(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】シミュレーションシステム、シミュレーション方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/76 20060101AFI20230404BHJP
A61F 2/66 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
A61F2/76 ZDM
A61F2/66
(21)【出願番号】P 2019572310
(86)(22)【出願日】2019-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2019005803
(87)【国際公開番号】W WO2019160135
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2018027376
(32)【優先日】2018-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507212768
【氏名又は名称】三菱ケミカルグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】下野 智史
(72)【発明者】
【氏名】川崎 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】保原 浩明
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 賢
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克幸
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/132885(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0081422(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/76
A61F 2/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の試着用義肢又は試着用装具の計測データである試着品計測データと、複数の前記試着用義肢又は前記試着用装具の着用者の計測データである着用者計測データとを取得する計測データ取得部と、
前記
試着品計測データと、前記着用者計測データとに基づいて、着用者に生じている力を示すデータである着用者動作データを、逆動力学解析によって算出する着用者動作データ算出部と、
前記着用者動作データに基づいて、動作応答曲面を、応答曲面法によって算出する動作応答曲面算出部と、
前記動作応答曲面に基づいて、前記着用者が複数の前記試着用義肢又は前記試着用装具とは異なる義肢又は装具を着用したと仮定した場合に、前記義肢又は前記装具の動作データと、前記着用者の動作データとを予測するシミュレーション実行部と
を有する、シミュレーションシステム。
【請求項2】
前記着用者動作データに基づいて、時間応答曲面を、応答曲面法によって算出する時間応答曲面算出部を有し、
前記シミュレーション実行部は、前記時間応答曲面にさらに基づいて、前記義肢又は前記装具の動作データと、前記着用者の動作データとを予測する、請求項1に記載のシミュレーションシステム。
【請求項3】
前記シミュレーション実行部は、ベーシスベクトル法によって、前記義肢又は前記装具の動作データと、前記着用者の動作データとを予測する、請求項1又は請求項2に記載のシミュレーションシステム。
【請求項4】
前記シミュレーション実行部が予測した前記義肢又は前記装具の前記動作データと、前記着用者の前記動作データとに基づいて、義肢又は装具を選定する選定部
を有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム。
【請求項5】
前記動作応答曲面算出部は、2次以上の関数に関数化されている動作応答曲面を算出する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム。
【請求項6】
複数の前記試着用義肢の各々は、試着用スポーツ義足ブレードであり、
前記シミュレーション実行部は、スポーツ義足ブレード高さ寸法と、スポーツ義足ブレード後方突出量と、スポーツ義足ブレードつま先長さ寸法とのうち、少なくとも一つを予測する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム。
【請求項7】
複数の前記試着用義肢の各々は、試着用スポーツ義足ブレードであり、
前記試着用スポーツ義足ブレードは、複数のスペックから、実験計画法のL9型直交表に基づいて選定されたスペックを有する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム。
【請求項8】
前記スペックは、ブレード剛性と、高さ寸法と、後方突出量と、つま先長さ寸法とを含む、
請求項7に記載のシミュレーションシステム。
【請求項9】
前記シミュレーション実行部は、シミュレーションを繰り返し実行することによって、所定の目的関数を最大化する、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム。
【請求項10】
前記目的関数は、少なくとも前記着用者の身体負荷に関する関数を含む、
請求項9に記載のシミュレーションシステム。
【請求項11】
異なる複数の試着用義肢又は試着用装具の計測データである試着品計測データと、複数の前記試着用義肢又は前記試着用装具の着用者の計測データである着用者計測データとを取得するステップと、
前記
試着品計測データと、前記着用者計測データとに基づいて、着用者に生じている力を示すデータである着用者動作データを、逆動力学解析によって算出するステップと、
前記着用者動作データに基づいて、動作応答曲面を、応答曲面法によって算出するステップと、
前記動作応答曲面に基づいて、前記着用者が複数の前記試着用義肢又は前記試着用装具とは異なる義肢又は装具を着用したと仮定した場合に、前記義肢又は前記装具の動作データと、前記着用者の動作データとを予測するステップと
を有する、コンピュータが実行するシミュレーション方法。
【請求項12】
コンピュータに、
異なる複数の試着用義肢又は試着用装具の計測データである試着品計測データと、複数の前記試着用義肢又は前記試着用装具の着用者の計測データである着用者計測データとを取得するステップと、
前記
試着品計測データと、前記着用者計測データとに基づいて、着用者に生じている力を示すデータである着用者動作データを、逆動力学解析によって算出するステップと、
前記着用者動作データに基づいて、動作応答曲面を、応答曲面法によって算出するステップと、
前記動作応答曲面に基づいて、前記着用者が複数の前記試着用義肢又は前記試着用装具とは異なる義肢又は装具を着用したと仮定した場合に、前記義肢又は前記装具の動作データと、前記着用者の動作データとを予測するステップと
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーションシステム、義足ブレード、シミュレーション方法、およびプログラムに関する。特に、スポーツ用義足の設計に好適に使用できる。
本願は、2018年2月19日に、日本に出願された特願2018-027376号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフ用具をフィッティングする技術に関して、スイング時間に大きく影響するスペックを変化させた場合にも正確な計算結果を算出し、短時間でシミュレーション結果を出力することができるゴルフ用具フィッティングシステム、及びゴルフ用具フィッティングプログラムが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術では、試打されるゴルフクラブに取り付けられたセンサによって、試打時の加速度、角速度などが検出される。また、特許文献1に記載された技術では、試打時に検出された加速度、角速度などに基づき、実際には試打されないゴルフクラブが仮に試打される場合に得られるデータが、シミュレーションによって予測され、ゴルフクラブのフィッティングが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したゴルフクラブに適用されたシミュレーションを、義肢(つまり、義足または義手)・装具(つまり、機能に障害のある体幹・四肢に装着する器具)あるいはその部品に適用することを考える。
ゴルフクラブのフィッティングが行われる場合には、どのようなゴルフクラブが選定されても、そのゴルフクラブを使用するユーザが故障してしまうおそれは殆ど無い。そのため、ゴルフクラブの試打時にユーザの動作データが検出されない。つまり、ユーザの動作データを反映させたシミュレーションは行われない。
一方、義肢・装具あるいはその部品のフィッティングが行われる場合には、着用者に適していない義肢・装具あるいはその部品が選定されると、その義肢・装具あるいはその部品を着用する着用者が怪我をしてしまうおそれがある。そのため、義肢・装具あるいはその部品のフィッティングが行われる場合には、義肢・装具あるいはその部品の動作(挙動)を考慮することに加えて、義肢・装具あるいはその部品の着用者の動作も考慮する必要がある。
また、義肢・装具あるいはその部品の動作(挙動)は、ゴルフクラブの動作(挙動)よりも複雑である。そのため、義肢・装具あるいはその部品のシミュレーションを行う場合には、特許文献1に記載されたシミュレーションよりも複雑な演算を行う必要がある。
【0005】
