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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】有機無機複合粒子からなる粉末
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/064 20060101AFI20230406BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230406BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20230406BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230406BHJP
【FI】
C01B21/064 M
C08L101/00
C08K9/04
C08K3/013
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020510668
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2019010940
(87)【国際公開番号】W WO2019188444
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2018066444
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲木 喜孝
(72)【発明者】
【氏名】台木 祥太
【審査官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-076586(JP,A)
【文献】特開2017-057098(JP,A)
【文献】特開2015-193752(JP,A)
【文献】国際公開第2014/119384(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/064
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダムに配向した複数の六方晶窒化ホウ素粒子が三次元架橋樹脂を介して複合化されてなる有機無機複合粒子からなり、レーザー回折散乱型粒度分布計により測定される体積頻度50%粒径(D50)が2~65μmの範囲にあり、
前記三次元架橋樹脂が、エポキシ樹脂硬化体、アクリル樹脂硬化体またはシリコーン樹脂硬化体であり、かつ、六方晶窒化ホウ素粒子100質量部に対し、1質量部以上5質量部以下の量で含まれる粉末。
【請求項2】
樹脂組成物の充填材用である請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粉末を充填材として含む樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の粉末の製造方法であって、六方晶窒化ホウ素粒子100質量部に対し、エポキシ樹脂硬化体、アクリル樹脂硬化体またはシリコーン樹脂硬化体である三次元架橋型硬化性樹脂を1質量部以上質量部以下の量で添加して混合する工程(1)と、次いで前記三次元架橋型硬化性樹脂を硬化させる工程(2)とを含む粉末の製造方法。
【請求項5】
三次元架橋型硬化性樹脂が、熱硬化性樹脂である請求項に記載の粉末の製造方法。
【請求項6】
レーザー回折散乱型粒度分布計により測定される、工程(1)で用いられる六方晶窒化ホウ素粒子の体積頻度50%粒径(D50)が0.5~20μmの範囲にある請求項またはに記載の粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三次元架橋樹脂と六方晶窒化ホウ素からなる有機無機複合粒子に関する。詳しくは、六方晶窒化ホウ素粒子同士が樹脂を介して凝集物を形成しており、かつ該樹脂成分は容易に溶出することなく有機無機複合粒子の形態を維持し、熱伝導性樹脂組成物等の作製に好適な有機無機複合粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化と高性能化への要求から、半導体デバイスの高集積化が進み、同時にデバイスから発生する熱を効率的に逃がすための放熱材料の使用量が拡大しており、さらに材料の放熱性能の向上が求められている。半導体素子の発生する熱をヒートシンクや筺体等に逃がす経路には様々な放熱材料が用いられる。部品を実装する基板には、熱伝導性の高い窒化アルミニウムや窒化ケイ素などのセラミック基板が用いられるケースが増えている。
【0003】
また、金属板に放熱性の絶縁樹脂層を設けたメタルベース基板の使用も増加しており、そうした樹脂層には熱伝導率の高いフィラーとしてアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などが充填される。他にも半導体デバイス周りでは封止材や接着剤、グリースなどにも高熱伝導性のフィラーが使用されつつあり、いかに効率的に熱を逃がすかが重要となってきている。
【0004】
樹脂に充填するフィラーとして一般的なシリカやアルミナについては、合成方法の改良により球状化や精密な粒度分布の制御といった樹脂への充填性向上方法が発達している。また、シリカは表面に活性な水酸基を多く有し、樹脂への分散性を改善するための表面処理もさかんに行われている。
【0005】
一方、六方晶窒化ホウ素は、シリカやアルミナに比べて熱伝導性に優れるが、熱伝導率には異方性がある。六方晶窒化ホウ素は平板状の結晶であり、平板面の長手方向の熱伝導率は200W/m・K以上と高いが、平板の厚み方向の熱伝導率は2~3W/m・Kしかない。そのため、例えば放熱樹脂シートに充填された窒化ホウ素の平板が、シート面に平行に充填されると、シートの厚み方向の熱伝導率を高くできない。さらに六方晶窒化ホウ素は面に沿ってへき開する性質があり、かつ硬度も低いため、高アスペクト比な平板状の粒子が多数を占める粉末となりやすい。これらの性質により、六方晶窒化ホウ素をフィラーとして使用する際は熱伝導性の異方性が発生しやすいという課題があった。
【0006】
従来、熱伝導性の異方性を解決するために、高アスペクト比な粒子を同一方向に配向させないようにする試みがされてきた。代表的な例は、平板状の六方晶窒化ホウ素粒子をランダムに凝集させることで、熱的異方性のない粒子とする方法である(例えば特許文献1~5参照)。
【0007】
特許文献1では、炭化ホウ素を窒素雰囲気で焼成した後の生成物に、三酸化二ホウ素またはその前駆体を混合し、焼成することで凝集粒子を得ている。
【0008】
特許文献2では、ホウ酸メラミンと窒化ホウ素との複合粒子を製造し、これを焼成することにより凝集粒子を得ている。
【0009】
