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特許7255985スイッチトキャパシタDC-DC変換器のためのデジタルコントローラ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】スイッチトキャパシタDC-DC変換器のためのデジタルコントローラ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/07 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
H02M3/07
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018172002
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2019071768
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】15/710,502
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501209070
【氏名又は名称】インフィネオン テクノロジーズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャーニアク, キリーロ
(72)【発明者】
【氏名】ホーリンガー, ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】マーダーバッハー, ゲーアハルト
(72)【発明者】
【氏名】マルシリ, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】シュボスカヤ, ヴォルハ
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0106375(US,A1)
【文献】特開平11-113250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0084890(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流/直流変換器(DC-DC変換器)であって、
エネルギー蓄積要素、
前記エネルギー蓄積要素の第1の端子に結合された第1の複数のスイッチであって、前記第1の複数のスイッチのうちの少なくとも1つの高インピーダンスサブスイッチのオン抵抗は、前記第1の複数のスイッチのうちの複数の低インピーダンスサブスイッチそれぞれに同一のオン抵抗の倍数である、第1の複数のスイッチ、および
前記エネルギー蓄積要素の第2の端子に結合された第2の複数のスイッチであって、前記第2の複数のスイッチのうちの少なくとも1つの高インピーダンスサブスイッチのオン抵抗は、前記第2の複数のスイッチのうちの複数の低インピーダンスサブスイッチそれぞれに同一のオン抵抗の倍数である、第2の複数のスイッチ、
を含み、
前記第1および第2の複数のスイッチの各々のコンダクタンスは調整可能である、
DC-DC変換器と、
前記第1および第2の複数のスイッチの各々のスイッチタイミングの変調によって、前記エネルギー蓄積要素と、前記DC-DC変換器の出力負荷との間の電気接続を並列電気接続と直列電気接続との間で切り替えるよう、前記第1および第2の複数のスイッチの各々の前記コンダクタンスを独立して制御するように構成されたデジタルコントローラであって、
前記スイッチタイミングの前記変調は前記第1および第2の複数のスイッチの各々のゲート-ソース電圧の調整によって規定され、
前記デジタルコントローラは、前記第1および第2の複数のスイッチの第1のサブセットを、事前設定された数のスイッチングサイクルの間、前記第1および第2の複数のスイッチの第2のサブセットが状態をトグルする一方で、固定された状態で休止するようプログラムするように構成されている、
デジタルコントローラと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記エネルギー蓄積要素が第1のエネルギー蓄積要素であり、前記DC-DC変換器が、
第2のエネルギー蓄積要素、および
前記第2のエネルギー蓄積要素に結合された第3の複数のスイッチ、
をさらに含み、
前記第2のエネルギー蓄積要素は、前記第1、第2および第3の複数のスイッチの第1のスイッチング構成の間は、前記第1のエネルギー蓄積要素と直列になっており、
前記第2のエネルギー蓄積要素は、前記第1、第2および第3の複数のスイッチの第2のスイッチング構成の間は、前記第1のエネルギー蓄積要素と並列になっている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記DC-DC変換器の前記出力負荷に結合された出力エネルギー蓄積要素をさらに備え、
前記出力エネルギー蓄積要素は、前記第1、第2および第3の複数のスイッチの第3のスイッチング構成の間は、前記第1のエネルギー蓄積要素と直列、且つ前記第2のエネルギー蓄積要素と直列になっており、
前記出力エネルギー蓄積要素は、前記第1、第2および第3の複数のスイッチの第4のスイッチング構成の間は、前記第1のエネルギー蓄積要素と並列、且つ前記第2のエネルギー蓄積要素と並列になっている、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記スイッチタイミングがスイッチング周期を含み、前記スイッチング周期は充電相および放電相を含み、前記充電相の継続時間は前記放電相の継続時間と実質的に等しく、
前記デジタルコントローラが、デッドタイム相を前記スイッチング周期に追加するように構成されており、前記デッドタイム相の間には、前記デジタルコントローラが、どのスイッチも電流を導通しないよう、前記第1、第2および第3の複数のスイッチの各々の前記ゲート-ソース電圧を調整するように構成されている、
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記デジタルコントローラが、前記出力負荷への負荷電流の大きさに基づいて前記第1および第2の複数のスイッチの各々の前記コンダクタンスを独立して制御するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記スイッチタイミングがスイッチング周期を含み、前記スイッチング周期は前記エネルギー蓄積要素の充電相および前記エネルギー蓄積要素の放電相を含み、前記充電相の継続時間は前記放電相の継続時間と実質的に等しい、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記デジタルコントローラが、デッドタイム相を前記スイッチング周期に追加するように構成されており、
前記デッドタイム相の間には、前記デジタルコントローラが、どのスイッチも電流を導通しないよう、前記第1および第2の複数のスイッチの各々の前記ゲート-ソース電圧を調整するように構成されており、
前記デッドタイム相の継続時間は前記出力負荷への負荷電流の大きさに基づく、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
第1の継続時間のデッドタイム相を含む、第1のスイッチング周期の第1の継続時間が、第2の継続時間のデッドタイム相を含む、第2のスイッチング周期の第2の継続時間とほぼ等しく、前記第2のスイッチング周期の充電相の継続時間が前記第2のスイッチング周期の放電相の継続時間と実質的に等しい、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
エネルギー蓄積キャパシタと、
前記エネルギー蓄積キャパシタの第1の端子に結合された第1の複数のトランジスタと、
前記エネルギー蓄積キャパシタの第2の端子に結合された第2の複数のトランジスタと、
スイッチング周期に従って前記第1および第2の複数のトランジスタの各々の導通を独立して制御するように構成されたデジタルコントローラであって、前記スイッチング周期は、
前記エネルギー蓄積キャパシタの充電相、
前記エネルギー蓄積キャパシタの放電相、および
デッドタイム相を含み、前記充電相の継続時間は前記放電相の継続時間とほぼ等しい、
デジタルコントローラと、
を備えた装置であって、
前記第1の複数のトランジスタとして実装された第1の複数のスイッチのうちの少なくとも1つの高インピーダンスサブスイッチのオン抵抗は、前記第1の複数のスイッチのうちの複数の低インピーダンスサブスイッチそれぞれに同一のオン抵抗の倍数であり、
前記第2の複数のトランジスタとして実装された第2の複数のスイッチのうちの少なくとも1つの高インピーダンスサブスイッチのオン抵抗は、前記第2の複数のスイッチのうちの複数の低インピーダンスサブスイッチそれぞれに同一のオン抵抗の倍数であり、
前記デジタルコントローラが、前記装置の出力ノードに結合された負荷への出力電流の大きさに基づいて前記第1および第2の複数のトランジスタの各々の前記導通を独立して制御するように構成されている、装置。
【請求項10】
前記スイッチング周期の前記デッドタイム相の継続時間が0ナノ秒とほぼ等しい、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記スイッチング周期の前記デッドタイム相の継続時間が、前記装置の出力ノードに結合された負荷への出力電流の大きさに基づく、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記デジタルコントローラが、前記第1の複数および第2の複数のトランジスタの前記導通を、
前記充電相の間には、第1の構成に、
前記放電相の間には、第2の構成に、
前記デッドタイム相の間には、前記第1および第2の複数のスイッチのうちのどのスイッチも電流を導通しないような第3の構成に
制御するように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記デジタルコントローラが、前記第1および第2の複数のトランジスタのうちの特定のトランジスタのコンダクタンスを、前記第1および第2の複数のトランジスタのうちの前記特定のトランジスタに提供されるコンダクタンス調整信号の少なくとも立ち上がりエッジの変化率の制御によって独立して制御するように構成されており、前記デジタルコントローラが、前記第1および第2の複数のトランジスタの第1のサブセットを、事前設定された数のスイッチングサイクルの間、前記第1および第2の複数のトランジスタの第2のサブセットが状態をトグルする一方で、固定された状態で休止するようプログラムするように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
フィードバックループをさらに備え、前記装置の出力電圧が前記デジタルコントローラ内へフィードバックされる、請求項9に記載の装置。
【請求項15】
複数のスイッチの各々のコンダクタンスを、前記複数のスイッチの各々のスイッチタイミングの変調によって独立して制御するように構成されたデジタルコントローラ回路であって、
前記複数のスイッチは、エネルギー蓄積要素と、DC-DC変換器の出力負荷との間の電気接続を並列電気接続と直列電気接続との間で切り替えるように構成されており、
前記デジタルコントローラ回路は、前記出力負荷への出力電流の大きさに基づいて前記スイッチタイミングを変調し、
前記複数のスイッチが、
前記エネルギー蓄積要素の第1の端子に結合された第1の複数のスイッチであって、前記第1の複数のスイッチのうちの少なくとも1つの高インピーダンスサブスイッチのオン抵抗は、前記第1の複数のスイッチのうちの複数の低インピーダンスサブスイッチそれぞれに同一のオン抵抗の倍数である、第1の複数のスイッチ、および
前記エネルギー蓄積要素の第2の端子に結合された第2の複数のスイッチであって、前記第2の複数のスイッチのうちの少なくとも1つの高インピーダンスサブスイッチのオン抵抗は、前記第2の複数のスイッチのうちの複数の低インピーダンスサブスイッチそれぞれに同一のオン抵抗の倍数である、第2の複数のスイッチ、
を含み、
前記第1および第2の複数のスイッチの各々のコンダクタンスは調整可能である、デジタルコントローラ回路。
【請求項16】
前記スイッチタイミングがスイッチング周期を含み、前記デジタルコントローラ回路が、デッドタイム相を前記スイッチング周期に追加するようにさらに構成されており、
前記デッドタイム相の間には、前記デジタルコントローラ回路が、どのスイッチも電流を導通しないよう、前記複数のスイッチの各々のコンダクタンスを独立して制御するように構成されており、
前記デッドタイム相の継続時間は前記出力負荷への前記出力電流の前記大きさに基づく、
請求項15に記載のデジタルコントローラ回路。
【請求項17】
デジタルコントローラ回路によって、DC/DC(DC-DC)変換器の出力負荷への出力負荷電流の大きさを決定することと、
前記デジタルコントローラ回路によって、複数のスイッチのコンダクタンスを調整することと、
を含み、
前記複数のスイッチは、エネルギー蓄積要素と、前記DC-DC変換器の前記出力負荷との間の電気接続を並列電気接続と直列電気接続との間で切り替えるように構成されており、
前記デジタルコントローラ回路は、前記複数のスイッチの各々の前記コンダクタンスを、前記複数のスイッチの各々のスイッチタイミングの変調によって独立して制御するように構成されており、
前記デジタルコントローラ回路は、前記出力負荷への出力負荷電流の前記大きさに基づいて前記スイッチタイミングを変調し、
前記複数のスイッチが、
前記エネルギー蓄積要素の第1の端子に結合された第1の複数のスイッチであって、前記第1の複数のスイッチのうちの少なくとも1つの高インピーダンスサブスイッチのオン抵抗は、前記第1の複数のスイッチのうちの複数の低インピーダンスサブスイッチそれぞれに同一のオン抵抗の倍数である、第1の複数のスイッチ、および
前記エネルギー蓄積要素の第2の端子に結合された第2の複数のスイッチであって、前記第2の複数のスイッチのうちの少なくとも1つの高インピーダンスサブスイッチのオン抵抗は、前記第2の複数のスイッチのうちの複数の低インピーダンスサブスイッチそれぞれに同一のオン抵抗の倍数である、第2の複数のスイッチ、
を含み、
前記第1および第2の複数のスイッチの各々のコンダクタンスは調整可能である、方法。
【請求項18】
前記スイッチタイミングがスイッチング周期を含み、前記デジタルコントローラ回路が、デッドタイム相を前記スイッチング周期に追加するようにさらに構成されており、
前記デッドタイム相の間には、前記デジタルコントローラ回路が、前記複数のスイッチのうちのどのスイッチも電流を導通しないよう、前記複数のスイッチの各々の前記コンダクタンスを独立して制御するように構成されており、
前記デッドタイム相の継続時間は前記出力負荷への前記出力負荷電流の前記大きさに基づく、
請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年10月27日に出願された出願第13/283、558号の一部継続である。同出願の内容全体が本明細書において参照により組み込まれている。
【0002】
本開示は電力変換器回路に関する。
【背景技術】
【0003】
様々なモバイルまたはポータブル電子デバイスは、これらのデバイス内のシステムのうちのいくつかを低電圧(例えば、3.0ボルト、1.5ボルトなど)で動作させることによって、低減された電力消費量を有することができる。このような電子デバイスは、多くの場合、それらの電源から利用可能な電圧を、これらのシステムによって用いられるより低い電圧へ「降圧する」ための直流/直流変換器(「dc/dc変換器」または「dc-dc変換器」)を有する。
【0004】
典型的なdc-dc変換器は、1つ以上の「フライングキャパシタ」を制御する1つ以上のスイッチを包含し得る、スイッチトキャパシタdc-dc変換器を含む。スイッチは、フライングキャパシタがいつ充電し、電力を負荷に供給するために放電するのかを決定する。フライングキャパシタは、調節された電流源から充電することができ、負荷と並列に結合された「バッファ」または出力キャパシタへ少なくとも部分的に放電することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、スイッチトキャパシタdc-dc変換器は、一般的に、スイッチング損失に悩まされる。スイッチング損失は、スイッチを動作させるために用いられる電力から生じる電力損失を含む。多くの場合、スイッチの動作は負荷とは無関係に一貫しているため、これらのスイッチング損失は、供給されている負荷電流に比例しないことがある。例えば、スイッチは、負荷とは無関係にスイッチングイベントごとに同じエネルギーを必要とすることがあり、dc-dc変換器によって供給される広範囲の負荷電流のために同じ数のスイッチが動作することがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概して、本開示は、スイッチトキャパシタdc-dc変換器におけるスイッチング特性の制御を提供するための技法および/またはデバイスに関する。様々な実装では、スイッチング特性は負荷特性(例えば、負荷電流の大きさ)に基づいて変更される。スイッチング特性は、dc-dc変換器におけるスイッチング損失を低減、最小化、または解消するため、ならびに出力電圧リップルを低減するために変更され得る。
