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特許7258527容器詰めゼリー状食品及び容器詰めゼリー状食品の加温方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】容器詰めゼリー状食品及び容器詰めゼリー状食品の加温方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 21/10 20160101AFI20230410BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20230410BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20230410BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20230410BHJP
   A47F 3/04 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
A23L21/10
A23L29/269
A23L29/00
B65D85/50 100
A47F3/04 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018227452
(22)【出願日】2018-12-04
(65)【公開番号】P2020089291
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕介
(72)【発明者】
【氏名】柴田 克亮
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-150556(JP,A)
【文献】特開2000-201633(JP,A)
【文献】特開2012-065610(JP,A)
【文献】特開2014-093978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 21/00-21/25
A23L 29/00-29/30
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を覆う袋部及び該袋部に装着された口部を備えた容器と、前記容器に充填したゼリー状食品とを含む、加温販売用の容器詰めゼリー状食品であって、前記容器は、前記袋部を手で圧迫することにより前記ゼリー状食品を変形しつつ前記口部から出して食することができるように構成されており、前記ゼリー状食品は、ジェランガムとCaイオンを含有し、60℃で7日間保管した後のレオメーターによる圧縮試験においてゲル強度が0.4N以上2.0N以下であり、60℃で7日間保管した後の離水率が1質量%以上10質量%以下であり、pHが4.0未満である、該容器詰めゼリー状食品。
【請求項2】
前記ゼリー状食品はCaイオンを0.02質量%以上0.05質量%以下含有するものである、請求項1記載の容器詰めゼリー状食品。
【請求項3】
前記ゼリー状食品はジェランガムを0.1質量%以上0.3質量%以下含有するものである、請求項1又は2記載の容器詰めゼリー状食品。
【請求項4】
前記ゼリー状食品は、更にジェランガム以外の増粘多糖類を含有するものである、請求項のいずれか1項に記載の容器詰めゼリー状食品。
【請求項5】
加温器にて保管されるものである、請求項1~のいずれか1項に記載の容器詰めゼリー状食品。
【請求項6】
ジェランガムとCaイオンを含有し、60℃で7日間保管した後のレオメーターによる圧縮試験においてゲル強度が0.4N以上2.0N以下であり、60℃で7日間保管した後の離水率が1質量%以上10質量%以下であるゼリー状食品を、可撓性容器に充填して商品陳列用の加温器に入れ、前記ゼリー状食品の温度が40℃以上75℃以下の範囲を保つように維持することを特徴とする容器詰めゼリー状食品の加温方法。
【請求項7】
前記商品陳列用の加温器がホットベンダー、ホットウォーマー、ホットショーケース、又は自動販売機である、請求項記載の容器詰めゼリー状食品の加温方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加温状態で提供される容器詰めゼリー状食品及び容器詰めゼリー状食品の加温方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スパウト付きパウチ容器に充填されたゼリー状食品が知られている。この種のゼリー状食品は、容器を圧迫しながらスパウト口部から吸飲することにより、外出時などでも手軽に喫食することができる形態であり、人気を博している。製品の訴求ポイントとしては、小腹を満たす目的であったり、運動時のエネルギー補給の目的であったり、あるいは、また、日常の食生活において不足しがちなビタミンや蛋白質を補給する目的などであったりするが、一般に冷蔵状態で販売されており、冷たい状態で摂取するのが通常であった。しかしながら、冬期など外気温が低いときには、冷たいゼリー状食品は、敬遠される傾向があった。
【0003】
