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特許7260061多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料及び多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法
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  • 特許-多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料及び多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料及び多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/977 20170101AFI20230411BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20230411BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230411BHJP
【FI】
C01B32/977
H01M4/86 B
H01M8/10 101
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022519934
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2021016726
(87)【国際公開番号】W WO2021225092
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2020082098
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄作
(72)【発明者】
【氏名】加藤 愼治
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108365184(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1735456(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第110078058(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105098136(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105552323(CN,A)
【文献】特開2020-001941(JP,A)
【文献】特開2006-240897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00 - 32/991
H01M 4/86
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元骨格構造を有する多孔質シリコンオキシカーバイドと、
前記三次元骨格構造に保持された炭素含有材料と、を備え、
BET比表面積が100m/g以上であり、且つ、導電率が1.0×10-6S/cm以上であり、
前記炭素含有材料が、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及び低結晶性ナノカーボンから選択される一又は複数で構成される、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料。
【請求項2】
合計細孔容積が、0.5cm/g以上である、請求項1に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料。
【請求項3】
細孔径が、2nm以上200nm以下である、請求項1又は2に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料。
【請求項4】
前記炭素含有材料の含有量が、2.5質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料。
【請求項5】
前記炭素含有材料の一次粒子の平均直径が、10nm以上200nm以下である、請求項に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を含む層を有する燃料電池用電極。
【請求項7】
界面活性剤及びpH調整剤を含む酸性水溶液に有機アルコキシシランを添加し、前記有機アルコキシシランのゾルゲル反応にてゲルを形成する工程(A)と、
前記ゲルをアルコールで洗浄する工程(B)と、
洗浄後のゲルを乾燥して多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を形成する工程(C)と、
前記多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を焼成して多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を得る工程(D)と、
を有し、
前記工程(A)において前記酸性水溶液に炭素含有材料又は有機ポリマーを更に添加して、炭素含有材料又は有機ポリマーを含有するゲルを形成することを特徴とする多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【請求項8】
前記工程(A)において、前記ゾルゲル反応を25℃以上80℃以下で行う、請求項に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【請求項9】
前記有機アルコキシシランが、以下の式(1)又は式(2)で表される、請求項に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
-SiR (OR3-x ・・・(1)
(但し、式中Rは、メチル基、エチル基、ビニル基及びフェニル基から選択されるいずれかの基であり、Rはメチル基、Rはメチル基又はエチル基を表す。式中整数xは、0又は1である。)
-(SiR (OR3-y ・・・(2)
(但し、式中Rは、メチレン基、エチレン基、へキシレン基、ビニレン基、フェニレン基及びビフェニレン基から選択されるいずれかの基を含み、Rはメチル基、Rはメチル基又はエチル基を表す。式中整数yは、0又は1である。)
【請求項10】
前記界面活性剤の前記酸性水溶液に対する含有量が、0.1質量%以上50質量%以下である、請求項に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【請求項11】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤である、請求項10に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記pH調整剤の前記酸性水溶液に対する含有量が、5質量%以上50質量%以下である、請求項に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【請求項13】
前記pH調整剤が、尿素、アンモニア及び水酸化ナトリウムから選択されるいずれかを含む、請求項11に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【請求項14】
前記炭素含有材料又は有機ポリマーと前記有機アルコキシシランとの質量比が、2.5~50:97.5~50である、請求項に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【請求項15】
前記炭素含有材料が、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及び低結晶性ナノカーボンから選択される一又は複数で構成される、請求項14に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【請求項16】
