(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】粘着シート、画像表示装置構成用積層体及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230411BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20230411BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20230411BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230411BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J133/14
C09J11/06
G09F9/00 342
(21)【出願番号】P 2022072192
(22)【出願日】2022-04-26
(62)【分割の表示】P 2019534453の分割
【原出願日】2018-07-26
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2017148894
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】稲永 誠
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-071161(JP,A)
【文献】特開2016-222916(JP,A)
【文献】特開2017-110062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸収剤、光開始剤、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、及び架橋剤を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記紫外線吸収剤は、波長340nmでの吸光係数が1×10
3mL/(g・cm)以上であって、 かつ、波長380nmでの吸光係数が1×10
3mL/(g・cm)未満であり、
前記粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物の全質量に対して0.1~1.6質量%の割合で前記紫外線吸収剤を含有し、かつ、光開始剤100質量部に対して30~100質量部の割合で前記紫外線吸収剤を含有し、
前記粘着シートは光照射により光硬化する性質を有し、ゲル分率が57%~80%であることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物の全質量に対して0.1~1.4質量%の割合で前記紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記光開始剤は、波長405nmでの吸光係数が10mL/(g・cm)未満である、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記光開始剤は、水素引抜型光開始剤である、請求項1~3の何れか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体は、カルボキシル基含有モノマーを構成単位として含まない(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体である、請求項1~4の何れか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体は、ヒドロキシル基とイソシアネート基、又は、アミノ基とイソシアネート基の何れかの官能基の組合せによる化学的な結合が形成されている、請求項1~5の何れか1項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体は、さらに、ラジカル重合性官能基を有する、請求項6に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体は、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体である、請求項1~5の何れか1項に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記粘着剤組成物は、さらに金属腐食防止剤を含有する、請求項1~8の何れか1項に記載の粘着シート。
【請求項10】
前記金属腐食防止剤は、365nmの吸光係数が20mL/(g・cm)以下である、請求項9に記載の粘着シート。
【請求項11】
前記金属腐食防止剤の25℃における水溶解度が20g/L以上である、請求項9又は10に記載の粘着シート。
【請求項12】
前記金属腐食防止剤は、トリアゾール系化合物である、請求項9~11の何れか1項に記載の粘着シート。
【請求項13】
前記粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物の全質量に対して0.05~2.0質量%の割合で前記金属腐食防止剤を含有する、請求項9~12の何れか1項に記載の粘着シート。
【請求項14】
前記粘着剤組成物は、光開始剤100質量部に対して10~200質量部の割合で金属腐食防止剤を含有する、請求項9~13の何れか1項に記載の粘着シート。
【請求項15】
請求項1~14の何れか1項に記載の粘着シートと、この粘着シートの少なくとも表裏一側に積層され、波長410nm以下での光の光線透過率が40%以下である離型フィルムとを備えた離型フィルム付粘着シート。
【請求項16】
請求項1~14の何れか1項に記載の粘着シートと、1つ以上の画像表示装置構成部材とを用いて形成された画像表示装置構成用積層体。
【請求項17】
請求項16に記載の画像表示装置構成用積層体を用いて形成された画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収剤及び光開始剤を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シート、中でも、耐紫外線発泡性を有する、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビ、タッチパネル、ペンタブレットなどの画像表示装置、例えばプラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、電気泳動ディスプレイ(EPD)、干渉変調ディスプレイ(IMOD)等の平面型又は曲面を有する画像表示パネルを用いた画像表示装置においては、視認性確保や破損防止等のため、各構成部材間に空隙を設けず、各構成物材間を粘着シートや液状粘着剤で貼り合わせて一体化することが行われている。
【0003】
例えば液晶モジュールの視認側と表面保護パネルとの間にタッチパネルが介挿されてなる構成を備えた画像表示装置では、表面保護パネルと液晶モジュールの視認側との間に液状粘着剤や粘着シートを配置し、タッチパネルと他の構成部材、例えばタッチパネルと液晶モジュール、タッチパネルと表面保護パネルとを貼り合わせて一体化することが行われている。
【0004】
このような画像表示装置用構成部材間の空隙を粘着剤で充填する方法として、特許文献1には、紫外線硬化性樹脂を含む液状の接着樹脂組成物を該空隙に充填した後、紫外線を照射して光硬化せしめる方法が開示されている。
【0005】
また、画像表示装置用構成部材間の空隙を、粘着シートを用いて充填する方法も知られている。例えば特許文献2には、紫外線によって1次架橋した粘着シートを画像表示装置構成部材に貼合後、画像表示装置構成部材を介して粘着シートに紫外線照射して2次硬化させる方法が開示されている。
【0006】
ところで、画像表示装置に用いられる光学部材には、紫外線による劣化が懸念されるものがあり、これらを防ぐ目的で粘着シートに紫外線吸収性が求められる場合がある。
例えばこのような粘着シートとして、特許文献3及び特許文献4には、粘着剤層に紫外線吸収剤を含む透明粘着シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開2010/027041号公報
【文献】特許第4971529号公報
【文献】特許第5945393号公報
【文献】特開2015-229759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
粘着シートに紫外線吸収性を付与する場合の目的は種々存在する。
例えば、粘着シートに隣接する光学部材が長期間の紫外線暴露によって劣化するのを防ぐという目的を挙げることができる。
しかし、この目的のためには、比較的多くの紫外線吸収剤を含有させる必要があるばかりか、波長380nm以上の幅広い波長領域の光の遮断性が求められる。
そのため、この種の紫外線吸収剤を光硬化型粘着シートに含有させる場合、紫外線吸収剤の作用によってその光硬化性が阻害されないように、紫外~可視光領域の広い領域で反応性を有する光開始剤を利用することが考えられる。
しかし、そのような光開始剤を使用すると、例えば当該光硬化型粘着シートを蛍光灯下で保管すると、徐々に光硬化が進行してしまうといった問題が生じることになる。
【0009】
他方、紫外線は、光学部材を劣化させるだけではなく、粘着シート自体も劣化させることになり、粘着シートの劣化によって生じる分解物(アウトガス)によって、発泡や剥離が生じる可能性がある。そのため、紫外線の暴露による粘着シート内の発泡に耐えることができる性能(「耐紫外線発泡性」と称する)が求められている。
【0010】
このような耐紫外線発泡性を粘着シートが有するためには、光硬化後の粘着シートが、アウトガスに耐え得る十分な凝集力を有している必要がある。
しかし、紫外線吸収剤を光硬化型粘着シートに含有させる場合、紫外線の影響を低下させるために紫外線吸収剤の含有量を単に多くしたのでは、紫外線吸収剤が可塑剤として働いて粘着シートの光硬化性を阻害する可能性があるため、このような考え方とは全く別の観点から検討する必要がある。
【0011】
そこで、本発明は、紫外線吸収剤を含有する光硬化型粘着シートに関し、光硬化性能を阻害することなく、耐紫外線発泡性を有する、新たな粘着シートを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、紫外線吸収剤及び光開始剤を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有し、前記紫外線吸収剤は、波長340nmでの吸光係数が1×103mL/(g・cm)以上であって、かつ、波長380nmでの吸光係数が1×103mL/(g・cm)未満であり、前記粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物の全質量に対して0.1~1.6質量%の割合で前記紫外線吸収剤を含有することを特徴とする粘着シートを提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明が提案する粘着シートは、特定波長領域で特定の吸光係数を有する紫外線吸収剤を使用すると共に、紫外線吸収剤の含有割合を規定することにより、所望の効果を享受することができる。すなわち、紫外線吸収剤が短波長側の紫外線の透過を阻止するため、粘着シートが紫外線に暴露されても、粘着シートから発生するアウトガスを低減することができる。この際、紫外線吸収剤の含有量を規定することにより、紫外線吸収剤が自ら可塑剤として働いて粘着シートの凝集力を低下させるのを防ぐことができ、高温下での耐熱発泡性をも得ることができる。