特許文献3では、窒化ホウ素と酸化物粒子を含むスラリーから造粒体を形成し、該造粒体を焼成することにより凝集粒子を得ている。
【0010】
特許文献4では、熱可塑性樹脂のポリビニルアルコール等の結着材、炭酸カルシウム等の焼結助剤及び窒化ホウ素粒子を溶媒に分散したスラリーを噴霧乾燥させた後、焼成することで窒化ホウ素凝集物を得ている。
【0011】
特許文献5では、溶媒に溶解させたバインダ樹脂と窒化ホウ素粒子を混合し、さらにバインダ樹脂を析出させることで、バインダ樹脂により結着した窒化ホウ素凝集粒子を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2007-308360号公報
【文献】特開2012-171842号公報
【文献】国際公開第2015/119198号パンフレット
【文献】特開2018-20932号公報
【文献】特開2017-57098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記特許文献1~4等に記載の方法では、凝集粒子を得るために1600~2200℃の極めて高い温度での焼成を必要とし、工業的に生産する上で問題があった。
【0014】
また特許文献5記載の方法では、その製造方法上、バインダ樹脂としては溶媒に可溶なものしか使用できず、耐溶媒性や耐熱性に課題があった。
【0015】
従って、本発明の目的は、樹脂組成物への高充填と高い熱伝導性の両方を満足する六方晶窒化ホウ素凝集粒子からなる粉末であって、極めて生産性の高い、新規な粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、六方晶窒化ホウ素粉末に対して、少量の硬化性樹脂を添加し、次いで該樹脂を硬化させることにより六方晶窒化ホウ素が様々な方向を向いた凝集粒子を生じることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち本発明は、ランダムに配向した複数の六方晶窒化ホウ素粒子が三次元架橋樹脂を介して複合化されてなる有機無機複合粒子からなり、レーザー回折散乱型粒度分布計により測定される体積頻度50%粒径(D50)が2~65μmの範囲にある粉末である。
【0018】
また本発明は、上記粉末の製造方法として、六方晶窒化ホウ素粉末100質量部に対し、三次元架橋型硬化性樹脂を1質量部以上35質量部以下の量で添加して混合する工程(1)と、次いで前記三次元架橋型硬化性樹脂を硬化させる工程(2)とを含む粉末の製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、樹脂組成物への高充填と高い熱伝導性の両方を満足する六方晶窒化ホウ素凝集粒子からなる粉末であって、極めて生産性の高い、新規な粉末が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】製造例1で製造した窒化ホウ素粒子の走査電子顕微鏡像。
図2】実施例1で製造した有機無機複合粒子の走査電子顕微鏡像。
図3】実施例2で製造した有機無機複合粒子の走査電子顕微鏡像。
図4】実施例3で製造した有機無機複合粒子の走査電子顕微鏡像。
図5】実施例4で製造した有機無機複合粒子の走査電子顕微鏡像。
図6】実施例5で製造した有機無機複合粒子の走査電子顕微鏡像。
図7】実施例6で製造した有機無機複合粒子の走査電子顕微鏡像。
図8】実施例7で製造した有機無機複合粒子の走査電子顕微鏡像。
図9】製造例1で製造した原料窒化ホウ素粉末および実施例2~4で製造した有機無機複合粒子粉末の粒度分布を示すグラフ。
図10】製造例1で製造した原料窒化ホウ素粉末ならびに実施例6および7で製造した有機無機複合粒子粉末の粒度分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の粉末は、ランダムに配向した複数の六方晶窒化ホウ素粒子(以下、単に「窒化ホウ素粒子」と記す)が三次元架橋樹脂を介して複合されてなる有機無機複合粒子からなり、レーザー回折散乱型粒度分布計により測定される体積頻度50%粒径(D50)が2~65μmの範囲にある。
【0022】
[有機無機複合粒子]
本発明の有機無機複合粒子においては、複数の窒化ホウ素粒子がランダムに配向しているため、有機無機複合粒子は熱的異方性の少ない窒化ホウ素凝集体構造を有するものとなっている。
【0023】
ここで「ランダムに配向した」とは、様々な異なる方向に配向していることを示しているが、同じ方向を向いて配向するものが含まれていてもよい。また本発明の粉末は、実質的に前記有機無機複合粒子からなるが、本発明の効果を損なわない範囲で、単数の窒化ホウ素粒子と三次元架橋樹脂とからなる複合粒子を含んでいてもよく、また三次元架橋樹脂が固着されていない窒化ホウ素粒子そのものを含んでいてもよい。
【0024】
有機無機複合粒子を構成する三次元架橋樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、窒化ホウ素粒子100質量部に対し、その上限は、好ましくは35質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは25質量部以下、特に好ましくは20質量部以下であり、また、その下限は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.4質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、特に好ましくは2.5質量部以上である。三次元架橋樹脂の量が前記範囲内であることにより、有機無機複合粒子を構成する窒化ホウ素粒子同士が接触した状態を保ちやすく、また熱伝導性の高い窒化ホウ素粒子の割合が相対的に多いため、有機無機複合粒子の熱伝導性が高くなりやすい。一方、有機無機複合粒子の強度を保つためには、三次元架橋樹脂の量が多い方がよい。
【0025】
三次元架橋樹脂は公知の樹脂を特に限定なく採用でき、具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂 、ポリウレタン樹脂、架橋スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の硬化体が挙げられる。なかでも、一般に放熱材料に主に用いられている樹脂との相性を考えると、エポキシ樹脂硬化体、アクリル樹脂硬化体またはシリコーン樹脂硬化体が好ましい。また、これらは後述する製造方法を採用する際に、加熱または光照射により容易に硬化させられる利点も有する。
【0026】
本発明においては、前記樹脂が三次元架橋をしているため、耐溶媒性および機械的強度にも優れる。従って、例えば、有機無機複合粒子を樹脂と混練して樹脂組成物を製造する際などに、強い応力を付与しても六方晶窒化ホウ素粒子の凝集構造を維持する、ならびに塗料等に混合して使用する際に、溶媒が存在しても凝集構造が崩壊しない等の利点がある。