前記炭素含有材料の一次粒子の平均直径が、10nm以上200nm以下である、請求項15に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【請求項17】
前記有機ポリマーが、フェノール樹脂、ポリスチレン及びポリジビニルベンゼンから選択される一又は複数で構成される、請求項14に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【請求項18】
前記工程(B)において、前記酸性水溶液中から前記界面活性剤を除去すると共に、前記酸性水溶液中の水を前記アルコールと置換する、請求項に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【請求項19】
前記工程(C)において、室温、常圧で洗浄後の前記ゲルを乾燥する、請求項に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【請求項20】
前記工程(D)において、700℃以上1200℃以下で前記多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を焼成する、請求項に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料及び多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法に関する。
本願は、2020年5月7日に、日本に出願された特願2020-082098号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素と酸素から水を得る化学反応によって電力と熱を発生させる装置であり、リン酸形燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)、溶融塩酸塩形燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)、固体高分子形燃料電池(PEFC: Polymer Electrolyte Fuel Cell)などの複数種の燃料電池がある。このうち、固体高分子形燃料電池(PEFC)は、固体高分子電解質膜の片面にアノード(燃料極)、他の片面にカソード(空気極)を構成する触媒層を設けると共に、各触媒層の外側にガス拡散層を接着させた構造を有する。触媒層は、貴金属を含有する粒子状の触媒を、ナノレベルの担体粒子の表面に高分散担持させてなる触媒担持担体で構成される。
【0003】
現在、触媒担持担体として、高比表面積かつ高導電性のカーボン系材料が使用されている。しかしカソード及びアノードにおいて、カーボン担体の腐食等による触媒性能の低下が大きな問題となっている。そのため、カーボンに替わる高比表面積かつ高導電性の耐久性に優れた材料の開発が急務である。
【0004】
例えば、特許文献1には、(i)炭素含有化合物及び細孔形成剤を分散した分散液にケイ素含有有機化合物を混合して混合液を調製し、(ii)得られた混合液を0~200℃の温度条件下で重合処理を行った後、得られた生成物を、200℃以上800℃以下の温度下で一次焼成し、粉砕、分級して一次焼成粉末を作製し、(iii)前記一次焼成粉末を、800℃以上1150℃以下の温度条件下で二次焼成する多孔質シリコンオキシカーバイドセラミックスの製造方法が開示されている。本製造方法では、BET比表面積が0.5m/g~50m/gとされている。
【0005】
また、上記特許文献1には、上記の多孔質シリコンオキシカーバイドセラミックスと、カーボンブラック等の導電性炭素材料とを含有する複合材料が開示されている。この複合材料では、導電性炭素材料の含有割合は1質量%~30質量%であり、これにより容易に電気抵抗を低減することができるとされている。
【0006】
非特許文献1には、シリコーン樹脂、細孔形成剤、焼成収縮制御剤、及び黒鉛を有機溶剤中で混合し、乾燥後に得られた混合固体を1000℃で焼成することによる多孔質シリコンオキシカーバイドセラミックスの製造方法が開示されている。本製造方法では、BET比表面積が6.2m/g~32.3m/g、導電率が3×10-2~9×10-2S/cmとされている。
【0007】
非特許文献2には、ケイ素含有有機化合物としてアルキレン基で架橋されたビス(トリアルコキシシラン)化合物を用い、アルコール溶剤中ゾルゲル反応により重縮合を進行させ、得られた多孔性のアルキレン架橋ポリシルセスキオキサンゲルを1000℃で焼成する多孔質シリコンオキシカーバイドセラミックスの製造方法が報告されている。本製造方法では、BET比表面積が最大452m/gが得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-160762号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】T.C.de Almeida e Silva et al. Catalysis Science&Technology v9, p854-866 (2019).
【文献】P.R.Aravind et al. Microporous and Mesoporous Materials v142, p511-517 (2011).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、高効率及び高出力を実現するための燃料電池用電極には、高比表面積と高導電性を同時に満たす触媒担持担体が求められていることから、上記特許文献1及び非特許文献1のようなBET比表面積では十分とは言えず、改善の余地がある。また、上記特許文献1には、多孔質シリコンオキシカーバイドセラミックスに導電性炭素材料を混合することで電気抵抗を低減し得ることが開示されている程度であり、導電性炭素材料を混合した多孔質シリコンオキシカーバイドセラミックスの製造例の開示はなく、したがって導電性の定量的な評価は開示されていない。
【0011】
上記非特許文献2では、多孔質シリコンオキシカーバイドセラミックスのBET比表面積が452m/gに達することが開示されているが、アルキレン基で架橋されたビス(トリアルコキシシラン)という特殊なケイ素含有有機化合物を用いて実現された例であり、また、導電性については開示、示唆されていない。
【0012】
本発明の目的は、燃料電池電極材料として有効な、大きなBET比表面積及び高い導電性の双方をバランス良く併せ持つ多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を提供すること、及び工業原料として広く流通しているタイプの有機アルコキシシランを用いた多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、有機アルコキシシラン水溶液の界面活性剤共存下でのゾルゲル反応過程に、多孔性ゲルの形成を妨げることのないよう留意しながら、炭素源となる炭素含有材料又は有機ポリマーを共存させることで前駆体ゲルを作製し、それを焼成することにより、メソスコピック領域の細孔構造(メソ孔)が発達し、且つ多孔性の三次元構造骨格中にナノレベルで炭素含有材料が配置された多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を製造することを達成した。これにより、大きなBET比表面積及び高い導電性の双方をバランス良く併せ持つ多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を提供することが可能となる。
【0014】
すなわち、本発明は以下の手段を提供する。
[1]三次元骨格構造を有する多孔質シリコンオキシカーバイドと、
前記三次元骨格構造に保持された炭素含有材料と、を備え、
BET比表面積が100m/g以上であり、且つ、導電率が1.0×10-6S/cm以上である、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料。
【0015】
