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特許7257293ポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】ポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 59/00 20060101AFI20230406BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20230406BHJP
   C08K 5/25 20060101ALI20230406BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20230406BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20230406BHJP
   C08K 5/1565 20060101ALI20230406BHJP
   C08G 2/18 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
C08L59/00
C08K5/3435
C08K5/25
C08K5/13
C08K5/098
C08K5/1565
C08G2/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019158192
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021036018
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】原科 初彦
(72)【発明者】
【氏名】門間 智宏
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 章宏
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/038745(WO,A1)
【文献】特開2005-163019(JP,A)
【文献】特開2015-193699(JP,A)
【文献】特開2000-026705(JP,A)
【文献】特表2004-510024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 2/00 - 2/38
C08G 61/00 - 61/12
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも
(A)ポリアセタール重合体100質量部、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01~0.30質量部、
(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジド0.01~0.50質量部、
(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物0.001~0.50質量部、
(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩0.001~0.30質量部、
(F)ヒンダードアミン化合物0.2~1.0質量部、
(G)紫外線吸収剤0.2~1.0質量部、
(H)ゴム状ポリマーのコアとビニル系共重合体からなるガラス状ポリマーのシェルとを有するコアシェルポリマー1~50質量部、
とを含有してなり、
該(C)と(D)の合計量が、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して0.03~0.55質量部である、ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
前記(F)ヒンダードアミン化合物が、立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が3級である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジドが、セバシン酸ジヒドラジドである請求項1または2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
前記(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩が、ステアリン酸カルシウムおよび12-ヒドロキシステアリン酸カルシウムから選択される少なくとも1種である請求項1~3いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
前記(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物が、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントインである請求項1~4いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
前記(F)ヒンダードアミン化合物が、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物から選ばれた少なくとも1種である請求項1~5いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
前記(G)紫外線吸収剤が、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール及びN-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシフェニル)シュウ酸ジアミドから選ばれた少なくとも1種である請求項1~6いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項8】
前記(H)コアシェルポリマーのシェルを形成するガラス状ポリマーが、含酸素極性基を有するビニル系共重合体からなるものである請求項1~7いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法であって、前記(A)ポリアセタール重合体が、トリオキサンを主モノマー(a)とし、少なくとも一つの炭素-炭素結合を有する環状エーテルおよび環状ホルマールから選択される一種以上をコモノマー(b)とし、重合触媒(c)にヘテロポリ酸を使用して共重合し、その後アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩若しくはその水和物(d)を添加して溶融混錬し、該重合触媒(c)を失活させて得られたポリアセタール共重合体であるポリアセタール樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その成形品が耐候性に優れ、表面光沢が抑制され、その成形品からのホルムアルデヒド発生量が著しく抑制され、且つ、安定的に成形時のモールドデポジットが抑制されたポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、ポリアセタール樹脂は、機械的性質、電気的性質などの物理的特性、或いは耐薬品性、耐熱性などの化学的特性の優れたエンジニアリング樹脂として近年きわめて広汎な分野において利用されている。しかし、ポリアセタール樹脂が利用される分野の拡大に伴い、その材料としての性質にもさらに特殊性が要求される場合がある。
【0003】
このような特殊性の1つとして、耐候性に優れ、表面光沢が抑制され、ホルムアルデヒドの発生が低減され、且つ、安定的に成形時のモールドデポジットが抑制された材料の開発が要望されている。例えば自動車等の内外装品や光学機械等の分野においては、光の反射による目に対する刺激を抑え、高級感を出すこと、光の反射による機器の誤動作を防止すること等を目的として光沢の少ない、即ち光の反射の少ないものが要求される場合が多い。
【0004】
