(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】真空伝導率を改善するためのX線および粒子遮蔽体
(51)【国際特許分類】
G21F 3/00 20060101AFI20230406BHJP
G21F 1/08 20060101ALI20230406BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20230406BHJP
H01J 37/18 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
G21F3/00 L
G21F1/08
G21F3/00 P
H01J37/09
H01J37/18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019150120
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-08-19
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】リエンツ ヤン デ グルート
(72)【発明者】
【氏名】キャスパー シュミット
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0131478(US,A1)
【文献】特開2017-049175(JP,A)
【文献】実開平05-062898(JP,U)
【文献】特開2012-167979(JP,A)
【文献】特開2016-090277(JP,A)
【文献】特開2013-024566(JP,A)
【文献】特開昭59-176700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 3/00
G21F 1/08
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも180°のねじれを有するねじれに成形された高原子量材料で形成された長さ及び幅を有する細長いX線遮蔽体を備え、前記細長いX線遮蔽体は、真空チャンバに結合された真空配管の少なくとも一部内に配置されており、前記真空チャンバからのX線の漏れを少なくとも部分的に防止する、装置。
【請求項2】
前記細長いX線遮蔽体が、210°のねじれを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記高原子量材料が、鉛である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記高原子量材料が、焼結タングステン粒子を含む材料から形成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記細長いX線遮蔽体が、低原子量材料の層でコーティングされている、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記低原子量材料が、アルミニウムである、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記細長いX線遮蔽体が、正または負にバイアスされている、請求項1~6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記細長いX線遮蔽体が、冷却されている、請求項1~7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記幅および長さが、真空配管の内径および長さの一部に基づいており、前記真空配管が、高真空チャンバと真空ポンプとを結合する、請求項
1~8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記細長いX線遮蔽体に対して垂直に並べられた第2の細長いX線遮蔽体をさらに備え、前記第2の細長いX線遮蔽体が、ねじれに成形された高原子量材料から形成されている、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
真空チャンバと、
真空配管によって前記真空チャンバに結合された真空ポンプと、
前記真空配管の少なくとも一部内に配置された長さ及び幅を有する細長いX線遮蔽体と、を備え、前記細長いX線遮蔽体が、ねじれに成形された高原子量材料から形成されている、システム。
【請求項12】
前記細長いX線遮蔽体が、180°のねじれを有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記細長いX線遮蔽体が、210°のねじれを有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記高原子量材料が、鉛である、請求項11~13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