このような事情に鑑み、本発明は、着用者に適した義肢又は装具を予測できるシミュレーションシステム、義足ブレード、シミュレーション方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
<1>異なる複数の試着用義肢又は試着用装具の計測データである試着品計測データと、複数の前記試着用義肢又は前記試着用装具の着用者の計測データである着用者計測データとを取得する計測データ取得部と、前記試着品計測データと、前記着用者計測データとに基づいて、着用者に生じている力を示すデータである着用者動作データを、逆動力学解析によって算出する着用者動作データ算出部と、前記着用者動作データに基づいて、動作応答曲面を、応答曲面法によって算出する動作応答曲面算出部と、前記動作応答曲面に基づいて、前記着用者が複数の前記試着用義肢又は前記試着用装具とは異なる義肢又は装具を着用したと仮定した場合に、前記義肢又は前記装具の動作データと、前記着用者の動作データとを予測するシミュレーション実行部とを有する、シミュレーションシステム。
<2>前記着用者動作データに基づいて、時間応答曲面を、応答曲面法によって算出する時間応答曲面算出部を有し、前記シミュレーション実行部は、前記時間応答曲面にさらに基づいて、前記義肢又は前記装具の動作データと、前記着用者の動作データとを予測する、<1>に記載のシミュレーションシステム。
<3>前記シミュレーション実行部は、ベーシスベクトル法によって、前記義肢又は前記装具の動作データと、前記着用者の動作データとを予測する、<1>又は<2>に記載のシミュレーションシステム。
<4>前記シミュレーション実行部が予測した前記義肢又は前記装具の前記動作データと、前記着用者の前記動作データとに基づいて、義肢又は装具を選定する選定部を有する<1>から<3>のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム。
<5>前記動作応答曲面算出部は、2次以上の関数に関数化されている動作応答曲面を算出する、<1>から<4>のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム。
<6>複数の前記試着用義肢の各々は、試着用スポーツ義足ブレードであり、前記シミュレーション実行部は、スポーツ義足ブレード高さ寸法と、スポーツ義足ブレード後方突出量と、スポーツ義足ブレードつま先長さ寸法とのうち、少なくとも一つを予測する、<1>から<5>のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム。
<7>複数の前記試着用義肢の各々は、試着用スポーツ義足ブレードであり、前記試着用スポーツ義足ブレードは、複数のスペックから、実験計画法のL9型直交表に基づいて選定されたスペックを有する、<1>から<6>のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム。
<8>前記スペックは、ブレード剛性と、高さ寸法と、後方突出量と、つま先長さ寸法とを含む、<7>に記載のシミュレーションシステム。
<9>前記シミュレーション実行部は、シミュレーションを繰り返し実行することによって、所定の目的関数を最大化する、<1>から<8>のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム。
<10>前記目的関数は、少なくとも前記着用者の身体負荷に関する関数を含む、<9>に記載のシミュレーションシステム。
<11>異なる複数の試着用義肢又は試着用装具の計測データである試着品計測データと、複数の前記試着用義肢又は前記試着用装具の着用者の計測データである着用者計測データとを取得するステップと、前記試着品計測データと、前記着用者計測データとに基づいて、着用者に生じている力を示すデータである着用者動作データを、逆動力学解析によって算出するステップと、前記着用者動作データに基づいて、動作応答曲面を、応答曲面法によって算出するステップと、前記動作応答曲面に基づいて、前記着用者が複数の前記試着用義肢又は前記試着用装具とは異なる義肢又は装具を着用したと仮定した場合に、前記義肢又は前記装具の動作データと、前記着用者の動作データとを予測するステップとを有する、コンピュータが実行するシミュレーション方法。
<12>コンピュータに、異なる複数の試着用義肢又は試着用装具の計測データである試着品計測データと、複数の前記試着用義肢又は前記試着用装具の着用者の計測データである着用者計測データとを取得するステップと、前記試着品計測データと、前記着用者計測データとに基づいて、着用者に生じている力を示すデータである着用者動作データを、逆動力学解析によって算出するステップと、前記着用者動作データに基づいて、動作応答曲面を、応答曲面法によって算出するステップと、前記動作応答曲面に基づいて、前記着用者が複数の前記試着用義肢又は前記試着用装具とは異なる義肢又は装具を着用したと仮定した場合に、前記義肢又は前記装具の動作データと、前記着用者の動作データとを予測するステップとを実行させる、プログラム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、着用者に適した義肢又は装具を予測できるシミュレーションシステム、シミュレーション方法、およびプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】義足ブレードを含む義足を説明するための図である。
【
図3】設計システムが設計可能な81種類の義足ブレードのうち、着用者が実際に試着可能な9種類の試着用義足ブレードの一例を示す図である。
【
図4】第1実施形態の変形例のシミュレーションシステムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システムを用いた着用者に最適な義足ブレードの設計方法を説明するためのフローチャートである。
【
図6】試着用義足ブレードおよび着用者の画像の一例を示す図である。
【
図7】第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システムによって実行される処理の一例を説明するための図である。
【
図8】試着品動作データを取得するため、および、着用者動作データを取得するために、画像を変換することによって得られた動作解析用画像の一例を示す図である。
【
図9】第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システムによって実行される処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施形態のシミュレーションシステム、シミュレーション方法、およびプログラムについて説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す例では、設計システム1が、義肢(義足または義手)・装具(機能に障害のある体幹・四肢に装着する器具)あるいはその部品として、例えば義足の一部を構成する義足ブレード(詳細には、スポーツ義足ブレード)の設計を行う。設計システム1は、動作データ取得部11と、動作応答曲面算出部13Aと、時間応答曲面算出部13Bと、シミュレーション実行部14とを備えている。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0011】
動作データ取得部11は、撮影部A(例えばカメラ)によって撮影される義足(試着品)および義足の着用者の画像データを取得する。
つまり、
図1に示す例では、撮影部Aが、義足のみを含む画像を撮影するのではなく、義足および着用者の両方を含む画像を撮影する。詳細には、
図1に示す例では、撮影部Aは、義足を着用した着用者が短距離走の競技中のように走っている状態で、義足および着用者の画像を撮影する。撮影部Aによる撮影中、義足には、着用者が走ることに伴う挙動が生じている。
なお、動作データ取得部11は、カメラ以外であってもよく、センサを一つ以上使用することにより、画像データの代わりに動作データを取得することとしてもよい。
また、動作データ取得部11は、試着品動作データ取得部11Aと、着用者動作データ取得部11Bとを備えている。試着品動作データ取得部11Aは、撮影部Aが撮影する画像データから得られる、義足に生じている挙動(動作)を示すデータ(試着品動作データ)を取得する。着用者動作データ取得部11Bは、撮影部Aが撮影する画像データから得られる、走っている着用者の動作を示すデータ(着用者動作データ)を取得する。
他の例では、撮影部Aは、義足を着用した着用者が、例えば走り幅跳びなど、短距離走以外の競技をしている状態、あるいは、それに近い状態で、義足および着用者の画像を撮影してもよい。
【0012】
図1に示す例では、動作応答曲面算出部13Aが、試着品動作データ取得部11Aにより取得された試着品動作データと、着用者動作データ取得部11Bにより取得された着用者動作データとに基づき、応答曲面法によって、試着者特有の動作の変え方および癖を抽出して2次関数化した動作応答曲面を算出する。
図1に示す例では、動作応答曲面算出部13Aが2次関数化した動作応答曲面を算出するため、動作応答曲面算出部13Aが1次関数化した動作応答曲面を算出する場合よりも、複雑な動作を設計システム1は予測することができる。
他の例では、動作応答曲面算出部13Aが、3次以上の関数に関数化した動作応答曲面を算出してもよい。
動作が複雑になるほど、応答曲面の次数が高い方が好ましい。ゴルフスイングのグリップの動きは比較的スムーズなため1次で対応可能である。ランニング、着地の衝撃が入る場合は2次以上が好ましい。また、オーバーフィッティングを起こしにくい点からは、4次以下であることが好ましい。
【0013】
図1に示す例では、時間応答曲面算出部13Bが、試着品動作データ取得部11Aにより取得された試着品動作データと、着用者動作データ取得部11Bにより取得された着用者動作データとに基づき、応答曲面法によって時間応答曲面を算出する。