[2]合計細孔容積が、0.5cm/g以上である、上記[1]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料。
【0016】
[3]細孔径が、2nm以上200nm以下である、上記[1]又は[2]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料。
【0017】
[4]前記炭素含有材料の含有量が、2.5質量%以上50質量%以下である、上記[1]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料。
【0018】
[5]前記炭素含有材料が、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及び低結晶性ナノカーボンから選択される一又は複数で構成される、上記[4]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料。
【0019】
[6]前記炭素含有材料の一次粒子の平均直径が、10nm以上200nm以下である、上記[5]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料。
【0020】
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を含む層を有する燃料電池用電極。
【0021】
[8]界面活性剤及びpH調整剤を含む酸性水溶液に有機アルコキシシランを添加し、前記有機アルコキシシランのゾルゲル反応にてゲルを形成する工程(A)と、
前記ゲルをアルコールで洗浄する工程(B)と、
洗浄後のゲルを乾燥して多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を形成する工程(C)と、
前記多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を焼成して多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を得る工程(D)と、
を有し、
前記工程(A)において前記酸性水溶液に炭素含有材料又は有機ポリマーを更に添加して、炭素含有材料又は有機ポリマーを含有するゲルを形成することを特徴とする多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【0022】
[9]前記工程(A)において、前記ゾルゲル反応を25℃以上80℃以下で行う、上記[8]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【0023】
[10]前記有機アルコキシシランが、以下の式(1)又は式(2)で表される、上記[8]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
-SiR (OR3-x ・・・(1)
(但し、式中Rは、メチル基、エチル基、ビニル基及びフェニル基から選択されるいずれかの基であり、Rはメチル基、Rはメチル基又はエチル基を表す。式中整数xは、0又は1である。)
-(SiR (OR3-y ・・・(2)
(但し、式中Rは、メチレン基、エチレン基、へキシレン基、ビニレン基、フェニレン基及びビフェニレン基から選択されるいずれかの基を含み、Rはメチル基、Rはメチル基又はエチル基を表す。式中整数yは、0又は1である。)
【0024】
[11]前記界面活性剤の前記酸性水溶液に対する含有量が、0.1質量%以上50質量%以下である、上記[8]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【0025】
[12]前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤である、上記[11]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【0026】
[13]前記pH調整剤の前記酸性水溶液に対する含有量が、5質量%以上50質量%以下である、上記[8]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【0027】
[14]前記pH調整剤が、尿素、アンモニア及び水酸化ナトリウムから選択されるいずれかを含む、上記[12]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【0028】
[15]前記炭素含有材料又は有機ポリマーと前記有機アルコキシシランとの質量比が、2.5~50:97.5~50である、上記[8]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【0029】
[16]前記炭素含有材料が、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及び低結晶性ナノカーボンから選択される一又は複数で構成される、上記[15]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【0030】
[17]前記炭素含有材料の一次粒子の平均直径が、10nm以上200nm以下である、上記[16]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【0031】
[18]前記有機ポリマーが、フェノール樹脂、ポリスチレン及びポリジビニルベンゼンから選択される一又は複数で構成される、上記[15]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【0032】
[19]前記工程(B)において、前記酸性水溶液中から前記界面活性剤を除去すると共に、前記酸性水溶液中の水を前記アルコールと置換する、上記[8]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【0033】
[20]前記工程(C)において、室温、常圧で洗浄後の前記ゲルを乾燥する、上記[8]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【0034】
[21]前記工程(D)において、700℃以上1200℃以下で前記多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を焼成する、上記[8]に記載の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、燃料電池電極材料として有効な、大きなBET比表面積及び高い導電性の双方をバランス良く併せ持つ多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明の実施形態に係る多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法の一例を説明するフローチャートである。
図2図2は、実施例1で例示した多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の走査型電子顕微鏡画像である。
図3図3は、実施例1で例示した多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の29Si-NMRスペクトルである。
図4図4は、実施例21で例示した、白金粒子が担持された多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料(触媒A)の透過型電子顕微鏡画像である。
図5図5は、実施例21で例示した触媒Aのサイクリックボルタンメトリー(CV)測定結果である。
図6図6は、実施例21で例示した触媒AのCV測定サイクルに対する電気化学的活性表面積(ECSA)の変化を示した図である。
図7図7は、比較例4で例示した触媒BのCV測定結果である。
図8図8は、比較例4で例示した触媒BのCV測定サイクルに対するECSAの変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の構成>
