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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/54 20100101AFI20230411BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20230411BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20230411BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20230411BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20230411BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20230411BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230411BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/50
H01L33/62
F21S2/00 110
F21V23/00 160
H01L23/12 501B
H01L23/12 F
F21Y115:10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019206190
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021082628
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390022471
【氏名又は名称】アオイ電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴章
(72)【発明者】
【氏名】山下 良平
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-041094(JP,A)
【文献】特開2012-195350(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216089(WO,A1)
【文献】特開2017-076673(JP,A)
【文献】特開2015-220426(JP,A)
【文献】特開2011-060801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
F21S 2/00
F21V 23/00
H01L 23/12
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の面内に複数の発光部が配置された被加工基板を用意すること、
前記複数の発光部から光が発せられる方向とは反対の側に配線構造物を配置し、前記複数の発光部と前記配線構造物とを電気的に接合すること、
前記複数の発光部を前記配線構造物と電気的に接合した面とは反対の側から、隣り合う前記複数の発光部の間が切断されるように前記被加工基板をダイシングソーにより切断することで、前記発光部と同数の前記発光部を含む光源ユニットを形成すること、
前記光源ユニットと前記配線構造物の間、および、前記光源ユニットの相互の間の空隙部を封止部で封止すること、を含み、
前記複数の発光部の間を切断する際に、上面視で複数の前記発光部の周囲の少なくとも一部に、前記配線構造物の前記発光部と対向する面に溝部が形成され、
前記封止部は、前記溝部の少なくとも一部と接触するように充填され
前記溝部の幅が、隣接する前記光源ユニットの間の間隔に等しい、発光装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置の製造方法において、
前記溝部は、前記配線構造物のうちの絶縁性の部材で構成された絶縁部に形成されている、発光装置の製造方法
【請求項3】
請求項1に記載の発光装置の製造方法において、
前記配線構造物は、絶縁性基板と前記絶縁性基板内に形成された配線とを有する配線基板である、発光装置の製造方法
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記溝部の段差は、前記配線構造物の厚さの1/5以上、かつ4/5以下である、発光装置の製造方法
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記複数の光源ユニットのそれぞれは、
前記発光部の、前記配線構造物とは反対側に配置されている光透過部材をさらに有する、発光装置の製造方法
【請求項6】
請求項に記載の発光装置の製造方法において、
前記複数の光源ユニットのそれぞれは、
前記光透過部材の前記配線構造物とは反対側に配置され、前記複数の発光部から発する第1波長の光を第2波長の光に変換する波長変換部をさらに有する、発光装置の製造方法
【請求項7】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記光源ユニットの前記配線構造物とは反対側の面と、前記封止部の前記配線構造物とは反対側の面とが、同一平面内にある、発光装置の製造方法