シミュレーション実行部14は、動作応答曲面算出部13Aによって算出された動作応答曲面と、時間応答曲面算出部13Bによって算出された時間応答曲面とに基づき、実際には試着されない義足ブレード(仮想義足ブレード(詳細には、仮想スポーツ義足ブレード))を含む義足が着用者によって仮に試着された場合における仮想義足ブレードの動作データと、着用者の動作データとを予測する。シミュレーション実行部14は、身体動作解析部14Aと、FEM解析部14Bと、多目的最適化部14Cと、最適品設計部14Dとを備えている。
【0014】
身体動作解析部14Aは、着用者動作データ取得部11Bにより取得された着用者動作データに基づいて、動作応答曲面算出部13Aによって算出された動作応答曲面と、時間応答曲面算出部13Bによって算出された時間応答曲面とを利用することにより、着用者の動作の解析(例えば、着用者の身体の各所にどの程度の負荷がかかっているかの解析)を行う。
FEM(Finite Element Method)解析部14Bは、試着品動作データ取得部11Aにより取得された試着品動作データに基づいて、動作応答曲面算出部13Aによって算出された動作応答曲面と、時間応答曲面算出部13Bによって算出された時間応答曲面とを利用することにより、試着品の動作のFEM解析(例えば、着用者が速く走るために義足がどのように機能しているかの解析)を行う。なお、FEM解析部14Bは必ずしもFEMで行う必要はなく、粒子法、剛体リンクモデル等、種々の離散的解析手法を用いることができる。
多目的最適化部14Cは、所定の目的関数(例えば、着用者の身体に過剰な負荷(身体負荷)がかからないようにする関数、着用者が速く走れるようにする関数など)を最大化するための解析を行う。
最適品設計部14Dは、多目的最適化部14Cにおける解析結果に基づいて、着用者にとって最適な義足(詳細には、スポーツ義足ブレード)を設計する。
【0015】
図2は
図1に示す設計システム1によって設計される義足ブレード(詳細には、スポーツ義足ブレード)B4を含む義足Bを説明するための図である。
図2に示す例では、義足Bが、ソケットB1と、ジョイントB2と、ソケットB1とジョイントB2とを接続する接続部B3と、義足ブレードB4と、ジョイントB2と義足ブレードB4とを接続する接続部B5とを備えている。
義足ブレードB4が有するスペックの項目には、例えば、義足ブレードB4の剛性である義足ブレード剛性(詳細には、スポーツ義足ブレード剛性)と、義足ブレードB4の高さ寸法である義足ブレード高さ寸法(詳細には、スポーツ義足ブレード高さ寸法)L2と、接続部B5の中心軸線B5Xに対する義足ブレードB4の後方突出量である義足ブレード後方突出量(詳細には、スポーツ義足ブレード後方突出量)L3と、接続部B5の中心軸線B5Xに対する義足ブレードB4のつま先部分の前方突出量である義足ブレードつま先長さ寸法(詳細には、スポーツ義足ブレードつま先長さ寸法)L4とが含まれる。
他の例では、義足ブレードB4が、上述したスペックの項目とは異なるスペックの項目を有していてもよい。
【0016】
第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1の一例では、実験計画法に基づき、着用者にとって最適な義足ブレード剛性の候補として「高い」、「標準」、「低い」の3つの水準が設けられ、着用者にとって最適な義足ブレード高さ寸法L2の候補として「高い」、「標準」、「低い」の3つの水準が設けられ、着用者にとって最適な義足ブレード後方突出量L3の候補として「大きい」、「標準」、「小さい」の3つの水準が設けられ、着用者にとって最適な義足ブレードつま先長さ寸法L4の候補として「長い」、「標準」、「短い」の3つの水準が設けられる。
つまり、この例では、設計システム1は、4つの項目(「義足ブレード剛性」、「義足ブレード高さ寸法L2」、「義足ブレード後方突出量L3」および「義足ブレードつま先長さ寸法L4」)のそれぞれが上述した3つの水準を有することにより得られる、81(=34)種類の異なるスペックを有する義足ブレードB4の中から、着用者にとって最適な義足ブレードB4を設計(選定)する。
第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1の他の例では、義足ブレードB4が有するスペックの項目に、3以外の数の水準が設けられてもよい。
【0017】
図3は
図1に示す設計システム1が設計可能な81種類の義足ブレード(詳細には、スポーツ義足ブレード)のうち、着用者が実際に試着可能な9種類の試着用義足ブレード(詳細には、試着用スポーツ義足ブレード)#1~#9の一例を示す図である。
図3に示す例では、義足ブレードの着用者が、その着用者にとって最適な義足ブレードを選定するために、81種類の異なるスペックを有する義足ブレードのすべてを試着するのではなく、81種類の異なるスペックを有する義足ブレードの中から実験計画法におけるL9型直交表に基づいて選定された9種類の異なるスペックを有する試着用義足ブレード#1~#9を試着する。
【0018】
図3に示す例では、試着用義足ブレード#1において、項目「義足ブレード剛性」(Var.1)の水準が「1」(「高い」)に設定され、項目「義足ブレード高さ寸法L2」(Var.2)の水準が「1」(「高い」)に設定され、項目「義足ブレード後方突出量L3」(Var.3)の水準が「1」(「大きい」)に設定され、項目「義足ブレードつま先長さ寸法L4」(Var.4)の水準が「1」(「長い」)に設定されている。
試着用義足ブレード#2では、項目「義足ブレード剛性」(Var.1)の水準が「1」(「高い」)に設定され、項目「義足ブレード高さ寸法L2」(Var.2)の水準が「2」(「標準」)に設定され、項目「義足ブレード後方突出量L3」(Var.3)の水準が「2」(「標準」)に設定され、項目「義足ブレードつま先長さ寸法L4」(Var.4)の水準が「2」(「標準」)に設定されている。
試着用義足ブレード#3では、項目「義足ブレード剛性」(Var.1)の水準が「1」(「高い」)に設定され、項目「義足ブレード高さ寸法L2」(Var.2)の水準が「3」(「低い」)に設定され、項目「義足ブレード後方突出量L3」(Var.3)の水準が「3」(「小さい」)に設定され、項目「義足ブレードつま先長さ寸法L4」(Var.4)の水準が「3」(「短い」)に設定されている。
【0019】
また、
図3に示す例では、試着用義足ブレード#4において、項目「義足ブレード剛性」(Var.1)の水準が「2」(「標準」)に設定され、項目「義足ブレード高さ寸法L2」(Var.2)の水準が「1」(「高い」)に設定され、項目「義足ブレード後方突出量L3」(Var.3)の水準が「2」(「標準」)に設定され、項目「義足ブレードつま先長さ寸法L4」(Var.4)の水準が「3」(「短い」)に設定されている。
試着用義足ブレード#5では、項目「義足ブレード剛性」(Var.1)の水準が「2」(「標準」)に設定され、項目「義足ブレード高さ寸法L2」(Var.2)の水準が「2」(「標準」)に設定され、項目「義足ブレード後方突出量L3」(Var.3)の水準が「3」(「小さい」)に設定され、項目「義足ブレードつま先長さ寸法L4」(Var.4)の水準が「1」(「長い」)に設定されている。
試着用義足ブレード#6では、項目「義足ブレード剛性」(Var.1)の水準が「2」(「標準」)に設定され、項目「義足ブレード高さ寸法L2」(Var.2)の水準が「3」(「低い」)に設定され、項目「義足ブレード後方突出量L3」(Var.3)の水準が「1」(「大きい」)に設定され、項目「義足ブレードつま先長さ寸法L4」(Var.4)の水準が「2」(「標準」)に設定されている。
【0020】
また、
図3に示す例では、試着用義足ブレード#7において、項目「義足ブレード剛性」(Var.1)の水準が「3」(「低い」)に設定され、項目「義足ブレード高さ寸法L2」(Var.2)の水準が「1」(「高い」)に設定され、項目「義足ブレード後方突出量L3」(Var.3)の水準が「3」(「小さい」)に設定され、項目「義足ブレードつま先長さ寸法L4」(Var.4)の水準が「2」(「標準」)に設定されている。
試着用義足ブレード#8では、項目「義足ブレード剛性」(Var.1)の水準が「3」(「低い」)に設定され、項目「義足ブレード高さ寸法L2」(Var.2)の水準が「2」(「標準」)に設定され、項目「義足ブレード後方突出量L3」(Var.3)の水準が「1」(「大きい」)に設定され、項目「義足ブレードつま先長さ寸法L4」(Var.4)の水準が「3」(「短い」)に設定されている。
試着用義足ブレード#9では、項目「義足ブレード剛性」(Var.1)の水準が「3」(「低い」)に設定され、項目「義足ブレード高さ寸法L2」(Var.2)の水準が「3」(「低い」)に設定され、項目「義足ブレード後方突出量L3」(Var.3)の水準が「2」(「標準」)に設定され、項目「義足ブレードつま先長さ寸法L4」(Var.4)の水準が「1」(「長い」)に設定されている。
【0021】
次に、第1実施形態の変形例のシミュレーションシステム1aについて説明する。
図4は、第1実施形態の変形例のシミュレーションシステム1aの構成の一例を示すブロック図である。
シミュレーションシステム1aは、義肢又は装具の設計を支援する。義肢とは、切断により四肢の一部を欠損した場合に、元の手足の形態又は機能を復元するために装着、使用する人工の手足であり、義足と、義手とが含まれる。装具とは、機能に障害がある体幹、四肢に装着する器具である。
本実施形態の変形例では、シミュレーションシステム1aが、義肢又は装具の一例として、義足の一部を構成する義足ブレード(詳細には、スポーツ義足ブレード)の設計を行う場合について説明を続ける。
