IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 一般財団法人電力中央研究所の特許一覧

<>
  • 特許-電力の需給調整システム 図1
  • 特許-電力の需給調整システム 図2
  • 特許-電力の需給調整システム 図3
  • 特許-電力の需給調整システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】電力の需給調整システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20230404BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20230404BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20230404BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H02J3/38 120
H01M8/00 Z
H01M8/0656
H02J15/00 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019105309
(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公開番号】P2020198753
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】浅野 浩一
(72)【発明者】
【氏名】森田 寛
(72)【発明者】
【氏名】麦倉 良啓
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165388(JP,A)
【文献】特開2018-168205(JP,A)
【文献】特表2017-507239(JP,A)
【文献】特表2015-513531(JP,A)
【文献】特表2018-537532(JP,A)
【文献】特開2019-108238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 15/00
H01M 8/00
H01M 8/0656
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力が供給されることにより吸熱反応により必要物質を生成する電気化学手段と、
前記電気化学手段に設けられ、発熱反応により前記必要物質が生成される触媒手段とを備え、
前記電気化学手段は、
前記触媒手段で発生する熱により、前記電気化学手段による前記必要物質の生成に伴う熱が賄われ
前記電気化学手段は、
電解質を挟んで正側極、及び、負側極が備えられ、
前記負側極の側に前記触媒手段が設けられ、電力が供給されることで、前記必要物質が生成される電解モード、及び、
電力の供給がされない状況で、
前記触媒手段に炭化水素が送られてH を含む燃料に変換され、変換されたH を含む燃料が前記負側極に送られると共に、前記正側極にO が送られることで、電力が得られる発電モードを有している
ことを特徴とする電力の需給調整システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力の需給調整システムにおいて、
前記電気化学手段に供給される電力は、
再生可能エネルギー発電手段で発電された電力を含む
ことを特徴とする電力の需給調整システム。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の電力の需給調整システムにおいて、
前記必要物質は炭化水素を含む
ことを特徴とする電力の需給調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の需給バランスを効率的に調整することができる電力の需給調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料を使用しない再生可能エネルギーを用いた発電設備(再生可能エネルギー発電設備)が実用化されてきている。再生可能エネルギー発電設備は、自然環境により出力が大きく変化するため、負荷系統の需要を上回る余剰の電力が生じることが考えられる。供給される電力の変動に対応するため、余剰になった電力を用いてHを製造する電解装置が従来から提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示された技術を適用することにより、供給される電力が変動しても、余剰の電力が生じた際に電解装置を運転することで、電気分解によりHを製造して電力の需給を効率的に調整することができる。
【0004】