一方、引用文献1には、加温販売を前提とした容器詰ゼリー入り飲料であって、保温性に優れ、ゼリーの食感を有するものを得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-65610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、冬期など外気温が低いときには、温かいゼリー状食品を提供できないかと考え、スパウト付きパウチ容器に充填されたゼリー状食品を、ホットベンダー等の商品陳列用の加温器で保管して提供する試みを行った。しかしながら、ゼリー状食品のゲル性状は60℃前後に保管して所定期間経過すると大きく変化して、所望の食感を維持することが困難であることが分かった。この点、特許文献1には、加温下に所定期間保管したときのゲル性状の変化の問題について何ら開示されていない。また、特許文献1に記載のゼリー入り飲料は、ペットボトルに充填し、振り崩して飲食するタイプのゼリー入り飲料であり、一般にスパウト付きパウチ容器等に充填して喫食するタイプのゼリー状食品に望まれる食感を呈するとはいい難かった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、加温器に保管して加温状態で提供される場合にも所望の食感が得られるようにした、容器詰めゼリー状食品及び容器詰めゼリー状食品の加温方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、その第1の観点からは、内容物を覆う袋部及び該袋部に装着された口部を備えた容器と、前記容器に充填したゼリー状食品とを含み、前記容器は、前記袋部を手で圧迫することにより前記ゼリー状食品を変形しつつ前記口部から出して食することができるように構成されており、前記ゼリー状食品は、60℃で7日間保管した後のレオメーターによる圧縮試験においてゲル強度が0.4N以上2.0N以下であり、60℃で7日間保管した後の離水率が1質量%以上10質量%以下であり、pHが4.0未満であることを特徴とする容器詰めゼリー状食品を提供するものである。
【0008】
上記容器詰めゼリー状食品においては、前記ゼリー状食品はジェランガムとCaイオンを含有するものであることが好ましい。
【0009】
また、Caイオンを0.02質量%以上0.05質量%以下含有するものであることが好ましい。
【0010】
また、ジェランガムを0.1質量%以上0.3質量%以下含有するものであることが好ましい。
【0011】
また、前記ゼリー状食品は、更にジェランガム以外の増粘多糖類を含有するものであることが好ましい。
【0012】
また、加温器にて保管されるものであることが好ましい。
【0013】
一方、本発明は、その第2の観点からは、ジェランガムとCaイオンを含有するゼリー状食品を、可撓性容器に充填して商品陳列用の加温器に入れ、前記ゼリー状食品の温度が40℃以上75℃以下の範囲を保つように維持することを特徴とする容器詰めゼリー状食品の加温方法を提供するものである。
【0014】
上記容器詰めゼリー状食品の加温方法においては、前記商品陳列用の加温器がホットベンダー、ホットウォーマー、ホットショーケース、又は自動販売機であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加温器に保管して加温状態で提供される場合にも所望の食感が得られるようにした、容器詰めゼリー状食品及び容器詰めゼリー状食品の加温方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態を示す容器詰めゼリー状食品の斜視図であって、(a)は斜め上方から見た斜視図、(b)は斜め下方から見た斜視図である。
図2図1に示した容器詰めゼリー状食品を加温器内に載置した状態を示す説明図である。
図3図1に示した容器詰めゼリー状食品を加温器内に載置した状態の、一部を切り欠いて示す正面断面図である。
図4】本発明の他の実施形態を示す容器詰めゼリー状食品の斜視図であって、(a)は斜め上方から見た斜視図、(b)は斜め下方から見た斜視図である。
図5】試験例3においてゼリー状食品を60℃で1週間保管したときの変色の度合いについて調べた結果の写真であり、(1)はパウチ容器に充填して保管したときの結果であり、(2)はポリプロピレン製カップに充填して保管したときの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、容器詰めゼリー状食品に用いられるゼリー状食品は、容器から押し出して食することができるような、流動性を有するゼリー状の食品であればよく、その原料や製造方法については、特に限定されない。
【0018】
ゼリー状食品のゲル化剤としては、例えば、寒天、ローカストビーンガム、ジェランガム(具体的には脱アシルジェランガム。以下、単に「ジェランガム」という場合がある。)、ネイティブジェランガム、グルコマンナン、キサンタンガム、ペクチン、カラギナン、アルギン酸ナトリウムなどが好ましく用いられ、これらは1種又は2種以上の組合せで用いることができる。
【0019】
この場合、加温器に保管して加温状態で提供する観点からは、ゲル化剤としては、例えば45~75℃の温度にてゲル状態を保つことができるものが好ましく、特に脱アシルジェランガム、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、カラギナンから選ばれた1種又は2種以上が好ましく、脱アシルジェランガムが特に好ましく用いられる。
【0020】
ゼリー状食品には、例えばエネルギー源、蛋白源、ビタミン類、アミノ酸、ミネラルなどを補給するのに適した原料を添加することができる。
【0021】