シミュレーションシステム1aは、計測データ取得部11aと、着用者動作データ算出部12と、動作応答曲面算出部13Aaと、時間応答曲面算出部13Baと、シミュレーション実行部14と、選定部15とを備えている。これらの構成要素は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0022】
計測データ取得部11aは、異なる複数の試着用義足の計測データである試着品計測データと、複数の試着用義足の着用者の計測データである着用者計測データとを取得する。ここで、異なるとは、義足のスペックが異なることであってもよい。例えば、計測データ取得部11aは、試着品計測データとして、撮影部A(例えばカメラ)によって撮影された試着用義足の画像データを取得する。また、計測データ取得部11aは、着用者計測データとして、撮影部Aによって撮影された試着用義足の着用者の画像データを取得する。
撮影部Aは、義足のみを撮影するのではなく、義足および着用者の両方を撮影する。詳細には、撮影部Aは、義足を着用した着用者が短距離走の競技中のように走っている状態で、義足および着用者を撮影する。撮影部Aによる撮影中、義足には、着用者が走ることに伴う挙動が生じている。
なお、計測データ取得部11aは、センサを一つ以上使用することにより得られる計測データを、画像データの代わりに取得してもよい。ここでは、一例として、計測データ取得部11aが、画像データを取得する場合について説明を続ける。
【0023】
計測データ取得部11aは、試着品計測データ取得部11Aaと、着用者計測データ取得部11Baとを備えている。試着品計測データ取得部11Aaは、撮影部Aが出力する画像データから、義足に生じている挙動を示すデータ(以下「試着品計測データ」という)を取得する。試着品計測データ取得部11Aaは、取得した試着品計測データを、着用者動作データ算出部12へ出力する。着用者計測データ取得部11Baは、撮影部Aが出力する画像データから、走っている着用者を計測することによって得られるデータ(以下「着用者計測データ」という)を取得する。着用者計測データ取得部11Baは、取得した着用者計測データを、着用者動作データ算出部12へ出力する。
ここでは、一例として、義足を着用した着用者が走っている状態で、義足および着用者を撮影することによって得られた画像データを使用した場合について説明を続ける。他の例では、撮影部Aは、義足を着用した着用者が、走り幅跳びなど、短距離走以外の競技をしている状態、あるいは、それに近い状態で、義足および着用者を撮影することによって得られた画像データを使用してもよい。
【0024】
着用者動作データ算出部12は、試着品計測データ取得部11Aaが出力した試着品計測データと、着用者計測データ取得部11Baが出力した着用者計測データとを取得する。着用者動作データ算出部12は、試着品計測データと、着用者計測データとに基づいて、着用者の全身が発揮する力、換言すれば、着用者に生じている力を示すデータである着用者動作データを算出する。着用者動作データ算出部12は、着用者動作データの算出結果を、動作応答曲面算出部13Aaと、時間応答曲面算出部13Baとへ出力する。着用者動作データ算出部12は、着用者の動作をシミュレートすることによって、着用者動作データを算出する。着用者が発揮している力の一例は、関節トルクである。具体的には、着用者動作データ算出部12は、逆動力学解析によって、関節トルクを算出する。ここで、逆動力学解析とは、各関節の位置座標から各関節の関節トルクを算出するための手法である。逆動力学解析では、それぞれの関節間を一つの剛体要素とみなし、その連成関係を定式化することによって関節トルクが算出される。例えば、一つの剛体要素の一例は、下肢である。
各剛体の質量をMとし、慣性モーメントをJとし、ヤコビアンマトリックスをCr,Cθとし、各剛体重心の位置ベクトルr、角速度をω、外力をf、外モーメントをnとし、ラグランジュ乗数をλとすると、式(1)が成り立つ。式(1)において、γは任意の定数である。各記号は全てベクトル表記である。
【0025】
【0026】
式(1)において、ラグランジュ乗数λが関節トルクを示す。
動作応答曲面算出部13Aaは、着用者動作データ算出部12が出力した着用者動作データを取得する。動作応答曲面算出部13Aaは、出力した着用者動作データに基づいて、応答曲面法によって、動作応答曲面を算出する。動作応答曲面は、試着者特有の動作の変え方および癖を抽出して2次関数化したものである。
動作応答曲面算出部13Aaが2次関数化した動作応答曲面を算出することによって、1次関数化した動作応答曲面を算出するよりも、複雑な動作をシミュレーションシステム1aは予測することができる。
本実施形態では、動作応答曲面算出部13Aaが2次関数化した動作応答曲面を算出する場合について説明を続けるが、他の例では、動作応答曲面算出部13Aaが、3次以上の関数に関数化した動作応答曲面を算出してもよい。
着用者の動作が複雑になるほど、動作応答曲面算出部13Aaが算出する動作応答曲面の次数が高い方が好ましい。例えば、ゴルフスイングのグリップの動きは比較的スムーズなため1次関数化した動作応答曲面で対応可能である。しかし、ランニングなどの着地の衝撃が入る動作の場合は、動作応答曲面の次数が2次以上であることが好ましい。また、オーバーフィッティングを起こしにくくする観点からは、動作応答曲面の次数が4次以下であることが好ましい。
【0027】
時間応答曲面算出部13Baは、着用者動作データ算出部12が出力した着用者動作データを取得する。時間応答曲面算出部13Baは、取得した着用者動作データに基づいて、応答曲面法によって、時間応答曲面を算出する。
シミュレーション実行部14aは、動作応答曲面算出部13Aaによって算出された動作応答曲面と、時間応答曲面算出部13Baによって算出された時間応答曲面とに基づいて、撮影部Aが撮像した義足とは異なる義足を着用したと仮定した場合に、着用したと仮定した義足の動作データと、着用者の動作データとを予測する。つまり、シミュレーション実行部14aは、実際には試着されない義足ブレード(仮想義足ブレード(詳細には、仮想スポーツ義足ブレード))を含む義足が着用者によって仮に試着された場合における仮想義足ブレードの動作データと、着用者の動作データとを予測する。
シミュレーション実行部14aは、身体動作解析部14Aaと、FEM解析部14Baと、多目的最適化部14Caと、最適品設計部14Daとを備えている。
【0028】
身体動作解析部14Aaは、動作応答曲面算出部13Aaが出力した動作応答曲面と、時間応答曲面算出部13Baが出力した時間応答曲面とを取得する。身体動作解析部14Aaは、取得した動作応答曲面と、時間応答曲面とに基づいて、着用者の動作の解析を行う。着用者の動作の解析の一例は、着用者の身体の各所にどの程度の負荷がかかっているかの解析である。身体動作解析部14Aaは、着用者の動作の解析結果を、多目的最適化部14Caへ出力する。
FEM(Finite Element Method)解析部14Baは、動作応答曲面算出部13Aaが出力した動作応答曲面と、時間応答曲面算出部13Baが出力した時間応答曲面とを取得する。FEM解析部14Baは、取得した動作応答曲面と、時間応答曲面とに基づいて、試着品の動作のFEM解析を行う。FEM解析の一例は、着用者が速く走るために義足がどのように機能しているかの解析である。FEM解析部14Baは、FEM解析の結果を、多目的最適化部14Caへ出力する。
【0029】
多目的最適化部14Caは、身体動作解析部14Aaが出力した着用者の動作の解析結果と、FEM解析部14Baが出力したFEM解析の結果とを取得する。多目的最適化部14Caは、取得した着用者の動作の解析結果と、FEM解析の結果とに基づいて、所定の目的関数を最大化(最適化)するための解析を行う。目的関数の一例は、着用者の身体に過剰な負荷(身体負荷)がかからないようにする関数、着用者が速く走れるようにする関数などである。多目的最適化部14Caは、所定の目的関数を最大化(最適化)するための解析結果を、最適品設計部14Daへ出力する。
最適品設計部14Daは、多目的最適化部14Caが出力した所定の目的関数を最大化(最適化)するための解析結果を取得する。最適品設計部14Daは、取得した解析結果に基づいて、着用者にとって最適な義足(詳細には、スポーツ義足ブレード)を設計する。最適品設計部14Daは、着用者にとって最適な義足の設計の結果を、選定部15へ出力する。具体的には、最適品設計部14Daは、前述した4つの項目に含まれる「義足ブレード剛性」と、「義足ブレード高さ寸法L2」と、「義足ブレード後方突出量L3」と、「義足ブレードつま先長さ寸法L4」との各々の値(値の範囲)を示す情報を、選定部15へ出力する。
【0030】
選定部15は、最適品設計部14Daが出力した着用者にとって最適な義足の設計の結果を取得する。選定部15は、取得した着用者にとって最適な義足の設計の結果に基づいて、着用者にとって最適な義足を選定する。具体的には、選定部15は、最適品設計部14Daが出力した「義足ブレード剛性」と、「義足ブレード高さ寸法L2」と、「義足ブレード後方突出量L3」と、「義足ブレードつま先長さ寸法L4」との各々の値(値の範囲)を示す情報を取得し、取得した「義足ブレード剛性」と、「義足ブレード高さ寸法L2」と、「義足ブレード後方突出量L3」と、「義足ブレードつま先長さ寸法L4」との各々の値(値の範囲)に近い値をスペックに有する義足を、予め製造されている義足から選定する。選定部15は、選定した義足を示す情報を出力する。
【0031】