【0027】
なお、耐溶媒性の判断基準として、本発明では有機無機複合体をイソプロピルアルコール等の有機溶媒中で超音波分散し、かつ有機溶媒で洗浄した際に、三次元架橋樹脂由来の炭素含有量の減少率を評価する方法などが使用できる。
【0028】
有機溶媒としてイソプロピルアルコールを用いる場合の、耐溶媒性評価の一例を以下に述べる。評価対象とする粉末5gをイソプロピルアルコール20gに分散し、200W程度の超音波照射3分により分散させる。分散スラリーを遠心分離機にかけ、透明な上澄み液と沈降物に分けた後、上澄み液を除去する。沈降物にイソプロピルアルコール20gを加え、薬さじで沈降物をほぐし、さらに超音波照射3分により分散状態にする。再び遠心分離し上澄み液を除去する。さらにもう1回再分散と遠心分離を繰り返し、最後に得られた沈降物を80℃3時間真空乾燥し、洗浄後の乾燥物を得る。乾燥物の炭素含有量(C2)を測定し、洗浄前の炭素含有量(C1)からの減少率(Cd)を次の式1で計算する。
【0029】
d=[(C2-C1)×100]/C1 (式1)
本発明の有機無機複合粒子からなる粉末では、上記評価による炭素含有量の減少率が好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下となる。
【0030】
本発明で得られる有機無機複合粒子からなる粉末は、レーザー回折散乱型粒度分布計により測定される体積頻度50%粒径(D50)が2~65μm、好ましくは10~65μm、より好ましくは15~60μmの範囲にある。D50とは、測定される粒径の体積頻度分布において、粒径が小さい方から体積頻度を累積して、累積値が50%となるところの粒径の値を指す。本発明の粉末のD50が前記範囲であることにより、熱伝導性および絶縁性が良好となる。粒度分布の測定は有機無機複合粒子からなる粉末をエタノール中に0.2質量%濃度で分散し、200W程度の超音波照射を2分間行うことにより分散させた液体について実施する。
【0031】
本発明の粉末の製造方法は特に限定されないが、以下の方法で容易に製造することができる。
【0032】
すなわち、窒化ホウ素粉末100質量部に対し、三次元架橋型硬化性樹脂を好ましくは1質量部以上35質量部以下、より好ましくは1.4質量部以上30質量部以下、さらに好ましくは2質量部以上25質量部以下、特に好ましくは2.5質量部以上20質量部以下の量で添加して混合する工程(1)と、次いで前記三次元架橋型硬化性樹脂を硬化させる工程(2)とを含む粉末の製造方法である。以下、この方法について詳細に述べる。
【0033】
[六方晶窒化ホウ素]
本発明の製造方法において使用する六方晶窒化ホウ素は、従来公知の方法によって製造された粉末状のものを特に制限なく使用することができる。本発明では硬化性樹脂を混合して硬化させる前の窒化ホウ素粉末を「原料窒化ホウ素粉末」と呼ぶ。本発明における原料窒化ホウ素粉末を製造する方法としては、例えば酸化ホウ素、ホウ酸、炭化ホウ素等を原料として、メラミン法、還元窒化法などを用いて合成できる。
【0034】
原料窒化ホウ素粉末の粒子形態は鱗片状でも凝集状でもよく、高アスペクト比の粒子でもよい。純度は熱伝導性の観点から高い方が良く、窒化ホウ素成分は95%以上が良い。粒子径のD50の上限は、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下であり、D50の下限は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上、さらに好ましくは1.2μm以上である。粒子が大き過ぎると強固な凝集物を形成しにくい。粒度分布は単分散でもよいが、凝集体を形成させるには粒径に分布があった方が良い。大きい粒子同士の空隙を小さい粒子が埋める形で凝集することで、内部空隙が少なくかつ平板状の粒子がランダムに詰まった異方性の少ない凝集体を形成させることができる。
【0035】
また、原料窒化ホウ素粉末は、シラン化合物やシラザン等で予め表面処理されていてもよい。
【0036】
[硬化性樹脂]
本発明の製造方法において三次元架橋型硬化性樹脂として使用できるのは、硬化前には液状又は溶媒可溶性であり、硬化反応(重合反応)の進行により三次元架橋した硬化体を生成する樹脂であればよく、例えば、熱硬化性樹脂、および架橋重合が可能な熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂 、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。また架橋重合が可能な熱可塑性樹脂とは、本来は熱可塑性樹脂だが、架橋性単量体を使用することで耐溶媒性を持たせることができる樹脂を指し、アクリル樹脂やポリスチレン等のビニル重合系樹脂などが挙げられる。
【0037】
当該三次元架橋型硬化性樹脂のなかでも、前記した放熱材料に主に用いられている樹脂との相性の点でエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂を使用することが好ましい。これらはまた、硬化条件の制御がしやすく、原料樹脂の入手と取扱が比較的容易という点からも好ましい。
【0038】
なお、本発明の製造方法において「硬化性樹脂」という場合には、狭義の樹脂成分に加えて、硬化剤、硬化促進剤、重合開始剤、触媒、反応性希釈剤、シラン化合物等をも含む樹脂組成物を指すものとする。
【0039】
三次元架橋型硬化性樹脂としては、後述する添加および混合の際には、十分に混合する前にゲル化しない一方で、必要な際には簡便な装置及び操作で硬化するものが好ましい。一般に、三次元架橋型硬化性樹脂の硬化方法としては、熱硬化と光硬化があるが、必要な設備等が簡便な点で熱硬化が好ましい。熱硬化の際には、上記理由により室温~60℃では実質的にゲル化せず、80℃~160℃の温度をかけた際に、硬化反応が80%以上進行することが好ましい。硬化組成としては、硬化反応が80%以上進行する時間が、設定した硬化温度に達してから好ましくは10分後から6時間後、より好ましくは20分後から2時間後となるように三次元架橋型硬化性樹脂の組成を調製する。硬化温度と硬化速度は、選択する樹脂の硬化剤、硬化促進剤、重合開始剤、重合触媒等の種類と量を適宜選択すればよく、周知技術及び必要に応じて簡単な実験を行うことにより容易に制御可能である。
【0040】
本発明で好適に用いられる硬化性樹脂を以下に例示する。
【0041】
<エポキシ樹脂>
本発明において使用できるエポキシ樹脂は特に限定されず一般的なものを用いることができる。具体例としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、シクロペンタジエン含有エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0042】
エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として一般的なものを用いることができる。具体例としては、アミン、ポリアミド、イミダゾール、酸無水物、三フッ化ホウ素-アミン錯体、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジド、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等の熱硬化型硬化剤、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスフェート等の光硬化剤が挙げられる。これらの中でも、アミン、イミダゾール、酸無水物が好ましい。
【0043】
アミン硬化剤の具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の鎖状脂肪族アミン、N-アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン等の環状脂肪族ポリアミン、m-キシレンジアミン等の脂肪族芳香族アミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミンなどが挙げられる。
【0044】
イミダゾール硬化剤の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテート、エポキシイミダゾールアダクト等が挙げられる。
【0045】
酸無水物硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、アルキルスチレン-無水マレイン酸共重合体、クロレンド酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等が挙げられる。
【0046】
また、上記エポキシ樹脂および硬化剤に加え、必要に応じて硬化促進剤を配合して硬化させてもよい。硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾ-ルなどのイミダゾール系硬化促進剤、トリフェニルホスフィン、トリス-p-メトキシフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン誘導体、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等のシクロアミジン誘導体等が挙げられる。
【0047】
さらに、上記エポキシ樹脂、硬化剤、および硬化促進剤の混合物が高粘度の場合、エポキシ基を有する反応性希釈剤をさらに配合させてもよい。反応性希釈剤もまた一般的なものを用いることができる。具体例としては、n-ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、グリセリントリグリシジルエーテル等を用いることができる。
【0048】
<アクリル樹脂>
本発明において使用できるアクリル樹脂(本発明においてはメタクリル樹脂を含むものとする。)は特に限定されず一般的なものを用いることができる。ただし1分子内に(メタ)アクリル基が1つしかない単官能な単量体の場合は単独では三次元架橋しないため、該単官能単量体を使用する場合は、1分子内に複数の(メタ)アクリル基を有する架橋性の多官能単量体と一緒に使用する必要がある。
【0049】
単官能単量体の例としては、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、コハク酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル及びその塩類、フタル酸2-(メタ)アクリオイルオキシエチル、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリルオキシエチルハイドロジェンホスフェートなどが挙げられる。
【0050】
多官能単量体は単独で使用してもよいし、上記のような単官能単量体と混合して用いてもよい。多官能単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチルジ(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピルジ(メタ)アクリレート、オクタフルオロブチルジ(メタ)アクリレート、ビス〔2-(メタ)アクリルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物またはプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA-ジエポキシ-アクリル酸付加物、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0051】
これらの(メタ)アクリル基を有する単量体を重合硬化させるには熱ラジカル重合開始剤を使用することが可能である。具体例としては、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシド等の有機過酸化物や、2,2-アゾビスイソブチロニトリルや2,2-アゾビス-(2,4-ジメルバレロニトリル)等のアゾビス系重合開始剤等が好適な重合開始剤として挙げられる。中でも80℃~160℃で重合させる場合は、ベンゾイルパーオキサイドやt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートなどを好適に用いることができる。これら重合開始剤は、単量体100質量部に対して、0.1~20質量部、好適には0.5~10質量部用いるのが一般的である。
【0052】
また、硬化反応として光硬化を採用する場合には、(メタ)アクリル基の光重合開始剤として公知の開始剤を採用することができる。
【0053】
<シリコーン樹脂>
本発明において硬化性樹脂として使用されるシリコーン樹脂は特に限定されないが、中でも低粘度な液状のオルガノポリシロキサンが好適に使用される。三次元架橋による硬化性を持たせるために、オルガノポリシロキサンとしては後述するような反応性基を有したものを採用し、さらに硬化剤または硬化触媒を添加したものを使用する。硬化の方法は縮合反応、架橋反応、付加反応の3種類のいずれも使用できる。またオルガノポリシロキサンとしては、主たる骨格がジメチル型かフェニルメチル型の一般的なものを使用することが好ましい。
【0054】
縮合反応はシラノール基を有するオルガノポリシロキサンを脱水縮合する反応であり、該反応では、反応促進のために硬化剤が用いられる。硬化剤の例としては金属化合物、アルコキシ基含有化合物、アセトキシ基含有シラン、ケトンオキシム基含有シラン、アミノキシ基含有シロキサンなどが挙げられる。