本実施形態に係る多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料は、三次元骨格構造を有する多孔質シリコンオキシカーバイド(SiOC)と、上記三次元骨格構造に保持された炭素含有材料と、を備える。
【0038】
多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の形態は、特に制限されないが、例えば粉末状、粒子状、繊維状又は針状であり、このうち粉末状又は粒子状であることが好ましい。
多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料が粉末状又は粒子状である場合、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の粒子径は、特に制限されないが、体積基準積算粒度分布における積算粒度で50%の粒子径D50として、例えば0.1μm以上100μm以下であるのが好ましく、0.5μm以上50μmであるのがより好ましく、1μm以上20μm以下であるのが更に好ましい。
【0039】
多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の粒子径D50は、JIS Z8825-1:2013に準じて測定される値を意味し、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD-7000)を用いて測定される粒子径D50を意味するものとする。
【0040】
[多孔質シリコンオキシカーバイド]
多孔質シリコンオキシカーバイドでは、シロキサンネットワークによる三次元骨格構造によって複数の微細孔がそれぞれ単独で設けられているか、又は、複数の微細孔の一部或いは全部が互いに連結した状態で設けられている。
本実施形態の多孔質シリコンオキシカーバイドは、BET比表面積が、100m/g以上であり、100m/g以上1500m/g以下であるのが好ましく、200m/g以上1000m/g以下であるのがより好ましい。BET比表面積が100m/g未満であると、担体表面での触媒粒子担持量が不十分となり、多孔質シリコンオキシカーバイドを燃料電池用電極に用いた場合に出力や効率などの所望の特性を得ることができない。また、BET比表面積が1500m/g以下である場合は、触媒担持に適したメソ孔の割合が高くなるため触媒粒子利用率をより向上させることができる。
【0041】
多孔質シリコンオキシカーバイドの合計細孔容積は、0.5cm/g以上であるのが好ましく、0.5cm/g以上3.0cm/g以下であるのがより好ましく、0.6cm/g以上2.0cm/g以下であるのが更に好ましい。多孔質シリコンオキシカーバイドの合計細孔容積が0.5cm/g以上であると、触媒層内における反応ガスや電解質の流通が容易になり、触媒効率を向上することができる。一方、合計細孔容積が3.0cm/g以下であると、良好な製造性を実現することができる。
【0042】
多孔質シリコンオキシカーバイドの細孔径は、2nm以上200nm以下であるのが好ましく、5nm以上150nm以下であるのがより好ましく、10nm以上100nm以下であるのが更に好ましい。多孔質シリコンオキシカーバイドの細孔径が2nm以上200nm以下であると、触媒層内における反応ガスや電解質の流通が容易になり、触媒効率を向上することができる。特に、多孔質シリコンオキシカーバイドの細孔径が2nm未満であると、担持された触媒粒子へ反応ガスや電解質の供給が困難になり、触媒粒子利用率が著しく低下する。
【0043】
多孔質シリコンオキシカーバイドのBET比表面積、合計細孔容積及び細孔径は、ガス吸着法により測定値として算出でき、例えば定容量法を用いて吸着等温線における相対圧力を変化させながら窒素やアルゴンなどの非腐食性ガスを吸着させた際の吸着量と非腐食性ガスの凝縮から算出された値を意味する。
【0044】
[炭素含有材料]
多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料における炭素含有材料の含有量は、2.5質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、3質量%以上30質量%以下であるのがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であるのが更に好ましい。炭素含有材料の含有量は高いほど、より高い導電性を実現できるため好ましいが、一方で、含有量が高すぎると炭素含有材料の腐食等が起こりやすくなり、触媒サイクルの耐久性が低下する。
【0045】
多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料における炭素含有材料の含有量は、例えば元素分析による含有元素比率の特定、29Si-NMRスペクトル、及び大気下における熱重量示差熱分析(TG-DTA)を組み合わせることにより測定された値を意味する。
【0046】
炭素含有材料は、特に制限されないが、例えばカーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及び低結晶性ナノカーボンから選択される一又は複数で構成することができる。このうち、高い導電性を実現できる点、及び製造性の観点からは、炭素含有材料はカーボンブラックであることが好ましい。
【0047】
炭素含有材料がカーボンブラックで構成される場合、炭素含有材料の一次粒子の平均直径は、10nm以上200nm以下であるのが好ましく、20nm以上100nm以下であるのがより好ましく、30nm以上50nm以下であるのが更に好ましい。炭素含有材料の一次粒子の平均直径が10nm以上200nm以下であると、良好な導電性を実現することができる。
【0048】
炭素含有材料がカーボンナノファイバー又はカーボンナノチューブで構成される場合、炭素含有材料の平均直径は、10nm以上200nm以下であるのが好ましく、また、炭素含有材料の長さは、1μm以上20μm以下であるのが好ましい。
【0049】
多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料中に保持された炭素含有材料の形態や大きさは、例えば透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡観察から実測することができる。また、一次粒子の平均直径は、例えば、顕微鏡画像から画像解析式粒度分布測定ソフトウェアを用いることにより求めることができる。
【0050】
[多孔質シリコンオキシカーバイドの特性]
多孔質シリコンオキシカーバイドの導電率は、1.0×10-6S/cm以上であり、1.0×10-4S/cm以上1.0×10S/cm以下であるのが好ましく、1.0×10-3S/cm以上10S/cm以下であるのがより好ましい。多孔質シリコンオキシカーバイドの導電率は高いほど良好な燃料電池電極触媒を提供できるが、導電率向上に寄与する炭素含有材料の保持量を高くし過ぎると、触媒サイクルにおいて炭素成分の腐食が進み耐久性が低下する場合がある。
【0051】
<多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法>
本実施形態に係る多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の製造方法は、図1に示すように、ゲル形成工程(工程(A))、洗浄工程(工程(B))、多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体形成工程(工程(C))及び焼成工程(工程(D))を有する。尚、本実施形態に係る多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料が得られることを前提として、各工程の前後に上記以外の他の工程が設けられてもよい。
【0052】
[工程(A)]
