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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021138401
(22)【出願日】2021-08-26
(62)【分割の表示】P 2020520379の分割
【原出願日】2019-05-23
(65)【公開番号】P2021181019
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2018099122
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 洋紀
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-295537(JP,A)
【文献】特開平04-035637(JP,A)
【文献】特開2011-053462(JP,A)
【文献】特開2011-135933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を信号光と参照光とに分割する分割部と、
前記参照光の参照光路に配置され、凹面に模擬網膜が形成された凹面ミラーを備え、前記凹面ミラーによって前記参照光を反射させる模擬眼と、
前記凹面ミラーから反射された前記参照光と、被検眼に照射され前記被検眼より戻ってきた信号光との干渉光を取得するための干渉光学系と、
を備え
前記光源と前記分割部との間の前記光の光路上、且つ、前記被検眼の瞳位置と共役位置に設置され、前記光の走査により、前記信号光を前記被検眼上で走査し、前記参照光を前記凹面ミラー上で走査する走査部を更に備える眼科装置。
【請求項2】
前記参照光路であって前記分割部と前記模擬眼との間に設けられ、前記参照光を前記模擬眼へ導く参照光学系と、
前記信号光の信号光路であって前記分割部と前記被検眼との間に設けられ、前記信号光を前記被検眼へ導く信号光学系と、を備え、
前記参照光学系と前記信号光学系とは、光学的に等しい構成である、請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記模擬網膜は、光の反射率又は散乱率が調整された無機材料膜或いは有機材料膜が塗布されている面である
請求項1または2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記模擬眼は、前記参照光路の末端に配置された 請求項1から3の何れか一項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記模擬網膜は、前記眼科装置の撮影可能領域に対応して形成されていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記模擬網膜は、光の反射率または散乱率が調整された無機材料膜あるいは有機材料膜であることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉断層撮影装置(Optical Coherence Tomography、以下「OCT」と称する。)は信号光と参照光を干渉させることにより被検眼の眼底断層像を撮影する眼科装置として広く利用されており、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-76587号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の技術の第1の態様の眼科装置は、
被検眼に照射された信号光と参照光による干渉光を取得するための干渉光学系と、
前記参照光の参照光路に配置され、凹面に形成された模擬網膜からなる前記参照光を反射させる模擬眼と、凹面に前記模擬網膜が形成された凹面ミラーと、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】眼科装置の全体構成を示す構成図である。
図2】参照光路に模擬眼を配置した光学系を示す図である。
図3】参照光路に模擬眼を配置した光学系を示す図である。
図4】模擬眼の構成を示す図である。
図5】模擬眼に液体を注入した場合の構成を示す図である
図6】光路中に光学フィルタを配置した光学系を示す図である。
図7】第2の変形例のOCT光学系を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0007】
[第1の実施形態]
図1を参照して、眼科装置110の構成の一例を説明する。
図1に示すように、眼科装置110は、撮影装置14および制御装置16を含む。制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)16A、RAM(Random Access Memory)16B、ROM(Read-Only Memory)16C、および入出力(I/O)ポート16Dを備えたコンピュータによって実現される。眼科装置110は、本開示の技術の眼科装置の一例である。
