターンの所望の材料上に選択的に堆積していること、及び、その保護膜の膜厚を評価することができる。
【0021】
保護膜が所望の材料上にのみ選択的に堆積していることを判定するには、まず、参照データ(参照用スペクトル)を取得する。参照データの取得のため、パターンの所望の材料上に選択的に保護膜を堆積させた参照用パターンが形成されたウエハ100を処理室31に導入してウエハステージ32の上に載置する。参照用パターンが形成されたウエハ100の保護膜の形状や膜厚、選択性の情報は、予め、ウエハ情報としてデータベース49や、装置制御部42の記憶部50などに記憶しておく。
【0022】
次に、光学系38において、光源56から発射した入射光57を、ウエハ100上の参照溝パターン上に照射する。光源56として、例えば、190nmから900nmの間の波長領域の光が用いられる。参照パターンで反射された反射光(干渉光)58は検出器59で検出され、光ファイバー60を通って、分光器61で分光されて反射スペクトルとして光学系制御部39に送られる。光学系制御部39に送られた反射スペクトル情報は、堆積工程制御部47に参照データ(参照用スペクトル)として送られて予めデータベース49として保存されている。
【0023】
次に、本実施例のプラズマエッチング方法として、図4に示したように、パターン102が密な領域107とパターン102が無い領域108が混在するパターンに対して、処理室31内でパターン102の材料に対して選択的に保護膜101を形成してから、被エッチング材料を高選択比でエッチング加工する手法について説明する。
【0024】
次に、図面を用いて、実施例にかかるプラズマ処理方法を説明する。図5は本実施例の選択的保護膜形成方法のプロセスフローの一例を示す図である。また、図6は本実施例の保護膜形成方法のプロセスフローを説明するパターン断面図の一例である。図6(a)は、パターン102が密な領域107とパターン102が無い領域108が混在するパターンを示すパターン断面図である。図6(b)は、図6(a)のパターンに対して選択的保護膜堆積工程を実施して保護膜118を選択的に堆積した状態を示すパターン断面図である。図6(c)は、図6(b)のパターンに対してエッチング工程を実施し被エッチングパターン116を高選択比でエッチングした状態を示すパターン断面図である。
【0025】
本実施例では、図6(a)に示すように、パターン102が密な領域107とパターン102が無い領域108が混在するパターンに対して、図6(b)に示すように、パターン102が無い領域108上に不要な保護膜を形成することなく密な領域107内のパターン102の上のマスク117の材料上(一部分)に選択的に保護膜118を堆積する。そして、図6(c)に示すように、マスク117のエッチングを抑制して、基板115の上に形成または成膜された被エッチングパターン(被エッチング膜)116を高選択比でエッチング加工する。この手法について、図5のフローに基づいて説明する。
【0026】
本実施例では、保護膜堆積の選択性を判定するために、反射光のスペクトルを取得し、保護膜堆積工程での選択性を判定するための手段を設けた。
【0027】
ここで、反射スペクトルの強度は、光源56の出力や光学系38の経時変化によって変動する。また、光源56からの光を処理室31に導入させる際に、光を透過させる石英等の窓62を使用している場合、処理室31内で生成したプラズマ等によって、窓62の表面状態が変化し、入射光57や反射光(干渉光)58のスペクトルに影響を与える可能性がある。それらの変動を校正するために、プラズマ処理の前に、リファレンスとなる初期反射スペクトルを測定して取得する(反射スペクトル測定:S201)。まず、リファレンスとなる初期ウエハを処理室31内に導入し、光源56から発生した入射光57を光透過用の窓62を通して処理室31に導入し、ウエハに照射する。そして、反射された反射光(干渉光)58は再び窓62を通過し、検出器59で検出される。検出器59で検出された光は、光ファイバー60を通って分光器61で分光される。この分光器61で分光された反射スペクトルは初期スペクトル(初期反射スペクトル)として記憶部50に保存される。
【0028】
