(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】セメント組成物等の固結性評価方法および製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20230405BHJP
G01N 3/30 20060101ALI20230405BHJP
G01N 3/40 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
G01N33/38
G01N3/30 E
G01N3/40 B
(21)【出願番号】P 2019015744
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】山下 牧生
(72)【発明者】
【氏名】門田 浩史
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】特許第6069119(JP,B2)
【文献】特開2012-240874(JP,A)
【文献】特開2017-160061(JP,A)
【文献】特表2009-536141(JP,A)
【文献】特開平02-175637(JP,A)
【文献】特開2011-144070(JP,A)
【文献】特許第2950331(JP,B1)
【文献】特開2002-286220(JP,A)
【文献】特開2008-030961(JP,A)
【文献】内田俊一郎 ほか,石灰岩の固生成メカニズムの解明 その1,無機マテリアル学会第110回学術講演会講演要旨集,2005年,pp.46-47
【文献】岸吉宏 ほか,加湿および添加物混合による石炭灰の固化防止方法の検討,粉体工学会誌,2005年,Vol.42,pp.460-466
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/38
G01N 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(イ)、(ロ)および(ハ)を有することを特徴とする固結する性質を有する固結性粉体の固結性評価方法。
(イ)固結性粉体を容器内に充填する工程、
(ロ)該容器に充填した固結性粉体を圧力0.1~2.0MPaおよび温度30℃以上~90℃以下の環境下に一定期間静置する加圧加温工程、
(ハ)加圧加温工程の後に、容器に衝撃を加えて衝撃回数と粉体の崩落状態によって固結性を評価し、または容器内の粉体に始発針を一定圧力で差し込み、該始発針の貫入深さによって粉体の固結性を評価する評価工程。
【請求項2】
評価工程において、下記(イ)、(ロ)、または(ハ)の方法によって容器に衝撃を加え、容器内の粉体の半量以上が容器外に崩落する落下回数によって粉体の固結性を評価する請求項1に記載する固結性評価方法。
(イ)容器の開口部を下向きにして該容器を所定の高さから落下させることによって衝撃を加える方法、
(ロ)規格(JIS R 5201)に示されているフローテーブルに容器を載せて該フローテーブルを所定の振幅で落下運動を繰り返して衝撃を加える方法、
(ハ)規格(JISR5201)に規定されているモルタルの型詰に使用するテーブルバイブレータに容器を固定して所定の振幅と振動数で振動させて衝撃を加える方法、
【請求項3】
下記工程(イ)、(ロ)および(ハ)によって粉体の固結性を評価する工程を有するセメント組成物の製造方法。
(イ)固結性粉体を容器内に充填する工程、
(ロ)該容器に充填した固結性粉体を圧力0.1~2.0MPaおよび温度
30℃以上~90℃以下の環境下に一定期間静置する加圧加温工程、
(ハ)加圧加温工程の後に、容器に衝撃を加えて衝撃回数と粉体の崩落状態によって固結性を評価し、または容器内の粉体に始発針を差し込み、その貫入状態によって粉体の固結性を評価する評価工程。
【請求項4】