【0008】
記憶装置17には、眼科装置110を制御するためのデータ処理プログラム17Aが記憶されている。なお、ここでは、記憶装置17にデータ処理プログラム17Aが記憶されている場合について説明しているが、本開示の技術はこれに限定されるものではなく、ROM16Cにデータ処理プログラム17Aが記憶されていてもよい。
【0009】
入出力(I/O)ポート16Dには、記憶装置17が接続されている。なお、記憶装置17とは、例えば、不揮発性メモリ(Non-volatile memory(NVM))で構成される。また、入出力(I/O)ポート16Dは、通信インターフェース(I/F)15を介して、ネットワーク130に接続されている。
【0010】
また、制御装置16は、I/Oポート16Dを介して接続された入力/表示装置16Eを備えている。入力/表示装置16Eは、撮影されて得られた画像を表示したり、撮影の指示を含む各種指示を受け付けたりするグラフィックユーザインターフェースを有する。グラフィックユーザインターフェースとしては、タッチパネル・ディスプレイが挙げられる。なお、以下では、説明の便宜上、「撮影」とは、ユーザが眼科装置110を用いて被写体を示す画像を取得することをいう。
撮影装置14は、制御装置16の制御下で作動する。撮影装置14は、眼底の正面画像を撮影(SLO撮影)するための走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope、以下、「SLO」と称する。)ユニット18、スキャン光学系19、および網膜の断層画像や眼底の3次元OCTデータを取得するための撮影(OCT撮影)のOCTユニット20を含む。
【0011】
なお、眼科装置110に搭載されるOCTは、SD-OCT(Spectral-Domein OCT)およびSS-OCT(Swept Source-OCT)の何れでも可能である。また、眼底カメラ等の眼底撮影装置、スリットランプ、眼科手術用顕微鏡などに、本開示の技術に係る構成を有するOCTユニット20やスキャン光学系19を適宜組み合わせることも可能である。また、本開示の技術に係る構成を、単体のOCT(スタンドアローンOCT)に組み込むことも可能である。
【0012】
SLO撮影は、制御装置16と、SLOユニット18と、スキャン光学系19とによって実現される。SLOユニット18は、光源18A、検出素子18B、およびビームスプリッタ18C等を含んでいる。光源18Aは、R光(赤色光)の光源、G光(緑色光)の光源、B光(青色光)の光源、赤外線(例えば、近赤外光)の光源を備え、R光及びG光を発するモードと、B光を発するモードと、赤外線を発するモードとに切り替え可能に構成されている。スキャン光学系19はダイクロイックミラーなどからなる合成素子26、MEMSミラーなどからなる二次元走査を行う走査素子29、そして共通光学系28を含む。
SLOユニット18からの光(以下、「SLO光」という。)が走査素子29によりX方向(水平方向)およびY方向(垂直方向)に走査され、スキャン光学系19によって被検眼12の瞳位置Ppを通して撮影可能領域12Aに照射される。
被検眼12からの反射光または散乱光は、スキャン光学系19を通りSLOユニットのビームスプリッタ18Cを介して検出素子18Bで受光される。検出素子18Bの受光信号を制御装置16で処理することにより正面眼底画像が取得される。
【0013】
ここで、眼科装置110により撮影される眼底の視野(FOV:Field of View)について説明する。撮影可能領域12Aは、スキャン光学系19により走査可能な最大領域である。撮影可能領域12Aとしては、外部照射角で140度の視野を提供する範囲が挙げられる。この場合の内部照射角は200度程度に対応する。
外部照射角とは、被検眼12の瞳孔の中心に対する信号光の入射角度を意味する(図1中の角度θに相当する)。内部照射角とは、被検眼12の眼球の中心Oを基準位置として、SLO光の走査により撮影される角度範囲を表している。
【0014】
OCT撮影は、制御装置16、OCTユニット20、およびスキャン光学系19によって実現される。OCTユニット20は、近赤外の波長を有するレーザ光を発する光源20A、センサ20B、及びファイバカプラ20Cを含んでいる。OCT撮影により、眼底のZ方向の領域である網膜および脈絡膜の断層像、あるいは、眼底の3次元OCTデータを取得する。OCT撮影においても、上述のスキャン光学系を用いるため撮影可能領域12Aを撮影できる。
【0015】
