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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20230411BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20230411BHJP
   C08L 33/10 20060101ALI20230411BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20230411BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20230411BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20230411BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20230411BHJP
   C08K 5/57 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C08L101/02
C08L71/02
C08L33/10
C08K5/05
C08K5/09
C08K5/07
C08K5/541
C08K5/57
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019008069
(22)【出願日】2019-01-21
(65)【公開番号】P2020117583
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】神保 裕介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 担
(72)【発明者】
【氏名】砂山 佳孝
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/016422(WO,A1)
【文献】特開2007-308692(JP,A)
【文献】特開2006-316287(JP,A)
【文献】特開2000-129147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に2個以上の主鎖末端基を有し、1分子中に平均して下式1で表される反応性ケイ素基を0.5個超有する、数平均分子量が10,000~60,000である重合体と、4価の錫触媒と、炭素数1~6のアルキルアルコール、下式4で表される炭素数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシシラン、1価のカルボン酸、及び下式2で表されるジケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物Aと、を含み、
前記4価の錫触媒は、4価の錫原子と前記化合物Aの残基を構成成分とする4価の錫触媒を含み、
前記重合体100質量部に対する、前記4価の錫触媒の含有量が0.1質量部以上1.0質量部未満である、硬化性組成物。
-SiX 3-a 式1
[式中、Rは炭素数1~20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。aは1~3の整数を示し、aが1の場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよく、aが2又は3の場合、Xは互いに同一でも異なっていてもよい。]
-C(O)-(CH-C(O)-R 式2
[式中、nは1~6の整数を示し、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基を示す。]
【化1】
[式中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。但し、R~Rの全てが水素原子となることはない。]
【請求項2】
前記重合体は、オキシアルキレン重合体、又は(メタ)アクリル酸エステル重合体の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
硬化性組成物における前記重合体の含有割合は1~80質量%である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記4価の錫触媒100モルに対する前記化合物Aの含有量は、100~2,500モルである、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記化合物Aは、メタノール、テトラエトキシシラン、酢酸及びアセチルアセトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
分子内に反応性ケイ素基を有する重合体は、室温においても、湿分等による反応性ケイ素基の加水分解反応等を伴うシロキサン結合の形成によって架橋し、硬化物が得られるという性質を有することが知られている。
【0003】
これらの反応性ケイ素基を有する重合体は、加水分解反応により硬化して、柔軟性を有するゴム状硬化物を形成する。
このような重合体を含む硬化性組成物は、シーリング材、接着剤、コーティング剤等として広く使用されている。
【0004】
これらの反応性ケイ素基を有する重合体の中で、主鎖骨格がオキシアルキレン重合体、飽和炭化水素重合体、アクリル酸アルキルエステル重合体、及びメタクリル酸アルキルエステル重合体は、既に工業的に生産され、シーリング材、接着剤、塗料等の用途に広く使用されている。これらの反応性ケイ素基を有する重合体を含む硬化性組成物をシーリング材として用いる場合には、硬化性、被着物に対する接着性、硬化物の伸び物性に加えて、屋外の環境に長時間さらされることにより発生する目地の構造的な伸縮に追随できる復元性を有し、亀裂が発生しにくいことが求められる。
【0005】
特許文献1には、分子内に反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン重合体100質量部に対して、4価の錫触媒であるジブチル錫ジラウレートを5質量部含む硬化性組成物が記載されている。そして、前記硬化性組成物を硬化した硬化物は、被着体に対する接着性は良好であるものの、復元性に劣ることが記載されている。この復元性の低下は、触媒として使用した4価の錫触媒が硬化物の構造内に取り込まれることに起因すると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2000/56817号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、硬化物の復元性の向上を目的に硬化性組成物中の重合体に対する4価の錫触媒の含有量の検討を行ったところ、4価の錫触媒の含有量を減らすことで、優れた復元性が得られることを見出した。
【0008】
一方、4価の錫触媒の含有量を減らすと、高温(例えば、70℃で1週間)で保存した後の硬化性組成物の硬化に要する時間が、保存前と比較して非常に長くなり、硬化性組成物の硬化性が低下することが判明した。硬化性組成物をシーリング材として使用する場合、シーリング材施工後に、硬化に長時間を要すると、次工程に移れないという問題がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、硬化物の被着体への追随性、硬化物の伸び等の硬化物の物性が良好であり、高温での保存後も硬化性の低下を抑制する硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 1分子中に2個以上の主鎖末端基を有し、1分子中に平均して下式1で表される反応性ケイ素基を0.5個超有する、数平均分子量が10,000~60,000である重合体と、4価の錫触媒と、炭素数1~6のアルキルアルコール、下式4で表される炭素数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシシラン、1価のカルボン酸、及び下式2で表されるジケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物Aと、を含み、前記4価の錫触媒は、4価の錫原子と前記化合物Aの残基を構成成分とする4価の錫触媒を含み、前記重合体100質量部に対する、前記4価の錫触媒の含有量が0.1質量部以上1.0質量部未満である、硬化性組成物。
-SiX 3-a 式1
[式中、Rは炭素数1~20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。aは1~3の整数を示し、aが1の場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよく、aが2又は3の場合、Xは互いに同一でも異なっていてもよい。]
-C(O)-(CH-C(O)-R 式2
[式中、nは1~6の整数を示し、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基を示す。]
【化1】