また、一般の電気機器、建材等の分野においても、その目的に応じて各種材料を組み合わせて使用する機会が増加しているが、ポリアセタール樹脂は他の一般的樹脂材料に比べて表面光沢が良好であるが故に、各種材料が組み込まれた製品においては、他種材料との調和感に乏しく、表面外観を重視する分野で使用するためには、光沢の制御されたものが要求される。
【0005】
また、上記のような分野で使用される樹脂成形品は太陽光に曝されるものも多く、樹脂材料には優れた耐候性が要求される。
【0006】
さらに、これらの分野においては、環境衛生上の観点あるいは精密機器に対する好ましくない作用の防止等の観点から、ホルムアルデヒドの発生が著しく低減された樹脂材料が強く要求される。また生産性の観点から、安定的に成形時のモ-ルドデポジットが抑制された材料の開発が要求されている。
【0007】
このような要求に対し、低光沢性と耐候性を付与する技術として、ポリアセタール樹脂に耐候(光)安定剤とコアシェルポリマーを配合することが開示されている(特許文献1)。
【0008】
また、ホルムアルデヒドの発生を低減させるために、ポリアセタール樹脂に各種のホルアルデヒド捕捉剤を配合することが知られており、例えば、ホルムアルデヒド捕捉剤としてオキサゾリン化合物の配合(特許文献2)、グリオキシジウレイド化合物の配合(特許文献3)、ヒドラジド化合物の配合(特許文献4、5)、グアナミン化合物の配合(特許文献6)等が知られている。
【0009】
さらに低光沢性、耐候性および低ホルムアルデヒド発生のために、ポリアセタール樹脂に耐候(光)安定剤、コアシェルポリマーおよびイソシアネート化合物を配合(特許文献7)することも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平5-179104号公報
【文献】特開平5-125255号公報
【文献】特開平10-182928号公報
【文献】特開2005-162909号公報
【文献】特開2005-163019号公報
【文献】国際公開第2004/058875号
【文献】特開2008-81530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示された組成物によれば、耐候性と低光沢性が併せて付与される。また、特許文献2~6に開示された組成物により、ホルムアルデヒドの発生量の低減が期待できる。特許文献7に開示された組成物によれば、耐候性低光沢性、およびホルムアルデヒド発生量の低減が期待できる。
【0012】
しかしながら、これらの文献に開示された技術では、耐候性に優れ、表面光沢が抑制され、ホルムアルデヒドの発生量が著しく低減され、且つ安定的に成形時のモ-ルドデポジットが抑制されたポリアセタール樹脂材料を得ることはできない。
【0013】
また、ポリアセタール樹脂に配合する成分の選択や配合量の調整によってこれらの特性を全て兼備した樹脂材料を得ることは、極めて難しい。
【0014】
すなわち、使用する配合成分或いはその組合せによって効果に拮抗作用が生じ、耐候性、低光沢性、低ホルムアルドヒド発生特性、および低モールドデポジット発生特性の何れかの特性を向上させようとすると他の特性が損なわれる場合が多い。
【0015】
本発明は、このような従来技術を改善し、耐候性に優れ、表面光沢が抑制され、その成形品からのホルムアルデヒド発生量が著しく抑制され、且つ、安定的に成形時のモールドデポジットが抑制されたポリアセタール樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、下記によって達成された。
【0017】
1. 少なくとも
(A)ポリアセタール重合体100質量部、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01~0.30質量部、
(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジド0.01~0.50質量部、
(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物0.001~0.50質量部、
(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩0.001~0.30質量部、
(F)ヒンダードアミン化合物0.2~1.0質量部、
(G)紫外線吸収剤0.2~1.0質量部、
(H)ゴム状ポリマーのコアとビニル系共重合体からなるガラス状ポリマーのシェルとを有するコアシェルポリマー1~50質量部、
とを含有してなり、
該(C)と(D)の合計量が、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して0.03~0.55質量部である、ポリアセタール樹脂組成物。
2. 前記(F)ヒンダードアミン化合物が、立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が3級である、前記1記載のポリアセタール樹脂組成物。
3. 前記(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジドが、セバシン酸ジヒドラジドである前記1または2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
4. 前記(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩が、ステアリン酸カルシウムおよび12-ヒドロキシステアリン酸カルシウムから選択される少なくとも1種である前記1~3いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
5. 前記(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物が、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントインである前記1~4いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
6. 前記(F)ヒンダードアミン化合物が、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物から選ばれた少なくとも1種である前記1~5いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
7. 前記(G)紫外線吸収剤が、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール及びN-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシフェニル)シュウ酸ジアミドから選ばれた少なくとも1種である前記1~6いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
8. 前記(H)コアシェルポリマーのシェルを形成するガラス状ポリマーが、含酸素極性基を有するビニル系共重合体からなるものである前記1~7いずれかに記載のポリアセタ-ル樹脂組成物。
9. 前記1~8いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法であって、前記(A)ポリアセタール重合体が、トリオキサンを主モノマー(a)とし、少なくとも一つの炭素-炭素結合を有する環状エーテルおよび環状ホルマールから選択される一種以上をコモノマー(b)とし、重合触媒(c)にヘテロポリ酸を使用して共重合し、その後アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩若しくはその水和物(d)を添加して溶融混錬し、該重合触媒(c)を失活させて得られたポリアセタール共重合体であるポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐候性に優れ、表面光沢が抑制され、成形品からのホルムアルデヒドの発生を極めて低レベルに抑制でき、且つ安定的に成形時のモールドデポジットが抑制されたポリアセタール樹脂組成物及び成形品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳しく説明する。
<(A)ポリアセタ-ル重合体>
本発明に使用される(A)ポリアセタール重合体は、オキシメチレン基(-OCH-)を構成単位とするホモポリマーでもよいし、オキシメチレン単位以外に他のコモノマー単位を有する共重合体であってもよく、共重合体であることが好ましい。
【0020】
一般的にはホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの環状化合物を主モノマーとし、環状エーテルや環状ホルマールから選ばれた化合物をコモノマーとして共重合させることによって製造され、通常、熱分解、(アルカリ)加水分解等によって末端の不安定部分を除去して安定化される。
【0021】
特に、主モノマーとしてはホルムアルデヒドの環状三量体であるトリオキサンを用いるのが一般的である。トリオキサンは、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることにより得られ、これを蒸留などの方法で精製して使用される。重合に用いるトリオキサンは、水、メタノール、蟻酸などの不純物の含有量が極力少ないものが好ましい。
【0022】
コモノマーとしては、一般的な環状エ-テル及び環状ホルマール、また分岐構造や架橋構造を形成可能なグリシジルエーテル化合物などを単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0023】
上記の如きポリアセタール重合体は、一般には適量の分子量調整剤を添加し、カチオン重合触媒を用いてカチオン重合することにより得ることができる。使用される分子量調整剤、カチオン重合触媒、重合方法、重合装置、重合後の触媒の失活化処理、重合によって得られた粗ポリアセタール重合体の末端安定化処理法などは多くの文献によって公知であり、基本的にはそれらが何れも利用できる。
【0024】
ポリアセタール重合体の特に好ましい製造方法として、以下のものが挙げられる。即ち、トリオキサンを主モノマー(a)とし、少なくとも一つの炭素-炭素結合を有する環状エーテルおよび環状ホルマールから選択される一種以上をコモノマー(b)とし、重合触媒(c)にヘテロポリ酸を使用して共重合し、その後アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩若しくはその水和物(d)を添加して溶融混錬し、該重合触媒(c)を失活させるものである。本方法によるポリアセタール重合体を使用することで、成形品からのホルムアルデヒド発生量、成形時のモールドデポジット発生はより低減される。
【0025】
前記重合触媒(c)として使用するヘテロポリ酸とは、異種の酸素酸が脱水縮合して生成するポリ酸の総称をいい、中心に特定の異種元素が存在し、酸素原子を共有して縮合酸基が縮合してできる単核又は複核の錯イオンを有している。
【0026】
上記へテロポリ酸の具体例として、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングステントバナジン酸等が挙げられる。中でも、重合の安定性、ヘテロポリ酸自体の安定性から考慮して、へテロポリ酸は、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸又はリンタングステン酸のいずれか一種以上であることが好ましい。
【0027】
上記へテロポリ酸の使用量は、その種類によっても異なり、また、適当に変えて重合反応を調節することができるが、一般には重合されるべきモノマーの総量に対し0.05~100ppm(以下、質量/質量ppmを示す。)の範囲であり、好ましくは0.1~50ppmである。
【0028】
重合装置としては、バッチ式では一般に用いられる撹拌機付きの反応槽が使用でき、また、連続式としては、コニーダー、2軸スクリュ-式連続押出混合機、2軸パドルタイプの連続混合機、その他、これまでに提案されているトリオキサン等の連続重合装置が使用可能であり、また2種以上のタイプの重合機を組み合わせて使用することもできる。
【0029】
重合方法は特に限定されるものではないが、先に提案されているように、トリオキサン、コモノマー及び重合触媒としてのヘテロポリ酸を、あらかじめ液相状態を保ちつつ十分に混合し、得られた反応原料混合液を重合装置に供給して共重合反応を行えば、必要触媒量の低減が可能となり、結果としてホルムアルデヒド放出量のより少ないポリアセタール共重合体を得るのに有利であり、より好適な重合方法である。重合温度は60~120℃の温度範囲で行なわれる。
【0030】
本発明において、上記の主モノマー(a)とコモノマー(b)とを重合してポリアセタール共重合体を調製するにあたり、重合度を調節するため公知の連鎖移動剤、例えばメチラールの如き低分子量の線状アセタール等を添加することも可能である。
【0031】
また、重合反応は活性水素を有する不純物、例えば水、メタノール、ギ酸等が実質的に存在しない状態、例えばこれらがそれぞれ10ppm以下の状態で行うのが望ましく、このためには、これらの不純物成分を極力含まないように調製されたトリオキサン、環状エーテル及び/又は環状ホルマールを、主モノマーやコモノマーとして使用するのが望ましい。
【0032】
上記のように重合して得られた、重合触媒を含有すると共に、その末端に不安定な部分を有するポリアセタール重合体(粗ポリアセタール重合体)に、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩若しくはその水和物(d)を溶融混練して、重合触媒の失活を行うと共にポリアセタール重合体(粗ポリアセタール重合体)が有する不安定末端基を低減して安定化する。
【0033】
本発明で使用する(A)ポリアセタール重合体の分子量は特に限定されないが、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)法にて決定したPMMA(ポリメタクリル酸メチル)相当の重量平均分子量が10、000~400、000程度のものが好ましい。また、樹脂の流動性の指標となるメルトインデックス(ASTM-D1238に準じ190℃、荷重2.16kgで測定)が0.1~100g/10分であるものが好ましく、さらに好ましくは0.5~80g/10分である。
【0034】
本発明において使用する(A)ポリアセタール重合体は、特定の末端特性を有していることが特に好ましい。具体的には、ヘミホルマール末端基量が1.0mmol/kg以下、ホルミル末端基量が0.5mmol/kg以下、不安定末端量が0.5質量%以下である。
【0035】
ここでヘミホルマール末端基は-OCHOHで示されるものであり、ヒドロキシメトキシ基あるいはヘミアセタール末端基とも称される。また、ホルミル末端基は-OCHOで示される。このようなヘミホルマール末端基およびホルミル末端基の量はH-NMR測定により求めることができ、その具体的な測定方法は、特開2001-11143号公報に記載された方法を参照できる。
【0036】
また、不安定末端量とは、ポリアセタール重合体の末端部分に存在し、熱や塩基に対して不安定で分解し易い部分の量を示す。かかる不安定末端量は、ポリアセタール重合体1gを、0.5%(体積%)の水酸化アンモニウムを含む50%(体積%)メタノール水溶液100mlとともに耐圧密閉容器に入れ180℃で45分間加熱処理した後、冷却し、開封して得られる溶液中に分解溶出したホルムアルデヒド量を定量し、ポリアセタール重合体に対する質量%で表したものである。
【0037】
本発明において用いる(A)ポリアセタール重合体は、ヘミホルマール末端基量が1.0mmol/kg以下のものが好ましく、さらに好ましくは0.6mmol/kg以下である。またホルミル末端基量は0.5mmol/kg以下のものが好ましく、さらに好ましくは0.1mmol/kg以下である。また不安定末端量は0.5質量%以下のものが好ましく、さらに好ましくは0.3質量%以下である。ヘミホルマール末端基量、ホルミル末端基量、不安定末端量の下限は特に限定されるものではない。