OCTユニット20の光源20Aからの光(以下、「OCT光」という。)が、ファイバカプラ20Cを介して、コリメータ20Dにより平行光束にされ、スキャン光学系19へ向けて射出される。光源20Aは、SD-OCTであれば広帯域SLD(Super Luminescent Diode)光源などが用いられ、SS-OCTでは波長が高速に掃引する波長掃引光源である。
射出されたOCT光は、スキャン光学系19に含まれるハーフミラー20E(図2参照)において参照光と信号光に分割される。信号光は、被検眼12の瞳孔(瞳位置Pp)を通して、撮影可能領域12Aに対して、走査素子29によりX方向(水平方向)、およびY方向(垂直方向)に走査される。他方、参照光は、後述する模擬眼21の瞳孔を通して、模擬網膜218に対して、走査素子29によりX方向(水平方向)、およびY方向(垂直方向)に走査される。そして、網膜および脈絡膜で反射または散乱された信号光、および模擬眼21の模擬網膜218で反射または散乱された参照光は、ハーフミラー20Eで再び合波され干渉する。その後、ファイバカプラ20Cを介して干渉光がセンサ20Bに入射し、干渉信号が検出される。制御装置16は、センサ20Bでの検出結果を用いて断層画像などを生成する。スキャン光学系19及びOCTユニット20は、本開示の技術の干渉光学系の一例である。
【0016】
次に、図2および図3を参照して、共通光学系28の構成の一例を説明する。
図2に示すように、共通光学系28は、第1光学ユニットG1、第2光学ユニットG2、光学ユニット20F、ハーフミラー20E、及び模擬眼21を含む。ハーフミラー20Eによって分割された後の参照光学系と信号光学系を光学的に等しいものとするため、第2光学ユニットG2と光学ユニット20Fは同等の光学系を用いる。なお、第1光学ユニットG1、第2光学ユニットG2および光学ユニット20Fは各1枚のレンズを想定して側面視端面図で表されているが、それぞれ複数のレンズ群で構成してもよい。
【0017】
次に、OCT撮影時にOCT光が共通光学系28を通る様子を説明する。
図2では、合成素子26からのOCT光が、走査素子29により、図1の角度θがゼロで走査操作された時のOCT光の光路を示している。
OCT光は、第1光学ユニットG1を通過しハーフミラー20Eの位置Fpに到達する。OCT光はハーフミラー20Eによって信号光と参照光に分割される。
信号光は、第2光学ユニットG2によって、被検眼12の瞳位置Ppに導かれる。ここで、走査素子29の位置Pjと瞳位置Ppは共役関係にある。瞳位置Ppに導かれた信号光は、撮影可能領域12A中の眼底Rpに集光される。眼底Rpにおける網膜および脈絡膜により反射または散乱された信号光は第2光学ユニットG2、ハーフミラー20Eの位置Fpに到達する。
【0018】
一方、ハーフミラー20Eによって分割された参照光は、光学ユニット20Fによって模擬眼21の瞳位置Ppaに導かれる。走査素子29の位置Pjと模擬眼21の瞳位置Ppaは共役関係にある。瞳位置Ppaに導かれた参照光は模擬眼21の後眼部表面に形成された模擬網膜218(図4参照)の眼底Rpa上に集光される。模擬網膜218から反射または散乱された参照光は光学ユニット20F、ハーフミラー20Eの位置Fpに到達し、信号光と干渉して干渉光が生成され、第1光学ユニットG1、走査素子29、合成素子26を経て、再びOCTユニット20のファイバカプラ20Cに戻り、センサ20Bに導かれる。ハーフミラー20Eは、本開示の技術の分割素子の一例である。
【0019】
SLO撮影時の場合は、図示せぬ遮光機構(遮光板など)がハーフミラー20Eと光学ユニット20Fとの間に挿入される。図示せぬ遮光機構によりSLO光が模擬眼21に到達せず、被検眼12からのSLO光の反射光のみがSLOユニット18の検出素子18Bへ到達する。よって、SLO撮影の場合は、被検眼12からの反射光に、模擬眼21からの反射光の影響はなくなる。
【0020】
また、図3では、合成素子26からのOCT光が、走査素子29により、図1の角度θが所定角度で走査操作された時のOCT光の光路を示している。すなわち、図3は、図2に示す角度θがゼロである中心光軸におけるOCT光の光路に対して、所定角度で走査操作され、中心光軸の周辺部をOCT撮影する場合のOCT光の光路を示している。
OCT光は、第1光学ユニットG1を通過しハーフミラー20Eの位置Fcに到達する。OCT光はハーフミラー20Eによって信号光と参照光に分割される。
信号光は、第2光学ユニットG2によって、角度θを有して被検眼12の瞳位置Ppに導かれる。瞳位置Ppに導かれた信号光は、撮影可能領域12A中の眼底Rcに集光される。眼底Rcにおける網膜および脈絡膜により反射または散乱された信号光は第2光学ユニットG2、ハーフミラー20Eの位置Fcに到達する。
【0021】