エネルギー源となる原料としては、例えば単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール、デキストリン、水飴などの糖類が好ましく用いられる。具体的には、ぶどう糖、果糖、砂糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルトデキストリン等が挙げられる。これらのエネルギー源となる原料は単独又は2種類以上を使用できる。
【0022】
なお、ダイエット用のゼリー状食品においては、甘味料として、還元水飴等の糖アルコールや、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムK 、スクラロース、ソウマチン等の高甘味度甘味料を用いることもできる。これらの高甘味度甘味料は単独又は2種類以上を使用できる。
【0023】
蛋白源となる原料としては、例えば、ホエイ蛋白質、大豆蛋白質、コラーゲン、コラーゲンペプチド、カゼインなどが挙げられる。ホエイ蛋白質としては、ホエイ蛋白質分離物(WPI)、ホエイ蛋白質濃縮物(WPC)、ホエイ蛋白質加水分解物(WPH)などが好ましく用いられ、大豆蛋白質としては、分離大豆たんぱく質(SPI)などが好ましく用いられる。これらの蛋白源となる原料は単独又は2種類以上を使用できる。
【0024】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA 、ビタミンB1 、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンH 、ビタミンK、ビタミンP、パントテン酸、コリン、葉酸、イノシトール、ナイアシン、パラアミノ安息香酸(PABA)等が挙げられる。これらのビタミン類は単独又は2種類以上を使用できる。
【0025】
アミノ酸としては、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等が挙げられる。これらのアミノ酸は単独又は2種類以上を使用できる。
【0026】
ミネラルとしては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム等が挙げられる。これらのミネラルは単独又は2種類以上を使用できる。
【0027】
その他、酸味料として、例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、アスコルビン酸、グルコン酸、リン酸及びそれらの塩等を添加してもよい。また、果汁、食物繊維、香料、調味料、色素等を添加することもできる。
【0028】
ゼリー状食品は、上記に説明したような原料を水に分散させ、ゲル化剤を加熱溶解させた後、冷却することによりゲル化させることによって製造することができる。各原料の添加順序等は、好ましいゲル性状となるように適宜調整することができる。
【0029】
ただし、上記ゼリー状食品は、加温器に保管して加温状態で提供する観点からは、60℃で7日間保管した後のレオメーターによる圧縮試験においてゲル強度が0.4N以上2.0N以下であり、60℃で7日間保管した後の離水率が1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。これによれば、スパウト付きパウチ容器等の容器に充填して食する際に、ゲルが崩れてもゼリーの歯応えが十分に感じられる。また、ゲルが崩れたとき適度な流動性を有するようになるので、食感としての流動感も良好となる。このようなゲル性状を、60℃前後に保管して所定期間の経過後にも実現することができる。
【0030】
上記ゲル強度の下限としては0.4N以上であることが好ましく、0.5N以上であることがより好ましい。また、上記ゲル強度の上限としては2.0N以下であることが好ましく、1.5N以下であることがより好ましく、1.3N以下であることが更により好ましい。ゲル強度が上記範囲未満であるとゲル感が不足する傾向がある。ゲル強度が上記範囲を超えると、硬すぎる食感となる傾向がある。また、上記離水率の下限としては1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。上記離水率の上限としては10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更により好ましい。離水率が上記範囲未満であると流動感や瑞々しさが不足する傾向がある。また、離水率が上記範囲を超えると、ゲル強度が不足しがちで、ひいては柔らかすぎる食感となる傾向がある。
【0031】
ここで、ゲル強度は、その測定手段に特に制限はないが、典型的な例を挙げれば、例えば、レオメーター(サン科学製:CR-500DX)を用い、直径10mmの円柱型プランジャー、進入速度60mm/分、進入距離20mmの測定条件(圧縮試験)で、ゲルが破断したときの破断強度(単位:N)をゲル強度とする、などである。このとき、加温状態で食する際の食感をよく反映したゲル性状をとらえるためには、加温下でのゲル性状を測定することが好ましく、例えば、試料を容器ごと測定直前まで適当な温度の温水槽に保管するなどして、好ましくは50~60℃の範囲内の品温、より好ましくは55~60℃の範囲内の品温の状態でゼリー状食品のゲル強度を測定することが望ましい。
【0032】
また、離水率についても、その測定手段に特に制限はないが、典型的な例を挙げれば、例えば、ゼリー状食品を容器からゲルが崩れないように取り出して、18メッシュ(目開き:0.85mm)の篩上に静かに置き、篩下に落ちた離水量A(単位:g)を測定した。離水率を、次式により算出する、などである。
【0033】
・離水率(%)=(A/180(パウチ容器に充填した量(単位:g))×100
【0034】
