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特許7258012非水電解液用添加剤、非水電解液及び蓄電デバイス
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  • 特許-非水電解液用添加剤、非水電解液及び蓄電デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】非水電解液用添加剤、非水電解液及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20230407BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20230407BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230407BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20230407BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20230407BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20230407BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/052
H01G11/64
H01G11/60
H01G11/62
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020509716
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2019001880
(87)【国際公開番号】W WO2019187545
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2018067264
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】河野 佑軌
(72)【発明者】
【氏名】高井 恭幸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03288671(US,A)
【文献】米国特許第03574512(US,A)
【文献】特開昭51-019785(JP,A)
【文献】米国特許第04619924(US,A)
【文献】国際公開第2018/016195(WO,A1)
【文献】特開2017-208322(JP,A)
【文献】特開2012-106987(JP,A)
【文献】特開2016-192358(JP,A)
【文献】特開2016-192360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00- 4/62
H01G 11/00-11/86
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1a)又は(1b)で表される化合物を含む、非水電解液用添加剤であって、非水溶媒及び電解質を含有する蓄電デバイス用の非水電解液に添加するための、非水電解液用添加剤
【化1】

[式(1a)及び(1b)中、Xは、スルホニル基の硫黄原子とともに環状構造を構成している、置換されていてもよい炭素数3~7のアルキレン基又は置換されていてもよい炭素数3~7のアルケニレン基を示し、nは1~7の整数を示し、Zは下記式(2a)、(2b)又は(2c)で表される1価の基を示し、mは0又は1を示す。
【化2】

式(2a)、(2b)及び(2c)中のR2a、R2b及びR2cは、それぞれ独立して、置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2~4のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数2~4のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい炭素数1~4のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数2~4のアルケニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数2~4のアルキニルオキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、ヒドロキシル基、リチウムアルコラート基、又はリチウム原子を示し、同一分子中の2つのR2cは同一でも異なってもよい。]
【請求項2】
式(2a)、(2b)及び(2c)中のR2a、R2b及びR2cが、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~4のアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~4のアルキニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~4のアルケニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~4のアルキニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリールオキシ基、ヒドロキシル基、リチウムアルコラート基、又はリチウム原子を示し、同一分子中の2つのR2cは同一でも異なってもよい、請求項1に記載の非水電解液用添加剤。
【請求項3】
式(1a)及び(1b)中のXが炭素数3~7のアルキレン基である、請求項1又は2に記載の非水電解液用添加剤。
【請求項4】
式(1a)及び(1b)中のXが炭素数4のアルキレン基である、請求項3に記載の非水電解液用添加剤。
【請求項5】
式(1a)及び(1b)中のZが、式(2a)で表される1価の基である、請求項1~4のいずれか一項に記載の非水電解液用添加剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の非水電解液用添加剤、非水溶媒、及び電解質を含有する、非水電解液。
【請求項7】
前記非水溶媒が環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含む、請求項6に記載の非水電解液。
【請求項8】
前記電解質がリチウム塩を含む、請求項6又は7に記載の非水電解液。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載の非水電解液と、正極及び負極と、を備える、蓄電デバイス。
【請求項10】
請求項6~8のいずれか一項に記載の非水電解液と、正極及び負極と、を備える、リチウムイオン電池。
【請求項11】
請求項6~8のいずれか一項に記載の非水電解液と、正極及び負極と、を備える、リチウムイオンキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液用添加剤に関する。また、本発明は、該非水電解液用添加剤を含有する非水電解液及び非水電解液を用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の解決、持続可能な循環型社会の実現に対する関心が高まるにつれ、リチウムイオン電池に代表される非水電解液二次電池、及び電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスの研究が広範囲に行われている。なかでもリチウムイオン電池は高い使用電圧とエネルギー密度から、ノート型パソコン、携帯電話等の電源として用いられている。これらリチウムイオン電池は、鉛電池及びニッケルカドミウム電池と比較してエネルギー密度が高く、高容量化が実現されることから、新たな電源として期待されている。しかしながら、リチウムイオン電池には、充放電サイクルの経過に伴って電池の容量が低下するという問題がある。
【0003】
充放電サイクルの経過に伴う電池の容量の低下を抑制する方法として、電解液に各種添加剤を添加する方法が検討されている。添加剤は、最初の充放電時に分解され、電極表面上に固体電解質界面(SEI)と呼ばれる被膜を形成する。SEIは、充放電サイクルの最初のサイクルにおいて形成されるため、電解液中の溶媒等の分解に電気が消費されることはなく、リチウムイオンはSEIを介して電極を行き来することができる。すなわち、SEIの形成は充放電サイクルを繰り返した場合の非水電解液二次電池等の蓄電デバイスの劣化を防ぎ、電池特性、保存特性又は負荷特性等を向上させることに寄与する。
【0004】
例えば、特許文献1には、電解液中に添加剤として、SEIを形成する1,3-プロパンスルトン(PS)を添加することにより、リチウム二次電池の充放電のサイクル特性が向上することが開示されている。特許文献2には、電解液中に添加剤として1,3,2-ジオキサフォスフォラン-2-ジオキサイド誘導体またはPSを添加することにより、非水電解質二次電池の自己放電率を低減することが開示されている。特許文献3には添加剤としてビニレンカーボネート(VC)の誘導体を添加することによりリチウム二次電池の放電特性等を向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-102173号公報
【文献】特開平10-50342号公報
【文献】特開平05-074486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの添加剤を用いても充分な性能が得られず、蓄電デバイスの電池特性をさらに向上させる新規な添加剤の開発が望まれていた。また、特許文献3に記載されるVCの誘導体を添加剤として用いた電解液は、VCの誘導体が電極上で分解された際に、二酸化炭素を初めとするガスを発生し、電池性能の低下につながるといった問題を有していた。
【0007】
本発明は、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に、初期抵抗の抑制、及び長期にわたるサイクル特性の向上及びガス発生の抑制を可能とする非水電解液用添加剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該非水電解液用添加剤を用いた非水電解液および該非水電解液を用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、下記式(1a)又は(1b)で表される化合物を含む、非水電解液用添加剤を提供する。