[式中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。但し、R~Rの全てが水素原子となることはない。]
[2] 前記重合体は、オキシアルキレン重合体、又は(メタ)アクリル酸エステル重合体の少なくとも一方を含む、[1]に記載の硬化性組成物。
[3] 硬化性組成物における前記重合体の含有割合は1~80質量%である、[1]又は[2]に記載の硬化性組成物。
] 前記4価の錫触媒100モルに対する、前記化合物Aの含有量は、100~2,500モルである、[1]~[]のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
] 前記化合物Aは、メタノール、テトラエトキシシラン、酢酸及びアセチルアセトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、[1]~[]のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬化物の被着体への追随性、硬化物の伸び等の硬化物の物性が良好であり、高温での保存後も硬化性の低下を抑制する硬化性組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び請求の範囲における用語の定義及び記載の仕方は、以下のとおりである。
「主鎖」とは、2個以上の単量体の連結により形成された重合鎖をいう。後述のオキシアルキレン重合体における「主鎖」は、開始剤の残基とアルキレンオキシド単量体に基づく繰り返し単位を含む部分をいう。
「主鎖末端基」とは、主鎖を構成する末端の原子に結合する原子又は原子団のことである。
「活性水素含有基」とは、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、第一級アミンから水素原子を除去した1価の官能基、ヒドラジド基及びスルファニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基のことである。
「活性水素」とは、前記活性水素含有基に基づく水素原子である。
「不飽和基」とは、不飽和性の二重結合を含む1価の基であり、特に断らない限り、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基のことである。
【0013】
「オキシアルキレン重合体」とは、主鎖骨格がアルキレンオキシド単量体に基づく繰り返し単位を含む重合体のことである。
「前駆重合体」とは、反応性ケイ素基導入前の重合体であって、開始剤の活性水素にアルキレンオキシド単量体を重合させた主鎖末端基が水酸基であるオキシアルキレン重合体のことである。
「(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に基づく繰り返し単位を含む重合体を意味する。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体とは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル又はこれら両者の混合物を意味する。
「シリル化率」は、オキシアルキレン重合体の主鎖末端基における、反応性ケイ素基、活性水素含有基、不飽和基のいずれかである末端基の数の合計に対する前記反応性ケイ素基の数の割合である。シリル化率の値はNMR分析によって測定できる。また、後述のシリル化剤により、オキシアルキレン重合体の主鎖末端基における末端基に前記反応性ケイ素基を導入する際の、末端基の数に対する前記シリル化剤の仕込当量で表すこともできる。
「シリル化剤」とは、活性水素含有基又は不飽和基と反応する官能基と、反応性ケイ素基とを有する化合物を意味する。
「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
【0014】
「主鎖末端基における末端基の数」は、例えば、後述の重合体Aの前駆重合体に不飽和基を導入した後、JIS K 0070(1992)に規定されたよう素価の測定方法の原理に基づいた滴定分析により、直接的に不飽和基濃度を測定する方法で算出した値である。
後述のオキシアルキレン重合体における「主鎖末端基の数」は、後述の、開始剤の活性水素の数と、又は前駆重合体の主鎖末端基の数と同じ数である。
【0015】
「水酸基換算分子量」とは、アルキレンオキシド単量体に基づく繰り返し単位を含む重合体である場合において、開始剤や前駆重合体の水酸基価をJIS K 1557(2007)に基づいて算出し、「56,100/(水酸基価)×(開始剤の活性水素の数、又は、前駆重合体の主鎖末端基の数)」として算出した値である。オキシアルキレン重合体の水酸基換算分子量は、後述のオキシアルキレン重合体換算分子量と同等か、若干小さい傾向がある。
【0016】
本明細書における「数平均分子量」(以下、「Mn」という。)及び「重量平均分子量」(以下、「Mw」という。)とは、テトラヒドロフラン(以下、「THF」という。)を溶離液とするゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)を使用し、水酸基換算分子量既知のオキシアルキレン重合体を用いて検量線を作成して測定したオキシアルキレン重合体換算分子量のことである。分子量分布とは、MwとMnより算出した値であり、Mnに対するMwの比率(Mw/Mn)である。
【0017】
主鎖末端基1個当たりの分子量は、前記前駆重合体における前記水酸基価の値を「56,100/(前駆重合体の水酸基価)」の式に当てはめて算出するか、又は、GPC測定により求めたMnと、水酸基価から求めた主鎖末端基1個当たりの分子量の検量線を、開始剤の活性水素の数毎にあらかじめ作成しておき、求めたいMnの測定結果を、この関係性に当てはめることで、主鎖末端基1個当たりの分子量に換算する方法で算出してもよい。
【0018】
本明細書におけるポリスチレン換算数平均分子量(以下、「PS-Mn」という。)及びポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「PS-Mw」という。)とは、THFを溶離液とするGPCを使用し、分子量既知のポリスチレン重合体を用いて検量線を作成して測定した、ポリスチレン換算分子量のことである。オキシアルキレン重合体においては、PS-Mn及びPS-Mwは、上述のMn及びMwより大きく測定される傾向がある。PS-Mw/PS-Mnで計算した値は上述のMw/Mnとほぼ同等の値となる。
【0019】
本発明の硬化性組成物は、1分子中に2個以上の主鎖末端基を有し、1分子中に平均して下記反応性ケイ素基を0.5個超有し、数平均分子量が10,000~60,000である重合体と、4価の錫触媒と、炭素数1~6のアルキルアルコール、炭素数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシシラン、1価のカルボン酸、及び下式2で表されるジケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物Aを含む。さらに、前記重合体100質量部に対する、前記4価の錫触媒の含有量が1.0質量部未満である。
【0020】
<重合体>
本発明の硬化性組成物に含まれる重合体は、1分子中に2個以上の主鎖末端基を有し、1分子中に平均して下記反応性ケイ素基を0.5個超有し、Mnが10,000~60,000である重合体(以下、「重合体X」という。)である。
【0021】
(反応性ケイ素基)
反応性ケイ素基は、下式1で表わされる。反応性ケイ素基は、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成して架橋し得る。シロキサン結合を形成する反応は4価の錫触媒によって促進される。
-SiX 3-a 式1
【0022】
前記式1において、Rは炭素数1~20の1価の有機基を示す。Rは加水分解性基を含まない。
は、炭素数1~20の炭化水素基及びトリオルガノシロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0023】
は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、α-クロロアルキル基及びトリオルガノシロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、α-クロロメチル基、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基及びトリフェニルシロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。反応性ケイ素基を有する重合体の硬化性と硬化性組成物の安定性が良い点からメチル基又はエチル基が好ましい。硬化物の硬化速度が速い点からα-クロロメチル基が好ましい。容易に入手できる点からメチル基が特に好ましい。
【0024】
前記式1において、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。
加水分解性基としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、スルファニル基、アルケニルオキシ基が例示できる。
