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特許7259736結晶欠陥の検出方法、エピタキシャル成長装置の管理方法およびエピタキシャルウェーハの製造方法
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  • 特許-結晶欠陥の検出方法、エピタキシャル成長装置の管理方法およびエピタキシャルウェーハの製造方法 図1
  • 特許-結晶欠陥の検出方法、エピタキシャル成長装置の管理方法およびエピタキシャルウェーハの製造方法 図2
  • 特許-結晶欠陥の検出方法、エピタキシャル成長装置の管理方法およびエピタキシャルウェーハの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】結晶欠陥の検出方法、エピタキシャル成長装置の管理方法およびエピタキシャルウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20230411BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
G01N21/956 A
H01L21/66 J
H01L21/66 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019237210
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105570
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】南出 由生
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/189778(WO,A1)
【文献】特開2018-082004(JP,A)
【文献】特開2017-142209(JP,A)
【文献】特開2012-068103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャルウェーハにおける金属成分を有する結晶欠陥を検出する方法であって、
エピタキシャル成長装置において連続的に作製された複数枚のエピタキシャルウェーハについて、該複数枚のエピタキシャルウェーハの各々の表面に対して垂直方向または斜め方向から入射光を入射し、前記入射光の高角度方向への散乱光および低角度方向への散乱光の少なくとも一方の強度の情報に基づいて、輝点欠陥の集合体を特定してその面積を求め、求めた面積が所定のしきい値を超える輝点欠陥の集合体が、前記連続的に作製された複数枚のエピタキシャルウェーハにおいて断続的に繰り返し検出されるか否かに基づいて、前記集合体が存在するエピタキシャルウェーハにおいて金属成分を有する結晶欠陥が形成されているか否かを判定することを特徴とする結晶欠陥の検出方法。
【請求項2】
前記判定は、前記連続的に作製された複数枚のエピタキシャルウェーハについて、所定の枚数毎に前記集合体の面積の最大値または合計値を求め、求めた前記面積の最大値または合計値に基づいて行う、請求項1に記載の結晶欠陥の検出方法。
【請求項3】
前記所定の枚数は、カセットに収容されるエピタキシャルウェーハの枚数またはロットにおけるエピタキシャルウェーハの枚数である、請求項2に記載の結晶欠陥の検出方法。
【請求項4】
前記判定は、前記所定の枚数のエピタキシャルウェーハを1つの単位として、連続する3つの単位のうちの2つの単位において、前記最大値または合計値が所定のしきい値を超えているか否かに基づいて行う、請求項2または3に記載の結晶欠陥の検出方法。
【請求項5】
前記輝点欠陥の集合体の特定は、前記入射光の高角度方向への散乱光および低角度方向への散乱光の双方の強度の情報に基づいて行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の結晶欠陥の検出方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の結晶欠陥の検出方法によって金属成分を含む結晶欠陥が形成されていると判定された場合には、前記エピタキシャル成長装置における前記金属成分の汚染源として推定される構成を調査することを特徴とするエピタキシャル成長装置の管理方法。
【請求項7】