【0007】
一例では、本開示は、システムであって、このシステムは、直流/直流変換器(DC-DC変換器)であって、エネルギー蓄積要素、このエネルギー蓄積要素の第1の端子に結合された第1の複数のスイッチであって、この第1の複数のスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチのオン抵抗は第1の複数のスイッチのうちの別のスイッチのオン抵抗の倍数である、第1の複数のスイッチ、およびエネルギー蓄積要素の第2の端子に結合された第2の複数のスイッチであって、この第2の複数のスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチのオン抵抗は第2の複数のスイッチのうちの別のスイッチのオン抵抗の倍数である、第2の複数のスイッチ、を含む、DC-DC変換器を備えるシステムに関する。第1および第2の複数のスイッチの各々のコンダクタンスは調整可能である。システムはまた、第1および第2の複数のスイッチの各々のスイッチタイミングの変調によって、エネルギー蓄積要素と、DC-DC変換器の出力負荷との間の電気接続を並列電気接続と直列電気接続との間で切り替えるよう、第1および第2の複数のスイッチの各々のコンダクタンスを独立して制御するように構成されたデジタルコントローラも含み得る。スイッチタイミングの変調は第1および第2の複数のスイッチの各々のゲート-ソース電圧の調整によって規定され、デジタルコントローラは、第1および第2の複数のスイッチの第1のサブセットを、事前設定された数のスイッチングサイクルの間、第1および第2の複数のスイッチの第2のサブセットが状態をトグルする一方で、固定された状態で休止するようプログラムするように構成されている。
【0008】
別の例では、本開示は、装置であって、この装置は、エネルギー蓄積キャパシタと、このエネルギー蓄積キャパシタの第1の端子に結合された第1の複数のトランジスタと、エネルギー蓄積キャパシタの第2の端子に結合された第2の複数のトランジスタと、スイッチング周期に従って第1および第2の複数のトランジスタの各々の導通を独立して制御するように構成されたデジタルコントローラと、を備える装置に関する。スイッチング周期は、エネルギー蓄積キャパシタの充電相、エネルギー蓄積キャパシタの放電相、およびデッドタイム相を含み、充電相の継続時間は放電相の継続時間とほぼ等しい。
【0009】
別の例では、本開示は、複数のスイッチの各々のコンダクタンスを、複数のスイッチの各々のスイッチタイミングの変調によって独立して制御するように構成されたデジタルコントローラ回路であって、複数のスイッチは、エネルギー蓄積要素と、DC-DC変換器の出力負荷との間の電気接続を並列電気接続と直列電気接続との間で切り替えるように構成されており、デジタルコントローラは、出力負荷への出力電流の大きさに基づいてスイッチタイミングを変調する、デジタルコントローラ回路に関する。
【0010】
別の例では、本開示は、方法であって、この方法は、デジタルコントローラ回路によって、DC/DC(DC-DC)変換器の出力負荷への出力負荷電流の大きさを決定することと、デジタルコントローラ回路によって、複数のスイッチのコンダクタンスを調整することと、を含み、複数のスイッチは、エネルギー蓄積要素と、DC-DC変換器の出力負荷との間の電気接続を並列電気接続と直列電気接続との間で切り替えるように構成されており、デジタルコントローラ回路は、複数のスイッチの各々のコンダクタンスを、複数のスイッチの各々のスイッチタイミングの変調によって独立して制御するように構成されており、デジタルコントローラ回路は、出力負荷への出力負荷電流の大きさに基づいてスイッチタイミングを変調する、方法に関する。
【0011】
本開示の1つ以上の例の詳細が添付の図面および以下の説明において説明される。本開示の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに請求項から明らかになるであろう。
【0012】
詳細な説明は添付の図を参照して説明される。図において、参照符号の最も左の桁は、参照符号が最初に現れる図を特定する。異なる図における同じ参照符号の使用は同様または同一の要素を指示する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本開示に係る技法が実装され得る例示的なスイッチトキャパシタdc-dc変換器の回路図である。
図1B】一実装に係る、複数のエネルギー蓄積キャパシタおよび複数のスイッチを有する例示的なスイッチトキャパシタdc-dc変換器の回路図である。
図2A図1Bのdc-dc変換器回路の例示的な第1の動作モードの概略図である。
図2B図1Bのdc-dc変換器回路の例示的な第2の動作モードの概略図である。
図2C図1Bのdc-dc変換器回路の例示的な第3の動作モードの概略図である。
図3A】一実装に係る、デジタル-アナログ変換器を用いるスイッチトキャパシタdc-dc変換器の一部分の概略図である。
図3B】一実装に係る、複数のサブスイッチを用いるスイッチトキャパシタdc-dc変換器の一部分の概略図である。
図4】例示的な一実装に係る、dc-dc変換器のためのデジタル調節ループのブロック図である。
図5】例示的な一実装に係る、dc-dc変換器のためのデジタルコントローラのブロック図である。
図6】別の例示的な実装に係る、dc-dc変換器のためのデジタルコントローラのブロック図である。
図7A】一実装に係る、マルチプレクサおよびデジタル-アナログ変換器を用いるdc-dc変換器の一部分の概略図である。
図7B】一実装に係る、ローパスフィルタおよびデジタル-アナログ変換器を用いるdc-dc変換器の一部分の概略図である。
図8A】一実装に係る、スロープ制御技法を用いるdc-dc変換器の一部分の概略図である。
図8B】別の実装に係る、スロープ制御技法を用いるdc-dc変換器の一部分の概略図である。
図9】一実装に係る、スロープ制御技法を示す例示的な波形である。
図10A】一実装に係る、dc-dc変換器スイッチングを制御する例示的なプロセスを示すフロー図である。
図10B】別の実装に係る、dc-dc変換器スイッチングを制御する例示的なプロセスを示すフロー図である。
図11】充電相および放電相の間におけるエネルギー蓄積要素を通る電流経路を示す例示的なスイッチトキャパシタDC-DC変換器の概略図である。
図12A】スイッチネットワークおよびエネルギー蓄積要素のみを含むスイッチトキャパシタDC-DC変換器の一部分を示す概略図である。
図12B】エネルギー蓄積要素に接続されたサブスイッチの例示的な実装を含むスイッチトキャパシタDC-DC変換器の一部分を示す概略図である。
図13】スイッチングネットワーク内の各スイッチが16個の等しいサブスイッチからなるSC-DCDC変換器における出力電圧リップルの結果を示す時間グラフである。
図14】各スイッチが、RのRonを有する15個のサブスイッチ、2Rを有する1つ、4Rを有する1つ、および8Rを有する1つからなる、分数スイッチを用いた出力電圧リップルの結果を示す時間グラフである。
図15A】スイッチングネットワークのどのスイッチもスイッチングサイクルの一部分にわたって導通しない、スイッチデッドタイムの技法を示すタイミンググラフである。
図15B】スイッチングネットワークのどのスイッチもスイッチングサイクルの一部分にわたって導通しない、スイッチデッドタイムの技法を示すタイミンググラフである。
図16】スイッチインピーダンス変調が用いられるが、0のデッドタイム継続時間を有する、SC-DCDC変換器における出力電圧リップルの結果を示す時間グラフである。
図17】スイッチインピーダンス変調に加えて、充電/放電時間変調が遂行される、SC-DCDC変換器における出力電圧リップルの結果を示す時間グラフである。
図18】本開示の1つ以上の技法に係る、DC-DC変換器回路のためのデジタルコントローラ回路の例示的な動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
概説
技法および/またはデバイスの代表的な実装は、スイッチトキャパシタdc-dc変換器におけるスイッチング特性の制御を提供する。様々な実装では、スイッチング特性は負荷特性(例えば、負荷電流の大きさ)に基づいて変更される。スイッチング特性は、dc-dc変換器におけるスイッチング損失を低減、最小化、または解消するために変更され得る。
【0015】
典型的なスイッチトキャパシタdc-dc変換器は、1つ以上のエネルギー蓄積キャパシタ(「フライングキャパシタ」としても知られる)を制御する1つ以上のスイッチを包含する。一実装では、スイッチの動作(すなわち、スイッチを「オン」および「オフ」に切り替えること)は、負荷に基づいて個々のスイッチまたはスイッチのグループを割り込ませること、および除外することによって変更することができる。例えば、所与の時間においては、所与の負荷のために最小限の数のスイッチが動作可能であることができ、他のスイッチは、開いた状態または閉じた状態で固定されている。負荷の変更に伴い、変更された負荷に対応するために、1つ以上のスイッチを割り込ませるか、または除外することができ、その結果、より多数、またはより少数のスイッチが動作可能になり、残りのスイッチは、固定された状態になっている。
【0016】
代替的な一実装では、1つ以上のスイッチは、複数の個々に動作可能なサブスイッチで構成されていてもよい。個々のサブスイッチまたはサブスイッチのグループは、所与の負荷のために所与の時間に動作可能となることができ、他のスイッチおよび/またはサブスイッチは、開いた状態または閉じた状態で固定されている。さらなる実装では、スイッチおよび/またはサブスイッチは、例えば、デジタルコントローラを用いて動作のために選択されてもよい。dc-dc変換器において用いられる多数のスイッチおよび/またはサブスイッチに基づいて、調節された出力電圧を細かく調整することができ、スイッチング損失を厳密に管理することができる。例えば、より多数のサブスイッチの使用は、調節された出力電圧へのより細かい調整およびスイッチング損失のより厳格な制御を可能にし得る。
【0017】
本開示では、スイッチトキャパシタdc-dc変換器のためのスイッチング制御の様々な実装が説明される。スイッチング制御の技法およびデバイスが、図に示される例示的なdc-dc変換器回路図および様々な関連波形を参照して説明される。説明される技法およびデバイスは様々なdc-dc変換器の設計、回路、およびデバイスのうちの任意のものに適用され、本開示の範囲内にとどまり得る。
【0018】
本開示の技法およびデバイスの利点は様々あり、以下のものを含む。1)低電流動作時における正確で精密なスイッチング制御、2)選択されたスイッチ、動作させられているスイッチの数、およびスイッチ動作制御電圧の量子化、3)低電流負荷におけるdc-dc変換器の効率の改善、4)スイッチングイベントのために使用されるエネルギーの低減、5)スイッチのサブセットを、残りのスイッチが固定されている一方で、動作のために選択する能力、ならびに6)スイッチングネットワークの外部の追加の調節された電流源が必ずしも用いられないこと。本開示の技法の利点は、電流の大きさがより低くなるよう設計され、周波数がより高くなるよう設計された適用物および設計においてより明らかになり得る。
【0019】
以下において、複数の例を用いて諸実装がより詳細に説明される。ここでは、および以下においては、様々な実装および例が説明されるが、個々の実装および例の特徴および要素を組み合わせることによって、さらなる実装および例が可能であり得る。
【0020】
例示的なスイッチトキャパシタDC-DC変換器
図1Aは、スイッチング制御を提供するための技法および/またはデバイス(例えば、プログラム可能スイッチング、スイッチタイミングなど)が利用され得る、例示的なdc-dc変換器回路100を示す概略図である。技法および/またはデバイスは、dc-dc変換器回路100の一部として、または別のシステムの一部として(例えば、dc-dc変換器100に対する周辺装置などとして)実装され得ることを理解されたい。図1Aに示されるdc-dc変換器は、入力DC電圧(VIN)を所望のより低い出力DC電圧(VOUT)に低減する、「バック」デバイスに関して示され、説明される。ただし、この図は説明をしやすくするためのものである。dc-dc変換器のためのスイッチング制御に関して本明細書において説明される技法およびデバイスは、バックデバイスに限定されず、本開示の範囲から逸脱することなく、他の種類のdc-dc変換器(例えば、ブースト、バック-ブーストなど)に適用され得る。本開示はスイッチトキャパシタの種類のdc-dc変換器を説明するが、様々な他の種類のdc-dc変換器も、本明細書において説明される技法および/またはデバイスを利用し得る。したがって、属の用語「dc-dc変換器」が全体を通じて用いられる。
【0021】
図1Aに示されるように、スイッチ(スイッチT1、T2、T3、およびT4など)ならびにエネルギー蓄積要素(エネルギー蓄積要素C2など)のネットワーク102を有する例示的なdc-dc変換器100が設計され得る。一実装では、スイッチT1~T4のうちの1つ以上がエネルギー蓄積要素C2の充電および/または放電を制御し得る。1つ以上のスイッチT1~T4は、電圧源(VINなど)からの充電、および負荷(負荷RLとして示される)への放電を可能にするためのタイミング方式に従って開き、閉じることによって、これを行うことができる。図1Aでは、説明しやするするために、4つのスイッチ(T1、T2、T3、およびT4)が示されている。様々な実装では、より多数のスイッチまたはより少数のスイッチをdc-dc変換器100において用いることもできる。
【0022】
負荷RLは、dc-dc変換器100によって電力を供給され、電流負荷を消費する、デバイス、システム、または同様のものを表し得る。例えば、負荷RLは、通信デバイス、マイクロコントローラ、または同様のもののサブシステムを表し得る。実装によっては、図1Aに示されるように、例示的なdc-dc変換器100は、負荷キャパシタンスCL(すなわち、バッファキャパシタ)と、負荷RLと並列の関連インピーダンスRCとを含み得る。このような実装では、エネルギー蓄積要素C2もエネルギーを負荷キャパシタンスCLへ放電し、負荷RLが利用可能な追加のエネルギーを生み出し、負荷変動を緩衝する。dc-dc変換器100の出力(VOUT)は、図1Aの例において、負荷RL間の電圧として示される。
【0023】
様々な実装では、スイッチT1~T4は、例えば、クロック信号を介して制御される、P型金属酸化物半導体(PMOS)および/またはN型金属酸化物半導体(NMOS)デバイスまたはトランジスタなどの、金属酸化物半導体(metal-oxide semiconductor、MOS)デバイスを用いて実装され得る。他の実装では、スイッチT1~T4は、ダイオード、他の種類のトランジスタ、または同様のものを用いて実装され得る。エネルギー蓄積デバイスC2は、キャパシタ、または同様のエネルギー蓄積デバイスを用いて実装され得る。
【0024】
例示的なdc-dc変換器において用いられるエネルギー蓄積要素C2の数は、入力源から出力負荷へのエネルギー伝達を最大化するために、入力電圧(VIN)と出力電圧(VOUT)との比に基づいて選定され得る。例示的な諸実装では、2:1の比(VIN≧2x VOUT)に対しては、1つのエネルギー蓄積要素C2で十分となることができ、3:1の比(VIN≧3x VOUT)に対しては、2つのエネルギー蓄積要素C2を用いることができる、などとなる。それに応じて、追加のエネルギー蓄積要素C2は追加のスイッチT1~T4を必要とし得る(例えば、図1Bのネットワーク104を参照)。
【0025】
2:1の比のdc-dc変換器100の実装を示す、図1Aの回路を用いて、例示的な動作を示すことができる。本記載の動作は図示の回路に限定されず、dc-dc変換器の様々な他の回路構成にも適用可能である。含まれるのは、エネルギー蓄積要素C2、C2の第1の端子に結合されたスイッチT1およびT3、ならびにC2の第2の端子に結合されたスイッチT2およびT4である。
【0026】
スイッチを開き、閉じることによって、C2の第1の端子は、スイッチT1により入力源VINの正端子に接続することができるか、またはスイッチT3によりバッファキャパシタCLの正端子(およびVOUT)に接続することができる。C2の第2の端子は、T4を介して入力源VINの負端子に、またはT2を介してバッファキャパシタCLの正端子(およびVOUT)に接続することができる。一実装では、スイッチT1~T4のうちの1つ以上は、事前設定された数のスイッチングサイクルの間、スイッチのうちの1つ以上の他のものが状態をトグルする一方で、固定された状態で休止するようにプログラム可能であることができる。