【0014】
さらに、前記光開始剤として、波長405nmでの吸光係数が10mL/(g・cm)未満であるものを使用することにより、当該光開始剤は可視光波長域で活性化しないため、蛍光灯下などの可視光暴露環境下で保存しても光硬化するのを防ぐことができる。
また、紫外線吸収剤及び金属腐食防止剤の含有割合を規定し、特に特定の金属腐食防止剤を用いることで、光開始剤による光硬化性を阻害することなく、耐金属腐食防止性をも得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】後述する実施例において、耐銀腐食信頼性の評価試験方法を説明するための図であり、(A)は耐銀腐食信頼性評価用サンプルの上面図、(B)は耐銀腐食信頼性評価用サンプルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。ただし、本発明が、下記実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<本粘着シート>
本発明の実施形態の一例にかかる粘着シート(以下「本粘着シート」と称する。)は、紫外線吸収剤及び光開始剤を含有する粘着剤組成物(以下「本粘着剤組成物」と称する。
)から形成された粘着剤層を有する。
【0018】
なお、本粘着シートは、前記粘着剤層を少なくとも1層以上有すればよく、2層以上の多層構成であってもよく、また、多層の場合には、いわゆる基材層のような他の層が介在してもよい。この場合、全ての粘着剤層が本粘着剤組成物から形成されたものであってもよく、少なくとも最表層が本粘着剤組成物から形成されるものであればよい。
【0019】
(本粘着シートの厚さ)
本粘着シートの厚さは、10μm以上500μm以下であるのが好ましい。
シート厚を薄くすることで、薄肉化要求に応えることができる一方、シート厚を薄くしすぎると、例えば被着面に凹凸があった場合に十分に追従できなかったり、十分な接着力を発揮できなくなったりする場合がある。
よって、かかる観点から、本粘着シートの厚さは、10μm以上500μm以下であるのが好ましく、中でも15μm以上或いは400μm以下であるのがより好ましく、その中でも特に20μm以上或いは350μm以下であるのがさらに好ましい。
【0020】
<本粘着剤組成物>
本粘着剤組成物は、紫外線吸収剤及び光開始剤を含有するものである。これ以外にも、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、架橋剤、金属腐食防止剤及びその他の成分を含むものであってもよい。
なお、「(共)重合体」とは単独重合体及び共重合体を包括する意味であり、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートを包括する意味である。
【0021】
(紫外線吸収剤)
上記紫外線吸収剤は、波長340nmでの吸光係数が1×103mL/(g・cm)以上であって、かつ、波長380nmでの吸光係数が1×103mL/(g・cm)未満であるものが好ましい。
紫外線吸収剤がこのような吸光特性を有する、すなわち、吸収する紫外線の波長領域が狭い、より言及すれば、比較的短波長の紫外線のみをブロックする性質を有することで、本粘着シートの光開始剤による硬化を阻害するのを抑えることができる。
また、紫外線吸収剤の含有量を減らしても、耐紫外線発泡性を有することができる。
かかる観点から、上記紫外線吸収剤は、波長340nmでの吸光係数は2×103mL/(g・cm)以上であるのがより好ましく、中でも3×103mL/(g・cm)以上、その中でも3.5×103mL/(g・cm)以上であるのがさらに好ましい。
また、上記紫外線吸収剤は、波長380nmでの吸光係数が8×102mL/(g・cm)未満であるのがより好ましく、中でも7×102mL/(g・cm)未満、その中でも6×102mL/(g・cm)未満であるのがさらに好ましい。
【0022】
上記紫外線吸収剤は、さらに波長405nmでの吸光係数が1×102mL/(g・cm)未満であることがより好ましい。
波長405nmでの紫外線吸収剤の吸光係数が当該範囲内であることで、本粘着シートの色相、具体的には黄色味を抑えることが可能となる。また、色相変化も抑えることができる。
かかる観点から、上記紫外線吸収剤は、波長405nmでの吸光係数が1×102mL/(g・cm)未満であるのが好ましく、中でも8×101mL/(g・cm)未満、その中でも5×101mL/(g・cm)未満であるのがさらに好ましい。
【0023】
上記紫外線吸収剤は、さらにその融点が100℃以下であることが好ましい。
上記紫外線吸収剤の融点が100℃以下であれば、粘着剤組成物中に混合する際の分散性に優れ、均一に混合しやすくなる。
よって、上記紫外線吸収剤は、さらにその融点が100℃以下であることが好ましく、中でも-50℃以上或は50℃以下であることがより好ましい。
【0024】
上記紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造、トリアジン構造、ベンゾエート構造、オキサルアニリド構造、サリシレート構造及びシアノアクリレート構造からなる群より選択される1つ又は2つ以上の構造を有するものを挙げることができ、これらの中から、所定の吸光係数を有するものを選択すればよい。
その中でも、上記吸光係数の調整や粘着剤との相溶性、他の各種添加剤と同時に添加した際の安定性等の観点から、ベンゾフェノン構造を有するものを選択することが好ましい。
【0025】
なお、測定波長340nmにおける吸光係数は、例えば測定波長の光を吸収しない溶媒(アセトニトリル、アセトン)で希釈した溶液を、石英セルに入れ、その吸光度を測定することで測定できる。吸光係数は以下の式により求めることができる。
α340=A340×d/c
α340:波長340nmでの吸光係数[mL/(g・cm)]
A340:波長340nmでの吸光度
c:溶液濃度[g/mL]
d:(石英セルの)光路長[cm]
【0026】
また、吸光係数を計算する際に、透過率の測定結果から換算した吸光度を用いてもよい。
A340=-Log(T340/100)
T340:波長340nmでの光線透過率[%]
【0027】
波長380nm、あるいは405nmにおける吸光係数も、上記と同様の方法で求めることができる。
【0028】
前記粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物の全質量に対して0.1~1.6質量%の割合で前記紫外線吸収剤を含有するのが好ましい。
かかる割合で紫外線吸収剤を含有することで、本粘着シートが光硬化する際に硬化阻害する虞がなく、また紫外線吸収剤が必要以上に粘着剤を可塑化させることなく、粘着シートに十分な凝集力を付与させることができるため、本粘着シートが優れた耐紫外線発泡性を有することができる。
かかる観点から、上記紫外線吸収剤は、当該粘着剤組成物の全質量(100質量%)に対して0.1~1.6質量%の割合で含有するのが好ましく、中でも0.2質量%以上或いは1.4質量%以下、その中でも0.3質量%以上或いは1.0質量%以下、さらにその中でも、0.4質量%以上或いは0.9質量%以下の割合で含有するのがさらに好ましい。
以上から、上記紫外線吸収剤は、当該粘着剤組成物の全質量(100質量%)に対して0.1~1.4質量%、0.1~1.0質量%又は0.1~0.9質量%の割合で含有するのが好ましく、0.2~1.6質量%、0.2~1.4質量%、0.2~1.0質量%又は0.2~0.9質量%の割合で含有するのがより好ましく、0.3~1.6質量%、0.3~1.4質量%、0.3~1.0質量%又は0.3~0.9質量%の割合で含有するのがさらに好ましく、0.4~1.6質量%、0.4~1.4質量%、0.4~1.0質量%又は0.4~0.9質量%の割合で含有するのが最も好ましい。
【0029】
同様の観点から、本粘着剤組成物において、上記紫外線吸収剤は、光開始剤100質量部に対して30~100質量部の割合で含有するのが好ましく、中でも40質量部以上或いは95質量部以下、その中でも50質量部以上或いは90質量部以下の割合で含有するのがさらに好ましい。
【0030】
(光開始剤)
光開始剤としては、波長405nmでの吸光係数が10mL/(g・cm)未満の光開始剤が特に好ましい。
このような吸光係数を有する光開始剤は、可視光領域での活性が低いことから、蛍光灯下で保管しても光硬化が進行する可能性が低く、保管安定性に優れた粘着シートを得ることができる。
かかる観点から、波長405nmでの吸光係数が8mL/(g・cm)未満の光開始剤を用いることがより好ましく、波長405nmでの吸光係数が5mL/(g・cm)以下の光開始剤を用いることが特に好ましい。
【0031】
光開始剤は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生することができる開裂型光開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型開始剤と、に大別される。
中でも、本粘着剤組成物が含有する光開始剤としては、水素引抜型開始剤が好ましい。
水素引抜型のほうが、光硬化後の凝集力が得られやすく、耐熱発泡性などの耐久性に優れている。
また、開裂型と異なり分解物が腐食に悪影響を及ぼす虞がないため、耐金属腐食性とのバランス化も容易であるばかりか、光硬化性を残した状態に光硬化させることも可能である。
【0032】
これらのうち開裂型光開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-[4-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル}フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、フェニルグリオキシリック酸メチル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイドや、それらの誘導体などを挙げることができる。
これらの中でも、とりわけ、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。
【0033】
また、水素引抜型光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2-エチルアントラキノン、チオキサンソンやその誘導体などを挙げることができる。
【0034】
上記光開始剤の中でも、開裂型光開始剤に比べて光硬化後に凝集力が得られやすいことから、波長405nmでの吸光係数が10mL/(g・cm)未満の水素引抜型の光開始剤が特に好ましい。
【0035】
<(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体>
本粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を含むものであってもよい。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体としては、例えばアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体の他、これと共重合性を有するモノマー成分とを重合することにより得られる共重合体を挙げることができる。
【0037】