この場合も、加温状態で食する際の食感をより反映したゲル性状をとらえるためには、加温下でのゲル性状を測定することが好ましく、例えば、試料を容器ごと測定直前まで適当な温度の温水槽に保管するなどして、好ましくは50~60℃の範囲内の品温、より好ましくは55~60℃の範囲内の品温の状態でゼリー状食品の離水率を測定することが望ましい。
【0035】
一方、上記ゼリー状食品のpHはpH4未満であることが好ましく、pH3以上pH4未満であることがより好ましい。これによれば、微生物の繁殖が抑えられて、加熱殺菌条件を緩和させることができ、ひいては、その加熱殺菌による風味・食感等の劣化を抑えることができる。なお、pHは、pHメーターを用いて測定することができる。
【0036】
上記ゼリー状食品は、ゲル化剤原料としてジェランガムを含有するものであることが好ましい。また、ジェランガムにゲル化能を付与するためのCaイオンを含有するものであることが好ましい。これによれば、上記に説明したような加温状態におけるゲル性状が得られ易い。この場合、ミネラル原料である乳酸カルシウム等を源にして、Caイオンを0.02質量%以上0.05質量%以下含有させることが好ましく、Caイオンを0.025質量%以上0.04質量%以下含有させることがより好ましい。また、ジェランガムを0.1質量%以上0.3質量%以下含有させることが好ましく、0.1質量%以上0.25質量%以下含有させることがより好ましい。また、Caイオンとジェランガムの量比が、質量換算で0.1:1~0.5:1であることが好ましく、0.1:1~0.3:1であることがより好ましい。
【0037】
本発明の好ましい態様においては、上記ゼリー状食品は、ジェランガム(脱アシルジェランガム)に加えて、更にキサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、グルコマンナン、ペクチン、ネイティブジェランガム、カラギナン、アルギン酸ナトリウム等の他の増粘多糖類の1種又は2種以上を含有するものとしてもよい。これによれば、後述する実施例で示されるように、その増粘多糖類が離水に作用して、適度な粘性を付与するとともに、フレーバーの急激な放散を抑えて適度なフレーバーリリースを呈するゼリー状食品を得ることができる。また、所望する場合には、離水に適度な粘性を付与することができる。そのような多糖類の配合量としては、上記目的に適合する限り特に制限はないが、例えば、キサンタンガムを用いる場合には、0.01質量%以上0.1質量%以下含有させることが好ましく、0.015質量%以上0.08質量%以下含有させることがより好ましい。また、ローカストビーンガムを用いる場合には、0.01質量%以上0.1質量%以下含有させることが好ましく、0.015質量%以上0.08質量%以下含有させることがより好ましい。また、グアガムを用いる場合には、0.01質量%以上0.2質量%以下含有させることが好ましく、0.02質量%以上0.15質量%以下含有させることがより好ましい。また、グルコマンナンを用いる場合には、0.01質量%以上0.2質量%以下含有させることが好ましく、0.02質量%以上0.15質量%以下含有させることがより好ましい。また、ペクチンを用いる場合には、0.03質量%以上0.5質量%以下含有させることが好ましく、0.05質量%以上0.3質量%以下含有させることがより好ましい。また、ネイティブジェランガムを用いる場合は、0.001質量%以上0.04質量%以下含有させることが好ましく、0.001質量%以上0.03質量%以下含有させることがより好ましい。また、カラギナンを用いる場合には、0.01質量%以上0.2質量%以下含有させることが好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下含有させることがより好ましい。また、アルギン酸ナトリウムを用いる場合には、0.01質量%以上0.1質量%以下含有させることが好ましい。また、上記ジェランガム以外の増粘多糖類を全て合計した配合量としては、0.001質量%以上0.5質量%以下含有させることが好ましく、0.001質量%以上0.3質量%以下含有させることがより好ましい。
【0038】
上記ゼリー状食品のBrixは、5~40であることが好ましく、10~35であることがより好ましく、15~30であることが更により好ましい。Brixが上記範囲にあると、ゼリーにボディ感を付与することができ、また、ゲルを安定にすることができる。
【0039】
本発明による容器詰めゼリー状食品は、上記に説明したようなゼリー状食品が、スパウト付きパウチ容器等、内容物を覆う袋部及び該袋部に装着された口部を備えた容器に充填されてなるものである。具体的には、その容器は、可撓性容器であり、すなわち袋部を手で圧迫することにより内容物であるゼリー状食品を変形しつつ口部から出して食することができるように構成されている。そして、容器ごとホットベンダー、ホットウォーマー、ホットショーケース、自動販売機等の商品陳列用の加温器に入れて、加温したままの状態で顧客に提供することができ、顧客は、店頭や自動販売機からの商品として手に取って、そのまま喫食することで、加温状態のゼリー状食品をたのしむことができる。
【0040】
図1~3には、本発明による容器詰めゼリー状食品の一実施形態が示されている。この容器詰めゼリー状食品100は、容器101と、該容器101の内部に充填されたゼリー状食品113(図3参照)とで構成されている。
【0041】