前記高原子量材料が、焼結タングステン粒子を含む材料から形成されている、請求項11~13のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記細長いX線遮蔽体が、低原子量材料の層でコーティングされている、請求項11~15のいずれかに記載のシステム。
【請求項17】
前記低原子量材料が、アルミニウムである、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記細長いX線遮蔽体が、正または負にバイアスされている、請求項11~17のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
前記細長いX線遮蔽体が、冷却されている、請求項11~18のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
前記真空チャンバが、荷電粒子顕微鏡の一部である、請求項11~19のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般にX線遮蔽物、より具体的には高真空環境でのX線遮蔽物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
多くの産業システムは、動作中に有害な放射線を生成し、これには、機器のオペレーターを保護するための安全対策が必要とされる。例えば、X線を生成して使用するシステムでは、人間および/または動物への暴露を制限または防止するために、様々な種類および量の遮蔽物が必要である。遮蔽物には通常、機器を出て付近のユーザに暴露する前に、放射線を吸収または遮断するために戦略的に配置された高原子量材料が含まれる。しかしながら、そのような遮蔽物は、高価であり、機器の中またはその上に組み込むのが困難な場合がある。
【0003】
図1は、X線遮蔽物を含む例示的な高真空システム100である。システム100は、高真空チャンバ内でX線を生成し得る。いくつかの例では、X線は、例えば電子ビームと金属との相互作用により生成される。X線遮蔽物は、高真空チャンバを真空ポンプに結合する真空管の内部と周囲に配置され、X線がチャンバから出るのを遮断する。一般に、生成されたX線は、4πステラジアンのいずれかで放出され得るが、真空管に向けられたX線は、チャンバと真空管とのつなぎ目にX線遮蔽物を提供する複雑さのため、最も懸念され得る。真空管に向かって放出されるX線は、電子ビーム/金属相互作用からの直接放出またはチャンバ内の反射に起因し得る様々な角度からのものであり得る。しかしながら、X線遮蔽体が存在しなかった場合、X線は、チャンバ壁および/または真空管壁を通過する可能性があり、これは望ましくない。真空管に関するさらなる懸念は、依然としてX線を遮蔽しながら高真空環境を得るために、真空ポンプがチャンバにアクセスする必要性である。真空管/チャンバ接合部の内部および周囲にX線遮蔽体を含める必要性があるため、真空伝導性とX線安全性とのトレードオフが生じる。真空伝導性は、例えば、高真空チャンバ内の所望の圧力および到達圧力までチャンバをどれだけ速く排気し得るかの測定値である。
【0004】
チャンバおよび/または真空管からX線が漏れる事例を低減または排除する1つの技術は、
図1に示すX線遮蔽物を含めることである。X線遮蔽物は、チャンバおよび配管の壁の外側の部分、配管の少なくとも一部分の内側の部分、ならびに配管の前に配置されたディスクを含む。正面図は、X線遮蔽物の2つの構成要素を示しており、パターン化された領域は、ポンプ輸送中のガス流に対する開口領域である。配管の前のディスクの配置は、真空管に向かって放出されるX線が真空管に入る前に通過するための迷路を本質的に作り出す。しかしながら、これは、高真空チャンバ内のガス分子が移動して真空ポンプによって除去されるための迷路でもある。X線遮蔽物によって作り出された迷路は、少なくともガス分子に影響を与えるため、システムの真空伝導性を低下させる。真空伝導性における低下は、より強力な真空ポンプを使用して対処され得るポンプ輸送時間を遅くし、(分子流領域で)それに対する良好な伝導性を有する場合よりも、高真空チャンバ内により高い真空圧をもたらす。だが、そのような解決策は、少なくともコスト、空間要件に影響を与え、望ましくない振動を追加する可能性がある。そのため、真空伝導性の増加を可能にする効果的なX線遮蔽物が望ましい。
【発明の概要】
【0005】