請求項3に記載する製造方法において、上記工程(イ)、(ロ)および(ハ)による粉体の固結性評価工程を原料の粉砕工程または分級工程の後に有し、または該固結性評価工程によって得られた固結性の指標をセメント組成物の製造工程の前処理工程にフィードバックするセメント組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物等について、貯蔵や輸送における固結状態を容易にかつ短時間で推測することができる固結性の評価方法とその評価工程を備えたセメント組成物等の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にセメント組成物は吸湿等による風化が懸念される材料であるため、製造出荷から使用までの日数は短く設定される。しかし、出荷環境や輸送環境などの都合によって計画通りの出荷ができない場合、サイロやタンクの構造、およびサイロ内での積載高さによっては貯蔵期間中に固結が懸念されるような場合がある。また、海上輸送では、季節や経路によっては、輸送距離が長い場合には輸送時間が長くなり、輸送船のタンク内は高温、高湿度になることがある。このような長期間の貯蔵では貯蔵場所の温度や湿度などによってセメント組成物が固結する場合がある。
【0003】
セメント組成物だけではなく、高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの粉体は、空気中の湿分によって固結する性質があり、固結状態によっては使用に支障をきたす場合がある。セメント組成物や高炉スラグ微粉末などのように空気中の湿分によって固結する性質を有する粉体を固結性粉体と云う。固結状態によっては搬出や抜き出し不良になり、多大な運送コストが掛かるばかりでなく、廃棄処分するにしても解砕などの処理コストが必要になる。また、貯蔵施設の使用効率を著しく低下させる場合があるなどの問題を招く。
【0004】
上記固結現象は、単純に外部環境の湿分を吸湿することによって生じるだけではなく、セメント組成物や上記粉体の成分によっても異なる。例えば、これらの固結性粉体に少量含まれる遊離酸化カルシウムや硫酸アルカリなどの可溶性成分が粒子表面に多く分布する場合は、吸湿による粒子間架橋が生じやすい。また、サイロや船舶のホールドのように固結性粉体が多量に貯蔵される環境では、固結性粉体の重量によって貯蔵庫底部の圧力が高くなり、固結性が強くなることに起因して一定量以上の貯蔵が困難なになる場合がある。
【0005】
セメント組成物や上記粉体などの固結性粉体において、その固結性は個々の粉体の種類によって異なり、また同じ種類の粉体であっても粉体のキャラクターやプロパティ等によって異なり一定ではない。そのため、貯蔵庫や船舶等に搬入する前にこれらの固結性粉体の固結性を予め評価しておき、固結性の高い材料については、保管や輸送の期間を短くすること、サイロやタンクの積載高さを低くすること、温度や湿度などを固結し難い範囲に管理することなどの対策が検討される。
【0006】
セメント組成物等の固結性を判断する方法として以下の方法が知られている。
(イ)特許第2950331号公報には、セメントの凝結試験に使用する標準棒が特定の深さに差し込まれるようにフライアッシュを容器に詰め、この容器を相対湿度100%(RH=100%)に近い湿気箱に入れてフライアッシュを吸湿させ、上記標準棒の侵入深さを測定してその経時変化によって粉体の固結性を判断する方法が記載されている。
(ロ)特開2011-144070号公報には、フライアッシュを、相対湿度66%および温度32℃の恒温恒湿槽に18時間静置して吸湿させた後に、パクセットインデックス(Pack Set Index)を測定して固結性を判断する方法が記載されている。
(ハ)特開2002-286220号公報には、容器内にフライアッシュを充填し、この容器を相対湿度100%および温度30℃の恒温恒湿環境下に24時間静置し、この吸湿前後のフライアッシュのせん断強度をベーン法によって測定し、該せん断強度の増加幅によってその固結性を判断する方法が記載されている。
【0007】
(ホ)特許第6069119号公報には、フライアッシュを温度0℃以上~30℃以下、および相対湿度50%以上の環境下に、4時間以上~10時間以下静置する高湿工程の後に、温度40~80℃、相対湿度0~40%の環境下に恒量になるまで静置する低湿工程を行い、これらの工程の前後で固結性を観測し、その値の比較によって固結性を判断する方法が記載されている。
(へ)非特許文献1には、フライアッシュを対湿度90%および温度20℃に放置し、これにビカー針標準棒を差し込み、その貫入量を1~5dまで測定して固結性を判断する方法が記載されている。
(ト)非特許文献2には、フライアッシュを相対湿度100%および温度20℃の環境下に24時間静置し、静置前後の貫入抵抗値を比較して固結性を判断する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許2950331号公報