【0038】
前記の如く特定の末端特性を有する(A)ポリアセタール重合体は、モノマー及びコモノマーに含まれる不純物の低減、製造プロセスの選択およびその製造条件の最適化などを行うことにより製造できる。
【0039】
以下に本件の発明の要件を満たす特定の末端特性を有する(A)ポリアセタール重合体を製造する方法は、例えば特開2009-286874号公報記載の方法を使用することができる。ただし、この方法に限定されるものではない。
【0040】
本発明において、(A)ポリアセタール重合体に分岐又は架橋構造を有するポリアセタール重合体を添加して使用してもよく、その場合配合量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対し0.01~20質量部であり、特に好ましくは0.03~5質量部である。
【0041】
<(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤>
本発明で使用可能な(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、特に限定されるものでなく、例えば、単環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール等)、炭化水素基又はイオウ原子を含む基で連結された多環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等)、エステル基又はアミド基を有するヒンダードフェノール化合物(例えば、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、n-オクタデシル-2-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](別名:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート])、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス{2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート、ジ-n-オクタデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ジヒドロシンナムアミド)、N,N’-エチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’-テトラメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’-エチレンビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート等が例示される。
【0042】
本発明においては、これらの酸化防止剤から選ばれた少なくとも一種又は二種以上を使用することができる。
【0043】
本発明における(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対し、0.01~0.30質量部である。配合量がこの量より少ないと効果が不十分であり、この量より多い場合は、ヒンダードアミン化合物との拮抗作用により、耐候性が劣ってしまう。
【0044】
<(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジド>
本発明において使用する(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジドとしては、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ステアリン酸ヒドラジド等が挙げられる。好ましくは、セバシン酸ジヒドラジドが挙げられ、ホルムアルデヒドを捕捉し、更にヒドラジド基を有するヒダントイン化合物と併用することで本来発生するモ-ルドデポジットを著しく抑えることができる。
【0045】
本発明において、(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジドは一種以上を組み合わせて使用でき、その添加量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して0.01~0.50質量部であり、好ましくは0.02~0.30質量部である。
【0046】
<(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物>
本発明の(D)2つのヒドラジノカルボニルアルキル基を有するヒダントイン化合物(以下、ヒダントイン化合物と略すこともある)としては1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)ヒダントイン、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-メチルヒダントイン、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン等が挙げられ、ヒダントインの5位には1又は2つの置換基(メチル基などの直鎖又は分岐鎖状炭素数1~6のアルキル基、フェニル基などの炭素数6~10のアリール基など)を有していてもよく、5位の2つの置換基は5位の炭素原子とともに環を形成してもよい。好ましくは1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントインが用いられる。
【0047】
本発明の(D)ヒダントイン化合物は、ホルムアルデヒドを捕捉し、本発明の(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジドと併用することによって、モールドデポジットを抑制する。とくに、セバシン酸ジヒドラジドとの併用で効果が大きい。
【0048】
本発明において(D)ヒダントイン化合物は一種以上を組み合わせて使用でき、その添加量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して0.001~0.50質量部であり、好ましくは0.01~0.30質量部である。
【0049】
また本発明において(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジドと(D)ヒダントイン化合物の両方が含有されていれば本発明の効果が得られるが、合計量として、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して、0.03~0.55質量部であることが好ましい。そして(C)と(D)の含有質量比は(C):(D)=10:90~99:1であることが好ましい。
【0050】
<(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩>
本発明の(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩を構成する脂肪族カルボン酸は、飽和脂肪族カルボン酸であってもよく、不飽和脂肪族カルボン酸であってもよい。このような脂肪族カルボン酸としては、炭素数10以上の1価又は2価の脂肪族カルボン酸、例えば、炭素数10以上の1価の飽和脂肪族カルボン酸[カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の炭素数10~34の飽和脂肪族カルボン酸(好ましくは炭素数10~30の飽和脂肪族カルボン酸)等]、炭素数10以上の1価の不飽和脂肪族カルボン酸[オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エルカ酸等の炭素数10~34の不飽和脂肪族カルボン酸(好ましくは炭素数10~30の不飽和脂肪族カルボン酸)等]、炭素数10以上の2価の脂肪族カルボン酸(二塩基性脂肪族カルボン酸)[セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸等の2価の炭素数10~30の飽和脂肪族カルボン酸(好ましくは2価の炭素数10~20の飽和脂肪族カルボン酸)等]、炭素数10以上の2価の不飽和脂肪族カルボン酸[デセン二酸、ドデセン二酸等の2価の炭素数10~30の不飽和脂肪族カルボン酸(好ましくは2価の炭素数10~20の不飽和脂肪族カルボン酸)等]が例示できる。
