(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】MTF測定装置およびそのプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 11/02 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
G01M11/02 A
(21)【出願番号】P 2019077869
(22)【出願日】2019-04-16
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2018086680
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】正岡 顕一郎
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-134861(JP,A)
【文献】特開2011-191244(JP,A)
【文献】特開2018-013416(JP,A)
【文献】特開2015-094701(JP,A)
【文献】特開2007-309764(JP,A)
【文献】特開2010-160016(JP,A)
【文献】特開2001-324413(JP,A)
【文献】特開平09-098292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00-11/08
G03B 9/00-9/70
G03B 19/00-19/16
G03B 21/00-21/64
G03B 25/00-25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
境界でコントラストの異なるチャートを用いて、撮像系の解像度の空間周波数特性を表すMTFを測定するMTF測定装置であって、
前記撮像系により前記チャートを撮像したチャート画像から、前記境界を含んだ画像であるROI画像を抽出するROI画像抽出手段と、
サブピクセル間隔のビンの位相をずらした複数の投影軸に、前記境界であるエッジの傾きに沿って前記ROI画像の各画素を投影した位相別のエッジ投影情報を生成する位相別エッジ投影情報生成手段と、
前記位相別のエッジ投影情報を用いて、Slanted-edge法により位相別のMTFを算出する位相別MTF算出手段と、
前記位相別のMTFを平均化する平均化手段と、
前記位相別のMTFの中で、前記平均化手段で平均化されたMTFに最も近似する位相を選定する位相選定手段と、
前記位相別のエッジ投影情報の中で、前記位相選定手段で選定された位相のエッジ投影情報を用いて、前記Slanted-edge法により、前記撮像系が撮像する前記チャート画像から順次抽出される前記ROI画像において、前記位相選定手段で選定された位相のMTFを算出する選定位相MTF算出手段と、
を備えることを特徴とするMTF測定装置。
【請求項2】
前記平均化手段は、前記位相別のMTFにおいて、予め定めた基準周波数のMTF値を平均化し、
前記位相選定手段は、前記平均化手段で平均化されたMTF値と前記基準周波数において最も近いMTF値を有する前記ビンの位相を選定することを特徴とする請求項1に記載のMTF測定装置。
【請求項3】
前記平均化手段は、前記位相別のMTFにおいて、予め定めた基準MTF値の周波数を平均化し、
前記位相選定手段は、前記平均化手段で平均化された周波数と前記基準MTF値において最も近い周波数を有する前記ビンの位相を選定することを特徴とする請求項1に記載のMTF測定装置。
【請求項4】
前記平均化手段は、前記位相別のMTFにおいて、予め定めた周波数範囲のMTFの面積を平均化し、
前記位相選定手段は、前記平均化手段で平均化された面積に最も近い面積を有する前記ビンの位相を選定することを特徴とする請求項1に記載のMTF測定装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載のMTF測定装置として機能させるためのMTF測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラの空間周波数特性を示すMTF(Modulation Transfer Function)を測定するMTF測定装置およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高解像度テレビジョンの最大の特徴は、高い空間解像度であり、カメラの解像度特性が重要となる。現行のハイビジョンカメラの解像度測定として、複数の空間周波数を有する矩形波が空間的に配置されたテストチャートを用いる手法が知られている。このテストチャートには、一般に、一般社団法人映像情報メディア学会(ITE:The Institute of Image Information and Television Engineers)が提供しているテストチャート(ITE高精細度インメガサイクルチャート:
図10参照)が用いられる。
図10に示すように、インメガサイクルチャートは、映像周波数1MHzから36MHzまでに相当する白黒の縦縞を並べ、チャート中央と4つのコーナー部分に800TVL/ph(27.5MHz)の縦縞を並べた矩形波のパターンを有している。
インメガサイクルチャートを用いる手法では、測定者が波形モニタから矩形波の変調度の空間周波数特性を表すCTF(Contrast Transfer Function)を読み取ることが一般的である。
【0003】
