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  • 特許-単結晶製造装置及び単結晶の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】単結晶製造装置及び単結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 13/12 20060101AFI20230411BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C30B13/12
C30B29/06 501A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019219532
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021088483
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】上田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】下村 庫一
(72)【発明者】
【氏名】杉田 圭謙
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110438558(CN,A)
【文献】特開2015-229612(JP,A)
【文献】特開平09-142988(JP,A)
【文献】特開昭61-266386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FZ法による単結晶の製造に用いられる単結晶製造装置であって、
原料ロッドを回転可能及び昇降可能に支持する上軸と、
前記上軸と同軸配置され、前記原料ロッドの下方に配置された種結晶を回転可能及び昇降可能に支持する下軸と、
前記原料ロッドを加熱して溶融帯を生成する誘導加熱コイルと、
前記誘導加熱コイルの上面側に設置され、前記溶融帯にドーパントガスを供給するドーパント供給管とを備え、
前記誘導加熱コイルの外径は前記原料ロッド及び前記単結晶の直胴部の直径よりも大きく、かつ前記誘導加熱コイルの内径は前記原料ロッド及び前記単結晶直胴部の直径よりも小さく、
前記誘導加熱コイルは、上面から下面まで貫通する開口部を有し、
前記ドーパント供給管の先端部は、前記開口部内に挿入され、
前記ドーパント供給管の先端部は、前記単結晶の中心から0.7R以上1R以下の領域内(ただしRは前記単結晶の最大半径)の直上に配置されていることを特徴とする単結晶製造装置。
【請求項2】
前記開口部は、前記誘導加熱コイルの内側開口部から最外周まで伸びるスリットである、請求項1に記載の単結晶製造装置。
【請求項3】
FZ法による単結晶の製造に用いられる単結晶製造装置であって、
原料ロッドを回転可能及び昇降可能に支持する上軸と、
前記上軸と同軸配置され、前記原料ロッドの下方に配置された種結晶を回転可能及び昇降可能に支持する下軸と、
前記原料ロッドを加熱して溶融帯を生成する誘導加熱コイルと、
前記誘導加熱コイルの上面側に設置され、前記溶融帯にドーパントガスを供給するドーパント供給管とを備え、
前記誘導加熱コイルは、上面から下面まで貫通する開口部を有し、
前記ドーパント供給管の先端部は、前記開口部内に挿入され、
前記開口部は、前記誘導加熱コイルの内側開口部から最外周まで伸びるスリットであることを特徴とする単結晶製造装置。
【請求項4】
原料ロッドを誘導加熱コイルで加熱して溶融帯を形成し、前記溶融帯の上方及び下方にそれぞれ位置する前記原料ロッド及び単結晶を降下させて前記単結晶を成長させるFZ法による単結晶の製造方法であって、
前記誘導加熱コイルは、上面から下面まで貫通する開口部を有し、
前記誘導加熱コイルの上面側に設置され、前記溶融帯にドーパントガスを供給するドーパント供給管を有し、
前記ドーパント供給管の先端部は前記開口部内に挿入され、かつ前記単結晶の中心から0.7R以上1R以下の領域内(ただしRは前記単結晶の最大半径)の直上に配置され、
前記ドーパント供給管の先端部から前記誘導加熱コイルの下面側に位置する前記溶融帯に向けてドーパントガスを吹き付けることを特徴とする単結晶の製造方法。
【請求項5】
前記誘導加熱コイルの内側開口部から最外周まで伸びるスリットを通じて前記溶融帯に前記ドーパントガスを吹き付ける、請求項4に記載の単結晶の製造方法。
【請求項6】
原料ロッドを誘導加熱コイルで加熱して溶融帯を形成し、前記溶融帯の上方及び下方にそれぞれ位置する前記原料ロッド及び単結晶を降下させて前記単結晶を成長させるFZ法による単結晶の製造方法であって、
