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特許7256689レジストパターンの製造方法及びレジスト膜
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  • 特許-レジストパターンの製造方法及びレジスト膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】レジストパターンの製造方法及びレジスト膜
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230405BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20230405BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
G03F7/20 521
H01L21/88 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019102201
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020197570
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大地
(72)【発明者】
【氏名】前平 謙
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-297113(JP,A)
【文献】特開平09-063935(JP,A)
【文献】特開2009-128409(JP,A)
【文献】特開2010-021428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 7/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に感光性のレジスト膜を形成する工程と、
基板表面に対して直交する方向から所定波長の光を照射してレジスト膜を露光する工程と、
露光されたレジスト膜を現像して所定のパターンで基板表面が露出したレジスト開口部を持つレジストパターンを形成する工程とを含むレジストパターンの製造方法において、
基板表面がレジスト膜を透過した光を反射するように構成され、
感光領域と非感光領域との界面を成すレジスト開口部の壁面が基板表面に対して直交方向に延びるように光を照射するときの最低限の光量を基準光量とし、レジスト膜の露光時の光量を、基準光量の50~70%の範囲内に設定することを特徴とするレジストパターンの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のレジストパターンの製造方法であって、前記光の波長が200nm~400nmの範囲であるものにおいて、
前記レジスト膜の厚みを前記光の波長の50倍以上に設定することを特徴とするレジストパターンの製造方法。
【請求項3】
前記レジストパターンのアスペクト比を1以上に設定することを特徴とする請求項1または請求項2記載のレジストパターンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターンの製造方法及びレジスト膜に関し、より詳しくは、リフトオフ法を用いて基板の表面に金属パターンを形成するのに適したものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造工程には、シリコンウエハ(以下「基板」という)の表面に引出配線としての金属パターンを形成する工程があり、このような金属パターンの形成に、所謂リフトオフ法が従来から利用されている。このものでは、基板表面に例えばポジ型のレジストを塗布して感光性のレジスト膜を形成し、レジスト膜の上方に配置されたフォトマスク越しに、基板表面に対して直交する方向から光(例えば紫外光)を照射してレジスト膜を露光する。これにより、レジスト膜の感光した部分が感光領域となり、フォトマスクで遮蔽されて光が照射されないレジスト膜の部分が非感光領域となる。
【0003】
次に、露光されたレジスト膜を現像すると、感光領域が除去されて、フォトマスクに対応するパターンで基板表面が露出したレジスト開口部を持つレジストパターンが形成される。その後、レジストパターンを含む基板表面全体に金属膜を成膜し、薬液によりレジストパターンをその上面に成膜された金属膜と共に除去することで、基板表面に所定の金属パターンが形成される。
【0004】