このインメガサイクルチャートを用いる手法は、波形モニタから目視でCTFを読み取ることができる手軽さはあるが、サンプリングの位相やカメラノイズの影響で波形の振幅が変動する曖昧さがある。また、インメガサイクルチャートを用いる手法は、測定対象であるレンズの中央と周辺では解像度特性が異なるため、800TVL/phに相当するチャート中央における矩形波応答しか測定していないのが現状である。
さらに、インメガサイクルチャートを用いる手法は、所望の空間周波数特性を得るために撮像画角を正確にチャートサイズにフレーミングする必要がある。しかし、例えば、4K/8Kカメラでは広角レンズを使うことが多いため、サイズの大きいインメガサイクルチャートが必要になり、非現実的である。
【0004】
そこで、近年では、インメガサイクルチャートを用いた手法に代わり、チャートサイズが比較的小さくてフレーミングが不要なSlanted-edge法(傾斜エッジ法)が提案されている。Slanted-edge法は、撮像素子に対して垂直(または水平)方向から数度傾いた境界が直線となる白黒パターンをカメラで撮像し、撮像画像中の所定領域(ROI:Region Of Interest〔関心領域〕)の画像(ROI画像)を用いて、周波数特性(MTF)を測定する手法である(特許文献1,2、非特許文献1参照)。
【0005】
ここで、
図11を参照して、従来のSlanted-edge法によるMTF測定について説明する。
まず、Slanted-edge法は、チャートを撮像したチャート画像(不図示)から、
図11(a)に示すようなエッジを含む関心領域(ROI)Rを選定する。
次に、Slanted-edge法は、
図11(b)に示すように、関心領域Rからエッジを検出し、その傾きθeを求める。そして、Slanted-edge法は、関心領域Rの各画素を、エッジeに沿って、等間隔に区分されたビンが並ぶ投影軸(x軸)に投影する。このとき、ビンの幅は、関心領域Rの1画素の幅の1/4、1/8といったサブピクセル幅とする。
【0006】
そして、Slanted-edge法は、投影軸のビンに投影された画素の値を各ビンで平均化することで、
図11(c)に示すようなオーバーサンプリング(ISO12233の場合、4倍オーバーサンプリング)されたエッジプロファイル(エッジ広がり関数)を求める。
さらに、Slanted-edge法は、エッジプロファイルを微分することで、
図11(d)に示すような線広がり関数(LSF:Line Spread Function)を求める。
最後に、Slanted-edge法は、LSFをフーリエ変換し、絶対値をとることで、
図11(e)に示すように、MTFを求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-94701号公報
【文献】特開2018-13416号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】ISO 12233:2017,“Photography - Electronic still picture imaging - Resolution and spatial frequency responses”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
離散系は出力がサンプリング位置に依存しないシフト不変な系ではないが、Slanted-edge法は、エッジの位相がサンプリング位置に対して、一様に分布すると仮定し、十分高いオーバーサンプリング比で超解像して得られるエッジ応答からMTFを算出する。
しかし、エッジの傾き角度によっては、オーバーサンプリングでエッジ応答を算出する際に、ビンに投影される画素数のばらつきにより、測定精度が落ちるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、Slanted-edge法でMTFを測定する場合に、MTFの測定精度を高めることが可能なMTF測定装置およびそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係るMTF測定装置は、境界でコントラストの異なるチャートを用いて、撮像系の解像度の空間周波数特性を表すMTFを測定するMTF測定装置であって、ROI画像抽出手段と、位相別エッジ投影情報生成手段と、位相別MTF算出手段と、平均化手段と、位相選定手段と、選定位相MTF算出手段と、を備える構成とした。
【0012】
かかる構成において、MTF測定装置は、ROI画像抽出手段によって、撮像系によりチャートを撮像したチャート画像から、境界を含んだ画像であるROI画像を抽出する。
そして、MTF測定装置は、位相別エッジ投影情報生成手段によって、サブピクセル間隔のビンの位相(ビニング位相)をずらした複数の投影軸に、境界であるエッジの傾きに沿ってROI画像の各画素を投影した位相別のエッジ投影情報を生成する。これによって、ビンの位相別に、ビンの位置とROI画像の各画素位置とが対応付けられることになる。このように、異なる位相でエッジ投影情報を生成することで、ビンに投影される画素数が位相ごとに変化し、種々の投影パターンを反映することができる。
【0013】
そして、MTF測定装置は、位相別MTF算出手段によって、位相別のエッジ投影情報を用いて、Slanted-edge法により位相別のMTFを算出する。これによって、種々の投影パターンを反映したMTFを生成することができる。
そして、MTF測定装置は、平均化手段によって、位相別のMTFを平均化し、位相選定手段によって、位相別のMTFの中で平均化されたMTFに最も近似する位相を選定する。これによって、複数の位相の中で、MTFの誤差が最も少ない最適な位相が選定されることになる。