【0051】
また、上記の脂肪族カルボン酸には、その一部の水素原子がヒドロキシル基等の置換基で置換され、分子内に1又は複数のヒドロキシル基等を有する脂肪族カルボン酸(例えば、12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ飽和炭素数10~26の脂肪族カルボン酸)も含まれ、また精製の精度により炭素数が若干相違する脂肪族カルボン酸も含まれるものである。
【0052】
本発明においてアルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウムが好ましく、特にカルシウムが好ましい。特に好ましい脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩は、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウムである。
【0053】
ポリアセタール樹脂組成物中の脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩は一種以上を組み合わせて使用でき、その添加量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して、0.001~0.30質量部であり、好ましくは0.01~0.25質量部である。
【0054】
<(F)ヒンダードアミン化合物>
本発明において使用するヒンダードアミン化合物に特に制限がなく、立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が2級または3級であるヒンダードアミン化合物が好ましく用いられる。立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が3級であるヒンダードアミン化合物が特に好ましく用いられる。
【0055】
本発明において使用する立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が2級であるヒンダードアミン安定剤としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)-ジエタノールとの縮合物、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物などが挙げられる。
【0056】
本発明において使用する立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が3級であるヒンダードアミン化合物としては、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アジペート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルセパケートなどの脂肪族ジ又はトリカルボン酸-ビス又はトリスピペリジルエステル(炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸-ビスピペリジルエステルなど)、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノ-ルとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)-ジエタノールとの縮合物、過酸化処理した4-ブチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン、及びシクロヘキサン、N,N'-エタン-1,2-ジイルビス(1,3-プロパンジアミン)との反応生成物、1-[2-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-4-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒロドキシフェニル)プロピオニルオキシ}-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
【0057】
特に好ましいものとしては、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)-ジエタノールとの縮合物、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物が挙げられる。
【0058】
本発明において、(F)ヒンダードアミン化合物は一種以上を組み合わせて使用でき、その添加量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して0.2~1.0質量部、であり、好ましくは0.4~0.8質量部である。
【0059】
(F)ヒンダードアミン化合物の配合量が過少の場合は、耐候性に優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができず、逆に配合量が過多の場合は、機械的特性の低下、染み出しによる外観不良などの問題が生じる。
【0060】
<(G)紫外線吸収剤>
本発明の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系化合物が挙げられ、これらの光安定剤は一種又は二種以上組合せて使用できる。
【0061】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(t-ブチル)フェノール、2,4-ジ-t-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-t-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-イソアミルフェニル)ベンゾトリアゾール等のヒドロキシル基及びアルキル(炭素数1~6のアルキル)基置換アリ-ル基を有するベンゾトリアゾール類2-[2'-ヒドロキシ-3',5'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどのヒドロキシル基及びアラルキル(又はアリール)基置換アリール基を有するベンゾトリアゾール類2-(2'-ヒドロキシ-4'-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのヒドロキシル基及びアルコキシ(C1~12のアルコキシ)基置換アリール基を有するベンゾトリアゾール類等が挙げられる。
【0062】
これらのベンゾトリアゾール系化合物のうち、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-t-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールなどが好ましい。
【0063】
シュウ酸アニリド系化合物としては、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-5-t-ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシフェニル)シュウ酸ジアミド、窒素原子上に置換されていてもよいアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。シュウ酸アニリド化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0064】