前述した実施形態の変形例では、シミュレーションシステム1aが、身体動作解析部14Aaと、時間応答曲面算出部13Baとを備える場合について説明したが、この例に限られない。例えば、シミュレーションシステム1aが、時間応答曲面算出部13Baを備えないようにしてもよい。この場合、身体動作解析部14Aaは、取得した動作応答曲面に基づいて、着用者の動作の解析を行う。また、FEM解析部14Baは、取得した動作応答曲面に基づいて、試着品の動作のFEM解析を行う。シミュレーションシステム1aが、時間応答曲面算出部13Baを備えることによって、身体動作解析部14Aaが実行する着用者の動作の解析の精度を向上できるとともに、FEM解析部14Baが実行する試着品の動作のFEM解析の精度を向上できる。
前述した実施形態の変形例では、シミュレーションシステム1aが、FEM解析部14Baを備える場合について説明したが、この例に限られない。例えば、シミュレーションシステム1aが、FEM解析部14Baを備えないようにしてもよい。この場合、多目的最適化部14Caは、取得した着用者の動作の解析結果に基づいて、所定の目的関数を最大化(最適化)するための解析を行う。シミュレーションシステム1aが、FEM解析部14Baを備えることによって、多目的最適化部14Caが実行する所定の目的関数を最大化(最適化)するための解析の精度を向上できる。
【0032】
本実施形態の設計システムの動作について説明する。
図5は、第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1を用いた着用者に最適な義足ブレード(詳細には、スポーツ義足ブレード)の設計方法を説明するためのフローチャートである。ここでは、第1実施形態の設計システム1の動作について主に説明するが、本実施形態の変形例のシミュレーションシステム1aの動作についても併せて説明する。
ステップS10において、基準義足ブレード(詳細には、基準スポーツ義足ブレード)の設計が行われる。詳細には、基準義足ブレードとして、
図3に示す9種類の試着用義足ブレード(詳細には、試着用スポーツ義足ブレード)#1~#9の設計が行われる。
ステップS10は、シミュレーションシステム1aの動作にも適用できる。
次いで、ステップS20では、撮影部Aが、9種類の試着用義足ブレード#1~#9および着用者の画像を撮影する。詳細には、撮影部Aは、9種類の試着用義足ブレード#1~#9のそれぞれを着用した着用者が短距離走の競技中のように走っている状態で、試着用義足ブレード#1~#9および着用者の画像を撮影する。
【0033】
図6は、
図5のステップS20において撮影された試着用義足ブレード(詳細には、試着用スポーツ義足ブレード)および着用者Cの画像の一例を示す図である。
図6に示す例では、着用者Cは、
図2に示す義足Bと同様に構成された義足Bを着用しており、その義足Bには、9種類の試着用義足ブレード#1~#9のうちの例えば試着用義足ブレード#1が備えられている。
つまり、
図6に示す例では、撮影部Aは、義足ブレード(詳細には、スポーツ義足ブレード)B4として、例えば試着用義足ブレード#1が備えられた(取り付けられた)義足Bを着用した着用者Cが全力で走っている状態の画像を撮影する。
ステップS20は、シミュレーションシステム1aの動作にも適用できる。
【0034】
図5の説明に戻り、次いで、ステップS30では、設計システム1が、着用者Cに最適な義足ブレード(詳細には、スポーツ義足ブレード)B4の設計を行う。
ステップS30は、シミュレーションシステム1aの動作にも適用できる。
以下、
図7を参照して、ステップS30で行われる設計システム1が、着用者Cに最適な義足ブレードB4の設計を行う処理の詳細について説明する。ここでは、第1実施形態の設計システム1の動作について主に説明するが、本実施形態の変形例のシミュレーションシステム1aの動作についても併せて説明する。
図7は、
図5のステップS30において第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1によって実行される処理の一例を説明するための図である。
ステップS31において、試着品動作データ取得部11Aは、撮影部Aが
図5のステップS20において撮影した画像データから得られる、義足ブレードB4に生じている挙動(動作)を示すデータ(試着品動作データ)を取得する。
詳細には、試着品動作データ取得部11Aは、試着用義足ブレード(詳細には、試着用スポーツ義足ブレード)#1が備えられた義足Bを着用した着用者Cが全力で走っている状態の画像データから、試着用義足ブレード#1に生じている挙動を示す試着品動作データを取得する。同様に、試着品動作データ取得部11Aは、試着用義足ブレード(詳細には、試着用スポーツ義足ブレード)#2~#9が備えられた義足Bを着用した着用者Cが全力で走っている状態の画像データから、試着用義足ブレード#2~#9に生じている挙動を示す試着品動作データを取得する。
【0035】
シミュレーションシステム1aの場合には、ステップS31において、試着品計測データ取得部11Aaは、撮影部Aが出力する画像データ(
図5のステップS20において撮影した画像データ)から、試着品計測データを取得する。
詳細には、試着品計測データ取得部11Aaは、試着用義足ブレード(詳細には、試着用スポーツ義足ブレード)#1が取り付けられた義足Bを着用した着用者Cが走っている状態を撮像することによって得られた画像データから、試着品計測データを取得する。同様に、試着品計測データ取得部11Aaは、試着用義足ブレード(詳細には、試着用スポーツ義足ブレード)#2~#9が取り付けられた義足Bを着用した着用者Cが走っている状態を撮像することによって得られた画像データから、試着品計測データを取得する。
【0036】
次いで、ステップS32では、着用者動作データ取得部11Bは、撮影部Aが
図5のステップS20において撮影した画像データから得られる、全力で走っている着用者Cの動作を示すデータ(着用者動作データ)を取得する。
詳細には、着用者動作データ取得部11Bは、試着用義足ブレード#1が備えられた義足Bを着用した着用者Cが全力で走っている状態の画像データから、全力で走っている着用者Cの動作を示す着用者動作データを取得する。同様に、着用者動作データ取得部11Bは、試着用義足ブレード#2~#9が備えられた義足Bを着用した着用者Cが全力で走っている状態の画像データから、全力で走っている着用者Cの動作を示す着用者動作データを取得する。
【0037】
シミュレーションシステム1aの場合には、ステップS32において、着用者計測データ取得部11Baは、撮影部Aが出力する画像データ(
図5のステップS20において撮影した画像データ)から、着用者計測データを取得する。
詳細には、着用者計測データ取得部11Baは、試着用義足ブレード#1が取り付けられた義足Bを着用した着用者Cが走っている状態を撮像することによって得られた画像データから、着用者計測データを取得する。同様に、着用者計測データ取得部11Baは、試着用義足ブレード#2~#9が取り付けられた義足Bを着用した着用者Cが走っている状態を撮像することによって得られた画像データから、着用者計測データを取得する。
【0038】
ここで、設計システム1における試着品動作データと着用者動作データとを取得する方法の一例について説明する。試着品動作データと着用者動作データとは、撮影対象である試着者の全身に貼付した反射マーカの位置(座標)を計測することによって取得される。
・計測手法
動作データは撮影対象の全身に貼付した反射マーカより取得される。これはカメラが発光する赤外線を、再帰性反射材が塗付されたマーカが反射し、各マーカの三次元空間座標をコンピュータ上に取り込むことによって行われる。つまり、試着品動作データ、着用者動作データなどの動作データは、撮影対象である試着者に貼付した反射マーカが、複数の撮像部Aの各々が発光する赤外線を反射することによって得られる反射光に基づいて、その反射マーカの三次元空間座標を計測することによって得られる。2台以上のカメラによって取得された各反射マーカの三次元空間座標から、任意に定義された(試着者の)身体全体および各セグメント・各関節における並進・および回転の速度、加速度、移動距離、角度などの物理的特徴量を算出する。また、地面に埋没させた複数枚のフォースプレートを使用し、前後・左右・鉛直の3方向の地面反力と各軸回りのモーメントを計測する。上述した三次元空間座標と地面反力データに逆動力学計算を適用することによって、任意に定義された身体全体および各セグメント・各関節における並進・および回転の力およびモーメントを算出する。シミュレーションシステム1aの場合にも、この計測手法を適用できる。
【0039】
図8は
図7のステップS31において試着品動作データを取得するため、および、
図7のステップS32において着用者動作データを取得するために、
図6に示す画像を変換することによって得られた動作解析用画像の一例を示す図である。
図8に示す例では、
図6に示す例の試着用義足ブレード(詳細には、試着用スポーツ義足ブレード)#1が、24個の点によって表現されている。
図8に示すような動作解析用画像を単位時間経過毎に作成して解析することにより、24個の点に相当する位置にかかる加速度を算出することができる。その結果、試着用義足ブレード#1が備えられた義足Bを着用した着用者Cの全力走行中における試着用義足ブレード#1の挙動(動作)を算出することができる。
また、
図8に示す例では、着用者Cが設計システム1のコンピュータ上で再現されている。詳細には、例えば、
図6に示す例の着用者Cの右手から指先までの部分が、4個の点によって表現されている。
図8に示すような動作解析用画像を単位時間経過毎に作成して解析することにより、着用者Cの右手から指先までの部分にかかる加速度を算出することができる。同様に、着用者Cの全身の各部位にかかる加速度を算出することができる。その結果、試着用義足ブレード#1が備えられた義足Bを着用した着用者Cの全力走行中に、着用者Cの全身の各部位にかかる身体負荷を算出することができる。
シミュレーションシステム1aが、試着品計測データと、着用者計測データとを取得する場合にも、この動作解析用画像を使用できる。