【0014】
そして、MTF測定装置は、以降のMTF測定において、エッジの位置がずれないことを前提として、選定位相MTF算出手段によって、位相別のエッジ投影情報の中で、位相選定手段で選定された位相のエッジ投影情報を用いて、Slanted-edge法により、撮像系が撮像するチャート画像から順次抽出されるROI画像において、位相選定手段で選定された位相のMTFを算出する。
これによって、MTF測定装置は、撮像系から時系列で入力されるチャート画像に対して、エッジ投影情報の生成を省略して、高速にMTFを算出することができる。
【0018】
なお、MTF測定装置は、コンピュータを、前記した各手段として機能させるためのMTF測定プログラムで動作させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
本発明によれば、投影軸に投影するビンの位相をずらして算出したMTFの平均または平均に最も近い位相を用いて、MTFの測定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るMTF測定装置の構成を示すブロック構成図である。
【
図2】撮像画像におけるROIを説明するための図であって、(a)は垂直のROI(垂直エッジ画像)、(b)は水平のROI(水平エッジ画像)である。
【
図3】ROI画像の各画素位置と投影軸のビンとの対応を説明するための説明図である。
【
図4】投影軸のビンの位相をずらした状態を説明するための説明図である。
【
図5】エッジプロファイルを生成する手法を説明するための説明図である。
【
図6】MTFの平均を説明するための複数のMTFのグラフ図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るMTF測定装置のリアルタイム測定動作を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態に係るMTF測定装置の非リアルタイム測定動作を示すフローチャートである。
【
図9】多方向のエッジを含むチャートの例を示す図である。
【
図10】従来のチャートの例であるインメガサイクルチャートである。
【
図11】従来のSlanted-edge法のMTF測定手順を(a)~(e)で説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[MTF測定装置の構成]
最初に、
図1を参照して、本発明の実施形態に係るMTF測定装置1の構成について説明する。
【0022】
MTF測定装置1は、撮像系2の空間周波数特性を表すMTFを測定するものである。ここで、MTF測定装置1は、撮像系2と表示装置3とを接続する。
撮像系2は、MTFの被測定対象となるビデオカメラまたはスチールカメラ、MTFの被測定対象となるレンズを含んだカメラ等である。なお、撮像系2は、MTF特性に影響を与える映像処理装置(例えば、ダウンコンバータ、アップコンバータ〔超解像〕)であってもよい。また、被測定対象は、カメラのDETAIL(ディテール)コントロールによってMTFが変化する映像であってもよい。
撮像系2は、チャートCHを撮像した画像(動画像または静止画像)を、MTF測定装置1に出力する。
【0023】
チャート(MTF測定用チャート)CHは、境界でコントラストの異なるチャートであって、撮像系2の撮像素子(不図示)に対して垂直方向または水平方向から所定角度傾いた境界が直線となる白黒パターンを有するSlanted-edge法で用いるチャートである。撮像系2は、チャートCHの白黒の境界線が、所定角度(数度程度)傾いた状態で撮像する。
【0024】
ここで、水平方向の周波数特性を測定する場合、撮像系2は、
図2(a)のように、境界線を斜め垂直方向にした状態でチャートCHを撮像する。また、垂直方向の周波数特性を測定する場合、撮像系2は、
図2(b)のように、境界線を斜め水平方向にした状態でチャートCHを撮像する。
なお、境界線はチャートCHの中央部分に位置する必要はなく、撮像系2のMTFを測定したい撮像領域、例えば、チャートCHの中央右(左、上、下)部分、右(左)斜め上部分、右(左)斜め下部分等にあってもよい。
【0025】
表示装置3は、MTF測定装置1を操作するユーザインタフェースを提供するとともに、撮像系2が撮像したチャート画像、測定結果となるグラフ等を表示するものである。例えば、表示装置3は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。
なお、表示装置3は、撮像系2が撮像したチャート画像を表示する表示装置と、測定結果を表示する表示装置とをそれぞれ別に設けてもよい。
以下、撮像系2で撮像された画像によって、撮像系2のMTFを測定するMTF測定装置1の構成について詳細に説明する。
【0026】
図1に示すように、MTF測定装置1は、チャート画像記憶手段10と、ROI設定手段11と、測定指示手段12と、ROI画像抽出手段13と、第1MTF算出手段14と、エッジ投影情報記憶手段15と、平均化手段16と、位相選定手段17と、第2MTF算出手段18と、MTF出力手段19と、を備える。
【0027】
チャート画像記憶手段10は、撮像系2でMTF測定用のチャートCHを撮像した画像(チャート画像)を記憶するものである。なお、撮像系2の出力が動画像であれば、チャート画像記憶手段10は、図示を省略した映像入力手段を介して、チャート画像が撮像系2からフレーム画像として順次時系列に入力され、入力したチャート画像を上書き記憶する。すなわち、チャート画像記憶手段10は、新たなチャート画像が撮像系2から入力された場合、すでに記憶しているチャート画像を新たなチャート画像で上書きする。このチャート画像記憶手段10は、例えば、ハードディスク、メモリ等の一般的な記憶装置である。