本発明において、(G)紫外線吸収剤の添加量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して、0.2~1.0質量部である。好ましくは、0.4~0.8質量部である。(G)紫外線吸収剤の配合量が過少の場合は、耐候性に優れたポリアセール樹脂組成物を得ることができず、逆に配合量が過多の場合は、機械的特性の低下、染み出しによる外観不良などの問題が生じる。
【0065】
<(H)ゴム状ポリマーのコアとビニル系共重合体からなるガラス状ポリマーのシェルとを有するコアシェルポリマー>
本発明において(H)コアシェルポリマーは、ゴム状ポリマーのコアとビニル系共重合体からなるガラス状ポリマーのシェルとを有するものであり、例えば、シード乳化重合法のうち、通常、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次に被覆するような連続した多段階乳化重合法によって得られる。
【0066】
コアシェルポリマーが後述の中間相を有する場合においては、先の段階の重合体の中へ後の段階の重合体が侵入するような多段階乳化重合法によって中間相が形成されることもある。
【0067】
粒子発生重合時には、モノマー、界面活性剤および水を反応器へ添加し、次に重合開始剤を添加することにより、乳化重合反応を開始させることが好ましい。第一段目の重合はゴム状ポリマーを形成する反応である。
【0068】
ゴム状ポリマーを構成するモノマーとしては、例えば共役ジエンまたはアルキル基の炭素数が2~8であるアルキルアクリレートあるいはそれらの混合物などが挙げられる。
【0069】
これらのモノマーを重合させてゴム状ポリマーを形成する。このような共役ジエンとして、例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン等を挙げることができるが、特にブタジエンが好ましく用いられる。
【0070】
また、アルキル基の炭素数が2~8であるアルキルアクリレートとして、例えばエチルアリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等を挙げることができるが、特にブチルアクリレートが好ましく用いられる。
【0071】
第一段目の重合には共役ジエンおよびアルキルアクリレートなどと共重合可能なモノマー、例えばスチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート等を共重合させることもできる。
【0072】
第一段目の重合が共役ジエンを含まない場合あるいは共役ジエンを含んでいても第一段目の全モノマー量の20質量%以下である場合は、架橋性モノマーおよびグラフト化モノマーを少量用いることにより高い耐衝撃性をもつポリマーとすることができる。
【0073】
架橋性モノマーとして、例えばジビニルベンゼン等の芳香族ジビニルモノマー、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアルカンポリオールポリアクリレートまたはアルカンポリオールポリメタクリレート等を挙げることができるが、特にブチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレートが好ましく用いられる。
【0074】
グラフト化モノマーとして、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート等の不飽和カルボン酸アリルエステル等を挙げることができるが、特にアリルメタクリレートが好ましく用いられる。このような架橋性モノマー、グラフト化モノマーは、それぞれ第一段目の全モノマー量の0~5質量%、好ましくは0.1~2質量%の範囲で用いられる。
【0075】
本発明で用いる(H)コアシェルポリマーは、シェル相が含酸素極性基を有するビニル系共重合体からなるガラス状ポリマーが形成されているものが好ましい。シェル相が含酸素極性基を有するビニル系共重合体で形成されたコアシェルポリマーにより、艶消し効果(光沢低減効果)は一層優れたものになる。
【0076】
このような含酸素極性基としては、例えば水酸基、エーテル結合を有する基(例えばグリシジル基)、アミド基、イミド基及びニトロ基などが挙げられるが、特に水酸基及びエーテル結合を有する基が好ましい。
【0077】
上記含酸素極性基を有するビニル系共重合体を構成するモノマーとしては、例えば分子内に2個以上の含酸素極性基を有するアルコールの(メタ)アクリレートが用いられる。ここで分子内に2個以上の含酸素極性基を有するアルコールとは、アルコール部分の水酸基以外に少なくとも1個の含酸素極性基を有するアルコールを示す。
【0078】
含酸素極性基を有するアルコールの(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば水酸基および/またはグシジル基を有するアルコールの(メタ)アクリレートが用いられる。水酸基を有するアルコールの(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどを挙げることができるが、好ましくはヒドロキシエチルメタクリレートが用いられる。
【0079】
グリシジル基を有するアルコールの(メタ)アクリレートとしては、例えばグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどを挙げることができるが、好ましくはグリシジルメタクリレートが用いられる。また、上記の(メタ)アクリレート以外の、例えばアリロキシエタノール、アリルグリシジルエーテル等の含酸素極性基を有するビニル単量体も、含酸素極性基を有するビニル系共重合体の構成成分として用いることができる。
【0080】
含酸素極性基を有する前記モノマー以外のガラス状ポリマーを構成するモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン等のビニル重合性モノマーを挙げることができるが、特に好ましくはメチルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリル等が用いられる。
【0081】
このシェル相はコアシェルポリマー全体の10~50質量%の範囲が好ましい。このシェル相がこの質量範囲よりも少ないときは、耐候性を損なう恐れがあり、又、越えて多いときは、生成するコアシェルポリマーを溶融混合して得られる樹脂組成物の機械的性質が十分でないことがある。
【0082】
また、第一段と最終の重合相の間には中間相が存在していてもよい。例えば、グリシジルメタクリレート、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレートなどのような官能基を有する重合モノマー、メチルメタクリレートなどのようなガラス状ポリマーを形成する重合モノマー、ブチルアクリレートなどのゴム状ポリマーを形成する重合モノマーなどを乳化重合することによって中間相が形成される。このような中間相は所望のコアシェルポリマーの性質によって種々選択することができる。
【0083】
このような中間相を有するコアシェルポリマーの構造は、例えばコアとシェルの間にもう一つの層が存在している多層系構造をとるものや、中間相がコア中で細かな粒状となって分散しているサラミ構造をとるものが挙げられる。サラミ構造を有するコアシェルポリマーにおいては更に極端な場合は、分散するべき中間相がコアの中心部において新たな芯を形成していることもある。
【0084】
このような構造のコアシェルポリマーはスチレンに代表されるモノマーを中間相構成モノマーとして使用した場合に生じることがある。また、中間相を有するコアシェルポリマーを使用した場合、耐衝撃性の改良、曲げ弾性率の向上、熱変形温度の上昇、外観(表面剥離およびパール光沢の抑制、屈折率変化による色調の変化)が改善されることがある。
【0085】
本発明で用いるコアシェルポリマーのための乳化重合は、例えばノニオン性界面活性剤、オリゴマー型アニオン性またはオリゴマー型ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤や例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤等の重合開始剤を用いて行われる。