図1に示すように、容器101は、溶着可能なシーラント層を内面に有する積層シートでそれぞれ形成された、前面部102と、後面部103と、両側に配置された一対の側面部104と、底面部105とを有しており、これにより容器が内容物を覆う袋部を構成している。
【0042】
上記シーラント層としては、合成樹脂の未延伸フィルムや、合成樹脂を層状に押し出した層が好ましい。シーラント層を形成する合成樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合、2種以上の合成樹脂の混合物の単層でもよく、2種以上の合成樹脂の複層でもよく、混合物の層を含む複層であってもよい。
【0043】
シーラント層が複層の場合、共押出し法、ラミネート法等の公知の方法により製造できる。共押出し法の場合、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法、Tダイ成形法等が採用できる。特に、薄肉フィルム及び広幅原反の成形が可能である空冷インフレーション法が有利である。
【0044】
合成樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられ、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0045】
ポリエチレン系樹脂としては、耐熱性に優れるHDPEと柔軟性があり耐衝撃性に優れるLLDPEを組み合わせることが好ましい。この場合、シーラント層は、HDPEとLLDPEの混合物の単層でもよく、HDPEの層とLLDPEの層を含む複層であってもよく、HDPEとLLDPEの混合物の層を含む複層であってもよい。
【0046】
上記積層シートは、上記シーラント層が内面に配置され、表面側には耐熱性、突き刺し強度、引っ張り強度、耐衝撃性等を備えた合成樹脂フィルムからなるからなる基材層が配置され、シーラント層と基材層との間には、酸素バリア性、水蒸気バリア性、引裂き性、耐衝撃性等の機能性を備えた中間層が配置されたものが好ましく用いられる。
【0047】
基材層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、エチレンビニルアルコール共重合体等が挙げられ、これらの二軸延伸フィルム又は一軸延伸フィルムが好ましい。また、これらのフィルムに、酸素や水蒸気に対するバリア性を付与するために、アルミニウム、マグネシウム等の金属、又は酸化珪素等の酸化物を蒸着させた蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデン等のバリア性コート剤等をコートしたコートフィルム等を用いてもよい。基材層は、前記したフィルムの単体であってもよく、積層フィルムであってもよい。
【0048】
また、上記積層シートとしては、金属箔層と、内面に配置された溶着可能なシーラント層とを有する積層シートが好ましく用いられる。この場合、金属箔層は、上記中間層として配置されることが好ましい。金属箔層としては、アルミニウムの金属箔が好ましく用いられる。
【0049】
一対の側面部104の両側は、前面部102、後面部103の両側とヒートシールされて、上下方向に伸びる4つの側端シール部108が形成されている。この場合、一対の側面部104は、幅方向中央を上下に伸びる折れ線115で内側に折り曲げられて、広がり可能な横ガゼット部を構成している。
【0050】
また、前面部102,後面部103,一対の側面部104のそれぞれの下縁部と、長方形状をなす底面部105の周縁部とがヒートシールされて、下端シール部109が形成されている。底面部105は、折れ線116で内側に折り曲げられて、広がり可能な底ガゼット部を構成している。
【0051】
底面部105の各辺に配置された下端シール部109の両端部は、上下方向に伸びる4つの側端シール部108の対応する下端部に連結され、側端シール部108の下端部と下端シール部109とで、底面部105の周縁を封止するシール構造が形成されている。
【0052】
そして、下端シール部109は、底面部105の周縁を囲むように枠状をなして下方に延出されている。なお、本発明において、枠状とは、下方に延出された下端シール部109の両端どうしが必ずしも連結された構造を意味するものではなく、互いに接触して配置された態様や、3mm以内の隙間を介して近接配置された態様をも含む意味である。
【0053】
また、下端シール部109は、必ずしも枠状をなしている必要はなく、下端シール部109が横に倒れない程度の剛性をもって、下端シール部109の下端部で、ゼリー状食品が充填された容器101を支持することができるのであれば、下端シール部109の両端どうしが離れていてもよく、下方に延出された下端シール部109の数が2つであってもよい。
【0054】
一方、前面部102,後面部103,一対の側面部104のそれぞれの上縁部は、ヒートシールされて上端シール部110が形成されている。また、前面部102、後面部103の上辺の中央部は、スパウト106の外周を封止するように接合されたスパウト接合部111をなしている。図3に示すように、スパウト106の吸引管112は、容器111内に挿入されている。
【0055】
この容器101は、内部にゼリー状食品113を充填されることにより、図1に示すように、横ガゼット部をなす側面部104と、底ガゼット部をなす底面部105が開いて、容積を大きくするように広がった形状となる。そして、底面部105の4辺に位置する下端シール部109が全て下方に延出し、それらの下端が載置面に当接して、自立して載置されるようになっている。
【0056】