加水分解性が穏やかで取扱いやすい点からアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。アルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基であると、シロキサン結合を速やかに形成し硬化物中に架橋構造を形成しやすく、硬化物の物性値が良好となりやすい。
【0025】
前記式1において、aは1~3の整数を示す。aが1の場合、Rは互いに同一でも異なってもよい。aが2以上の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。
aは1又は2が好ましく、aは2がより好ましい。
【0026】
前記式1で表される反応性ケイ素基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリス(2-プロペニルオキシ)シリル基、トリアセトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジメトキシエチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基、(α-クロロメチル)ジメトキシシリル基、(α-クロロメチル)ジエトキシシリル基が例示できる。活性が高く良好な硬化性が得られる点から、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基が好ましく、ジメトキシメチルシリル基及びトリメトキシシリル基がより好ましい。
【0027】
本発明の硬化性組成物に含まれる重合体Xは1種でもよく、2種以上でもよい。本発明の硬化性組成物は、重合体Xとして、オキシアルキレン重合体(以下「重合体A」という。)又は(メタ)アクリル酸エステル重合体(以下、「重合体B」という。)の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0028】
<重合体A>
本発明の硬化性組成物に含まれる重合体Aは1種でもよく、2種類以上でもよい。
重合体Aの主鎖は、1種以上のアルキレンオキシド単量体の重合により形成されたオキシアルキレン重合体からなる重合鎖である。2種以上のアルキレンオキシド単量体の重合により形成された共重合鎖である場合、それらのアルキレンオキシド単量体は、ブロック重合体を形成していてもよくランダム重合体を形成していてもよい。
オキシアルキレン重合体からなる重合鎖として、エチレンオキシド単量体からなる重合鎖、プロピレンオキシド単量体からなる重合鎖、ブチレンオキシド単量体からなる重合鎖、テトラメチレンオキシド単量体からなる重合鎖、エチレンオキシド単量体とプロピレンオキシド単量体の共重合鎖、プロピレンオキシド単量体とブチレンオキシド単量体の共重合鎖が例示できる。特にプロピレンオキシド単量体からなる重合鎖が好ましい。
【0029】
重合体Aは、1分子中に主鎖末端基を2~6個有するものが好ましく、2~4個有するものがより好ましく、2個又は3個有するものがさらに好ましく、3個有するものが特に好ましい。
重合体Aの主鎖末端基における末端基は、前記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基及び不飽和基のいずれかであり、前記式1で表される反応性ケイ素基、水酸基及びアリル基からなる群より選ばれる1種以上の基が好ましい。それぞれの前記末端基は互いに同じであっても、異なってもよい。
重合体Aは、前記反応性ケイ素基を1つの主鎖末端基あたりに平均して0.5個超2.0個以下有するものが好ましく、硬化物の引張強度が良好となりやすいため、0.6個~1.9個有するものがより好ましい。
重合体Aは、前記反応性ケイ素基を1分子あたりに平均して0.5個超6個以下有するものが好ましく、硬化物の引張強度が良好となりやすいため、1.2個~3.8個有するものがより好ましい。
【0030】
重合体Aの1つの主鎖末端基当たりのMnは2,500以上であり、2,500~20,000が好ましく、3,000~10,000がより好ましい。前記範囲内であると、硬化物の伸び物性に優れやすく、粘度が充分に低くなりやすい。
重合体AのMnは5,000~60,000が好ましく、5,000~50,000がより好ましく、6,000~40,000がさらに好ましい。前記範囲内であると、硬化物の伸び物性に優れやすく、粘度が充分に低くなりやすい。
重合体AのPS-Mnは5,500~84,000が好ましく、6,000~70,000がより好ましく、6,600~56,000がさらに好ましい。前記範囲内であると、硬化物の伸び物性に優れやすく、粘度が充分に低くなりやすい。
重合体Aの分子量分布は1.8以下が好ましい。良好な伸び物性が得られやすいため、分子量分布は小さいほうが好ましく、1.0~1.5がより好ましく、1.02~1.4がさらに好ましく、1.04~1.2が特に好ましい。
【0031】
重合体Aは、後述の前駆重合体の主鎖末端基に前記反応性ケイ素基を、1つの主鎖末端基に平均して0.5個超2.0個以下導入して得られるものが好ましく、引張強度が良好となる観点から0.6~1.9個導入して得られるものがより好ましい。
前記前駆重合体は、活性水素含有基を有する開始剤の活性水素に、開環重合触媒の存在下で、アルキレンオキシド単量体を開環付加重合させたオキシアルキレン重合体である。 前駆重合体としては、水酸基を有する開始剤にアルキレンオキシド単量体を開環付加重合させた、主鎖末端基が水酸基である前駆重合体が好ましい。
【0032】
重合体Aの製造方法は、前記前駆重合体の1つの主鎖末端基に対して不飽和基を1個又は2個導入した後、前記不飽和基とシリル化剤を反応させる方法、又は前記前駆重合体の主鎖末端基の活性水素含有基とイソシアネートシラン化合物をウレタン化反応させる方法が好ましい。
前駆重合体は、活性水素含有基を有する開始剤の活性水素に、開環重合触媒の存在下で、アルキレンオキシド単量体を開環付加重合させたオキシアルキレン重合体である。開始剤の活性水素の数と、前駆重合体の主鎖末端基の数と、重合体Aの主鎖末端基の数は同じである。
前駆重合体は、水酸基を有する開始剤にアルキレンオキシド単量体を開環付加重合させた、主鎖末端基における末端基が水酸基である重合体が好ましい。
前記開始剤としては、水酸基を2~6個有する開始剤が好ましく、水酸基を2~4個有する開始剤がより好ましく、水酸基を2個有する開始剤又は水酸基を3個有する開始剤がさらに好ましく、3個有するものが特に好ましい。開始剤は1種類を単独で使用してもよく2種類以上を併用してもよい。
水酸基を2個有する開始剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、低分子量のポリオキシプロピレングリコールが例示できる。
水酸基を3個有する開始剤としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、低分子量のポリオキシプロピレントリオールが例示できる。
【0033】
開始剤にアルキレンオキシド単量体を開環付加重合させる際の、開環重合触媒としては、従来公知の触媒を用いることができ、例えば、KOHのようなアルカリ触媒、有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒、複合金属シアン化物錯体触媒、ホスファゼン化合物からなる触媒が挙げられる。
重合体Aの分子量分布を狭くすることができ、粘度の低い硬化性組成物が得られやすい点から複合金属シアン化物錯体触媒が好ましい。複合金属シアン化物錯体触媒は、従来公知の化合物を用いることができ、複合金属シアン化物錯体を用いた重合体の製造方法も公知の方法を採用できる。例えば、国際公開公報第2003/062301号、国際公開公報第2004/067633号、特開2004-269776号公報、特開2005-15786号公報、国際公開公報第2013/065802号、特開2015-010162号公報に開示される化合物及び製造方法を用いることができる。
重合体Aの前駆重合体としては、全主鎖末端基が水酸基である前駆重合体が好ましい。
【0034】
重合体Aの製造方法は、前駆重合体の1つの主鎖末端基に対して不飽和基を1個又は2個導入した後、前記不飽和基とシリル化剤を反応させる方法、又は前記前駆重合体の主鎖末端基の活性水素含有基とイソシアネートシラン化合物をウレタン化反応させる方法が好ましい。
シリル化剤としては、不飽和基と反応して結合を形成し得る基(例えばスルファニル基)及び前記反応性ケイ素基の両方を有する化合物、ヒドロシラン化合物(例えばHSiX3-a、ただし、X、R及びaは前記式1と同様である。)が例示できる。具体的には、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリス(2-プロペニルオキシ)シラン、トリアセトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メトキシエチルシラン、メチルジイソプロポキシシラン、(α-クロロメチル)ジメトキシシラン、(α-クロロメチル)ジエトキシシランが例示できる。活性が高く良好な硬化性が得られる点から、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシランが好ましく、メチルジメトキシシラン又はトリメトキシシランがより好ましい。