一般的に知られている電解装置は、吸熱を伴う電気化学反応によりHを製造する装置であるため、熱を補う必要があり、内部抵抗により発熱による熱以外に、余剰の電力を用いた熱源からの熱(発熱負荷)、もしくは、外部エネルギーを用いた熱源からの熱(発熱負荷)を投入する必要があった。
【0005】
このため、余剰の電力が発熱負荷に一部使用されるため、余剰の電力の全てをHの製造に使用することができない状況であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-29050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、電力の需要・供給に変動があっても、電力の需給バランスを効率的に調整することができる電力の需給調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の電力の需給調整システムは、電力が供給されることにより吸熱反応により必要物質を生成する電気化学手段と、前記電気化学手段に設けられ、発熱反応により前記必要物質が生成される触媒手段とを備え、
前記電気化学手段は、
前記触媒手段で発生する熱により、前記電気化学手段による前記必要物質の生成に伴う熱が賄われ
前記電気化学手段は、
電解質を挟んで正側極、及び、負側極が備えられ、
前記負側極の側に前記触媒手段が設けられ、電力が供給されることで、前記必要物質が生成される電解モード、及び、電力の供給がされない状況で、前記触媒手段に炭化水素が送られてH を含む燃料に変換され、変換されたH を含む燃料が前記負側極に送られると共に、前記正側極にO が送られることで、電力が得られる発電モードを有している
ことを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、システムに、例えば、HO(及びCO)を投入し、電力が供給されて、電解手段、及び、触媒手段を用いて必要物質(例えば、CH、O)を生成する。この時、電気化学手段に設けられた触媒手段で発生する熱を回収して電解製造(吸熱)が実施される。余剰の電力を必要物質(例えば、CH、O)の生成に全て(または部分的に)投入でき、余剰の電力を熱発生のための負荷(熱負荷)運転に用いる必要がなくなる。
また、電解質を挟んで正側極(陽極)、負側極(陰極)を有する電気化学手段に、電力を供給すると共に、負側極の側(触媒手段)に、例えば、H Oを送ることで、電解モードが実施される。
また、電解質を挟んで正側極(正極)、負側極(負極)を有する構成の電気化学手段に、炭化水素(CH )を送って吸熱反応によりH を含む燃料に変換し、変換されたH を含む燃料を負側極に送ると共に、正側極にO (空気)を送ることで、電力を得る発電モードが実施される。
【0010】
尚、供給される電力の過不足は、必要物質の生成の調整で需給バランスを調整し、電力の需給調整を行うことができる(需給調整システム)。
【0011】
COをシステムに投入する場合、例えば、負荷系統につながる発電設備(火力発電手段等)で回収されたCOを用いることができる。また、バイオマス由来のCOを用いることができる。電力の需要と供給の関係で、電力の供給が多くなって電力の価値が相対的に低下した際に、安価な電力で必要物質を生成することができる。
【0012】
従って、電力の需要・供給に変動があっても、電力の需給バランスを効率的に調整する
ことができる電力の需給調整システムとすることが可能になる。
発電モードを有しているので、供給される電力の過不足は、電解モードと発電モードの調整で需給バランスを調整し、電力の需給調整を行うことができる(需給調整システム)。
発電モードで発生する熱の冷却は、触媒手段の吸熱反応により実施され、別途冷却手段(冷却のためのエネルギー)を用いることなく、発電モードを実施することができる。電気化学手段に送られる炭化水素(CH )は、例えば、バイオマス由来の炭化水素(CH )を用いることができる。
電力の需要と供給の関係で、電力の需要が多くなって(供給が足りなくなって)電力の価値が相対的に高くなった際に、高価になる電力を需要側に供給することができる。
【0013】
そして、請求項2に係る本発明の電力の需給調整システムは、請求項1に記載の電力の需給調整システムにおいて、前記電気化学手段に供給される電力は、再生可能エネルギー発電手段で発電された電力を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る本発明では、再生可能エネルギー発電手段の電力の需要・供給の需給バランスを効率的に調整することができる。
【0017】