【化1】
【0009】
式(1a)及び(1b)中、Xは、スルホニル基の硫黄原子とともに環状構造を構成している、置換されていてもよい炭素数3~7のアルキレン基又は置換されていてもよい炭素数3~7のアルケニレン基を示し、nは1~7の整数を示し、Zは下記式(2a)、(2b)又は(2c)で表される1価の基を示し、mは0又は1を示す。
【化2】
【0010】
式(2a)、(2b)及び(2c)中のR2a、R2b及びR2cは、それぞれ独立して、置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2~4のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数2~4のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい炭素数1~4のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数2~4のアルケニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数2~4のアルキニルオキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、ヒドロキシル基、リチウムアルコラート基、又はリチウム原子を示し、同一分子中の2つのR2cは同一でも異なってもよい。
【0011】
本発明の別の一側面は、上記非水電解液用添加剤、非水溶媒及び電解質を含有する非水電解液に関する。
【0012】
本発明の更に別の側面は、上記非水電解液と、正極及び負極と、を備える蓄電デバイス、リチウムイオン電池、及びリチウムイオンキャパシタに関する。
【0013】
上記非水電解液用添加剤を含有する非水電解液を用いた蓄電デバイスは、十分に低い初期抵抗を示し、優れたサイクル特性を示すことができる。また、蓄電デバイスの長期間使用後のガスの発生も抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に、初期抵抗の抑制、及び長期にわたるサイクル特性の向上及びガス発生の抑制を可能とする非水電解液用添加剤を提供することができる。また、該非水電解液用添加剤を用いた非水電解液及び該非水電解液を用いた蓄電デバイスをも提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】蓄電デバイスの一例としての非水電解液二次電池の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一実施形態に係る非水電解液用添加剤は、前記式(1a)で表される化合物、前記式(1b)で表される化合物、又はこれらの組み合わせを含む。
【0017】
式(1a)及び(1b)中のXは、スルホニル基の硫黄原子とともに環状構造を構成している、置換されていてもよい炭素数3~7のアルキレン基又は置換されていてもよい炭素数3~7のアルケニレン基を示す。Xがアルケニレン基であるとき、スルホニル基の硫黄原子に隣接する炭素原子がその隣の炭素原子とともに二重結合を形成していてもよい。より初期抵抗を下げるという観点からは、Xが置換されていてもよい炭素数3~7のアルキレン基であってもよい。電池抵抗がより低くなるという観点からは、Xが炭素数4~6のアルキレン基、又は炭素数4のアルキレン基(例えばn-ブタン-1,4-ジイル基)であってもよい。Xとしての炭素数3~7のアルキレン基又は置換されていてもよい炭素数3~7のアルケニレン基は、Zを含む置換基以外の置換基で更に置換されていてもよい。その場合の置換基の例としては、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0018】
式(1a)及び(1b)中のnは1~7の整数を示す。n個の硫黄原子又は窒素原子が、スルホニル基及びXから構成された環状スルホン中のn個の炭素原子にそれぞれ結合していてもよい。サイクル特性の観点から、nが1~3の整数であってもよい。
【0019】
式(1a)及び(1b)中、Zは前記式(2a)、(2b)又は(2c)で表される1価の基を示す。同一分子中の複数のZは、同一でも異なってもよい。電池抵抗がより低くなる観点から、Zが、スルホニル基を含む、式(2a)で表される1価の基であってもよい。
【0020】
式(2a)、(2b)及び(2c)中のR2a、R2b及びR2cは、それぞれ独立して、置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2~4のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数2~4のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい炭素数1~4のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数2~4のアルケニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数2~4のアルキニルオキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、ヒドロキシル基、リチウムアルコラート基、又はリチウム原子を示し、同一分子中の2つのR2cは同一でも異なってもよい。
【0021】
2a、R2b及びR2cに関して、炭素数1~4のアルキル基が置換されている場合、その置換基は、例えばハロゲン原子であってもよい。ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、及びトリフルオロメチル基等が挙げられる。電池抵抗がより低くなる点から、R2a、R2b及びR2cはメチル基、エチル基又はt-ブチル基であってもよく、メチル基であってもよい。
【0022】
2a、R2b及びR2cに関して、炭素数2~4のアルケニル基が置換されている場合、その置換基は、例えばハロゲン原子であってもよい。ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~4のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、イソブテニル基、及び1,1-ジフルオロ-1-プロペニル基等が挙げられる。電池抵抗がより低くなる点から、R2a、R2b及びR2cはビニル基又はアリル基であってもよい。
【0023】
2a、R2b及びR2cに関して、炭素数2~4のアルキニル基が置換されている場合、その置換基は、例えばハロゲン原子であってもよい。ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~4のアルキニル基としては、例えば、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、及び3-ブチニル基等が挙げられる。
【0024】
2a、R2b及びR2cに関して、アリール基が置換されている場合、その置換基は、例えばハロゲン原子又は炭素数1~3のアルキル基(メチル基等)であってもよい。ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等が挙げられる。
【0025】
2a、R2b及びR2cに関して、炭素数1~4のアルコキシ基が置換されている場合、その置換基は、例えばハロゲン原子であってもよい。ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、及びn-ブトキシ基等が挙げられる。
【0026】
2a、R2b及びR2cに関して、炭素数2~4のアルケニルオキシ基が置換されている場合、その置換基は、例えばハロゲン原子であってもよい。ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~4のアルケニルオキシ基としては、例えば、2-プロペニルオキシ基、1-メチル-2-プロペニルオキシ基、2-メチル-2-プロペニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、及び3-ブテニルオキシ基等が挙げられる。
【0027】
2a、R2b及びR2cに関して、炭素数2~4のアルキニルオキシ基が置換されている場合、その置換基は、例えばハロゲン原子であってもよい。ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~4のアルキニルオキシ基としては、例えば、2-プロピニルオキシ基、1-メチル-2-プロピニルオキシ基、2-メチル-2-プロピニルオキシ基、2-ブチニルオキシ基、及び3-ブチニルオキシ基等が挙げられる。
【0028】
2a、R2b及びR2cに関して、アリールオキシ基が置換されている場合、その置換基は、例えば炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基又はハロゲン原子であってもよい。炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよいアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、2-エチルフェノキシ基、3-エチルフェノキシ基、4-エチルフェノキシ基、2-メトキシフェノキシ基、3-メトキシフェノキシ基、及び4-メトキシフェノキシ基等が挙げられる。
【0029】
2a、R2b及びR2cに関して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のアルキニル基、アリール基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数2~4のアルケニルオキシ基、炭素数2~4のアルキニルオキシ基、又はアリールオキシ基を置換し得るハロゲン原子としては、例えば、ヨウ素原子、臭素原子、フッ素原子が挙げられる。電池抵抗がより低くなりやすい観点から、当該ハロゲン原子がフッ素原子であってもよい。