イソシアネートシラン化合物としては、例えば、特開2011-178955号に記載される、従来公知のイソシアネートシラン化合物を用いることができる。
前駆重合体の1つの主鎖末端基に対して不飽和基を1個導入した後、前記不飽和基とシリル化剤を反応させる方法、又は前記前駆重合体の主鎖末端基の活性水素含有基とイソシアネートシラン化合物をウレタン化反応させる方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、特公昭45-36319号、特開昭50-156599号、特開昭61-197631号、特開平3-72527号、特開平8-231707号、特開2011-178955号、米国特許3632557、米国特許4960844号の各公報に提案されている方法が挙げられる。
【0035】
前駆重合体の1つの主鎖末端基に対して不飽和基を2個導入する方法としては、前駆重合体に、アルカリ金属塩を作用させた後、不飽和基を有するエポキシ化合物を反応させ、次いで不飽和基を有するハロゲン化炭化水素化合物を反応させる方法が好ましい。
【0036】
前駆重合体の1つの主鎖末端基に不飽和基を1個よりも多く導入する方法としては、公知の方法を特に制限なく用いることができ、例えば、国際公開第2013/180203号公報、国際公開第2014/192842号公報、特開2015-105293号、特開2015-105322号、特開2015-105323号、特開2015-105324号、国際公開第2015/080067号公報、国際公開第2015/105122号公報、国際公開第2015/111577号公報、国際公開第2016/002907号公報、特開2016-216633号、特開2017-39782号に記載される方法を用いることができる。
【0037】
前記反応により、前駆重合体の主鎖末端基に前記不飽和基を有するエポキシ化合物に由来する不飽和基が導入され、次いで前記ハロゲン化炭化水素化合物に由来する不飽和基が導入された中間体が得られる。中間体は主鎖末端基における末端基の一部が未反応の活性水素含有基であってもよい。
前記中間体の1分子中に含まれる活性水素含有基の数は、貯蔵安定性の点から0.3個以下が好ましく、0.1個以下がより好ましい。
【0038】
重合体Aのシリル化率は50モル%超100モル%以下が好ましく、55~98モル%がより好ましく、60~97モル%がさらに好ましい。
硬化性組成物が、2種以上の重合体Aを含む場合、重合体A全体における平均のシリル化率が前記の範囲内であればよい。
【0039】
<重合体B>
本発明の硬化性組成物に含まれる重合体Bは1種でもよく、2種類以上でもよい。
重合体Bの主鎖は(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体を重合して形成される。
重合体Bにおける反応性ケイ素基は、主鎖末端基に導入されていても、側鎖に導入されていても、主鎖末端基と側鎖の両方に導入されていてもよい。
重合体Bの主鎖は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく単位のほかに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な不飽和基を有する単量体に基づく単位を有してもよい。
重合体Bを構成する単量体としては、例えば、特公平3-14068号公報、特開平6-211922号公報、特開平11-130931号公報に記載される、従来公知の単量体を用いることができる。
前記単量体と共重合させる反応性ケイ素基及び不飽和基を含む単量体としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)ビニルシラン、(メタ)アクリル酸-3-(メチルジメトキシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸-3-(トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸-3-(トリエトキシシリル)プロピルが例示できる。これらは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
重合体Bを構成する全単量体に対して、(メタ)アクリル酸エステル単量体は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
【0040】
重合体Bは、特開2006-257405号公報、特開2006-37076号公報、特開2008-45059号公報などに記載の従来公知の重合方法で重合できる。重合に必要な開始剤などの副資材についても従来公知のものを用いることができ、反応温度や反応圧力などの反応条件も適宜選択できる。
重合方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合又はバルク重合によるラジカル重合開始剤を用いた重合方法やリビングラジカル重合が例示できる。リビングラジカル重合法としては、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁に示されているようなコバルトポルフィリン錯体を用いるもの、特表2003-500378号公報に示されているようなニトロオキサイドラジカルを用いるもの、特開平11-130931号公報に示されているような有機ハロゲン化物やハロゲン化スルホニル化合物などを開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP法)が例示できる。リビングラジカル重合で得られる重合体は、分子量分布が狭く、低粘度である傾向がある。
【0041】
重合体Bの主鎖末端基は、重合時に用いる単量体の種類や副資材によるが、例えば、重合体Bを構成する単量体における不飽和結合基に基づく単位、重合開始剤に基づく基又は分子量調整剤を用いる場合には、分子量調整剤に基づく単位が挙げられる。
重合体BのMnは、5,000~60,000が好ましく、5,000~50,000がより好ましく、6,000~40,000がさらに好ましい。前記範囲の下限値以上であると、硬化物の伸び物性に優れやすく、上限値以下であると、低粘度になりやすく作業性に優れやすい。
重合体BのPS-Mnは、5,500~84,000が好ましく、6,000~570,000がより好ましく、6,600~56,000がさらに好ましい。前記範囲の下限値以上であると、硬化物の伸び物性に優れやすく、上限値以下であると、低粘度になりやすく作業性に優れやすい。
重合体Bの分子量分布は、5.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましい。
【0042】
重合体Bの1分子あたりの反応性ケイ素基の数の平均は0.5個超であり、1.0個以上が好ましい。硬化後の強度の点から1.2個以上が好ましく、1.6個以上がより好ましい。硬化物の伸びが良好となる点から4.0個以下が好ましく、3.0個以下がより好ましい。
重合体Bの1分子あたりの反応性ケイ素基の数の平均は「重合体B中の反応性ケイ素基の濃度[mol/g]×重合体BのPS-Mn」で算出する。重合体B中の反応性ケイ素基の濃度[mol/g]は、NMRにより測定できる。
【0043】
<重合体X>
重合体Xは上記重合体A又は重合体Bのいずれか一方又は両方を含むことが好ましい。重合体Xにおける、重合体Aと重合体Bの合計の割合は、重合体Xに対し、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。上記下限値以上であれば、硬化物の物性が良好となりやすい。
重合体Aと重合体Bとを含む場合の、重合体Aに対する重合体Bの質量比(重合体B/重合体A)は、5~45/55~95が好ましく、10~40/60~90がより好ましく、15~35/65~85がさらに好ましい。上記範囲内であれば、硬化性に優れやすい。
重合体Xは重合体A及び重合体B以外の重合体を含んでもよい。前記重合体としては、1分子中に2個以上の主鎖末端基を有し、1分子中に平均して前記式1で表される反応性ケイ素基を0.5個超有するものであれば特に重合体の主鎖骨格は限定されない。主鎖骨格としては、例えば、飽和炭化水素系重合体、ポリエステル系重合体、重合体B以外のビニル系重合体、ポリサルファイド系重合体、ポリアミド系重合体、ポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体が挙げられる。
【0044】
<化合物A>
本発明の硬化性組成物は、炭素数1~6のアルキルアルコール、炭素数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシシラン、1価のカルボン酸、及び下式2で表されるジケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物Aを含有する。化合物Aを含有することで、本発明の硬化性組成物は、高温で保存した後も硬化性の低下が抑制される。