工程(A)では、例えば、界面活性剤及びpH調整剤を含む酸性水溶液に有機アルコキシシランを添加し、該有機アルコキシシランのゾルゲル反応にてゲルを形成する。例えば、加水分解性の有機アルコキシシランを加水分解してなる加水分解物を生成するとともに、さらに反応系のpHを上昇させ、有機アルコキシシランの重縮合反応を行うことによりポリシルセスキオキサンが得られる。重縮合反応に適したpHは、用いる有機アルコキシシランの等電点により異なるが、pHが高すぎると反応効率が低下しゲル形成が困難になることがある。このゾルゲル反応は、25℃以上80℃以下で行われるのが好ましく、30℃以上70℃以下で行われるのがより好ましく、40℃以上60℃以下で行われるのが更に好ましい。これにより、ポリシルセスキオキサンを、内部に溶媒としての水を含有する湿潤ゲルとして得ることができる。
【0053】
上記界面活性剤の酸性水溶液に対する含有量は、0.1質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上35質量%以下であるのがより好ましく、2質量%以上15質量%以下であるのが更に好ましい。
【0054】
界面活性剤としては、特に制限は無いが、例えば非イオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤として非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤のいずれか又は双方を適切に選択して使用することにより、所望のBET比表面積及び細孔径を得ることができる。非イオン性界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコール型(エーテル型、エステル・エーテル型)、多価アルコール型等が挙げられる。ポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤としては、例えばプルロニック(登録商標)型が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えばアミン塩型、第4級アンモニウム塩型等が挙げられる。界面活性剤の酸性水溶液に対する含有量を0.1質量%以上50質量%以下とすることにより、メソ孔の発達した大きなBET比表面積を有する多孔性ゲルを形成することができる。
【0055】
上記pH調整剤の酸性水溶液に対する含有量は、5質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、5.5質量%以上35質量%以下であるのがより好ましく、6質量%以上23質量%以下であるのが更に好ましい。pH調整剤の酸性水溶液に対する含有量を5質量%以上50質量%以下とすることにより、高い骨格強度と柔軟性を有する多孔性ポリシルセスキオキサンゲルを形成することができる。
【0056】
pH調整剤としては、特に制限は無いが、例えば尿素、アンモニア及び水酸化ナトリウムから選択されるいずれかを含む物質が挙げられる。
【0057】
上記酸性水溶液としては、特に制限はないが、塩酸、硝酸、酢酸などの水溶液が挙げられる。
【0058】
上記有機アルコキシシランは、以下の式(1)又は式(2)で表されるのが好ましい。以下の式(1)又は式(2)で表される有機アルコキシシランを用いることにより、所望の三次元骨格構造を有する多孔質シリコンオキシカーバイドを容易に形成することができる。
-SiR (OR3-x ・・・(1)
(但し、式中Rは、メチル基、エチル基、ビニル基及びフェニル基から選択されるいずれかの基であり、Rはメチル基、Rはメチル基又はエチル基を表す。式中整数xは、0又は1である。)
-(SiR (OR3-y ・・・(2)
(但し、式中Rは、メチレン基、エチレン基、へキシレン基、ビニレン基、フェニレン基及びビフェニレン基から選択されるいずれかの基を含み、Rはメチル基、Rはメチル基又はエチル基を表す。式中整数yは、0又は1である。)
【0059】
上記式(1)で表される有機アルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシランが挙げられる。また、上記式(2)で表される有機アルコキシシランの具体例としては、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(メチルジメトキシシリル)メタン、ビス(メチルジエトキシシリル)メタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジエトキシシリル)エタン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(メチルジエトキシシリル)ヘキサン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エテン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エテン、1,2-ビス(メチルジメトキシシリル)エテン、1,2-ビス(メチルジエトキシシリル)エテン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(メチルジメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(メチルジエトキシシリル)ベンゼン、4,4’-ビス(トリメトキシシリル)ビフェニル、4,4’-ビス(トリエトキシシリル)ビフェニル、4,4’-ビス(メチルジメトキシシリル)ビフェニル、4,4’-ビス(メチルジエトキシシリル)ビフェニルが挙げられる。上記のエテン誘導体にはシス/トランスの幾何異性体が存在するが、いずれの異性体の場合も使用できる。
【0060】
この工程(A)では、上記酸性水溶液に炭素含有材料又は有機ポリマーを更に添加して、炭素含有材料又は有機ポリマーを含有するゲルを形成する。炭素含有化合物又は有機ポリマーをアルコキシシランのゾルゲル反応中に添加することで、工程(C)で形成される前駆体を工程(D)で焼成した後に多孔質の三次元構造骨格中にナノレベルで炭素含有材料を配置でき、本来絶縁体である多孔質シリコンオキシカーバイドに優れた導電性を付与することができる。有機ポリマーは、工程(D)で焼成を行うことにより熱分解が進行し、低結晶性ナノカーボンとして多孔質シリコンオキシカーバイド中に保持され、導電性を付与することが可能となる。
【0061】
上記工程(A)において、炭素含有材料又は有機ポリマーと有機アルコキシシランとの質量比が2.5~50:97.5~50となるように、炭素含有材料又は導電性有機ポリマーを酸性水溶液に添加するのが好ましい。また、炭素含有材料又は有機ポリマーと有機アルコキシシランとの質量比は、3~30:70~97であるのがより好ましく、5~20:80~95であるのが更に好ましい。炭素含有材料又は有機ポリマーと有機アルコキシシランとの質量比を上記範囲内の値とすることにより、より大きいBET比表面積及びより高い導電率の両立を実現することができる。炭素含有材料又は有機ポリマーの添加量が多くなり過ぎると、ゾルゲル反応系からの分離が進行し、ポリシルセスキオキサンからなるゲル形成の妨げとなるため好ましくない。
【0062】
炭素含有材料は、特に制限されないが、例えばカーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及び低結晶性ナノカーボンから選択される一又は複数で構成することができる。このうち、高い導電性を実現できる点及び製造性の観点からは、炭素含有材料はカーボンブラックであることが好ましい。
【0063】
有機ポリマーは、特に制限されないが、例えばフェノール樹脂、ポリスチレン及びポリジビニルベンゼンから選択される一又は複数で構成することができる。
【0064】
[工程(B)]
工程(B)では、上記工程(A)で得られたゲルをアルコールで洗浄する。洗浄の際に使用されるアルコールは、特に制限されないが、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールが挙げられる。これにより、酸性水溶液中から不要な界面活性剤を除去すると共に、当該酸性水溶液中の水をアルコールに置換することができる。また、アルコールで洗浄した後、さらにヘキサンやヘプタンなどの炭化水素系溶媒に置換してもよい。本工程(B)では、高表面張力溶媒である水が、低表面張力溶媒であるアルコールや炭化水素系溶媒に置換され、後述する工程(C)の常温、常圧での乾燥工程においてシロキサンネットワークの収縮を抑制でき、多孔質ゲルの構造を形成することが容易となる。