一方、ハーフミラー20Eによって分割された参照光は、光学ユニット20Fによって模擬眼21の瞳位置Ppaに導かれる。瞳位置Ppaに導かれた参照光は模擬眼21の後眼部表面に形成された模擬網膜218の眼底Rpaの周辺部である眼底Rca上に集光される。模擬網膜218から反射または散乱された参照光は光学ユニット20F、ハーフミラー20Eの位置Fcに到達し、信号光と干渉して干渉光が生成され、第1光学ユニットG1、走査素子29、合成素子26を経て、再びOCTユニット20のファイバカプラ20Cに戻り、センサ20Bに導かれる。センサ20Bの受光信号を制御装置16で処理することにより、断層像や眼底の3次元OCTデータが生成される。
【0022】
次に、図4を参照して参照光路に配置した模擬眼21の一例を説明する。以下に述べるように模擬眼21は人間の眼と同様の光学特性/大きさを有するように構成される。
【0023】
図4に示すように、本開示の技術の模擬眼21は、前眼部筐体211及び後眼部筐体212を備える。前眼部筐体211及び後眼部筐体212は、例えば、アルミなどの金属で構成される。前眼部筐体211には、人間の眼の角膜に対応する模擬角膜213、及び人間の眼の水晶体に対応する模擬水晶体214が組み込まれている。
【0024】
後眼部筐体212には、凹面が形成されている。凹面の半径は人間の眼と等しく設定される(約12mm)。また模擬眼中心216を中心とした視野角θで230度の範囲に形成されている。そして凹面全体に模擬網膜218が形成されている。これにより、模擬眼21は、凹面に形成された凹面形状の模擬網膜を備える。
【0025】
模擬眼の模擬網膜218の一例には、模擬網膜218の反射率または散乱率を網膜と同等に調整した単層膜を形成することが挙げられる。また、他例には筐体表面を適宜に研磨して反射率および散乱率を調整することが挙げられる。加えて、後眼部筐体212の凹面表面からの反射光の影響を除去するために模擬網膜218の下層に光吸収塗料を塗布してもよい。
また、模擬網膜218は、単純な鏡面、あるいは光の反射率または散乱率が調整された無機材料膜あるいは有機材料膜が塗布されている面であってもよい。さらに、後眼部筐体212の模擬水晶体側の表面を研磨することにより光の反射率および散乱率が調整された面であってもよい。
【0026】
模擬角膜213、模擬水晶体214、及び後眼部筐体212の少なくとも1つは、近視または遠視に合わせて適宜に形状を変えてもよい。そして、図5に示すように、前眼部筐体211と後眼部筐体212は内部に液体を充填させたのち接合して模擬眼21を形成することが好ましい。内部に充填する液体は、模擬硝子体219として、人間の眼の硝子体と同様の屈折率を有する内部液を充填することが好ましい。
【0027】
模擬網膜218は、撮影可能領域12Aの範囲(撮影できる視野角)に対応して形成されていれば事足りるので、視野角θが230度の範囲に形成される場合に限定されず、実際の撮影可能領域に応じて、60度より大きい、80度より大きい、120度より大きい、200度より大きい、220度より大きい、230度より大きい、何れかの範囲に形成してもよい。
模擬眼21は、本開示の技術の模擬眼の一例である。また、模擬角膜213は、本開示の技術の模擬角膜の一例であり、模擬水晶体214は、本開示の技術の模擬水晶体の一例であり、模擬網膜218は、本開示の技術の模擬網膜の一例であり、模擬硝子体219は、本開示の技術の模擬硝子体の一例である。
【0028】
第1の実施形態によれば、OCT撮影時において、走査素子29により光源20Aからの光を走査したときに、瞳位置Ppに対する信号光の入射角度と、瞳位置Ppaに対する参照光の入射角度が常に一致するようになる。また、光学ユニット20Fと第2光学ユニットG2は光学的に等しく、また模擬眼21は人間の眼とほぼ同じ特性および構造を有するため、ハーフミラー20E、光学ユニット20F、模擬眼21を経て、模擬網膜218により反射および散乱され、再びハーフミラー20Eへ戻ってきた参照光の光路長(ハーフミラー20E、光学ユニット20F、模擬眼21を経て、模擬網膜218により反射および散乱され再びハーフミラー20Eへ戻る光路長)と、信号光の光路長(ハーフミラー20E、第2光学ユニットG2、被検眼12を経て、網膜および脈絡膜で反射および散乱され再びハーフミラー20Eへ戻る光路長)とが、走査角度に依存せず等しくなる。
【0029】
よって、被検眼12の瞳孔の中心に対する信号光の入射角度θが大きくなるにしたがって、参照光と信号光の光路差が大きくなることを防止できる。つまり、眼底周辺部など入射角度θが大きい領域の眼底をOCT撮影する場合、干渉光の強度が低下してしまうことを防止できる。
また、信号光と参照光とでハーフミラー20Eに至るまでの光学素子であるファイバカプラ20C、第1光学ユニットG1が共通であり、かつ前述のように光学ユニット20Fと第2光学ユニットG2は光学的に等しいものであるため、特別な補正や調整をすることなく参照光と信号光との波長分散および偏光状態が一致する。