【0045】
炭素数1~6のアルキルアルコールとしては、下式3で表されるアルコールが例示できる。
-OH 式3
前記式3において、Rは炭素数1~6の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。
直鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基が例示できる。分岐状のアルキル基としては、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、2-メチルブチル基、2-エチルブチル基、3-メチルブチル基、3-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基が例示できる。
【0046】
前記式3で表されるアルコールとしては、炭素数1~6の直鎖又は分岐のアルキル基を有する1価のアルコールが例示できる。具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、イソブタノールが例示できる。触媒活性を維持しやすい観点から、炭素数1~4の直鎖のアルキル基を有する1価のアルコールが好ましく、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールがさらに好ましい。
【0047】
炭素数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシシランとしては、下式4で表されるアルコキシシランが例示できる。
【0048】
【化2】
【0049】
前記式4においてR~Rはそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。但し、R~Rの全てが水素原子となることはない。硬化性が良好となりやすい観点から、R~Rは同一であることが好ましい。
~Rとしては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基が例示できる。
【0050】
前記式4で表される炭素数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランが例示できる。触媒活性を維持しやすい観点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランが好ましく、テトラエトキシシランがより好ましい。
【0051】
1価のカルボン酸としては、下式5で表される1価のカルボン酸が例示できる。
【0052】
【化3】
【0053】
前記式5においてR10は水素原子又は炭素数1~10の脂肪族炭化水素基を示す。前記炭化水素基としては、直鎖又は分岐の炭素数1~10のアルキル基が好ましい。
直鎖又は分岐の炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、2-メチルブチル基、2-エチルブチル基、2-プロピルブチル基、3-メチルブチル基、3-エチルブチル基、3-プロピルブチル基、2-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、2-プロピルペンチル基、3-メチルペンチル基、3-エチルペンチル基、3-プロピルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-エチルペンチル基、4-プロピルペンチル基、2-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、3-プロピルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、4-プロピルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、5-エチルヘキシル基、5-プロピルヘキシル基等が例示できる。
【0054】
前記式5で表される1価のカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸等が例示できる。触媒活性が維持される観点から、プロピオン酸又は酢酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。
【0055】
下式2で表される化合物は、ジケトンである。
-C(O)-(CH-C(O)-R 式2
【0056】
前記式2においてnは1~6の整数を示す。nは1~4が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0057】
前記式2において、R、Rはそれぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基を示す。
炭素数1~20のアルキル基としては、炭素数1~20の直鎖又は分岐のアルキル基が例示でき、炭素数1~18の直鎖のアルキル基が好ましく、炭素数1~10の直鎖のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖のアルキル基がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等が例示でき、4価錫に配位しやすい点から、炭素数1~6の直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基がより好ましい。
【0058】
前記式2で表される化合物としては、カルボニル基の酸素原子の水素化により、エノールを形成し、活性水素を有することが可能な化合物が好ましい。
前記式2で表される化合物としては、ヘキサン2,5-ジオン、ヘプタン3,5-ジオン、アセチルアセトン等が例示できる。4価錫の触媒活性を維持しやすい観点から、ヘキサン2,5-ジオン、アセチルアセトンが好ましく、アセチルアセトンがより好ましい。
【0059】
<4価の錫触媒>
本発明の硬化性組成物は、4価の錫触媒を含有する。
4価の錫触媒としては、錫原子を含有する化合物と化合物Aとを混合して得られたものが好ましい。すなわち、4価の錫原子と化合物Aの残基とを構成成分とする4価の錫触媒が好ましい。化合物Aの残基とは、上記化合物Aにおける、水酸基の水素原子を除いた基、カルボキシ基の水素原子を除いた基、化合物Aが複数のカルボニル基を有する場合の1個のカルボニル基の酸素原子が水素化されることにより生成したエノールにおける水素原子を除いた基、アルコキシ基からアルキル基を除いた基などが挙げられる。
前記4価の錫触媒としては、下式6~9で表される4価の錫触媒が好ましい。
【0060】
下式6で表される化合物は、前記式3で表される化合物から水酸基の水素原子を除いた残基を構成成分とする4価の錫触媒である。
【0061】
【化4】
【0062】
前記式6において、R11、R12はそれぞれ独立に直鎖又は分岐の炭素数1~20のアルキル基を示す。
直鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基等が例示できる。
分岐のアルキル基としては、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、2-メチルブチル基、2-エチルブチル基、2-プロピルブチル基、3-メチルブチル基、3-エチルブチル基、3-プロピルブチル基、2-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、2-プロピルペンチル基、3-メチルペンチル基、3-エチルペンチル基、3-プロピルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-エチルペンチル基、4-プロピルペンチル基、2-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、3-プロピルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、4-プロピルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、5-エチルヘキシル基、5-プロピルヘキシル基等が例示できる。
触媒活性の観点から、R11、R12は、それぞれ独立に、ブチル基、オクチル基が好ましい。R11、R12は同一であることがより好ましい。
【0063】
前記式6において、R13、R14はそれぞれ独立に前記式3のRと同様である。R13、R14は同一であることが好ましい。
【0064】
前記式6で表される4価の錫触媒としては、ジブチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ジエトキサイド、ジオクチル錫ジエトキサイド、ジブチル錫ジプロポキサイド、ジオクチル錫ジプロポキサイド、ジブチル錫ジブトキサイド、ジオクチル錫ジブトキサイド、ジブチル錫ジペンチルオキシド、ジオクチル錫ジペンチルオキシド、ジブチル錫ジヘキシルオキシド、ジオクチル錫ジヘキシルオキシドが例示される。