【0027】
エネルギー伝達は、後述されるように2つの異なるスイッチ構成を交互にとることによって得ることができる。第1の相では、T1およびT2は閉じており、T3およびT4は開いている。エネルギー蓄積要素C2はバッファキャパシタCLと直列になっている。エネルギーが供給源VINから出力へ流れ、C2を充電する。第2の相の間には、T3およびT4は閉じており、T1およびT2は開いている。エネルギー蓄積要素C2は、今度はバッファキャパシタCLと並列になっている。第1の相の間にエネルギー蓄積要素C2内に蓄積されたエネルギーはバッファキャパシタCLおよび負荷RLへ伝達される。
【0028】
一実装では、定常状態の間には、エネルギー蓄積要素C2およびバッファキャパシタCLは、VOUTと実質的に等しい電圧を有することになる。したがって、エネルギー蓄積要素C2とバッファキャパシタCLとが直列に接続されている第1の相の間には、VIN≧2x VOUTである時に、供給源VINからのエネルギー伝達が生じる。一実装では、VINが2x VOUTに近いほど、エネルギー伝達は効率が高くなる。
【0029】
本説明の目的のために、上述された2つの相の間には理想的な移行が存在すると仮定される。しかし、説明される技法はこの場合に限定されない。実装によっては、短絡状況を回避するために、追加の相が2つの相の間に用いられ得るであろう。追加の相を含むことは本開示の範囲内にとどまる。
【0030】
図1Bは、一実装に係る、複数のエネルギー蓄積要素(C2およびC3)ならびに複数のスイッチ(T1~T9)を含むネットワーク104を有する例示的なスイッチトキャパシタdc-dc変換器の回路図である。図1Bに示されるように、dc-dc変換器100のスイッチは、第1のスイッチング構成では、エネルギー蓄積要素C2およびC3が直列になるように構成し、第2のスイッチング構成では、エネルギー蓄積要素C2およびC3が並列になるように構成することができる。さらに、dc-dc変換器100のスイッチはまた、第3のスイッチング構成では、エネルギー蓄積要素C2およびC3が出力キャパシタCLと直列になるように構成することができ、第4のスイッチング構成では、エネルギー蓄積要素C2およびC3が出力キャパシタCLと並列になるように構成することができる。他の実装では、代替または追加の構成も可能である。
【0031】
様々な実装では、図1Aを参照して上述された動作原理が図1Bのdc-dc変換器100に適用される。追加的に、様々な実装では、少なくとも3つの動作モードが図1Bの回路を用いて実現され得る。
【0032】
図2Aを参照すると、第1の例示的な動作モードは以下のように説明される。第1のモードは3:1の比(VIN≧3x VOUT)を用いる。図2Aにおいて回路構成202として示される第1の相では、スイッチT6、T2、およびT5は閉じており、残りのスイッチは開いている。エネルギー蓄積要素C2およびC3はバッファキャパシタCLと直列になっている。エネルギーが供給源VINから出力VOUTへ流れ、C2およびC3を充電する。図2Aにおいて回路構成204として示される第2の相の間には、スイッチT1、T7、T9およびT4は閉じており、残りのスイッチは開いている。エネルギー蓄積要素C2およびC3は、今度はバッファキャパシタCLと並列になっている。第1の相の間にエネルギー蓄積要素C2およびC3内に蓄積されたエネルギーはバッファキャパシタCLへ伝達される。
【0033】
定常状態では、エネルギー蓄積要素C2およびC3ならびにバッファキャパシタCLは、VOUTとほぼ等しい電圧を有することになる。したがって、第1の相の間には、VIN≧3x VOUTである時に、供給源VINからのエネルギー伝達が達成される。VINが3x VOUTに近いほど、エネルギー伝達は効率が高くなる。
【0034】
図2Bを参照すると、第2の例示的な動作モードは以下のように説明される。第2のモードは2:1の比(VIN≧2x VOUT)を用いる。第2のモードでは、1つのエネルギー蓄積要素、例えば、C2のみが用いられる。図2Bにおいて回路構成206として示される第1の相では、スイッチT4およびT9は開いており、スイッチT8およびT5は閉じている。エネルギー蓄積要素C2はバッファキャパシタCLと直列になっている。エネルギーが供給源VINから出力VOUTへ流れ、エネルギー蓄積要素C2を充電する。図2Bにおいて回路構成208として示される第2の相の間には、スイッチT8およびT5は開いており、スイッチT4およびT9は閉じている。エネルギー蓄積要素C2は、今度はバッファキャパシタCLと並列になっている。第1の相の間にエネルギー蓄積要素C2内に蓄積されたエネルギーはバッファキャパシタCLへ伝達される。
【0035】
定常状態では、エネルギー蓄積要素C2およびバッファキャパシタCLは、VOUTとほぼ等しい電圧を有することになる。したがって、第1の相の間には、VIN≧2x VOUTである時に、供給源VINからのエネルギー伝達が達成される。VINが2x VOUTに近いほど、エネルギー伝達は効率が高くなる。
【0036】
代替的な実装では、第2のエネルギー蓄積要素C3に接続されたスイッチは必ずしも図2Bの場合のように全て開いている必要はない。第2のモードから第1のモードまたは第3のモードへの移行をより滑らかにするために、C3に結合されたスイッチの特別な(静的)構成を選択することができる。
【0037】
図2Cを参照すると、第3の例示的な動作モードは以下のように説明される。第3のモードもまた、2:1の比(VIN≧2x VOUT)を用いるが、両方のエネルギー蓄積要素C2およびC3を「プッシュプル」構成で用いる。
【0038】
第3のモードは第2のモードと概ね同等であるが、この場合には、両方のエネルギー蓄積要素C2およびC3が用いられる。図2Cにおいて回路構成210として示される第1の相では、C3が充電している間に、C2は放電している。図2Cにおいて回路構成212として示される第2の相では、C3が放電している間に、C2は充電している。第3のモードは、第2のモードと比べて2倍である電流能力を有する。
【0039】
上述のように、本説明の目的のために、上述された各モードの2つの相の間には理想的な移行が存在すると仮定される。しかし、説明される技法はこの場合に限定されない。実装によっては、短絡状況を回避するために、モードのうちの1つ以上における追加の相が2つの相の間に用いられ得るであろう。モードのうちの1つ以上における追加の相を含むことは本開示の範囲内にとどまる。
【0040】
追加的に、他の電圧比(1:1の比または逓昇比を含む)を用いるモード、追加のエネルギー蓄積要素および/またはスイッチを含むモード、ならびに同様の動作を有する他の構成要素を含むモードを含む、他の動作モードも本開示の範囲内に含まれる。さらに、回路図への追加の構成要素を有するdc-dc変換器も本開示の範囲内に含まれる。
【0041】
例示的なスイッチング制御
一実装では、スイッチT1~T9のうちの1つ以上は可変抵抗器と同様に機能することができる。例えば、1つ以上のスイッチが金属酸化物半導体(MOS)デバイスとして実装されるときには、MOSデバイスのゲート-ソース電圧はスイッチの可変インピーダンスと類似し得る。スイッチが開いている時には、スイッチのインピーダンスは非常に高い(例えば、メガオーム範囲)。逆に、スイッチが閉じている時には、スイッチのインピーダンス(「オン」抵抗(RON)としても知られる)は非常に低い。様々な実装では、スイッチについてのRONの値が、dc-dc変換器100が入力源から出力へ伝達することができる最大電流を決定する(図1Aおよび図1B参照)。
【0042】
図1Aに示されるとおりの単一のエネルギー蓄積要素C2を有する一実装では、全てのスイッチがRONの同じ値を有すると仮定すると、伝達することができる最大電流は次式のように表すことができる:
Imax=(VIN-2x VOUT)/2/(2 x RON) (1)
【0043】
例えば、VIN=3.3V、VOUT=1.5V、RON=0.5オームと仮定すると、図1Aの例示的なdc-dc変換器が負荷へ提供する最大電流は150mAである。要求される電流負荷が150mAよりも大きい場合には、所望の出力電圧VOUT=1.5Vを得ることが不可能になり得る。他方で、150mAを下回る全ての負荷電流に対しては、出力電圧VOUT=1.5Vを設定することが可能になり得る。代わりに、要求される電流負荷が50mAであると仮定すると、上述された2つの相の間のスイッチングによって、開ループにおいて得られる出力電圧は次式のように表すことができる:
Vout_ol=(VIN-Iload x 2 x (2 x RON))/2=1.6V (2)
【0044】
これは、要求される1.5Vよりも100mV大きい出力電圧を生み出す。それゆえ、後述されるスイッチインピーダンスを調整する技法を、必要に応じて出力電圧を制御するために用いることもできる。
【0045】
様々な実装では、スイッチT1~T9のうちの1つ以上のオン抵抗RONが選択されてもよく、その1つ以上のインピーダンススイッチT1~T9が調整される。一実装では、スイッチT1~T9のうちの1つ以上のインピーダンスは、dc-dc変換器100の出力に結合された負荷に基づいて調整可能である。
【0046】
一実装では、スイッチT1~T9のうちの少なくとも1つは、スイッチのインピーダンスを調整するように構成されたデジタル-アナログ変換器(digital-to-analog converter、DAC)302を含む。図3Aに、これが示されている。同図には、例えば、MOSトランジスタT1Aとして実装されたスイッチT1が示されている。ゲート-ソース電圧(VGS)が十分に大きい時には、トランジスタT1Aは「オン」になっている(すなわち、T1Aは導通状態になっている)。つまり、スイッチT1Aは閉じている。図3Aに示される例では、「オン」相のためのスイッチT1AのVGSは、DACがスイッチT1Aのインピーダンスを効果的に調整することによってプログラムされ得る。「オフ」相のためのスイッチT1AのVGSは、T1A MOSデバイスの閾値を下回る電圧である。
【0047】
dc-dc変換器100が50mAの要求電流負荷を有する、上述の例に戻り、スイッチT2(RON_2)のオン抵抗が0.5オームであると仮定すると、スイッチT1Aのオン抵抗(RON_1A)は、式(2)に次式を代入することによって決定され得る:
Iload=(VIN-2 x VOUT)/2/(RON_1A+RON_2)
RON_1Aについて解くと、次式を得る:
RON_1A=(VIN-2 x VOUT-2 x RON_2 x Iload)/(2 x Iload)
RON_1A=2.5オーム
【0048】
それゆえ、一実装では、MOSデバイスを用いて実装されたスイッチのインピーダンスは、以下の式(3)を用いて決定され得る:
【0049】
それゆえ、DAC302は、例えば、スイッチのVGSを調整し、スイッチのための所望のインピーダンスを生み出ために用いることができる。様々な実装では、dc-dc変換器100のスイッチT1~T9のうちのいくつかまたは全てを、スイッチのインピーダンスを調整するように構成されたDAC302を用いて実装することができる。実装によっては、スイッチT1~T9のうちの1つ以上を、デジタルワードに基づくインピーダンス調整のために選択することができる。さらに、スイッチの各々を、各々のそれぞれのスイッチに関連付けられた別個のデジタルワードに基づくインピーダンス調整のために選択することができる。これは、各スイッチがDAC302を用いて実装される時に当てはまり得る。デジタルワードは、事前設定された数のビットで構成され得る。ここで、ビットの各々は、スイッチを識別すること、スイッチのための所望のインピーダンスを表すこと、他の制御情報を伝えることなど等の、スイッチング情報を表し得る。実装によっては、デジタルワードはDAC302への入力(図3AにおけるVgs_digなど)であり得る。
【0050】
様々な実装では、上述された技法は、例えば、スイッチT1~T9の「オン」状態の間におけるスイッチT1~T9のコンダクタンス(G=1/RON)に適用されてもよい。
【0051】
別の実装では、図3Bに示されるように、スイッチ(スイッチT1、例えば)は、独立して制御可能な複数のサブスイッチ(T1_0~T1_31)を用いて実装され得る。一実装では、各々の個々のサブスイッチの最大インピーダンスは、スイッチ(例えばT1)の最大インピーダンスを、スイッチT1を表すために実装されたサブスイッチの数で除したものと実質的に同等である。別の実装では、サブスイッチのうちの1つ以上は重み付けされてもよい(例えば、2進重み付けされる)。
【0052】
実装によっては、サブスイッチ(T1_0~T1_31)は、図3Bに示されるように、並列に配置されている。他の実装では、サブスイッチは、直列配置および並列配置の組み合わせを含む、他の構成で配置されていてもよい。さらなる実装では、サブスイッチのサブセット(あるいはサブスイッチの全て)のインピーダンスまたはコンダクタンスは、上述されたように調整可能であり得る。図3Bの回路図は、例示および説明のために32個のサブスイッチ(T1_0~T1_31)を示している。代替的な実装では、より少数またはより多数のサブスイッチが利用されてもよい。用いられるサブスイッチの数は、dc-dc変換器100によって経験されるスイッチ損失の程度に影響を与え得る。例えば、より多数のサブスイッチを用いると、所与の負荷のために動作可能であるサブスイッチのより細かい調整が可能になり得る。したがって、より少数の、またはより小さなスイッチおよび/またはサブスイッチが用いられてもよく、その結果、スイッチもしくはサブスイッチによって使用される電力の低減、およびスイッチング損失の低減がもたらされる。
【0053】
一実装では、個々のサブスイッチまたはサブスイッチのグループ(サブセット)は、所与の負荷のために所与の時間に動作可能(すなわち、スイッチング状態またはトグリング状態)となるようにプログラムすることができ、他のサブスイッチは、開いた状態または閉じた状態で固定されている。例えば、より小さな負荷のためには、より大きな負荷よりも少数のサブスイッチが動作可能となり得る。それゆえ、様々な実装では、動作可能なサブスイッチの数の最適化を各スイッチングサイクルにおいて遂行することができる。さらなる実装では、スイッチおよび/またはサブスイッチは、例えば、デジタル論理またはデジタルコントローラを用いて動作のために選択され、負荷に基づいて、事前設定された数のスイッチングサイクルにわたってトグルするか、または固定されたままとどまるように設定され得る。
【0054】
上述の例に再び戻ると、スイッチT1の適切なVGSを設定することは、T1を表すサブスイッチ(T1_0~T1_31)のサブセットをオンにすることと実質的に同等である。例えば、RON_1A=2.5オームの同等物を達成するためには、(図3Bの場合のように)32個のサブスイッチのうちの6.4個のサブスイッチをオンにすることができる。ここで、各サブスイッチはRON_i=16オームのインピーダンスを有する。このサブスイッチ構成を得るために、6つのサブスイッチがオンにされてもよく、7つ目のサブスイッチは60/40%の比でもって交互にオンおよびオフにされてもよい。この技法は、ネットワーク102内のスイッチT1~T4のうちのいずれのものを用いても有効である。さらに、説明されたプログラミング技法は、2つ以上のスイッチが同時に動作させられることを考慮する際にも有効である。
【0055】
実装によっては、サブスイッチ(T1_0~T1_31)のうちの1つ以上、またはサブスイッチのサブセットのインピーダンスまたはコンダクタンスは、デジタルワードに基づいて調整可能であり得る。さらに、サブセットのサブスイッチ(T1_0~T1_31)の各々のインピーダンスまたはコンダクタンスは、各々のそれぞれのサブスイッチに関連付けられた別個のデジタルワードに基づいて調整可能であり得る。スイッチまたはサブスイッチのいずれかのための別個のデジタルワードの使用は、より良好な分解能を可能にする。例えば、同等のインピーダンスの代わりにプログラム可能なインピーダンスを有する別個のスイッチまたはサブスイッチを用いる場合、(それぞれのスイッチに関連付けられた)違ったインピーダンスを組み合わせることによって、より細かい分解能が達成され得る。この場合も先と同様に、動作可能なスイッチの数(および関連スイッチング損失)は負荷電流に基づき得る。
【0056】
例えば、図1Aの回路を参照し、デジタルワードが6ビットの数であると仮定すると、64個の異なる組み合わせが実現され得る。図3Bの場合のように、スイッチごとに32個の小区分を所与とし、Pが、特定の負荷を駆動するために必要とされるスイッチインピーダンスのデジタル表現である場合には、サブスイッチの数は以下のように選択され得る:
T1およびT3については→floor(P/2)
T2およびT4については→floor(P/2)+mod(P,2)
【0057】