【文献】特開2011-144070号公報
【文献】特開2002-286220号公報
【文献】特許第6069119号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】内藤俊一郎ほか、「石炭灰の固結生成メカニズムの解明-その1」、無機マテリアル学会、第110回学術講演会、講演要旨集、無機マテリアル学会、平成17年6月2日
【文献】永廻登ほか、「フライアッシュの固結とその防止方法」、セメント・コンクリート、社団法人セメント協会、昭和44年8月、No.270、22頁~29頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の上記判断方法は、いずれも一定の温度湿度条件下に吸湿させた粉体について測定する方法であり、貯蔵時や輸送時に粉体に加わる圧力の影響が考慮されていない。このため湿度が低い環境下において主として加圧により生じる固結性に関して適正に評価できない問題がある。
【0011】
本発明は、従来の固結性判断方法における上記問題を解決したものであり、セメント組成物等の固結性粉体について、貯蔵時の粉体重量による加圧を考慮した固結性の評価方法を提供する。また、本発明は上記固結性の評価工程を含むセメント組成物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の構成を有する固結性の評価方法と該固結性評価方法を有するセメント組成物の製造方法に関する。
〔1〕下記工程(イ)、(ロ)および(ハ)を有することを特徴とする固結する性質を有する固結性粉体の固結性評価方法。
(イ)固結性粉体を容器内に充填する工程、
(ロ)該容器に充填した固結性粉体を圧力0.1~2.0MPaおよび温度30℃以上~90℃以下の環境下に一定期間静置する加圧加温工程、
(ハ)加圧加温工程の後に、容器に衝撃を加えて衝撃回数と粉体の崩落状態によって固結性を評価し、または容器内の粉体に始発針を一定圧力で差し込み、該始発針の貫入深さによって粉体の固結性を評価する評価工程。
〔2〕評価工程において、下記(イ)、(ロ)、または(ハ)の方法によって容器に衝撃を加え、容器内の粉体の半量以上が容器外に崩落する落下回数によって粉体の固結性を評価する上記[1]に記載する固結性評価方法。
(イ)容器の開口部を下向きにして該容器を所定の高さから落下させることによって衝撃を加える方法、
(ロ)規格(JIS R 5201)に示されているフローテーブルに容器を載せて該フローテーブルを所定の振幅で落下運動を繰り返して衝撃を加える方法、
(ハ)規格(JISR5201)に規定されているモルタルの型詰に使用するテーブルバイブレータに容器を固定して所定の振幅と振動数で振動させて衝撃を加える方法、
〔3〕下記工程(イ)、(ロ)および(ハ)によって粉体の固結性を評価する工程を有するセメント組成物の製造方法。
(イ)固結性粉体を容器内に充填する工程、
(ロ)該容器に充填した固結性粉体を圧力0.1~2.0MPaおよび温度30℃以上~90℃以下の環境下に一定期間静置する加圧加温工程、
(ハ)加圧加温工程の後に、容器に衝撃を加えて衝撃回数と粉体の崩落状態によって固結性を評価し、または容器内の粉体に始発針を差し込み、その貫入状態によって粉体の固結性を評価する評価工程。
〔4〕上記[3]に記載する製造方法において、上記工程(イ)、(ロ)および(ハ)による粉体の固結性評価工程を原料の粉砕工程または分級工程の後に有し、または該固結性評価工程によって得られた固結性の指標をセメント組成物の製造工程の前処理工程にフィードバックするセメント組成物の製造方法。
【0013】
以下、本発明の方法を具体的に説明する。
本発明の固結性評価方法は、セメント組成物、高炉スラグ微粉末、フライアッシュなどのように空気中の湿分や粉体の自重による圧密によって固結する性質を有する粉体(固結性粉体)の固結性を評価する方法である。
【0014】
本発明の固結性評価方法は、具体的には、下記(イ)(ロ)(ハ)の各工程を有することを特徴とする固結性評価方法である。
(イ)固結性粉体を容器内に充填する工程、
(ロ)該容器に充填した固結性粉体を圧力0.1~2.0MPaおよび温度30℃以上~90℃以下の環境下に置く加圧加温工程、
(ハ)加圧加温工程の後に、容器に衝撃を加えて衝撃回数と粉体の崩落状態によって固結性を評価し、または容器内の粉体に始発針を一定圧力で差し込み、該始発針の貫入深さによって粉体の固結性を評価する評価工程。