【0030】
2a、R2b及びR2cは、電池抵抗がより低くなりやすいという観点から、特に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基であってもよく、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基であってもよい。
【0031】
式(1a)は、Xが炭素数4のアルキレン基(n-ブタン-1,4-ジイル基)であるとき、例えば下記式(1a-1)であってもよい。式(1a-1)中のZは、式(1a)中のZと同じである。
【化3】
【0032】
式(1a-1)で表される化合物であって、Zが式(2a)で表される1価の基である化合物の例としては、3-メチルスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-エチルスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-フェニルスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-トリフルオロメチルスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-tert-ブチルスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-メトキシスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-トリフルオロエトキシスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-アリルスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、及び3-リチウムオキシスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド等が挙げられる。
【0033】
式(1a-1)で表される化合物であって、Zが式(2b)で表される1価の基である化合物の例としては、3-メチルカルボニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-エチルカルボニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-フェニルカルボニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-トリフルオロメチルカルボニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-tert-ブチルカルボニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-メトキシカルボニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、及び3-トリフルオロエトキシカルボニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド等が挙げられる。
【0034】
式(1a-1)で表される化合物であって、Zが式(2c)で表される1価の基である化合物の例としては、3-ジメチルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジエチルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ビス-トリフルオロメチルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジフェニルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジアリルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジビニルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジプロパルギルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジメトキシホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジエトキシホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジフェノキシホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ビス-トリフルオロメトキシホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ビス-アリルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、及び3-ビス-シクロヘキシルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド等が挙げられる。
【0035】
式(1a)は、Xが炭素数4のアルケニレン基(1-ブテン-1,4-ジイル基)であるとき、例えば下記式(1a-2)であってもよい。式(1a-2)中のZは、式(1a)中のZと同じである。
【化4】
【0036】
式(1a-2)で表される化合物であって、Zが式(2a)で表される1価の基である化合物の例としては、4-メチルスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-エチルスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-フェニルスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-トリフルオロメチルスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-tert-ブチルスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-メトキシスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-トリフルオロエトキシスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、及び4-アリルスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン等が挙げられる。
【0037】
式(1a-2)で表される化合物であって、Zが式(2b)で表される1価の基である化合物の例としては、4-メチルカルボニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-エチルカルボニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-フェニルカルボニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-トリフルオロメチルカルボニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-tert-ブチルカルボニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-メトキシカルボニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、及び4-トリフルオロエトキシカルボニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン等が挙げられる。
【0038】
式(1a-2)で表される化合物であって、Zが式(2c)で表される1価の基である化合物の例としては、4-ジメチルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-ジエチルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-ビス-トリフルオロメチルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-ジフェニルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-ジアリルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-ジビニルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-ジプロパルギルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-ジメトキシホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-ジエトキシホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-ジフェノキシホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-ビス-トリフルオロメトキシホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-ビス-アリルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-ビス-シクロヘキシルホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、及び4-リチウムオキシホスフィニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン等が挙げられる。
【0039】
式(1b)は、Xが炭素数4のアルキレン基(n-ブタン-1,4-ジイル基)であるとき、例えば下記式(1b-1)であってもよい。式(1b-1)中のZ及びmは、式(1b)中のZ及びmと同じである。
【化5】
【0040】