一実装では、この符号化は単調であり、スイッチごとに32個のサブスイッチを用いて64個のインピーダンス値を提供する。本方法は、16個の小区分へさらに低減するように拡張することもできる:
T1については→floor(P/4)
T2については→floor(P/4)+(mod(P,4)>=1)
T3については→floor(P/4)+(mod(P,4)>=2)
T4については→floor(P/4)+(mod(P,4)>=3)
【0058】
一実装では、4つのスイッチT1~T4の4つのVGS値をプログラムするために、同じ技法を用いることもできる。追加の実装では、図1BのスイッチT1~T9、および同様のものなどの、他のスイッチをプログラムするために、同じ技法を用いることができる。
【0059】
例示的な実装
様々な実装では、上述された技法は、dc-dc変換器(dc-dc変換器100など)におけるスイッチングを制御するための他の技法および/またはデバイスと併せて用いられてもよい。例えば、一実装では、システム(図4のシステム400など)は、上述されたように、調整可能なインピーダンスまたはコンダクタンスを有するスイッチT1~T4(またはT1~T9)を有するスイッチングネットワーク102(または104)を有する、dc-dc変換器100を含み得る。dc-dc変換器100は図4において明示的に示されていないが、上述された(および図1図3Bに示された)とおりの構成要素、あるいは同様の構成要素を含むと理解される。実装によっては、dc-dc変換器100は、図4のシステム400に示される構成要素のうちのいくつかまたは全てを含む。
【0060】
システム400は、スイッチングネットワーク102または104の、スイッチT1~T9のうちの1つ以上、またはスイッチT1~T9の全てのインピーダンスまたはコンダクタンスを調整するように構成されたデジタルコントローラ402を含み得る。様々な実装では、デジタルコントローラ402は、dc-dc変換器100の出力に結合された負荷RLに基づいて、スイッチT1~T9のうちの1つ以上のインピーダンスまたはコンダクタンスを調整するように構成され得る。一実装では、デジタルコントローラ402は、上述されたとおりの、スイッチのインピーダンスまたはコンダクタンスを調整するためのデジタルワードを発生または提供することができる。デジタルコントローラ402は、デジタルワード内に組み込まれる、スイッチ識別、1つ以上のスイッチのインピーダンスもしくはコンダクタンス情報、および同様のものなどの情報を発生することができる。別の実装では、デジタルコントローラ402は、MOSトランジスタとして実装された1つ以上のスイッチのゲート-ソース電圧を調整するように構成されている。
【0061】
様々な実装では、システム400は、dc-dc変換器100の出力電圧をデジタルコントローラ402内へフィードバックするように構成されたフィードバックループ406を含み得る。例えば、フィードバックループ406は、dc-dc変換器100の出力電圧に関する誤差補正をもたらし得る。一実装では、フィードバックループ406はアナログ-デジタル変換器(analog to digital converter、ADC)408を介して出力電圧をデジタルコントローラ402へ供給する。例えば、出力電圧VOUTは、ADC408によって、デジタルコントローラ402による受電に備えてサンプリングされてもよい。代替的な一実装では、コンパレータがADC408の代わりに用いられる。ここで、コンパレータは、例えば、1ビットの分解能を有し得る。一実装では、デジタルコントローラ402は、スイッチT1~T9のうちの1つ以上の、それらの「オン」相におけるインピーダンスまたはコンダクタンスの値を算出する。別の実装では、デジタルコントローラは、dc-dcコントローラ100のための動作モード(上述された第1、第2、または第3の動作モードなど)を算出する。
【0062】
図4に示されるように、システム400はまた、デジタル駆動信号発生器404も含み得る。一実装では、インピーダンス/コンダクタンスの値、およびモードは、含まれる場合には、スイッチT1~T9へ出力される駆動信号(デジタルワード)を発生する信号発生器404に入る。一実装では、信号発生器404はまた、充電相(Tcharge)および放電相(Tdischarge)の継続時間もパラメータとして読む。一実装では、信号発生器404はインピーダンス/コンダクタンスおよびモード情報に基づいて充電相のためのスイッチ構成を発生し、プログラムされた時間Tcharge待ち、インピーダンス/コンダクタンスおよびモード情報に基づいて放電相のためのスイッチ構成を発生する。次に、信号発生器404は、サイクルを繰り返す前に、プログラムされた時間Tdischarge待つ。
【0063】
一実装では、継続時間TchargeおよびTdischargeは少なくとも一時的に固定され、dc-dc変換器100に、その時間の間、固定されたスイッチング周波数(1/(Tcharge+Tdischarge))で動作させる。異なるスイッチング周波数へ変更するには、Tchargeおよび/またはTdischargeの値を変更することで十分である。追加的に、TchargeもしくはTdischargeまたはその両方をランダムに変調することは周波数拡散効果を生じさせる。それゆえ、一実装では、デジタルコントローラ402は、1つ以上のエネルギー蓄積キャパシタ(例えば、C2およびC3)の充電時間および/または放電時間に基づいてdc-dc変換器100のスイッチング周波数を決定するように構成されている。
【0064】
一実装では、インピーダンス/コンダクタンス情報および/またはモード情報はスイッチングサイクルごとに(例えば、充電相を開始する前に)1度変化する。他の実装では、インピーダンス/コンダクタンス情報およびモード情報は他の間隔で変化し、例えば、オーバーサンプリングまたはアンダーサンプリングをシステム400において用いることができる。一実装では、デジタル駆動信号発生器404は情報更新をスケジュールする。別の実装では、信号発生器404はADC408のサンプリングイベントをスケジュールする(クロック分周器機能)。様々な実装では、ADC408は、スイッチング周期ごとに(例えば、充電相および放電相の開始直前、あるいは充電相および放電相の終了時に)2度サンプリングするためにトリガすることができる。代替的な実装では、オーバーサンプリングまたはアンダーサンプリングを用いることができる。
【0065】
図5のブロック図は、様々な実装に係る、デジタルコントローラ402内に含まれ得る例示的な機能ブロックを示す。1つまたはいくつかのADC408のサンプルから、ブロック502において示されるように、誤差情報が発生され得る。例えば、誤差信号を発生するために、スイッチング周期ごとの2つ以上のサンプルを合計することができるであろう。誤差信号は、出力電圧がdc-dc変換器100の目標電圧からどれだけ離れているのかを指示する。
【0066】
一実装では、誤差情報はPIDコントローラ504に提供される。一実装では、デジタルコントローラ402は、PIコントローラを含むように単純化することができる(「D」係数は0に等しい)。係数P、I、Dは、dc-dc変換器100またはシステム400の動作条件に従って係数を適合させる、外部ブロックによって提供されてもよい。PIDコントローラ504は、固定された係数P、I、D(通例、D=0)のセットを受け取り、選択されたモード(例えば、第1、第2、もしくは第3の動作モード)および動作条件に従ってそれらを適合させる。一実装では、負荷電流(例えば、1つの動作条件)は積分器506から読み出され、PIDコントローラ504に渡される。
【0067】
PIDコントローラ504は、受け取られた情報に基づいてコンダクタンスの値を更新し、「オン」にされるスイッチをプログラムするためのコンダクタンス値を出力する。発生されたコンダクタンス値は、全てのスイッチ、またはスイッチ(もしくはサブスイッチ)のうちの選択されたもの(サブセット)に適用することができる。
【0068】
含まれる場合には、モード選択ブロック508が、インピーダンス/導通情報をスイッチへ提供する前に、モード変更が所望されるかどうかを決定する。実装によっては、モード変更は、要求負荷電流が大きい時に決定されるか(例えば、第2のモードから第3のモードへ、または第1のモードから第2のモードへの変更を決定する)、あるいは負荷電流が非常に低いため、より良好な効率を有するモードを選択することができる時に決定される(例えば、第3のモードから第2のモードへ、または第2のモードから第1のモードへの変更を決定する)。何らかのモード変更の結果、インピーダンス/コンダクタンス情報、およびPID情報の積分部分は、出力電圧における過渡状態を回避するために、スケール変更される。
【0069】
例示的な一実装では、dc-dc変換器100は第2のモードで動作していてもよく、全てのスイッチT1~T9のコンダクタンスがプログラムされてもよい。コンダクタンスGから出力電圧VOへの、システム400の小信号伝達関数Pを次式に従って算出することができる:
G=Gdc+g (Gdc=定常状態、g=導通変動)
Vo=VOUT+vo (VOUT=定常状態、vo=電圧変動)
R=VOUT/Iload (負荷抵抗)
Gdc=4*Iload/(Vi-2*VOUT)
P(s)=vo(s)/g(s)=K0 x (Vi-2*VOUT)/2/((Gdc+2/R)+s*C) (伝達関数)
【0070】
伝達関数P(s)は、折点周波数およびDCゲインが負荷電流に従って変化していく一次系である。様々な実装では、システム400のDCゲインは、負荷電流に、および最終的にGdcに反比例する。高周波数の場合には、積分挙動は負荷電流に依存しない。
【0071】
したがって、システム400の多くの適用物に対しては、PIコントローラで十分である。実装によっては、固定された係数セットを用いることができるが、他の実装では、効率を改善するために、依存性が負荷電流から除去されてもよい。例えば、「P」係数は一定のまま留まってもよいが、その一方で、「I」係数が適合される。一実装では、これは、積分成分「I」自体によって近似することができる、負荷電流に正比例する、Gdcを観察することによって達成され得る。大きなGdcに対しては、大きな「I」係数を用いることができる。小さなGdcに対しては、小さな「I」係数を用いることができる。一実装では、Gdc(または同等に、積分器506のレジスタの内容)を、「I」係数をスケールするために直接用いることができる。この係数適合を用いることによって、ブロック510において示されるように、デジタルコントローラ402は、負荷電流が変化した時に、システム400全体の開ループ伝達関数を一定に維持することができる。様々な実装では、デジタルコントローラ402は、フィードバックループから受け取られた情報に基づいて開ループ伝達関数を一定に維持する。
【0072】
様々な実装では、係数に関しても、モード変更を考慮することができる。例えば、第2のモードから第3のモードへ変更する際に、dc-dc変換器100はそのゲインを2倍にする。したがって、同じ動的パフォーマンスを維持するために、「P」係数および「I」係数は両方とも半減されてもよい。代替的に、PIコントローラの出力が第2のモードにおいて半減され、係数は変更されないままであってもよい。
【0073】
スイッチT1~T9のうちの1つ以上が、サブスイッチのセットを用いて実装された一実装では、デジタル駆動信号発生器404は各々の個々のサブスイッチを駆動することができる。インピーダンス/コンダクタンス情報は、「オン」にされる必要があるサブスイッチの特定の数に翻訳される。コンダクタンスが大きいほど、「オン」にされる必要があるサブスイッチの数は多くなる(これは、デジタルコンダクタンス表現の温度計変換と呼ばれ、図8Aおよび図8Bに示される)。
【0074】
一実装では、システム400は、パルス周波数変調(pulse frequency modulation、pfm)方法を用いて、可変スイッチング周波数で動作してもよい。例えば、デジタルコントローラ402がシステム400内に含まれてもよく、この場合、デジタルコントローラは、dc-dc変換器100の出力に結合された負荷に基づいて、スイッチT1~T9のうちの1つ以上のスイッチタイミングを変調するように構成されている。一例では、dc-dc変換器100の電流負荷が低くなるほど、システム400の平均スイッチング周波数は低くなる。より低い平均スイッチング周波数は、スイッチが周期ごとに動作する回数がより少ないため、概して,より低い平均スイッチング損失に等しい。概して、負荷電流が高いほど、放電相は短くなる。それゆえ、概して、大きな負荷に対しては、スイッチング周波数はより大きくなり、小さな負荷に対しては、スイッチング周波数はより小さくなる。
【0075】
しかし、様々な実装では、ランダムに発生された値である可変スイッチング周波数が利用されてもよい。この技法は、システム400の放射スペクトルに対する拡散効果を有すると見なされ得る。したがって、一実装では、デジタルコントローラ402は、パルス周波数変調を用いて、ランダムに変化する周波数に従ってdc-dc変換器100を調節するように構成されている。ランダムに変化する周波数は、以下の技法のうちの1つ以上を用いて実装され得る。
【0076】
(1)一実装では、エネルギー蓄積要素C2およびC3のうちの1つ以上の充電相継続時間が、ランダム間隔を最小充電相継続時間に追加することによってランダムに変調される。例えば、一実装では、乱数発生器602が、ランダム間隔値を発生するように構成されており、デジタルコントローラ402は、エネルギー蓄積要素C2およびC3のうちの1つ以上の充電継続時間をランダム間隔値だけ増大または減少させるように構成されている。(2)別の実装では、エネルギー蓄積要素C2およびC3のうちの1つ以上の最小放電相継続時間が、ランダム間隔を最小放電相継続時間に追加することによってランダムに変調される。例えば、一実装では、乱数発生器602が、ランダム間隔値を発生するように構成されており、デジタルコントローラは、エネルギー蓄積要素C2およびC3のうちの1つ以上の放電継続時間をランダム間隔値だけ増大または減少させるように構成されている。(3)さらなる実装では、スイッチT1~T9のうちの1つ以上のコンダクタンスが、例えば、デジタルコントローラ402によって、ランダムに選択され、調整される。例えば、入力源VINから出力バッファキャパシタCLおよび負荷RLへ提供される充電量はスイッチング周期ごとに変化することができ、したがって、放電相はスイッチング周期ごとに異なることができ、その結果、スイッチング周期はスイッチングサイクルごとに変化することができる。代替的な実装では、上述の技法のうちの1つ以上が同時に利用されてもよく、あるいは別の技法が、同じまたは同様の結果を達成するために用いられてもよい。さらに、様々な実装では、上述の技法のうちの1つ以上がスイッチング周期ごとに1度、または別のタイミング方式に従って適用されてもよい。
【0077】
図6は、ランダムに変化する周波数の動作に基づく例示的な一実装に係る、dc-dc変換器のためのデジタルコントローラ100のブロック図である。一例では、スイッチング周期ごとに1度(例えば、コンパレータがトリガした時に)、または別の適切な間隔で、乱数のセット、例えば、Rdischarge、Rcharge、R1、R2、…Rmが乱数発生器602によって発生される。RdischargeおよびRchargeは、上述の選択肢(1)および(2)を実施するために用いることができる。残りの乱数(R1、R2、…Rm)は、上述の選択肢(3)において説明されるように、dc-dc変換器を構成するスイッチT1~T9のためのコンダクタンス値を発生するために用いられる。したがって、一実装では、デジタルコントローラ402は、乱数発生器602によって発生されたランダム値に基づいて1つ以上のスイッチT1~T9のスイッチタイミングを変調するように構成されている。
【0078】
デジタルコントローラ402はいくつかの追加の特徴を実装することもできる。含まれる場合には、モード選択およびコンダクタンス変調ブロック604は、負荷電流に基づいて、どの動作モードで動作するべきであるかを決定することができる。
【0079】
一実装では、負荷電流は、放電相の平均時間を観察することによって監視することができる。デジタルコントローラ402はまた、連続したコンパレータトリガイベントの間の時間を測定するために実装されたカウンタ606も含み得る。情報は、例えば、ローパスフィルタ(図示されていない)へ送られてもよく、出力は、特定のモードで動作するdc-dc変換器100の電流能力の指示を与える。例えば、測定された放電相が最小プログラム値Tdischargeに近づくと、これは、dc-dc変換器100が動作モードのためのその最大電流能力の近くで動作しており、(例えば、第2のモードから第3のモードへ、または第1のモードから第2のモードへの)モード変更が推奨され得ることを指示し得る。他方で、測定された放電相がより長くなると、これは、動作モードが過度の電流を提供しており(この条件はリップルの増大を生じさせ得る)、(例えば、第3のモードから第2のモードへ、または第2のモードから第1のモードへの)モード変更が推奨されることを指示し得る。