なお、チャート画像記憶手段10が記憶するチャート画像は、図示を省略した映像出力手段を介して表示装置3に出力されるとともに、ROI画像抽出手段13によって読み出される。
【0028】
ROI設定手段11は、撮像系2で撮像したチャート画像内で、境界(エッジ)を含む関心領域(ROI)を設定するものである。例えば、ROI設定手段11は、表示装置3が表示しているチャート画像内において、測定者が操作するポインティングデバイス(不図示)で矩形領域を指定されることで、ROIの領域(位置、大きさ等)をROI情報として設定する。
【0029】
ここで、水平方向の周波数特性を測定する場合、ROI設定手段11は、測定者によって、
図2(a)のように、チャートCHを撮像したチャート画像から、縦長の矩形領域(ROI)を指定されることで、ROI情報を設定する。この場合、ROIによって、水平方向で明度が異なるROI画像(垂直エッジ画像)Rが特定されることになる。
また、垂直方向の周波数特性を測定する場合、ROI設定手段11は、測定者によって、
図2(b)のように、チャートCHを撮像したチャート映像から、横長の矩形領域(ROI)を指定されることで、ROI情報を設定する。この場合、ROIによって、垂直方向で明度が異なるROI画像(水平エッジ画像)Rが特定されることになる。
【0030】
なお、ROI設定手段11によるROIの設定は、順次入力されるチャート画像において、ROIを変更する必要がなければ、一度の設定でよい。また、ROI設定手段11が設定するROIは、形状が特定できれば、必ずしも矩形である必要はない。
ROI設定手段11は、設定したROIの領域(位置、大きさ等)を示すROI情報をROI画像抽出手段13に出力する。
【0031】
測定指示手段12は、MTF測定の開始の指示を受け付けるものである。例えば、図示を省略したスイッチで指示を受け付けたり、表示装置3に指示画面を表示し、マウス等の操作によって指示を受け付けたりするものであってもよい。なお、測定指示手段12は、MTF測定の指示とともに、動作モードを受け付ける。
【0032】
動作モードは、MTF測定を行う際のMTF測定装置1の動作を規定するものである。ここでは、MTF測定装置1は、動作モードとして、リアルタイムモードと、非リアルタイムモードとで動作する。
リアルタイムモードは、撮像系2から入力される画像(動画像)に対して、フレーム画像ごとに逐次MTFを測定(リアルタイム測定)するモードである。
このリアルタイムモードでは、第1MTF算出手段14で最初に行うSlanted-edge法におけるROI画像の各画素位置と投影軸のビンの位置との最適な対応付けを、第2MTF算出手段18での処理において流用し、その対応付けでROIの画素をビン位置に投影することで、順次入力されるチャート画像からMTFを測定する。
【0033】
なお、リアルタイムモードでは、測定中にエッジの位置がずれないことを前提とする。すなわち、リアルタイムモードでは、撮像系2のフォーカスが変化してもエッジの境界がぼやけるだけで、エッジの傾きや位置は基本的に変わらない。そのため、MTF測定装置1は、第2MTF算出手段18において、ROI画像の各画素位置と投影軸のビンの位置との対応付けを省略することができる。
【0034】
非リアルタイムモードは、撮像系2から入力される画像に対して、1フレーム画像分のMTFを測定するモードである。MTF測定装置1は、非リアルタイムモードを指定された場合、そのタイミングでチャート画像記憶手段10に記憶されているチャート画像によりMTFを測定する。
測定指示手段12は、指示を受け付けた段階で、指定された動作モードをROI画像抽出手段13および平均化手段16に出力する。
【0035】
ROI画像抽出手段13は、チャート画像記憶手段10が記憶するチャート画像から、ROI設定手段11で設定されたROI情報で示されるROIの領域(位置、大きさ等)の画像を、ROI画像として抽出するものである。
なお、ROI画像抽出手段13は、測定指示手段12から、動作モードとして、リアルタイムモードを指定された場合、抽出したROI画像を、第1MTF算出手段14に出力した後、チャート画像記憶手段10にチャート画像が入力されるたびに、ROI画像を抽出し、抽出したROI画像を、第2MTF算出手段18に出力する。
また、ROI画像抽出手段13は、測定指示手段12から、動作モードとして、非リアルタイムモードを指定された場合、抽出したROI画像を、第1MTF算出手段14に出力する。
【0036】
第1MTF算出手段14は、ROI画像抽出手段13で抽出されたROI画像から、MTFを算出するものである。この第1MTF算出手段14は、Slanted-edge法におけるROI画像の各画素位置と投影軸のビンの位置とを対応付ける際に、ビンの位相(ビニング位相)を変えて、位相別にMTFを算出する。
ここで、第1MTF算出手段14は、位相別エッジ投影情報生成手段14aと、位相別MTF算出手段14bと、を備える。
【0037】
位相別エッジ投影情報生成手段14aは、ROI画像抽出手段13で抽出されたROI画像から、投影軸のビンの位相ごとにエッジ投影情報を生成するものである。エッジ投影情報は、ROI画像のコントラストの境界をエッジとして、エッジの傾きに沿ってROIの画素と、その画素を投影軸に投影した位置とを対応付けた情報である。