所定の方法によって育成された単結晶シリコンインゴットに対してウェーハ加工処理を施し、得られた複数枚のシリコンウェーハの上にシリコンエピタキシャル層を形成して複数枚のエピタキシャルウェーハを連続して作製し、作製された複数枚のエピタキシャルウェーハについて、請求項1~5のいずれか一項に記載の結晶欠陥の検出方法によって金属成分を含む欠陥が形成されていると判定された場合には、少なくとも前記輝点欠陥の集合体が存在するエピタキシャルウェーハを不良品と判定することを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶欠陥の検出方法、エピタキシャル成長装置の管理方法およびエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランジスタやダイオード、MOS型およびバイポーラ型のICなどの半導体デバイス用の基板として、エピタキシャルウェーハが使用されている。エピタキシャルウェーハは、シリコンウェーハ上にシリコンエピタキシャル層を形成させたものであり、表面平坦性が高く、結晶欠陥が少ないなどの優れた特性を有している。
【0003】
ところで近年、半導体デバイスの微細化に伴い、基板となるウェーハ上の結晶欠陥や異物が製品の歩留まりに与える影響が益々大きくなっている。上記エピタキシャルウェーハの表面には、積層欠陥やピット等のエピタキシャルウェーハ特有の結晶欠陥と、パーティクル等の付着異物が存在する。その内、結晶欠陥は、P/N接合のリーク電流を増大させ、またMOSデバイスのゲート酸化膜特性を劣化させる。したがって、ウェーハの品質を向上させるためには、その表面に存在する結晶欠陥と付着異物とを区別して検出し、それらの起源を明らかにしてウェーハの製造条件に反映させることが重要となる。
【0004】
こうしたウェーハ表面の品質を精密に評価する従来技術として、検査対象のウェーハ表面にレーザー光を照射し、散乱されたレーザー光の強度をパーティクル検査機により検出し、この検出した散乱強度の値を用いて、積層欠陥やピット等の結晶欠陥やパーティクル等の付着異物を輝点欠陥(Light Point Defects,LPD)として検出する方法が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、受光角および偏光選択性が異なる受光系で検出されたLPDのサイズに基づいて、非エピタキシャル層起因の異物と、積層欠陥などの結晶欠陥とを区別して検出することができる方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-142209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、エピタキシャルウェーハに金属成分が含まれていると、ポーズタイム不良、リテンション不良、接合リーク不良、および酸化膜の絶縁破壊といったデバイス特性に悪影響をもたらす。エピタキシャル製造装置において混入する金属は、主にSUS系に含まれる鉄(Fe)、ニッケル(Ni)であり、汚染源としては、エピタキシャル成長装置を構成する配管系や駆動系などに用いられる金属部材が挙げられる。
【0008】
エピタキシャル成長装置においてNiを有する発塵が発生している場合、エピタキシャルウェーハの基板であるシリコンウェーハの表面にNiを有するパーティクルが存在する状態でエピタキシャル層を形成すると、先端にNiを有する針状の結晶欠陥であるウィスカー(ひげ結晶)が形成されることが知られている。
【0009】
ウィスカーが形成されたエピタキシャルウェーハは、デバイスの作製にはもはや用いることができず、歩留まりが低下する。そのため、ウィスカーのような金属成分を有する結晶欠陥を検出することが肝要である。しかしながら、上記特許文献1に記載された方法では、金属成分を有する結晶欠陥を検出することはできない。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エピタキシャルウェーハにおける金属成分を有する結晶欠陥を検出することができる方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、以下の通りである。
[1]エピタキシャルウェーハにおける金属成分を有する結晶欠陥を検出する方法であって、