次に、試料であるウエハ100の表面を清浄化する前処理工程を実施する。エッチング用のウエハ100上に形成されたパターンに対して、前処理を実施して、パターン表面に形成された自然酸化膜等を除去して、清浄なパターン表面を形成する(前処理:S202)。清浄表面を形成するための前処理(S202)は、プラズマ処理によって最表面のみをエッチングする方法、プラズマを形成しないで、ガスのみを処理室31に導入する方法、あるいは、熱処理による方法を用いることができる。
【0029】
清浄なパターン表面を形成したら、初期反射スペクトルを取得したパターン上に光源56から発生された入射光57を照射し、反射された反射光58のスペクトルを測定する(反射スペクトル測定:S203)。取得した反射スペクトルは、初期スペクトルと同様に記憶部50に保存される。取得した反射のスペクトルは、データベース49に予め保存してある清浄パターンの反射スペクトルと比較し、清浄表面となったことを確認する(S204)。パターン表面が清浄表面でないと判定された場合(No)、再度、前処理(S202)及び反射スペクトル測定(S203)が実施される。
【0030】
エッチング用のウエハ100の表面が清浄となったら(S204:Yes)、パターン材料(所望の材料)に対して選択的に保護膜を堆積する工程(選択的保護膜堆積工程)を開始する(S205)。
【0031】
まず、装置制御部42からの制御信号54に基づき、保護膜形成用ガス34、及び、保護膜形成用ガス35が所定の流量で処理室31に供給される。供給された保護膜形成用ガス34、及び、保護膜形成用ガス35は、高周波印加部41に印加される高周波電力52によってプラズマとなり、ラジカル、イオン等に分解される。この間の処理室31内の圧力は、可変コンダクタンスバルブと真空ポンプにより、所望の流量の処理ガスを流した状態で、一定に保つことができる。プラズマで生成したラジカルやイオンはウエハ100の表面に到達し、図6(b)に示した保護膜118を形成する。保護膜形成用ガス34はプラズマとなったとき、パターン表面に堆積しやすいラジカル、イオンを生成し、保護膜118を形成して堆積する。保護膜形成用ガス35はプラズマとなったとき、保護膜118の堆積成分を除去する性質を持つラジカル、及び、イオンを生成し、パターンの無い広い領域に不要な保護膜118が堆積することを抑制する。保護膜形成用ガス34は堆積性の高い処理ガスであり、保護膜形成用ガス35は堆積成分を除去する効果を持つ処理ガスである。
【0032】
堆積させる保護膜118の材料としては、例えば、SiO, Si, SiHx, SiN, SiOC, C, フロロカーボン系ポリマー, BCl, BN, BO,BC等を堆積させることができる。
【0033】
ここでは一例として、密パターン107のマスク117上にSi系の保護膜118を形成し、広い領域108には保護膜118を形成しない場合について説明する。つまり、Si上には保護膜118を形成しないが、所望の材料(117)としての酸化膜(SiO)上にのみ保護膜118を形成する選択的保護膜堆積工程によって、マスク117の材料はSiOであり、保護膜を形成しない領域108の表面の材料はSiであるパターンに対して、マスク117上にのみ保護膜118を形成し、広い領域108には不要な保護膜118を形成しない場合について、説明する。ここでは一例として、保護膜形成用ガス34として、四塩化シリコンガス(SiCl)と臭化水素ガス(HBr)の混合ガスを用い、保護膜形成用ガス35として、塩素ガス(Cl)を所定の流量で処理室31に供給した。
【0034】
図7(a)には、SiClとHBrの混合ガスにClを加えて保護膜118を形成したときのSi上、及び、SiO上に形成された保護膜118の膜厚(保護膜厚)のCl流量による変化の一例を示す。線110はSiO上の保護膜厚のCl2流量による変化を示し、線111はSi上の保護膜厚のCl2流量による変化を示す。Cl流量が少ない場合、Si上とSiO上に形成された保護膜118の厚さに違いは無いが、Cl流量を一定値以上に増加させると、SiO上にのみ保護膜118が形成され、Si上には形成されない条件があることを我々は見出した。つまり、保護膜118はSiO上に選択的にデポジション可能であることを見出した。図7(b)には、SiO上にのみ保護膜118が形成され、Si上には形成されない一条件における保護膜厚の堆積工程の処理時間依存性を示す。線112は、SiO上の保護膜厚の処理時間変化を示し、線113はSi上の保護膜厚の処理時間変化を示す。処理時間がある一定時間以上になると、SiO上にもSi上にも保護膜118が形成されるが、一定時間以下であれば、SiO上にのみ保護膜118が形成され、材料に選択的に保護膜118を形成できることが明らかになった。