触媒活性の観点から、前記式6で表される4価の錫触媒は、ジブチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ジエトキサイド、ジオクチル錫ジエトキサイドが好ましく、ジブチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジメトキサイドが特に好ましい。
【0065】
下式7で表される化合物は、前記式4で表される化合物から、R~Rのいずれか1個の基を除いた残基を構成成分とする4価の錫触媒である。
【0066】
【化5】
【0067】
前記式7において、R11、R12は前記式6のR11、R12と同様である。
前記式7において、R15~R20はそれぞれ独立に前記式4のR~Rと同様である。R15~R20は同一であることが好ましい。
【0068】
前記式7で表される4価の錫触媒としては、ジブチル錫塩又はジオクチル錫塩と、前記式4で表される炭素数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシシランとの反応物が例示できる。ジブチル錫塩又はジオクチル錫塩としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレイルマレート、ジブチル錫ジブチルマレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジt-デカノエート、ジブチル錫ジステアレート、ジブチル錫ジフタレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオレイルマレート、ジオクチル錫ジブチルマレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジt-デカノエート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジフタレート等が例示でき、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレートが好ましい。前記式4で表される炭素数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランが好ましく、テトラエトキシシランが特に好ましい。
前記式7で表される4価の錫触媒としては、ジブチル錫塩とテトラメトキシシランの反応物、ジブチル錫塩とテトラエトキシシランの反応物、ジブチル錫塩とテトラプロポキシシランの反応物、ジオクチル錫塩とテトラメトキシシランの反応物、ジオクチル錫塩とテトラエトキシシランの反応物、ジオクチル錫塩とテトラプロポキシシランの反応物が好ましく、ジブチル錫塩とテトラメトキシシランの反応物、ジブチル錫塩とテトラエトキシシランの反応物、ジオクチル錫塩とテトラメトキシシランの反応物、ジオクチル錫塩とテトラエトキシシランの反応物がより好ましく、ジブチル錫塩とテトラエトキシシランの反応物、ジオクチル錫塩とテトラエトキシシランの反応物がさらに好ましい。
【0069】
下式8で表される化合物は、前記式5で表される化合物のカルボキシ基の水素原子を除いた残基を構成成分とする4価の錫触媒である。
【0070】
【化6】
【0071】
前記式8において、R11、R12は前記式6のR11、R12と同様である。
前記式8において、R21、R22はそれぞれ独立に前記式5のR10と同様である。R21、R22は同一であることが好ましい。
【0072】
前記式8で表される4価の錫触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジオクチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(2-エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ビス(2-エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート等が例示できる。
触媒活性の観点から、前記式8で表される4価の錫触媒は、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートが好ましく、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレートが特に好ましい。
【0073】
下式9で表される化合物は、前記式2で表される化合物の1個のカルボニル基の酸素原子が水素化されることにより生成したエノールにおける水素原子を除いた残基が構成成分である4価の錫触媒である。
【0074】
【化7】
【0075】
前記式9において、l及びmはそれぞれ独立に0~5の整数を示す。l及びmは0~2が好ましく、0~1がより好ましい。mとlは同一であることが好ましい。
前記式9において、R11、R12は前記式6のR11、R12と同様である。
前記式9において、R23~R26はそれぞれ独立に前記式2のR及びRと同様である。R23~R26は同一であることが好ましい。
【0076】
前記式9で表される4価の錫触媒としては、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(エチルアセトナート)、ジオクチル錫ビス(エチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(メチルプロピオナート)、ジオクチル錫ビス(メチルプロピオナート)等が例示できる。
触媒活性の観点から、前記式9で表される4価の錫触媒は、ジブチル錫ビス(エチルアセトナート)、ジオクチル錫ビス(エチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)が好ましく、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)が特に好ましい。
【0077】
重合体100質量部に対する、4価の錫触媒の含有量は、1.0質量部未満であり、0.8質量部以下が好ましく、0.7質量部以下がより好ましい。重合体100質量部に対する、4価の錫触媒の含有量が、前記上限値の1.0質量部未満であると、硬化物の復元性が良好となり、被着体への追随性に優れる。
【0078】
4価の錫触媒100モルに対する化合物Aの含有量は、100~2,500モルが好ましく、120~2,400モルがより好ましく、150~2,200モルがさらに好ましい。4価の錫触媒100モルに対する化合物Aの含有量が前記範囲の下限値以上であると高温での保存後も硬化性が低下せず、上限値以下であると復元性に優れる。
【0079】
<化合物Aと4価の錫触媒の組み合わせ>
本発明の硬化性組成物に含まれる化合物Aと4価の錫触媒の組み合わせとしては、4価の錫触媒を調製する際に、錫原子を含む化合物と混合する化合物Aと、硬化性組成物に含まれる化合物Aは同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
本発明の硬化性組成物に含まれる化合物Aと4価の錫触媒の具体的な組み合わせとしては、前記式3で表される化合物Aと、前記式6で表される4価の錫触媒との組み合わせ、前記式4で表される化合物Aと、前記式7で表される4価の錫触媒との組み合わせ、前記式5式で表される化合物Aと、前記式8で表される4価の錫触媒との組み合わせ、及び前記式2で表される化合物Aと、前記式9で表される4価の錫触媒との組み合わせがそれぞれ好ましい。
【0080】
前記式3で表される化合物Aと、前記式6で表される4価の錫触媒との組み合わせの場合、前記式3のRと、前記式6のR11~R14が同一であることが好ましい。
前記式4で表される化合物Aと、前記式7で表される4価の錫触媒との組み合わせの場合、前記式4のR~Rと、前記式7のR15~R20が同一であることが好ましい。
前記式5式で表される化合物Aと、前記式8で表される4価の錫触媒との組み合わせの場合、前記式5のR10と、前記式8のR21、R22が同一であることが好ましい。
前記式2で表される化合物Aと、前記式9で表される4価の錫触媒との組み合わせの場合、前記式2のR、Rと前記式9のR23 24が同一であり、かつ前記式2のR、Rと前記式9のR25、26が同一であることが好ましい。
化合物Aと4価の錫触媒が前記組み合わせの場合、硬化性組成物を高温で保存した後の硬化性の低下の抑制効果がさらに高まる。
【0081】
<その他の成分>
硬化性組成物は、前記重合体X、化合物A、4価の錫触媒以外のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、前記重合体X以外のオキシアルキレン重合体及び(メタ)アクリル酸エステル重合体、硬化性化合物、充填剤、可塑剤、チキソ性付与剤、安定剤、接着性付与剤、物性調整剤、粘着性付与樹脂、フィラーなどの補強材、表面改質剤(界面活性剤)、難燃剤、発泡剤、溶剤、シリケートが例示できる。
前記重合体X以外のオキシアルキレン重合体及び(メタ)アクリル酸エステル重合体としては、1分子中に2個の主鎖末端基を有し、1つの主鎖末端に平均して前記式1で表される反応性ケイ素基を0個超0.5個以下有するオキシアルキレン重合体、反応性ケイ素基を有さないオキシアルキレン重合体、及び反応性ケイ素基を有さない(メタ)アクリル酸エステル重合体が例示できる。