強化された真空伝導性を提供するX線遮蔽体およびそのようなX線遮蔽体を実装するシステムが、本明細書で開示され、上記の問題に対処する。例示的なX線遮蔽体は、少なくとも180°のねじれを有するねじれに成形された高原子量材料から形成された細長い部材であってもよい。いくつかの実施形態では、ねじれは、少なくとも210°であり得る。他の実施形態では、X線遮蔽体は、2つのねじれた細長い部材から形成されてもよい。X線遮蔽体は、高真空チャンバを真空ポンプに結合する真空管内に適合し、X線が高真空チャンバから出るのを防止または低減するように形成されてもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、高原子量材料は、鉛または焼結タングステン粒子を含む材料であってもよい。加えて、いくつかの実施形態では、細長い部材は、例えばアルミニウムなどの低原子量材料でコーティングされてもよい。
【0007】
いくつかの実施形態では、X線遮蔽体は、ポンプ側またはチャンバ側からX線遮蔽体に衝突するイオンなどの荷電粒子を引き付けるために正または負にバイアスされてもよい。他の実施形態では、X線遮蔽体は、ガスを引き付けて閉じ込めるために冷却されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】X線遮蔽物を含む例示的な高真空システムである。
【
図2】本開示の実施形態による例示的な高真空システムである。
【
図3A】本開示の実施形態によるX線遮蔽体の例示的な概略図である。
【
図3B】本開示の実施形態によるX線遮蔽体の例示的な概略図である。
【
図4A】本開示の実施形態による
図3Aおよび3Bの例示的なX線遮蔽体と真空配管との間に残存する空容積を示す。
【
図4B】本開示の実施形態による
図3Aおよび3Bの例示的なX線遮蔽体と真空配管との間に残存する空容積を示す。
【
図5A】本開示の実施形態によるX線遮蔽体の例示的な概略図である。
【
図5B】本開示の実施形態によるX線遮蔽体の例示的な概略図である。
【
図6A】本開示の実施形態による
図6Aおよび6Bの例示的なX線遮蔽体と真空配管との間に残存する空容積を示す。
【
図6B】本開示の実施形態による
図6Aおよび6Bの例示的なX線遮蔽体と真空配管との間に残存する空容積を示す。
【0009】
同じ参照番号は、図面のいくつかの図全体にわたって、対応する部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態は、高真空伝導性を維持しながらX線の遮断を必要とするX線が生成される高真空環境の文脈で以下に説明される。しかしながら、本明細書に記載の方法は一般に、コーンビームシステムおよびパラレルビームシステムの両方を含む広範囲の異なる断層撮影の方法および装置に適用可能であり、特定の装置タイプ、ビームタイプ、対象物タイプ、長さスケール、またはスキャン軌道に限定されないことを理解すべきである。
【0011】
本出願および特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数形も含む。加えて、用語「含む」は、「備える」の意味である。さらに、用語「結合された」は、結合されたアイテム間の中間要素の存在を排除するものではない。
【0012】
本明細書に記載のシステム、装置、および方法は多少なりとも制限的なものとして解釈されるべきではない。むしろ、本開示は、単独で、ならびに相互の様々な組み合わせおよび部分的な組み合わせにおいて、様々な開示された実施形態のすべての新規性および非自明性を有する特徴および態様を対象とする。開示されたシステム、方法、および装置は、任意の特定の態様もしくは特徴またはそれらの組み合わせに限定されず、開示されたシステム、方法、および装置は、任意の1つ以上の特定の利点が存在する、または問題が解決されることも必要としない。いずれの動作理論も説明を容易にするためであるが、開示されたシステム、方法、および装置は、そのような動作理論に限定されない。
【0013】
開示された方法のいくつかの動作は、便宜上、特定の順番で記載されているが、以下に記載される具体的な言葉によって特定の順序が要求されない限り、この説明方法が並び替えを包含することを理解されるものとする。例えば、順々に記載される動作は、いくつかの場合では、並び替えまたは同時に実行されてもよい。さらに、単純化のために、添付の図面は、開示されたシステム、方法、および装置が、他のシステム、方法、および装置とともに使用され得る様々な方法を示さないことがある。加えて、説明は、開示された方法を説明するために、「製造する」および「提供する」のような用語を使用することがある。これらの用語は、実行される実際の動作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実施に応じて、様々であり、当業者には容易に認識できる。
【0014】