【0055】
架橋反応は有機過酸化物を使用する方法で、ビニル基などの不飽和炭化水素基を有するオルガノポリシロキサンを、有機過酸化物等をラジカル硬化剤として使用して架橋させる方法である。
【0056】
付加反応は、ビニル基を有するオルガノポリシロキサンとヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンとをヒドロシリル化反応させる方法であり、該反応では硬化触媒として一般的に白金族触媒が用いられる。
【0057】
本発明では、シリコーン樹脂の硬化反応の中でも、加熱による硬化制御性に優れ、得られるシリコーンの耐熱性も高い付加反応型のシリコーン樹脂が特に適する。
【0058】
<その他ビニル重合系樹脂>
本発明では、上記に挙げているアクリル樹脂以外にも、ラジカル重合性の不飽和二重結合を有する重合性単量体を使用できる。前記重合性単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、クロロメチルスチレン、p-クロロスチレン、ビニルナフタレン、酢酸ビニル、メチルビニルケトン、ビニルピロリドン、エチルビニルエーテル、ジビニルスルホン、フタル酸ジアリル、ビニルベンジルトリメチルアミン、ビニルベンジルトリエチルアミン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルホスホン酸等が挙げられる。
【0059】
これらの単量体を三次元架橋させるために用いる架橋重合性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の多官能単量体が挙げられる。
【0060】
これらの単量体の硬化には、上記に挙げたアクリル樹脂の重合開始剤等を利用できる。
【0061】
[添加剤]
本発明の製造方法において三次元架橋型硬化性樹脂には添加剤を加えてもよい。添加剤により窒化ホウ素粒子と硬化性樹脂の馴染み性を向上させることで、より強固な凝集体を形成させることができる。このような添加剤として、例えばシラン化合物が挙げられる。
【0062】
シラン化合物の具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のメタクリル基含有シラン類、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1、3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン類、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、n-ヘキサデシルトリエトキシシラン、n-オクタデシルトリエトキシシラン等のアルキルシラン類、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン等のフッ化アルキルシラン類、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等の芳香族基含有シラン類、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル含有シラン類の他、p-スチリルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0063】
上記に挙げた添加剤は添加対象の硬化性樹脂の種類に合わせて適宜選択すればよい。添加剤の使用量は用いる原料窒化ホウ素粉末の粒径や比表面積に応じて決定すればよく、例えば比表面積1m2/gの窒化ホウ素粉末100質量部に対して添加剤0.01質量部以上0.5質量部未満が目安量であるが、最大でも5質量部以下が好ましい。
【0064】
[添加・混合]
本発明の製造方法においては、原料窒化ホウ素粉末に上記三次元架橋型硬化性樹脂を添加して混合する。後述する硬化は、この混合を十分に行ってから行う。本発明においては、この添加および混合は、窒化ホウ素粉末が粉末状態を維持するように、無溶媒もしくは溶媒を使用するとしても少量で行う。そのため溶媒コスト及び溶媒除去コストが実質的に不要である。
【0065】
原料窒化ホウ素粉末への三次元架橋型硬化性樹脂の添加方法は、粉末への液状物質の添加方法を特に制限なく使用できるが、好ましくは、原料窒化ホウ素粉末を撹拌しているところへ、三次元架橋型硬化性樹脂を噴霧または滴下等により加える方法が好ましい。
【0066】
ここで、使用する三次元架橋型硬化性樹脂の粘度が高く噴霧または滴下が困難である場合や、三次元架橋型硬化性樹脂を粉末全体に行き渡らせやすくしたい場合、三次元架橋型硬化性樹脂を溶媒で希釈してもよい。使用可能な希釈溶媒としては、三次元架橋型硬化性樹脂を溶解可能なものなら問題なく使用できるが、揮発性が比較的高く粘性の低い溶媒が好ましく、中でもアルコール類およびケトン類が望ましい。希釈溶媒の使用量は、希釈後の粘度にもよるが三次元架橋型硬化性樹脂の0.5~50質量%程度が望ましい。希釈溶媒の量が多過ぎると硬化時に溶媒が存在することで硬化樹脂にボイドを噛みやすい。
【0067】
なお本発明において、このような希釈溶媒は三次元架橋型硬化性樹脂と混合して用いるものであるが、三次元架橋型硬化性樹脂には含まない。
【0068】
本発明の製造方法において、三次元架橋型硬化性樹脂の使用量は、原料窒化ホウ素粉末100質量部に対して、その上限は好ましくは35質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは25質量部以下、特に好ましくは20質量部以下であり、また、その下限は好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.4質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、特に好ましくは2.5質量部以上である。三次元架橋型硬化性樹脂の使用量が、前記下限値より少なすぎると、有機無機複合粒子の強度が低くなりすぎたり、場合によっては凝集構造が得られなかったりする。一方、三次元架橋型硬化性樹脂の使用量が、前記上限値より多すぎると、有機無機複合粒子を構成する窒化ホウ素粒子同士が接触した状態になりにくく、また窒化ホウ素粒子に比べて熱伝導率の低い樹脂成分の割合が多くなるため、熱伝導性が低くなりやすい。
【0069】