【0038】
具体的には、位相別エッジ投影情報生成手段14aは、まず、ROI画像における水平方向および垂直方向の軸を2軸とする座標系(xy座標系)において、エッジの傾きを求める。このエッジの傾きは、一般的な手法で求めることができるが、例えば、以下の参考文献に示すように、ROI画像に正規累積密度関数等をフィッティングすることにより求めることができる。
(参考文献)K. Masaoka et al., "Modified slanted-edge method and multidirectional modulation transfer function estimation", Optics Express, 22(5), 2014
そして、位相別エッジ投影情報生成手段14aは、ROI画像の各画素位置と、エッジの傾きに沿って各画素を投影軸(x軸またはy軸)に投影した位置とを対応付けたエッジ投影情報を生成する。
【0039】
ここで、
図2(a)のROIで特定されるROI画像(垂直エッジ画像)Rから、MTFとして水平方向の周波数特性を求める場合、位相別エッジ投影情報生成手段14aは、
図3に示すように、エッジeの傾きθeと同じ角度で水平軸(x軸)にROI画像の画素を投影する。
また、
図2(b)のROIで特定されるROI画像(水平エッジ画像)Rから、MTFとして垂直方向の周波数特性を求める場合、位相別エッジ投影情報生成手段14aは、エッジの傾きと同じ角度で垂直軸(y軸:不図示)にROI画像の画素を投影する。もちろん、位相別エッジ投影情報生成手段14aは、例えば、ROI画像(水平エッジ画像)Rを左90度回転させて、垂直エッジ画像と同じ処理を行ってもよい。
投影軸の座標の幅(ビン幅)は、画素よりも小さいサブピクセル単位とし、ここでは、例えば、1画素の1/4の幅(4倍オーバーサンプリング)とする。
【0040】
この位相別エッジ投影情報生成手段14aは、ROI画像の画素と、サブピクセル単位で区分された投影軸に配置されたビンの位置とを対応付けたエッジ投影情報を生成する。また、位相別エッジ投影情報生成手段14aは、投影軸のビンの位相をずらして複数の位相で、エッジ投影情報を生成する。
【0041】
ここで、
図4を参照して、投影軸のビンの位相(ビニング位相)について説明する。
図4では、投影軸(x軸)の画素x
1,x
2,…,x
Mをサブピクセル化したサブピクセルx
1,0,x
1,1,x
1,2,x
1,3,x
2,0,…,x
M,3が、ビンの位置に対応する。
位相別エッジ投影情報生成手段14aは、
図4に示すように、最上段に示した投影軸(x軸)を、予め定めた位相のずれで、ビンの位置を軸方向に変化させて、その位相ごとにエッジ投影情報を生成する。なお、ビンの位置を順次軸方向に変化させた場合、最下段に示した投影軸のように、画素x
1に隣接する画素x
0のサブピクセルx
0,3が、ROI画像の画素を投影する新たなビンとなる。
【0042】
ここで、1ビン分の位相を2πとし、最上段の位相を“0”としたとき、位相別エッジ投影情報生成手段14aは、最上段の投影軸(x軸)から、2π/N,(2π×2)/N,…,(2π×(N-1))/Nと、2π/Nずつ位相を軸方向にずらしたN個の投影軸(x軸)ごとに、ROI画像の画素と投影軸のビンの位置とを対応付ける。
ここで、Nは、予め定めた位相数(正整数)であって、例えば、N=16、N=32等である。
これによって、ROI画像の画素は、ビンの位相ごとに、種々のパターンで投影軸のビンに投影されることになる。
図1に戻って、MTF測定装置1の構成について説明を続ける。
【0043】
位相別エッジ投影情報生成手段14aは、ビンの位相ごとに、エッジ投影情報をエッジ投影情報記憶手段に15記憶する。
位相別エッジ投影情報生成手段14aは、予め定めた位相数分のエッジ投影情報を生成した段階で、エッジ投影情報の生成が完了した旨を位相別MTF算出手段14bに通知する。
【0044】
位相別MTF算出手段14bは、ROI画像抽出手段13で抽出されたROI画像から、ビンの位相別にMTFを算出するものである。
この位相別MTF算出手段14bは、Slanted-edge法により、MTFを算出するが、ROI画像の各画素と投影軸のサブピクセル単位の座標位置との対応については、位相別エッジ投影情報生成手段14aが生成し、エッジ投影情報記憶手段15に記憶されている位相別のエッジ投影情報を参照する。
【0045】
具体的には、
図2(a)のROIで特定されるROI画像(垂直エッジ画像)Rから、MTFとして水平方向の周波数特性を求める場合、位相別MTF算出手段14bは、
図3のように対応付けられたエッジ投影情報により、ROI画像の各画素を、
図5に示すように、投影軸(x軸)に投影し、ビンごとに画素値を平均化することで、エッジの特性を示すエッジプロファイルを生成する。
また、
図2(b)のROIで特定されるROI画像(水平エッジ画像)Rから、MTFとして垂直方向の周波数特性を求める場合、位相別MTF算出手段14bは、エッジ投影情報により、ROI画像の各画素の画素値を、垂直軸(y軸:不図示)に投影し、サブピクセル単位ごとに平均化することで、エッジの特性を示すエッジプロファイルを生成する。
【0046】
また、位相別エッジ投影情報生成手段14aにおいて、水平エッジ画像を左90度回転させて、垂直エッジ画像と同じエッジ投影情報を生成することとした場合、位相別MTF算出手段14bは、水平エッジ画像を左90度回転させて、垂直エッジ画像と同様にエッジプロファイルを生成すればよい。