また、請求項3に係る本願発明の電力の需給調整システムは、請求項1もしくは請求項2に記載の電力の需給調整システムにおいて、前記必要物質は炭化水素を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項3に係る本発明では、必要物質は炭化水素(CH)を含むことで、既存のインフラを用いて必要物質としての炭化水素(CH)を扱う(移送、貯蔵等)ことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電力の需給調整システムは、電力の需要・供給に変動があっても、電力の需給バランスを効率的に調整することができる電力の需給調整システムとすることが可能になる。
【0025】
即ち、余剰の電力が生じた際に、発熱負荷の負担がない状態で電力の全てを必要物質の生成に用いることができる電気化学手段を備えることで、余剰の電力が生じた際に発熱負荷を賄うことなく電気化学手段を運転することができるので、電力の需給バランスを効率的に調整することができる電力の需給調整システムとすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の参考例に係る電力の需給調整システムを有する電力系統の概念図である。
図2】電解設備の概略構成図である。
図3】本発明の一実施例に係る電力の需給調整システムを有する電力系統の概念図である。
図4】電解・発電設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面に基づいて本発明の電力の需給調整システムを具体的に説明する。
【0028】
図1には本発明の参考例に係る電力の需給調整システムを有する電力系統を概略的に表した状態、図2には電気化学手段としての電解設備の概略構成を説明する断面視の状態を示してある。
【0029】
図1に示すように、系統1には負荷2が接続され、負荷2には系統1に投入された電力が供給されるようになっている。系統1には発電設備3(例えば、石炭火力発電設備)、再生可能エネルギー発電設備4(例えば、太陽光発電設備、風力発電設備等)が接続され、負荷2の需要に応じて発電設備3、再生可能エネルギー発電設備4で発電される。
【0030】
そして、系統1には、電気化学手段としての電解設備5が接続されている。電解設備5は、具体的には後述するが、系統1で余剰となった電力(例えば、再生可能エネルギー発電設備4で得られて余剰となった電力)を用いて必要物質としてCH、Oが生成される設備である。
【0031】
図2に示すように、電解設備5は、電解質(固体電解質膜)11を挟んで正側極としての陽極12、及び、負側極としての陰極13が備えられている。そして、陰極13の側に触媒手段としてメタネーション触媒14が設けられている。尚、陰極13とメタネーション触媒14を一体の構成にすることも可能である。
【0032】
電解設備5では、水蒸気(HO)、及び、例えば、発電設備3、再生可能エネルギー発電設備4で回収されたCOが触媒手段に投入され、電解合成で余剰の電力を用いて必要物質(CH、O)が生成される(電解モード)。
【0033】
電解合成反応は、熱を必要とする吸熱反応であるため、熱を補う必要がある。参考例の電解設備5は、メタネーション触媒14を備えており、電解合成で必要となる熱が、CHの生成に伴い発生する熱で賄われるようになっている。このため、電解合成に必要となる熱負荷を、余剰の電力、もしくは、外部エネルギーで補う必要がない。
【0034】
従って、電解合成に必要な発熱負荷を、余剰の電力や他のエネルギーで賄う必要がなくなるため、例えば、再生可能エネルギー発電設備4で発電されて余剰となった電力を、必要物質の生成に全て投入できる。このため、余剰の電力を負荷(熱負荷)運転に用いる必要がなくなる。
【0035】
上述した構成の電力の需給調整システムを有する電力系統の設備では、発電設備3、再生可能エネルギー発電設備4で発電された電力が系統1に投入され、負荷2の需要に応じて電力が供給される。例えば、自然環境の変化等で再生可能エネルギー発電設備4の発電量が多くなり過ぎた場合、余剰となった電力が電解設備5に送られ、必要物質(CH、O)が生成され、貯蔵することもできる。生成された必要物質(貯蔵された必要物質)は、他のプラント等で有効に利用される。
【0036】
このため、余剰の電力が発生しても、蓄電池等に余剰の電力を一時的に溜める等の作業を行うことなく、長期に亘り余剰の電力を有効に消費、貯蔵することが可能になる。
【0037】
電力の需要と供給の関係で、系統1への電力の供給が多くなって電力の価値(価格)が相対的に低下した際に、安価になる電力で必要物質を生成することができる。
【0038】
従って、上述した参考例の電力の需給調整システムは、余剰の電力が生じた際に、発熱負荷の負担がない状態で電力の全てを必要物質(CH、O)の生成に用いることができる電解設備5を備えることで、余剰の電力が生じた際に余剰の電力(他のエネルギー)で発熱負荷を賄うことなく電解設備5を運転することができる。