なお、後述する実施例で示されるように、60℃前後で保管する場合、酸素がゲル状食品の変色に与える影響が大きいので、上記容器が内容物を覆う袋部を構成する材質の酸素透過量としては、10mL/m2・atm・day未満であることが好ましく、2mL/m2・atm・day未満であることがより好ましく、1mL/m2・atm・day未満であることが更に好ましく、0.1mL/m2・atm・day未満であることが最も好ましい。
【0057】
図2は、容器詰めゼリー状食品を加温器120内に載置して保管している状態を示している。加温器120は、ハウジング121と、その内部に配置された載置面122とを有している。載置面122は、ハウジング121内の底面や、その上方に配置された棚や、 更に棚の上に載せられた皿などで構成されている。載置面122は、必ずしもプレート状をなすものでなくてもよく、メッシュ状や、パンチングメタル状をなすものであってもよい。なお、本発明において「加温器」としては、容器詰めゼリー状食品を載置する載置面122と、容器詰めゼリー状食品を加温できる加熱手段とを有するものであればよく、その形状や構造は特に限定されないが、具体的には、いわゆるホットベンダー、ホットウォーマー、ホットウォーマーもしくはホットショーケースと呼ばれているものが挙げられる。あるいは、加温製品を提供する自動販売機などでもよい。
【0058】
加温器120の加熱温度は、特に限定されないが、容器詰めゼリー状食品のゼリー状食品113が、好ましくは40℃以上75℃以下、より好ましくは50℃以上70℃以下、更により好ましくは55℃以上65℃以下の範囲に保たれるような温度とされる。このような温度であれば、ゼリー状食品の熱劣化を抑制しつつ、比較的温かい状態でゼリー状食品を提供でき、冬期などの外気温が低い季節において、ゼリー状食品を摂取することによって体を温める効果を付与することができる。なお、容器の表面の温度は、手で持ったときに熱く感じたり、火傷しないようにするため、30~60℃程度とされることが好ましい。
【0059】
図3に示すように、加温器120の載置面122に載置された容器詰めゼリー状食品は、下方に延出された下端シール部109の下端が載置面122に当接して、自立した状態で載置されている。そして、底面部105は、ゼリー状食品113の重量によってその中央部がやや垂れ下がる傾向があるが、載置面122に接触しないようにされ、底面部105と載置面122との間に空間114が形成されている。
【0060】
この場合、下方に延出された下端シール部109の下方への延出長さhは、5~15mmが好ましく、5~10mmがより好ましい。また、空間114を形成する底面部105と載置面122との距離sは、2~10mmが好ましく、3~8mmがより好ましい。上記h及びsが小さすぎると、保管中に底面部105と載置面122とが接触してしまう虞れがあり、大きすぎると、下端シール部109が横に倒れやすくなる傾向がある。
【0061】
図3に示されるように、この実施形態では、容器として、上記容器101に示されるように、底面部105の周縁から下方に伸びる下端シール部109を有し、下端シール部109の下端が加温器120の載置面122に当接して、底面部105が載置面122に接しない状態で自立することが可能なものを使用する。これによって、加温器120の載置面122からの熱が、容器101内のゼリー状食品113に伝わりにくくなり、ゼリー状食品113の熱劣化を抑制することができる。
【0062】
また、この実施形態の場合、下端シール部109が底面部105の周縁を囲むように枠状をなして下方に延びているので、ゼリー状食品113の重量によって下端シール部109が曲がりにくくなり、底面部105が載置面122に接することをより確実に防止できる。
【0063】
また、この実施形態では、容器101が、キャップ107が装着されたスパウト106を有しており、これが容器に装着された口部を構成している。キャップ107を外してスパウト106から吸飲することにより、手軽にゼリー状食品113を摂取することができる。また、スパウト106を通して少しずつ吸飲することにより、熱いゼリー状食品113が一度に口中に流れ込むことを抑制できる。
【0064】
また、この実施形態では、容器101の前面部102,後面部103,側面部104,底面部105が、金属薄層を有する積層シートで構成されているので、容器101を構成する積層シートの剛性が高くなり、ゼリー状食品の重量によって下端シール部109が曲がりにくくなり、底面部105が載置面122に接することをより確実に防止できる。 また、加温器120の載置面122からの熱が、金属薄層を通して、容器101全体に伝わり易くなり、加温を均一化しやすくすることができる。
【0065】
更に、この実施形態では、前面部102,後面部103,一対の側面部104,及び底面部105を有し、前面部102、後面部103及び側面部104の各側端部が互いにシールされて、上下に延びる4つの側端シール部108が形成されると共に、側面部104が折り畳み可能な横ガゼット部をなし、前面部102、後面部103及び側面部104の各下端部と、底面部105の外周縁部とが接合されて、枠状をなして下方に突出する下端シール部109が形成されると共に、底面部105が折り畳み可能な底ガゼット部をなしているので、内容量を高めることができる。また、枠状をなして下方に突出する下端シール部109を有すると共に、該枠状をなす下端シール部109の4つの角部に、上下に延びる4つの側端シール部108の下端部が配置されるので、容器101自体の上下方向の剛性が保持されると共に、ゼリー状食品113の重量によって下端シール部109が更に曲がりにくくなり、底面部105が載置面122に接することをより確実に防止できる。