窒化ホウ素粉末の撹拌及び三次元架橋型硬化性樹脂の添加後の混合に用いる乾式混合装置としては、一般の混合攪拌装置を使用することができ、例えばプラネタリー混合装置、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、V型混合機、ドラムミキサー、ダブルコーンミキサー、ロッキングミキサーなどが挙げられる。中でも攪拌能力の高さから、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ロッキングミキサーがより好適に使用できる。また、乾式での混合は粉末が凝集しやすいため、混合装置には解砕羽根やチョッパーなど、一度生成した凝集を解く機構がついていることが望ましい。さらに混合操作の際、粉末が単に付着するのみならず、攪拌機構によっては粉末が混合容器壁に押し当てられるような状況になることで厚い付着層を形成する場合があり、そうなると粉末の混合状態を維持できなくなる。そのため、混合容器壁面にはフッ素樹脂コートなどの付着防止措置や、ノッカーなどの付着粉払い落し機構、攪拌羽根を工夫した掻き落とし機構などが備わっているとなおよい。またこれら装置には、加熱機能が付与されていると、混合工程に続いて三次元架橋型硬化性樹脂の加熱・硬化処理を実施できるので、工程が少なく済む。
【0070】
混合時間は適宜設定できるが、目安としては10~180分程度である。
【0071】
[硬化]
本発明の製造方法においては、上記のようにして得た混合物に含まれる三次元架橋型硬化性樹脂を硬化させる。硬化方法は用いた三次元架橋型硬化性樹脂に応じて適宜行えばよい。例えば、熱硬化型とした場合には加熱し、光硬化型とした場合には光照射を行う。
【0072】
なお、三次元架橋型硬化性樹脂に前記希釈溶媒を加えた場合は、当該希釈溶媒は混合工程が終わった後、硬化処理の前に除去されることが好ましい。除去の程度としては、例えば120℃での質量減少率が0.5%未満がよい。
【0073】
硬化方法として熱硬化型とする場合、上記のように加熱機能を備えた装置を用いて、混合工程から続けて加熱処理してもよいし、混合後に回収して棚板乾燥機等で加熱処理をしてもよい。加熱温度と時間は、用いた樹脂、硬化剤、硬化促進剤、重合開始剤、重合触媒等の種類と量に合わせて適宜設定すればよい。また、加熱(硬化)処理の際の雰囲気は、真空中、不活性ガス中または乾燥空気中が望ましい。中でも環境の水分の影響が少ない真空中または不活性ガス中が望ましい。
【0074】
このような工程を経ることにより、本発明の有機無機複合粒子からなる粉末を得ることができるが、複合化する三次元架橋型硬化性樹脂が多い場合や複合化条件によっては得られる粉末に不必要に粗大な凝集体が含まれる場合がある。粗大な粒子を含む粉末は、粉末としての操作性が悪く、また樹脂と混練した際に十分に分散しないおそれがある。また本発明の粉末を樹脂充填材として用いた場合、樹脂組成物成形体の厚み不良の原因になったり、液状の樹脂組成物を流しこんで使用する場合はギャップ不良の原因になったりする。そうした場合、熱伝導性を損なわない程度に解砕操作や分級操作を加えることで、樹脂組成物の充填材として好適な粒度分布にすることができる。
【0075】
[解砕処理と分級処理]
解砕方法は、乾式解砕が良い。また、形成された凝集体の大部分が解砕されてしまわないよう比較的マイルドな方法が望ましい。特に一次粒子をも砕く装置または条件で実施すると、本発明の効果が失われてしまう。解砕装置としては、石臼型摩砕機、らいかい機、カッターミル、ハンマーミル、ピンミルなどの乾式解砕装置が挙げられる。中でも大きな凝集体を選択的かつ短時間で砕くことができ、解砕ムラが少ない石臼型摩砕機が好ましい。解砕処理の雰囲気は、空気中または不活性ガス中が望ましい。また、雰囲気の湿度は高過ぎないことが好ましく、具体的には、湿度70%未満、より好ましくは55%未満である。
【0076】
また、解砕処理以外で粗大な凝集粒子の除去を行う方法として、分級処理を施してもよい。分級処理は乾式分級法または湿式分級法のいずれかを選択できるが、高精度な分級を求めない場合は、溶媒除去工程を省ける乾式分級法が望ましい。乾式分級法としては、気流分級や振動篩機などが使用できる。
【0077】
気流分級の方法または装置は樹脂組成物用のフィラーとして好適な粒度分布になるよう適宜選択すればよい。気流分級方法としては、粉末を気流中に分散させ、その際の粒子の重力や慣性力、遠心力などで微粉と粗粉に分ける方式による。特に数μmの粒子の分級に適した精度は、慣性力と遠心力を利用した分級装置により得られる。
【0078】
慣性力を利用する方法としては、例えば装置内部に案内羽根等を設けて空気の旋回流を作ることで、気流で勢いをつけた粉粒体を曲線に曲げる際に微粉と粗粉を分けるインパクタ型や、粒子に遠心力を働かせて分級する半自由渦遠心式や、コアンダ効果を利用したコアンダ型などが挙げられる。慣性力を利用した分級装置としては、カスケードインパクタ、バイアブルインパクタ、エアロファインクラシファイア、エディクラシファイア、エルボージェット、ハイパープレックスなどが挙げられる。
【0079】
遠心力を利用する方法は、渦状気流を利用して微粉と粗粉を分けるもので、装置としては自由渦型と強制渦型が挙げられる。自由渦型装置は案内羽根のないサイクロン、多段サイクロン、二次エアーを使用し凝集の解消を促すターボプレックス、案内羽根を設けて分級精度を高めたディスパージョンセパレータ、マイクロスピン、マイクロカットなどが挙げられる。強制渦型は装置内部の回転体で粒子に遠心力を働かせ、さらに装置内部に別の空気の流れを作ることにより分級精度を高めた装置で、ターボクラシファイアやドナセレックなどが挙げられる。
【0080】
なお、解砕処理および分級処理は併用しても差し支えない。
【0081】
[樹脂組成物および放熱用複合材料]
本発明の有機無機複合粒子からなる粉末を樹脂と混合して得られる樹脂組成物は、放熱用複合材料として好適に使用することができる。すなわち本発明の樹脂組成物は、本発明の粉末を充填剤として含む。また、本発明の樹脂組成物には、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、シリカ、酸化亜鉛、炭素繊維、銀、銅、およびアルミニウムなどの他の熱伝導性フィラーを1種単独で、または、2種以上を組み合わせて加えてもよい。
【0082】
本発明の樹脂組成物に使用することができる樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれをも例示することができる。上記熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、フッ素樹脂(例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル(例えばポリメタクリル酸メチルなど)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル(例えばポリアクリル酸メチルなど)、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、アイオノマーなどを;上記熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、熱硬化型変性PPE、熱硬化型PPEなどを、それぞれ挙げることができる。