【0086】
ここで用いられるノニオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのエーテル型、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのエステル型、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのソルビタンエステル型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどのブロックポリマー型など広く一般に使用されているノニオン性界面活性剤のほとんどが使用可能である。
【0087】
また、オリゴマー型アニオン性またはオリゴマー型ノニオン性界面活性剤とは、従来、特殊用途で乳化重合物に用いられてきたオリゴマー型界面活性剤である。
【0088】
本発明で用いるコアシェルポリマーは、例えば、次のような方法により、粒状、フレーク状あるいは粉末状として取り出すことができる。
(1)前述の界面活性剤および重合開始剤を用いて、公知のシード乳化重合法によりラテックスを製造する。(2)次に該ラテックスを凍結融解によりポリマーを分離する。(3)続いて、遠心脱水、乾燥する。
【0089】
このような取り出し操作によって、乳化重合中に使用した溶媒や界面活性剤などの多くを除くことができる。あるいは、(2)の段階でラテックスをそのまま乾燥して用いることもできる。また、スプレードライヤーによる噴霧乾燥方法も、ラテックスからコアシェルポリマーを取り出す方法の一つである。こうして取り出されたコアシェルポリマーはさらに押出機、およびペレタイザーによりペレット状にしてもよいし、あるいはそのままで樹脂に溶融混合することができる。
【0090】
本発明において、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対する(H)ゴム状ポリマーのコアとビニル系共重合体からなるガラス状ポリマーのシェルとを有するコアシェルポリマーの添加量は1~50質量部、好ましくは3~20質量部である。(H)コアシェルポリマーは、一種以上を組み合わせて使用できる。
【0091】
(H)コアシェルポリマーの添加量が少なすぎると表面光沢低下効果が十分発揮されず、またいたずらに過大に添加しても、機械的性質特に剛性の大幅な低下が認められ、また、熱安定性に好ましくない影響が生じる。
【0092】
(H)コアシェルポリマーはポリアセタール樹脂中に(F)ヒンダードアミン化合物および(G)紫外線吸収剤と併用して添加配合することにより、得られた成形品表面の光沢が均一に低下し、落ち着きのある高級感をもたせると同時に耐候性を相乗的に向上させる。
【0093】
更に、ポリアセタール樹脂の持つ優れた機械的性質を保持する。かかる光沢性の低減効果はコアシェルポリマーをポリアタール樹脂中に添加配合して得られる成形品では、その表面にコアシェルポリマーが0.5~2μm程度の粒子状で分散し、ポリアセタール樹脂表面を粗くすると同時に含酸素極性基が表面に均一に分散しており、ポリアセタール樹脂成形品の表面を改質し、低光沢になるものと考えられる。
【0094】
表面光沢の度合いは、実用上好ましくは後記測定法(鏡面金型使用)による光沢度が35%以下のもの、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下のものである。
【0095】
<その他の添加剤>
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、本発明を阻害しない限り、必要に応じて、さらに、加工安定剤、耐衝撃性改良剤、光沢性制御剤、摺動性改良剤、充填剤、着色剤、核剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、抗カビ剤、芳香剤、発泡剤、相溶化剤、物性改良剤(ホウ酸又はその誘導体など)、香料などを一種または二種以上配合することができる。
<ポリアセタール樹脂組成物の製造方法>
【0096】
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、樹脂組成物の調製法として従来から知られた各種の方法により調製することができる。例えば、(1)組成物を構成する全成分を混合し、これを押出機に供給して溶融混練し、ペレット状の組成物を得る方法、(2)組成物を構成する成分の一部を押出機の主フィード口から、残余成分をサイドフィード口から供給して溶融混練し、ペレット状の組成物を得る方法、(3)押出し等により一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを混合して所定の組成に調整する方法などが採用できる。
【0097】
押出機を用いた組成物の調製においては、一カ所以上の脱揮ベント口を有する押出機を用いるのが好ましく、さらに、主フィード口から脱揮ベント口までの任意の場所に水や低沸点アルコール類をポリアセタール樹脂100質量部に対して0.1~10質量部程度供給し、押出工程で発生するホルムアルデヒド等を水や低沸点アルコール類と共に脱揮ベント口から脱揮除去するのが好ましい。これにより、ポリアセタール樹脂組成物およびその成形品から発生するホルムアルデヒド量をさらに低減することができる。
【0098】
このようにして調製された本発明のポリアセタール樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、真空成形、吹き込み成形、発泡成形等、従来から知られた各種の成形方法によって成形することができる。
【0099】
このようにして成形された本発明のポリアセタール樹脂組成物からなる成形品は、その表面光沢が十分に抑制されたものであり、その表面光沢の度合いは、後記実施例に記載した測定法(鏡面金型使用)による光沢度が35%以下、好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下のものである。
【0100】
また、最近の自動車分野においては、内装に高級感を持たせるため、又、手触りを良くするために、内装部品の大部分に皮シボ・梨地シボと呼ばれるシボ加工が施されており、鏡面での低光沢化をすると同時に、シボ加工面への高い転写性が必要となる。
【0101】
通常のポリアセタール樹脂では結晶性が高いためか、このような要求に応えることができないのに対し、本発明のポリアセタール組成物においては、配合成分の作用によって成形品表面が改質されることにより、シボ加工面への転写性が非常に良くなり、シボ成形表面での光沢は更に一層低下する。
【0102】
本発明の成形品としては、金型内面の一部または全部にシボ加工が施された金型を用いて成形され、表面の一部または全部がシボ形状をしている成形品が好ましい。金型内面のシボ加工は化学エッチングなどの腐蝕加工、放電加工などにより行うことができ、シボ模様の表面粗さは目的とする成形品の外観に応じて選択し得る。
【実施例
【0103】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」はすべて質量部を表す。また、実施例及び比較例において評価した諸特性及びその評価方法は以下の通りである。表1、2に記載の数値の単位は、質量部である。また測定は特に条件が記載されていない限り23℃55%RHの雰囲気下で行った。
【0104】
表1、2に示す各種成分割合で添加混合し、ベント付き二軸の押出機で溶融混練してペレット状の組成物を調製した。実施例で使用した表1、2に記載の各成分は以下のものである。
【0105】
・(A)ポリアセタール重合体
A-1:二軸パドルタイプの連続式重合機を用いて、全モノマー(トリオキサンおよび1,3-ジオキソラン)に対し1、3-ジオキソラン3.3質量%、メチラール1000ppm添加したトリオキサンを連続的に供給し、同時に同じところへ三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート(触媒濃度:全モノマーに対して20ppm(三フッ化ホウ素として)のシクロヘキサン溶液)を供給し重合した。