エピタキシャル成長装置において連続的に作製された複数枚のエピタキシャルウェーハの各々の表面に対して垂直方向または斜め方向から入射光を入射し、前記入射光の高角度方向への散乱光および低角度方向への散乱光の少なくとも一方の情報に基づいて、輝点欠陥の集合体を特定してその面積を求め、前記連続的に作製された複数枚のエピタキシャルウェーハに対して特定された輝点欠陥の集合体の面積に基づいて、前記集合体が存在するエピタキシャルウェーハにおいて金属成分を有する結晶欠陥が形成されているか否かを判定することを特徴とする結晶欠陥の検出方法。
【0012】
[2]前記判定は、前記連続的に作製された複数枚のエピタキシャルウェーハについて、所定の枚数毎に前記集合体の面積の最大値または合計値を求め、求めた前記面積の最大値または合計値に基づいて行う、前記[1]に記載の結晶欠陥の検出方法。
【0013】
[3]前記所定の枚数は、カセットに収容されるエピタキシャルウェーハの枚数またはロットにおけるエピタキシャルウェーハの枚数である、前記[2]に記載の結晶欠陥の検出方法。
【0014】
[4]前記判定は、前記所定の枚数のエピタキシャルウェーハを1つの単位として、連続する3つの単位のうちの2つの単位において、前記最大値または合計値が所定のしきい値を超えているか否かに基づいて行う、前記[2]または[3]に記載の結晶欠陥の検出方法。
【0015】
[5]前記輝点欠陥の集合体の特定は、前記入射光の高角度方向への散乱光および低角度方向への散乱光の双方の情報に基づいて行う、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の結晶欠陥の検出方法。
【0016】
[6]前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の結晶欠陥の検出方法によって金属成分を含む結晶欠陥が形成されていると判定された場合には、前記エピタキシャル成長装置における前記金属成分の汚染源として推定される構成を調査することを特徴とするエピタキシャル成長装置の管理方法。
【0017】
[7]所定の方法によって育成された単結晶シリコンインゴットに対してウェーハ加工処理を施し、得られた複数枚のシリコンウェーハの上にシリコンエピタキシャル層を形成して複数枚のエピタキシャルウェーハを連続して作製し、作製された複数枚のエピタキシャルウェーハについて、前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の結晶欠陥の検出方法によって金属成分を含む欠陥が形成されていると判定された場合には、少なくとも前記輝点欠陥の集合体が存在するエピタキシャルウェーハを不良品と判定することを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エピタキシャルウェーハにおける金属成分を有する結晶欠陥を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】半導体ウェーハ表面の欠陥を検出する欠陥検出装置の一例を示す図である。
図2】(a)比較例1に対する、検出強度の上限値を超えたLPDの個数の各単位におけるウェーハ1枚当たりの平均値、(b)発明例1に対する、ウェーハ全体におけるLPD集合体の面積の各単位における最大値、(c)ウィスカーが検出されたエピタキシャルウェーハのLPDマップをそれぞれ示す図である。
図3】(a)比較例2に対する、検出強度の上限値を超えたLPDの個数の各単位におけるウェーハ1枚当たりの平均値、(b)発明例2に対する、ウェーハ全体におけるLPD集合体の面積の各単位における最大値、(c)ウィスカーが検出されたエピタキシャルウェーハのLPDマップをそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明による結晶欠陥の検出方法は、エピタキシャル成長装置において連続的に作製された複数枚のエピタキシャルウェーハの各々の表面に対して垂直方向または斜め方向から入射光を入射し、前記入射光の高角度方向への散乱光および低角度方向への散乱光の少なくとも一方の情報に基づいて、輝点欠陥の集合体を特定してその面積を求め、前記連続的に作製された複数枚のエピタキシャルウェーハに対して特定された輝点欠陥の集合体の面積に基づいて、前記集合体が存在するエピタキシャルウェーハにおいて金属成分を有する結晶欠陥が形成されているか否かを判定することを特徴とする。
【0021】
図1は、シリコンウェーハなどの半導体ウェーハ表面の欠陥を検出する欠陥検出装置の一例を示している。図1に示した欠陥検出装置1は、2種類の入射系と2種類の検出系とを備えており、モータ24により回転している検査対象の半導体ウェーハWの表面に入射光を入射し、その散乱光の強度から、半導体ウェーハWの表面に存在する結晶欠陥および異物などをLPDとして検出する。