より好ましい(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体としては、アルキル(メタ)アクリレートと、これと共重合可能な水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミド基含有モノマー及びその他のビニルモノマーの中から選択されるいずれか一つ以上のモノマーとを構成単位として含む共重合体を挙げることができる。
中でも、カルボキシル基等の高極性成分を共重合成分とすると、その酸化作用によって被着体、特にITO膜やIGZO膜などのような導電部材が酸化劣化するため、金属部材の腐食抑制のためには、カルボキシル基含有モノマーを構成単位として含まない(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体であるのが好ましい。
そして、そのような(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を含有する本粘着剤組成物から形成された粘着剤層は光照射により光硬化するものが好ましい。
なお、「カルボキシル基含有モノマーを構成単位として含まない」とは、“実質的に含まない”の意であり、すなわち“意図しては含ませない”の意である。ただし、不可避的に含む場合があるため、完全に含まない場合のみならず、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体中に、共重合性モノマーAが0.5質量%未満、好ましくは0.1質量%未満で含む場合を包含する。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体は、以下に例示したモノマー等を、必要により重合開始剤を用いて常法により製造することができる。
【0039】
より具体的な(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の一例として、側鎖の炭素数が4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート(以下「共重合性モノマーA」とも称する。)と、これと共重合可能な以下のB~Eからなる群から選択されるいずれか一つ以上のモノマー成分と、から構成される共重合体を挙げることができる。
【0040】
・マクロモノマー(以下「共重合性モノマーB」とも称する。)
・側鎖の炭素数が1~3の(メタ)アクリレート(以下「共重合性モノマーC」とも称する。)
・水酸基含有モノマー(以下「共重合性モノマーD」とも称する。)
・その他のビニルモノマー(以下「共重合性モノマーE」とも称する。)
【0041】
中でも、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の一例として、(a)共重合性モノマーAと共重合性モノマーBとを含むモノマー成分から構成される共重合体や、(b)共重合性モノマーAと、共重合性モノマーCと、共重合性モノマーD及び/又は共重合性モノマーEとを含むモノマー成分から構成される共重合体を好適な例として挙げることができる。
【0042】
(共重合性モノマーA)
上記側鎖の炭素数4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート(共重合性モノマーA)としては、例えばn-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
上記共重合性モノマーAは、共重合体の全モノマー成分中に、30質量%以上90質量%以下含有されることが好ましく、中でも35質量%以上或いは88質量%以下、その中でも特に40質量%以上或いは85質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0044】
(共重合性モノマーB)
上記マクロモノマー(共重合性モノマーB)は、重合により(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体となった際に側鎖の炭素数が20以上となるモノマーである。共重合性モノマーBを用いることにより、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体をグラフト共重合体とすることができる。
したがって、共重合性モノマーBと、それ以外のモノマーの選択や配合比率によって、グラフト共重合体の主鎖と側鎖の特性を変化させることができる。
【0045】
上記マクロモノマー(共重合性モノマーB)としては、骨格成分がアクリル酸エステル共重合体又はビニル系重合体から構成されるのが好ましい。
マクロモノマーの骨格成分としては、例えば上記共重合性モノマーA、後述の共重合性モノマーC、後述の共重合性モノマーD等に例示されるものが挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
マクロモノマーは、ラジカル重合性基又はヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、チオール基等の官能基を有するものである。
マクロモノマーとしては、他のモノマーと共重合可能なラジカル重合性基を有するものが好ましい。ラジカル重合性基は一つ或いは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。マクロモノマーが官能基を有する場合も官能基は一つ或いは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。また、ラジカル重合性基と官能基はどちらか一方でも、両方含有していてもよい。
【0047】
共重合性モノマーBの数平均分子量は、500~2万であるのが好ましく、中でも800以上或いは8000以下、その中でも1000以上或いは7000以下であるのが好ましい。
マクロモノマーは、一般に製造されているもの(例えば東亜合成社製マクロモノマーなど)を適宜使用することができる。
上記共重合性モノマーBは、共重合体の全モノマー成分中に5質量%以上30質量%以下、中でも6質量%以上或いは25質量%以下、その中でも特に8質量%以上或いは20質量%以下の範囲で含有されることが好ましい。
【0048】
共重合性モノマーBから構成される(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体として、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a-1)を挙げることができる。
【0049】
このような(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a-1)を用いて粘着剤層を構成すれば、粘着剤層は、室温状態でシート状を保持しつつ自着性を示すことができ、加熱すると溶融乃至流動するホットメルト性を有し、さらには光硬化させることができ、光硬化後は優れた凝集力を発揮させて接着させることができる。
よって、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a-1)を使用すれば、未架橋状態であっても、室温(20℃)において粘着性を示し、且つ、50~100℃、より好ましくは60℃以上或いは90℃以下の温度に加熱すると軟化乃至流動化する性質を備えることができる。
【0050】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a-1)の幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度は、室温状態での粘着剤層の柔軟性や、被着体への粘着剤層の濡れ性、すなわち接着性に影響するため、本粘着シート1が室温状態で適度な接着性(タック性)を得るためには、当該ガラス転移温度は、-70℃~0℃であるのが好ましく、中でも-65℃以上或いは-5℃以下、その中でも-60℃以上或いは-10℃以下であるのが特に好ましい。
但し、当該共重合体成分のガラス転移温度が同じ温度であったとしても、分子量を調整することにより粘弾性を調整することができる。例えば共重合体成分の分子量を小さくすることにより、より柔軟化させることができる。
【0051】
(共重合性モノマーC)
上記側鎖の炭素数が1~3の(メタ)アクリレート(共重合性モノマーC)としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0052】
上記共重合性モノマーCは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上70質量%以下含有されることが好ましく、中でも3質量%以上或いは65質量%以下、その中でも特に5質量%以上或いは60質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0053】
(共重合性モノマーD)
上記水酸基含有モノマー(共重合性モノマーD)としては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0054】
上記共重合性モノマーDは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上30質量%以下含有されることが好ましく、中でも0質量%以上或いは25質量%以下、その中でも特に0質量%以上或いは20質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0055】
(共重合性モノマーE)
上記その他のビニルモノマー(共重合性モノマーE)としては、共重合性モノマーA~Dを除く、ビニル基を分子内に有する化合物を挙げることができる。
このような化合物としては、分子内にアミド基やアルコキシルアルキル基等の官能基を有する官能性モノマー類並びにポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類並びに酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びラウリン酸ビニル等のビニルエステルモノマー並びにスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン及びその他の置換スチレン等の芳香族ビニルモノマーを例示することができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0056】
上記共重合性モノマーEは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上30質量%以下含有されることが好ましく、中でも0質量%以上或いは25質量%以下、その中でも特に0質量%以上或いは20質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0057】
上記に掲げるものの他、(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基又はイミド基を含有するモノマー;ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性モノマー等も必要に応じて適宜用いることができる。
【0058】