【0040】
ここで、ランニングデータについて説明する。ランニングデータとは、反射マーカの三次元空間座標に基づく、動作データの計測結果であり、試着品動作データと、着用者動作データとに対応する。ランニングデータは、式(2)で表される。
【0041】
【0042】
式(2)に関して説明する。計測されたランニングデータをf1~fm(mは、m>1の整数)で表す。mは、試着品動作データと、着用者動作データとの各々の数であり、ここでは、ブレードの数に対応する。本実施形態では、計測されたランニングデータをf1~f9で表現する。また、時間tはt={t1,…,tn}に離散化する。なお、本実施形態では9本のブレードで試走したため、ランニングデータはf1~f9までだが、その数値はブレードの試走本数によって変わる。さらに、fj(ti)は、j番目の義足ブレード(詳細には、スポーツ義足ブレード)を着用した着用者のランニングデータである。具体的には、fj(ti)は、着用者の身体に取り付けた各マーカの位置座標{rx,ry,rz}を示す。
9本の義足ブレードのそれぞれの4つのスペック(設計変数)を{wi,xj,yj,zj}(j=1…9)で表した場合、式(2)の関係が得られる。そして、各tiに対して、式(2)を解いていく。
【0043】
ここで、4つのスペック(設計変数)を表すw,x,y,zは、それぞれ設計変数であり、wは第1のスペック(スポーツ義足ブレード剛性)であり、xは第2のスペック(スポーツ義足ブレード高さ寸法)であり、yは第3のスペック(スポーツ義足ブレード後方突出量)であり、zは第4のスペック(スポーツ義足ブレードつま先長さ寸法)である。また、式(2)において、w1~wn、x1~xn、y1~yn、z1~znにおける1~nの番号は各ブレードの番号に対応する。
式(2)を解くことにより、式(3)が得られる。
【0044】
【0045】
式(3)において、a1~a15は、応答曲面の係数である。
式(2)には、一般には厳密な解は存在しない。そこで、式(2)を解くために、一般化逆行列A+(ムーア・ペンローズ逆行列、擬似逆行列とも言う)が用いられる。これは、厳密な解が存在しない場合に近似解を求める手法である。すなわち、近似解と厳密解との誤差を最小とする解を求める手法である。一般的な数学的手法であるため、詳細は省略する。なお、ここでは、式(2)を解くために、MathWorks社製数値計算ソフト「MATLAB(登録商標)」が用いた。
係数a1~a15は、試走者(試着者)の技量とランニングの癖に相当する値である。つまり、この処理によって、w、x、y、zを実際には計測していないスペックに変更したとしても、式(4)に示すように関数fで表されるランニングデータが求められることになる。換言すると、式(4)によって任意の{w,x,y,z}に対する各マーカの身体位置座標{rx,ry,rz}データの近似値として下記が得られる。計測していない任意のブレードによるランニングデータは式(4)で示すように表わされる。式(4)が応答曲面である。
【0046】
【0047】
式(2)から式(4)により、動作応答局面と、時間応答局面とを算出できる。
前述したランニングデータは、試着品計測データと、着用者計測データとにも対応する。また、式(2)から式(4)は、シミュレーションシステム1aにも適用できる。
【0048】
図7の説明に戻り、次いで、ステップS33では、動作応答曲面算出部13Aが、ステップS31において取得された試着品動作データと、ステップS32において取得された着用者動作データとに基づき、応答曲面法によって、試着者Cの特有の動作の変え方および癖を抽出して2次関数化した動作応答曲面を算出する。ここでは、前述した式(2)から式(5)によって、動作応答局面が算出された場合について説明を続ける。
ステップS33は、シミュレーションシステム1aの動作応答曲面算出部13Aaが、動作応答曲面を算出する場合にも適用できる。
【0049】
次いで、ステップS34では、時間応答曲面算出部13Bが、ステップS31において取得された試着品動作データと、ステップS32において取得された着用者動作データとに基づき、応答曲面法によって時間応答曲面を算出する。時間応答曲面は、式(5)から式(7)によって算出することができる。式(5)は、ランニングデータである。
【0050】
【0051】
式(5)において、g1~gm(mは、m>1の整数)は、計測されたランニングデータである。mは、試着品動作データと、着用者動作データとの各々の数であり、ここでは、ブレードの数に対応する。本実施形態では、計測されたランニングデータをg1~g9で表現する。また、時間tはt={t1,…,tn}に離散化する。なお、本実施形態では9本のブレードで試走したため、ランニングデータはg1~g9までだが、その数値はブレードの試走本数によって変わる。さらに、gj(ti)は、j番目の義足ブレード(詳細には、スポーツ義足ブレード)を着用した着用者のランニングデータである。具体的には、gj(ti)は、着用者の身体に取り付けた各マーカの位置座標{rx,ry,rz}を示す。
9本の義足ブレードのそれぞれの4つのスペック(設計変数)を{wi,xj,yj,zj}(j=1…9)で表した場合、式(2)の関係が得られる。そして、各tiに対して、式(5)を解いていく。
【0052】
ここで、4つのスペック(設計変数)を表すw,x,y,zは、それぞれ設計変数であり、wは第1のスペック(スポーツ義足ブレード剛性)であり、xは第2のスペック(スポーツ義足ブレード高さ寸法)であり、yは第3のスペック(スポーツ義足ブレード後方突出量)であり、zは第4のスペック(スポーツ義足ブレードつま先長さ寸法)である。また、式(5)において、w1~wn、x1~xn、y1~yn、z1~znにおける1~nの番号は各ブレードの番号に対応する。
式(2)を解くことにより、式(6)が得られる。
【0053】
【0054】
式(6)において、b1~b15は、応答曲面の係数である。
式(5)には、一般には厳密な解は存在しない。そこで、式(5)を解くために、一般化逆行列B+(ムーア・ペンローズ逆行列、擬似逆行列とも言う)が用いられる。これは、厳密な解が存在しない場合に近似解を求める手法である。すなわち、近似解と厳密解の誤差を最小とする解を求める手法である。一般的な数学的手法であるため、詳細は省略する。なお、ここでは、式(5)を解くために、MathWorks社製数値計算ソフト「MATLAB(登録商標)」が用いた。
【0055】
係数b1~b15は、試走者(試着者)の技量とランニングの癖に相当する値である。つまり、この処理によって、w、x、y、zを実際には計測していないスペックに変更したとしても、式(7)に示すように関数gで表されるランニングデータが求められることになる。換言すると、式(7)によって任意の{w,x,y,z}に対する各マーカの身体位置座標{rx,ry,rz}データの近似値として下記が得られる。計測していない任意のブレードによるランニングデータは式(7)で示すように表わされる。式(7)が応答曲面である。
【0056】
【0057】
式(5)から式(7)により、時間応答局面を算出できる。
前述したランニングデータは、試着品計測データと、着用者計測データとにも対応する。また、式(5)から式(7)は、シミュレーションシステム1aにも適用できる。
式(5)におけるg1~g9は、各試着用義足ブレード(詳細には、試着用スポーツ義足ブレード)が備えられた義足の動作時間である。そして、式(6)で求められた係数b
1~b15が着用者の動作時間に相当する値である。
次に、式(7)に基づき、g1(w,x,y,z)が算出される。
ステップS34は、シミュレーションシステム1aの動作応答曲面算出部13Aaが、時間応答曲面を算出する場合にも適用できる。
【0058】
次いで、ステップS35では、シミュレーション実行部14が、ステップS33において算出された動作応答曲面と、ステップS34において算出された時間応答曲面とに基づき、実際には試着されない義足ブレード(仮想義足ブレード(詳細には、仮想スポーツ義足ブレード))(つまり、81種類の異なるスペックを有する義足ブレード(詳細には、スポーツ義足ブレード)のうちの、試着用義足ブレード#1~#9を除く義足ブレード)を含む義足Bが着用者Cによって仮に試着された場合における仮想義足ブレードの動作データと、着用者の動作データとを予測する。詳細には、シミュレーション実行部14は、ベーシスベクトル法を用いることによって、試着用義足ブレード#1~#9のそれぞれのスペックとは異なるスペックを有する仮想義足ブレードを生成する。具体的には、シミュレーション実行部14は、義足ブレードの形状を、あるパターンに基づいて随時変えながら、シミュレーションを行う。
図7に示す例では、シミュレーション実行部14がベーシスベクトル法を用いるが、他の例では、シミュレーション実行部14がベーシスベクトル法以外の手法を用いてもよい。
ベーシスベクトル法とは、オリジナル形状に対して設計者が考えられる基本形状候補(ベーシスベクトル)をベースとして、それらの組み合わせにより最適形状を求める手法である。各ベーシスベクトルはそれぞれ重み係数を持ち、重み係数を掛けることによりベーシスベクトルは形状変化する。本実施例では、スポーツ義足ブレード高さ寸法と、スポーツ義足ブレード後方突出量と、スポーツ義足ブレードつま先長さ寸法とがベーシスベクトルに相当し、スポーツ義足ブレード高さ寸法と、スポーツ義足ブレード後方突出量と、スポーツ義足ブレードつま先長さ寸法とを順次変化させながらシミュレーションを実行する。ゴルフシャフトは単なる棒で形状が変わらないが、義足は、形状のバリエーションが様々である。ベーシスベクトル法を使用することによって、それぞれの部分について、どう変えるかを指定できる。この際、シミュレーションで用いる各有限要素にも同様の重みでのベーシスベクトルを用いて要素を変形させることで、再度メッシュを切ることなくシミュレーションを実行できる。