【0083】
本発明の樹脂組成物からなる放熱用複合材料の用途としては、例えば家電製品、自動車、ノート型パーソナルコンピュータなどに搭載される半導体部品からの発熱を効率よく放熱するための放熱部材の材料を挙げることができる。これらの具体例としては、例えば放熱グリース、放熱ゲル、放熱シート、フェイズチェンジシート、接着剤などを挙げることができる。上記複合材料は、これら以外にも、例えばメタルベース基板、プリント基板、フレキシブル基板などに用いられる絶縁層;半導体封止剤、アンダーフィル、筐体、放熱フィンなどとしても使用することができる。
【実施例
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0085】
後述する製造例1で得られた原料窒化ホウ素粉末ならびに実施例および比較例で得られた有機無機複合粒子粉末の物性は以下のようにして測定した。
【0086】
[比表面積]
原料窒化ホウ素粉末および有機無機複合粒子粉末のBET比表面積は、比表面積測定装置(島津製作所製「フローソーブ2-2300型」)を用いて、BET法(窒素吸着1点法)により求めた。測定には試料2gを、予め窒素ガスフロー中において100℃で乾燥処理を1時間実施したものを用いた。
【0087】
[粒度分布]
原料窒化ホウ素粉末および有機無機複合粒子粉末の粒度分布の測定は、試料をエタノール中に0.2質量%濃度で分散し、200W程度の超音波照射を2分間行うことにより分散させた液体について、レーザー回折散乱型粒度分布計「MT3000II」(MicrotracBel製)を用いて行った。粒径の体積頻度分布において、粒径が小さい方から体積頻度を累積して、累積値が50%となるところの粒径の値をD50、90%となるところの粒径の値をD90とした。また、本発明ではD50の値を平均粒径とする。
【0088】
[炭素分析]
有機無機複合粒子粉末の炭素含有量を炭素分析装置(堀場製作所製「EMIA-110」)で測定した。試料を酸素気流中1350℃にて二酸化炭素ガスが発生しなくなるまで燃焼し、発生した二酸化炭素量から各試料の炭素含有量を定量した。
【0089】
[洗浄操作]
有機無機複合粒子粉末5gをイソプロピルアルコール20gに分散し、200W程度の超音波照射3分により分散させる。分散スラリーを遠心分離機にかけ、透明な上澄み液と沈降物に分けた後、上澄み液を除去する。沈降物にイソプロピルアルコール20gを加え、薬さじで沈降物をほぐし、さらに超音波照射3分により分散状態にする。再び遠心分離し上澄み液を除去する。さらにもう1回再分散と遠心分離を繰り返し、最後に得られた沈降物を80℃3時間真空乾燥し、洗浄後の乾燥物を得る。乾燥物の炭素含有量(C2)を測定し、洗浄前の炭素含有量(C1)からの減少率(Cd)を次式で計算する。
【0090】
d=[(C2-C1)×100]/C1
[熱伝導率の測定]
<エポキシ樹脂組成物硬化体>
原料窒化ホウ素粉末および有機無機複合粒子粉末10.4g、エポキシ樹脂として「jER828」(三菱ケミカル製)5.28g、硬化剤として「CureW」(三菱ケミカル製)1.32gを秤取し、乳鉢で15分間強くシェアをかけて混練した。混練物を150℃20MPaで1時間熱プレス成形し、さらに190℃で2時間、追加加熱を実施した。得られた硬化体試料が0.5mm厚みになるように両面を研磨した。研磨試料の熱伝導率は、温度波分析法である熱伝導率測定装置(株式会社アイフェイズ製「アイフェイズモデル1u」)を用い、ISO規格22007-3プラスチック熱伝導率測定法に準拠して求めた。
【0091】
<シリコーン樹脂組成物硬化体>
原料窒化ホウ素粉末または有機無機複合粒子粉末20g、シリコーン樹脂として「CY52-276A」(ダウコーニング製)13gを秤取し、乳鉢で3分混練したものA剤とした。一方、原料窒化ホウ素粉末または有機無機複合粒子粉末20g、シリコーン樹脂として「CY52-276B」(ダウコーニング製)13gを秤取し、乳鉢で3分混練したものをB剤とした。A剤とB剤を1gずつ秤取し、混練したペーストを80℃、20MPaで1時間熱プレス成形し、0.5mm厚みのシリコーン硬化体試料とした。試料の熱伝導率は、温度波分析法である熱伝導率測定装置(株式会社アイフェイズ製「アイフェイズモデル1u」)を用い、ISO規格22007-3プラスチック熱伝導率測定法に準拠して求めた。
【0092】
[圧縮強度]
原料窒化ホウ素粉末(比較例1)および有機無機複合粒子粉末(エポキシ樹脂組成物硬化体;実施例1~5)の圧縮強度を、微小圧縮試験機(島津製作所製「MCT-211」)を用いて測定した。該測定は、φ200μmの平面圧子を用い、負荷速度5mN/分で実施した。粒径が10~80μmの粒子10個を対象に測定し、その平均値を求めた。なお、シリコーン樹脂を用いた場合、その材質上計測ができなかったため、表2において結果の記載はしていない。
【0093】
[粘度評価]
原料窒化ホウ素粉末(比較例2)および有機無機複合粒子粉末(シリコーン樹脂組成物硬化体;実施例6、7)のフィラーとしての特性を評価するために、各粉末と液状樹脂とを混練して得た樹脂組成物の粘度を測定した。粘度測定装置はブルックフィールド社製の回転粘度計「RVDV-II+CP」(φ12mm、角度3度のコーンプレートを使用)を用いた。液状樹脂として1000mPa・sのジメチルシリコーンオイル(ダウコーニング製)を1g使用し、各粉末を1g使用した。混練は自動らいかい機を用い、3分間混練および掻き落とし操作を3回繰り返して粉末が分散されたペーストを得た。得られたペーストの粘度を30℃で測定した。粘度測定はシェアレートを変えて実施した。シェアレート2s-1の時と5s-1の時の値を表2に示した。
【0094】
放熱用複合材料の熱伝導性の向上のためには、放熱用複合材料を構成する樹脂に対する窒化ホウ素粒子の充填率を増加させることが有効である。樹脂と有機無機複合粒子との馴染みが良い、すなわち、樹脂に充填したときの粘度が低い有機無機複合粒子の方が樹脂の量が少なくても充填率を高くできる。
【0095】
[走査電子顕微鏡像]
日立ハイテクノロジーズ製S-2600Nを用い、加速電圧25kVで原料窒化ホウ素粉末および有機無機複合粒子の2次電子像を観察した。
【0096】
[アスペクト比]
後述する製造例1で作製した原料窒化ホウ素粒子を走査型電子顕微鏡を用いて、2500倍の観察像を撮影した。得られた画像について、長さと厚みを読み取り、長さ/厚みの比を求めた。平均アスペクト比は、50個の粒子の観察結果の相加平均値として算出した。
【0097】
製造例1