【0035】
保護膜形成用ガス34は、上記で説明した以外に、例えば、パターン材料上に堆積しやすいガス、例えば、SiやSiO等のSiを含む膜を保護膜118として堆積させる場合は、SiCl、あるいは、SiFやSiH等のSi系ガスが用いられる。SiOを保護膜118として堆積させる場合には、例えば、SiF、あるいは、SiCl等のSi系ガスとO,CO,N等のガス,及び、Ar,He等の混合ガスが用いられる。Siを保護膜118として堆積させる場合には、例えば、SiH,SiF、あるいは、SiCl等のSi系ガスとH,HBr, NH,CHF等のガス,及び、Ar,He等の混合ガスが用いられる。SiNを保護膜118として堆積させる場合には、例えば、ガスとして、SiF、あるいは、SiCl等のSi系ガスとN,NF等のガス,及び、H,Ar,He等の混合ガスが用いられる。保護膜形成用ガス35として、Siを含む堆積膜を除去する性質を持つガス、例えば、Cl、あるいは、CF等のフロロカーボンガス、CHF等のハイドロフロロカーボンガス、NF等のガス、及び、Ar,He,O、CO等の混合ガスが用いられる。
【0036】
また、C系ポリマー、または、CF系ポリマーを保護膜118として堆積させる場合には、保護膜形成用ガス34は、例えば、フロロカーボンガス、ハイドロフロロカーボンガス、あるいは、CHとAr、He、Ne、Kr、Xe等の希ガスの混合ガスが用いられる。保護膜形成用ガス35は、O、CO、SO、CF、N、H、無水HF、CH、CHF、HBrNF3、SF6等の混合ガスが用いられる。
【0037】
また、BCl, BN, BO,BC等を保護膜118として堆積させる場合には、保護膜形成用ガス34は、例えば、BCl等とAr、He、Ne、Kr、Xe等の希ガスとの混合ガスが用いられる。保護膜形成用ガス35は、例えば、Cl、O、CO、CF、N、H、無水HF、CH、CHF、HBrNF、SF等の混合ガスが用いられる。
【0038】
保護膜118は、マスクの非エッチング層117、下層の被エッチング層116の材料に対応して、選択的に堆積させることができる。
【0039】
保護膜堆積工程(S205)の後、再度、パターン上に光源56から発生された入射光57を照射し、反射された反射光58の反射スペクトルを測定する(反射スペクトル測定:S206)。取得した反射スペクトルは、初期スペクトルと同様に記憶部50に保存され、堆積工程制御部47内の判定部48に送られる。取得した反射のスペクトルは、データベース49に予め保存してある選択的に保護膜118を堆積させた参照用パターンからの反射スペクトルと比較し、その比較結果に基づいて保護膜118が選択的に堆積しているかどうか判定する(S207)。さらに、判定部48では、データベース49に予め保存された参照パターンからの反射スペクトルと保護膜堆積後に取得した反射スペクトルから、選択的に堆積された保護膜118の厚さ、及び、パターン幅(寸法)を算出することができる。
【0040】
図8には、SiO系の保護膜118が選択的に堆積した場合と、一様に堆積した場合の反射スペクトルの相違の一例を示す。縦軸は信号強度を示し、横軸は波長を示す。保護膜118が選択的に堆積する場合と、一様に堆積する場合で反射スペクトルが変化することから、予め取得してデータベース49に保存してある反射スペクトルと選択的保護膜堆積工程(S205)後に反射スペクトル測定(S206)で取得した反射スペクトルを比較することによって、保護膜118が選択的に堆積したことを判定することができる。あるいは、予め測定した保護膜118の反射率を用いて計算した反射スペクトルと比較することによって、保護膜118が選択的に堆積したことを判定することができる。
【0041】