【0080】
スイッチT1~T9のうちの1つ以上がサブスイッチのセットとして実装された一実装では、デジタル駆動信号発生器404は各々の個々のサブスイッチを駆動し得る。モード選択およびコンダクタンス変調ブロック604から出力されたコンダクタンス情報は、特定の数のサブスイッチが「オン」にされるべきであるとの指示(すなわち、デジタルワード)に翻訳されてもよい。したがって、何個のサブスイッチが次のスイッチング周期内でオンにされることになるかをランダムに決定することによって、サブスイッチのセットとして実装されたスイッチT1~T9のコンダクタンス(G1、G2、G3…GN)のランダム変調を得ることができる。
【0081】
一実装では、スイッチT1~T9のランダムコンダクタンスを決定するために用いられるランダム値を形作るために、負荷電流の観察を用いることができる。例えば、どのスイッチT1~T9も32個のサブスイッチを含む場合には、負荷電流が低い時には、1~16以内の乱数を有し、負荷電流が高い時には、16~32以内の乱数を有することが好都合になり得るであろう。
【0082】
例示的なスロープ制御
様々な実装では、充電および/または放電相のスロープが変更されてもよく、エネルギー蓄積要素C2およびC3のうちの1つ以上の、充電から放電へ、および/または放電から充電への移行を滑らかにする。スイッチングネットワーク102または104内を流れる電流量は、スイッチT1~T9のうちの1つまたは全てのコンダクタンスGのための適切なデジタル値を選択することによって調節される。代替的な諸実装では、最大コンダクタンスGmaxを有する1つ以上のスイッチT1~T9のコンダクタンスGのデジタル選択は、図7Aおよび図7Bに示されるとおりの少なくとも2つの仕方で遂行することができる。他の実装では、他の技法が、同様の結果を達成するために用いられ得る。
【0083】
図7Aは、一実装に係るマルチプレクサ(mux)702およびデジタル-アナログ変換器(DAC)302を用いるdc-dc変換器100の一部分の概略図である。スイッチT1Aのオーバードライブ電圧(VGS)は、図3に関して上述されたように、DAC302を介して調節される。DAC302は、dc-dc変換器100の出力に結合された負荷に基づいて、コンダクタンス調整信号をスイッチT1Aへ出力するように構成することができるため、スイッチ制御要素である。
【0084】
追加的に、スイッチタイミングのスロープ制御は、mux702を用いて達成されてもよく、mux702は、スイッチT1Aへ出力されるコンダクタンス調整信号の変化率を制御するように構成されている。一実装では、mux702は、エネルギー蓄積要素C2またはC3の充電相および/または放電相の変化率を調節するように構成されている。mux702は、クロックパルスに従ってスロープ制御信号704をスイッチ制御要素(例えば、DAC302)へ出力するように構成され得る。
【0085】
一実装では、図7Aに示されるように、mux702は、コンダクタンス値(すなわち、Vgs_dig、デジタルワード)を表す信号、およびコンダクタンス値の分数を表す1つ以上のスケールされた信号を受け取る。スケールされた信号は、図7Aにおいて、3/4、1/2、および1/4として示されており、コンダクタンス値Vgs_digのそれらの分数を表す。代替的な諸実装では、コンダクタンス値Vgs_digの他の分数部分(例えば、1/3、2/3など)が代替的または追加的に用いられてもよい。スケールされた信号は、コンダクタンス値(Vgs_dig)を表す信号を受け取り、1つ以上のスケールされた信号をmux702へ出力するように構成されたデジタルスケーリング要素(例えば、デジタル論理など)によって発生され得る。
【0086】
mux702は、1つ以上のスケールされた信号およびコンダクタンス信号(Vgs_dig)を含む、スロープ制御信号704を、大きさの昇順または降順のどちらかで、スイッチ制御要素(すなわち、DAC302)へ出力するように構成されている。例えば、mux702は、以下の順序:1/4、1/2、3/4、およびVgs_digで信号を出力することができる。さらに、mux702は同様に逆の順序で信号を出力することができる。一実装では、mux702は、図7Aにおける706において示されるように、スイッチシーケンスの立ち上がりエッジ上では昇順で信号を出力することができ、図7Aにおける708において示されるように、スイッチシーケンスの立ち下がりエッジ上では降順で信号を出力することができる。このように、スイッチのコンダクタンスは所望の時間にわたって0から目標コンダクタンス値まで(またはその逆に)ゆっくりと増大させられる。その結果、エネルギー蓄積キャパシタC2および/またはC3上の電流は、それらが充電するにつれて(および放電につれて)、0から要求値まで(またはその逆に)滑らかに増大することになる。上述されたとおりの、本明細書において説明された技法は、所望に応じて、単一のスイッチ、またはスイッチT1~T9のうちのいくつかもしくは全てに適用され得る。
【0087】
代替的な一実装では、図7Bに示されるように、スロープ制御要素はローパスフィルタ710を含む。ローパスフィルタ710は、コンダクタンス調整信号(Vgs_dig)を受け取り、滑らかにされたスロープ制御信号712をスイッチ制御要素(すなわち、DAC302)へ出力するように構成されている。例えば、ローパスフィルタ710は、714において示されるVgs_dig信号を受け取り、716において示される滑らかにされた信号を出力するように構成され得る。上述のように、滑らかにされた信号716は、スイッチ動作、ならびにそれゆえ、エネルギー蓄積キャパシタC2および/またはC3の充電および放電を段階化する。
【0088】
他の実装では、スイッチT1~T9のうちの1つ以上のコンダクタンスは、1つ以上のスイッチT1~T9をサブスイッチのセットで置換し、オンおよび/またはオフにされるべきサブスイッチのサブセットを選択することによって、設定される。デジタルスロープ制御は、図8Aおよび図8Bに示されるように利用され得る。
【0089】
図8Aおよび図8Bに示される例では、32個のサブスイッチ(T1_0~T1_31)が用いられる。上述されたように、より少数またはより多数のサブスイッチも用いられ得る。したがって、サブスイッチのセットのサブスイッチの各々は、サブスイッチによって置換されたスイッチの最大コンダクタンスをセット内のサブスイッチの数によって除したものと実質的に同等である最大コンダクタンスを有する。デジタルコントローラ402が特定のコンダクタンス値Gを要求すると、値は「温度計符号化され」および/または2進重み付けされ、各々の個々のサブスイッチT1_0~T1_31に関連付けられた制御線802に対応付けられる。この符号化は、スイッチを識別し、識別されたスイッチのためのスイッチ構成を指示するため、上述されたデジタルワードと呼ぶことができる。デジタルワードのビットは制御線および個々のサブスイッチに関連付けられている。例えば、図8AにおいてG=19である場合、「スイッチT1」が「オン」にされるべきである時には、下から上へ最初の19本の線は1と等しく設定され、線の残りのものは0と等しいままとどまる。例えば、1と等しい制御線802を有するサブスイッチ(T1_0~T1_31)は閉じてもよく、その一方で、0と等しい制御線802を有するサブスイッチ(T1_0~T1_31)は開いたままとどまる。
【0090】
一実装では、スロープ制御は、スロープ制御要素(例えば、デジタルコントローラ402、デジタル駆動信号発生器404など)が各制御線802上に(例えば、1クロックサイクル分の)異なる遅延要素804を挿入することによって得られる。上述の例では、1番目の線802は1つの遅延要素804、2番目は2つ、3番目は3つ、4番目は4つの遅延要素804を挿入されている。図8Aに示される例では、5番目の線において、遅延要素804は、方式1、2、3、4、1、2、3、4、…などを繰り返すことによって挿入される。
【0091】
挿入された遅延要素804に基づいて、サブスイッチT1_0~T1_31のスイッチ動作はスイッチングサイクルのたびに異なる量遅延されることになる。G=19である例では、1サイクル後に5つのサブスイッチがオンにされ、2サイクル後に5つ、3サイクル後に5つ、最後に4サイクル後に4つがオンにされる。この方式は図7Aの実装と概ね同等である。時間が経つにつれて、コンダクタンスGは滑らかに増大させられ、その結果、スイッチ内を流れる電流も滑らかに増大させられる。
【0092】
一実装では、G=19の線は、遅延要素804を含む、上述のとおりの段階的方式で、関連付けられたスイッチをオフにするために再び元の0に設定される。この場合も先と同様に、1サイクル後に5つのサブスイッチがオフにされ、2サイクル後に5つ、3サイクル後に5つ、最後に4クロックサイクル後に4つがオフにされる。
【0093】
代替的な一実装では、図8Bに示されるように、ローパスフィルタ806が遅延要素の代用として用いられ、スロープ制御要素の役割を果たす。図7Bを参照して上述されたように、ローパスフィルタ806はコンダクタンス調整信号(Vgs_dig)を受け取り、滑らかにされたスロープ制御信号808をスイッチ制御要素(例えば、サーマルエンコーダ810)へ出力する。サーマルエンコーダ810は、dc-dc変換器100の出力に結合された負荷に基づいて、サブスイッチT1_0~T1_31のセットのうちの1つ以上のスイッチ状態を制御するように構成されている。例えば、ローパスフィルタは、812において示されるVgs_dig信号を受け取り、814において示される滑らかにされた信号を出力するように構成され得る。上述のように、滑らかにされた信号814は、スイッチ動作、ならびにそれゆえ、エネルギー蓄積キャパシタC2および/またはC3の充電および放電を段階化する。それゆえ、ローパスフィルタ806は、サブスイッチT1_0~T1_31のセットのうちの1つ以上のスイッチ状態の変化率を制御するように構成されている。追加的に、ローパスフィルタ806は、エネルギー蓄積要素C2またはC3の充電相および/または放電相の変化率を調節するように構成されている。
【0094】
図9は、一実装に係るスロープ制御技法を示す2つの波形の例である。波形は、充電相(正)および放電相(負)の間に図1Aのエネルギー蓄積要素C2内を流れる電流を示す。上の図902は、スロープ制御が用いられず、スイッチT1~T4が直ちにオンおよびオフにされるシナリオを表す。下の図904は、スロープ制御が用いられるシナリオを表す。図904において窺えるように、充電相から放電相への移行(およびその逆)はより滑らかである。それゆえ、スロープ制御技法は、エネルギー蓄積要素C2およびC3の即時の相変化を低減するようにスイッチング特性を変更する。
【0095】
代表的プロセス
図10Aは、dc-dc変換器(dc-dc変換器100など)のためのスイッチング制御を実施するための代表的プロセス1000を示す。スイッチング制御がdc-dc変換器の出力を調節するため、これは、また、dc-dc変換器100を調節することとしても説明される。例示的なプロセス1000は、負荷電流の大きさに基づいてスイッチング特性を変更することを含む。スイッチング特性は、dc-dc変換器におけるスイッチング損失を低減、最小化、または解消するために変更され得る。プロセス1000は図1図9を参照して説明される。
【0096】
ブロック1002において、プロセスは、複数のスイッチ(スイッチT1~T4など)をエネルギー蓄積デバイス(エネルギー蓄積デバイスC2など)および出力キャパシタ(バッファキャパシタCLなど)に対して配置することを含む。一実装では、プロセスは、複数のスイッチが第1のスイッチング構成になっている時には、エネルギー蓄積デバイスが出力キャパシタと直列になるように、および複数のスイッチが第2のスイッチング構成になっている時には、エネルギー蓄積デバイスが出力キャパシタと並列になるように、複数のスイッチをエネルギー蓄積デバイスに結合することを含む。例えば、少なくとも2つのスイッチがエネルギー蓄積デバイスの各端子に結合されていてもよい。各端子におけるスイッチのうちの一方を開き、他方を閉じることによって(第1の構成)、エネルギー蓄積デバイスは出力キャパシタと直列になる。各端子におけるスイッチのうちの他方を開き、第1のものを閉じることによって(第2の構成)、エネルギー蓄積デバイスは出力キャパシタと並列になる。
【0097】
一実装では、プロセスは、デジタルワードに基づいて、複数のスイッチのうちのどのスイッチが開いた状態になり、複数のスイッチのうちのどのスイッチが閉じた状態になるのかを決定することを含み得る。デジタルワードは、例えば、スイッチ識別、所望のスイッチインピーダンス、および同様のものなどのスイッチング情報を表すように構成されたビット列を含み得る。一実装では、プロセスはまた、出力キャパシタに結合された負荷に基づいて、複数のスイッチの第1のサブセットを、開いた状態になるよう選択し、複数のスイッチの第2のサブセットを、閉じた状態になるよう選択することも含み得る。
【0098】
様々な実装では、プロセスは、出力キャパシタに結合された負荷が低減されると、複数のスイッチのうちの1つ以上を、固定状態になるよう選択することを含む。これは、低減された負荷のために動作可能なスイッチの数を低減する効果を有する。逆に、プロセスはまた、出力キャパシタに結合された負荷が増大させられると、複数のスイッチのうちの1つ以上を、スイッチングサイクルごとに状態を変更するよう選択することも含むことができ、かくして、動作可能なスイッチの数をより大きな負荷のために増大させる。したがって、個々のスイッチは、負荷電流の変化に基づいて、スイッチングサイクルごとに動作に「割り込ませられる」か、または「除外され得る」。
【0099】
一実装では、プロセスは、複数のスイッチの第3のサブセットを、事前設定された数のスイッチングサイクルにわたって固定状態になるよう選択することを含むことができ、かくして、事前設定された数のスイッチングサイクルにわたってスイッチの数を維持する。
【0100】
一実装では、プロセス1000は、デジタルワードに基づいて複数のスイッチのうちの1つ以上をインピーダンス調整のために選択することを含む。様々な実装では、単一のデジタルワードまたは複数のデジタルワードが利用され得る。追加的に、別個のデジタルワードが個々のスイッチに関連付けられ得る。
【0101】
ブロック1004において、プロセスは、出力キャパシタに結合された負荷に基づいて複数のスイッチのうちの1つ以上のインピーダンスを調整することを含む。一実装では、スイッチのインピーダンスを調整することは、MOSデバイスのためのゲート-ソース電圧を選択することを含む。別の実装では、インピーダンスを調整することは、サブスイッチのサブセットを、オンまたはオフになるよう選択することを含む。ここで、サブスイッチは全体で単一のスイッチまたはスイッチのセットを表す。それゆえ、スイッチの全体セットのインピーダンスは、セットによって表されるスイッチまたはスイッチ群のインピーダンスと実質的に等しくなり得る。
【0102】
図10Bは、dc-dc変換器(dc-dc変換器100など)のためのスイッチング制御を実施するための別の代表的プロセス1010を示す。スイッチング制御がdc-dc変換器の出力を調節するため、これは、また、dc-dc変換器100を調節することとしても説明される。例示的なプロセス1010は、負荷電流の大きさに基づいてスイッチング特性を変更することを含む。スイッチング特性は、dc-dc変換器におけるスイッチング損失を低減、最小化、または解消するために変更され得る。プロセス1010は図1図9を参照して説明される。
【0103】
ブロック1012において、プロセスは、複数のスイッチ(スイッチT1~T9のうちのいくつかまたは全てなど)をdc-dc変換器(dc-dc変換器100など)のエネルギー蓄積キャパシタ(エネルギー蓄積要素C2およびC3のうちの1つ以上など)に結合することを含む。スイッチは、エネルギー蓄積キャパシタの充電および放電を制御するように構成されている。一実装では、スイッチのうちの1つ以上は多数のサブスイッチで構成されている。さらなる実装では、プロセスは、1つ以上のスイッチのコンダクタンスを調整することを含む。これは、(スイッチを構成する)サブスイッチのうちのランダムな個数を、閉じた状態になるよう選択することによって達成され得る。
【0104】
別の実装では、プロセスは、dc-dc変換器の出力に結合された負荷に基づいて、事前に設定された範囲内のサブスイッチのうちのランダムな個数を選択することを含む。例えば、スイッチT1~T9のうちの1つが32個のサブスイッチを含む場合には、負荷電流が低い時には、1~16以内のランダムな個数を選択することができるか、または負荷電流が高い時には、16~32以内のランダムな個数を選択することができる。
【0105】