いくつかの例では、値、手順、または装置は、「最低」、「最良」、「最小」などと呼ばれる。そのような記載は、多くの使用されている機能的選択肢の中からの選択が可能であり、そのような選択が他の選択よりも優れている、より小さい、さもなくば好適である必要がないことを示すことを意図していることが理解されよう。
【0015】
図2は、本開示の実施形態による例示的な高真空システム200である。高真空システム200、略してシステム200は、高真空チャンバ202、真空ポンプ204、真空ポンプ配管206、X線遮蔽体208、および外部遮蔽物210の一部を少なくとも含む。高真空チャンバ202は、場合によっては荷電粒子顕微鏡の一部であってもよいが、本開示は、この態様に限定されない。荷電粒子顕微鏡のいくつかの例としては、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、走査型透過電子顕微鏡、集束イオンビームシステム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。そのような荷電粒子顕微鏡は、所望の動作のために、例えば非常に低い圧力の、高真空レベルを必要とし得る。例えば、荷電粒子顕微鏡は、10
-5~10
-10トールの圧力で動作され得る。
【0016】
真空ポンプ204は、機械式ポンプ、拡散ポンプ、イオンポンプ、ターボ分子ポンプなどの業界における任意のタイプのポンプであり得る。いくつかの実施形態では、高真空チャンバ202に結合された複数のポンプが存在し得る。例えば、粗引きポンプおよび高真空ポンプは、様々な配管およびバルブを介して高真空チャンバ202に結合されてもよい。真空ポンプ204は、真空ポンプ管206によって高真空チャンバ202に結合されている。真空ポンプ管206は、様々な長さおよび直径などの内部形状であり得る。もちろん、楕円形、正方形、長方形など、円筒形以外の他の内部形状が本明細書で企図される。いくつかの実施形態(図示せず)では、真空ポンプ管206は、内径がより大きい部分および内径がより小さい部分を有し、その間に遷移領域を有し得る。直径の変化は、例えば、高真空チャンバ202および真空ポンプ204のそれぞれのポートの直径のために含まれ得る。
【0017】
X線遮蔽体208は、真空ポンプ204を、本明細書では真空ポンプ配管206と呼ばれ得る真空チャンバ202に接続する配管の内側に配置され得、高真空チャンバ202で生成され、真空ポンプ204/真空ポンプ配管206の方向に放出されるX線の漏れを遮断する。X線遮蔽体208は、1つ以上のねじれた細長い部材から形成されてもよい。例えば、X線遮蔽体208は、所望の程度のねじれでねじれた平坦棒から形成されてもよく、ねじれの程度は、180°~360°の範囲である。いくつかの実施形態では、ねじれの程度は、210°、225°、または270°である。一般に、X線遮蔽体208のねじれのピッチ、例えばねじれの割合、および厚さと関連したねじれの程度は、望ましくは、高真空チャンバ202と真空ポンプ204との間の見通し線軌道および/または外部X線遮蔽物によって保護されていない真空管206の部分を低減または防止し得る。加えて、ねじれの程度はまた、X線遮蔽体208の配置に依存し得、例えば、単一の平坦棒から形成されるか、または複数の平坦棒から形成されるかにかかわらず(例については
図5を参照)、より多数の部材のX線遮蔽体208は、所望のレベルのX線遮蔽を提供するために、ねじれの最小程度を低減する。さらに、X線遮蔽体208は、配管206の内側に配置された独立した構成要素として示されているが、他の実施形態では、X線遮蔽体208は、真空チャンバ202の壁、配管206の内側および一部など、または真空ポンプ204の入力ポートの一部として、システム200の構成要素と一体化されてもよい。しかしながら、X線遮蔽体208の位置および一体化は、限定的ではなく、すべての構成が本明細書で企図される。
【0018】
X線遮蔽体208を形成する細長い部材は、ねじれ特徴に加えて、幅、長さ、および厚さを有する。幅は、真空管206の内径によって決定され、長さは、真空管206の長さによって決定され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、X線遮蔽体の長さは、真空管206の長さよりも短い可能性が高いことに留意されたい。一般に、X線遮蔽体208の長さは、ある程度のねじれを与える所望のX線遮蔽を確実にするために長さを最小化し得る点で、ねじれの量に基づいてもよい。X線遮蔽体208の厚さは、X線遮蔽体を形成するために使用される材料に基づいてもよいが、
図1に示されるディスクより薄くてもよい。X線遮蔽体は、ねじれているため、突き当たるX線は、ある角度でX線遮蔽体208に当たり、通常の角度でX線遮蔽体208に当たるよりも厚い相互作用容積を提供する。厚さが「d」とラベル付けされた挿入物を参照されたい。
【0019】