【0015】
〔充填工程〕
充填工程では容器に固結性粉体を充填する。容器は、例えば、内径50mm、高さ100mmのシリンダー型容器などを用いると良い。開口部が加圧用のステムによって塞がれるシリンダー型容器を用いれば、次工程の加圧が容易になる。この容器に固結性粉体を例えばタッピングしながら数回に分けて、高さ50mm~60mm(容器の半分ほどの高さ)に充填し、上面を平らに均す。充填工程の環境は常温下(25℃前後)、相対湿度40%前後が好ましい。
【0016】
〔加圧加温工程〕
充填工程の後に、容器に充填した固結性粉体の上面に上記ステムを押し当て、0.1~2.0MPaの圧力を固結性粉体に静置期間を通じて継続的に加え、温度30℃以上~90℃以下の環境下に1週間静置する。加温方法は容器の外周にヒータを設けて温度30℃以上~90℃以下に加熱してもよい。圧力の大きさ、加温する温度、および静置期間は、例えば、輸送期間や貯蔵条件および貯蔵期間に応じて定めてもよい。なお、圧力が0.1MPa未満では固結状態を十分に再現することができず、2MPaを超えると容器内の粉体が固くなりすぎて評価に差が生じ難くなる。また、温度が30℃未満では固結状態を十分に再現することができず、90℃を超えると容器内の粉体が固くなりすぎて評価に差が生じ難くなる。
【0017】
上記加圧範囲(0.1~2.0MPa)、温度範囲(30℃以上~90℃以下)、および静置期間(1週間)を基準条件とすれば、試料の粉体について一般的な固結性を評価することができる。また、静置期間を輸送期間や貯蔵期間に応じて定めれば、試料の粉体について具体的な実施状況での固結性を評価することができる。
【0018】
〔評価工程〕
加圧加温工程の後に、容器に衝撃を加えて衝撃回数と粉体の崩落状態によって固結性を評価する。具体的には、例えば、容器の開口部を下向きにして該容器を所定の高さ、例えば30mmの高さから落下させることによって衝撃を加え、容器内の粉体の半量以上が容器外に崩落する落下回数によって粉体の固結性を評価する。
例えば、5回の落下回数を基準にし、落下回数が5回未満で容器内の粉体の半量以上が容器外に崩落するものを固結性なしとし、一方、容器内の粉体の半量以上が容器外に崩落するまでに5回以上かかるものを固結性ありとする。
また、この落下回数によって粉体の固結性を相対的に評価することができる。例えば、7回の落下によって容器内の粉体の半量以上が容器外に崩落する粉体Xと、12回の落下によって容器内の粉体の半量以上が容器外に崩落する粉体Yについて、粉体Xは粉体Yよりも固結性が低いことが分かる。
【0019】
落下の衝撃方法は、規格(JIS R 5201 「セメントの物理試験方法」)に示されているフローテーブルを用いた方法でもよい。具体的には、加圧加温工程を経た容器をその開口部を下向きにして上記フローテーブルに載せ、所定の振幅で落下運動を繰り返して衝撃を加える。具体的には、該フローテーブルを所定の高さ、例えば10mmの高さで落下運動を繰り返し、容器をテーブルから持ち上げたときに、容器内の粉体の半量以上が容器外に崩落する回数によって粉体の固結性を評価する。
【0020】
フローテーブルを用いた落下試験によれば人為的な試験誤差を出来るだけ排除することができる。なお、フローテーブルを用いない落下試験(直接落下試験)は高さ30mmからの落下であるのに対して、フローテーブルを用いた試験は振幅10mmでの落下運動を繰り返すので、テストピースに加わる衝撃力が直接落下試験よりも減少するため、容器内の粉体の半量以上が落下する回数は直接落下試験よりも増加する傾向になる。
【0021】
また、振動バイブレータを用いた評価を行うこともできる。具体的には、例えば、規格(JISR5201)に規定されているモルタルの型詰に使用するテーブルバイブレータを使用し、これに容器を固定して所定の振幅と振動数で一定時間振動させて、落下の有無を確認する評価方法を利用することができる。例えば、バイブレータの振幅は0.80±0.05mm、バイブレータの振動数は2800±50回/分にすればよい。また、固結性の基準は容器に加えた振動時間などによって評価すれば良い。
【0022】
粉体の固結性の評価方法は、容器内の粉体に一定圧力で始発針を差し込み、その貫入状態によって評価する方法でも良い。規格(JIS R 5201「セメントの物理試験方法」)に示されている凝結試験装置を用い、その始発針を、加圧加温工程を経た容器内の粉体上面に差し込み、その貫入深さによって該粉体の固結性を評価する。