【0022】
入射系は、半導体ウェーハWの表面に対して垂直の方向から入射する垂直入射光11(Normal)と、斜め方向から入射させる斜め入射光12(Oblique)とを有している。また、検出系は、半導体ウェーハWの表面に対して高角度方向の比較的狭い角度範囲に散乱された光を検出する高角度散乱光検出器23(Narrow)と、低角度方向の比較的広い角度範囲に散乱された光を検出する低角度散乱光検出器22(Wide)とを有している。
【0023】
なお、上記「高角度方向」とは、例えば半導体ウェーハWの表面鉛直方向から6~20度の角度範囲の方向を、「低角度方向」とは、例えば25~72度の角度範囲の方向を意味している。また、「斜め方向」とは、例えばウェーハWの表面垂直方向から65~85度の角度範囲の方向を、「垂直」とは、例えば表面垂直方向から0~20度の角度範囲の方向を意味する。実際の設定角度は、装置メーカー/型式に依存する。
【0024】
ここで、垂直入射光11は、反射板31により反射されて検査対象の半導体ウェーハWの表面に対して垂直に照射される。ウェーハ表面で散乱された光のうち、ウェーハWの表面に対して高角度方向に散乱された光は、集光レンズ33により集光された後、反射板34により反射されて高角度散乱光検出器23により検出される。また、半導体ウェーハWの表面に対して低角度方向に散乱された光は、集光器21により集光された後、低角度散乱光検出器22により検出される。
【0025】
一方、斜め入射光12は、反射板32により、ウェーハWの表面に対して斜め方向から入射するように構成されており、その散乱光の検出過程については、上述の垂直入射光11の場合と同様である。
【0026】
従って、これらの2つの入射系および2つの検出系の組み合わせから、半導体ウェーハWの表面に対して、垂直入射光を照射して高角度方向に散乱された光を検出するチャネル(Darkfield Narrow Normalチャネル、以下「DNNチャネル」とも言う。)、垂直入射光を照射して低角度方向に散乱された光を検出するチャネル(Darkfield Wide Normalチャネル、以下「DWNチャネル」とも言う。)、斜め入射光を照射して高角度方向に散乱された光を検出するチャネル(Darkfield Narrow Obliqueチャネル、以下「DNOチャネル」と称する)、及び斜め入射光を照射して低角度方向に散乱された光を検出チャネル(Darkfield Wide Obliqueチャネル、以下「DWOチャネル」とも言う。)の4つの検出チャネルが存在する。また、DNOチャネルとDWOチャネルとを組み合わせたコンポジットチャネル(Darkfield Composite Obliqueチャネル、以下「DCOチャネル」とも言う。)や、DNNチャネルとDWNチャネルとを組み合わせたコンポジットチャネル(Darkfield Composite Normalチャネル、以下「DCNチャネル」とも言う。)も存在する。
【0027】
LPDのサイズは、上記の4つの検出チャネルにおける散乱光の強度から決定される。具体的には、ポリスチレンラテックス(PSL)などのサイズが既知である球体の標準粒子を半導体ウェーハ上に配置し、上記4つの各チャネルに対して、半導体ウェーハの表面に照射された入射光が標準粒子により散乱された光の強度と、標準粒子のサイズとの相関を予め求めておき、検査対象の半導体ウェーハW上に存在する結晶欠陥や付着異物により散乱された光の強度を上記相関に当てはめることにより決定される。
【0028】
上記4つのチャネルにより検出される散乱光の強度(すなわち、LPDの検出サイズ)は、欠陥の種類や付着異物により異なることが知られている。例えば、積層欠陥やピットなどの低アスペクト比を有する結晶欠陥については、入射光を特定の方向に散乱させるのに対し、パーティクルなどの付着異物は、入射光をあらゆる方向に散乱させる。従来、こうした結晶欠陥の種類や付着異物の性質を利用して、検出されたLPDを結晶欠陥の種類や異物毎に分類している。
【0029】
本発明者は、上述のような欠陥検出装置1を用いて、ウィスカーなどの金属成分を有する結晶欠陥を検出する方途について鋭意検討し、上記金属成分を含む結晶欠陥の大きさに着目した。すなわち、ウィスカーを走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を用いて観察すると、その検出サイズは、数十μm程度(例えば、20μm)であり、面積は数百μm程度(例えば、400μm)である。