保護膜118が選択的に堆積したことを判定する他の手法として、選択的保護膜堆積工程(S205)後に取得した反射スペクトル測定(S206)で取得した反射スペクトルを、予め記憶部50に保存してある選択的保護膜堆積工程(S205)の実施前の初期反射スペクトル測定(S201)で取得した初期の反射スペクトル、あるいは、前処理(S202)を行った後の反射スペクトル測定(S203)で取得した清浄なパターンの反射スペクトルで規格化したスペクトルを用いることもできる。これにより、処理室31内で生成したプラズマ等によって、窓62の表面状態が変化したことによる、入射光57や反射光(干渉光)58へのスペクトル変動の影響を小さくして、正確に判定することが可能となった。図9には、保護膜118を選択的に堆積した場合と保護膜118を一様に堆積した場合について、選択的保護膜堆積工程(S205)の実施前の初期反射スペクトル測定(S201)で取得した初期スペクトルで規格化したスペクトルを示す。縦軸は信号強度比を示し、横軸は波長を示す。SiO系の保護膜118を堆積させた場合、選択的に堆積した場合と一様に堆積した場合との信号強度の相違が、波長200~500nmの範囲で大きい傾向がある。従って、200~500nmの短い波長の入射光57を用いて反射光58を取得することによって、SiO系の保護膜118が選択的に堆積できたことを感度良く判定することができる。例えば、200~500nmの短い波長の入射光57の光源56として、Xeランプ等の紫外光(紫外線とも言う)を発光する紫外光源を用いることができる。
【0042】
図10には、一例として、SiO2系の保護膜118を選択的に堆積した場合と一様に堆積した場合における、特定の波長である波長270nmの信号強度の堆積処理時間による変化を示す。縦軸は信号強度比を示し、横軸は堆積処理時間を示す。信号強度比は、初期スペクトルの信号強度で規格化した値である。例えば、処理時間20秒で保護膜118を形成した場合、図10に示したように、選択的に保護膜118を形成したことを判定するための規定値1を設定することによって、規定値1よりも実際に測定した信号強度比が大きい場合(規定値以上)に、選択的に保護膜118が堆積したと判定することができる。ここで、規定値1は、図10に示すように、処理時間20秒において、保護膜118を一様に堆積した場合の信号強度比と保護膜118を選択的に堆積した場合の信号強度比との間に設定されている。例えば、規定値1を信号強度比3と設定した場合、規定値1よりも実際に測定した信号強度比が大きい場合に、選択的に保護膜118が堆積したと判定することができる。
【0043】
図11には、他の一例として、SiO2系の保護膜118を選択的に堆積した場合と一様に堆積した場合における、特定の波長である波長390nmの信号強度の堆積処理時間による変化を示す。縦軸は信号強度比を示し、横軸は堆積処理時間を示す。信号強度比は、初期スペクトルの信号強度で規格化した値である。例えば、処理時間5秒で保護膜118を形成した場合、規定値2を信号強度比1と設定すると、規定値2よりも実際に測定した信号強度比が大きい場合(規定値以上)に、選択的に保護膜118が堆積したと判定することができる。
【0044】
図12には、他の一例として、SiO2系の保護膜118を選択的に堆積した場合と一様に堆積した場合において、初期スペクトルで規格化した信号強度比が1となる波長の堆積処理時間による変化を示す。縦軸は信号強度比が1となる波長を示し、横軸は堆積処理時間を示す。例えば、処理時間20秒で保護膜118を形成した場合、規定波長3を波長380nmと設定すると、規定波長3よりも信号強度比が1となる波長が大きい場合に、選択的に保護膜118が堆積したと判定することができる。
【0045】
ここで、上記の規定値1、規定値2、規定波長3は、予め、データベース49に保存してある選択的に保護膜118を堆積させた参照用パターンからの初期スペクトルと反射スペクトルとから、判定部48によって設定することが可能である。あるいは、予め測定してあるパターンの光学定数、及び、堆積膜の光学定数を用いて、判定部48で初期スペクトルと反射スペクトルとを計算によって求め、予め設定することも可能である。
【0046】
上記の手法によって、S207において、選択的に保護膜118が形成できていないと判定された場合(No)、保護膜除去工程を実施する(S208)。保護膜除去工程(S208)が開始すると、保護膜除去用ガス36が所定の流量で処理室31に供給される。供給された保護膜除去用ガス36は高周波印加部41に印加される高周波電力52によってプラズマとなり、イオンやラジカルに分解され、ウエハ100表面に照射される。