X線遮蔽体208は、X線または他の高エネルギー光子および粒子の透過がシステム200から逃げるのを低減または防止するために、高原子量材料から形成されてもよい。例えば、X線遮蔽体208は、鉛、Densimet(登録商標)またはInermet(登録商標)などの焼結タングステン粒子から形成された金属から形成されてもよい。リストに追加できる他の重金属が存在するが、X線遮蔽体208は、望しくは、ほとんどの実施形態で安価な材料から形成され得る。しかしながら、より高価な金属が本明細書で企図される。加えて、X線遮蔽体208は、高エネルギー粒子または高エネルギーのX線が打ち当たったときにX線遮蔽体208によって生成されるX線を低減するために、低z材料、例えばアルミニウムでコーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、例えば厚さ約0.2mmの低z材料の薄いコーティングが実装され得る。X線遮蔽体208を低z材料の層でコーティングすると、真空管206内でのX線生成の低減により、真空管206の厚さをより薄くすることが可能になり得る。
【0020】
チャンバ202から真空ポンプ配管206に入るX線は、X線遮蔽体208に衝突し得る。X線遮蔽体208がねじれているため、X線は、垂直とは異なる角度で衝突する。このため、X線遮蔽体208の有効な厚さは、幾何学的形状によってより厚くなる-挿入図を参照されたい。チャンバ202および真空ポンプ配管206の周りの外部遮蔽物は、
図2には示されていないが、そのような遮蔽物は、存在するであろう。例えば、チャンバ202および配管206の少なくとも一部を囲む遮蔽物は、システム200のすべてではないにしても、ほとんどの実施形態に含まれるであろう。
【0021】
図1のX線遮蔽体と比較して、X線遮蔽体208は、真空伝導性の増加を提供する。伝導性の増加は、少なくとも
図1のディスクがないためにガス分子が直接遮断されないことに起因している。ディスクの代わりに、ねじれたX線遮蔽体に当てることによってX線が遮断される。真空ポンプ204の影響下でチャンバ202から出て行くガスは、ディスクベースのX線遮蔽体が提供するものよりも移動に対する抵抗が少ないため、X線遮蔽体のねじれの態様は、真空伝導性の増加も提供する。いくつかの実施形態では、真空伝導性は、最大31%増加する。
【0022】
追加または代替として、いくつかの実施形態では、X線遮蔽体208は、荷電粒子を引き付けるために正または負にバイアスされてもよい。例えば、ポンプ204として実装されたイオンポンプによって放出されたイオンは、真空チャンバ202に入る代わりに、バイアスされたX線遮蔽体208によって捕獲されてもよい。別の例では、バイアスされたX線遮蔽体208は、真空チャンバ202から入るイオンを引き付け得、それは、集束イオンビームシステムまたはデュアルビームシステム、例えば、電子および集束イオンビームシステムの組み合わせで生成され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、X線遮蔽体208は、熱結合により冷却されてもよく、これは、真空チャンバ202内のガスを引き付けることによりポンプ輸送の効率をさらに改善するであろう。例えば、X線遮蔽体208を液体窒素温度まで冷却することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、X線遮蔽体208および/または真空管206の内面は、非蒸発性ゲッター(NEG)材料の層でコーティングされてもよい。活性化されると、NEG材料は、その表面に安定した化合物の形態でガス分子を捕捉し得る。NEG材料は、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、および鉄(Fe)のうちの1つ以上を含み得る。他の実施形態では、X線遮蔽体208および/または真空配管206の内面は、NEG材料で作製されてもよい。一例では、焼き出し中にNEG材料を活性化し得る。別の例では、NEG材料は、真空配管206の外側に位置する加熱器(図示せず)によって活性化されてもよい。高真空チャンバ202または真空ポンプ204のいずれかからの分子は、NES材料によって捕捉され得る。
【0025】
図3Aおよび3Bは、本開示の実施形態によるX線遮蔽体308の例示的な概略図である。X線遮蔽体308は、例えばシステム200などの任意の高真空システムで実装されてもよい。X線遮蔽体308は、真空チャンバと真空ポンプとを流体的に結合する真空配管に配置されてもよく、真空チャンバからのX線または他の高エネルギー光子の放出を防止するために含まれる。
【0026】