なお、位相別MTF算出手段14bは、位相別のエッジ投影情報ごとに、エッジプロファイルを生成する。
そして、位相別MTF算出手段14bは、位相別のエッジプロファイルをそれぞれ微分することで、位相別の線広がり関数(LSF:Line Spread Function)を求め、そのLSFをフーリエ変換することでMTFを求める。
これによって、位相別MTF算出手段14bは、投影軸のビンの位相ごとに、複数のMTFを算出することができる。
【0047】
なお、位相別エッジ投影情報生成手段14aおよび位相別MTF算出手段14bにおいて、MTFとして水平方向の周波数特性を求めるか、垂直方向の周波数特性を求めるかは、予め設定しておくものとしてもよいし、ROI画像が縦長であるか横長であるかによって、判定することとしてもよい。
位相別MTF算出手段14bは、算出した位相別のMTFを平均化手段16および位相選定手段17に出力する。
【0048】
平均化手段16は、測定指示手段12から通知される動作モードに応じて、機能が異なる。
平均化手段16は、動作モードがリアルタイムモードの場合、第1MTF算出手段14の位相別MTF算出手段14bで算出された位相別の複数のMTFについて、予め定めた周波数(基準周波数)に対応するMTF値の平均値、予め定めたMTF値(基準MTF値)に対応する周波数の平均値、または、予め定めた周波数範囲におけるMTF面積の平均値を算出するものである。
例えば、
図6に示すように、位相別MTF算出手段14bで算出された位相別の複数(位相数N)のMTFにおいて、基準周波数として、撮像系評価における代表的な周波数(例えば、0.37cycles/pixel)に対応するMTF値の総和を位相数(N)で除算することで、基準周波数(0.37cycles/pixel)におけるMTF値の平均値を算出する。
なお、位相別MTF算出手段14bで算出されるMTFは等間隔の空間周波数で離散的に表されるため、基準周波数におけるMTF値は、基準周波数近傍の周波数で求められているMTF値から線形補間により求めればよい。
【0049】
また、例えば、位相別MTF算出手段14bで算出された位相別の複数のMTFにおいて、基準MTF値として、50%に対応する周波数の総和を位相数(N)で除算することで、基準MTF値(50%)における周波数の平均値を算出する。なお、基準MTF値における周波数は、基準MTF値近傍のMTF値で求められている周波数から線形補間により求めればよい。
【0050】
また、例えば、位相別MTF算出手段14bで算出された位相別の複数のMTFにおいて、予め定めた周波数範囲(例えば、0~0.5)のMTFの面積を位相別に求め、その総和を位相数(N)で除算することで、MTFの面積の平均値を算出する。MTFの面積は、予め定めた周波数単位(例えば、0.01)ごとのMTF値を、予め定めた周波数範囲分だけ加算して求めることができる。なお、予め定めた周波数単位ごとのMTF値は、それぞれ、周波数単位の対応する周波数近傍の周波数で求められているMTF値から線形補間により求めればよい。
この平均化手段16において、どの平均値(MTF値、周波数または面積)を算出するから、予め定めておくものとする。
リアルタイムモードにおいて、平均化手段16は、算出した平均値(MTF値、周波数または面積)を、位相選定手段17に出力する。
【0051】
また、平均化手段16は、動作モードが非リアルタイムモードの場合、第1MTF算出手段14の位相別MTF算出手段14bで算出された位相別の複数のMTFを平均化するものである。
平均化手段16は、位相別に算出された複数のMTF値を同じ周波数ごとに平均化することで、平均化したMTFを生成する。
非リアルタイムモードにおいて、平均化手段16は、平均化したMTFを、MTF出力手段19に出力する。
【0052】
なお、平均化手段16で位相別の複数のMTFを平均化する場合、位相によっては画素が投影されるビンの長さ(ビン数)が異なる場合がある。その場合、平均化手段16は、それぞれのMTFを空間周波数のピッチが揃うように補完した後に平均化することとする。あるいは、位相別MTF算出手段14bにおいて、予め各位相のビンの長さを揃えてMTFを算出することとしてもよい。
【0053】
位相選定手段17は、第1MTF算出手段14の位相別MTF算出手段14bで算出された位相別のMTFの中で、平均化手段16で算出された平均値に最も近いMTF値、周波数または面積を有するビンの位相を選定するものである。
なお、位相選定手段17は、平均化手段16で平均値を算出する基準が基準周波数(例えば、0.37)の場合、同じ周波数において、最も近いMTF値を有するビンの位相を選定する。また、位相選定手段17は、平均化手段16で平均値を算出する基準が基準MTF値(例えば、50%)の場合、同じMTF値において、最も近い周波数を有するビンの位相を選定する。
位相選定手段17は、選定した位相を第2MTF算出手段18に出力する。
【0054】
第2MTF算出手段18は、ROI画像抽出手段13で順次抽出されるROI画像から、MTFを算出するものである。この第2MTF算出手段18は、選定位相MTF算出手段18aを備える。
選定位相MTF算出手段18aは、エッジ投影情報記憶手段15に記憶されているエッジ投影情報を参照して、ROI画像抽出手段13で抽出されたROI画像から、MTFを算出するものである。
なお、エッジ投影情報記憶手段15に記憶されているエッジ投影情報の中で、位相選定手段17で選定された位相に対応するエッジ投影情報を参照する。
この選定位相MTF算出手段18aは、選定された位相に対応するエッジ投影情報を参照する以外は、位相別MTF算出手段14bと同様の処理でMTFを算出する。