【0066】
図4には、本発明による容器詰めゼリー状食品の他の実施形態が示されている。前記実施形態と共通する部分には、同符号を付してその説明を省略することにする。
【0067】
この容器詰めゼリー状食品200は、容器201の構造が、前記実施形態と相違している。すなわち、容器201は、前面部102と、後面部103と、底面部105とを有し、前記実施形態の側面部104は有しない構造をなしている。すなわち、前面部102,後面部103の両側縁部が互いに接合されて上下に延びる2つの側端シール部108が形成されている。前面部102,後面部103の上縁部の間にスパウト106が挿入され、前面部102,後面部103どうしが接合されて上端シール部110をなすと共に、スパウト106の周囲がスパウト接合部111によってシールされている。底面部105は、その長径方向に沿った中心線を折線として内側に折り畳まれた状態で、その周縁部を前面部102及び後面部103の内面に円弧状に接合されて、底面部105の周縁から下方に延出する下端シール部109が形成されている。
【0068】
容器201内にゼリー状食品を充填すると、底面部105が楕円形状に広がって、下端シール部109が底面部105の周縁を囲む枠状をなして下方に突出した形状となる。そして、図2に示した態様と同様にして、加温器120の載置面122に載置すると、下端シール部109の下端が載置面122に当接して自立させることができる。その状態で、底面部105は、載置面122に接しないで、両者の間に空間が設けられた状態になる。この実施形態においても、加温器120の載置面122からの熱が、容器201内のゼリー状食品に伝わりにくくなり、ゼリー状食品の熱劣化を抑制することができる。
【0069】
以上に説明した通り、上記実施形態において、上記容器は、その底面部の周縁から下方に延びる下端シール部を有し、該下端シール部の下端が加温器の載置面に接して自立可能とされ、上記ゼリー状食品を充填された状態で、その底面部が加温器の載置面に接しないように構成されている。これにより、ゼリー状食品の熱劣化を抑制することができる。ただし、容器の構造は、下端シール部が下方に突出して、その下端が載置面に当接して、底面部が載置面に接触しない構造であればよく、積層シートの接合構造としては各種の構造を採用することができる。
【実施例
【0070】
以下、試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの試験例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0071】
ゼリー状食品のpH、ゲル強度、離水率の各測定は、次のようにして行った。
【0072】
(pH)
ゼリー状食品をパウチ容器からビーカーに絞り出し、pHメーター(HORIBA製)にて測定した。
【0073】
(ゲル強度)
レオメーター(サン科学製:CR-500DX)を用い、直径10mmの円柱型プランジャー、進入速度60mm/分、進入距離20mmの測定条件(圧縮試験)で、ゲルが破断したときの破断強度(単位:N)をゲル強度とした。
【0074】
(離水率)
パウチ容器を解袋し、ゼリー状食品をゲルが崩れないように取り出して、18メッシュ(目開き:0.85mm)の篩上に静かに置き、篩下に落ちた離水量A(単位:g)を測定した。離水率を、次式により算出した。
【0075】
・離水率(%)=(A/180(パウチ容器に充填した量(単位:g))×100
【0076】
[試験例1]
下記表1の配合により、容器詰めゼリー状食品を作成した(乳酸カルシウムとジェランガムの配合については表2参照)。具体的には、水に各原料を加えて予め95℃に加熱した後にスパウト付きパウチ容器に180g充填し、26℃の恒温槽で15分間冷却し、更に24時間室温で放置することにより、調製例1-1~調製例1-8の容器詰めゼリー状食品を作成した。なお、得られたゼリー状食品のpHを測定したところ、おおむねpH3.5~3.7の範囲のpHであった。
【0077】
【表1】
【0078】
調製した容器詰めゼリー状食品を60℃の恒温器で保管し、1週間もしくは2週間後に取り出して、ゲル強度及び離水率を測定した。その測定に際しては、測定まで60℃の水槽に保管した。また、コントロールとして60℃に保管しないものについて、ゲル強度及び離水率を測定した。その測定に際しては、一旦60℃の水槽に入れて加温してから測定に供した。
【0079】
一方、60℃1週間保管後の食感について、以下のようにして官能評価を行った。
【0080】
(官能評価)
官能評価は、専門パネラー5名により行い、ゼリー状食品がゲル感(弾力性、サクイ感を感じる)、瑞々しさ(離水が適度にあることで、単なるゲルではなく、ゼリー飲料として感じる)、ボディ感(弾力性を適度に有することで食べ応えがあると感じる)を有するかを評価した。得られた評価結果を下記の基準でまとめた。
【0081】
(評価基準)
〇:ある(5人中4人~5人)
△:ややある(5人中2人~3人)
×:ない(5人中0人~1人)
【0082】
表2には、各調製例における乳酸カルシウムとジェランガムの配合量と、ゲル強度、離水率、食感評価の結果をまとめて示す。
【0083】
【表2】
【0084】
その結果、調製例1-1~調製例1-8のゲル強度の結果にみられるように、60℃に保管しないコントロールに比べ、60℃で保管すると1週間後にはゲル強度の低下が著しかったが、更にもう1週間の保管の間のゲル強度の低下については、下げ止まる傾向となった。