一実装では、プロセスは、ランダムな間隔値に基づいてエネルギー蓄積キャパシタの充電継続時間を調整することを含む。これは、充電継続時間をランダムな間隔値だけ長くするか、または短くすることを含み得る。代替的な一実装では、プロセスは、ランダムな間隔値に基づいてエネルギー蓄積キャパシタの放電継続時間を調整することを含む。この場合も先と同様に、これは、放電継続時間をランダムな間隔値だけ長くするか、または短くすることを含み得る。
【0106】
一実装では、プロセスは、エネルギー蓄積キャパシタの平均放電継続時間を測定し、測定値をフィルタに通してdc-dc変換器の負荷電流を決定することを含む。例えば、カウンタが、平均放電継続時間を測定するために用いられてもよく、カウンタにおけるカウントが、事前に設定された閾値を満たすと、デジタルコントローラがスイッチのうちの1つ以上を調整してもよい。したがって、事前に設定された閾値は負荷電流レベルを表してもよい。
【0107】
ブロック1014において、プロセスは、dc-dc変換器の出力に結合された負荷に基づいて複数のスイッチのうちの1つ以上のスイッチタイミングを変調することを含む。
【0108】
一実装では、プロセスは、パルス周波数変調(PFM)技法を用いて、ランダムに変化する周波数に従ってdc-dc変換器を調節することを含む。例えば、ランダム値をエネルギー蓄積キャパシタの充電継続時間および/または放電継続時間に追加することによって変調周波数を変更することを含む。別の実装では、プロセスは、ランダム値に基づいて複数のスイッチのうちの1つ以上のコンダクタンスを調整することを含む。これは、ランダム変数の値をコンダクタンスに加算すること、またはコンダクタンスから減算することを含み得る。
【0109】
プロセス1000および1010が説明される順序は、限定として解釈されることを意図されておらず、プロセスまたは代替プロセスを実施するために、任意の数の上述のプロセスブロックを任意の順序で組み合わせることができる。追加的に、個々のブロックが、本明細書において説明される主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、プロセスから削除されてもよい。さらに、プロセスは、本明細書において説明される主題の範囲から逸脱することなく、任意の好適なハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせの形態で実施することができる。
【0110】
代替的な実装では、他の技法が様々な組み合わせでプロセス1000および1010内に含まれてもよく、本開示の範囲内にとどまる。
【0111】
図11は、充電相および放電相の間におけるエネルギー蓄積要素を通る電流経路を示す例示的なスイッチトキャパシタDC-DC変換器の概略図である。図11のスイッチおよび他の構成要素のネットワークは、図1Aに関して上述されたものと同じである。図11の例は、入力源Vinの間に接続された入力キャパシタCinを示す。
【0112】
概要として、充電相の間は、スイッチT1はエネルギー蓄積要素C2の第1の端子を入力源Vinに接続し、その一方で、スイッチT2はC2の第2の端子をバッファキャパシタCの正端子に接続する。図1Aおよび図11の例では、エネルギー蓄積要素C2はキャパシタである。充電相の間は、充電電流1102が、スイッチT1を通り、C2の第1の端子から、C2を通り、C2の第2の端子外へ出て行く。充電電流1102は、スイッチT2を通り、バッファキャパシタCの正端子へ行く。
【0113】
放電相の間は、スイッチT3およびT4が閉じてもよく、エネルギー蓄積要素C2内に蓄積されたエネルギーがバッファキャパシタCへ伝達される。放電相の間は、放電電流1104が、スイッチT4を通り、C2の第2の端子から、C2を通り、C2の第1の端子外へ出て行く。放電電流1104は、スイッチT3を通り、バッファキャパシタCの正端子へ行く。図11はまた、負荷Rを通って流れる負荷電流ILOADも示す。
【0114】
より詳細には、スイッチトキャパシタDC/DC変換器(SC-DCDC)は入力電圧(Vin)を出力電圧(Vout)に変換し、特定の出力負荷電流を(例えば、マイクロコントローラまたは他の回路へ)供給する。Vinは、Voutよりも高いか(逓減構成)、Voutと等しいか、またはVoutよりも小さい(逓昇構成)ものであることができる。以下の例示的な動作はSC-DCDCの逓減構成:Vin>Voutに焦点を当てることになる。以下の例のいくつかの態様はまた、図1A図2Cに関して上述された。本開示では、SC-DCDCもDC-DC変換器と呼ばれ得る。
【0115】
SC-DCDCでは、入力電圧、Vinは、接続された特定の数のスイッチおよびキャパシタからなる、スイッチングネットワークに接続される。上述されたように、フライングキャパシタと呼ばれるキャパシタは、入力からのエネルギーをSC-DCDCの出力へ伝達するために用いられる。図11の例では、スイッチングネットワークはスイッチT1~T4を含み、フライングキャパシタはC2と称される。正端子、またはC2の第1の端子は、T1スイッチを介して入力電圧源Vinに、またはT3スイッチを介して出力バッファキャパシタCおよび出力負荷Rに接続される。負端子、またはC2の第2の端子は、スイッチT4を介してグランドに、またはスイッチT2を介して出力バッファキャパシタCおよび出力負荷Rに接続される。出力バッファキャパシタCは、負荷ジャンプなどの、出力負荷の高速変化の間に用いられるエネルギーを蓄積するためにSC-DCDCの出力に接続される。例示的な負荷ジャンプとしては、10ns以内に生じる200mAの電流変化を挙げることができる。負荷は、例えば、マイクロコントローラがスリープ(アイドル)状態から動作状態へ切り替わる時に、急速に変化し得る。
【0116】
スイッチおよびフライングキャパシタの数、ならびにそれらの構成は、上述されたように、変換器の効率を最大化するために、VinとVoutとの比に依存する。図11の例は、比1/2(Vin>2x Vout)を有するSC-DCDC変換器である。しかし、この解決策は、異なるモード(逓昇/逓減)で動作させられ、異なる比を有するSC-DCDC変換器において用いることもできる。
【0117】
出力電圧Voutの調節およびエネルギー伝達は、スイッチの異なる構成を有する2つの相を交互に行うことによって達成される。充電相では、T1およびT2は閉じており、T3およびT4は開いている。このように、フライングキャパシタC2は出力バッファキャパシタCと直列に接続される。エネルギーは供給源Vinから出力へ流れ、C2を充電し得る。放電相の間には、T3およびT4は閉じており、T1およびT2は開いている。フライングキャパシタC2は出力バッファキャパシタCと並列に接続され、充電相の間にC2内に蓄積されたエネルギーは出力バッファキャパシタCへ伝達される。C2からCへのエネルギー伝達は、Vin>2xVoutである時にのみ可能であることに留意されたい。
【0118】
図12Aは、スイッチネットワークT1~T4およびエネルギー蓄積要素C2のみを含むスイッチトキャパシタDC-DC変換器の一部分を示す概略図である。本開示では、エネルギー蓄積要素C2とフライングキャパシタC2とは交換可能に用いられ得る。図12Aにおける構成要素および接続は、図1Aおよび図11に関して上述された構成要素および接続に対応する。例によっては、スイッチT1などの、1つ以上の単一のスイッチは、図3Bに関して上述された複数のサブスイッチと同様に、複数のサブスイッチによって置換されてもよい。
【0119】
図12Bは、エネルギー蓄積要素C2に接続されたサブスイッチの例示的な実装を含むスイッチトキャパシタDC-DC変換器の一部分を示す概略図である。図3Bの例と同様に、図12Bの4つのスイッチT1~T4の各々は、複数のサブスイッチを用いて実装されてもよい。明確にするために、図12Bでは、スイッチT1のみが複数のサブスイッチとして示されている。換言すれば、図11図12Bには示されていないが、スイッチT2およびT4は複数のサブスイッチを含んでもよい。スイッチT2およびT4おサブスイッチは、負端子エネルギー蓄積要素C2に接続された複数のスイッチとして説明されてもよい。
【0120】
上述されたように、例によっては、ILOADなどの負荷電流が減少するにつれて、より少数のスイッチが用いられ得る。どのインピーダンスが必要であるのかについての決定は、システム400に関して説明されたデジタルコントローラ402などの、出力負荷に依存するデジタル論理によって管理され得る。上述されたように、負荷電流が高いほど、より多数のサブスイッチが動作させられ得る。サブスイッチの各々のコンダクタンスは調整可能であり得る。デジタルコントローラは、各々の複数のスイッチまたはサブスイッチのコンダクタンスを独立して制御するように構成され得る。デジタルコントローラは、複数のサブスイッチのスイッチタイミングの変調によって、エネルギー蓄積要素C2と、DC-DC変換器の出力負荷Rとの間の電気接続を並列電気接続と直列電気接続との間で切り替え得る。例によっては、デジタルコントローラは、ILOADなどの、出力負荷Rへの負荷電流の大きさに基づいて、各々の複数のサブスイッチ、またはスイッチのコンダクタンスを独立して制御するように構成され得る。
【0121】
複数のサブスイッチの各サブスイッチがほぼ同じRonを有する例では、マイクロコントローラまたはその他の回路などの、負荷のスリープ状態の間など、負荷電流が非常に低い時には、デジタルコントローラは、非常に低い電流を効率的に送出するための「スキップパルス」を含み得る。スキップパルスは、所与のスイッチングサイクルの間にどのサブスイッチも閉じていない例である。スキップパルスを実施することは、出力電圧上の電圧リップルを増大させ得る。本開示では、「ほぼ同じ」、「ほぼ等しい」、「実質的に同じ」、および「実質的に等しい」は、値が製作公差および測定公差以内で等しいことを意味する。
【0122】
スキップパルスの必要性を低減するための1つの可能な技法は、サブスイッチの数を増大させることである。より多数のサブスイッチは、回路が、負荷へ送出される出力電流の大きさに対するより細かい制御を有することを可能にし得る。しかし、多数のスイッチは、必要とする論理制御線の数が多くなるという不利点を有する場合があり、複雑さを増大させ、集積回路(integrated circuit、IC)上で必要とされる空間量を増大させる恐れがある。図3Bに関して上述されたように、全てのサブスイッチについてのインピーダンスの合計は単一のスイッチについての総インピーダンスとほぼ等しい。例えば、単一のスイッチT1についてのRonは全てのサブスイッチについての総インピーダンスとほぼ同じであり得る。したがって、論理制御線を含まない、サブスイッチのみによって使用されるIC区域は、単一のスイッチによって使用される区域とほぼ同じであり得る。
【0123】
図12Bの例は、スキップパルスの必要性を低減するための異なる技法を示す。図12Bの例は、全てが互いにほぼ同じRonを有する、14個のサブスイッチ、T1_0~T1_14を示す。換言すれば、サブスイッチT1_3のRonはサブスイッチT1_5のRonとほぼ等しい。スイッチT1のサブスイッチは、残りのサブスイッチの倍数であるRonを各々有する、3つの追加のサブスイッチをさらに含み得る。例えば、Ron_T1がサブスイッチT1_0~T1_14についてのRonである場合には、このとき、T1_15は2*Ron_T1のRonを有することができ、T1_16は4*Ron_T1のRonを有することができ、T1_17は8*Ron_T1のRonを有することができる。上述されたように、スイッチの数およびオン抵抗の配分は本開示の技法の実装の単なる一例にすぎない。他の例はより多数またはより少数のスイッチを有してもよく、より高いRonのスイッチは、3*Ron、6*Ron、0.5*Ron等などの、異なる倍数であってもよい。本開示では、用語、分数重み付けと倍数重み付けとは交換可能に用いられ得る。また、明確にするために、例12Bには、スイッチT1のためのサブスイッチのみが示されている。他の例では、スイッチT1~T4のうちの任意のものが、スイッチT1のために示されるように、複数のサブスイッチを含み得る。例によっては、スイッチT1などの、1つのスイッチのためのサブスイッチの構成および数は、スイッチT4などの、別のスイッチのためのサブスイッチの構成および数と異なり得る。
【0124】
動作時、図12Bの例は、低インピーダンスサブスイッチT1_0~T1_14を介して高い出力負荷電流を送出し得る。高インピーダンスサブスイッチ、T1_15~T1_17の制御を介して、出力電圧の細かい低リップル調節が達成される。出力負荷が非常に小さい時には、1つの低インピーダンスサブスイッチは、必要とされるよりも多くの電流を送出し得る。したがって、回路は、「スキップパルス」を遂行する代わりに、高インピーダンスサブスイッチT1_15~T1_17を動作させ得る。このように、図12Bの例によって示される本開示の技法は、他の技法と比べたときに、出力電圧リップルを低減させて広い負荷範囲にわたって動作し得る。
【0125】
より詳細には、低インピーダンスサブスイッチT1_0~T1_14はSC-DCDCの高電流能力のために望ましくなり得る。サブスイッチT1_0~T1_14は、エネルギー蓄積要素C2の正端子に接続された第1の複数のスイッチとして説明されてもよい。一例として、最大負荷電流は次式のように算出することができる:
Imax=(Vin-2xVout)/(2x(2xRon))
【0126】
例えば、Vin=3.3V、Vout=1.5V(Vin>2xVout)、Ron=0.5Ω(全てのサブスイッチの並列接続の合計)であり、SC-DCDCによって送出される最大電流は150mAである。しかし、低インピーダンスサブスイッチのみを用いた数百mAの高電流のためのみのサブスイッチの最適化は、上述されたように、低負荷電流における出力電圧制御の精度を低下させ得る。例えば、1つのサブスイッチは、
Ron=(0.5Ω-Rbond)*16 sub-switches=(0.5-0.3)*16=3.2Ω
を有し得る。ここで、Rbondは、ボンドワイヤ抵抗・プラス・寄生であってもよく、例によっては、Rbond=0.3Ωのオーダーであり得る。本例では、1つのサブスイッチのみが閉じた状態で送出される最小電流(Imin)は次式のとおりである:
I_min=(3.3V-2x1.5V)/(2x2x(3.2Ω+Rbond))=0.3/12.8=0.023A
【0127】
負荷電流ILOADがImin未満である場合には、このとき、SC-DCDCはスキップパルスを周期的に遂行してもよいが、これは、上述されたように、出力電圧リップルの増大を招き得る。例によっては、Voutにおける電圧リップルは低電流において2倍になり得る。負荷電流に依存して、スキップパルスは数スイッチングサイクルにわたって継続し得る。
【0128】
図12Bの例によって示される技法は、より高いオンインピーダンスRonを有するサブスイッチを含み得る。図12Bの例では、サブスイッチT1_15~T1_17は低インピーダンスサブスイッチT1_0~T1_14のインピーダンスに対する分数増加として重み付けされる。換言すれば、「R」の等しいRonを有する16個のサブスイッチのうちの1つが、3つのサブスイッチ、2R(Ronよりも2倍高い)、4R、および8Rと置換されている。このように、追加のスイッチは、スイッチT1のために費やされるIC区域の増大を回避する。他の例では、16R、32Rなどを有するさらなるスイッチを追加することなどによって、追加の高インピーダンスサブスイッチを追加することが、さらに高い分解能をもたらし得る。図12Bの例では、高インピーダンススイッチは分数による仕方で重み付けされているが、他の例では、追加の高インピーダンススイッチは、2進数による仕方、対数による仕方、または何らかの他の仕方で重み付けすることができる。換言すれば、図12Bの例では、1つのスイッチ(例えばT1)は、サブスイッチ、15xR(T1_0~T1_14)、1x2R(T1_15)、1x4R(T1_16)および1x8R(T1_17)からなることができる。サブスイッチT1_15~T1_17は、エネルギー蓄積要素C2の正端子に接続された別の複数のスイッチとして説明されてもよい。
【0129】
このように、出力負荷ILOADが非常に低い時には、高いRonのスイッチT1_15~T1_17のみが動作させられてもよい。以上からの例を続けると、8RのスイッチT1_17が、負荷のために必要とされるよりも大きな電流を生じさせる時には、SC-DCDC回路はスキップパルスを遂行するのみであってもよい。図12Bの技法によると、スキップパルスを用いずに送出される最小負荷電流は、以下の式によって示されるように、等しいRonを有する16個のサブスイッチを用いる時の約8分の1に低下する:
Ron_8R=Ron*8=(0.5Ω-Rbond)*16*8Ω=(0.5Ω-0.3Ω)*16*8Ω=3.2*8Ω=25.6Ω
【0130】
したがって、8Rのサブスイッチのみが閉じた状態で送出される最小電流は以下のとおりである:
I_min=(3.3V-2x1.5V)/(2x2x(25.6Ω+Rbond))=0.3V/103.6Ω=0.0028A
【0131】
また、2R、4Rおよび8Rの並列接続は1つの低インピーダンススイッチとほぼ同じRonを与えるため、高電流能力は最小限の影響を受けるのみであるか、または影響を受けなくてもよい。