選定位相MTF算出手段18aは、算出したMTFをMTF出力手段19に出力する。
【0055】
MTF出力手段19は、測定結果となるMTFを外部(例えば、表示装置3)に出力するものである。
このMTF出力手段19は、周波数ごとのMTF値を出力してもよいし、撮像系評価における代表的な周波数(例えば、0.37cycles/pixel)のMTF値のみを出力することとしてもよい。
【0056】
以上説明したようにMTF測定装置1を構成することで、MTF測定装置1は、Slanted-edge法において、投影軸のビンの位相を変えて生成した複数のMTFにおいて、MTF値または周波数が平均値に最も近いビンの位相を用いてMTFを算出することで、MTFの測定精度を高めることができる。
【0057】
[MTF測定装置の動作]
次に、本発明の実施形態に係るMTF測定装置1の動作について説明する。ここでは、リアルタイム測定動作と、非リアルタイム測定動作とを分けて説明する。
【0058】
(リアルタイム測定動作)
まず、
図7を参照(構成については適宜
図1参照)して、MTF測定装置1のリアルタイム測定動作について説明する。
ここでは、MTF測定装置1は、撮像系2から入力される、チャートCHを撮像したチャート画像を、順次、チャート画像記憶手段10に記憶するとともに、表示装置3にチャート画像を表示する。以下、MTF測定装置1が連続して入力されるチャート画像からMTFを測定する動作について詳細に説明する。
【0059】
ステップS1において、ROI設定手段11は、ROIの領域(位置、大きさ等)をROI情報として設定する。例えば、ROI設定手段11は、表示装置3が表示しているチャート画像内において、測定者が操作するポインティングデバイス(不図示)で矩形領域を指定されることでROI情報を設定する。
【0060】
ステップS2において、MTF測定装置1は、測定指示手段12によって、MTFの測定の開始が指示されるまで待機する(ステップS2でNo)。
そして、リアルタイムモードでMTFの測定の開始が指示された場合(ステップS2でYes)、ステップS3において、ROI画像抽出手段13は、チャート画像記憶手段10が記憶するチャート画像から、ステップS1で設定されたROI情報で示されるROI画像を抽出する。
【0061】
ステップS4において、第1MTF算出手段14の位相別エッジ投影情報生成手段14aは、ステップS3で抽出されたROI画像から、位相別のエッジ投影情報を生成する。すなわち、位相別エッジ投影情報生成手段14aは、ROI画像からエッジの傾きを求め、ROI画像の各画素位置と、エッジの傾きに沿って各画素位置をビンの位相を順次ずらした投影軸に投影した位置とを対応付けた位相別のエッジ投影情報を生成する。
【0062】
ステップS5において、位相別エッジ投影情報生成手段14aは、ステップS4で生成した位相別のエッジ投影情報をエッジ投影情報記憶手段15に記憶する。
ステップS6において、第1MTF算出手段14の位相別MTF算出手段14bは、ステップS3で抽出されたROI画像から、Slanted-edge法により、位相別にMTFを算出する。すなわち、位相別MTF算出手段14bは、ステップS5でエッジ投影情報記憶手段15に記憶されている位相別のエッジ投影情報を参照して、ROI画像の各画素の画素値を、位相別の投影軸に投影し、サブピクセル単位ごとに平均化することで、エッジの特性を示すエッジプロファイルを生成する。そして、位相別MTF算出手段14bは、エッジプロファイルを微分することで、線広がり関数(LSF)を求め、そのLSFをフーリエ変換することで位相別のMTFを算出する。
【0063】
ステップS7において、平均化手段16は、ステップS6で算出された位相別のMTFについて、予め定めた周波数(基準周波数)に対応するMTF値の平均値、予め定めたMTF値(基準MTF値)に対応する周波数の平均値、または、予め定めた周波数範囲におけるMTF面積の平均値を算出する。
ステップS8において、位相選定手段17は、ステップS6で算出された位相別のMTFの中で、ステップS7で算出された平均値に最も近いMTF値、周波数または面積を有するビンの位相を選定する。
【0064】
ステップS9において、ROI画像抽出手段13は、チャート画像記憶手段10が記憶するチャート画像から、ステップS1で設定されたROI情報で示されるROI画像を抽出する。
【0065】
ステップS10において、第2MTF算出手段18の選定位相MTF算出手段18aは、ステップS9で抽出されたROI画像から、Slanted-edge法により、MTFを算出する。すなわち、選定位相MTF算出手段18aは、ステップS5でエッジ投影情報記憶手段15に記憶されているエッジ投影情報の中で、ステップS8で選定された位相に対応するエッジ投影情報を参照して、ROI画像の各画素の画素値を、選定された位相の投影軸に投影し、サブピクセル単位ごとに平均化することで、エッジの特性を示すエッジプロファイルを生成する。そして、選定位相MTF算出手段18aは、エッジプロファイルを微分することで、線広がり関数(LSF)を求め、そのLSFをフーリエ変換することでMTFを算出する。
【0066】
ステップS11において、MTF出力手段19は、ステップS10で算出されたMTFを出力する。
ステップS12において、ROI画像抽出手段13は、チャート画像記憶手段10に新たなチャート画像が記憶されるか否かにより、チャート画像の入力の終了を判定する。ここで、新たなチャート画像が入力された場合(ステップS12でNo)、MTF測定装置1は、ステップS9に戻って動作を継続する。