硬化性化合物、充填剤、可塑剤、チキソ性付与剤、安定剤、接着性付与剤、物性調整剤、粘着性付与樹脂、フィラーなどの補強材、表面改質剤(界面活性剤)、難燃剤、発泡剤、溶剤、シリケートは、それぞれ、国際公開第2013/180203号、国際公開第2014/192842号、国際公開第2016/002907号、特開2014-88481号公報、特開2015-10162号公報、特開2015-105293号公報、特開2017-039728号公報、特開2017-214541号公報などに記載される従来公知のものを、制限なく組み合わせて用いることができる。
【0082】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物における重合体Xの含有量は、1~80質量%であり、5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
【0083】
硬化性組成物は、硬化性組成物に配合する重合体を合成し、得られた重合体と、重合体以外の配合成分を混合して得られる。
硬化性組成物における重合体A及び重合体Bの合計の含有割合は、1~80質量%が好ましく、5~60質量%がより好ましく、10~50質量%がさらに好ましい。前記範囲の下限値以上であると、機械強度に優れやすく、上限値以下であると、低粘度となりやすく、伸び物性及び耐疲労性に優れやすい。
重合体Aを含有する場合の硬化性組成物における重合体Aの含有割合は、0.5~79.5質量%が好ましく、3~58質量%がより好ましく、7~47質量%がさらに好ましい。前記範囲の下限値以上であると、機械強度に優れやすく、上限値以下であると低粘度となりやすく作業性に優れやすい。
重合体Bを含有する場合の硬化性組成物における重合体Bの含有割合は、0.5~79.5質量%が好ましく、2~57質量%がより好ましく、3~43質量%がさらに好ましい。前記範囲の下限値以上であると、機械強度に優れやすく、上限値以下であると、低粘度となりやすく作業性に優れやすい。
重合体Aと重合体Bを含有する場合の硬化性組成物における重合体Bの含有量に対する重合体Aの含有量の質量比(重合体Aの含有量/重合体Bの含有量)は、(100/1~60)が好ましく、(100/10~50)がより好ましく、(100/20~40)がさらに好ましい。前記範囲内であると、機械強度に優れやすく、伸び物性と復元性に優れやすい。
【0084】
硬化性組成物は、すべての配合成分を予め混合し密封保存して、施工後に空気中の湿気により硬化させる1成分型が好ましい。
1成分型の硬化性組成物は水分を含まないことが好ましい。水分を含む配合成分を予め脱水乾燥するか、また配合混練中に減圧して脱水することが好ましい。
【0085】
硬化性組成物の用途としては、シーリング材(例えば建築用弾性シーリング材、複層ガラス用シーリング材、ガラス端部の防錆・防水用封止材、太陽電池裏面封止材、建造物用密封材、船舶用密封材、自動車用密封材、道路用密封材)、電気絶縁材料(電線・ケーブル用絶縁被覆材)、接着剤が好適である。
特に、硬化物の伸び物性及び伸縮疲労耐久性が要求される用途に好適であり、例えば屋外に施工されるシーリング材が例示できる。
【実施例
【0086】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0087】
[分子量及び分子量分布]
HLC-8220GPC(東ソー社製品名)を用いて、上述の方法により行った。
【0088】
[シリル化率、シリル基数]
主鎖末端基に塩化アリルを用いて不飽和基を導入し、シリル化剤を前記不飽和基と反応させて反応性ケイ素基を導入する方法において、主鎖末端基に導入された不飽和基に対する、シリル化剤の反応性ケイ素基の仕込み当量(モル比)をシリル化率とした。
塩化アリルを用いて導入された不飽和基とシリル化剤の反応において、副反応によりシリル化剤と反応しない不飽和基はおよそ10モル%である。したがって不飽和基の90モル%未満をシリル化剤と反応させる場合には、前記仕込み当量がシリル化率となる。
前駆重合体の主鎖末端基の水酸基とイソシアネートシラン化合物をウレタン化反応させて反応性ケイ素基を導入する方法において、前駆重合体の水酸基に対する、シリル化剤の反応性ケイ素基の仕込み当量(モル比)をシリル化率とした。
【0089】
[タックフリータイム]
後述のように調製した硬化性組成物をシーリングカートリッジ(昭和丸筒社製)に充填、密封した後、70℃の恒温槽中に1週間静置した。次いで、シーリングカートリッジを23℃の恒温室で放冷し、JIS A 1439(2016年)に従って試料が指先に付着しなくなるまでに要した時間(タックフリータイム)を測定した。タックフリータイムは、組成物の硬化性を示す指標であり、値が小さいほど硬化速度が速く、硬化性に優れていることを表す。
【0090】
[弾性復元率]
被着体として、表面にプライマーのMP-2000(セメダイン社製品名)を塗工した表面陽極酸化アルミニウム板を使用し、JIS A 1439 5.2(2016年)の建築用シーリング材の試験方法に準拠してアルミニウム被着体を作製し弾性復元率を評価した。
具体的には、2枚の前記アルミニウム板の間に硬化性組成物を流し込み、温度23℃、湿度50%で7日間養生し、更に温度50℃、湿度65%で7日間養生して、アルミニウム被着体を得た。得られたアルミニウム被着体の2枚のアルミニウム板の間の距離をL0とした。所定の治具を使用し、温度23℃、湿度50%の環境下において、2枚のアルミニウム板の間の距離をL0に対して100%伸長させた。このときの2枚のアルミニウム板の間の距離をL1とした。2枚のアルミニウム板の間の距離をL1としたまま24時間保持した後、治具を外し1時間静置し、次いで、2枚のアルミニウム板の間の距離をL2として測定した。前記L0、L1及びL2の値から、下式10により弾性復元率(単位:%)を求めた。弾性復元率の値が高いほど、復元性に優れる。弾性復元率は70%以上であれば、復元性が良好である。
弾性復元率=(L1-L2/L1-L0)×100 式10
【0091】
(合成例1:重合体A1)
グリセリンを開始剤とし、配位子がt-ブチルアルコールの亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体(以下、「TBA-DMC触媒」という。)を触媒として使用してプロピレンオキシドを重合し、オキシプロピレン重合体(前駆重合体a1)を得た。前駆重合体a1の水酸基換算分子量は24,000であった。次いで、前駆重合体a1の水酸基に対して1.05モル当量のナトリウムメトキシドのメチルアルコール溶液を添加して前駆重合体a1をアルコラート化した。次に、加熱減圧によりメタノールを留去し、さらに前駆重合体a1の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加して主鎖末端基をアリル基に変換した。次に、塩化白金酸六水和物の存在下、前駆重合体a1の変換されたアリル基に対して0.75モル当量のメチルジメトキシシランを添加し、70℃にて5時間反応させて、メチルジメトキシシリル基が主鎖末端基に導入されたオキシプロピレン重合体(重合体A1)を得た。
得られた重合体A1のMnは24,000、主鎖末端基あたりのMnは8,000、Mw/Mnは1.1、PS-Mnは32,000、主鎖末端基あたりの反応性ケイ素基の平均数は0.75であった(表1に示す。以下同様である。)。
【0092】
(合成例2:重合体A2)
プロピレングリコールを開始剤とし、TBA-DMC触媒の存在下に、プロピレンオキシドを重合し、水酸基換算分子量が12,000の前駆重合体a2を得た。次いで、前駆重合体a2の水酸基に対して0.97モル当量のγ-イソシアネートプロピルトリメトキシシランをU860(ジオクチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、日東化成社製品名)を用いて反応させ、トリメトキシシリル基が主鎖末端基に導入されたオキシプロピレン重合体(重合体A2)を得た。
【0093】
(合成例3:重合体A3)
プロピレングリコールを開始剤とし、TBA-DMC触媒の存在下に、プロピレンオキシドを重合し、水酸基換算分子量が18,000の前駆重合体a3を得た。次いで、合成例1と同様にして得られた、末端基がアリル基に変換された前駆重合体a3のアリル基に対して0.73モル当量のジメトキシメチルシランをシリル化剤として添加する他は、合成例1と同様にして、反応性ケイ素基としてジメトキシメチルシリル基が主鎖末端に導入されたオキシプロピレン重合体(重合体A3)を得た。
【0094】
(合成例4:重合体A4)
プロピレングリコールを開始剤とし、配位子がグライムの亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体の存在下に、プロピレンオキシドを重合し、水酸基換算分子量が20,000の前駆重合体a4を得た。次いで、前駆重合体a4の水酸基に対して1.05モル当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加して前駆重合体a4をアルコラート化した。次に、加熱減圧によりメタノールを留去し、さらに前駆重合体a4の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加して主鎖末端における末端基をアリル基に変換した。次に、塩化白金酸六水和物の存在下、前駆重合体a4の変換されたアリル基に対して0.75モル当量のジメトキシメチルシランをシリル化剤として添加し、70℃にて5時間反応させ、反応性ケイ素基としてジメトキシメチルシリル基が主鎖末端に導入されたオキシプロピレン重合体(重合体A4)を得た。