上記の中でも、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の好適な例として、例えば2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリート、デシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される何れか1種以上のモノマー成分(a)と、有機官能基等をもつヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、フッ素化(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリ
レートからなる群より選択される何れか1種以上のモノマー成分(b)と、を含むモノマー成分を共重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体を挙げることができる。
また、好ましい(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の一例として、ヒドロキシル基とイソシアネート基又はアミノ基とイソシアネート基の何れかの官能基の組合せによる化学的な結合が形成されたもの、或いは、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体であるものを挙げることができる。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の質量平均分子量は、10万以上150万以下、中でも15万以上或いは130万以下、その中でも特に20万以上或いは120万以下であることが好ましい。
凝集力の高い粘着組成物を得たい場合は、分子量が大きい程分子鎖の絡み合いにより凝集力が得られる観点から、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の質量平均分子量は70万以上150万以下、特に80万以上或いは130万以下であることが好ましい。
一方、流動性や応力緩和性の高い粘着組成物を得たい場合は、質量平均分子量は10万以上70万以下、特に15万以上或いは60万以下であることが好ましい。
他方、粘着シート等を成形する際に溶剤を使用しない場合には、分子量が大きなポリマーを使用することが難しい。
よって、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の質量平均分子量は10万以上70万以下、中でも15万以上或いは60万以下、その中でも20万以上或いは50万以下であることがさらに好ましい。
【0060】
(架橋剤)
本粘着剤組成物は必要に応じて架橋剤を含んでもよい。
架橋剤を添加することにより、架橋度、言い換えればゲル分率を高めることができ、凝集力を高めることができる。
例えば上記した(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を架橋する方法としては、(メタ)アクリル系酸エステル(共)重合体中に導入した水酸基やカルボキシル基等の反応性基と化学結合しうる架橋剤を添加し、加熱や養生により反応させる方法や、架橋剤としての(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート及び光開始剤等の反応開始剤を添加し、紫外線照射等によって架橋する方法を挙げることができる。
中でも、本粘着剤組成物中の極性官能基を反応によって消費せず、極性成分由来の高い凝集力や粘着物性を維持できる観点から、紫外線等の光照射による架橋方法が好ましい。
【0061】
上記架橋剤としては、例えば(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、ビニル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、N-置換(メタ)アクリルアミド基、アルコキシシリル基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する架橋剤を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、架橋性官能基は、脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。
【0062】
中でも、架橋反応の制御のし易さの観点からは、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の紫外線硬化型の多官能モノマー類のほか、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能アクリルオリゴマー類や、多官能アクリルアミド等を挙げることができる。
【0063】
また、2種以上の架橋性官能基を有する架橋剤としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシブチル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、(メタ)アクリル酸2-(0-[1'-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基又はブロックイソシアネート基を含有するモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等の各種シランカップリング剤を挙げることができる。
【0064】
2種以上の架橋性官能基を有する架橋剤は、一方の官能基を(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体と反応させ、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体に結合された構造をとってもよい。このような構造をとることにより、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体に、例えば(メタ)アクリロイル基やビニル基等の二重結合性の架橋性官能基を化学結合させることができる。
また、架橋剤が(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体に結合されることで、架橋剤のブリードアウトや、本粘着シートの予期せぬ可塑化を抑制することができる傾向にある。
また、架橋剤が(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体に結合されることで、光架橋反応の反応効率が促進されることから、より凝集力の高い硬化物を得ることができる傾向にある。
【0065】
本粘着剤組成物は、架橋剤の架橋性官能基と反応する単官能モノマーをさらに含有してもよい。このような単官能モノマーとしては、例えばメチルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、フェニル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー等を挙げることができる。
中でも被着体への密着性や湿熱白化抑制の効果を向上させる観点から、水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いるのが好ましい。
【0066】
架橋剤の含有量は、本粘着剤組成物の柔軟性と凝集力をバランスさせる観点から、前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体100質量部に対して、0.01以上10質量部以下の割合で配合するのが好ましく、中でも0.05質量部以上或いは8質量部以下、その中でも0.1質量部以上或いは5質量部以下であることが特に好ましい。
【0067】
なお、本粘着シートが多層である場合は、粘着シートを構成する層のうち、中間層や基材となる層については、架橋剤の含有量が上記範囲を超えていてもよい。
中間層や基材となる層における架橋剤の含有量は、前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体100質量部に対して、0.01以上40質量部以下の割合で配合するのが好ましく、中でも1質量部以上或いは30質量部以下、その中でも2質量部以上或いは25質量部以下であることが特に好ましい。
【0068】
(その他の成分)
本粘着剤組成物は、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、紫外線吸収剤、光開始剤及び架橋剤以外にも、必要に応じてその他の成分を含有することができる。
その他の成分としては、例えば光安定化剤、金属不活性化剤、金属腐食防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、吸湿剤、発泡剤、消泡剤、無機粒子、粘度調整剤、粘着付与樹脂、光増感剤、蛍光剤などの各種の添加剤、反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)などを挙げることができる。その他、通常の粘着剤組成物に配合される公知の成分を適宜含有してもよい。
また、各成分を2種類以上併用してもよい。
【0069】
上記の中でも、特に光安定化剤を含有することが特に好ましい。
光安定化剤と上述した紫外線吸収剤とを併用することで、耐紫外線発泡性をより向上させることができる。前記光安定化剤としては、中でも、ヒンダードアミン系化合物(HALS)が特に好ましい。
【0070】
(本粘着剤組成物の製造方法)
本粘着剤組成物は、光開始剤、紫外線吸収剤及びその他の成分をそれぞれ所定量混合することにより得ることができる。
【0071】
この際の混合方法としては、特に制限されず、各成分の混合順序も特に限定されない。
混合する際の装置も特に制限されず、例えば万能混練機、プラネタリミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ゲートミキサー、加圧ニーダー、三本ロール、二本ロールを用いることができる。必要に応じて溶剤を用いて混合してもよい。また、本粘着剤組成物は、溶剤を含まない無溶剤系として使用することができる。無溶剤系として使用することで溶剤が残存せず、耐熱性及び耐光性が高まるという利点を備えることができる。
【0072】
また、本粘着剤組成物製造時に熱処理工程を入れてもよく、この場合は、予め、本粘着剤組成物の各成分を混合してから熱処理を行うことが望ましい。各種の混合成分を濃縮してマスターバッチ化したものを使用してもよい。
【0073】
<粘着剤層>
本粘着シートは、本粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有するものであって、該粘着剤層は硬化済であっても、硬化する余地が残されている或いは未硬化の状態であってもよい。これらの中でも、かかる粘着剤層が、光照射により光硬化する性質を有するものであることが好ましい。
また、かかる粘着剤層は、本粘着剤組成物として、紫外線吸収剤及び光開始剤の他に、上記した(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の中から、カルボキシル基含有モノマーを含まない(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を含有するものであることが好ましい。
このようにすることで、本粘着シートを、金属材料で形成された導体パターンを有する導電部材等の各種導電部材を備えた画像表示装置用構成部材の貼合に好適に用いることができる。
【0074】
<本光硬化型粘着シート>