【0030】
一方、上述のような欠陥検出装置1を用いてウィスカーを検出すると、その特徴的な構造のために非常に強い散乱光が観測され、検出チャネルやシリコンウェーハの表面に付着した金属のサイズにもよるが、ウィスカーの検出サイズは数mm(例えば、5mm)、検出面積は数十mm(例えば、30mm)にもなる。このように、ウィスカーなどの金属成分を有する結晶欠陥は極めて大きい。
【0031】
一般に、市販の欠陥検出装置(例えば、KLA Tencor社製Surfscan SP2)を用いてシリコンウェーハ表面の異物や結晶欠陥を検査する際には、レーザー光をウェーハの表面全体に照射して、その散乱光の強度に基づいて結晶欠陥や異物のサイズを特定する。その際、レーザー光は、例えばウェーハの中心または外周部から所定の間隔w(例えば、数nm)でらせん状に連続的に照射される(スパイラルスキャン)。
【0032】
また、照射したレーザー光のウェーハ表面による散乱光の観測は、散乱光の強度(すなわち、検出サイズ)の下限値および上限値を設定して測定する。こうした条件下でウィスカーが検出されると、上述した下限値を超えた散乱光が所定の間隔(例えば、1000nm)以内で観察され、ウィスカーは、LPDが密集した集合体として観察される。
【0033】
本発明者は、当初、上述のように観察されたLPD集合体の個数をカウントすることによって、金属成分を有する結晶欠陥を検出できるのではないかと考えた。しかしながら、LPD集合体の個数にはウィスカーの特徴である大きさが反映されないことから、金属を有する結晶欠陥を検出できないことが分かった。
【0034】
そこで、本発明者は、金属成分を有する結晶欠陥を検出するためには、その特徴である大きさ、すなわち検出面積に基づいて行うのが最適と考えた。ただし、上述したLPD集合体は、ウィスカーなどの金属成分を有する結晶欠陥起因のものに限られず、大きな凹み状の結晶欠陥などの、いわゆる「キラー欠陥」も含まれる。
【0035】
そこで、本発明者は、大きな検出面積の結晶欠陥からウィスカーなどの金属成分を有する結晶欠陥を検出する方途についてさらに検討を進めた。その結果、エピタキシャル成長装置において、例えば金属汚染が発生した際、連続的に作製された複数枚のエピタキシャルウェーハの表面を検査すると、金属成分を含む結晶欠陥は断続的に繰り返し検出されるのに対して、キラー欠陥などの他の結晶欠陥の場合には、単発的に検出され、繰り返し観察されないことを見出した。
【0036】
そこで、本発明者は、連続的に作製された複数枚のエピタキシャルウェーハの各々に対してレーザー光を照射してその散乱光を観測し、LPD集合体が特定された際にはその面積を求め、連続的に作製された複数枚のエピタキシャルウェーハに対して特定されたLPD集合体の面積に基づいて、ウィスカーなどの金属成分を有する結晶欠陥を検出できることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0037】
本発明において、「輝点欠陥(LPD)の集合体」は、複数のLPDが密集した集合体であって、互いに所定の間隔(例えば、1000nm)以内に配置された複数のLPDの集合体を意味している。
【0038】
また、LPD集合体の面積は、上述のように検出された集合体について、例えばスパイラルスキャンにおいて上述した散乱光の強度の下限値(検出サイズの下限値)を超える部分の長さを全て足し合わせ、スパイラルスキャンの上記所定の間隔wを掛け合わせることによって求めることができる。また、LPD集合体の面積は、例えば上記下限値を所定の間隔で超えたLPDを集合体として構成する範囲を特定するアルゴリズムによって算出て求めることができる。
【0039】
エピタキシャル成長装置において金属汚染が発生した場合、金属成分は装置内の雰囲気中に含まれて漂い、エピタキシャルウェーハの基板であるシリコンウェーハの表面にある確率で付着する。つまり、全てのシリコンウェーハに付着するわけではなく、断続的(例えば、25枚中1、2枚程度)に付着する。従って、ウィスカーなどの金属成分を有する結晶欠陥も、断続的に形成されて観察されることになる。
【0040】
そこで、金属成分を有する結晶欠陥が形成されているか否かの判定は、連続的に作製された複数枚のエピタキシャルウェーハについて、所定の枚数毎にLPD集合体の検出面積の最大値または合計値を求め、求めた前記面積の最大値または合計値に基づいて行うことが好ましい。これによって、検出感度を向上させることができる。