【請求項8】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記複数の光源ユニットの前記配線構造物とは反対側に、前記複数の光源ユニットから発する第1波長の光を第2波長の光に変換する波長変換部を有する、発光装置の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
面内に配置した複数のLED(発光ダイオード)と、蛍光体とを組み合わせた発光装置が提案されている(特許文献1参照)。また、基板上に複数のLEDを配置し、それぞれのLEDへの配線を一括して形成する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-270314号公報
【文献】特開2011-199193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2においては、発光層を含む積層体と、積層体に電力を供給する配線構造物に相当する補強樹脂および金属ピラーとの間に、封止部に相当する絶縁膜が形成されている。しかし、絶縁膜と補強樹脂とが接触する部分の形状は平坦であり、従って接触面積が小さく、絶縁膜と補強樹脂との間に十分な接合力を確保することが難しい。この結果、補強樹脂が絶縁膜および積層体から剥離する恐れがあり、発光装置の耐久性が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、発光装置は、配線構造物と、前記配線構造物に電気的に接続されている複数の光源ユニットと、前記配線構造物と前記複数の光源ユニットとに接して配置されている封止部と、を備え、前記配線構造物は、前記複数の光源ユニットの側に凹凸部を有し、前記凹凸部の少なくとも一部は前記封止部と接触している。
【発明の効果】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、光源ユニットと配線構造物との間の接合力が強化された発光装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1(a)~図1(c)は、第1実施形態の発光装置を製造する製造工程を示す断面図。
図2図2(a)~図2(b)は、図1に続く第1実施形態の発光装置を製造する製造工程を示す断面図。図2(c)は第1実施形態の発光装置を示す図。
図3図3は、変形例の発光装置を示す図。図3(a)は変形例1を示す図、図3(b)は変形例2を示す図。
図4図4(a)~図4(d)は、第2実施形態の発光装置を製造する製造工程を示す断面図。
図5図5(a)~図5(c)は、図4に続く第2実施形態の発光装置を製造する製造工程を示す断面図。
図6図6(a)は、第2実施形態の発光装置を示す図。図6(b)は変形例3の発光装置を示す図。図6(c)は変形例4の発光装置を示す図。
図7図7は、さらなる変形例の発光装置を示す図。図7(a)は変形例5の発光装置を示す図。図7(b)は変形例6の発光装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発光装置の第1実施形態)
以下、図1から図2を参照しつつ、第1実施形態の発光装置1の製造方法を説明する。図1(a)~図1(c)は、第1実施形態の発光装置1を製造する製造工程を示す断面図である。
【0009】
(工程1)
同一面内に複数の発光部10が配置されている、被加工基板9を用意する。
図1(a)は、被加工基板9の断面図を示している。複数の発光部10は、サファイア基板等の光透過部材11aの面上の、同一面内に配置されている。
【0010】
発光部10はGaN(窒化ガリウム)等の半導体を含むLEDであり、光透過部材11aに近い側から、n型半導体層2、発光層4、p型半導体層5、および透明電極6が順次積層されている。n型半導体層2、発光層4、p型半導体層5、および透明電極6を覆って、保護膜7が形成されている。
発光部10には、n型半導体層2に電力を供給するためのn型電極パッド3、およびp型半導体層5に電力を供給するためのp型電極パッド8も形成されている。n型電極パッド3、およびp型電極パッド8の上面は保護膜7から露出している。
発光層4を含む発光部10の少なくとも一部は、有機材料で構成されていてもよい。
【0011】
発光部10は、図1(a)および以降の各図の左右方向のみでなく、奥行き方向にも複数並んで形成されており、発光部10が形成された光透過部材11aの面に垂直な方向から見れば、その面上には複数の発光部10が格子状に配列して形成されている。
また、図1(a)および以降の各図においては、左右方向に並ぶ3個の発光部10を示しているが、発光部10の数は左右方向および奥行き方向のいずれについても3個以上、例えば数百個以上であっても良い。
【0012】
なお、図1(a)においては、各発光部10に含まれるn型半導体層2は、光透過部材11aの面内方向に連続して形成されている。しかし、n型半導体層2は各発光部10毎に分離して形成されていても良い。
図1(a)に示した構造は、透明基板上に複数のLEDを形成するための公知の方法により製造することができる。
【0013】
(工程2)
図1(b)に示すように、光透過部材11aの、発光部10が形成された面とは反対側の面に、波長変換部材12aおよび保護部材13aを、順次形成する。
波長変換部材12aは、一例として、蛍光体を含んだ樹脂からなる蛍光体シートであっても良い。また、波長変換部材12aは、蛍光体の特性が異なる複数の蛍光体シートを積層して形成したものであっても良い。
保護部材13aは、一例として、樹脂からなる透明な保護シートであっても良い。
【0014】
(工程3)