【0132】
別の例では、サブスイッチは、以下のものなど、8Ronのオン抵抗を有する追加のサブスイッチを用いて実装されてもよい:
15x1Ron
1x2Ron
1x4Ron
2x8Ron
この実装は上述の例と同じインピーダンスをもたらし得る。他の例は分数スイッチの他の構成を含み得る。他の例では、上述されたように、スイッチは、対数による仕方を含む、分数または倍数以外の関連した仕方であってもよい。
【0133】
1つの例示的な実装は、システム400に関して上述されたPIコントローラなどの、デジタルコントローラを有し得る。デジタルコントローラは、所望の負荷電流Iを達成するためのコンダクタンス値を算出し得る。コンダクタンス値は、各スイッチ、例えばT1内の何個のサブスイッチが、要求出力負荷を供給するために閉じている必要があるのかを表す。一例では、コンダクタンスが4である時には、これは、次のスイッチングサイクルの間に、1つのサブスイッチが4つのスイッチT1~T4の各々の内部で閉じている必要があることを意味する。例によっては、コンダクタンス値はスイッチングサイクルごとに更新されてもよい。図12Bの例では、デジタルコントローラの計算、それがスイッチをそれらのコンダクタンスによって重み付けするために:
8RのサブスイッチT1_17はコンダクタンス1を有する。
4RのサブスイッチT1_16はコンダクタンス - 2を有する。
2RのサブスイッチT1_15はコンダクタンス - 4を有する。
各々のRのサブスイッチT1_0~T1_14はコンダクタンス - 8を有する。
本提案のシステムの最大コンダクタンスは以下のとおりである:
4*(15*8+1*4+1*2+1*1)=508
【0134】
図12Bのスイッチングネットワーク内には4つのスイッチ(T1、T2、T3およびT4)が存在するため、コンダクタンス値には4が乗算される。図4に示されるデジタルコントローラ402などの、デジタルコントローラの出力は負荷電流に依存して0から508まで変化し得る。算出されたコンダクタンス値はスイッチごとのコンダクタンスの値に分割され、次に、各スイッチを構成するサブスイッチの間で分配される必要があり得る。最良のリップル性能を達成するために、充電スイッチ(T1&T2)および放電スイッチ(T3&T4)を均衡させなければならない。また、一定の負荷電流におけるコンダクタンスの非常に小さなサイクル偏移からの効果を最小限に抑えるために、より高いRonを有するサブスイッチがコンダクタンス配分のためのより高い優先順位を有するべきである。例によっては、コンダクタンスはスイッチングサイクルごとに1~2だけ変化することができる。
【0135】
デジタルコントローラがスイッチごとのコンダクタンスを算出し、サブスイッチの間で配分するための1つの例示的なアルゴリズムは、以下に示されるように行われ得る:
Conductance_1=floor(Conductance/4)+(mod(Conductance,4)>=2);
Conductance_3=floor(Conductance/4)+(mod(Conductance,4)>=3);
Conductance_4=floor(Conductance/4);
Conductance_2=floor(Conductance/4)+(mod(Conductance,4)>=1);
%スイッチ1
n8R_1=floor(mod(Conductance_1,2));
n4R_1=floor(mod(Conductance_1,4)/2);
n2R_1=floor(mod(Conductance_1,8)/4);
n1R_1=floor(Conductance_1/8);
%スイッチ3
n8R_3=floor(mod(Conductance_3,2));
n4R_3=floor(mod(Conductance_3,4)/2);
n2R_3=floor(mod(Conductance_3,8)/4);
n1R_3=floor(Conductance_3/8);
%スイッチ4
n8R_4=floor(mod(Conductance_4,2));
n4R_4=floor(mod(Conductance_4,4)/2);
n2R_4=floor(mod(Conductance_4,8)/4);
n1R_4=floor(Conductance_4/8);
%スイッチ2
n8R_2=floor(mod(Conductance_2,2));
n4R_2=floor(mod(Conductance_2,4)/2);
n2R_2=floor(mod(Conductance_2,8)/4);
n1R_2=floor(Conductance_2/8
ここで、nxR_yは、インピーダンスxRを有するスイッチ#yに関連付けられたサブスイッチの数である。分数高インピーダンススイッチT1_15~T1_17を用いる例示的なアルゴリズムは、充電相に優先順位が設定された上で、1つのコンダクタンス値の充電相/放電相の均衡をもたらし得る。
【0136】
対照的に、等しいRonを有するサブスイッチを用いて同じ性能を得ることは、各スイッチT1~T4が、等しいインピーダンスを有する127個のサブスイッチを用いて実装されることを必要とし得る(合計4x127個のサブスイッチ)。127個のサブスイッチを用いる実装は、図12Bの技法と比べたときに、デジタルサブマクロからアナログサブマクロへのより多くの経路を必要とすること、およびデジタル部分のコア領域からの制御信号をスイッチの中/高電圧領域へ翻訳するために必要な多数のレベルシフタのせいで必要とされる、より多くのIC区域を含む、不利点を有し得る。
【0137】
図13は、スイッチングネットワーク内の各スイッチが16個の等しいサブスイッチからなるSC-DCDC変換器における出力電圧リップルの結果を示す時間グラフである。図13は、図11に示されるVoutなどの、出力電圧上の電圧リップル1304、算出されたコンダクタンス1306、および負荷電流1302の変化を示す。図13図14および図17図18の負荷電流は、図11に示される負荷電流ILOADに対応し得る。図13および図14における定常状態動作は、3.3Vの入力電圧Vinにおいて示されており、10ns以内に遂行され、MATLABにおいてシミュレートされた10mAの負荷ジャンプ(1302)を伴う30mAの負荷電流ILOADを有する。
【0138】
図14は、各スイッチが、RのRonを有する15個のサブスイッチ、2Rを有する1つ、4Rを有する1つ、および8Rを有する1つからなる、分数スイッチを用いた出力電圧リップルの結果を示す時間グラフである。図14の時間グラフは、図12Bの例に示される回路に対応する。図14は、図11に示されるVoutなどの、出力電圧上の電圧リップル1404、算出されたコンダクタンス1406、および負荷電流の変化1402を示す。
【0139】
図14の電圧リップル1404を図13の電圧リップル1304と比べると、特に、10mAの低負荷電流において、より低い電圧リップルが示される。図14において、図12Bに関して説明されたとおりの分数スイッチを含む、負荷ジャンプに対する応答を見ることができる。しかし、図14のオーバーシュートは、図13において見られるリップルよりも小さい。換言すれば、MATLABシミュレーションは、本開示の1つ以上の技法に係る、低インピーダンスサブスイッチとともに高インピーダンスサブスイッチのセットを含む回路についての電圧リップル性能の改善という利点を示す。
【0140】
図15Aおよび図15Bは、スイッチングネットワークのどのスイッチもスイッチングサイクルの一部分のために導通しない、スイッチデッドタイムの技法を示すタイミンググラフである。以上において、図1Aおよび図1Bに関して説明されたスイッチングネットワーク102および104、ならびに図11に関して説明されたスイッチT1~T4などの、SC-DCDCのためのスイッチングネットワークの例が説明された。
【0141】
図15Aは、充電相および放電相を含む、スイッチング周期を示すタイミンググラフである。システム400および図7A図8Bに関して上述されたように、スイッチング周期は充電相1504および放電相1506を含み得る。SC-DCDC回路のためのデジタルコントローラは充電相1504および放電相1506を、ほぼ等しい継続時間を有するように設定し得る。電圧リップルを低減するためには、充電相1504および放電相1506のための等しい継続時間が望ましくなり得る。図11図12Bに関して上述されたように、フライングキャパシタC2の充電相1504の間は、スイッチT1およびT2はオンであってもよく、その一方で、スイッチT3およびT4はオフであってもよい。フライングキャパシタC2の放電相1506の間は、スイッチT1およびT2はオフであってもよく、その一方で、スイッチT3およびT4はオンであってもよい。他の例では、図2A図2Cに関して上述されたように、他のスイッチ構成が用いられてもよい。
【0142】
上述されたように、負荷、Rが、高い入力電圧Vinおよび低い出力負荷電流ILOADを必要とし得るいくつかの例では、数個のサブスイッチが動作させられるだけでよい。例によっては、閉じたサブスイッチの数を1つ増大または減少させよとの調節の間におけるデジタル制御の要求は、出力電圧上のリップルの増大を誘発し得る。これらの例では、出力電流ILOADのレベル間の切り替え時における、より細かい制御度が望ましくなり得る。また、上述されたように、出力電圧リップルは、負荷が、SC-DCDC変換器が統合されたシステムのスリープモードへ切り替わるなど、出力負荷がなおさらに減少する時に行われることになる、「スキップパルス」によって増大させられ得る。
【0143】
図15Bは、SC-DCDC変換器内のスイッチングネットワークのどのスイッチも導通していないデッドタイム相を含むスイッチング周期を示すタイミンググラフである。図15Bの例は、充電相1508と放電相1510との間に挿入された、スイッチング周期1502Bのデッドタイム相1512を示す。デッドタイム相の継続時間が0、例えば0nsである図15Aの例の場合と同様に、充電相1508の継続時間は放電相1510の継続時間とほぼ同じであってもよい。
【0144】
例によっては、0の継続時間のデッドタイム相を有する、スイッチング周期1512Aの継続時間は、0でない継続時間のデッドタイム相を含む、スイッチング周期1502Bなどの、第2のスイッチング周期の継続時間とほぼ等しくてもよい。SC-DCDCは、固定されたスイッチング周波数で動作してもよい。他の例では、SC-DCDCは、図4に関して上述されたものなど、周波数拡散効果を達成するために、スイッチング周波数をランダムに変調してもよい。各スイッチング周期の間に、デジタルコントローラ402などのデジタルコントローラは、出力負荷Rへの負荷電流ILOADの大きさに基づき、デッドタイム相の継続時間を算出してもよい。上述されたように、デジタルコントローラは、必要とされるコンダクタンスを算出し、デッドタイム相の継続時間を決定してもよい。
【0145】
図15Bに示される技法は、図12B図14に関して上述された高インピーダンスおよび低インピーダンススイッチ技法と、あるいは本開示の他のスイッチインピーダンス制御技法と組み合わせられてもよい。一例では、スイッチインピーダンス変調が、出力電流を低減するために有効でない時には、低負荷電流ILOADにおける出力電圧Voutの精密な調節は、充電時間および放電時間を変調することによって達成されてもよい。SC-DCDC変換器のスイッチング周波数を一定に保つために、図15B 2に示されるように、デッドタイム相が充電相1508と放電相1510との間に導入されてもよい。デッドタイム相1512の間は、スイッチのうちのいずれのものも導通していない。本開示の他の技法の場合と同様に、充電相の継続時間(充電時間)および放電相の継続時間(放電時間)の変調は、出力負荷に基づくデジタル論理によって決定されてもよい。例えば、負荷が低いほど、充電時間および放電時間は短くなり、デッドタイム相の継続時間は長くなる。
【0146】
図15Bの例において説明された本開示のデッドタイム技法はいくつかの利点を有し得る。いくつかの利点としては、デッドタイム技法を既存のSC-DCDC回路に実装することは、回路のアナログ変更を必要とせず、デジタル論理制御の変更のみを必要とし得ることを挙げることができる。それゆえ、SC-DCDC変換器の最大電流能力は影響を受けずにすむ。別の利点は、本開示のSC-DCDCは、出力負荷電流が非常に小さい時に、スキップパルスの代わりにデッドタイムを有し得ることであり得る。低負荷条件に対して、スイッチT1~T4などの、スイッチごとの単一のサブスイッチは、必要とされるよりも多くの電流を送出し得る。低負荷電流の例では、デジタルコントローラはデッドタイム技法を有効にし、充電時間および放電時間を変調し得る。本開示のデッドタイム技法は、「スキップパルス」と比較したときに、出力電圧リップル性能の改善という利点を有し得る。
【0147】
より詳細には、デッドタイムは、充電時間および放電時間の観点から、算出されたコンダクタンスと最小許容コンダクタンスとの差を表し得る。図12Bに関して上述された例を続けると、最小コンダクタンスは、スイッチングネットワーク102などの、スイッチングネットワーク内のスイッチごとに1つのサブスイッチのみが出力電流のために必要とされ得る時である。12Bの例では、最小コンダクタンスは4である。以下の例の説明では、明確にするために、充電時間と放電時間とが等しく設定されると仮定されることになるため、充電時間のみが式中で用いられ得る。デッドタイムは次式に従って決定され得る:
dead_time=Tcharge*(4-Conductance)/2
デジタルコントローラは、次式に従って、充電相の継続時間(充電時間)を、デッドタイムの半分だけ低減されるように算出し得る:
Tcharge_corrected=Tcharge-dead_time/2
Tdischarge_corrected=Tdischarge-dead_time/2
【0148】
1つの非限定的な例示の例として、充電時間および放電時間が18クロックサイクル(例えば、1.85MHzのスイッチング周波数)に設定されてもよく、デジタルコントローラがコンダクタンスを計算する。この場合において、デジタルコントローラは、低いILOADが2のコンダクタンスを必要とすると決定し得る。デジタルコントローラは次式に従ってデッドタイムを決定し得る:
dead_time=18cycles*(4-2)/2=18
【0149】
充電時間および放電時間は各々9クロックサイクルだけ低減され得る。しかし、スイッチング周期は同じままとどまる。
【0150】
スイッチは、完全に閉じるためにいくらかの時間を必要とするため、最小充電/放電時間(最大デッドタイム)が規定される必要があり得る。例によっては、充電時間は4クロックサイクルの最小値に設定され得る。これは、本例のための最大許容デッドタイムが次式のとおりになることを意味する:
18-4+18-4=28
【0151】
28クロックサイクルの最大許容デッドタイムを有する場合、スキップパルスは、負荷電流ILOADが次式のとおりに低減するまで遂行され得る:
I_min =(3.3V-2x1.3V)/(2x2x(3.2Ω+0.3Ω))*(18-14+18-14+6)/(18+18+18)
=0.7/12.8*0.26=0.014A=14mA
【0152】
乗算のために4ビットのみの差を用いる、デッドタイムを算出するための例示的なアルゴリズムは、以下に示されるように実施され得る:
error_4bit=floor((2^13-mod(Coductance_full_res,2^13))/2/2^8);
dead_time=floor(Tcharge_current_z1*(2^3*floor(mod(error_4bit,2^4)/2^3)+
2^2*floor(mod(error_4bit,2^3)/2^2)+2^1*floor(mod(error_4bit,2^2)/2^1)+
2^0*floor(mod(error_4bit,2^1)))/2^4)*2;
この例示的なアルゴリズムでは、Conductance_full_resは21ビットの値である。2^13は最大分解能コンダクタンスに関する4を表し、4ビットが2^8による除算によって切り取られる。
【0153】
図12Bに関して説明された例の場合と同様に、細かい分解能の実施のためのより多数のサブスイッチを用いた同じ性能を得るために、より多数のサブスイッチを有する各スイッチ。より多くのサブスイッチは、デジタルサブマクロからアナログサブマクロへのより多くの経路、およびデジタル部分のコア領域からスイッチの中/高電圧領域へ行くために必要とされる多数のレベルシフタに起因するより多くの区域を必要とし得る。
【0154】