【0041】
なお、上記「所定の枚数」は、特に限定されないが、例えば同一条件下で作製されたエピタキシャルウェーハの枚数とすることができ、例えばカセットに収容されるエピタキシャルウェーハの枚数(例えば、25枚)またはロットにおけるエピタキシャルウェーハの枚数(例えば、100枚)とすることができる。
【0042】
上記金属成分を有する結晶欠陥が形成されているか否かの判定は、上記所定の枚数のエピタキシャルウェーハを1つの単位として、連続する3つの単位のうちの2つの単位において、上記最大値または合計値が所定のしきい値を超えているか否かに基づいて行うことができる。上記所定のしきい値は、検出された様々なウィスカーの面積の統計などに基づいて設定することができる。
【0043】
また、LPDの検出を行う際に、入射光のウェーハ表面への入射方向は、後述する実施例に示すように、垂直方向および斜め方向のいずれの場合でも、金属成分を有する結晶欠陥の検出が可能である。よって、入射光の入射方向は、垂直方向および斜め方向のいずれでも構わない。
【0044】
さらに、散乱光の受光モードについても、高角度散乱(Narrow)および低角度散乱(Wide)のいずれのモードとすることができるが、ウィスカーなどの金属成分を有する結晶欠陥は、構造の異方性が強いことから、上記両モードを組み合わせたコンポジットモードを用いることが好ましい。
【0045】
本発明による結晶欠陥の検出方法は、市販されている欠陥検出装置を用いて行うことができる。例えば、KLA Tencor社製の欠陥検出装置(例えば、Surfscan SP2)を用いる場合には、上述のように、検出サイズの上限値(Max)および下限値(Min, Threshold)を設定してウェーハ表面の検査を行うと、上記上限値を超えるLPDは「飽和エリア(Saturated Area)」として分類される。
【0046】
また、LPDの集合体は「クラスターエリア(Cluster Area)」として分類され、その面積が算定される。Surfscan SP2の標準出力としては、クラスターエリア(Cluster Area)の面積は、1つのLPD集合体についてではなく、ウェーハ全体におけるクラスターエリア(Cluster Area)の合計面積である「Total Cluster Area」として出力されるが、ウィスカーなどの金属成分を有する結晶欠陥が検出されると、上記「Total Cluster Area」の値が著しく増大するため、「Total Cluster Area」の値に基づいて、金属成分を有する結晶欠陥を特定することができる。
【0047】
(エピタキシャル成長装置の管理方法)
本発明によるエピタキシャル成長装置の管理方法は、上述した本発明による結晶欠陥の検出方法によって金属成分を含む結晶欠陥が形成されていると判定された場合には、前記エピタキシャル成長装置における前記金属成分の汚染源として推定される構成を調査することを特徴とする。
【0048】
上述のように、本発明による結晶欠陥の検出方法によって、ウィスカーなどの金属成分を有する結晶欠陥を検出することができる。これにより、上記結晶欠陥が検出されたエピタキシャルウェーハを作製したエピタキシャル製造装置において、金属汚染が発生していると判定することができる。そこで、金属成分の汚染源として推定される、エピタキシャル成長装置を構成する配管系や駆動系などに用いられる金属部材を調査して汚染源を特定して、必要な対策を講じることができる。
【0049】
(エピタキシャルウェーハの製造方法)
本発明によるエピタキシャルウェーハの製造方法は、所定の方法によって育成された単結晶シリコンインゴットに対してウェーハ加工処理を施し、得られたシリコンウェーハの上にシリコンエピタキシャル層を形成して複数枚のエピタキシャルウェーハを連続して作製し、作製された複数枚のエピタキシャルウェーハについて、上述した本発明による結晶欠陥の検出方法によって金属成分を含む欠陥が形成されていると判定された場合には、少なくとも上記輝点欠陥の集合体が存在するエピタキシャルウェーハを不良品と判定することを特徴とする。
【0050】
上述のように、本発明による結晶欠陥の検出方法によって、ウィスカーなどの金属成分を有する結晶欠陥を検出することができる。これにより、上記結晶欠陥が検出されたエピタキシャルウェーハを不良品と判定することにより、金属成分を有する結晶欠陥を含まないエピタキシャルウェーハのみを得ることができる。