【0065】
[工程(C)]
工程(C)では、洗浄後のゲルを乾燥して多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を形成する。この工程(C)において、80℃、14MPaで二酸化炭素による超臨界乾燥する方法、室温、常圧で乾燥する方法、20℃以上80℃以下で真空乾燥する方法などが挙げられる。これらの中でも、製造コストが安く、また高い骨格強度と柔軟性を有するポリシルセスキオキサンが形成されている場合に、メソ孔が発達した高密度の多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を得られる点で、室温、常圧で乾燥する方法が好ましい。
【0066】
[工程(D)]
工程(D)では、上記の炭素含有材料又は有機ポリマーを含有する多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を焼成して、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を得る。この工程で、焼成によりポリシルセスキオキサンの有機基から炭素原子が供給されシリコンオキシカーバイド骨格が形成されるが、一方で、ゲル中にナノレベルで分散した炭素含有材料又は有機ポリマーからも骨格中に炭素原子が供給される。有機ポリマーは、焼成により熱分解が進行し、低結晶性ナノカーボンとして多孔質シリコンオキシカーバイド中に保持される。
【0067】
焼成は公知慣用の方法で行うことができ、特に制限はないが、例えば、不活性ガス雰囲気下で、1分当たり5℃で昇温を行い、到達した最高温度を一定時間維持することにより焼成する。焼成の最高温度は、700℃以上1200℃以下であることが好ましく、750℃以上1100℃以下であることがさらに好ましく、800℃以上1000℃以下であることが特に好ましい。最高温度の維持時間は、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を得るのに効果的な時間を目安として適宜定めればよく、一例として、5分~16時間が好ましく、10分~10時間がさらに好ましく、30分~3時間が特に好ましい。焼成は二段階以上で行なっても良い。すなわち、第一段階において、最高到達温度より低温で一定時間焼成を行い、再度昇温し焼成することができる。焼成は、常圧焼成であってよい。
不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどが例示される。なお、この不活性ガス中に、水素ガス等の還元性ガスを含んでもよい。
焼成は、固定床又は流動床方式の炭化炉で行うことができ、所定温度へ昇温できる機能を有する炉であれば、炭化炉の加熱方式及び種類は特に限定されない。炭化炉としては、例えば、リードハンマー炉、トンネル炉、単独炉等が挙げられる。
【0068】
本工程(D)において、多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体に炭素含有材料又は有機ポリマーをさらに混合して、その混合物を焼成することもできる。工程(D)で多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体に有機ポリマーを混合する場合も、工程(A)で混合する場合と同様、焼成により熱分解が進行し、低結晶性ナノカーボンとして多孔質シリコンオキシカーバイド中に保持される。
【実施例
【0069】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
6gの5mM酢酸水溶液(関東化学社製)、0.8gのプルロニック(登録商標)F-127(BASF社製)、0.5gの尿素(関東化学社製)、0.24gのケッチェンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、製品名「EC-600」)をバイアルに入れ、室温で10分間撹拌した。そこに、5gのメチルトリメトキシシラン(関東化学社製)を添加し、30分間室温で撹拌した。その後、60℃、4日間で反応させ湿潤ゲルを得た。得られた湿潤ゲルをメタノール(関東化学社製)で洗浄し、室温、常圧、3日間で乾燥した後、更に80℃、常圧、6時間で乾燥し、3.5gの多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を得た。この多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体1gを管状炉へ仕込み、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で1000℃まで昇温し、2時間保持する条件で焼成を行った後、得られた固形物0.8gをペイントコンディショナーで粉砕し、粒子径(D50)1μmの粉体を得た。得られた粉体の走査型電子顕微鏡画像を図2に示す。また、図3に示す粉体の29Si-NMRスペクトルより、Cに結合したSiの存在が検出され、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料の生成が確認された。
【0071】
(実施例2)
プルロニックF-127を1.0gに変え、尿素を0.4gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.5g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を76%の収率で得た。
【0072】
(実施例3)
プルロニックF-127を0.65gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.4g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を75%の収率で得た。
【0073】
(実施例4)
プルロニックF-127を0.40gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.3g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を74%の収率で得た。
【0074】
(実施例5)
プルロニックF-127を0.37gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.4g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を72%の収率で得た。
【0075】
(実施例6)
プルロニックF-127を0.34gに変え、尿素を6gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.5g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を78%の収率で得た。
【0076】
(実施例7)
5mM酢酸水溶液を10gに変え、尿素を6gに変え、プルロニックF-127をセチルトリメチルアンモニウムクロリド(東京化成社製)0.40gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.5g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を77%の収率で得た。
【0077】
(実施例8)
尿素を3gに変えたこと以外は、実施例7と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.2g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を71%の収率で得た。
【0078】
(実施例9)