前記誘導加熱コイルは、上面から下面まで貫通する開口部を有し、
前記誘導加熱コイルの上面側に設置され、前記溶融帯にドーパントガスを供給するドーパント供給管の先端部を前記開口部内に挿入して、前記誘導加熱コイルの下面側に位置する前記溶融帯に向けてドーパントガスを吹き付け、
前記開口部は、前記誘導加熱コイルの内側開口部から最外周まで伸びるスリットであることを特徴とする単結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FZ法(Floating Zone法)による単結晶製造装置及び単結晶の製造方法に関し、特に、シリコン単結晶中にドーパントを添加するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶の製造方法としてFZ法が知られている。FZ法は、多結晶シリコンからなる原料ロッドの一部を誘導加熱コイルで加熱して溶融帯を生成し、溶融帯の上方及び下方にそれぞれ位置する原料ロッド及び種結晶を徐々に降下させることにより、種結晶の上方に大きな単結晶を成長させる方法である。FZ法ではCZ法(Czochralski)法のように石英ルツボを使用しないため、酸素濃度が非常に低い単結晶を製造することができる。
【0003】
シリコン単結晶中にドーパントを添加する方法として、溶融帯にドーパントを含むガスを吹き付けてドーパントを添加する方法が知られている。例えば特許文献1には、誘導加熱コイルの上方に設けたドーパントガス吹き付け用ノズルから溶融帯のネック部に向けてArベースのPHガスを吹き付けることが記載されている。
【0004】
また特許文献2及び3には、FZ法による単結晶の製造方法おいて、誘導加熱コイルの下方に配置されたドーピングノズルから単結晶側の溶融帯に向けてドーパントガスを吹き付けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-88758号公報
【文献】特開2015-229612号公報
【文献】特開2011-225451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
FZ法によるシリコン単結晶の製造方法において、単結晶の抵抗率の面内分布の均一化は重要な課題の一つである。本発明者らは、特許文献1のように溶融帯のネック部に向けてドーパントガスを供給した場合には、シリコン単結晶の外周部のドーパント濃度が低くなり、単結晶の外周部における抵抗率が高くなりやすいという問題があることを知見した。
【0007】
一方、特許文献2のように誘導加熱コイルの下方かつ単結晶より外側に配置したドーパント供給管から溶融帯にドーパントガスを供給した場合は、常に単結晶の最外周部に位置する溶融帯に向かう流れによるドーパント供給しか実現できず、単結晶面内のドーパント分布を任意に調整することができない。しかも、特許文献2のような供給形態では、溶融帯に取り込まれることなくそのまま排出されるドーパント量が増大してしまい、製造コストの上昇を招いてしまう問題がある。
【0008】
また、特許文献3では誘導加熱コイルと単結晶との空間内にドーパント供給管を設置した例が示されているが、誘導加熱コイルと単結晶との隙間が狭く、この隙間にドーピングノズルを安定的に設置することは困難であり、ドーパント供給管が溶融帯と接触するおそれがある。ドーパント供給管が溶融帯と接触してしまうと、単結晶成長そのものが行えなくなってしまう。
【0009】
したがって、本発明の目的は、ドーパント供給管を安定的に設置しつつ、単結晶の抵抗率の面内分布をできるだけ均一にすることが可能な単結晶製造装置及び単結晶の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明による単結晶製造装置は、FZ法による単結晶の製造に用いられる装置であって、原料ロッドを回転可能及び昇降可能に支持する上軸と、前記上軸と同軸配置され、前記原料ロッドの下方に配置された種結晶を回転可能及び昇降可能に支持する下軸と、前記原料ロッドを加熱して溶融帯を生成する誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルの上面側に設置され、前記溶融帯にドーパントガスを供給するドーパント供給管とを備え、前記誘導加熱コイルは、上面から下面まで貫通する開口部を有し、前記ドーパント供給管の先端部は、前記開口部内に挿入されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明による単結晶の製造方法は、原料ロッドを誘導加熱コイルで加熱して溶融帯を形成し、前記溶融帯の上方及び下方にそれぞれ位置する前記原料ロッド及び単結晶を降下させて前記単結晶を成長させるFZ法による単結晶の製造方法であって、前記誘導加熱コイルの上面側から前記誘導加熱コイルの下面側に位置する前記溶融帯に向けてドーパントガスを吹き付けることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、誘導加熱コイルよりも下方に位置する溶融帯の単結晶側溶融部にドーパントを供給することができる。