このため、良好なOCT撮影を行うために参照光および信号光の偏光状態や波長分散を合致させるデバイスや構成を、眼科装置110では用いる必要がない。よって、眼科装置110の構造が簡略化できる。
【0030】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の構成のため、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0031】
図6を参照して、信号光及び参照光の光の性質を一致させる構成の一例を説明する。
図6に示すスキャン光学系19の構成は、図2に示すスキャン光学系19の構成において、参照光学系に第1光学フィルタ30、及び信号光学系に第2光学フィルタ32を挿入したものである。
【0032】
具体的には、第1光学フィルタ30は、ハーフミラー20Eと光学ユニット20Fとの間に設置される。第1光学フィルタ30は、良好なOCT画像が得られるように参照光の光強度を調整できる光学フィルタである。第1光学フィルタ30の一例には、ND(Neutral Density)フィルタが挙げられる。一方、第2光学フィルタ32は、ハーフミラー20Eと第2光学ユニットG2との間に設置される。第2光学フィルタ32は、参照光学系に挿入した第1光学フィルタ30により変化した光路長および波長分散を調整するためのものである。第2光学フィルタ32の一例には、第1光学フィルタ30と同じ厚さの板状のガラス材料が挙げられる。第1光学フィルタ30及び第2光学フィルタ32は、本開示の技術の光強度調整素子の一例である。
【0033】
なお、参照光路に挿入した第1光学フィルタ30により変化する光路長が予め定めた光路長誤差の範囲内である場合には、第2光学フィルタ32を省略してもよい。
また、信号光の光強度に比べて参照光の光強度が小さい場合には、第1光学フィルタ30と第2光学フィルタ32とを交換すればよい。
さらに、第1光学フィルタ30および第2光学フィルタ32の各々により、参照光および信号光の各々の光強度を調整してもよい。
【0034】
以上説明したように本開示の技術では、第1光学フィルタ30及び第2光学フィルタ32の挿入により、信号光及び参照光の光の性質を一致させるので、断層像の画質あるいは3次元OCTデータに基づく画像の画質が向上される。つまり、信号光及び参照光の光強度比及び光路差等の光の性質を第1光学フィルタ30及び第2光学フィルタ32により微調整することができ、良好なOCTデータ、眼底断層画像を得ることができる。
【0035】
[第1の変形例]
上記では、信号光と参照光の各々の光路長、波長分散及び偏光状態が共通になるように、信号光が走査された後の光を分割して参照光を形成する場合を説明した。本開示の技術は、この構成に限定されるものではなく、ファイバカプラを用いた一般的なマイケルソン干渉計の参照光学系に模擬眼21を配置する構成も考えられる。
【0036】
[第2の変形例]
次に、図7を参照して、第2の変形例を説明する。
図7に示すように、第2の変形例は、ファイバカプラ20Cで分割された光の光路に参照光学系を形成する。具体的には、OCTユニット20の光源20Aからの光が、ファイバカプラ20Cを介して、コリメータ20Dにより平行光束にされてスキャン光学系19へ向けて射出される。信号光は、スキャン光学系19によって被検眼12の瞳孔を通して走査され、網膜および脈絡膜で反射または散乱された信号光はファイバカプラ20Cを介してセンサ20Bに入射する。
一方、光源20Aからの光のうち、ファイバカプラ20Cで分割された光は、コリメータ20Daにより平行光束にされた後、上記参照光学系と同様のスキャナ(走査素子)29a、光学ユニットG1a、G2aを介し、模擬眼21へ射出される。模擬眼21の模擬網膜218で反射または散乱された参照光はファイバカプラ20Cを介してセンサ20Bに入射する。ファイバカプラ20Cは、本開示の技術の分割素子の一例である。
信号光学系の走査素子29と参照光学系のスキャナ(走査素子)29aは同期して駆動させる。
このような構成により、参照光学系に単純な平面ミラーを配置する構成に比べて、信号光と参照光との光路差が走査角度に依存せず合致する。よって、参照光と信号光の光路差が大きくなることを防止できる。つまり、眼底周辺部など入射角度θが大きい領域の眼底をOCT撮影する場合、干渉光の強度が低下してしまうことを防止できる。
【符号の説明】
【0037】
20 OCTユニット
20C ファイバカプラ
20E ハーフミラー
21 模擬眼
30 第1光学フィルタ
32 第2光学フィルタ
110 眼科装置
214 模擬水晶体
218 模擬網膜
219 模擬硝子体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7