ここで、上記金属膜の成膜には、通常、スパッタリング法や蒸着法等のPVD法(物理蒸着法)が用いられるが、レジスト開口部の壁面にも金属膜が成膜され、これが基板表面に成膜されるものとつながっていると、レジストパターンに薬液を接触させることができないという問題が生じる。このような問題の解決法の一つとして、レジスト開口部の壁面を基板表面に向けて末広がりなテーパ状とすることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
上記従来例では、基板としてシリコンウエハのような不透明基板を用いる場合、基板表面を粗化し、レジスト膜の露光時に光を基板表面で乱反射させている。然し、これでは、基板表面に対する前処理が必要になって、製造工程が増えるばかりか、シリコンウエハに対する粗化により、半導体デバイスの性能低下を招来する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-185174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、以上の点に鑑み、基板表面を粗化することなく、PVD法で成膜する金属膜をリフトオフ法を用いてパターニングするのに適したレジストパターンを形成できるレジストパターン製造方法及びレジスト膜を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、基板表面に感光性のレジスト膜を形成する工程と、基板表面に対して直交する方向から所定波長の光を照射してレジスト膜を露光する工程と、露光されたレジスト膜を現像して所定のパターンで基板表面が露出したレジスト開口部を持つレジストパターンを形成する工程とを含む本発明のレジストパターンの製造方法は、基板表面がレジスト膜を通過した光を反射するように構成され、感光領域と非感光領域との界面を成すレジスト開口部の壁面が基板表面に対して直交方向に延びるように光を照射するときの最低限の光量を基準光量とし、レジスト膜の露光時の光量を、基準光量の50~70%の範囲内に設定することを特徴とする。
【0009】
ここで、発明者らが鋭意研究を重ねたところ、一般にこの種の用途で利用される感光性のレジスト膜に所定波長の光(例えば、波長365nmの紫外光)を照射した場合、その光量がある閾値を超えると、この閾値を超えたレジスト膜の部分が感光されて感光領域となる一方で、光が照射されるが、その光量がある閾値に達しないレジスト膜の部分は、不完全感光領域となり、この不完全感光領域は、露光時、例えばフォトマスクで遮蔽されて光が照射されないレジスト膜の非感光領域と同様、その後の現像においても除去されないことを知見するのに至った。
【0010】
以上の知見を基に、本発明では、露光時の光量を基準光量の50~70%の範囲内に設定する構成を採用することとした。これによれば、基板表面に対して直交する方向から、例えばフォトマスク越しに所定波長の光を照射すると、フォトマスクで光が遮蔽されないレジスト膜の部分において、レジスト膜の表面から第1深さまでの間は、その光量がある閾値を超えることで、フォトマスクの開口幅と同等の幅を持つ感光領域となる(言い換えると、感光領域と非感光領域との間の界面が、基板表面に対して直交する方向で下方に向けてのびる)。
【0011】
そして、第1深さを超えると、フォトマスクの開口内縁直下の位置に不完全感光領域が形成されるようになり、この不完全感光領域は、レジスト膜の表面から深さが増加するのに従い、その内方に向けて拡がるように大きくなる(言い換えると、感光領域と不完全感光領域との界面が、紡錘状に縮みながらのびる)。これは、露光時の光量を基準光量より少なく設定していることで、レジスト膜内に進入した光が第1深さを超えると減衰し、散乱することに起因するものと考えられる。
【0012】
さらに、第1深さより深い第2深さを超えると、不完全感光領域は、上記とは逆に、その外方に向けて縮むように小さくなり、基板表面に達する(言い換えると、感光領域と不完全感光領域との界面が、紡錘状に膨らみながらのびる)。これは、レジスト膜内を通過した光が基板表面で反射し、この反射した光が加わって光量が増加することに起因して、不完全感光領域が小さくなると考えられる。
【0013】