単結晶側溶融部から導入されたドーパントは中心部に向かって拡散するため、単結晶の外周部のドーパント濃度を高めつつ、抵抗率の面内分布が均一な単結晶を製造することができる。また、ドーパント供給管は誘導加熱コイルの上面側に設置されているため、ドーパント供給管を安定的に設置することができ、単結晶側溶融部の上方から下向きにドーパントガスを供給することができる。
【0013】
本発明において、前記ドーパント供給管の先端部は、前記単結晶の中心から0.7R以上1R以下の領域内(ただしRは前記単結晶の最大半径)の直上に配置されていることが好ましく、前記単結晶の中心から0.7R以上1R以下の領域内に存在する前記溶融帯に向けて前記ドーパントガスを供給する好ましい。これにより、単結晶面内の抵抗率分布を十分に均一化させることができる。
【0014】
本発明による単結晶の製造方法は、前記誘導加熱コイルの内側開口部から最外周まで伸びるスリットを通じて前記溶融帯にドーパントガスを吹き付けることが好ましい。このように、誘導加熱コイルのスリットを利用することで、専用の開口部を用意することなくドーパント供給管の先端部が誘導加熱コイルを貫通するように構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ドーパント供給管を安定的に設置しつつ、単結晶の抵抗率の面内分布をできるだけ均一にすることが可能なFZ法による単結晶製造装置及び単結晶の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施の形態による単結晶製造装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、誘導加熱コイル及びドーパント供給管の構成の一例を詳細に示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のX-X線に沿った断面図、(c)は(a)の矢印X方向から見た側面図である。
図3図3は、誘導加熱コイル及びドーパント供給管の構成の他の例を詳細に示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のX-X線に沿った断面図である。
図4図4は、本発明例及び比較例によるウェーハサンプルの抵抗率の面内分布の最大偏差を示す図である。
図5図5は、シリコンウェーハ面内の抵抗率分布((抵抗率測定値-抵抗率目標値)/抵抗目標値)を示すグラフであって、(a)は比較例、(b)は本発明例をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態による単結晶製造装置の構成を示す模式図である。
【0019】
図1に示すように、この単結晶製造装置1は、FZ法によりシリコン単結晶を育成するための装置であって、原料ロッド2を回転可能及び昇降可能に支持する上軸11と、上軸11と共に原料ロッド2を回転させながら下方に送る原料送り機構12と、上軸11と同軸配置され、原料ロッド2の下方に配置された種結晶3を回転可能及び昇降可能に支持する下軸13と、下軸13と共に種結晶3を回転させながら下方に送る結晶送り機構14と、結晶成長が進んで大型化したシリコン単結晶4のテーパー部4aに当接してシリコン単結晶4の重量を支える単結晶重量保持具17と、原料ロッド2の下端部を加熱する誘導加熱コイル20と、原料ロッド2とシリコン単結晶4との間の溶融帯5(シリコン融液)にドーパントを供給するドーパント供給装置30とを有している。
【0020】
原料ロッド2はモノシラン等のシリコン原料を精製して得られた高純度多結晶シリコンからなり、原料ロッド2の上端部は原料保持具15を介して上軸11の下端部に取り付けられている。また種結晶3の下端部は種結晶保持具16を介して下軸13の上端部に取り付けられている。通常、原料ロッド2の最大直径はシリコン単結晶4の最大直径よりも小さい。
【0021】
誘導加熱コイル20は、原料ロッド2又は溶融帯5を取り囲む高周波コイルである。誘導加熱コイル20に高周波電圧を印加することにより、原料ロッド2の一部は誘導加熱されて溶融帯5が生成される。こうして生成された溶融帯5に種結晶3を融着させた後、原料ロッド2及びシリコン単結晶4を回転させながら下降させることにより、溶融帯5からシリコン単結晶4を成長させることができる。