【0047】
保護膜除去工程(S208)が終了したら、再び、リファレンスとなる初期スペクトルを取得し(S201)、前処理を実施(S202)後、再び、選択的保護膜堆積工程を実施する(S205)。このとき、再び行う際の選択的保護膜堆積工程の条件は、記憶部50に保存してある前回実施した場合の保護膜堆積工程(S205)後の反射スペクトルの測定結果に基づき、判定部48で補正された条件に調整する(保護膜堆積条件の調整:S209)。例えば、前回実施した時の保護膜堆積工程後の反射スペクトルから、選択的に保護膜118が形成されていないと判定された場合、例えば、保護膜形成用ガス35であるCl流量を所定の量だけ増加させた条件に保護膜堆積条件を決定し、その条件で保護膜堆積工程を実施した(S205)。
【0048】
以上に述べた処理を実施して、選択的に保護膜118が堆積したと判定された場合(S207のYes)、保護膜118の膜質制御工程を実施する(S210)。膜質制御工程(S210)は、選択的に堆積させた保護膜118の膜質を改質する工程である。例えば、保護膜堆積工程(S205)で保護膜118としてSi系保護膜を形成し、次の工程であるエッチング工程(S111)でSiをエッチングする場合、保護膜118を酸化させてSiOに改質した方が、所望のパターン形状にエッチング可能となる場合がある。そのような場合に膜質制御工程(S210)では、O、及び、CO等のOを含む混合ガスを処理室31に供給する。あるいは、保護膜118を窒化させてSiに改質した方が、所望のパターン形状にエッチング可能となる場合、N、及び、NH等の窒素を含む混合ガスを処理室31に供給する。供給されたガスは、高周波印加部41に印加される高周波電力52によってプラズマとなり、ラジカル、イオン等に分解され、ウエハ100表面に照射される。
【0049】
保護膜118の膜質制御工程(S210)が終了したら、形成した保護膜118、及び、パターン102に元々形成されていたマスク117をエッチングマスクとして、被エッチング材料116をエッチングする(S211)。
【0050】
エッチング工程(S211)においては、先ず、装置制御部42でガス供給部33を制御して、エッチング用ガス36を所定の流量で処理室31に供給する。エッチング用ガス36が供給されて処理室31の内部が所定の圧力になった状態で、装置制御部42で高周波電源37を制御して、高周波印加部41に高周波電力52を印加して、処理室31の内部にエッチング用ガス36によるプラズマを発生させる。
【0051】
この処理室31の内部に発生させたエッチング用ガス36のプラズマにより、保護膜118が形成されたウエハ100のエッチング処理を行う。このエッチング処理を行いながら、光学系38で保護膜118の膜厚を測定し、ウエハ100上のパターン(被エッチング材料116)が所望の深さにエッチングされるまで保護膜118の膜厚を測定し(S212)、所定のエッチングの処理時間または、所望の深さに到達した時点で、エッチングを終了する(S213)。
【0052】
ここで、エッチング所望のエッチング深さに到達する前に、保護膜118の厚さが規定値以下となる場合がある。そのような場合(S212でNoの場合)、選択的保護膜堆積工程(S205)へ戻り、保護膜118の堆積工程から再度開始し、再び所定の膜厚に達するまで選択的に保護膜118の堆積が実施される。前記のように、S205からS212を繰り返して、ウエハ100上のパターン(被エッチング材料116)が所定の深さにエッチングされるまで繰り返される。S212にて、所定の深さまでにエッチング深さに到達した時点(Yes)で、エッチングを終了する(S213)。さらに、パターンをエッチング後、パターン表面に堆積させた保護膜118を除去することができる。保護膜118のみを除去することもできるし、マスク117材料上に保護膜118が形成されている場合は、マスク117材料と同時にマスク表面上に残った保護膜118を除去しても良い。
【0053】
このようなプラズマ処理をウエハ100に施すことにより、パターンの無い領域108には不要な保護膜118を形成することなく、パターンのマスク上面117にのみ保護膜118を形成することが可能となる。マスク上面117がエッチングされてパターンの深さが浅くなってしまうという従来技術の課題や、下層の被エッチング層116をエッチングする間にマスク上面117がエッチングされてしまうという従来の課題を解決して、ウエハ100上に所望のパターン形状得ることができるようになった。