ステップS35は、シミュレーションシステム1aのシミュレーション実行部14aが、仮想義足ブレードの動作データと、着用者の動作データとを予測する場合にも適用できる。
ステップS35の後、シミュレーションシステム1aでは、シミュレーション実行部14aは、仮想義足ブレードの動作データの予測結果と、着用者の動作データの予測結果とを、選定部15へ出力する。選定部15は、シミュレーション実行部14aが出力した仮想義足ブレードの動作データの予測結果と、着用者の動作データの予測結果とを取得し、取得した仮想義足ブレードの動作データの予測結果と、着用者の動作データの予測結果とに基づいて、義足ブレード選定する。例えば、選定部15は、仮想義足ブレードの動作データの予測結果と、着用者の動作データの予測結果とに基づいて、前述した4つの項目(パラメータ)に近いスペックを有する義足ブレードを選定する。例えば、選定部15は、4つの項目(パラメータ)の平均値などの統計量に基づいて、義足ブレードを選定してもよい。このように構成することによって、主観によらず、客観的に義足ブレードを選定できる。
【0059】
図9を参照して、ステップS35の詳細について説明する。
図9は
図7のステップS35において第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1によって実行される処理の一例を説明するための図である。
ステップS35Aにおいて、身体動作解析部14Aが、ステップS32において取得された着用者動作データに基づいて、ステップS33において算出された動作応答曲面と、ステップS34において時間応答曲面とを利用することにより、着用者Cの動作の解析(例えば、着用者の身体の各所にどの程度の身体負荷がかかっているかの解析)を行う。
次いで、ステップS35Bでは、FEM解析部14Bが、ステップS31において取得された試着品動作データに基づいて、ステップS33において算出された動作応答曲面と、ステップS34において算出された時間応答曲面とを利用することにより、試着品(上述した81種類の異なるスペックを有する義足ブレード(詳細には、スポーツ義足ブレード)を含む義足B)の動作のFEM解析(例えば、着用者Cが速く走るために義足Bがどのように機能しているかの解析)を行う。このFEM解析は、例えば、市販の有限要素法ソフトウェアを用いることによって実行できる動的有限要素法による解析などである。
【0060】
次いで、ステップS35Cでは、多目的最適化部14Cが、所定の目的関数(例えば、着用者Cの身体に過剰な身体負荷がかからないようにする関数、着用者Cが速く走れるようにする関数など)を最大化するための解析を行う。詳細には、多目的最適化部14Cは、シミュレーションを繰り返し実行することによって、上述した所定の目的関数を最大化する。
次いで、ステップS35Dでは、最適品設計部14Dが、多目的最適化部14Cにおける解析結果に基づいて、上述した上述した81種類の異なるスペックを有する義足ブレードの中から、着用者Cにとって最適な義足ブレードB4を設計(選定)する。つまり、着用者Cにとって最適な義足ブレードB4が、上述した試着用義足ブレード(詳細には、試着用スポーツ義足ブレード)#1~#9以外の義足ブレードB4になることもあり得る。
ステップS35AからステップS35Dは、シミュレーションシステム1aのシミュレーション実行部14aが行う処理に適用できる。
【0061】
本実施形態の変形例のシミュレーションシステム1aを使用してシミュレーションを行った結果について説明する。シミュレーションシステム1aを使用して、義足用ブレードを設計した。
図10は、義足用の板バネの一例を示す図である。
図10には、義足用の板バネ100が示される。
図11は、義足用の板バネの部分拡大図である。
図11には、
図10に示される範囲Eに含まれる義足用の板バネの拡大図が示される。
図10と、
図11とにおいて、義足用の板バネ100が使用されるときの鉛直下向き方向を垂直方向とし、その垂直方向に直交する方向を水平方向とする。
義足用の板バネ100において、接続部品を介して身体(着用者)側に装着される身体側端部の厚み方向の直線部を直線部Aとし、地面に設置される側の地面側端部を地面側端部Bとし、厚み方向の直線部Aから垂線を下した時に板バネ本体と交差する部分を交差部Cとし、義足用の板バネ100を含む義足ブレードを身体へ装着した際に最も背面側に位置する部分を背面部Dとする。
さらに、義足用の板バネ100において、直線部Aと地面側端部Bとの間の垂直成分の距離を直線部垂直成分距離Hとし、地面側端部Bと交差部Cとの間の水平成分距離の距離を交差部水平成分距離Ltとし、交差部Cと背面部Dとの間の水平成分距離を背面部水平成分距離Lhとする。
また、直線部Aに直交する厚み方向の直線部を直線部Tとする。
図12は、義足用の板バネの撓み量を示す図である。
図12には、地面側端部Bを固定し、直線部Aから背面部Dへ向かう方向に沿って、50mmの位置Pに垂直方向に1000Nの荷重をかけた場合について示す。位置Pに垂直方向に1000Nの荷重をかけることによって、義足用の板バネ100が垂直方向に撓む。義足用の板バネ100が撓む前の直線部垂直成分距離Hと、義足用の板バネ100aが撓んだ後の直線部垂直成分距離Haとの距離の差を撓み量Sとする。
【0062】
義足用の板バネ100を含む義足ブレードを装着する使用者が走る場合に、その速度を最大とするには、義足用の板バネ100が、以下の(1)から(4)を満たすことが好ましいという結果が得られた。
(1) 235mm≦H≦285mm
(2) -10mm≦Lt≦30mm
(3) 220mm≦Lh≦280mm
(4) 35mm≦S≦45mm
なお、Hが小さすぎる場合には装着者には硬く感じられ、義足側の腰部を痛める可能性がある。Hが大きすぎる場合には、たわみ方向の安定感が得られない。そのため、好ましくは245mm≦H≦275mm、より好ましくは250mm≦H≦270mmである。
また、Ltが小さすぎる場合には、いわゆる「膝折れ」のリスクが増大する。膝折れとは、義足の膝関節部が曲がる方向へモーメントが働くことである。膝折れが発生すると装着者は転倒を免れない。Ltが大きすぎる場合には、前傾姿勢を取ることが難しくなり、走速度を高めることが困難となる。また、義足ブレードのつま先が地面に触れる可能性が高くなり、こちらもつまずいて転倒するリスクが増大する。そのため、好ましくは0mm≦Lt≦20mm、より好ましくは5mm≦Lt≦15mmである。
また、Lhが小さすぎる場合には、ブレードの反発方向が上向きに近づくため、走速度の増大が困難となる。Lhが大きすぎる場合には、ランニング時にかかと部が臀部に当たってしまう。そのため、好ましくは230mm≦Lh≦270mm、より好ましくは240mm≦Lh≦260mmである。
また、Sは小さすぎる場合には、装着者にとって硬く感じられ、装用感として悪いものとなる。Sが大きすぎる場合には、たわみ戻りのタイミングが遅れることとなり、走速度を高めることが困難になる。そのため、好ましくは37mm≦S≦43mm、より好ましくは39mm≦S≦41mmである。ただし、Sは装着者の筋力や体重にも依存するため、一概には言えない。
また、義足用の板バネ100を含む義足ブレードを装着する使用者の踏込力最大とするには、義足用の板バネ100が、以下の(1a)から(4a)を満たすことが好ましいという結果が得られた。
(1a) 185mm≦H≦235mm
(2a) -10mm≦Lt≦30mm
(3a) 140mm≦Lh≦200mm
(4a) 35mm≦S≦45mm
また、義足用の板バネ100を含む義足ブレードを装着する使用者が初心者である場合には、義足用の板バネ100が、以下の(1b)から(4b)を満たすことが好ましいという結果が得られた。義足ブレードを装着する使用者が初心者である場合には、膝折れモーメントを最小化する。一般に、義足ユーザにとって膝折れが転倒の最大のリスクとなる。そのため、膝折れモーメントを最小化した義足は、転倒リスクを最小限にするため、一般義足ユーザに好適とされる。この場合には、義足用の板バネ100の剛性が55~75mm、高さが185~235mm、つま先長さが50~90mm、かかと長さが220~280mmを満たすことが好ましいという結果が得られた。
(1b) 185mm≦H≦235mm
(2b) 50mm≦Lt≦90mm
(3b) 220mm≦Lh≦280mm
(4b) 55mm≦S≦75mm
【0063】
<第1実施形態のまとめ>
第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1では、上述したように、スペックの異なる複数の試着用義肢・装具あるいはその部品の着用時における複数の試着用義肢・装具あるいはその部品の動作データである試着品動作データと、複数の試着用義肢・装具あるいはその部品の着用者の動作データである着用者動作データとを取得する動作データ取得部11と、動作データ取得部11により取得された試着品動作データと着用者動作データとに基づき、応答曲面法によって動作応答曲面を算出する動作応答曲面算出部13Aと、動作データ取得部11により取得された試着品動作データと着用者動作データとに基づき、応答曲面法によって時間応答曲面を算出する時間応答曲面算出部13Bと、動作応答曲面と時間応答曲面とに基づき、実際には試着されない仮想義肢・装具あるいその部品が着用者によって仮に試着された場合における仮想義肢・装具あるいその部品の動作データと、着用者の動作データとを予測するシミュレーション実行部14とが備えられている。
そのため、第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1によれば、着用者の安全性を担保しつつ、着用者に適した義肢・装具あるいはその部品として、実際には試着されない義肢・装具あるいその部品も選定することができる。