【0022】
ドーパント供給装置30は、溶融帯5にドーパントガスを吹き付けるドーパント供給管31を有している。図示のように、溶融帯5は、誘導加熱コイル20の上方に位置する原料側溶融部5aと、誘導加熱コイル20の内側開口部内に位置するネック部5bと、誘導加熱コイル20の下方に位置する単結晶側溶融部5cとを有しており、ドーパント供給管31は単結晶側溶融部5cにドーパントガスを吹き付ける。溶融帯5へのドーパントの供給量はドーパントガスの濃度を変えることによって調整される。ドーパントの供給量を安定的に制御するためにはドーパントガスの流量を一定に維持し、ドーパントガスの濃度のみを調整することが好ましい。
【0023】
ドーパント供給管31は、石英ガラス製の細長い配管である。本実施形態によるドーパント供給管31は略L字型の配管であって、誘導加熱コイル20の上面に沿って略水平方向に伸びた後、略直角に折り曲げられた下向きの先端部を有している。ドーパント供給管31の先端部は、誘導加熱コイル20を貫通してその下面よりも下方に突出しており、単結晶側溶融部5cの外周部にドーパントガスを吹き付けることができるように構成されている(図1参照)。ドーパント供給管31の先端部は、単結晶側溶融部5cから離間して設けられると共に、平面視にてシリコン単結晶4の中心から好ましくは0.7R以上1R以下の領域内(ただしRは単結晶の最大半径)、より好ましくは0.8R以上0.95R以下の領域内に配置されている。
【0024】
図2は、誘導加熱コイル20及びドーパント供給管31の構成の一例を詳細に示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のX-X線に沿った断面図、(c)は(a)の矢印X方向から見た側面図である。
【0025】
図2(a)~(c)に示すように、誘導加熱コイル20は、略円環状の導体板からなるコイル導体21と、コイル導体21に高周波電圧を印加するための一対の端子電極22,22とを有している。コイル導体21は主に銅又は銀からなり、一対の端子電極22,22は図示しない交流電源に接続されている。
【0026】
コイル導体21は、円板状の導体の中心部に内側開口部23が形成され、さらに内側開口部23から径方向に伸びるスリット24によって円環状の導体の一部が周方向に分断されている。スリット24は周方向に近接する一対の端子電極22,22の間に配置されており、一対の端子電極22,22の接続位置を周方向に分断している。コイル導体21の外径は原料ロッド2及びシリコン単結晶4の直径(直胴部4bの直径)よりも大きく、コイル導体21の内径(内側開口部23の直径)は原料ロッド2及びシリコン単結晶4の直径よりも小さい。
【0027】
ドーパント供給管31は、誘導加熱コイル20の上面に沿って略水平方向に伸びるストレート部31aと、ストレート部31aの先端部が略直角に折り曲げられてなる下向きの先端部31bとを有している。ドーパント供給管31のストレート部31aは、平面視でスリット24の延在方向(X方向)と異なる方向に延設されていることが好ましい。このようにすることで、ドーパント供給管31を誘導加熱コイル20の上面に安定的に設置することができる。
【0028】
また誘導加熱コイル20に設けられたスリット24を開口部として利用してドーパント供給管31を設けることにより、専用の開口部を設けることなく下向きのドーパント供給管31を設置することができる。ドーパント供給管31の先端部31bは、誘導加熱コイル20の上面側からスリット24を通って下面側に達しており、下面よりも下方に突出している。単結晶側溶融部5cの外周部(肩部)の上方から下方に向けてドーパントガスを吹き付けることにより、ドーパントガスは単結晶側溶融部5cに取り込まれやすくなるので、単結晶側溶融部5cに取り込まれるドーパントの量を増やすことができる。
【0029】
誘導加熱コイル20のスリット24内には放電防止用の絶縁部材25が充填されていることが好ましい。この場合、ドーパント供給管31の挿入位置には絶縁部材25を設けず、径方向に伸びるスリット24の一部を開口部として残しておくことにより、スリット24を開口部として利用することができ、さらに絶縁部材25をドーパント供給管31の位置決め部材及び固定部材として利用することができる。なお説明の便宜上、図2(c)では絶縁部材25の図示を省略している。
【0030】