式(1b-1)で表される化合物であって、Zが式(2a)で表される1価の基で、mが1である化合物の例としては、3-(N-(メチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N-(エチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N-(フェニルスルホニル)テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N-(トリフルオロメチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、及び3-(N-(アリルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド等が挙げられる。
【0041】
式(1b-1)で表される化合物であって、Zが式(2b)で表される1価の基で、mが1である化合物の例としては、3-(N-(メチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N-(エチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N-(フェニルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N-(トリフルオロメチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、及び3-(N-(メチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド等が挙げられる。
【0042】
式(1b-1)で表される化合物であって、Zが式(2c)で表される1価の基で、mが1である化合物の例としては、3-(N-(ジメチルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N-(ジフェニルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N-(ビニルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N-(アリルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N-(メトキシホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、及び3-(N-(リチウムオキシホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド等が挙げられる。
【0043】
式(1b-1)で表される化合物であって、Zが式(2a)で表される1価の基で、mが0である化合物の例としては、3-(N,N-ビス(メチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N,N-ビス-(メチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N,N-ビス-(エチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N,N-ビス-(フェニルスルホニル)テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N,N-ビス-(トリフルオロメチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N,N-ビス-(アリルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N,N-ビス-(メチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、及び3-(N,N-ビス-ビス(リチウムオキシスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド等が挙げられる。
【0044】
式(1b-1)で表される化合物であって、Zが式(2b)で表される1価の基で、mが0である化合物の例としては、3-(N,N-ビス-(エチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N,N-ビス-(フェニルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N,N-ビス-(トリフルオロメチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、及び3-(N,N-ビス-(メチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド等が挙げられる。
【0045】
式(1b-1)で表される化合物であって、Zが式(2c)で表される1価の基で、mが0である化合物の例としては、3-(N,N-ビス-(ジメチルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N,N-ビス-(ジフェニルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N,N-ビス-(ビニルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-(N,N-ビス-(アリルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、及び3-(N,N-ビス-(メトキシホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド等が挙げられる。
【0046】
式(1b)は、Xが炭素数4のアルケニレン基(1-ブテン-1,4-ジイル基)であるとき、例えば下記式(1b-2)であってもよい。式(1b-2)中のZ及びmは、式(1b)中のZ及びmと同じである。
【化6】
【0047】
式(1b-2)で表される化合物であって、Zが式(2a)で表される1価の基で、mが1である化合物の例としては、4-(N-(メチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N-(メチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N-(エチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N-(フェニルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N-(トリフルオロメチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、及び4-(N-(アリルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン等が挙げられる。
【0048】
式(1b-2)で表される化合物であって、Zが式(2b)で表される1価の基で、mが1である化合物の例としては、4-(N-(メチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N-(エチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N-(フェニルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N-(トリフルオロメチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、及び4-(N-(メチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン等が挙げられる。
【0049】
式(1b-2)で表される化合物であって、Zが式(2c)で表される1価の基で、mが1である化合物の例としては、4-(N-(ジメチルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N-(ジフェニルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N-(ビニルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N-(アリルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N-(メトキシホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、及び4-(N-(リチウムオキシホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン等が挙げられる。
【0050】
式(1b-2)で表される化合物であって、Zが式(2a)で表される1価の基で、mが0である化合物の例としては、4-(N,N-ビス-(メチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N,N-ビス-(メチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N,N-ビス-(エチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N,N-ビス-(フェニルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N,N-ビス-(トリフルオロメチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、及び4-(N,N-ビス-(アリルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン等が挙げられる。
【0051】
式(1b-2)で表される化合物であって、Zが式(2b)で表される1価の基で、mが0である化合物の例としては、4-(N,N-ビス-(メチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N,N-ビス-(エチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N,N-ビス-(フェニルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N,N-ビス-(トリフルオロメチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、及び4-(N,N-ビス-(メチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン等が挙げられる。