【0039】
尚、上述した参考例の電力の需給調整システムは、供給される電力の過不足は、必要物質の生成の調整で対応することで、需給バランスを調整し、電力の需給調整を行うことができる。
【0040】
尚、図1参考例では、発電設備3、再生可能エネルギー発電設備4、電解設備5を個別に系統1に接続し、系統1からの余剰の電力を電解設備5に供給するようにしたが、図中点線で示すように、発電設備3、再生可能エネルギー発電設備4、電解設備5をグループ化することも可能である。この場合、グループ内で発電が過剰となった場合、電力が電解設備5で調整される。
【0041】
図3図4に基づいて本発明の一実施例の電力の需給調整システムを説明する。
【0042】
図3には本発明の一実施例に係る電力の需給調整システムを有する電力系統を概略的に表した状態、図4には電気化学手段としての電解・発電設備の概略構成を説明する断面視の状態を示してあり、図4(a)は電解モードで運転している状態、図4(b)は発電モードで運転している状態である。
【0043】
尚、図1に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0044】
図3に示すように、系統1には、電気化学手段としての電解・発電設備15が接続されている。電解・発電設備15は、具体的には後述するが、系統1で余剰となった電力(再生可能エネルギー発電設備4で得られた電力)を用いて必要物質として、CH、Oが生成される設備とされている(電解モード)。
【0045】
また、電解・発電設備15は、再生可能エネルギー発電設備4の電力が変動して発電量が不足した場合、または、負荷2の需要が増大して、系統1の電力が不足した場合に、負側極に燃料としてH(CHが改質されて得られたH、CO)が供給されると共に、正側極に空気(O)が供給され、発電により電力が得られる設備とされている(発電モード)。
【0046】
つまり、電力の需給調整を行う設備として電解・発電設備15が備えられ、例えば、再生可能エネルギー発電設備4で発電された電力が余剰となった場合に、電解モードにより余剰の電力で必要物質(CH、O)が生成される。そして、系統1で消費される電力が不足した場合に、発電モードにより不足分の電力が発電される。この場合、電解モード単独で需要調整を行う場合と比較して、大幅に設備の稼働率を向上させることができる。
【0047】
図4に示すように、電解・発電設備15は、電解質(固体電解質膜)16を挟んで正側極17、及び、負側極18が備えられている。そして、負側極18の側に触媒手段として改質・メタネーション触媒19が設けられている。尚、負側極18と改質・メタネーション触媒19を一体の構成にすることも可能である。
【0048】
図4(a)に示すように、電解・発電設備15では、水蒸気(HO)、及び、例えば、発電設備3、再生可能エネルギー発電設備4で回収されたCOが触媒手段に投入され、電解合成で余剰の電力を用いて必要物質(CH、O)が生成される(電解モード)。この場合、電解・発電設備15は、正側極17が陽極として作用し、負側極18が陰極として作用する。
【0049】
電解合成反応は、熱を必要とする吸熱反応であるため、熱を補う必要がある。本実施例の電解・発電設備15は、改質・メタネーション触媒19を備えており、電解合成で必要となる熱が、CHの生成に伴い発生する熱で賄われるようになっている。このため、電解合成に必要となる熱負荷を、余剰の電力、もしくは、外部エネルギーで補う必要がない。
【0050】
従って、電解合成に必要な発熱負荷を、余剰の電力や他のエネルギーで賄う必要がなくなるため、例えば、再生可能エネルギー発電設備4で発電されて余剰となった電力を、必要物質の生成に全て投入できる。このため、余剰の電力を負荷(熱負荷)運転に用いる必要がなくなる。
【0051】
また、図4(b)に示すように、電解・発電設備15は、改質・メタネーション触媒19に炭化水素としてCHが送られることで燃料としてのH、COが生成される(吸熱反応)。生成されたH、COが負側極18(負極)を流通して燃料として使用され、Oが正側極17(正極)を流通して酸化剤として使用され、発電により電力が得られる(発熱)。
【0052】
上記構成の電力の需給調整システムは、電解・発電設備15は、改質・メタネーション触媒19を備えており、参考例と同様に、電解モードの運転時には、電解合成に必要な熱がCH4の生成に伴い発生する熱で賄われるようになっているので、電解合成に必要な熱負荷を、余剰の電力、もしくは、外部エネルギーで補う必要がない。
【0053】