セチルトリメチルアンモニウムクロリドを0.06gに変えた以外は、実施例8と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.1g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を76%の収率で得た。
【0079】
(実施例10)
ケッチェンブラックをフェノール樹脂(DIC社製、製品名「フェノライトIF-3300」)1.5gに変えた以外は、実施例8と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.6g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を65%の収率で得た。
【0080】
(実施例11)
フェノール樹脂を2.5gに変えたこと以外は、実施例10と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.5g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を67%の収率で得た。
【0081】
(実施例12)
フェノール樹脂をカーボンナノチューブ(シーナノテクノロジー社製、製品名「Flotube7000」)0.24gに変えたこと以外は、実施例8と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.2g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を43%の収率で得た。
【0082】
(実施例13)
ケッチェンブラックを0.15gに変えたこと以外は、実施例8と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.5g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を70%の収率で得た。
【0083】
(実施例14)
ケッチェンブラックを0.4gに変えたこと以外は、実施例8と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.4g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を78%の収率で得た。
【0084】
(実施例15)
メチルトリメトキシシランを4gに変え、ビニルトリメトキシシラン(関東化学社製)を1g用いたこと以外は、実施例8と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.5g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を79%の収率で得た。
【0085】
(実施例16)
ビニルトリメトキシシランをフェニルトリメトキシシラン(関東化学社製)1gに変えたこと以外は、実施例15と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.4g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を80%の収率で得た。
【0086】
(実施例17)
700℃で焼成したこと以外は、実施例1と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.5g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を77%の収率で得た。
【0087】
(実施例18)
5gの5mM硝酸水溶液(関東化学社製)、5gの1,2-ビス(メチルジエトシシシリル)エタン(Gelest Inc.製)、0.24gのケッチェンブラックをバイアルに入れ、室温で30分間撹拌した。そこに、3gのポリオキシエチレン-2-エチルへキシルエーテル(日油社製、ノニオン EH-208)を添加して3分間撹拌し、そこに2gの0.6Mテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(東京化成社製)を添加し、30秒間室温で撹拌した。その後、80℃、4日間で反応させ湿潤ゲルを得た。得られた湿潤ゲルをメタノールで洗浄し、室温、常圧、3日間で乾燥した後、更に80℃、常圧、6時間で乾燥し、3.0gの多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を得た。この多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体1gを、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で1000℃まで昇温し、2時間保持する条件で焼成を行った後、得られた固形物0.7gをペイントコンディショナーで粉砕し、粒子径(D50)1μmの多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を得た。
【0088】
(実施例19)
5gの1,2-ビス(メチルジエトシシシリル)エテン(Gelest Inc.製、トランス体)、0.24gのケッチェンブラック、5gのポリオキシエチレン-2-エチルへキシルエーテルをバイアルに入れ、室温で30分間撹拌した。そこに、5gの5mM硝酸水溶液を添加して10分間撹拌し、そこに5gの0.6Mテトラエチルアンモニウムヒドロキシドを添加し、30秒間室温で撹拌したこと以外は、実施例18と同様にして、多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を2.9g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を79%の収率で得た。
【0089】
(実施例20)
1.8gの3M塩酸水溶液(関東化学社製)、7.5gのイソプロピルアルコール(関東化学社製)、5gの1,2-ビス(トリエトシシシリル)エタン(東京化成社製)、0.24gのケッチェンブラック、0.01gのポリオキシエチレン-2-エチルへキシルエーテルをバイアルに入れ、室温で10分間撹拌した。そこに、3.5gの13.4M水酸化アンモニウム(関東化学社製)を添加し、30分間室温で撹拌した。その後、60℃、4日間で反応させ湿潤ゲルを得た。得られた湿潤ゲルをメタノールで洗浄し、室温、常圧、3日間で乾燥した後、更に80℃、常圧、6時間で乾燥し、2.4gの多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を得た。この多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体1gを、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で1000℃まで昇温し、2時間保持する条件で焼成を行った後、得られた固形物0.7gをペイントコンディショナーで粉砕し、粒子径(D50)1μmの多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を得た。
【0090】
(比較例1)
Ar流通下、ノボラック型フェノール樹脂(群栄化学工業社製、PSM4261)18.6gを細孔形成剤であるジエチレングリコール(東京化成社製、分子量106)60mlに溶解させ、撹拌しつつテトラエトキシシラン(東京化成社製)108.6gを滴下した。その後、酸触媒としてp-トルエンスルホン酸(東京化成社製)4.68g加えて重合を開始した。25℃/時間の昇温速度で溶液の沸点付近の温度である115℃まで加熱し、その後20時間保持して還流を行った。次いで、200℃の温度まで昇温し、真空中、24時間保持することにより加熱硬化するとともに脱溶媒処理を実施した。得られた重合体をAr雰囲気中、600℃で1時間保持することにより、一次焼成を施した。その後、Ar雰囲気中、温度1000℃で3時間保持することにより二次焼成を行い、目的とする多孔質シリコンオキシカーバイドを得た。
【0091】
(比較例2)