本粘着シートのうち、光照射により光硬化する性質を有する態様、すなわち、光硬化型粘着シート(以下「本光硬化型粘着シート」と称する。)は、被着部材貼合後に、光照射して光硬化させることが可能である。このような本光硬化型粘着シートであれば、被着部材貼合時の段差吸収性と、被着部材貼合後の耐発泡信頼性を両立することができる。
【0075】
本光硬化型粘着シートとしては、紫外線吸収剤、光開始剤、及び、カルボキシル基含有モノマーを含まない(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を含有する本粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有し、前記紫外線吸収剤は、波長340nmでの吸光係数が1×103mL/(g・cm)以上であって、かつ、波長380nmでの吸光係数が1×103mL/(g・cm)未満であり、前記粘着剤組成物は、光開始剤100質量部に対して、30~100質量部の割合で紫外線吸収剤を含有し、該粘着剤層は、光照射により光硬化する性質を有することが好ましい。
【0076】
本光硬化型粘着シートは、光硬化する余地が残された状態に硬化(「予備硬化」とも称する)されたものであってもよいし、また、全く予備硬化されていないものであってもよい。
この場合、全く予備硬化されていない本光硬化型粘着シートのゲル分率は5%以下であるのが好ましい。
他方、予備硬化された本光硬化型粘着シートのゲル分率は80%以下であるのが好ましく、中でも5%以上或いは70%以下、その中でも10%以上或いは60%以下であるのがさらに好ましい。
本光硬化型粘着シートを最終的に光硬化(単に「光硬化」又は「本硬化」と称する)させた後のゲル分率は30%以上、特に40%以上、特に50%以上であるのが好ましい。このような範囲に本光硬化型粘着シートを光硬化させることで、本光硬化型粘着シートを過酷な高温高湿環境等においても高凝集力となり、耐発泡信頼性を高めることができる。
【0077】
本光硬化型粘着シートが備える粘着剤層の好ましい形成方法としては、次の(1)又は(2)を挙げることができる。
【0078】
(1)本光硬化型粘着シートの製造時において、予備硬化(1次架橋)状態でシート形状を保持しつつ、かつ、光硬化性(光活性)を具備した状態の粘着剤層を形成する。
(2)本光硬化型粘着シートの製造時において、未硬化(架橋)状態でシート形状を保持しつつ、かつ、光硬性(光活性)を具備した状態の粘着剤層を形成する。
【0079】
上記(1)の具体例としては、例えば光重合開始剤と、官能基(i)を有する(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体と、該官能基(i)と反応する官能基(ii)とを有する化合物と、その他、必要に応じて(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートと、を含む組成物(粘着剤)を、加熱又は養生させ、粘着剤層を形成する方法を挙げることができる。
該方法によれば、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体中の官能基(i)と、該化合物中の官能基(ii)が反応し、化学的な結合が形成されることで硬化(架橋)して、粘着剤層が形成される。このようにして粘着剤層を形成することで、光重合開始剤が活性を有したまま粘着剤層中に存在することができる。
なお、この際、光重合開始剤としては、上述した開裂型光開始剤及び水素引抜型光開始剤のいずれを使用してもよい。
【0080】
上記官能基(i)と官能基(ii)の組み合わせとしては、例えばカルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジル基、カルボキシル基とイソシアネート基、ヒドロキシル基とイソシアネート基又はアミノ基とイソシアネート基等が好ましい。これら中でも、ヒドロキシル基(官能基(i))とイソシアネート基(官能基(ii))又はアミノ基(官能基(i))とイソシアネート基(官能基(ii))の組み合わせが特に好ましい。より詳細には、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体が水酸基を有し、例えば上述した水酸基含有モノマー(共重合性モノマーD)を含むモノマー成分の共重合体としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体を使用し、かつ、上記化合物がイソシアネート基を有する場合が特に好適な例である。
【0081】
また、上記官能基(ii)を有する化合物は、さらに、(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合性官能基を有していてもよい。これにより、該ラジカル重合性官能基による(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の光硬化(架橋)性を維持したまま粘着剤層を形成することができる。より詳細には、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体が水酸基を有し、例えば上述した水酸基含有モノマーを含むモノマー成分の共重合体としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体を使用し、かつ、上記化合物が、(メタ)アクリロイル基を有する場合、例えば上記化合物が2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート又は1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等である場合が特に好適な例である。
このように、該ラジカル重合性官能基による(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体同士の架橋反応を利用することにより、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートを用いなくとも、光硬化(架橋)後の凝集力が効率よく上がりやすく信頼性に優れる等の利点があるため、より好ましい。
【0082】
上記(1)の他の具体例としては、例えば光重合開始剤として、上述した水素引抜型開始剤を利用する方法を挙げることができる。水素引抜型開始剤は、一度励起されても基底状態に戻るため、光重合開始剤として再度利用可能である。このように、水素引抜型光開始剤を利用することで、粘着シートの製造後においても、該光重合開始剤による光硬化(架橋)性を維持させることができる。
【0083】
上記(2)の具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成するモノマー成分として、上述したマクロモノマーを利用する方法を挙げることができる。より具体的には、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体を利用する方法を挙げることができる。このようなマクロモノマーを利用することで、室温状態では、枝成分同士が引き寄せ合って組成物(粘着剤)として物理的架橋をしたような状態を維持することができる。
したがって、未硬化(架橋)のままでシート状態を保持させることができ、光を受光するとラジカルを発生する光開始剤を含む粘着剤層を有する粘着シートを製造することができる。なお、この際、光重合開始剤としては、上述した開裂型光開始剤及び水素引抜型光開始剤のいずれを使用してもよい。
【0084】
本光硬化型粘着シートは、次のような分光特性を備えているのが好ましい。
すなわち、本光硬化型粘着シートは、波長320nmでの光線透過率が10%以下であるのが好ましく、中でも5%以下であるのが好ましく、その中でも3%以下であるのがさらに好ましい。波長340nmでの光線透過率は、20%以下であるのが好ましく、中でも10%以下であるのが好ましく、その中でも5%以下であるのがさらに好ましい。
上記の光線透過率を有することで、粘着シート自身の劣化にともなう発泡や剥離等の発生を抑えられる。
【0085】
波長365nmでの本光硬化型粘着シートの光線透過率は、10%以上であるのが好ましく、中でも15%以上或いは90%以下であるのが好ましく、その中でも20%以上80%以下であるのがさらに好ましい。
波長380nmでの本光硬化型粘着シートの光線透過率は、20%以上であるのが好ましく、中でも30%以上或いは95%以下であるのが好ましく、その中でも40%以上90%以下であるのがさらに好ましい。
波長395nmでの本光硬化型粘着シートの光線透過率は、50%以上であるのが好ましく、中でも70%以上であるのが好ましく、その中でも80%以上であるのがさらに好ましい。
上記の光線透過率を有することで、光開始剤が活性化しやすくなるため、光硬化後の粘着剤の凝集力が十分に得られ、信頼性が得られやすくなる。
【0086】
本光硬化型粘着シートの好適な実施形態は、上述した本粘着シートと同様であって、これらを適宜選択・適用することができ、また、本粘着シートの好ましい実施形態と本光硬化型粘着シートの好ましい実施形態とは互いに置換可能である。
【0087】
(金属腐食防止剤)
ところで、このような本光硬化型粘着シートが、カルボキシル基含有モノマーを含まないモノマー成分の(共)重合体を主成分とする本粘着剤組成物から形成される場合には、金属に対する耐腐食性が良好である。
しかし、特定の金属、例えば銀を含む金属材料で形成された導電部材に光硬化型粘着シートを貼合し、光硬化させた際の金属材料の腐食について研究した結果、粘着シートに含まれる光開始剤が光により活性化してラジカルを発生し、このラジカルが金属材料中の銀と反応するため、銀を含む金属材料の腐食が進行する可能性があることが分かってきた。
かかる課題を解決するため、本光硬化型粘着シート中に金属腐食防止剤を含有させ、導電部材の銀に保護膜を形成することで、前記光照射によって光開始剤から発生したラジカルが導電部材の銀と反応するのを抑制することを提案する。
以上の観点から、本光硬化型粘着シートは、金属腐食防止剤を含有する本粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有することが好ましい。
【0088】
本粘着剤組成物中において、金属腐食防止剤は、本粘着剤組成物の全質量に対して0.05~2.0質量%の割合で含有することが好ましい。
また、本粘着剤組成物中において、金属腐食防止剤は、光開始剤100重量部に対して10~200質量部の割合で含有することが好ましい。
このような配合割合で含有することで、光開始剤による硬化を阻害せず、金属腐食防止剤の効果を最大限活用することができる。
このような観点から、金属腐食防止剤は、光開始剤100重量部に対して10~200質量部の割合で含有するのが好ましく、中でも12質量部以上或いは80質量部以下、その中でも15質量部以上或いは70質量部以下、その中でも20質量部以上或いは50質量部以下の割合で含有することがさらに好ましい。
【0089】
前記金属腐食防止剤は、含有する金属腐食防止剤によって本粘着剤組成物の光反応を阻害しない観点から、365nmの吸光係数が20mL/(g・cm)以下、中でも10mL/(g・cm)以下、その中でも5mL/(g・cm)以下、その中でも1mL/(g・cm)以下であるのが特に好ましい。
該特性を有する金属腐食防止剤としては、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、チアゾール骨格及びチアジアゾール骨格から選択されるいずれの骨格も有しない、金属腐食防止剤が好ましい。金属腐食防止剤が、このような骨格を有しないことで、上記範囲の吸光係数を有することができる。