【0052】
式(1b-2)で表される化合物であって、Zが式(2c)で表される1価の基で、mが0である化合物の例としては、4-(N,N-ビス-(ジメチルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N,N-ビス-(ジフェニルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N,N-ビス-(ビニルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N,N-ビス-(アリルホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、4-(N,N-ビス-(メトキシホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン、及び4-(N,N-ビス-(リチウムオキシホスフィニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン等が挙げられる。
【0053】
式(1a)又は(1b)で表される化合物は、入手可能な原料を用い、通常の反応を組み合わせて合成することができる。例えば、式(1a)において、Xが炭素数4のアルキレン基(n-ブタン-1,4-ジイル基)で、Zが式(2a)で表される1価の基で、nが1である化合物は、例えば、3-メルカプトスルホランを、メタンスルホニルクロライド、パラトルエンスルホニルクロライド、ベンゼンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルクロライド等のスルホニルクロライド誘導体と反応させることにより、合成することができる。また、式(1b)において、Xが炭素数4のアルキレン基(n-ブタン-1,4-ジイル基)で、Zが式(2a)で表される1価の基で、mが1で、nが1である化合物は、例えば、3-メルカプトスルホランに代えて3-アミノスルホランを用いること以外は上記と同様の方法の方法により、合成することができる。
【0054】
一実施形態に係る非水電解液は、非水電解液用添加剤としての前記式(1a)又は(1b)で表される化合物と、非水溶媒、電解質とを含有する。この非水電解液用添加剤は、例えば、非水溶媒に前記式(1a)又は(1b)で表される化合物を電解質とともに溶解させることにより、調製される。
【0055】
本実施形態に係る非水電解液用添加剤は、前記式(1a)又は(1b)で表される化合物の1種を単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。本実施形態に係る非水電解液用添加剤は、必要に応じて、環状カーボネート化合物、ニトリル化合物、イソシアネート化合物、C≡C基含有化合物、S=O基又はS(=O)基含有化合物(式(1a)又は(1b)で表される化合物以外のもの)、リン含有化合物、酸無水物、環状ホスファゼン化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物等を更に含んでいてもよい。
【0056】
前記環状カーボネート化合物としては、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)、トランス若しくはシス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(DFEC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、及び4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オン(EEC)等が挙げられる。前記環状カーボネート化合物としてVC、FEC、VEC又はこれらの組み合わせを用いてもよい。
【0057】
前記ニトリル化合物としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、及びセバコニトリル等が挙げられる。前記ニトリル化合物として、スクシノニトリル、アジポニトリル又はこれらの組み合わせを用いてもよい。
【0058】
前記イソシアネート化合物としては、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2-イソシアナトエチルアクリレート、及び2-イソシアナトエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0059】
前記C≡C基含有化合物としては、2-プロピニルメチルカーボネート、酢酸-2-プロピニル、ギ酸-2-プロピニル、メタクリル酸-2-プロピニル、メタンスルホン酸-2-プロピニル、ビニルスルホン酸-2-プロピニル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸-2-プロピニル、ジ(2-プロピニル)オギザレート、メチル-2-プロピニルオギザレート、エチル-2-プロピニルオギザレート、グルタル酸ジ(2-プロピニル)、2-ブチン-1,4-ジイルジメタンスルホネート、2-ブチン-1,4-ジイルジホルメート、及び2,4-ヘキサジイン-1,6-ジイルジメタンスルホネート等が挙げられる。
【0060】
前記S=O基又はS(=O)基含有化合物としては、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,3-ブタンスルトン、2,4-ブタンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン、2,2-ジオキシド-1,2-オキサチオラン-4-イルアセテート、及び5,5-ジメチル-1,2-オキサチオラン-4-オン2,2-ジオキシド等のスルトン、エチレンサルファイト、エチレンスルフェート、ヘキサヒドロベンゾ[1,3,2]ジオキサチオラン-2-オキシド(1,2-シクロヘキサンジオールサイクリックサルファイトともいう)、及び5-ビニル-ヘキサヒドロ-1,3,2-ベンゾジオキサチオール-2-オキシド等の環状サルファイト、ブタン-2,3-ジイルジメタンスルホネート、ブタン-1,4-ジイルジメタンスルホネート、メチレンメタンジスルホネート、及び1,3-プロパンジスルホン酸無水物等のスルホン酸エステル、ジビニルスルホン、1,2-ビス(ビニルスルホニル)エタン、並びにビス(2-ビニルスルホニルエチル)エーテル等が挙げられる。
【0061】
前記リン含有化合物としてはリン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)メチル、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エチル、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)2,2-ジフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、リン酸ビス(2,2-ジフルオロエチル)2,2,2-トリフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)2,2,2-トリフルオロエチル及びリン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)メチル、リン酸トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル)、メチレンビスホスホン酸メチル、メチレンビスホスホン酸エチル、エチレンビスホスホン酸メチル、エチレンビスホスホン酸エチル、ブチレンビスホスホン酸メチル、ブチレンビスホスホン酸エチル、メチル2-(ジメチルホスホリル)アセテート、エチル2-(ジメチルホスホリル)アセテート、メチル2-(ジエチルホスホリル)アセテート、エチル2-(ジエチルホスホリル)アセテート、2-プロピニル2-(ジメチルホスホリル)アセテート、2-プロピニル2-(ジエチルホスホリル)アセテート、メチル2-(ジメトキシホスホリル)アセテート、エチル2-(ジメトキシホスホリル)アセテート、メチル2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、エチル2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、2-プロピニル2-(ジメトキシホスホリル)アセテート、2-プロピニル2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、ピロリン酸メチル、及びピロリン酸エチル等が挙げられる。
【0062】
前記酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、3-アリル無水コハク酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、及び3-スルホ-プロピオン酸無水物等が挙げられる。
【0063】
前記環状ホスファゼン化合物としては、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、及びエトキシヘプタフルオロシクロテトラホスファゼン等が挙げられる。
【0064】