X線遮蔽体308は、細長い部材、例えば所望の程度のねじれまでねじられた半平坦棒から形成されてもよい。破線は、X線遮蔽体308のもう一方の端の位置を表す。ねじれの程度は、180°~360°を超えてもよい。いくつかの実施形態では、ねじれ角は、210°であってもよい。X線遮蔽体208と同様に、X線遮蔽体308は、厚さ、長さ、幅、およびピッチを有する。360°のねじれを含まない長さのため、
図3Bにはピッチの半分のみが示されている。寸法のすべてまたは一部は、X線遮蔽体308が挿入される真空管に基づいて決定されてもよい。例えば、幅は、X線遮蔽体が挿入される真空管の内径に基づいて決定されてもよい。幅は、X線遮蔽体308が真空管に適合するように、内径よりわずかに小さく設定されてもよい。長さはまた、真空配管によって決定されてもよい。例えば、真空管が短い場合、チャンバまたは真空ポンプに干渉することなく真空管に適合する長さが選択される。加えて、長さは、所望のねじれの量およびねじれのピッチ、例えばねじれの割合に基づいてもよい。例えば、大きなピッチが望ましく、ねじれの程度が275°より大きい場合、長さは、ピッチおよびねじれの程度に対応するのに十分な長さが必要になり得る。厚さは、他の寸法とともにX線遮蔽体308を形成するために使用される高原子番号材料に基づいて決定されてもよい。使用される材料は、X線の吸収/遮断特性に基づいて厚さに影響し得る。例えば、性能の低い材料は、性能の高い材料よりも厚くする必要があり得る。例示的な厚さとしては、5mm、10mm、15mmおよびそれ以上が挙げられる。
【0027】
加えて、X線遮蔽体308の幅は、複数の内径を有する真空管を収容するために長さに沿って変化し得る。例えば、真空管が第2の内径の部分に移行する第1の内径の部分を有する場合、X線遮蔽体308はまた、移行領域をその間に有する2つの異なる幅を有するように形成され得ることによって、X線遮蔽体308は、真空管の両方の部分および移行領域内に適合する。
【0028】
さらに、所望のX線保護を提供しながら高いポンプ伝導性を確保するために、長さおよびピッチは、所望のX線保護を維持しながら、X線遮蔽体308と周囲の配管との間の空間の空容積を最大化するように形成され得る。例えば、
図4Aおよび4Bは、本開示の実施形態による、例示的なX線遮蔽体308と真空配管(図示せず)との間に残存する空容積を示している。
図4Aは、互いにねじれている2つの容積312Aおよび312Bの例を示しており、
図4bは、単一の容積312Aを示している。空容積は、チャンバからガスをポンプ輸送するための経路を提供し、そこでガスを除去するとチャンバ内の圧力が低下する。
【0029】
図5Aおよび5Bは、本開示の実施形態によるX線遮蔽体508の例示的な概略図である。X線遮蔽体508は、例えばシステム200などの任意の高真空システムに含まれてもよい。X線遮蔽体508は、真空チャンバと真空ポンプとを連結する真空配管に配置され得、システムのポンプ伝導性を高めながら、真空チャンバからのX線の漏れを防止するために含まれる。ポンプ伝導性を高めると、システムが、より弱いポンプを使用して同じ所望の真空を得るか、または同じポンプを使用してより短い時間で所望のポンプダウンを得るか、もしくはより良い最終真空圧を達成することを可能にし得る。
【0030】
X線遮蔽体508は、多くの態様でX線遮蔽体308と同様であってもよいが、追加の細長い部材を含む。例えば、X線遮蔽体508は、単一の半平坦棒の代わりに一端から見たときにプラスのような形状を形成する2つの垂直な半平坦棒から形成されてもよい。追加の細長い部材を使用すると、ねじれの程度を低減することが可能になり得る。例えば、X線遮蔽体408を105°にねじって、210°ねじったときにX線遮蔽体308が得るのと同様の量のX線遮蔽を達成し得る。1つではなく2つの細長い部材を使用すると、さらに追加のX線遮蔽が提供され、利用可能な空間の容積を2つではなく4つの絡み合った容積にさらに分割する。例えば、
図6A、Bを参照されたい。絡み合った容積には、個別の容積412A、412B、412C、および412Dが含まれる。いくつかの実施形態では、高原子量材料の追加の交差により、X線遮蔽体508の厚さを減少させることが可能になり得る。材料の厚さを減少させることで、所望のX線保護および真空伝導性を維持しながら、コストおよび重量を減少させ得る。
【0031】
開示された技術を例示するために本明細書で説明された実施形態は、限定するものと見なされるべきではなく、実施の例を提供するだけのものである。例えば、本明細書に開示されるX線遮蔽体は、y字形に形成された3つの細長い部材を含むことができ、または4つを超える部材を有することができる。例えば、部材の数が異なると、所望の量のX線遮蔽を達成するためにねじれの程度に影響を与え得、一般に、細長い部材の数が追加されると必要なねじれはより少なくなる。当業者は、本明細書で意図され、本開示の範囲内にある、開示された技術を実施し得る他の無数の方法を理解するであろう。