具体的には、例えば、始発針の貫入深さが1mm未満の粉体は固結性ありと評価し、1mm以上の粉体は固結性なしと評価する。なお、始発針の形状や差し込み圧力などの測定条件は上記規格(JIS R 5201「セメントの物理試験方法」)に従えば良い。
この始発針の貫入試験によっても、上記落下試験と同様に粉体の固結性を判断することができる。
【0023】
本発明は、上記(イ)(ロ)および(ハ)の工程によって固結性を評価する工程を有するセメント組成物の製造方法を含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明の評価方法によれば、セメント組成物、高炉スラグ微粉末、フライアッシュなどのように空気中の湿分や粉体の自重による圧密によって固結する性質を有する固結性粉体について、粉体の積み込みや貯蔵中ないし移送中に粉体に加わる圧力を考慮した固結性を評価することができる。
【0025】
また、本発明の評価方法をセメント組成物等の製造工程に導入すれば、セメント組成物等の製造時にその固結を防止することができる。例えば、セメント組成物等の製造において、本発明の評価方法を粉砕工程や分級工程の後に導入すれば、原料粉体などの固結を防止することができる。また、本発明の評価方法によって得られた固結性の指標を、セメント組成物等の製造工程またはその前処理工程にフィードバックしても良い。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。
使用したセメント組成物A~Dの物性を表1に示す。表1の圧縮度は次式で定義される。圧縮度が大きいほど粉体の流動性が低く、一般的なセメントの圧縮度は概ね50%前後である。
圧縮度(%)=100×(固め嵩密度-緩め嵩密度)/固め嵩密度
固め嵩密度:粉体を容器に入れて締固めを行ったときの嵩密度
緩め嵩密度:粉体を容器に入れて締固めないときの嵩密度
【0027】
【0028】
〔実施例1〕
表1に示すセメント組成物A~Dをおのおのアクリル製シリンダー型の容器(内径50mm、高さ100mm)に高さ50~60mmになるまで、タッピングしながら2層にわけて充填した。次いで、加圧面が平滑なアクリル製のシリンダーを上記容器に挿入して粉体上面を軽く加圧して平らに均した。セメント組成物A~Dは各々3個の容器に充填した。充填時の温度は25℃、RH40%であった(充填工程)。
次に、上記シリンダーを押し込んで容器内の粉体に0.1MPa、0.5MPa、1.6MPaの圧力を加えて該圧力を保持し、さらに該容器を30℃(常温)~90℃の範囲で継続的に加熱し、1週間保持した(加圧加温工程)。
上記充填工程および加圧加温工程の後に、セメント組成物A~Dが各々入った容器を逆さまにして開口部を下向きにし、規格(JIS R 5201「セメントの物理試験方法」)に記載されるフローテーブル上に設置し、フローテーブルを振幅10mmで落下運動させて容器内の粉体に衝撃を加えることを繰り返し、容器内の粉体の半量以上が容器外に崩落するまでの落下回数を計測した(評価工程)。この結果を表2に示した。
【0029】
〔実施例2〕
実施例1で用いたセメント組成物A~Dについて、実施例1と同様にしてシリンダー型の容器に充填して同様に加圧加温で1週間保持した後に、該容器を逆さまにして開口部を下向きにし、30mmの高さから落下して、容器内の粉体の半量以上が容器外に崩落するまでの落下回数を計測した。この結果を表2に示した。
【0030】
フローテーブル落下試験(実施例1)において落下回数12回以上、直接落下試験(実施例2)において落下回数5回以上を固結性ありと評価した。この結果を表2に示した。
【0031】
【0032】
〔実施例3〕
上記セメント組成物A~Dをそれぞれ、輸送船の船内の温度および湿度を調整せずに、3週間輸送した後に、船倉内から排出する時に粉体が固結しているかどうかを確認した。この結果を表3に示した。フローテーブル落下試験において落下回数が12回以上であったセメント組成物A、B、および直接落下試験で落下回数が5回以上であったセメント組成物A、Bは何れもこの輸送中に固結が発生しており、一方、フローテーブル落下試験および直接落下試験において「固結性なし」と判断したセメント組成物C、Dは実際の輸送においても固結が発生しておらず、実施例1、2の落下試験は何れも実際の長期輸送と良く一致する結果が得られた。
【0033】