以上のようにして露光されたレジスト膜を現像すると、レジスト開口部の壁面の断面形状は、レジスト膜の表面から第1深さまでの間の垂直面と、第1深さから第2深さまでの間の次第に幅狭の第1湾曲面と、第2深さから基板表面までの間の次第に幅広の第2湾曲面とが連続したものとなる。これにより、リフトオフ法により金属パターンを形成する際に、上記レジストパターンを適用すると、PVD法により基板表面に金属膜を成膜する際、第1湾曲面と第2湾曲面との境界部により、基板表面に成膜される金属膜と、レジスト開口部の壁面に成膜される金属膜とを縁切りすることができ、レジストパターンに薬液を接触させることが可能になる。なお、露光時の光量が基準光量の70%より多いと、所望の不完全感光領域を形成できない場合がある一方で、露光時の光量が基準光量の50%より少ないと、基板表面まで光を透過させることができなくなる場合がある。
【0014】
本発明においては、前記光の波長が200nm~400nmの範囲である場合には、前記レジスト膜の厚みを前記光の波長の50倍以上に設定することが好ましい。50倍未満では、所望の不完全感光領域を形成できない場合がある。
【0015】
また、本発明においては、前記レジストパターンのアスペクト比を1以上に設定することが好ましい。アスペクト比が1未満だと、所望の不完全感光領域を形成できない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態のレジストパターン製造方法を示す模式断面図。
図2】本発明の実施形態のレジストパターン製造方法を示す模式断面図。
図3】(a)及び(b)は、図2に示すレジストパターンを用いた金属パターン形成方法を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、基板をシリコンウエハ(以下「基板Sw」という)とし、基板Sw表面にレジストパターンを形成(製造)し、このレジストパターンを用いたリフト法により基板Sw表面に金属パターンを形成する場合を例に本発明のレジストパターン製造方法の実施形態を説明する。
【0019】
図1を参照して、基板Swの表面にポジ型レジストを塗布して、所定の厚みdで感光性のレジスト膜1を形成する。レジスト膜1の厚みdは、後述する光の波長の50倍以上に設定される。50倍未満だと、本発明者らは回折の問題であると推測するが、後述するような不完全感光領域13を形成できないという不具合がある。以下においては、基板Swの表面側を上として説明する。
【0020】
次に、レジスト膜1の上方にフォトマスク2を配置する。フォトマスク2としては、例えば、ガラス基板や石英基板等の透明基板21の下面に遮光膜としてのクロム膜22をパターン形成した公知のものを用いることができる。そして、レジスト膜1の上面にフォトマスク2越しに所定波長の光3を照射して露光する。このとき、基板Sw表面に対して直交する方向から光3が照射され(光線平行度は、コリメーション半角≦1.5°、デクリネーション角≦1.0°とすることが好ましい)、レジスト膜1に感光領域11と非感光領域12とが形成される。露光時に照射する光3としては、波長が200nm~400nmの範囲のUV光を用いることができ、具体的には波長365nmのi線を例示できる。
【0021】
ここで、上記従来例では、露光時に、感光領域11と非感光領域12との界面(後述のレジスト開口部15の壁面)が基板Sw表面に対して直交方向に延びるように光3が照射される。このように光3を照射するときの最低限の光量を基準光量とすると、本発明者らは鋭意研究により、次のことを知見するのに至った。即ち、レジスト膜1に照射される光量がある閾値を超えると、このレジスト膜1の部分が感光領域11となる一方で、光3が照射されるが、その光量がある閾値に達しないレジスト膜1の部分は不完全感光領域13となる。この不完全感光領域13は、露光時に、例えばフォトマスク2で遮蔽されて光が照射されないレジスト膜1の非感光領域12と同様、その後の現像にて現像液で除去されない。尚、最低限の光量、すなわち基準光量については、例えば光3の照射により垂直面15aが基板Swの表面まで達するか否か(または不完全感光領域13が形成されるか否か)を指標として、実験的に最低限の光量を確定させることが良いが、レジストの標準露光量と膜厚を用いて照射するエネルギーを算出することで導いても良い。
【0022】