重合機吐出口より排出された重合体について、排出直後にトリエチルアミン1000ppm含有する水溶液を加え混合粉砕を行うと共に、撹拌処理を行った。その後、遠心分離、乾燥を行い触媒失活された重合体を得た。この重合体を、ベント口を有するニ軸押出機に供給し、樹脂温度約220℃で溶融混練させて、ベント口で減圧脱揮を行いながら、不安定末端の除去を行いペレット状の重合体を得た。その後、乾燥を行い、所望の重合体を得た。(メルトインデックス(190℃、荷重2.16kgで測定):9g/10分)
【0106】
A-2:二軸パドルタイプの連続式重合機を用いて、全モノマー(トリオキサンおよび1,3-ジオキソラン)に対し1,3-ジオキソラン3.3質量%、メチラール1000ppm添加したトリオキサンを連続的に供給し、同時に同じところヘテロポリ酸触媒としてリンタングステン酸(触媒濃度:全モノマーに対して3ppmのギ酸メチル溶液)を供給し重合した。重合機吐出口より排出された重合体にステアリン酸ナトリウム20ppm添加し、ベント口を有するニ軸押出機に供給し、樹脂温度約220℃で溶融混練させて、ベント口で減圧脱揮を行いながら、触媒の失活および不安定末端の除去を行いペレット状の重合体を得た。その後、乾燥を行い、所望の重合体を得た。(メルトインデックス(190℃、荷重2.16kgで測定):9g/10分)
【0107】
・(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
B-1:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート](IRGANOX245:BASF社製)
B-2:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](IRGANOX1010:BASF社製)
・(C)脂肪族カルボン酸ヒドラジド
C-1:セバシン酸ジヒドラジド
C-2:アジピン酸ジヒドラジド
C-3:ドデカン二酸ジヒドラジド
・(D)ヒダントイン化合物
D-1:1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン(「アミキュア」VDH:味の素ファインテクノ(株)製)
・(E)脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩
E-1:ステアリン酸カルシウム
E-2:12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム
【0108】
・(F)ヒンダードアミン化合物
F-1:1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(アデカスタブLA-63P:(株)ADEKA製)
F-2:テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(アデカスタブLA-52:(株)ADEKA製)
F-3:1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物(アデカスタブLA-62:(株)ADEKA製)
以上、立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が3級であるヒンダードアミン化合物
F-4:ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(TINUVIN770DF:BASF社製)立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が2級であるヒンダードアミン化合物
【0109】
・(G)紫外線吸収剤
G-1:2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(TINUVIN234:BASF社製)
G-2:N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-フェニル)シュウ酸ジアミド(SanduvorVSU:クラリアント社製)
・(H)ゴム状ポリマーのコアとビニル系共重合体からなるガラス状ポリマーのシェルとを有するコアシェルポリマー
H-1:アクリル系コアシェルポリマー(スタフィロイドPO-0935:アイカ工業(株)製)
【0110】
<評価>
実施例における特性評価項目及び評価方法は以下の通りである。結果を表3、4に示す。
【0111】
<成形品からのホルムアルデヒド発生量(VOC)評価>
実施例及び比較例で調製したポリアセタール樹脂組成物を用い、下記条件で平板状試験片(100mm×40mm×2mmt)を成形した。この平板状試験片2枚を10Lのポリフッ化ビニル製サンプリングバッグに封入し脱気して4Lの窒素を入れ、65℃で2時間加熱した後、サンプリングバッグ内の窒素を0.5ml/minで3L抜き取り、発生したホルムアルデヒドをDNPH(2,4-ジニトロフェニルヒドラジン)捕集管(Sep-Pak DNPH-Silica:Waters社製)に吸着させた。
【0112】
その後、DNPH捕集管からDNPHとホルムアルデヒドとの反応物をアセトニトリルで溶媒抽出し、高速液体クロマトグラフでDNPHとホルムアルデヒドとの反応物の標準物質を用いた検量線法により、発生したホルムアルデヒド量を求め、試験片単位質量あたりのホルムアルデヒド発生量(μg/g)を算出した。
【0113】
*成形機:FANUC ROBOSHOT α-S100ia (ファナック(株))
*成形条件:シリンダー温度(℃) ノズル-C1 -C2 -C3
190-190-180-160℃
射出圧力 60(MPa)
射出速度 1.0(m/min)
金型温度 80(℃)
【0114】
<モ-ルドデポジット(MD)の評価>
実施例および比較例で調製したポリアセタール樹脂組成物を用い、下記条件でモ-ルドデポジット試験片(33mm×23mm×1mmt)を成形した。
[評価方法]
2000shot連続成形した後、金型内のキャビティ部表面を目視にて観察し、以下の基準に従って付着物量を目視で判定した。
◎:付着物は全く確認されない。
○:付着物はほとんど確認されない。
△:一部付着物が確認される。
×:全体に付着物が確認される。
××:全体に多量の付着物が確認される。
【0115】
*成形機:FANUC ROBOSHOT S-2000i 50B(ファナック(株))
*成形条件:シリンダー温度(℃) ノズル-C1- C2- C3
205-215-205-185℃
射出圧力 40(MPa)
射出速度 1.5(m/min)
金型温度 80(℃)
【0116】
<耐候性の評価>
平板状成形品(70mm×40mm×3mmt)をUVフェードメータ[紫外線オートフェードメータ FAL-AU-H・B・EM:スガ試験機(株)製]を用いて、83℃のフェード条件で800時間照射したのちに取り出し、以下の方法にて、試験片表面のクラックの有無、照射前後における色相の変化(ΔE)を調べた。
・クラックの有無
試験片表面を目視観察し、クラックの発生の有無を判定した。
・色相の変化(ΔE)
成形品の色相(L*、a*、b*)を日本電色工業(株)製Z-300A型カラーセンサー
で測定し、色相の変化(ΔE)を次の式を用いて計算した。
ΔE={(L*-L*+(a*-a*+(b*-b*1/2
なお、L*、a*、b*は初期の色相を示し、L*、a*、b*は照射後の色相を示す。
【0117】
値が小さいほど色相の変化が少ないことを示す。
【0118】
<表面光沢度>
鏡面金型で成形した試験片について、JIS-K7105の光沢度測定に準拠し、携帯光沢計(スガ試験機(株)製HG-246)にて45度-45度反射における光沢度を測定した。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
上記の通り、本発明の組成の範囲では、優れた耐候性を有し、表面光沢が抑制され、ホルムアルデヒド発生量およびモールドデポジットの発生量も安定的に抑制されることが明らかである。