【0054】
なお、上記実施例では被エッチングパターンとして、マスク117、下層の被エッチング層116が形成されており、マスクパターンはパターンが密な領域107とパターンが無い領域108が混在している場合に、パターンが無い領域108の被エッチング材料上に不要な保護膜を形成することなく密パターン107上のマスク117の材料上に選択的に保護膜118を形成して、マスク117のエッチングを抑制して、被エッチングパターン116を高選択比で加工する手法について述べた。
【0055】
図13には、本実施例の保護膜形成手法を用いてエッチング可能なパターンの他の例を示す。被エッチングパターンには、マスク150A、及び、150B、下層の被エッチング層151が形成されており、被エッチング層151の一部に、エッチングしないパターン152が形成されており、マスクパターンにはパターンが密な領域107とパターンが無い領域108が混在している。パターン152をエッチングすることなく、被エッチング材料153をエッチングする場合、パターン152材料上に選択的に保護膜101を形成することが有効である。選択的に堆積しない場合、マスク150B上のパターンの無い領域108にもマスク150Aの領域にも厚い保護膜が形成されるが、パターン152材料上に選択的に保護膜101を形成することにより、不要な保護膜をマスク150A、及び、マスク150B上、及び、被エッチング材料上153上に堆積することなく、パターン152上のみに保護膜101を形成して、被エッチングパターンを加工することができるようになった。図13において、154はストッパ層であり、155は層間絶縁膜である。
【0056】
図14には、材料に選択的に保護膜を形成する方法の他のプロセスフローの一例を示す図である。本プロセスフローは、選択的保護膜堆積工程(S205)と前処理(S202)を繰り返すことによって、比較的厚い保護膜を選択的に形成する場合に実施する。これは、図7(b)に示したように、保護膜堆積工程(S205)をある一定時間以上実施すると、材料選択性がなくなるため、選択性が無くならないように処理時間を設定しておき、保護膜堆積工程(S205)後に前処理(S202)を再度行って、初期の表面の材料によって生じる選択性を確保するためである。選択的保護膜堆積工程を実施後(S205)、前記したように、反射スペクトルを測定し(S206)、反射スペクトルと予め保存してある参照用パターンからの反射スペクトルと比較し、選択的に保護膜を形成しているかどうか判定する(S207)。さらに、判定部48では、データベース49に予め保存された参照パターンからの反射スペクトルと保護膜形成後に取得した反射スペクトルから、選択的に形成された保護膜の厚さ、及び、パターン幅(寸法)を算出する(S214)。ここで、保護膜の厚さが所定の膜厚に達していない場合(No)、再び前処理(S202)を実施する。これによって、保護膜を形成しない材料の上は清浄となる。一方、保護膜が形成された材料上は、前処理を行っても表面が初期状態に戻らない様に、処理時間等の処理条件を設定する必要がある。保護膜が所定の膜厚となるまで、S202からS214までを繰り返して、選択的に厚い保護膜を形成することができる。図15には、Si上、及び、SiO上に堆積した保護膜厚の繰り返し回数(サイクル数)による変化を示す。本手法により、Si上には保護膜を形成せず、SiO2上にのみ、厚い保護膜を形成できることを確認することができた。
【0057】
実施例のプラズマ処理装置についてまとめると以下である。
【0058】
本発明のプラズマ処理装置(30)は、パターンが形成された試料(100)を載置する試料台(32)を備えた処理室(31)と、処理室(31)の内部に複数の処理ガス(34,35,36,37)を切替えて供給するガス供給部(33)と、ガス供給部(33)により処理室(31)の内部に供給された処理ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生部(40、41、45、52)と、試料台(32)に載置された試料(100)に光を照射して試料(100)からの干渉光によるスペクトルを検出する光学系(38)と、ガス供給部(33)とプラズマ発生部(40、41、45、52)と光学系(38)とを制御する制御部(42)とを備えて構成した。