【実施例
【0051】
(発明例1)
欠陥検出装置(KLA Tencor社製、Surfscan SP2)を用いて、連続的に作製された275枚のエピタキシャルウェーハの表面を検査して、ウェーハ表面にウィスカーが形成されているか否かを調べた。その際、エピタキシャルウェーハの表面に入射する入射光としては、斜め入射光(ウェーハ表面垂直方向に対して70度の方向から入射)を用い、検出チャネルとしてはDCOチャネルを用いた。また、LPD検出の際の検出サイズの上限値は250nmとした。検査した275枚のエピタキシャルウェーハについて、25枚を単位とし、単位毎に「Total Cluster Area」の値の最大値を求めた。得られた結果を図2(b)に示す。
【0052】
(比較例1)
発明例1と同様に、発明例1の検査に供したエピタキシャルウェーハの表面を検査して、ウェーハ表面にウィスカーが形成されているか否かを調べた。ただし、ウィスカーが形成されているか否かの判定は、上記検出サイズの上限値(Max)を超えたLPDのウェーハ1枚当たりの個数に基づいて行った。その他の条件は、発明例1と全て同じである。得られた結果を図2(a)に示す。
【0053】
(発明例2)
発明例1と同様に、発明例1の検査に供したエピタキシャルウェーハの表面を検査して、ウェーハ表面にウィスカーが形成されているか否かを調べた。ただし、エピタキシャルウェーハの表面への入射光としては垂直入射光(ウェーハ表面垂直方向から入射)を用い、検出チャネルとしてはDCNチャネルを用いた。その他の条件は、発明例1と全て同じである。得られた結果を図3(b)に示す。
【0054】
(比較例2)
発明例2と同様に、発明例2(すなわち、発明例1)の検査に供したエピタキシャルウェーハの表面を検査して、ウェーハ表面にウィスカーが形成されているか否かを調べた。ただし、ウィスカーが形成されているか否かの判定は、上記検出サイズの上限値(Max)を超えたLPDのウェーハ1枚当たりの個数に基づいて行った。その他の条件は、発明例2と全て同じである。得られた結果を図3(a)に示す。
【0055】
図2(a)は、比較例1について、各単位において検出サイズの上限値(Max)を超えたLPDのウェーハ1枚当たりの個数を示しており、単位によって値は異なるものの、検査を通して大きな変動はないことが分かる。一方、図2(b)は、発明例1について、各単位における検出サイズの下限値を所定の間隔で超えたLPDの集合体のウェーハ全体の面積(Total Cluster Area)の最大値を示している。図2(b)から、9番目の単位までは「Total Cluster Area」の値はほぼゼロで推移しているのに対して、10番目の単位で急増し、11番目の単位についても大きな値を示した。上記10番目および11番目の単位のエピタキシャルウェーハについて、SEMにより表面を検査した結果、ウィスカーが形成されていることが確認された。図2(c)に、ウィスカーが検出されたLPDマップの一例を示す。
【0056】
比較例2および発明例2についても同様の傾向が観察され、図3(a)に示すように、LPD集合体のウェーハ1枚当たりの個数は大きく変動しなかったのに対して、図3(b)に示すように、10番目の単位において「Total Cluster Area」の値が大きく増加した。図3(c)に、ウィスカーが検出されたエピタキシャルウェーハのLPDマップの一例を示す。
【0057】
このように、検出サイズの上限値を超えたLPDの個数に基づいてウィスカーを検出することができないのに対して、検出サイズの下限値を所定の間隔で超えたLPDの集合体の面積(Total Cluster Area)に基づいてウィスカーを検出できることが分かる。また、図2図3との比較から、入射光として斜め入射光を用いた場合、および垂直入射光を用いた場合の双方について、ウィスカーを検出できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、エピタキシャルウェーハにおける金属成分を有する結晶欠陥を検出することができるため、半導体産業において有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 欠陥検出装置
11 垂直入射光
12 斜め入射光
21 集光器
22 低角度散乱光検出器
23 高角度散乱光検出器
24 モータ
31,32,34 反射板
33 集光レンズ
W 半導体ウェーハ
図1
図2
図3