尿素を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.0g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を35%の収率で得た。
【0092】
(比較例3)
ケッチェンブラックの仕込み量を0.10gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体を3.5g得た後、焼成工程を行い、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を69%の収率で得た。
【0093】
上記の実施例1~20及び比較例1~3について、以下の方法により測定を行った。
【0094】
[BET比表面積、細孔容積及び細孔径の測定]
多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料又は多孔質シリコンオキシカーバイドの粉体を0.04g秤量してサンプル管に入れ、100℃で6時間真空乾燥による前処理を行った。前処理後、比表面積/細孔分布装置(マイクロトラック・ベル社製、装置名「BELSORP-miniII」)にて、相対圧力を変化させながら窒素を-196℃で試料へ吸着させた。
【0095】
[導電率の測定]
多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料又は多孔質シリコンオキシカーバイドの粉体を粉体抵抗測定システム(三菱ケミカルアナリテック社製、装置名「MCP-PD51」)へ導入し、付属の油圧ポンプを用いて試料を加圧し、12kNに達した後、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製、装置名「ロレスターGX」)にて抵抗率を測定し、抵抗率から下記式を用いて導電率を算出した。これらの測定結果を表1に示す。
導電率(S/cm)=(粉体抵抗(Ω・cm))-1
【0096】
【表1】
【0097】
表1に示すように、実施例1~20では、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料のBET比表面積が100m/g以上、細孔容積が0.5cm/g以上、細孔径が2nm以上200nm以下、導電率は、1.0×10-6S/cm以上であった。これらの結果より、BET比表面積が大きく且つ導電率が大きい多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料を得られることがわかった。
【0098】
一方、比較例1では、多孔質シリコンオキシカーバイドのBET比表面積は70m/g、細孔容積は0.2cm/g、細孔径は10nmであった。また、導電率は、1.0×10-9S/cmであった。よってゾルゲル反応を伴う多孔質シリコンオキシカーバイド前駆体の合成を行わない場合、BET比表面積及び導電率の双方が実施例1~20のいずれよりも大幅に小さいことが分かった。
【0099】
比較例2では、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料のBET比表面積は50m/g、細孔体積は0.2cm/g、細孔径は5nmであった。また、導電率は2.6×10-3S/cmであった。よってpH調整剤としての尿素を使用しなかった場合、BET比表面積が実施例1~20のいずれよりも大幅に小さいことが分かった。
【0100】
比較例3では、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料のBET比表面積は370m/g、細孔容積は1.8cm/g、細孔径は35nmであった。また、導電率は1.6×10-8S/cmであった。よって、ケッチェンブラックの使用量を実施例1よりも大幅に少なくした場合、導電率が実施例1~20のいずれよりも大幅に小さいことが分かった。
【0101】
(実施例21)
[貴金属を含む触媒の作製]
0.43gの塩化白金酸6水和物を超純水60mLに溶解させ、これに3.1gの亜硫酸水素ナトリウムを加えることにより還元反応を進行させた後、280mLの超純水を加え希釈した。次に、5%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを約5に調整を行いながら35%過酸化水素(24mL)を滴下し白金コロイドを含む分散液を得た。続いて、担体担持後の白金量が担体を含む全質量の15%となるようにコロイド分散液を分取し、そこに実施例1で合成した多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料0.4gを担体として添加し、90℃で3時間混合した。冷却後、固液分離し、得られた粉体から塩化物イオンを除去するために超純水で十分に洗浄し、その後、大気下にて60℃で12時間乾燥させ、多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料担体に白金を担持させた触媒Aを得た。触媒Aの透過型電子顕微鏡画像を図4に示す。粒子径約5nmの白金粒子が担持されたことが確認された。
【0102】
[電極作製]
直径5mmのグラッシーカーボン(GC)電極をラッピングフィルムおよびアルミナペーストを用いて研磨し、その後超純水を用いて超音波洗浄を行った。触媒Aを60体積%エタノール水溶液に加え、超音波ホモジナイザーにて分散させた。これをGCディスク上へ滴下し、常温で12h乾燥させた。乾燥後、GCディスク上の触媒に5%Nafion(登録商標)溶液を乾燥膜厚が50nmになるように滴下し、常温で12h乾燥させた。
【0103】
[電気化学測定による電極評価]
電極評価は北斗電工社製の電気化学測定システムHZ-5000を用いて実施した。0.1M過塩素酸水溶液に窒素ガスを30分間パージした後、参照極に可逆水素電極(RHE)を用い、電位範囲0.05~1.2V、掃引速度150mV/sで50回クリーニングを実施した。その後、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を電位範囲0.05~1.2V、掃引速度100mV/sで実施し本測定とした。電気化学的活性表面積(ECSA)の解析は0.4V以下に見られる水素の吸着波を用いて実施した。さらに、1.0V以上での触媒の安定性を確認するため、1.0~1.5Vまでの電位範囲を500回掃引した後、0.05~1.2Vの電位範囲でCV測定を行った。
この測定手順を1セットとして、10セット以上(5000サイクル以上の掃引)を行った。触媒AのCV測定結果を図5に示す。各測定サイクルでの電流値は一定であった。図6に測定サイクルに対するECSAの変化を示す。8000サイクルまでの評価より、ECSAの低下は初期値の約20%で収まることが判明し、触媒Aの劣化は小さく高電位安定性を有することが確認された。
【0104】
(比較例4)
実施例1で合成した多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料0.4gを担体として用いる代わりに、ケッチェンブラック0.4gを担体として用いたこと以外は、実施例21と同様にして、貴金属を含む触媒の作製(触媒Bの作製)、電極作製、及び電気化学測定による電極評価を行った。
【0105】
触媒BのCV測定結果を図7に示す。電位の掃引に伴い0.2~0.6V付近の電流値が増加すると共に、炭素の劣化で生じたキノン基の酸化還元ピークが0.6V付近で現れた。図8に測定サイクルに対するECSAの変化を示す。8000サイクルまでの評価より、ECSAは初期値の約50%まで低下することが判明し、実施例21で示した触媒Aの結果と比較して、カーボン系材料を担体として用いた触媒Bの高電位安定性は低く耐久性に劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本実施形態の多孔質シリコンオキシカーバイド複合材料は、大きなBET比表面積及び高い導電性を併せ持つことから、燃料電池用電極の触媒層に用いられる電極用材料として好適である。
図1
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図8