無水ホウ酸100g、カーボンブラック43g、及び炭酸カルシウム28gをボールミルにて混合した。得られた混合物を、黒鉛製タンマン炉を用い、窒素ガス雰囲気下で15℃/分で1400℃まで昇温し、1400℃で4時間保持した後、15℃/分で1800℃まで昇温し、さらに1800℃で2時間保持した。得られた粗六方晶窒化ホウ素粉末を塩酸洗浄、水洗、乾燥することにより、高純度な白色の六方晶窒化ホウ素粉末(原料窒化ホウ素粉末)を得た。得られた原料窒化ホウ素粉末の走査電子顕微鏡像を図1に示す。得られた原料窒化ホウ素の平均アスペクト比は5.8であった。
【0098】
実施例1
フッ素樹脂製のビーカー(500ml)に製造例1で得られた原料窒化ホウ素粉末を40g入れ、該粉末に下記エポキシ樹脂1g(窒化ホウ素粉末100質量部に対して2.5質量部)とイソプロピルアルコール(和光純薬工業、特級)0.1gの混合液体を滴下添加した。次いでフッ素樹脂製の攪拌羽根を用いて攪拌操作を室温で30分、大気中で実施した。得られた混合物は、ビーカーに入れたまま乾燥機に入れ、窒素雰囲気において150℃で3時間加熱した。得られた有機無機複合粒子粉末について、粒度分布、比表面積、炭素分析、洗浄操作後の炭素分析、およびエポキシ樹脂組成物に充填した硬化体の熱伝導率を評価した(表1)。また、得られた有機無機複合粒子粉末の走査電子顕微鏡像を図2に示す。有機無機複合粒子において、ランダムに配向した複数の六方晶窒化ホウ素粒子が含まれていることを確認できた。
【0099】
・エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂「jER828」(三菱化学)100質量部、酸無水物型硬化剤「YH307」(三菱化学)110質量部および硬化促進剤「トリフェニルホスフィン」(和光純薬工業)5質量部からなる混合物。
【0100】
実施例2
前記エポキシ樹脂を2g(窒化ホウ素粉末100質量部に対して5質量部)用いた以外は実施例1と同様に有機無機複合粒子粉末を得た。得られた有機無機複合粒子粉末について、粒度分布、比表面積、炭素分析、洗浄操作後の炭素分析、およびエポキシ樹脂組成物に充填した硬化体の熱伝導率を評価した(表1)。また、得られた有機無機複合粒子粉末の走査電子顕微鏡像を図3に示す。有機無機複合粒子において、ランダムに配向した複数の六方晶窒化ホウ素粒子が含まれていることを確認できた。
【0101】
実施例3
前記エポキシ樹脂を4g(窒化ホウ素粉末100質量部に対して10質量部)用いた以外は実施例1と同様に有機無機複合粒子粉末を得た。得られた有機無機複合粒子粉末について、粒度分布、比表面積、炭素分析、洗浄操作後の炭素分析、圧縮強度およびエポキシ樹脂組成物に充填した硬化体の熱伝導率を評価した(表1)。また、得られた有機無機複合粒子粉末の走査電子顕微鏡像を図4に示す。有機無機複合粒子において、ランダムに配向した複数の六方晶窒化ホウ素粒子が含まれていることを確認できた。
【0102】
実施例4
前記エポキシ樹脂を8g(窒化ホウ素粉末100質量部に対して20質量部)用いた以外は実施例1と同様に有機無機複合粒子粉末を得た。得られた有機無機複合粒子粉末について、粒度分布、比表面積、炭素分析、洗浄操作後の炭素分析、およびエポキシ樹脂組成物に充填した硬化体の熱伝導率を評価した(表1)。また、得られた有機無機複合粒子粉末の走査電子顕微鏡像を図5に示す。有機無機複合粒子において、ランダムに配向した複数の六方晶窒化ホウ素粒子が含まれていることを確認できた。
【0103】
実施例5
フッ素樹脂製のビーカーに製造例1で得られた原料窒化ホウ素粉末を40g入れ、該粉末に前記エポキシ樹脂1g(窒化ホウ素粉末100質量部に対して2.5質量部)と添加剤A(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、東京化成工業製、>97%)0.3gとイソプロピルアルコール0.1gの混合液体を滴下添加した。次いでフッ素樹脂製の攪拌羽根を用いて攪拌操作を室温で30分、大気中で実施した。得られた混合物は、ビーカーに入れたまま乾燥機に入れ、窒素雰囲気において150℃で3時間加熱した。得られた有機無機複合粒子粉末について、粒度分布、比表面積、炭素分析、洗浄操作後の炭素分析、およびエポキシ樹脂組成物に充填した硬化体の熱伝導率を評価した(表1)。また、得られた有機無機複合粒子粉末の走査電子顕微鏡像を図6に示す。有機無機複合粒子において、ランダムに配向した複数の六方晶窒化ホウ素粒子が含まれていることを確認できた。
【0104】
比較例1
製造例1で得られた六方晶窒化ホウ素粉末について、粒度分布、比表面積、炭素分析、圧縮強度およびエポキシ樹脂組成物に充填した硬化体の熱伝導率を評価した(表1)。
【0105】
実施例6
フッ素樹脂製ビーカー(500ml)に製造例1で得られた原料窒化ホウ素粉末を40g入れ、該粉末に下記シリコーン樹脂2g(窒化ホウ素粉末100質量部に対して5質量部)を滴下添加した。次いでフッ素樹脂製攪拌羽根を用いて攪拌操作を室温で30分、大気中で実施した。得られた混合物は、ビーカーに入れたまま乾燥機に入れ、窒素雰囲気において150℃で3時間加熱した。得られた有機無機複合粒子粉末について、粒度分布、比表面積、炭素分析、洗浄操作後の炭素分析、およびシリコーン樹脂組成物に充填した硬化体の熱伝導率を行った(表2)。また、得られた粉末を粘度1000mPa・sのジメチルシリコーンオイルに30vol.%充填した樹脂組成物について、粘度を測定した(表2)。また、得られた有機無機複合粒子粉末の走査電子顕微鏡像を図7に示す。有機無機複合粒子において、ランダムに配向した複数の六方晶窒化ホウ素粒子が含まれていることを確認できた。
【0106】
・シリコーン樹脂:付加反応型シリコーン樹脂「KE-1013A」(信越化学工業)100質量部および「KE-1013B」(信越化学工業)100質量部からなる混合物。
【0107】
実施例7
前記シリコーン樹脂を4g(窒化ホウ素粉末100質量部に対して10質量部)用いた以外は実施例6と同様に有機無機複合粒子粉末を得た。得られた有機無機複合粒子粉末について、粒度分布、比表面積、炭素分析、洗浄操作後の炭素分析、およびシリコーン樹脂組成物に充填した硬化体の熱伝導率を行った(表2)。また、得られた粉末を粘度1000mPa・sのジメチルシリコーンオイルに30vol.%充填した樹脂組成物について、粘度を測定した(表2)。また、得られた有機無機複合粒子粉末の走査電子顕微鏡像を図8に示す。有機無機複合粒子において、ランダムに配向した複数の六方晶窒化ホウ素粒子が含まれていることを確認できた。
【0108】
比較例2
製造例1で得られた六方晶窒化ホウ素粉末について、粒度分布、比表面積、炭素分析、およびシリコーン樹脂組成物に充填した硬化体の熱伝導率を評価した(表2)。また、粘度1000mPa・sのジメチルシリコーンオイルに30vol.%充填した樹脂組成物について、粘度を測定した(表2)。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10