前記ケイ素含有化合物としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリビニルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、トリメチルフルオロシラン、トリエチルフルオロシラン、トリプロピルフルオロシラン、フェニルジメチルフルオロシラン、トリフェニルフルオロシラン、ビニルジメチルフルオロシラン、ビニルジエチルフルオロシラン、ビニルジフェニルフルオロシラン、トリメトキシフルオロシラン、トリエトキシフルオロシラン、ジメチルジフルオロシラン、ジエチルジフルオロシラン、ジビニルジフルオロシラン、エチルビニルジフルオロシラン、メチルトリフルオロシラン、エチルトリフルオロシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3-ジエチルテトラメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、テトラメトキシシラン、ビス(トリメチルシリル)パーオキサイド、酢酸トリメチルシリル、酢酸トリエチルシリル、プロピオン酸トリメチルシリル、メタクリル酸トリメチルシリル、トリフルオロ酢酸トリメチルシリル、メタンスルホン酸トリメチルシリル、エタンスルホン酸トリメチルシリル、メタンスルホン酸トリエチルシリル、フルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、ビス(トリメチルシリル)スルフェート、トリス(トリメチルシロキシ)ボロン、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、及びトリス(トリメチルシリル)ホスファイト等が挙げられる。
【0065】
前記ホウ素含有化合物としては、ボロキシン、トリメチルボロキシン、トリメトキシボロキシン、トリエチルボロキシン、トリエトキシボロキシン、トリイソプロピルボロキシン、トリイソプロポキシボロキシン、トリn-プロピルボロキシン、トリn-プロポキシボロキシン、トリn-ブチルボロキシン、トリn-ブチロキシボロキシン、トリフェニルボロキシン、トリフェノキシボロキシン、トリシクロヘキシルボロキシン、及びトリシクロヘキソキシボロキシン等が挙げられる。
【0066】
本実施形態に係る非水電解液は、前記非水電解液用添加剤、非水溶媒、及び電解質を含有する。
【0067】
非水電解液における非水電解液用添加剤(又は(1a)若しくは(1b)で表される化合物)の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、総量で0.005~10質量%であってよい。非水電解液用添加剤の含有量が0.005質量%以上であると、より優れた電池特性を得られ、含有量が10質量%以下であると、非水電解液の粘度が上昇しにくいため、イオンの移動度を充分に確保できる。同様の観点から、非水電解液用添加剤(又は(1a)若しくは(1b)で表される化合物)の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、総量で0.01~10質量%の範囲であってもよい。
【0068】
前記式(1a)又は(1b)で表される化合物と前記環状カーボネート化合物とを添加剤として併用する場合、当該環状カーボネート化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.001~10質量%であってもよい。当該環状カーボネート化合物の含有量がこの範囲にあると、SEIが厚くなり過ぎずに、より高温下でのSEIの安定性が高まる。当該環状カーボネート化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.01質量%以上、又は0.5質量%以上であってもよい。
【0069】
前記式(1a)又は(1b)で表される化合物と前記ニトリル化合物とを添加剤として併用する場合、当該ニトリル化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.001~10質量%であってもよい。当該ニトリル化合物の含有量がこの範囲であると、SEIが厚くなり過ぎずに、より高温下でのSEIの安定性が高まる。当該ニトリル化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.01質量%以上、又は0.5質量%以上であってもよい。
【0070】
前記式(1a)又は(1b)で表される化合物と前記イソシアネート化合物とを添加剤として併用する場合、当該イソシアネート化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.01~5質量%であってもよい。当該イソシアネート化合物の含有量がこの範囲であると、SEIが厚くなり過ぎずに、より高温下でのSEIの安定性が高まる。当該イソシアネート化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.5質量%以上であってもよく、3質量%以下であってもよい。
【0071】
前記式(1a)又は(1b)で表される化合物と前記C≡C基含有化合物とを添加剤として併用する場合、当該C≡C基含有化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.01~5質量%であってもよい。当該C≡C基含有化合物の含有量がこの範囲であると、SEIが厚くなり過ぎずに、より高温下のSEIの安定性が高まる。当該C≡C基含有化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.1質量%以上であってもよい。
【0072】
前記式(1a)又は(1b)で表される化合物と前記S=O基又はS(=O)基含有化合物とを添加剤として併用する場合、当該S=O基又はS(=O)基含有化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.001~5質量%であってもよい。当該S=O基又はS(=O)基含有化合物の含有量がこの範囲であると、SEIが厚くなり過ぎずに、より高温下でのSEIの安定性が高まる。当該S=O基又はS(=O)基含有化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.01質量%以上、又は0.1質量%以上であってもよい。
【0073】
前記式(1a)又は(1b)で表される化合物と前記リン含有化合物とを添加剤として併用する場合、当該リン含有化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.001~5質量%であってもよい。当該リン含有化合物の含有量がこの範囲であると、SEIが厚くなり過ぎずに、より高温下でのSEIの安定性が高まる。当該リン含有化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.01質量%以上、又は0.1質量%以上であってもよい。
【0074】
前記式(1a)又は(1b)で表される化合物と前記環状ホスファゼン化合物とを添加剤として併用する場合、当該環状ホスファゼン化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.001~5質量%であってもよい。当該環状ホスファゼン化合物の含有量がこの範囲であると、SEIが厚くなり過ぎずに、より高温下でのSEIの安定性が高まる。当該環状ホスファゼン化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.01質量%以上、又は0.1質量%以上であってもよい。
【0075】
前記式(1a)又は(1b)で表される化合物と前記酸無水物とを添加剤として併用する場合、当該酸無水物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.001~5質量%であってもよい。当該酸無水物の含有量がこの範囲であると、SEIが厚くなり過ぎずに、より高温下でのSEIの安定性が高まる。当該酸無水物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.01質量%以上、又は0.5質量%以上であってもよい。
【0076】
前記式(1a)又は(1b)で表される化合物と前記ホウ素含有化合物とを添加剤として併用する場合、当該ホウ素含有化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.001~5質量%であってもよい。この範囲では、SEIが厚くなり過ぎずに、より高温下でのSEIの安定性が高まる。当該ホウ素含有化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.01質量%以上、又は0.1質量%以上であってもよい。
【0077】
前記式(1a)又は(1b)で表される化合物と前記ケイ素含有化合物とを添加剤として併用する場合、当該ケイ素含有化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.01~5質量%であってもよい。当該ケイ素含有化合物の含有量がこの範囲であると、SEIが厚くなり過ぎずに、より高温下でのSEIの安定性が高まる。当該ケイ素含有化合物の含有量は、非水電解液の全質量を基準として、0.1質量%以上、又は0.5質量%以上であってもよい。
【0078】
前記非水溶媒としては、得られる非水電解液の粘度を低く抑える観点から、非プロトン性溶媒を選択できる。非プロトン性溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル、ラクトン、ラクタム、環状エーテル、鎖状エーテル、スルホン、ニトリル及びこれらのハロゲン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート又は鎖状カーボネートを選択でき、環状カーボネート及び鎖状カーボネートの組み合わせを選択することもできる。
【0079】
前記環状カーボネートとしては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等が挙げられる。添加剤の環状カーボネートとして例示された4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)を、非水溶媒として用いてもよい。前記鎖状カーボネートとしては、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル等が挙げられる。前記脂肪族カルボン酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル等が挙げられる。前記ラクトンとしては、例えば、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。前記ラクタムとしては、例えば、ε-カプロラクタム、N-メチルピロリドン等が挙げられる。前記環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン等が挙げられる。前記鎖状エーテルとしては、例えば、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン等が挙げられる。前記スルホンとしては、例えば、スルホラン等が挙げられる。前記ニトリルとしては、例えば、アセトニトリル等が挙げられる。アセトニトリルは、添加剤として用いてもよいし、非水溶媒として用いてもよい。前記ハロゲン誘導体としては、例えば、4-クロロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン等が挙げられる。これらの非水溶媒は、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0080】