【0059】
制御部(42)は、ガス供給部(33)を制御して処理室(31)の内部に保護膜形成用のガス(34,35)を供給した状態でプラズマ発生部(40、41、45、52)を制御して試料台(32)に載置された試料(100)の表面に保護膜(101、118)を形成し、さらに、取得した干渉光のスペクトルと、予め取得した参照スペクトルとを比較して、保護膜(101、118)がパターン(102、117)を形成する材料に依存して選択的に形成されたことを判定する。
【0060】
制御部(42)は、さらに、ガス供給部(33)を制御して処理室(31)の内部に供給するガスをエッチング用のガス(37)に切替えた状態でプラズマ発生部(40、41、45、52)を制御して試料台(32)に載置された表面に保護膜(101、118)が形成された試料(100)をエッチング処理するようにした。
【0061】
また、実施例のプラズマ処理装置についてまとめると以下と言うこともできる。
【0062】
プラズマ処理装置(30)は、試料(100)がプラズマ処理される処理室(31)と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源(63)と、試料(100)が載置される試料台(32)とを備える。プラズマ処理装置(30)は、さらに、試料(100)に紫外線を照射することにより試料(100)から反射された干渉光(58)を用いて、試料(100)の所望の材料に選択的に形成された保護膜(118)の厚さを計測する、または、試料(100)に紫外線を照射することにより試料(100)から反射された干渉光(58)を用いて保護膜(118)の選択性を判断する制御装置(42)を備える。
【0063】
制御装置(42)は、モニタされた干渉光(58)のスペクトルと、保護膜(118)が形成された場合の予め取得された干渉光(58)のスペクトルとの比較結果を基に保護膜(118)の厚さを計測する、または、保護膜(118)の選択性を判断する。
【0064】
ここで、モニタされた干渉光(58)のスペクトルおよび予め取得された干渉光(58)のスペクトルは、プラズマ処理がされていない試料(100)の干渉光(58)のスペクトル(初期スペクトル)により規格化するのが良い。制御装置(42)は、モニタされた干渉光(58)のスペクトルの規格化されたスペクトルが所定値より大きい場合、保護膜(118)が試料(100)の所望の材料(117)に選択的に形成されたと判定する。
【0065】
実施例のプラズマ処理方法についてまとめると以下である。
本発明のプラズマ処理方法では、まず、試料台(32)に設置した試料(100)上に形成された自然酸化膜等を除去して、パターン(102、117)の表面の清浄化を行うための前処理工程(S202)を行う手段を設けた。さらに、プラズマを用いて試料(100)をエッチング処理するプラズマ処理方法において、パターン(102、117)材料に対して選択的に保護膜(101、118)を形成するための保護膜形成用ガス(34,35)を処理室(31)に供給するための手段を設けた。パターン(102、117)材料に対して選択的に保護膜(101、118)を形成するための手段として、処理室(31)の内部に保護膜形成用ガス(34、35)のプラズマをプラズマ発生手段(40、41、45、52)で発生させて、試料台(32)に載置した試料(100)上に形成されたパターン(102、117)の表面に選択的に保護膜(101、118)を堆積させる工程(S205)と、処理室(31)にエッチング処理用ガス(37)を供給してプラズマ発生手段(40、41、45、52)でエッチング処理用ガス(37)のプラズマを発生させてパターン(102、117)の表面に保護膜(101、118)を形成した試料(100)をエッチング処理して溝のパターンの間、及び、溝のパターンの形成されていない領域(108)の被エッチングパターンをエッチングして除去する工程(S211)と、を含んで試料(100)をエッチング処理するようにした。
【0066】