【0090】
また、前記金属腐食防止剤は、親水性の化合物であることが好ましい。
金属腐食防止剤が親水性であると、同じく親水性である(メタ)アクリル系(共)重合体をベース樹脂とする粘着剤層において動き易いため、例えば銀原子と化学的に結合して保護皮膜を形成することができ、光照射によって光開始剤から発生するラジカルの金属部材、特に銀への攻撃(反応)を抑制することができる。
かかる観点から、25℃における金属腐食防止剤の水溶解度は20g/L以上であるのが好ましく、特に50g/L以上、中でも特に100g/L以上であるのがさらに好ましい。
【0091】
以上の観点から、前記金属腐食防止剤としては、365nmの吸光係数が20mL/(g・cm)以下であり、且つ、親水性の化合物からなる金属腐食防止剤の中でも、トリアゾール系化合物であることが好ましく、中でもベンゾトリアゾール、1,2,3-トリアゾール及び1,2,4-トリアゾールから選択される1種又は2種以上の混合物であるのが特に好ましい。
また、該ベンゾトリアゾールとしては、置換又は無置換のいずれのベンゾトリアゾールであってもよく、例えば1,2,3-ベンゾトリアゾール、メチル-1H-ベンゾトリアゾール等のアルキルベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、5-アミノベンゾトリアゾール、5-フェニルチオールベンゾトリアゾール、5-メトキシベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、クロロベンゾトリアゾール、ブロモベンゾトリアゾール、フルオロベンゾトリアゾール等のハロゲノベンゾトリアゾール、銅ベンゾトリアゾール、銀ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾールシラン化合物等を挙げることができる。これらの中でも、粘着剤組成物への分散性や添加しやすさ、金属腐食防止効果の観点から、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノールからなる群より選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物が好ましい。
さらに、1,2,4-トリアゾールは融点が約120℃の固体である一方、1,2,3-トリアゾールは融点が約20℃と室温でほぼ液体状態である。よって、1,2,3-トリアゾールは、粘着剤組成物中に混合する際の分散性に優れ、均一に混合することができ、また、マスターバッチ化しやすい等の優れた利点がある。
【0092】
<本粘着シートの物性>
本粘着シートは、光学的に透明であることが好ましい。つまり、透明粘着シートであることが好ましい。ここで、「光学的に透明」とは、全光線透過率は80%以上であることを意図し、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
【0093】
<本粘着シートの使用形態>
本粘着シートは、被着体に本粘着剤組成物を直接塗布し、シート状に形成して使用する以外にも、離型フィルム上に単層又は多層のシート状に成型した離型フィルム付き粘着シートとすることもできる。すなわち、本粘着シートの少なくとも表裏一側に離型フィルムを積層してなる離型フィルムシート付粘着シートとすることができる。
【0094】
前記離型フィルムの材質としては、例えばポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、フッ素樹脂フィルム等を挙げることができる。これらの中でも、ポリエステルフィルム及びポリオレフィンフィルムが特に好ましい。
【0095】
前記離型フィルムは、波長410nm以下での光の光線透過率が40%以下であるものが好ましい。
本粘着シートの少なくとも一方の面に、波長410nm以下での光の光線透過率が40%以下の離型フィルムを積層することで、可視光波長域で活性を有する光開始剤を使用した場合であっても、可視光の照射により光重合が進むのを効果的に防ぐことができる。
かかる観点から、本粘着シートの一方又は両方面に積層する離型フィルムは、波長410nm以下での光の光線透過率が40%以下であるのが好ましく、中でも30%以下、その中でも20%以下であるのがさらに好ましい。
【0096】
ここで、波長410nm以下での光の光線透過率が40%以下である離型フィルム、すなわち、可視光及び紫外光の透過を一部遮断する作用を有するフィルムとしては、例えばポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系のキャストフィルムや延伸フィルムの一方の面に、再剥離性をもつ微粘着樹脂を塗布し、他方の面に紫外線吸収剤を含む塗料を塗布してなる紫外線吸収層を備えた積層フィルムを挙げることができる。
また、ポリプロピレン系、ポリエチレン系のキャストフィルムや延伸フィルムの一方の面に、紫外線吸収剤を配合した再剥離性をもつ微粘着樹脂を塗布したものを挙げることができる。
また、紫外線吸収剤を配合したポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系の樹脂からなるキャストフィルムや延伸フィルムに、再剥離性をもつ微粘着樹脂を塗布したものを挙げることができる。
また、紫外線吸収剤を配合したポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系の樹脂からなる層の片面若しくは両面に、紫外線吸収剤を含まない樹脂からなる層を成形してなる多層のキャストフィルムや延伸フィルムの一方の面に、再剥離性をもつ微粘着樹脂を塗布したものを挙げることができる。
また、ポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系の樹脂からなるキャストフィルムや延伸フィルムの一方の面に紫外線吸収剤を含む塗料を塗布して紫外線吸収層を設け、さらにその紫外線吸収層の上に再剥離性をもつ微粘着樹脂を塗布したものを挙げることができる。
また、ポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系の樹脂からなるキャストフィルムや延伸フィルムの一方の面に紫外線吸収剤を含む塗料を塗布して紫外線吸収層を設け、他方の面に再剥離性をもつ微粘着樹脂を塗布したものを挙げることができる。また、一方の面に再剥離性をもつ微粘着樹脂を塗布したポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系の樹脂からなる樹脂フィルムの他方面と、別途準備した樹脂フィルムとを、紫外線吸収剤を含む接着層乃至粘着層を介して積層したもの等を挙げることができる。
上記フィルムは、帯電防止層やハードコート層、アンカー層など、必要に応じて他の層を有していてもよい。
【0097】
離型フィルムの厚みは特に制限されない。中でも、例えば加工性及びハンドリング性の観点からは、25μm~500μmであるのが好ましく、その中でも38μm以上或いは250μm以下、その中でも50μm以上或いは200μm以下であるのがさらに好ましい。
【0098】
なお、本粘着シートは、上記の様に被着体や離型フィルムを使用せずに、本粘着剤組成物を直接に押出成形する方法や、型に注入することによって成形する方法を採用することもできる。更には、導電部材等の部材間に本粘着剤組成物を直接充填することによって、粘着シートの態様とすることもできる。
【0099】
<本粘着シートの用途>
本粘着シートは、例えばパーソナルコンピューター、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビゲーションシステム、タッチパネル、ペンタブレットなどの画像表示装置、例えばプラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、無機ELディスプレイ、電気泳動ディスプレイ(EPD)、干渉変調ディスプレイ(IMOD)などの画像表示パネルを用いた画像表示装置などにおいて、これを構成する画像表示装置用構成部材を貼り合せるのに好適である。
また、中でも、銀を含む金属材料から形成された透明導電層を含む導電部材を貼り合わせるのに好適である。この際、前記導電部材は、絶縁保護膜(パシベーション膜)を有するものであってもよい。
【0100】
本粘着シートは、銀を含む金属材料を備えた導電部材、例えば透明導電層の導電層面に貼り合わせて使用することができる。
この際、本粘着シートの何れか一方の粘着剤層面と透明導電層の導電層面とが貼り合わせた構成を有するものであればよい。
本粘着シートが両面粘着シートの場合には、本積層体は本粘着シートの両方の粘着剤層面と透明導電層の導電層面とが貼り合わされた構成を有するものであってもよい。
【0101】
<本画像表示装置構成用積層体>
本粘着シートは、1つ以上の画像表示装置構成部材と貼合して画像表示装置構成用積層体を形成することができる。中でも、銀を含む金属材料で形成された導電部材を備えた画像表示装置用構成部材と、他の画像表示装置用構成部材との間を、本粘着シートを介して積層して画像表示装置構成用積層体(「本画像表示装置構成用積層体」と称する)を構成するのに適している。
【0102】
本光硬化型粘着シートを用いて、本画像表示装置構成用積層体を製造する場合は、本光硬化型粘着シートを介して、前記2つの画像表示装置構成部材を積層した後、少なくとも一方の画像表示装置構成部材側から光を照射し、前記光硬化型粘着シートを光硬化することにより本画像表示装置構成用積層体を製造することができる。
【0103】
本画像表示装置構成用積層体の具体例としては、例えば離型フィルム/本粘着シート/タッチパネル、画像表示パネル/本粘着シート/タッチパネル、画像表示パネル/本粘着シート/タッチパネル/本粘着シート/保護パネル、偏光フィルム/本粘着シート/タッチパネル、偏光フィルム/本粘着シート/タッチパネル/本粘着シート/保護パネルなどの構成を挙げることができる。
【0104】
また、上記タッチパネルとしては、保護パネルにタッチパネル機能を内在させた構造体や、画像表示パネルにタッチパネル機能を内在させた構造体を含むものである。
したがって、本画像表示装置構成用積層体は、例えば離型フィルム/本粘着シート/保護パネル、離型フィルム/本粘着シート/画像表示パネル、画像表示パネル/本粘着シート/保護パネルなどの構成であってもよい。
また、上記の構成において、本粘着シートと、これと隣接するタッチパネル、保護パネル、画像表示パネル、偏光フィルム等の部材との間に前記の導電層を介入する全ての構成を挙げることができる。但し、これらの積層例に限定されるものではない。
【0105】
なお、上記タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、電磁誘導方式等の方式のものを挙げることができる。中でも静電容量方式であることが好ましい。
【0106】
表面保護パネルの材質としては、ガラスの他、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィンポリマー等の脂環式ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等のプラスチックであってもよい。
表面保護パネルの材質としては、ガラスの他、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィンポリマー等の脂環式ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等のプラスチックであってもよい。