以上の知見を基に、本実施形態では、露光時の光量を基準光量の50~70%の範囲内に設定する構成を採用することとした。これにより、フォトマスク2(の遮光膜22)で遮蔽されないレジスト膜1の部分において、レジスト膜1の表面から第1深さh1までの間r1は、その光量がある閾値を超えることで、フォトマスク2の開口幅w1と同等の幅w2を持つ感光領域11となる。言い換えると、感光領域11と非感光領域12との間の界面が、基板Sw表面に対して直交する方向で下方に向けてのびる。そして、第1深さh1を超えると、フォトマスク2の開口内縁22a直下の位置に不完全感光領域13が形成されるようになり、この不完全感光領域13は、レジスト膜1の表面からの深さが増加するのに従い、その内方に向けて拡がるように大きくなる。言い換えると、感光領域11と不完全感光領域13との界面が、紡錘状に縮みながらのびる。これは、露光時の光量を基準光量より少なく設定していることで、レジスト膜1内に進入した光が第1深さh1を超えると減衰し、散乱することに起因するものと考えられる。そして、第1深さh1より深い第2深さh2を超えると(即ち、図中にr3で示す部分)、不完全感光領域13は、上記とは逆に、その外方に向けて縮むように小さくなり、基板Sw表面に達する。言い換えると、感光領域11と不完全感光領域13との界面が、紡錘状に膨らみながらのびる。これは、レジスト膜1内を通過した光が基板Sw表面で反射し、この反射した光が加わって光量が増加することに起因して、不完全感光領域13が小さくなると考えられる。
【0023】
このように露光されたレジスト膜1を現像すると、感光領域11が現像液に溶解して除去される一方で、不完全感光領域13は非感光領域12と共に現像液に溶解されずに残るため、図2に示すレジストパターン14(パターン状のレジスト開口部15を持つレジスト膜1)が形成(製造)される。このレジスト開口部15の壁面の断面形状は、レジスト膜1表面から第1深さh1までの間r1の垂直面15aと、第1深さh1から第2深さh2までの間r2の次第に幅狭の第1湾曲面15bと、第2深さh2から基板Sw表面までの間r3の次第に幅広の第2湾曲面15cとが連続したものとなり、第1湾曲面15bと第2湾曲面15cとの間に鋭角の境界部15dが形成される。ここで、レジストパターン14のアスペクト比(=レジスト開口部15の高さd/幅w2)は1以上に設定することが好ましい。アスペクト比が1未満であると、境界部15dを持つ不完全感光領域13を形成できないという不具合が生じる虞がある。尚、レジスト開口部15の幅w2は、例えば、50~500μmの範囲に設定することで、リフトオフ効果が高い不完全感光領域13を形成できる。
【0024】
次に、レジストパターン14の表面を含む基板Sw表面にPVD法により金属膜16を成膜する。PVD法としては、公知のスパッタリング法を用いることができるため、成膜条件を含めてこれ以上の説明を省略する。スパッタリング法により金属膜16を成膜する場合、図示省略の金属製のターゲットをスパッタリングし、ターゲットから飛散したスパッタ粒子を付着、堆積させることにより成膜する。図3(a)に示すように、スパッタ粒子Psの中には、基板Sw表面に対して斜めに入射するものを含まれるが、第1湾曲面15bと第2湾曲面15cとの境界部15dにより、基板Sw表面に成膜される金属膜16aとレジスト開口部15の壁面に成膜される金属膜16bとが縁切りされる(つまり、第2湾曲面15cの表面には金属膜が成膜されない)。このため、レジスト剥離用の薬液をレジストパターン14に接触させることが可能となり、薬液によりレジストパターン14を除去することにより、このレジストパターン14表面に成膜された金属膜16bが除去(リフトオフ)され、基板Sw表面に金属膜16aが金属パターンとして残る(図3(b)参照)。
【0025】
以上によれば、PVD法で成膜する金属膜16をリフトオフ法を用いてパターニングするのに適したレジストパターン14を基板Sw表面に形成することができる。しかも、上記従来例のように基板Sw表面を粗化しないため、基板Sw表面に対する前処理が不要であり、半導体デバイスの性能低下を招来することもない。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しないものであれば、種々の変形が可能である。上記実施形態では、ポジ型レジストを塗布してレジスト膜1を形成しているが、ネガ型レジストを塗布してレジスト膜を形成する場合にも本発明を適用することができる。
【0027】
上記実施形態では、スパッタリング法により金属膜16を成膜する場合を例に説明したが、金属膜16の成膜方法としては、蒸着法のような他のPVD法を用いることができる。この場合も、レジスト開口部15の壁面にも金属膜16bが成膜されるため、本発明で形成されたレジストパターン14を適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
Sw…基板、1…レジスト膜、11…感光領域、12…非感光領域、13…不完全感光領域、14…レジストパターン、15…レジスト開口部、3…光。
図1
図2
図3