さらに、パターン(102、117)表面に選択的に保護膜(101,118)を堆積する工程(S205)を制御する手段として、保護膜堆積工程(S205)の前後に、試料(100)に光(57)を照射して、試料(100)からの干渉光(58)によるスペクトルを検出し、選択的に保護膜(101,118)を形成した場合において予め取得した干渉光スペクトルと比較することによって、選択的に保護膜(101,118)が形成できているかどうか判別し(S207)、選択的に保護膜(101,118)が形成されていない場合には、保護膜(101,118)を除去するための手段(S208)を設けた。さらに、調整された保護膜堆積条件(S209)にて、再度、選択的に保護膜(101,118)を堆積するための保護膜形成用ガス(34、35)を処理室(31)に供給し、処理室(31)の内部に保護膜形成用ガス(34,35)のプラズマをプラズマ発生手段(40、41、45、52)で発生させて、試料台(32)に載置した試料(100)上に形成されたパターン(102、117)の表面に選択的に保護膜(101,118)を堆積させる工程(S205)を実施するための手段を設けた。
【0067】
さらに、厚い膜をエッチングしたり、高アスペクト比を持つパターンの底を加工するために、保護膜(101,118)を選択的に堆積させる工程(S205)と、被エッチング膜をエッチングする工程(S211)とをサイクリックに繰り返して実施するようにした(S212)。
【0068】
また、実施例のプラズマ処理方法についてまとめると以下ということもできる。
【0069】
所望の材料(117)に選択的に保護膜(101、108)を形成することにより被エッチング膜(116)をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、四塩化シリコンガス(SiCl)と臭化水素ガス(HBr)と塩素ガス(Cl)を用いて所望の材料に選択的に保護膜(116)を形成する(S205:選択的保護膜堆積工程)ものである。ここで、所望の材料は、酸化膜(SiO)である。
【0070】
また、所望の材料(117)に選択的に保護膜(101、108)を形成することにより被エッチング膜(116)をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、被エッチング膜(116)が成膜された試料(100)に紫外線を照射することにより試料(100)から反射された干渉光(58)を用いて保護膜(101、108)の厚さを計測する、または、試料(100)に紫外線を照射することにより試料(100)から反射された干渉光(58)を用いて保護膜(101、108)の選択性を判断するものである。
【0071】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
30・・・エッチング装置、31・・・処理室、32・・・ウエハステージ、33・・・ガス供給部、34・・・保護膜形成用ガス、35・・・保護膜形成用ガス、36・・・保護膜除去用ガス、37・・・エッチング用ガス、38・・・光学系、39・・・光学系制御部、40・・・バイアス電源、41・・・高周波印加部、42・・・装置制御部、43・・・ガス制御部、44・・・排気系制御部、45・・・高周波制御部、46・・・バイアス制御部、47・・・堆積工程制御部、48・・・判定部、49・・・データベース、50・・・記憶部、51・・・クロック、52・・・高周波電力、54・・・制御信号、56・・・光源、57・・・入射光、58・・・反射光、59・・・検出器、60・・・光ファイバー、61・・・分光器、62・・・窓、63・・・高周波電源、100・・・ウエハ、101・・・保護膜、102・・・パターン、103・・・基板、104・・・不要な保護膜、106・・・不要な保護膜、107・・・パターンが密な領域、108・・・パターンの無い領域、109・・・パターンの無い領域の表面、115・・・基板、116・・・被エッチングパターン、117・・・マスク、118・・・保護膜、110・・・SiO上の保護膜厚のCl2流量による変化、111・・・Si上の保護膜厚のCl2流量による変化、112・・・SiO上の保護膜厚の処理時間変化、113・・・Si上の保護膜厚の処理時間変化、120・・・堆積膜、121・・・パターン上面、122・・・側面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15