【0107】
画像表示パネルは、偏光フィルムその他位相差フィルム等の他の光学フィルム、液晶材料及びバックライトシステムから構成される(通常、本粘着剤組成物又は粘着物品の画像表示パネルに対する被着面は光学フィルムとなる。)ものであり、液晶材料の制御方式によりSTN方式やVA方式やIPS方式等があるが、何れの方式であってもよい。
【0108】
本画像表示装置構成用積層体は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー、プラズマディスプレイ及びマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)ディスプレイなどの画像表示装置の構成部材として使用することができる。
画像表示パネルは、偏光フィルムその他位相差フィルム等の他の光学フィルム、液晶材料及びバックライトシステムから構成される(通常、本粘着剤組成物又は粘着物品の画像表示パネルに対する被着面は光学フィルムとなる。)ものであり、液晶材料の制御方式によりSTN方式やVA方式やIPS方式等があるが、何れの方式であってもよい。
【0109】
<語句の説明>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0110】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0111】
<実施例1>
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、枝成分がメチルメタクリレートのマクロモノマー(数平均分子量2,500)15質量部、幹成分がn-ブチルアクリレート81質量部/アクリル酸4質量部からなるグラフト共重合体(A-1、質量平均分子量30万、Tg-12℃)1kg、紫外線吸収剤(b)として、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン(B-1、分子量326.4、融点48℃)5g、光開始剤(c)として、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノンの混合物(C-1)15g、架橋剤(d)として、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート(D-1)100g、耐光安定剤(e)として、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-オクチルオキシ-4-ピペリジン-4-イル)(E-1)2g、金属腐食防止剤(f)として、1,2,3-トリアゾール(F-1)2gを均一に溶融混錬し、樹脂組成物1を作製した。
なお、金属腐食防止剤としての1,2,3-トリアゾール(F-1)は、365nmでの吸光係数は0.3mL/(g・cm)であり、25℃における水溶解度は>1000g/Lであった。
【0112】
当該樹脂組成物1を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRF」、厚さ75μm/三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、厚さ100μmとなるように温度80℃でシート状に賦形し、透明両面粘着シート1を作製した。
なお、透明両面粘着シート1における粘着剤層は、未硬化の状態にあり、光照射により光硬化する性質を有している。
【0113】
<実施例2>
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、枝成分がイソボルニルメタクリレート:メタクリル酸メチル=1:1のマクロモノマー(数平均分子量3,000)13.5質量部、幹成分がラウリルアクリレート43.7質量部/2-エチルヘキシルアクリレート40質量部/アクリルアミド2.8質量部からなる共重合体(A-2、質量平均分子量16万)1kg、紫外線吸収剤(b)として、(B-1)5g、光開始剤(c)として、(C-1)10g、架橋剤(d)として、(D-1)100g、耐光安定剤(e)として、(E-1)2gを均一に溶融混錬し、樹脂組成物2を作製した。
当該樹脂組成物2を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRF」、厚さ75μm/三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、厚さ100μmとなるように温度80℃でシート状に賦形し、透明両面粘着シート2を作製した。
なお、透明両面粘着シート2における粘着剤層は、未硬化の状態にあり、光照射により光硬化する性質を有している。
【0114】
<実施例3>
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、2-エチルヘキシルアクリレート55質量部/酢酸ビニル20質量部/アクリル酸5質量部からなる共重合体(A-3、質量平均分子量40万)1kg、紫外線吸収剤(b)として、(B-1)5g、光開始剤(c)として、(C-1)8g、架橋剤(d)として、(D-1)30g、耐光安定剤(e)として、(E-1)2gを均一に溶融混錬し、樹脂組成物3を作製した。
当該樹脂組成物3を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRF」、厚さ75μm/三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、厚さ100μmとなるように温度60℃でシート状に賦形し、一方のポリエチレンテレフタレートフィルム側から、波長365nmの積算光量が1500mJ/cm2となるように高圧水銀ランプにて光を照射し、予備硬化させて、透明両面粘着シート3を作製した。
なお、透明両面粘着シート3における粘着剤層は、光照射により光硬化する余地が残されている。
【0115】
<実施例4>
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、(A-2)1kg、紫外線吸収剤(b)として、(B-1)5g、光開始剤(c)として、(C-1)10g、架橋剤(d)として、(D-1)100g、金属腐食防止剤(f)として、(F-1)2gを均一に溶融混錬し、樹脂組成物4を作製した。
当該樹脂組成物4を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRF」、厚さ75μm/三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、厚さ100μmとなるように温度80℃でシート状に賦形し、透明両面粘着シート4を作製した。
なお、透明両面粘着シート4における粘着剤層は、未硬化の状態にあり、光照射により光硬化する性質を有している。
【0116】
<実施例5>
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、(A-2)1kg、紫外線吸収剤(b)として、(B-1)8g、光開始剤(c)として、(C-1)8g、架橋剤(d)として、(D-1)100gを均一に溶融混錬し、樹脂組成物5を作製した。
当該樹脂組成物5を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRF」、厚さ75μm/三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、厚さ100μmとなるように温度80℃でシート状に賦形し、透明両面粘着シート5を作製した。
なお、透明両面粘着シート5における粘着剤層は、未硬化の状態にあり、光照射により光硬化する性質を有している。
【0117】
<実施例6>
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、(A-2)1kg、紫外線吸収剤(b)として、(B-1)8g、光開始剤(c)として、(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)オリゴマー50重量部/2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド46質量部/2,4,6-トリメチルベンゾフェノン3.2質量部/4-メチルベンゾフェノン0.8質量部の混合物(C-2)8g、架橋剤(d)として、(D-1)100gを均一に溶融混錬し、樹脂組成物6を作製した。
当該樹脂組成物6を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRF」、厚さ75μm/三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、厚さ100μmとなるように温度80℃でシート状に賦形し、透明両面粘着シート6を作製した。
なお、透明両面粘着シート6における粘着剤層は、未硬化の状態にあり、光照射により光硬化する性質を有している。
【0118】
<実施例7>
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、(A-1)1kg、紫外線吸収剤(b)として、(B-1)18g、光開始剤(c)として、(C-1)20g、架橋剤(d)として、(D-1)120gを均一に溶融混錬し、樹脂組成物7を作製した。
当該樹脂組成物7を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRF」、厚さ75μm/三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、厚さ100μmとなるように温度80℃でシート状に賦形し、透明両面粘着シート7を作製した。
なお、透明両面粘着シート7における粘着剤層は、未硬化の状態にあり、光照射により光硬化する性質を有している。
【0119】
<比較例1>
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、(A-2)1kg、紫外線吸収剤(b)として、2,2-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(B-2、分子量244.2、融点73℃)5g、光開始剤(c)として、(C-1)10g、架橋剤(d)として、(D-1)100g、耐光安定剤(e)として、(E-1)2gを均一に溶融混錬し、樹脂組成物8を作製した。
当該樹脂組成物8を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRF」、厚さ75μm/三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、厚さ100μmとなるように温度80℃でシート状に賦形し、透明両面粘着シート8を作製した。
なお、透明両面粘着シート8における粘着剤層は、未硬化の状態にあり、光照射により光硬化する性質を有している。
【0120】
<比較例2>
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、(A-1)1kg、紫外線吸収剤(b)として、(B-1)20g、光開始剤(c)として、(C-1)15g、架橋剤(d)として、(D-1)100gを均一に溶融混錬し、樹脂組成物9を作製した。