【0085】
特に、調製例1-1や調製例1-2では、60℃で7日間保管した後のゲル強度が0.22N又は0.23Nであり、食感評価においてはボディ感が不足しゲル感にやや欠けるという評価であった。
【0086】
これに対して、調製例1-3~調製例1-8では、60℃で7日間保管した後のゲル強度が0.45N(調製例1-5)~1.64N(調製例1-8)の範囲のものが得られ、60℃で7日間保管した後の離水率としては1.1%(調製例1-8)~4.3%(調製例1-6)の範囲のものが得られた。食感評価においても、おおむね良好な結果であった。ただし、調製例1-7や調製例1-8では離水が少ないため、瑞々しさにやや欠けるという評価であった。
【0087】
以上から、ゼリー状食品を60℃前後で保管して加温状態で提供することを想定すると、ゼリー状食品の食感について、低温や常温下とは異なるゲル性状の最適化が必要であることが明らかとなった。
【0088】
[試験例2]
下記表3の配合により、試験例1と同様にして、容器詰めゼリー状食品を作成した(ジェランガム以外の他の増粘多糖類の配合については表4参照)。
【0089】
得られた調製例2-1~調製例2-7の容器詰めゼリー状食品について、60℃で保管したときのゲル強度及び離水率を、試験例1と同様にして測定し、また、60℃1週間保管後の食感について、試験例1と同様にして官能評価を行った。なお、食感の官能評価では、試験例1で行った評価項目に加えて、離水感(離水の粘性)について、ゲル以外の液体の部分が舌の上でネトつきがあるかどうかの観点から、パネラーの評価を集約した。また、フレーバーリリースについて、鼻に抜ける香りが強いか弱いかどうかの観点から、パネラーの評価を集約した。
【0090】
【表3】
【0091】
表4には、各調製例における乳酸カルシウムとジェランガムの配合量と、ゲル強度、離水率、食感評価の結果をまとめて示す。なお、調製例2-1については試験例1の調製例1-6と同じ配合のゼリー状食品であり、ゲル強度、離水率の結果は、調製例1-6の結果で代用した。
【0092】
【表4】
【0093】
その結果、表4に示されるように、調製例2-2~調製例2-7では、調製例2-1(試験例1の調製例1-6)と同様に、60℃で7日間保管した後のゲル強度が0.58N(調製例2-3)~0.84N(調製例2-6)の範囲のものが得られ、60℃で7日間保管した後の離水率としては2%(調製例2-6)~4.2%(調製例2-3)の範囲のものが得られた。
【0094】
一方、食感評価においては、ジェランガム以外の他の増粘多糖類を配合しない調製例2-1(試験例1の調製例1-6)では、離水感についてサラッとしているという評価であり、フレーバーリリースが強いという評価であったのに対して、ジェランガムに加えてキサンタンガム、ローカストビーンガム、又はグルコマンナンを配合した調製例2-2、調製例2-3、調製例2-5では、離水感について粘性があるという評価であり、フレーバーリリースが適度に良いという評価であった。また、ジェランガムに加えてグアガム又はLMペクチンを配合した調製例2-4、調製例2-6では、離水感についてサラッとしているという評価であり、フレーバーリリースが適度に良いという評価であった。また、ジェランガムに加えてネイティブジェランガムを配合した調製例2-7では、離水感についてゲルの塊が大きく離水感はあまりないという評価であり、フレーバーリリースが適度に良いという評価であった。
【0095】
これらの結果は、ジェランガム以外に配合した他の増粘多糖類が、その増粘多糖類の種類によっては離水に適度な粘性を付与したためであると考えられた。また、ジェランガム以外に配合した他の増粘多糖類により、フレーバーの急激な放散を抑えることができたためであると考えられた。
【0096】
以上から、ジェランガムに加えて更に増粘多糖類を併用することにより、ゼリー状食品を60℃前後で保管して加温状態で提供することを想定したとき、ゲル感にかかわる食感を大きく変えることなく、増粘多糖類の種類によっては離水に適度な粘性を付与するとともに、より良好なフレーバーリリースを呈するゼリー状食品が得られることが明らかとなった。
【0097】
[試験例3]
試験例2の調製例2-1のゼリー状食品を、容器として、スパウト付きパウチ容器の代わりに、透明のポリプロピレン製カップに充填して容器詰めし、60℃で7日間保管した後、変色の度合いについて観察し、スパウト付きパウチ容器に充填したものとの比較を行った。
【0098】
その結果、図5(2)に示されるように、透明のポリプロピレン製カップに充填したものについては、茶色への変色が著しかったのに対して、図5(1)に示されるように、パウチ容器で保管したものについては、その変色が抑えられた。
【0099】
これは、スパウト付きパウチ容器では透明のポリプロピレン製カップに比べて、酸素透過性が低く、酸素による変質が抑えられたためであると考えられた。
【符号の説明】
【0100】
100、200 容器詰めゼリー状食品
101、201 容器
102 前面部
103 後面部
104 側面部
105 底面部
106 スパウト
107 キャップ
108 側端シール部
109 下端シール部
110 上端シール部
111 スパウト接合部
112 吸引管
113 ゼリー状食品
114 空間
115 折れ線
116 折れ線
120 加温器
121 ハウジング
122 載置面
図1
図2
図3
図4
図5