一方、新たなチャート画像が入力されない場合(ステップS12でYes)、MTF測定装置1は、動作を終了する。なお、この終了判定は、測定指示手段12に対して、終了を指示されることで判定することとしてもよい。
以上の動作によって、MTF測定装置1は、順次入力されるチャート画像において、リアルタイムで、MTFを測定することができる。
【0067】
(非リアルタイム測定動作)
次に、
図8を参照(構成については適宜
図1参照)して、MTF測定装置1の非リアルタイム測定動作について説明する。
ここでは、MTF測定装置1は、撮像系2から入力される、チャートCHを撮像したチャート画像を、チャート画像記憶手段10に記憶するとともに、表示装置3にチャート画像を表示する。以下、MTF測定装置1が静止画像として入力したチャート画像、または、連続して入力されるフレーム画像の任意のタイミングで選択されるチャート画像からMTFを測定する動作について詳細に説明する。
【0068】
ステップS1において、ROI設定手段11は、ROIの領域(位置、大きさ等)をROI情報として設定する。なお、このステップS1は、
図7で説明したステップS1と同じ処理である。
【0069】
ステップS2Aにおいて、MTF測定装置1は、測定指示手段12によって、MTFの非リアルタイムの測定の開始が指示されるまで待機する(ステップS2AでNo)。
そして、非リアルタイムモードでMTFの測定の開始が指示された場合(ステップS2AでYes)、ステップS3以降の動作を行う。
なお、ステップS3からステップS6までの動作は、
図7で説明したリアルタイムモード動作と同じであるため、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0070】
ステップS6の後、ステップS20において、平均化手段16は、ステップS6で算出された位相別のMTFを平均化する。
ステップS21において、MTF出力手段19は、ステップS20で平均化されたMTFを出力する。
以上の動作によって、MTF測定装置1は、非リアルタイムで、MTFを測定することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されものではない。
ここでは、ROI画像(エッジ画像)として、水平エッジ画像、垂直エッジ画素を例に説明した。
しかし、ROI画像は、エッジを含めばその傾きは任意である。
例えば、MTF測定装置1は、チャートCHとして、
図9に示すように、エッジの傾きが多方向(
図9では、24方向)に存在するチャートCH
mを用いてもよい。この場合、ROI設定手段11は、水平方向または垂直方向のエッジを含む1箇所のROIを設定されることで、チャートCH
mの中心Cを点対称の中心として、24個分のROIを設定することとすればよい。
このとき、第1MTF算出手段14および第2MTF算出手段18は、例えば、基準となるROI(垂直エッジ画像)以外のROIについては、画像を回転させて、基準となるROIと同様に、エッジ投影情報を生成したり、MTFを算出したりすればよい。
【0072】
また、ここでは、MTF出力手段19が、測定したMTFをそのまま外部に出力することとした。しかし、MTF出力手段19は、MTFをグラフ化して出力してもよい。
例えば、MTF出力手段19は、横軸に周波数、縦軸にMTF値をとった座標上に空間周波数ごとのMTF値をプロットすることで、視覚化可能なグラフを生成する。このMTF出力手段19が、生成したグラフを表示装置3に出力することで、測定者が撮像系2のMTFの解析結果を視認することができる。
【0073】
また、ここでは、平均化手段16を、動作モード(リアルタイムモード、非リアルタイムモード)に応じて、異なる機能とする構成とした。
しかし、平均化手段16は、いずれかの動作モードで限定して動作するものであってもよい。例えば、MTF測定装置1を、非リアルタイムモードで限定して動作するものとした場合、位相選定手段17および第2MTF算出手段18を構成から省略すればよい。
【0074】
また、ここでは、リアルタイムモードとして、第1MTF算出手段14で最初に行うSlanted-edge法におけるROI画像の各画素位置と投影軸のビンの位置との最適な対応付けを、第2MTF算出手段18での処理において流用し、その対応付けでROIの画素をビン位置に投影することで、順次入力されるチャート画像からMTFを測定することとした。
しかし、リアルタイムモードであっても、非リアルタイムモードと同様に、動画像のフレームごとに、第1MTF算出手段14で位相別にMTFを算出し、平均化手段16において、位相別の複数のMTFを平均化することとしてもよい。
この場合、MTF測定装置1は、例えば、CPU性能が高ければ、動画像であっても、精度の高いMTFを測定することができる。また、MTF測定装置1は、CPU性能が低くすべてのフレームでMTFを測定できない場合でも、例えば、1秒に1回(60フレームに1回)でも精度の高いMTFを測定することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 MTF測定装置
10 チャート画像記憶手段
11 ROI設定手段
12 測定指示手段
13 ROI画像抽出手段
14 第1MTF算出手段
14a 位相別エッジ投影情報生成手段
14b 位相別MTF算出手段
15 エッジ投影情報記憶手段
16 平均化手段
17 位相選定手段
18 第2MTF算出手段
18a 選定位相MTF算出手段
19 MTF出力手段
2 撮像系
3 表示装置
CH チャート画像