当該樹脂組成物8を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRF」、厚さ75μm/三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、厚さ100μmとなるように温度80℃でシート状に賦形し、透明両面粘着シート9を作製した。
なお、透明両面粘着シート9における粘着剤層は、未硬化の状態にあり、光照射により光硬化する性質を有している。
【0121】
<比較例3>
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、(A-3)1kg、光開始剤(c)として、(C-1)8g、架橋剤(d)として、(D-1)30gを均一に溶融混錬し、樹脂組成物10を作製した。紫外線吸収剤(b)は添加しなかった。
当該樹脂組成物10を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRF」、厚さ75μm/三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、厚さ100μmとなるように温度60℃でシート状に賦形し、一方のポリエチレンテレフタレートフィルム側から、波長365nmの積算光量が1000mJ/cm2となるように高圧水銀ランプにて光を照射し、予備硬化させて、透明両面粘着シート10を作製した。
なお、透明両面粘着シート10における粘着剤層は、光照射により光硬化する余地が残されている。
【0122】
[物性評価]
実施例・比較例で得た透明両面粘着シートの物性を次のようにして測定した。
【0123】
<ゲル分率>
透明両面粘着シート1~10の離型フィルムを両面剥離し、該透明両面粘着シート1~10をそれぞれ約0.4g分採取し、予め質量(X)を測定したSUSメッシュ(#200)で袋状に包み、袋の口を折って閉じて、この包みの質量(Y)を測定した。その後、酢酸エチル50mL中に包みを24時間浸漬させたのち、取り出して70℃で4.5時間真空乾燥し、付着している酢酸エチルを蒸発させ、乾燥した包みの質量(Z)を測定し、求めた質量を下記式に代入して求めた。
ゲル分率[%]=[(Z-X)/(Y-X)]×100
【0124】
光硬化(本硬化)前の測定試料は、透明両面粘着シート1~10をそのまま測定試料とした。光硬化(本硬化)後の測定試料は、透明両面粘着シート1~10に、離型フィルム越しに、高圧水銀ランプを用いて、365nmの積算光量が3000mJ/cm2となるよう光を照射したのち、室温で12時間養生したものを測定試料とした。
【0125】
<分光特性>
透明両面粘着シート1~10を、離型フィルムを積層したままトムソン打抜機を用いて50×80mmにカットした。片側の離型フィルムを剥離し、露出した粘着面を、ソーダライムガラス(54×82mm、t0.6mm)にハンドロールで貼合した。その後、もう1枚のソーダライムガラス(同上)と真空プレス圧着した(23℃、プレス圧力0.1MPa、1分)。次いで、オートクレーブ処理(60℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、一方のガラス側から、高圧水銀ランプを用いて、365nmの積算光量が3000mJ/cm2となるよう光を照射して粘着シートを光硬化させ、室温で12時間養生することで、分光特性測定用試料を作製した。これらを用いて、以下の条件にて透明両面粘着シート1~10の分光特性を測定した。
<装置>UV-2450(島津製作所社製)
<波長>300~400nm(波長320nm、340nm、365nm、380nm、395nmにおける、光線透過率を測定)
【0126】
<保管安定性>
透明両面粘着シート1~10を、離型フィルムを積層したままトムソン打抜機を用いて50×50mmにカットした。これらの粘着シートを、ダイアホイルMRT(離型フィルム)が上側になるように静置し、3波長蛍光灯を用いて、照度1100Lxの光を24時間照射し、照射前後のゲル分率を前述の方法で測定することで、強い蛍光灯下における保管試験前後のゲル分率変化を算出した。
【0127】
そして、次のような基準で保管安定性を判定した。
試験後に粘着シートのゲル分率が大きく上昇してしまい、ゲル分率変化が20%以上になったものを「×(poor)」、ゲル分率変化が10%以上20%未満に抑えられたものを「○(good)」、ゲル分率変化が10%未満に抑えられたものを「◎(very good)」と判定した。
【0128】
<耐熱発泡性>
透明両面粘着シート1~10を、離型フィルムを積層したままトムソン打抜機を用いて50×80mmにカットした。片側の離型フィルムを剥離し、露出した粘着面を、ソーダライムガラス1(54×82mm、t0.6mm)にハンドロールで貼合した。次に、粘着付偏光板(サンリッツ社製VLC2)の粘着側の離型フィルムを剥離し、露出した粘着面を、ソーダライムガラス2(54×82mm、t0.6mm)にハンドロールで貼合した。さらに、偏光板側の保護フィルムを剥離し、ガラスビーズ(直径40μm)を、偏光板上に6個並べた。この偏光板側に、ソーダライムガラス1に貼合した透明両面粘着シート1~10のもう一方の離型フィルムを剥離し、ガラスビーズを並べた偏光板上にハンドロールで貼合した。
次いで、オートクレーブ処理(60℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、ソーダライムガラス1側から、高圧水銀ランプを用いて、365nmの積算光量が3000mJ/cm2となるよう光を照射して粘着シートを光硬化させ、室温で12時間養生することで、耐熱発泡性評価用試料(ソーダライムガラス1/透明両面粘着シート/粘着付偏光板/ソーダライムガラス2)を作製した。
【0129】
これらを、85℃の環境下に300時間静置し、発泡の有無を目視観察した。
偏光板/透明両面粘着シート界面などに気泡が発生したものを「×(poor)」、気泡が発生せずに外観良好だったものを「○(good)」と判定した。
【0130】
<耐紫外線発泡性>
透明両面粘着シート1~10を、離型フィルムを積層したままトムソン打抜機を用いて200×150mmにカットした。透明両面粘着シートの片側の離型フィルムを剥離し、露出した粘着面を、ソーダライムガラス(200×150mm、t0.6mm)の全面にハンドロールで貼合した。次いで、もう一方の離型フィルムを剥離し、露出した粘着面を、もう1枚のソーダライムガラス(200×150mm、t0.6mm)と真空プレス圧着した(23℃、プレス圧力0.1MPa、1分)。次いで、オートクレーブ処理(60℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、一方のガラス側から、高圧水銀ランプを用いて、365nmの積算光量が3000mJ/cm2となるよう光を照射して粘着シートを光硬化させ、室温で12時間養生することで、耐UV発泡性評価用試料を作製した。
これらを、下記の環境下に8時間/24時間静置し、強力なUV照射環境下での発泡あるいは微小気泡の有無を経時で目視観察した。
<装置>サンテストCPS+(東洋精機社製)
<光源>キセノンアークランプ(空冷式、波長270nmカットフィルター)
<放射照度>765W/m2(波長800nm以下)
<温度>BST63℃
【0131】
そして、次の基準で耐紫外線発泡性を判定した。
3時間静置後に大きな発泡あるいは微小気泡が多数生じたものを「×(poor)」、3時間静置後には外観良好であり、且つ8時間静置後に発泡あるいは微小気泡が生じたものを「△(usual)」、8時間静置後には外観良好であり、且つ24時間静置後に発泡あるいは微小気泡が生じたものを「○(good)」、24時間後も外観良好であったものを「◎(very good)」と判定した。
【0132】
<耐銀腐食性>
銀を含む導電部材として、銀ナノワイヤーフィルム(C3nano社製Activegrid Film、基材ポリエチレンテレフタレート(厚み50μm)、表面抵抗値50Ω/□、オーバーコート層付、全光線透過率>91%、ヘーズ≦0.9%、b*≦1.3)を準備した。
図1に示すように、銀ナノワイヤーフィルムを縦45×横80mmにカットし、銀ペースト(藤倉化成社製ドータイトD-550)を、電極間が50mmとなるように縦方向に約3~5mm巾で塗布して、乾燥させたのち、シートの縦幅9mmとなるように横方向にカットした。この9mm×80mm×5本の銀ペースト電極付銀ナノワイヤーフィルムを、ソーダライムガラス上に平行に並べた。
この上に、50mm巾にカットした両面粘着シートの片面剥離フィルムを剥離し、電極間に粘着シートが位置するようにロールで貼合した後、オートクレーブ処理(60℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、剥離フィルム付粘着シート側から、波長365nmの積算光量が3000mJ/cm
2となるように高圧水銀ランプにて光を照射し光硬化させた。
【0133】
このサンプルについて、65℃90%RH×300hの湿熱環境下で環境試験を行い、電極間の抵抗値上昇を確認した。
上記環境試験にて、抵抗値上昇が10%を超えたものを「△(usual)」、抵抗値上昇が10%以下に抑えられたものを「○(good)」、さらに抵抗値上昇が1%以下に抑えられたものを「◎(very good)」と判定した。
【0134】
実施例及び比較例の評価結果を表1に示した。
なお、表1の各実施例及び比較例において、(メタ)アクリル系共重合体(A)、紫外線吸収剤(B)、光開始剤(C)、架橋剤、耐光安定剤及び金属腐食防止剤の各項目に記載された数値は質量部である。
【0135】
【0136】
実施例1~7の透明両面粘着シートは、特定の吸光係数を有する紫外線吸収剤及び光開始剤を使用し、かつこれらの添加量を制御することで、光硬化を阻害することなく、露光環境での粘着シート自身の劣化を抑えること可能であるため、特にUV照射環境下で粘着シート自身の劣化が抑えられ、耐紫外線発泡性に優れるものであった。
特に、実施例1~5、7の透明両面粘着シートは、光開始剤の405nmにおける吸光係数が小さいために、高照度の蛍光灯下に保管したとしても粘着剤の光硬化が進行しにくく、保管安定性に優れるものであった。
さらに、実施例1及び4は、金属腐食防止剤を添加しており、耐銀金属腐食性に優れるものであった。その中でも、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)にカルボン酸を含まない実施例4は、極めて耐銀腐食性に優れ、銀を含む金属材料で形成された導電部材に貼合する場合にも特に好適に使用できるものであった。
【0137】
これに対し、比較例1の透明両面粘着シート7は、波長380nmにおける吸光係数の高い紫外線吸収剤を使用しているため、光開始剤の活性化を阻害してしまい、光照射しても透明粘着シートが十分に光硬化されずに、耐熱信頼性や耐UV信頼性に劣るものであった。光開始剤に対して紫外線吸収剤をより多く添加している比較例2では、紫外線吸収剤自体が粘着シートを可塑化させたり、光開始剤の活性化をある程度阻害したりして、光硬化後の凝集力が低くなってしまうため、耐熱信頼性や耐UV信頼性に劣るものであった。
比較例3のような、紫外線吸収剤を含まない透明両面粘着シートは、紫外線に露光された際に粘着シート自身の劣化を抑えられず、粘着シートから分解物(アウトガス)が多く生じるため、耐紫外線発泡性試験にて発泡や剥離が生じるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の粘着シートは、耐熱発泡性や耐紫外線発泡性、保管安定性、耐腐食性に優れているため、光学用途、特に画像表示装置用途に適用できる。