前記電解質は、リチウムイオンのイオン源となるリチウム塩であってもよい。電解質は、LiAlCl、LiBF、LiPF、LiClO、LiAsF及びLiSbFからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。解離度が高く電解液のイオン伝導度を高めることができ、更に耐酸化還元特性により長期間の使用による蓄電デバイスの性能劣化を抑制する作用がある観点から、電解質として、LiBF及び/又はLiPFを選択してもよい。これらの電解質は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
前記電解質がLiBF及び/又はLiPFである場合、非水溶媒として、環状カーボネート及び鎖状カーボネートをそれぞれ1種以上組み合わせてもよい。特に、LiBF及び/又はLiPFと、炭酸エチレン及び炭酸ジエチルとを組み合わせてもよい。
【0082】
非水電解液における前記電解質の濃度は、非水電解液の体積を基準として、0.1~2.0mol/Lであってもよい。前記電解質の濃度が0.1mol/L以上であると、より優れた放電特性または充電特性等が得られる。前記電解質の濃度が2.0mol/L以下であると、非水電解液の粘度が上昇しにくいため、イオンの移動度をより高いレベルで確保できる。同様の観点から、前記電解質の濃度が0.5~1.5mol/Lであってもよい。
【0083】
本実施形態に係る非水電解液において、上記電解質(第1のリチウム塩)と、これとは異なる第2のリチウム塩とを併用してもよい。第2のリチウム塩としては、例えば、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムビスオキサラトボレート(LiBOB)、リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート(LiTFOP)、リチウムジフルオロオキサラトボレート(LiDFOB)、リチウムジフルオロビスオキサラトホスフェート(LiDFOP)、テトラフルオロホウ酸リチウム、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート、及びLiPOF等のリン酸骨格を有するリチウム塩、並びに、リチウムトリフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ボレート、リチウムペンタフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ホスフェート、リチウムメチルサルフェート、リチウムエチルサルフェート、リチウム2,2,2-トリフルオロエチルサルフェート、及びフルオロスルホン酸リチウム等のS(=O)基を有するリチウム塩が挙げられる。第2のリチウム塩は、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムビスオキサラトボレート、リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムジフルオロビスオキサラトホスフェート、リチウムメチルサルフェート、リチウムエチルサルフェート、及びフルオロスルホン酸リチウムからなる群より選ばれるリチウム塩を一種以上含んでいてもよい。
【0084】
非水電解液における前記第2のリチウム塩の濃度は、非水電解液の体積を基準として、0.001~1.0mol/Lであってもよい。前記第2のリチウム塩の濃度が0.001mol/L以上であると、高温条件においてより優れた充放電特性が得られる。前記第2のリチウム塩の濃度が1.0mol/L以下であると、非水電解液の粘度が上昇しにくいため、イオンの移動度を充分に確保できる。同様の観点から、第2のリチウム塩の濃度は0.01~0.8mol/Lであってもよく、0.01~0.5mol/Lでもよい。
【0085】
本実施形態に係る非水電解液は、前記式(1a)又は(1b)で表される化合物を含む非水電解液用添加剤を、電解質および必要により添加される一般的な添加物が溶解されている非水溶媒に添加することにより調製される。
【0086】
本実施形態に係る非水電解液は、正極及び負極を備えた蓄電デバイスの電解液として使用することができる。例えば、本実施形態に係る非水電解液用添加剤を含有する非水電解液を、リチウムイオン電池等の非水電解液二次電池、又はリチウムイオンキャパシタ等の電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスに用いた場合、長期にわたるサイクル特性の向上、初期抵抗の抑制、および長期の抵抗上昇の抑制が可能である。更には、当該非水電解液用添加剤は、蓄電デバイスを高温で長期間貯蔵したときのガス発生を抑制することもできる。
【0087】
図1は、蓄電デバイスの一例としての非水電解液二次電池の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示される非水電解液二次電池1は、正極板4(正極)及び負極板7(負極)と、正極板4と負極板7との間に配置された非水電解液8と、非水電解液8中に設けられたセパレータ9と、を備える。正極板4は、正極集電体2と非水電解液8側に設けられた正極活物質層3とを有する。負極板7は、負極集電体5と非水電解液8側に設けられた負極活物質層6とを有する。非水電解液8として、上述の実施形態に係る非水電解液を用いることができる。図1では、蓄電デバイスとして非水電解液二次電池を示したが、当該非水電解液が適用され得る蓄電デバイスはこれに限定されることはなく、電気二重層キャパシタ等のその他の蓄電デバイスであってもよい。
【0088】
正極集電体2及び負極集電体5としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス等の金属からなる金属箔を用いることができる。
【0089】
正極活物質層3は正極活物質を含む。正極活物質は、リチウム含有複合酸化物であってもよい。リチウム含有複合酸化物は、例えば、LiMnO、LiFeO、LiCoO、LiMn、LiFeSiO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNiCo(但し、0.01<x<1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1であり、MはMn、V、Mg、Mo、Nb、Fe、Cu及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)、LiFePO4、LiNi0.8Co0.15Al0.05等のリチウム含有複合酸化物が挙げられる。
【0090】
負極活物質層6は負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵、放出することができる材料が挙げられる。このような材料としては、結晶性炭素(天然黒鉛及び人造黒鉛等)、非晶質炭素、炭素被覆黒鉛及び樹脂被覆黒鉛等の炭素材料、酸化インジウム、酸化シリコン、酸化スズ、チタン酸リチウム、酸化亜鉛及び酸化リチウム等の酸化物材料、リチウム金属、及びリチウムと合金を形成することができる金属等の金属材料等が挙げられる。前記リチウムと合金を形成することができる金属としては、例えば、Cu、Sn、Si、Co、Mn、Fe、Sb、Ag等が挙げられ、これらの金属とリチウムとを含む2元又は3元からなる合金を負極活物質として用いることもできる。これらの負極活物質は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0091】
高エネルギー密度化の観点から、前記負極活物質として、黒鉛などの炭素材料と、Si、Si合金、Si酸化物などのSi系の活物質とを組み合わせてもよい。サイクル特性と高エネルギー密度化の両立という観点から、前記負極活物質として、黒鉛と、Si系の活物質とを組み合わせてもよい。係る組み合わせに関して、炭素材料とSi系の活物質との合計質量に対するSi系の活物質の質量の比は、0.5質量%以上95質量%以下、1質量%以上50質量%以下、又は2質量%以上40質量%以下であってもよい。
【0092】
正極活物質層3及び負極活物質層6は、結着剤を更に含んでいてもよい。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、アクリル酸-ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸、及びこれらの共重合体等が挙げられる。前記結着剤は正極活物質層と負極活物質層で同一であってもよく異なっていてもよい。
【0093】
正極活物質層3及び負極活物質層6は、抵抗を低下させる目的で、導電補助材を更に含んでいてもよい。導電補助材としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素質微粒子及び炭素繊維が挙げられる。
【0094】
セパレータ9としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等からなる単層又は積層の微多孔性フィルム、織布、又は不織布多孔質フィルムを用いることができる。
【0095】
蓄電デバイスを構成する各部材の形状、厚み等の具体的な形態は、当業者であれば適宜設定することができる。蓄電デバイスの構成は、図1の形態に限られず、適宜変更が可能である。
【実施例
【0096】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0097】