図16は、スイッチインピーダンス変調が用いられるが、0のデッドタイム継続時間を有する、SC-DCDC変換器における出力電圧リップルの結果を示す時間グラフである。図16図13と同様であり、図11に示されるVoutなどの、出力電圧上の電圧リップル1604、算出されたコンダクタンス1606、負荷電流の変化1602、およびスイッチング周期内のデッドタイム量1608を示す。図16のデッドタイムは0nsである。図16図17におけるMATLABシミュレーションの定常状態動作は、5Vの入力電圧Vinで示されており、70mA、50mA、30mAおよび10mAの負荷電流を伴い、各負荷ジャンプは10ns以内に遂行される。
【0155】
図17は、スイッチインピーダンス変調に加えて、充電/放電時間変調が遂行される、SC-DCDC変換器における出力電圧リップルの結果を示す時間グラフである。図17は、図11に示されるVoutなどの、出力電圧上の電圧リップル1704、算出されたコンダクタンス1706、負荷電流の変化1702、およびスイッチング周期内のデッドタイム量1708を示す。図17の出力電圧リップルは図16の出力電圧リップルよりも~20mV小さい。換言すれば、MATLABシミュレーションは、本開示の1つ以上の技法に係る、特に、低負荷電流に対する、スイッチング周期内にデッドタイムを含む回路およびデジタルコントローラについての電圧リップル性能の改善という利点を示す。
【0156】
図18は、本開示の1つ以上の技法に係る、DC-DC変換器回路のためのデジタルコントローラ回路の例示的な動作を示すフロー図である。図18のフロー図は、特に断りのない限り、図4図5図12Bおよび図15Bに関して説明されることになる。
【0157】
デジタルコントローラ402などのデジタルコントローラ回路は、例えば、図4および図5に関して上述されたように、DC-DC変換器の出力負荷への出力負荷電流の大きさを決定し得る(90)。出力負荷電流の大きさは、上述されたように、負荷の動作モードに依存して変化し得る。
【0158】
デジタルコントローラ回路は、図12Bに示されるように、サブスイッチT1_0~T1_17などの、複数のスイッチのコンダクタンスを独立して調整し得る(92)。デジタルコントローラはまた、スイッチT2~T4を構成する複数のサブスイッチのコンダクタンスも独立して調整し得る。上述されたように、スイッチT1~T4のうちの任意のものが複数のサブスイッチを含み得る。同様に、図2A図2Cに示されるスイッチなどの、スイッチのうちの任意のものが複数のサブスイッチを含み得る。複数のスイッチは、エネルギー蓄積要素C2と、DC-DC変換器の出力負荷RLOADとの間の電気接続を並列電気接続と直列電気接続との間で切り替えるように構成され得る。
【0159】
デジタルコントローラ回路は、複数のスイッチの各々のコンダクタンスを、複数のスイッチの各々のスイッチタイミングの変調によって独立して制御するように構成され得る(92)。デジタルコントローラ回路は、出力負荷への出力負荷電流の大きさに基づいてスイッチタイミングを変調し得る。ステップ90および92は、図10Aおよび図10Bに関して上述されたプロセスステップと同様である。
【0160】
例によっては、デジタルコントローラ回路は、デッドタイム相をスイッチング周期に追加するように構成され得る(94)。図15Bに関して上述されたように、デッドタイム相の間には、デジタルコントローラ回路は、複数のスイッチのうちのどのスイッチも電流を導通しないよう、複数のスイッチの各々のコンダクタンスを独立して制御するように構成され得る(94)。デッドタイム相を追加することは、上述されたように、低出力負荷電流の間におけるスキップパルスの必要性を低減し、これにより、電圧リップル量を低減するという利点を有し得る。例によっては、デッドタイム相の継続時間は出力負荷への出力負荷電流の大きさに基づく。上述されたように、デッドタイム相技法は、図12Bに関して説明される分数スイッチ技法と組み合わせられてもよい。
【0161】
実施例1.システムであって、直流/直流変換器(DC-DC変換器)であって、エネルギー蓄積要素、このエネルギー蓄積要素の第1の端子に結合された第1の複数のスイッチであって、この第1の複数のスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチのオン抵抗は第1の複数のスイッチのうちの別のスイッチのオン抵抗の倍数である、第1の複数のスイッチ、およびエネルギー蓄積要素の第2の端子に結合された第2の複数のスイッチであって、この第2の複数のスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチのオン抵抗は第2の複数のスイッチのうちの別のスイッチのオン抵抗の倍数である、第2の複数のスイッチ、を含む、DC-DC変換器を備えるシステム。第1および第2の複数のスイッチの各々のコンダクタンスは調整可能である。システムはまた、第1および第2の複数のスイッチの各々のスイッチタイミングの変調によって、エネルギー蓄積要素と、DC-DC変換器の出力負荷との間の電気接続を並列電気接続と直列電気接続との間で切り替えるよう、第1および第2の複数のスイッチの各々のコンダクタンスを独立して制御するように構成されたデジタルコントローラも含み得る。スイッチタイミングの変調は第1および第2の複数のスイッチの各々のゲート-ソース電圧の調整によって規定され、デジタルコントローラは、第1および第2の複数のスイッチの第1のサブセットを、事前設定された数のスイッチングサイクルの間、第1および第2の複数のスイッチの第2のサブセットが状態をトグルする一方で、固定された状態で休止するようプログラムするように構成されている。
【0162】
実施例2.エネルギー蓄積要素が第1のエネルギー蓄積要素であり、DC-DC変換器が、第2のエネルギー蓄積要素、およびこの第2のエネルギー蓄積要素に結合された第3の複数のスイッチ、をさらに含む、実施例1のシステム。第2のエネルギー蓄積要素は、第1、第2および第3の複数のスイッチの第1のスイッチング構成の間は、第1のエネルギー蓄積要素と直列になっており、第2のエネルギー蓄積要素は、第1、第2および第3の複数のスイッチの第2のスイッチング構成の間は、第1のエネルギー蓄積要素と並列になっている。
【0163】
実施例3.DC-DC変換器の出力負荷に結合された出力エネルギー蓄積要素をさらに備え、この出力エネルギー蓄積要素は、第1、第2および第3の複数のスイッチの第3のスイッチング構成の間は、第1のエネルギー蓄積要素と直列、且つ第2のエネルギー蓄積要素と直列になっている、実施例1または2あるいはこれらの任意の組み合わせのシステム。出力エネルギー蓄積要素は、第1、第2および第3の複数のスイッチの第4のスイッチング構成の間は、第1のエネルギー蓄積要素と並列、且つ第2のエネルギー蓄積要素と並列になっている。
【0164】
実施例4.スイッチタイミングがスイッチング周期を含み、このスイッチング周期は充電相および放電相を含み、充電相の継続時間は放電相の継続時間と実質的に等しく、デジタルコントローラが、デッドタイム相をスイッチング周期に追加するように構成されており、デッドタイム相の間には、デジタルコントローラが、どのスイッチも電流を導通しないよう、第1、第2および第3の複数のスイッチの各々のゲート-ソース電圧を調整するように構成されている、実施例1~3の任意の組み合わせのシステム。
【0165】
実施例5.デジタルコントローラが、出力負荷への負荷電流の大きさに基づいて第1および第2の複数のスイッチの各々のコンダクタンスを独立して制御するように構成されている、実施例1~4の任意の組み合わせのシステム。
【0166】
実施例6.スイッチタイミングがスイッチング周期を含み、このスイッチング周期はエネルギー蓄積要素の充電相およびエネルギー蓄積要素の放電相を含み、充電相の継続時間は放電相の継続時間と実質的に等しい、実施例1~5の任意の組み合わせのシステム。
【0167】
実施例7.デジタルコントローラが、デッドタイム相をスイッチング周期に追加するように構成されている、実施例1~6の任意の組み合わせのシステム。デッドタイム相の間には、デジタルコントローラが、どのスイッチも電流を導通しないよう、第1および第2の複数のスイッチの各々のゲート-ソース電圧を調整するように構成されており、デッドタイム相の継続時間は出力負荷への負荷電流の大きさに基づく。
【0168】
実施例8.第1の継続時間のデッドタイム相を含む第1のスイッチング周期の第1の継続時間が、第2の継続時間のデッドタイム相を含む第2のスイッチング周期の第2の継続時間とほぼ等しく、第2のスイッチング周期の充電相の継続時間が第2のスイッチング周期の放電相の継続時間と実質的に等しい、実施例1~7の任意の組み合わせのシステム。
【0169】
実施例9.装置であって、エネルギー蓄積キャパシタと、このエネルギー蓄積キャパシタの第1の端子に結合された第1の複数のトランジスタと、エネルギー蓄積キャパシタの第2の端子に結合された第2の複数のトランジスタと、スイッチング周期に従って第1および第2の複数のトランジスタの各々の導通を独立して制御するように構成されたデジタルコントローラと、を備える装置。スイッチング周期は、エネルギー蓄積キャパシタの充電相、エネルギー蓄積キャパシタの放電相、およびデッドタイム相を含み、充電相の継続時間は放電相の継続時間とほぼ等しい。
【0170】
実施例10.スイッチング周期のデッドタイム相の継続時間が0ナノ秒とほぼ等しい、実施例9の装置。
【0171】
実施例11.スイッチング周期のデッドタイム相の継続時間が、装置の出力ノードに結合された負荷への出力電流の大きさに基づく、実施例9~10の任意の組み合わせの装置。
【0172】
実施例12.デジタルコントローラが、第1の複数および第2の複数のトランジスタの導通を、充電相の間には、第1の構成に、放電相の間には、第2の構成に、デッドタイム相の間には、第1および第2の複数のスイッチのうちのどのスイッチも電流を導通しないよう、第3の構成に制御するように構成されている、実施例9~11の任意の組み合わせの装置。
【0173】
実施例13.デジタルコントローラが、第1および第2の複数のトランジスタのうちの特定のトランジスタのコンダクタンスを、第1および第2の複数のトランジスタのうちの特定のトランジスタに提供されるコンダクタンス調整信号の少なくとも立ち上がりエッジの変化率の制御によって独立して制御するように構成されており、デジタルコントローラが、第1および第2の複数のトランジスタの第1のサブセットを、事前設定された数のスイッチングサイクルの間、第1および第2の複数のトランジスタの第2のサブセットが状態をトグルする一方で、固定された状態で休止するようプログラムするように構成されている、実施例9~12の任意の組み合わせの装置。
【0174】
実施例14.フィードバックループをさらに備え、装置の出力電圧がデジタルコントローラ内へフィードバックされる、実施例9~13の任意の組み合わせの装置。
【0175】
実施例15.第1の複数のスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチのオン抵抗が第1の複数のスイッチのうちの別のスイッチのオン抵抗の倍数であり、第2の複数のスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチのオン抵抗が第2の複数のスイッチのうちの別のスイッチのオン抵抗の倍数であり、デジタルコントローラが、装置の出力ノードに結合された負荷への出力電流の大きさに基づいて第1および第2の複数のトランジスタの各々の導通を独立して制御するように構成されている、実施例9~14の任意の組み合わせの装置。
【0176】
実施例16.複数のスイッチの各々のコンダクタンスを、複数のスイッチの各々のスイッチタイミングの変調によって独立して制御するように構成されたデジタルコントローラ回路であって、複数のスイッチは、エネルギー蓄積要素と、DC-DC変換器の出力負荷との間の電気接続を並列電気接続と直列電気接続との間で切り替えるように構成されており、デジタルコントローラは、出力負荷への出力電流の大きさに基づいてスイッチタイミングを変調する、デジタルコントローラ回路。
【0177】
実施例17.スイッチタイミングがスイッチング周期を含み、デジタルコントローラが、デッドタイム相をスイッチング周期に追加するようにさらに構成されており、デッドタイム相の間には、デジタルコントローラが、どのスイッチも電流を導通しないよう、複数のスイッチの各々のコンダクタンスを独立して制御するように構成されており、デッドタイム相の継続時間は出力負荷への出力電流の大きさに基づく、実施例16のデジタルコントローラ回路。
【0178】
実施例18.複数のスイッチが、エネルギー蓄積要素の第1の端子に結合された第1の複数のスイッチであって、この第1の複数のスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチのオン抵抗は第1の複数のスイッチのうちの別のスイッチのオン抵抗の倍数である、第1の複数のスイッチ、およびエネルギー蓄積要素の第2の端子に結合された第2の複数のスイッチであって、この第2の複数のスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチのオン抵抗は第2の複数のスイッチのうちの別のスイッチのオン抵抗の倍数である、第2の複数のスイッチ、を含み、第1および第2の複数のスイッチの各々のコンダクタンスは調整可能である、実施例16~17の任意の組み合わせのデジタルコントローラ回路。
【0179】
実施例19.方法であって、デジタルコントローラ回路によって、DC/DC(DC-DC)変換器の出力負荷への出力負荷電流の大きさを決定することと、デジタルコントローラ回路によって、複数のスイッチのコンダクタンスを調整することと、を含み、複数のスイッチは、エネルギー蓄積要素と、DC-DC変換器の出力負荷との間の電気接続を並列電気接続と直列電気接続との間で切り替えるように構成されており、デジタルコントローラ回路は、複数のスイッチの各々のコンダクタンスを、複数のスイッチの各々のスイッチタイミングの変調によって独立して制御するように構成されており、デジタルコントローラ回路は、出力負荷への出力負荷電流の大きさに基づいてスイッチタイミングを変調する、方法。
【0180】
実施例20.スイッチタイミングがスイッチング周期を含み、デジタルコントローラ回路が、デッドタイム相をスイッチング周期に追加するようにさらに構成されており、デッドタイム相の間には、デジタルコントローラ回路が、複数のスイッチのうちのどのスイッチも電流を導通しないよう、複数のスイッチの各々のコンダクタンスを独立して制御するように構成されており、デッドタイム相の継続時間は出力負荷への出力負荷電流の大きさに基づく、実施例19の方法。
【0181】
実施例21.複数のスイッチが、エネルギー蓄積要素の第1の端子に結合された第1の複数のスイッチであって、この第1の複数のスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチのオン抵抗は第1の複数のスイッチのうちの別のスイッチのオン抵抗の倍数である、第1の複数のスイッチ、およびエネルギー蓄積要素の第2の端子に結合された第2の複数のスイッチであって、この第2の複数のスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチのオン抵抗は第2の複数のスイッチのうちの別のスイッチのオン抵抗の倍数である、第2の複数のスイッチ、を含み、第1および第2の複数のスイッチの各々のコンダクタンスは調整可能である、実施例19~20の任意の組み合わせの方法。
【0182】
本開示の様々な実施例が説明された。特定の特徴およびステップは本発明の実施の代表例として開示される。これらおよび他の実施例が添付の請求項の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0183】
100 dc-dc変換器回路
102、104 スイッチングネットワーク
202、204、206、208、210、212 回路構成
302 デジタル-アナログ変換器
400 システム
402 デジタルコントローラ
404 デジタル駆動信号発生器
406 フィードバックループ
408 アナログ-デジタル変換器
504 PIDコントローラ
506 積分器
508 モード選択ブロック
602 乱数発生器
604 モード選択およびコンダクタンス変調ブロック
606 カウンタ
702 マルチプレクサ
704、712、808 スロープ制御信号
710、806 ローパスフィルタ
716 信号
802 制御線
804 遅延要素
810 サーマルエンコーダ
1102 充電電流
1104 放電電流
1302、1402、1602、1702 負荷電流の変化
1304、1404、1604、1704 電圧リップル
1306、1406、1606、1706 算出されたコンダクタンス
1502B スイッチング周期
1504、1508 充電相
1506、1510 放電相
1512 デッドタイム相
1608、1708 デッドタイム量
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
図12A-B】
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18