【0064】
<第1実施形態の変形例のまとめ>
第1実施形態の変形例のシミュレーションシステム1aは、異なる複数の試着用義肢又は試着用装具の計測データである試着品計測データと、複数の試着用義肢又は試着用装具の着用者の計測データである着用者計測データとを取得する計測データ取得部11aと、着用者計測データと、着用者計測データとに基づいて、着用者に生じている力を示すデータである着用者動作データを、逆動力学解析によって算出する着用者動作データ算出部12と、着用者動作データに基づいて、動作応答曲面を、応答曲面法によって算出する動作応答曲面算出部13Aaと、動作応答曲面に基づいて、着用者が複数の試着用義肢又は前記試着用装具とは異なる義肢又は装具を着用したと仮定した場合に、義肢又は装具の動作データと、着用者の動作データとを予測するシミュレーション実行部14aとを備えている。
動作応答曲面に基づいて、着用者が複数の試着用義肢又は試着用装具とは異なる義肢又は装具を着用したと仮定した場合に、義肢又は装具の動作データと、着用者の動作データとを予測するため、第1実施形態の変形例のシミュレーションシステム1aは、着用者に適した義肢又は装具を予測できる。
【0065】
<第2実施形態>
以下、本発明の義肢・装具あるいはその部品の設計システム、義肢・装具あるいはその部品の設計方法およびプログラムの第2実施形態について、添付図面を参照して説明する。
第2実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1と同様の効果を奏することができる。
【0066】
上述したように、第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1は義足ブレード(詳細には、スポーツ義足ブレード)の設計を行うが、第2実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1は義足ブレード以外の義肢(義足または義手)・装具(機能に障害のある体幹・四肢に装着する器具)あるいはその部品の設計を行う。
詳細には、第2実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1は、第1実施形態の義肢・装具あるいはその部品の設計システム1と同様の手法によって(つまり、仮想義肢・仮想装具などを生成することによって)、例えば、義肢、手関節装具、肩関節装具、頚椎装具、胸椎装具、腰椎装具、仙腸装具、股関節装具、膝関節装具、短下肢装具およびそれらの部品のいずれかの設計を行う。
【0067】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。上述した各実施形態に記載の構成を組み合わせてもよい。例えば、第2の実施形態と、第1実施形態の変形例とが組み合わされてもよい。
【0068】
なお、義肢・装具あるいはその部品の設計システム1の各機能、シミュレーションシステム1aの各機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の各部の処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。
【0069】
なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0070】
また、上述した機能の一部または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0071】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1)スペックの異なる複数の試着用義肢・装具あるいはその部品の着用時における前記複数の試着用義肢・装具あるいはその部品の動作データである試着品動作データと、前記複数の試着用義肢・装具あるいはその部品の着用者の動作データである着用者動作データとを取得する動作データ取得部と、
前記動作データ取得部により取得された前記試着品動作データと前記着用者動作データとに基づき、応答曲面法によって動作応答曲面を算出する動作応答曲面算出部と、
前記動作データ取得部により取得された前記試着品動作データと前記着用者動作データとに基づき、応答曲面法によって時間応答曲面を算出する時間応答曲面算出部と、
前記動作応答曲面と前記時間応答曲面とに基づき、実際には試着されない仮想義肢・装具あるいその部品が前記着用者によって仮に試着された場合における前記仮想義肢・装具あるいその部品の動作データと、前記着用者の動作データとを予測するシミュレーション実行部と
を有する義肢・装具あるいはその部品の設計システム。
(付記2)前記動作応答曲面算出部が算出する前記動作応答曲面は、2次以上の関数に関数化されている、
付記1に記載の義肢・装具あるいはその部品の設計システム。
(付記3)前記複数の試着用義肢・装具あるいはその部品は、複数の試着用スポーツ義足ブレードであり、
前記複数の試着用スポーツ義足ブレードが有するスペックの項目には、少なくともスポーツ義足ブレード高さ寸法、スポーツ義足ブレード後方突出量およびスポーツ義足ブレードつま先長さ寸法のいずれかが含まれる、
付記1または付記2に記載の義肢・装具あるいはその部品の設計システム。
(付記4)前記シミュレーション実行部は、ベーシスベクトル法を用いることによって、前記複数の試着用スポーツ義足ブレードのそれぞれのスペックとは異なるスペックを有する仮想スポーツ義足ブレードを生成する、
付記3に記載の義肢・装具あるいはその部品の設計システム。
(付記5)前記複数の試着用スポーツ義足は、
前記スポーツ義足ブレード高さ寸法と、前記スポーツ義足ブレード後方突出量と、前記スポーツ義足ブレードつま先長さ寸法とを含む4つの項目のそれぞれが3つの水準を有することにより得られる81種類のスペックから、実験計画法におけるL9型直交表に基づいて選定された9種類のスペックを有する、
付記3または付記4に記載の義肢・装具あるいはその部品の設計システム。
(付記6)前記4つの項目は、スポーツ義足ブレード剛性、前記スポーツ義足ブレード高さ寸法、前記スポーツ義足ブレード後方突出量、および、前記スポーツ義足ブレードつま先長さ寸法である、
付記5に記載の義肢・装具あるいはその部品の設計システム。
(付記7)前記シミュレーション実行部は、シミュレーションを繰り返し実行することによって、所定の目的関数を最大化する、
付記1から付記6のいずれか一項に記載の義肢・装具あるいはその部品の設計システム。
(付記8)前記目的関数は、少なくとも前記着用者の身体負荷を含む、
付記7に記載の義肢・装具あるいはその部品の設計システム。
(付記9)スペックの異なる複数の試着用義肢・装具あるいはその部品の着用時における前記複数の試着用義肢・装具あるいはその部品の動作データである試着品動作データと、前記複数の試着用義肢・装具あるいはその部品の着用者の動作データである着用者動作データとを取得する動作データ取得ステップと、
前記動作データ取得ステップにおいて取得された前記試着品動作データと前記着用者動作データとに基づき、応答曲面法によって動作応答曲面を算出する動作応答曲面算出ステップと、
前記動作データ取得ステップにおいて取得された前記試着品動作データと前記着用者動作データとに基づき、応答曲面法によって時間応答曲面を算出する時間応答曲面算出ステップと、
前記動作応答曲面と前記時間応答曲面とに基づき、実際には試着されない仮想義肢・装具あるいその部品が前記着用者によって仮に試着された場合における前記仮想義肢・装具あるいその部品の動作データと、前記着用者の動作データとを予測するシミュレーション実行ステップと
を有する義肢・装具あるいはその部品の設計方法。
(付記10)コンピュータに、
スペックの異なる複数の試着用義肢・装具あるいはその部品の着用時における前記複数の試着用義肢・装具あるいはその部品の動作データである試着品動作データと、前記複数の試着用義肢・装具あるいはその部品の着用者の動作データである着用者動作データとを取得する動作データ取得ステップと、
前記動作データ取得ステップにおいて取得された前記試着品動作データと前記着用者動作データとに基づき、応答曲面法によって動作応答曲面を算出する動作応答曲面算出ステップと、
前記動作データ取得ステップにおいて取得された前記試着品動作データと前記着用者動作データとに基づき、応答曲面法によって時間応答曲面を算出する時間応答曲面算出ステップと、
前記動作応答曲面と前記時間応答曲面とに基づき、実際には試着されない仮想義肢・装具あるいその部品が前記着用者によって仮に試着された場合における前記仮想義肢・装具あるいその部品の動作データと、前記着用者の動作データとを予測するシミュレーション実行ステップと
を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0072】
1…設計システム、11…動作データ取得部、11A…試着品動作データ取得部、11B…着用者動作データ取得部、13A…動作応答曲面算出部、13B…時間応答曲面算出部、14…シミュレーション実行部、14A…身体動作解析部、14B…FEM解析部、14C…多目的最適化部、14D…最適品設計部、A…撮影部、B…義足、B1…義足ソケット、B2…義足ジョイント、B3…義足接続部、B4…義足ブレード、B5…義足接続部、B5X…中心軸線、C…着用者、L2…義足ブレード高さ寸法、L3…義足ブレード後方突出量、L4…義足ブレードつま先長さ寸法、1a…シミュレーションシステム、11a…計測データ取得部、11Aa…試着品計測データ取得部、11Ba…着用者計測データ取得部、12…着用者動作データ算出部、13Aa…動作応答曲面算出部、13Ba…時間応答曲面算出部、14a…シミュレーション実行部、14Aa…身体動作解析部、14Ba…FEM解析部、14Ca…多目的最適化部、14Da…最適品設計部、15…選定部