つまり、電解・発電設備15では、改質・メタネーション触媒19で発生する熱が回収されて、電解合成が行われる。電解合成に必要な発熱負荷を余剰の電力(外部エネルギー)で賄う必要がないため、余剰の電力を必要物質の生成に全て投入できる。
【0054】
電力の需要と供給の関係で、系統1への電力の供給が多くなって電力の価値(価格)が相対的に低下した際に、参考例と同様に、安価になる電力で必要物質を生成することができる。
【0055】
上述した構成の電力の需給調整システムを有する電力系統の設備では、発電設備3、再生可能エネルギー発電設備4で発電された電力が系統1に投入され、負荷2の需要に応じて電力が供給される。例えば、自然環境の変化等で再生可能エネルギー発電設備4の発電量が多くなり過ぎた場合、余剰となった電力が電解・発電設備15に送られ、必要物質(CH、O)が生成され、貯蔵することもできる。生成された必要物質(貯蔵された必要物質)は、他のプラント等で有効に利用される。
【0056】
このため、参考例と同様に、余剰の電力が発生しても、蓄電池等に余剰の電力を一時的に溜める等の作業を行うことなく、長期に亘り余剰の電力を有効に消費、貯蔵することが可能になる。
【0057】
一方、再生可能エネルギー発電設備4の電力が変動して発電量が不足した場合、または、負荷2の需要が増大して、系統1の電力が不足した場合、電解・発電設備15で発電を行い、不足した電力を賄うことができる。即ち、発電モードの運転時は、電解・発電設備15は、改質・メタネーション触媒19にCHが送られることで燃料としてのH、COが生成される(吸熱反応)。
【0058】
生成されたH、COが負側極18を流通して燃料として使用され、Oが正側極17を流通して酸化剤として使用され、発電により電力が得られる(発熱反応)。改質・メタネーション触媒19での改質反応(吸熱反応)により、発電時の装置が冷却され、冷却のためのエネルギー、及び、設備を設ける必要がない。
【0059】
電解・発電設備15で発電を実施して電力の供給を可能にすることにより、電力の需要と供給の関係で、電力の需要が多くなって(供給が足りなくなって)電力の価値が相対的に高くなった場合、価値を高めた(高価になった)電力を需要側に供給することができる。
【0060】
従って、上述した一実施例の電力の需給調整システムは、参考例の電力の需給調整システムと同様に、発熱負荷の負担がない状態で電力の全てを必要物質の生成に用いることができる電解・発電設備15を備えることで、余剰の電力が生じた際に発熱負荷を賄うことなく電解・発電設備15を運転することができる。そして、系統1の電力が足りなくなった場合、電解・発電設備15で発電を行い、不足して高価となる電力を賄うことができる。
【0061】
このため、系統1で余剰となった電力(再生可能エネルギー発電設備4で得られた電力)を用いて必要物質が生成される設備とすることができるので、Hを生成する電解合成に比べて効率良く必要物質を生成することができる。
【0062】
また、改質・メタネーション触媒19によりCHが生成され、貯蔵することができるので、生成された必要物質を既存のインフラを用いて扱う(移送、貯蔵等)ことができる。
【0063】
そして、系統1で電力が不足した場合、電解・発電設備15で発電を実施して電力の供給を可能にすることができ、電解モード単独で需要調整を行う場合と比較して、大幅に設備の稼働率を向上させることができる。また、発電時に発生した熱は、改質・メタネーション触媒19における改質反応の吸熱により吸収(冷却)することができ、電力等の動力を用いた冷却手段を設ける必要がなく、発電効率を向上させることができる。
【0064】
従って、一実施例の電力の需給調整システムは、電力の需要・供給に変動があっても、電解・発電設備15の稼働率を大幅に向上させた状態で、電力の需給バランスを効率的に調整することが可能になる。
【0065】
尚、参考例と同様に、発電設備3、再生可能エネルギー発電設備4と電解・発電設備15をグループ化することも可能である。この場合、グループ内で発電が過剰となった場合、電力が電解・発電設備15で調整される。一方、グループ内での発電が不足した場合、電解・発電設備15で調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、電力の需要・供給に変動があっても、電力の需給バランスを効率的に調整することができる電力の需給調整システムの産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 系統
2 負荷
3 発電設備
4 再生可能エネルギー発電設備
5 電解設備
11、16 電解質
12 陽極
13 陰極
14 メタネーション触媒
15 電解・発電設備
17 正側極
18 負側極
19 改質・メタネーション触媒
図1
図2
図3
図4