【0095】
(合成例5:重合体A5)
Mnが約2,000で、末端水酸基を2個有するポリオキシプロピレングリコールを開始剤として使用し、TBA-DMC触媒を触媒として使用してプロピレンオキシドを重合し、オキシプロピレン重合体(前駆重合体a5)を得た。前駆重合体a5は、両末端に水酸基を有し、水酸基換算分子量は15,000であった。
前駆重合体a5の水酸基に対して1.15モル当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加した。脱気により減圧下でメタノールを留去し、さらに前駆重合体a5の水酸基に対して1.05モル当量のアリルグリシジルエーテルを添加し、130℃で2時間反応させた。次いで、0.28モル当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加してメタノールを除去し、さらに2.10モル当量の塩化アリルを添加して130℃で2時間反応を行い、末端基をアリル基に変換し、減圧下で系中から未反応の塩化アリルを除去し、主鎖末端にアリル基が導入されたポリオキシプロピレン重合体(重合体Q1)を得た。重合体Q1の1つの主鎖末端に導入されたアリル基は平均2.0個であった。次いで、白金ジビニルジシロキサン錯体の存在下、重合体Q1のアリル基に対して0.80モル当量のジメトキシメチルシランをシリル化剤として添加し、70℃にて5時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下で除去し、反応性ケイ素基としてジメトキシメチルシリル基が主鎖末端に導入された重合体(重合体A5)を得た。
得られた重合体A5のMnは23,000、Mw/Mnは1.07、PS-Mnは31,000、シリル化率は80モル%であった。また重合体A5の主鎖末端の数は2.0、重合体Q1における1分子あたりのアリル基の平均数は4.0、シリル化率に基づいて算出した1分子あたりの反応性ケイ素基の平均数は3.2、1つの主鎖末端あたりの反応性ケイ素基の平均数は1.6であった。
(合成例6:重合体B1)
リビングラジカル重合法を用い、重合反応の終期にアルケニル基を2個有する化合物を反応させる方法で下記重合体B1を合成した。
2Lフラスコに臭化第一銅の8.39g、アセトニトリルの112mLを添加し、窒素気流下70℃で20分間加熱撹拌した。これに2,5-ジブロモアジピン酸ジエチルの17.6g、アクリル酸エチルの130mL、アクリル酸ブチルの720mL、アクリル酸ステアリルの251gを添加し、さらに70℃で40分間加熱撹拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミン(以下、「トリアミン」という。)0.41mLを添加して反応を開始した。引き続き70℃で加熱撹拌を続け、さらにトリアミンの2.05mLを添加した。反応開始から330分後に1,7-オクタジエンの244mL及びトリアミンの4.1mLを添加し、引き続き70℃で加熱撹拌を続け、反応開始から570分後に加熱を停止した。
得られた反応溶液をトルエンで希釈してろ過し、ろ液を減圧加熱処理して、末端にアルケニル基を有するアクリル酸エステル重合体(重合体Q2)を得た。
重合体Q2のMnは22,800、分子量分布は1.40、1H-NMR分析より求めた重合体Q2の1分子あたりのアルケニル基の平均数は2.8個であった。
窒素雰囲気下、2Lフラスコに、得られた上記重合体Q2の全量、酢酸カリウムの17.2g、N,N-ジメチルアセトアミドメチル(以下、「DMAc」という。)の700mLを添加し、100℃で10時間加熱撹拌した。反応溶液を減圧加熱してDMAcを除去し、トルエンを添加してろ過した。ろ液を減圧加熱して揮発分を除去した残りを2Lフラスコに添加し、吸着剤(キョーワード500SNとキョーワード700SN(いずれも協和化学製品名)の質量比で1対1の混合物)の100gを添加し、窒素気流下130℃で9時間加熱撹拌した。トルエンで希釈し、ろ過して吸着剤を除去し、ろ液中のトルエンを減圧留去して重合体(重合体Q3)を得た。
1L耐圧反応容器に、重合体Q3の700g、ジメトキシメチルヒドロシランの22.2mL、オルトぎ酸メチルの7.71mL及び白金触媒(0価白金の1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン錯体)を添加した。ただし、白金触媒の使用量は、重合体Q3のアルケニル基に対して9×10-3モル当量とした。反応容器内の混合物を100℃で195分加熱撹拌した。混合物の揮発分を減圧留去して、主鎖末端にジメトキシメチルシリル基を有する重合体(重合体B1)を得た。
1分子あたりの反応性ケイ素基の平均数を、1H-NMR分析により求めたところ2.0個であった。
【0096】
(合成例7:重合体B2)
攪拌機付きの耐圧反応器にイソブタノールの50gを添加し、約80℃に昇温した。反応容器内温を約80℃に保ち、窒素雰囲気下、攪拌しながら、メタクリル酸メチルの1.65g、アクリル酸-n-ブチルの373.1g、アクリル酸ステアリルの110.0g、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-502、信越シリコーン社製品名)の6.5g及び2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル(V-65、和光純薬工業社製品名)の7.3gの混合溶液を、イソブタノール中に2時間かけて滴下して重合し、側鎖にジメトキシメチルシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(重合体B2)を得た。1分子あたりの反応性ケイ素基の平均数を、1H-NMR分析により求めたところ2.0個であった。
【0097】
[硬化性組成物の調製]
表2~4に記載の配合剤、添加剤、硬化触媒、化合物Aは以下のとおりである。
白艶華CCR:膠質炭酸カルシウム、白艶化CCR、白石工業社製品名。
ホワイトンSB:重質炭酸カルシウム、白石工業社製品名。
DINP:ビニサイザー90、ジイソノニルフタレート、花王社製品。
R-820:酸化チタン、石原産業社製品名。
グリセリンモノステアレート:試薬、東京化成工業社製。
チヌビン770:ヒンダードアミン系光安定剤、BASF社製品名。
チヌビン327:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、BASF社製品名。
KBM-202:ジフェニルジメトキシシラン、信越化学社製品名。
KBM-1003:ビニルトリメトキシシラン、信越化学社製品名。
KBM-603:3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、信越化学社製品名。
U-200:ジブチル錫ジアセテート、硬化触媒、日東化成社製品名。
U-220H:ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、日東化成社製品名。
U-303:ジブチル錫塩とテトラエトキシシランの反応物、日東化成社製品名。
SCAT27:ジブチル錫ジメトキサイド、日東化成社製品名。
S-1:ジオクチル錫塩とテトラエトキシシランの反応物、日東化成社製品名。
メタノール:試薬、東京化成工業社製。
テトラエトキシシラン:試薬、東京化成工業社製。
アセチルアセトン:試薬、東京化成工業社製。
【0098】
(例1~41)
例1~6、10~12、15、17~19、21~23、26、28~30、32~34、37~39は実施例であり、例7~9、13、14、16、20、24、25、27、31、35、36、40、41は比較例である。
万能混合攪拌機(品川工業所製)に、表3及び表4の各例に示す化合物を表3及び表4に示す配合量で配合し、さらに表2に示す配合1を加え、混合攪拌を行い、硬化性組成物を調製した。得られた硬化性組成物を用いて、上記評価を行った結果を、表3及び表4に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
表3及び4に示すように、4価の錫触媒に化合物Aを併用した例1~6、10~12、15、17~19、21~23、26、28~30、32~34、37~39は、タックフリータイムが短く硬化性が良好であり、弾性復元率が高く、充分な復元性が得られた。化合物Aを使用しない例7、13、16、20、24、27、31、35、40は、弾性復元率は高かったが、タックフリータイムが長く、硬化性に劣っていた。4価の錫触媒を増量した例8、9、14、15、25、36、41では、タックフリータイムが短く硬化性は良好であったが、弾性復元率が低く、充分な復元性が得られなかった。