誘導加熱コイル20と単結晶側溶融部5cとの間隔は狭いため、従来のように誘導加熱コイル20の下面側にドーパント供給管31を配置することは非常に困難である。誘導加熱コイル20の上面側にドーパント供給管31を設置することも難しいが、原料ロッド2のサイズ(直径)がシリコン単結晶4よりも小さいため、誘導加熱コイル20の外周部寄りであればドーパント供給管31の設置は可能であり、これにより単結晶側溶融部5cへの局所的なドーパント供給が可能である。
【0031】
図3は、誘導加熱コイル20及びドーパント供給管31の構成の他の例を詳細に示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のX-X線に沿った断面図である。
【0032】
図3(a)及び(b)に示すように、誘導加熱コイル20には、ドーパント供給管31の先端部31bを貫通させるための専用の開口部26がスリット24とは別に設けられていてもよい。このような構成であっても、ドーパント供給管31を誘導加熱コイル20の上方に配置しつつ、単結晶側溶融部5cにドーパントガスを吹き付けることができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態による単結晶製造装置1は、原料ロッド2を誘導加熱コイル20により加熱して溶融帯5を生成すると共に、誘導加熱コイル20を貫通するように下向きに配置されたドーパント供給管31を用いて溶融帯5の単結晶側溶融部5cにドーパントガスを吹き付けるので、ドーパントを単結晶側溶融部5cの隅々まで均一に行き渡らせることができ、シリコン単結晶4の外周部の抵抗率の増加を抑えて面内均一な抵抗率分布を実現することができる。またドーパント供給管31は誘導加熱コイル20の上面側に設置され、ドーパント供給管31の先端部31bが誘導加熱コイル20を貫通するように設けられているので、ドーパント供給管31を安定的に設置することができ、単結晶側溶融部5cの上方から下向きにドーパントガスを供給することができる。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上記実施形態においてはシリコン単結晶の製造方法を例に挙げたが、本発明はシリコン単結晶に限定されず、種々の単結晶を対象とすることができる。
【実施例
【0036】
本発明例として、図1に示す誘導加熱コイルを貫通するドーパント供給管を用いて溶融帯の単結晶側溶融部の外周部にドーパントガスを吹き付けて、直径200mmのシリコン単結晶の育成を行った。具体的には、単結晶の中心から0.8R位置にドーパント供給管先端部の外径が位置するようにして、ホスフィンガスをアルゴンガスで希釈したドーパントガスを吹き付けた。
【0037】
比較例として、誘導加熱コイルの上側に設けたドーパント供給管から溶融帯のネック部に向けてホスフィンガスをアルゴンガスで希釈したドーパントガスを吹き付けて、直径200mmのシリコン単結晶の育成を行った。なお、ドーパントガスの吹き付け態様を変更した以外は、本発明例と比較例の単結晶育成条件は同条件とした。
【0038】
次に、本発明例及び比較例で育成したシリコン単結晶をそれぞれ加工してシリコンウェーハのサンプルを25枚ずつ用意した。ウェーハサンプルの抵抗率を直径方向にスキャンし、ウェーハの一方の外周位置(最外周から内側に6mmの位置)、一方の中間位置(-R/2)、ウェーハ中心位置(C)、他方の中間位置(+R/2)、ウェーハの他方の外周位置(最外周から内側に6mmの位置)の合計5点の抵抗率を測定した。その後、25枚のウェーハサンプルの抵抗率の面内分布の最大偏差を比較した。その結果、図4に示すように、本発明例では比較例と比べて良化傾向にあることが分かった。
【0039】
図5は、シリコンウェーハ面内の抵抗率分布((抵抗率測定値-抵抗率目標値)/抵抗目標値)を示すグラフであって、(a)は比較例、(b)は本発明例をそれぞれ示している。
【0040】
図5(a)に示す比較例によるシリコンウェーハの抵抗率分布はウェーハ外周部における抵抗率の増加が大きいのに対して、図5(b)に示す本発明例によるシリコンウェーハの抵抗率分布はウェーハ外周部における抵抗率の増加が小さく、抵抗率の面内ばらつきが小さいことが確認された。
【符号の説明】
【0041】
1 単結晶製造装置
2 原料ロッド
3 種結晶
4 シリコン単結晶
4a テーパー部
4b 直胴部
5 溶融帯
5a 原料側溶融部
5b ネック部
5c 単結晶側溶融部
11 上軸
12 料送り機構
13 下軸
14 晶送り機構
15 原料保持具
16 種結晶保持具
17 単結晶重量保持具
20 誘導加熱コイル
21 コイル導体
22 端子電極
23 内側開口部
24 スリット
25 絶縁部材
26 開口部
30 ドーパント供給装置
31 ドーパント供給管
31a ストレート部
31b ノズル部
図1
図2
図3
図4
図5