1.非水電解液用添加剤(式(1a)又は(1b)で表される化合物)の合成
化合物1(3-メチルスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド)の合成
【化7】
攪拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた300mLの4つ口フラスコにジクロロメタン50mLを仕込んだ。そこに、氷浴にて冷却しながら、3-メルカプトスルホラン(1.52g、10mmol)及びトリエチルアミン(0.972g、12mmol)を加えて。次いで、メタンスルホニルクロリド(1.24g、10mmol)を滴下後、フラスコ内の反応液を40℃に昇温し、その温度を維持しながら反応液を40時間攪拌した。反応液を室温まで冷却し、水50mLを加えた。次いで反応液を0℃まで冷却し、析出した固体を濾過により取り出して乾燥し、式(1-1)で表される化合物1(0.48g)を取得した。化合物1の収率は3-メルカプトスルホランに対し21%であった。得られた化合物1の分子量が230であることを、LC/MSスペクトルにより確認した。
【0098】
化合物2(3-(N-(メチルスルホニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド)の合成
【化8】
3-メルカプトスルホランを3-アミノスルホラン(1.35g、10mmol)に変更したこと以外は化合物1の合成と同様の反応により、式(1-2)で表される化合物2(0.89g)を取得した。化合物2の収率は3-アミノスルホランに対し42%であった。得られた化合物2の分子量が213であることを、LC/MSスペクトルにより確認した。
【0099】
化合物3(3-(N-(メチルカルボニル)アミノテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド)の合成
【化9】
メタンスルホニルクロリドをアセチルクロリド(0.79g、10mmol)に変更したこと以外は化合物2の合成と同様の反応により、式(1-3)で表される化合物3(0.75g)を取得した。化合物3の収率は3-アミノスルホランに対し52%であった。得られた化合物3の分子量が177であることを、LC/MSスペクトルにより確認した。
【0100】
化合物4(4-メチルスルホニルチオテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド-2-エン)の合成
【化10】
3-メルカプトスルホランを4-アミノ-2-スルホレン(0.79g、10mmol)に変更したこと以外は化合物1の合成と同様の反応により、式(1-4)で表される化合物4を取得した。化合物4の収率は4-アミノ-2-スルホレンに対し32%であった。得られた化合物4の分子量が228であることをLC/MSスペクトルにより確認した。
【0101】
2.非水電解液の調製
(実施例1~4)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して、混合非水溶媒を調製した。この混合非水溶媒に、電解質としてLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように溶解させた。得られた溶液に、非水電解液用添加剤としての化合物1を添加して、実施例1の非水電解液を調製した。非水電解液用添加剤(化合物1)の濃度は、非水電解液の全質量に対して1.0質量%とした。化合物1に代えて化合物2、3又は4を用いたこと以外は同様にして、実施例2~4の非水電解液を調製した。
【0102】
(比較例1)
化合物1を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
【0103】
(比較例2)
化合物1に代えて1,3-プロパンスルトン(PS)(東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
【0104】
(比較例3)
化合物1に代えてビニレンカーボネート(VC)(東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
【0105】
(比較例4)
化合物1に代えてフルオロエチレンカーボネート(FEC)(東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
【0106】
3.非水電解液二次電池の作製
(非水電解液二次電池の作製)
正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3及び導電性付与剤としてのカーボンブラックを乾式混合した。得られた混合物を、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)が溶解したN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、スラリーを調製した。得られたスラリーをアルミ金属箔(角型、厚さ20μm)の両面に塗布し、塗膜からNMPを蒸発させることにより除去した後、全体をプレスして、正極集電体としてのアルミ金属箔と、その両面上に形成された正極活物質層とを有する正極シートを作製した。得られた正極シート中の固形分比率は、質量比で正極活物質:導電性付与剤:PVDF=92:5:3であった。
【0107】
負極活物質としてのグラファイト粉末を、バインダーとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)及び増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む水中に均一に分散させ、スラリーを調製した。得られたスラリーを銅箔(角型、厚さ10μm)の片面に塗布した。塗膜から水を除去した後、全体をプレスして、負極集電体としての銅箔と、その片面上に形成された負極活物質層とを有する負極シートを得た。負極シートの固形分比率は、質量比で、負極活物質:CMC:SBR=98:1:1であった。
【0108】
作製した正極シート及び負極シートを、セパレータとともに、負極シート、セパレータ、正極シート、セパレータ、負極シートの順に積層して、電池要素を作製した。セパレータとしてポリエチレンフィルムを用いた。この電池要素を、アルミニウム箔(厚さ40μm)とその両面を被覆する樹脂層とを有するラミネートフィルムから形成された袋に、正極シート及び負極シートの端部が袋から突き出るように挿入した。次いで、袋内に実施例及び比較例で得られた各非水電解液を注入した。袋を真空封止し、シート状の非水電解液二次電池を得た。更に、電極間の密着性を高めるために、ガラス板でシート状非水電解液二次電池を挟んで加圧した。
【0109】
4.評価
初期抵抗比
得られた非水電解液二次電池を、25℃において、0.2Cに相当する電流で4.2Vまで充電した後、非水電解液二次電池を45℃において24時間保持した。その後、25℃において、0.2Cに相当する電流で3Vまで放電した。引き続き、0.2Cに相当する電流による4.2Vまでの充電と、0.2Cに相当する電流による3Vまでの放電とを交互に3サイクル繰り返すエージングにより、非水電解液二次電池を安定させた。その後、1Cで初期の充放電を行なってから、非水電解液二次電池の放電容量を測定し、これを「初期容量」とした。
初期の充放電後に、初期容量の50%の容量を充電した非水電解液二次電池について、25℃において交流インピーダンスを測定し、これを初期抵抗(Ω)とした。ここで、「初期抵抗比」とは、比較例1の初期抵抗(Ω)を1としたときの、各非水電解液二次電池の抵抗の相対値である。
【0110】
サイクル特性(放電容量維持率及び抵抗増加率)
初期充放電後の各非水電解液二次電池について、充電レートを1C、放電レートを1C、充電終止電圧を4.2V、及び、放電終止電圧を3Vとする条件の200サイクルの充放電サイクル試験を行った。その後、1Cで充放電を行なって、非水電解液二次電池の放電容量を測定し、これを「200サイクル試験後の放電容量」とした。
サイクル試験後に、200サイクル試験後の放電容量の50%容量まで充電した非水電解液二次電池について、25℃の環境下で交流インピーダンスを測定し、これを「200サイクル試験後の抵抗(Ω)」とした。ここで「放電容量維持率」及び「抵抗増加率」は、以下の式により算出される値である。
放電容量維持率(%)=(200サイクル試験後の放電容量/初期容量)×100
抵抗増加率(%)=(200サイクル試験後の抵抗/初期抵抗)×100
【0111】
ガス発生量
初期抵抗の評価、放電容量維持率及び抵抗増加率の評価に用いた電池とは別に、実施例及び比較例の各電解液を含む同様の構成の非水電解液二次電池を準備した。この非水電解液二次電池を、25℃において、0.2Cに相当する電流で4.2Vまで充電した後、45℃において24時間保持することでエージングした。その後、25℃において、0.2Cに相当する電流で3Vまで放電した。引き続き、0.2Cに相当する電流で4.2Vまで充電し、0.2Cに相当する電流で3Vまで放電する操作を3サイクル繰り返して、初期充放電を行い、非水電解液電池を安定させた。
【0112】
初期充放電後の非水電解液二次電池の体積をアルキメデス法により測定し、これを電池の初期体積(cm)とした。更に、非水電解液二次電池を、25℃において1Cに相当する電流で4.2Vまで充電した後、60℃において168時間保持した。その後、非水電解二次電池を25℃まで冷却してから、1Cに相当する電流で3Vまで放電した。放電後の非水電解液二次電池の体積をアルキメデス法により測定し、これを電池の高温保存後体積(cm)とした。以下の式によりガス発生量を算出した。
ガス発生量=(高温保存後体積)-(初期体積)
【0113】
【表1】
【0114】
表1に、各非水電解液二次電池の評価結果を示す。式(1a)又は(1b)で表される化合物を含む非水電解液を備える実施例の非水電解液二次電池では、初期抵抗が抑制され、長期にわたる優れたサイクル特性が示され、しかもガス発生が抑制されることが確認された。
【符号の説明】
【0115】
1…蓄電デバイス(非水電解液二次電池)、2…正極集電体、3…正極活物質層、4…正極板、5…負極集電体、6…負極活物質層、7…負極板、8…非水電解液、9…セパレータ。
図1