図1(c)に示すように、図1(b)に示した光透過部材11a上の複数の発光部10に、絶縁部材と導電層とを含む配線構造物の一例としての、配線基板20を貼り付ける。図1(c)は、図1(b)とは上下方向を反転して示している。
【0015】
配線基板20は、ガラス基板26上に形成された絶縁性基板25と、絶縁性基板25内に形成された下層配線21、中層配線22、および上層配線23とを含む。ただし、配線構造物の一例としての配線基板20は、ガラス基板26は含まない。下層配線21、中層配線22、および上層配線23は、その少なくとも一部が、相互に電気的に接続されている。絶縁性基板25は、配線基板20のうちの絶縁部を構成している。
光透過部材11a上に形成されている発光部10のn型電極パッド3またはp型電極パッド8と、配線基板20上の上層配線23とは、貼り合わせ前に上層配線23上に形成されていたはんだ24により、電気的に接合される。
配線基板20は、例えば、特開2018-190782号公報に記載される方法により製造することができるので、その製造方法の詳細の説明は省略する。
【0016】
(工程4)
工程3の終了後、図2(a)に示すように、隣り合う発光部10同士を分割するように、光透過部材11a、波長変換部材12a、および保護部材13aをダイシングソーで切断し、空隙部27を形成する。空隙部27の幅は、切断に用いたダイシングソーのブレードの厚さに相当する。ダイシングソーにより切断された光透過部材11a、波長変換部材12a、および保護部材13aを、それぞれ、光透過部材11、波長変換部材12、および保護部材13と呼ぶ。
【0017】
また、発光部10と、それぞれの発光部10と一体的に構成されている光透過部材11、波長変換部材12、および保護部材13とを、合わせて光源ユニット15とも呼ぶ。
後述する変形例に示すように、光源ユニット15は、必ずしも光透過部材11、波長変換部材12、および保護部材13の全てを有している必要は無く、光透過部材11、波長変換部材12、および保護部材13のいずれか1つ以上が省略されていても良い。
【0018】
このダイシングソーでの光透過部材11a等の切断に際し、ダイシングソーにより、配線基板20に含まれる絶縁性基板25の発光部10側の面に、溝28を形成する。溝28の幅は、切断に用いたダイシングソーのブレードの厚さに相当する。
あるいは、波長変換部材12aおよび保護部材13aの切断後に、空隙部27を介して、ダイシングソーにより、絶縁性基板25の発光部10側の面に溝28を形成しても良い。
あるいは、配線基板20を複数の発光部10に貼り付ける以前に、配線基板20の絶縁性基板25に予め溝28を形成しておいても良い。
【0019】
(工程5)
切断されて形成された複数の光源ユニット15を、封止部30で封止する。封止部30として、エポキシ樹脂等の樹脂材料を使用する。
図2(b)は、光源ユニット15と配線基板20の間、および光源ユニット15の相互間の空隙部27に封止部30が形成された状態を示している。すなわち、封止部30は、空隙部27、および複数の光源ユニット15と配線基板20との間に充填され、光源ユニット15と配線基板20とに接触して配置されている。
【0020】
配線基板20に含まれる絶縁性基板25の溝28の少なくとも一部にも封止部30が充填される。すなわち、封止部30は、溝28の少なくとも一部とも接触している。
封止部30が溝28に充填されることにより、封止部30と配線基板20との接触面積が増すとともにアンカー効果が発揮され、配線基板20と封止部30との接合力を強化することができる。
【0021】
なお、接合力を強化するための構造は上述の溝28に限られるものではなく、配線基板20の発光部10側の面に、溝、穴、突起等の凹凸部を形成することで、配線基板20と封止部30との接合力を強化することができる。凹凸部により、封止部30と接触する配線基板20の面積が増加しているので、封止部30は、凹凸部の全面に渡って配線基板20と接触せずとも、少なくとも一部と接触することで、アンカー効果も加わり、十分な接合力を発揮することができる。
【0022】
以上の例では、溝28等の凹凸部は、配線基板20の絶縁部(絶縁性基板25)の表面に形成するとしたが、配線基板20に形成されている配線層(上層配線23等)を凹凸部としても良い。
ただし、配線層は、絶縁性基板25に対してそれほど高い接合力を有するものではなく、配線基板20から剥離する恐れもある。従って、溝28等の凹凸部を配線基板20の絶縁部(絶縁性基板25)の表面に形成することにより、配線基板20と封止部30との接合力を一層強化することができる。
【0023】
(工程6)
保護部材13の上面に形成された封止部30を、研磨等により除去する。一例として、封止部30の上面が保護部材13の上面と同一平面(面一)になるように、封止部30を研磨等により除去する。
図2(c)は、保護部材13の上面に形成された封止部30が除去された状態を示す図である。
【0024】
(工程7)
配線基板20に密着しているガラス基板26を、配線基板20から剥離する。その後、配線基板20に含まれる下層配線21の一部に接して、はんだボール31を形成することで、第1実施形態の発光装置1が完成する。
図2(c)は、第1実施形態の発光装置1を示している。
【0025】
(第1実施形態の発光装置の変形例1)
図3(a)は、上述の第1実施形態の発光装置1に対する変形例1の発光装置1aを示す図である。変形例1の発光装置1aの構成は、上述の第1実施形態の発光装置1と概ね共通しているが、光源ユニット15が波長変換部材12および保護部材13を有しない点が異なっている。
【0026】
変形例1の発光装置1aは、上述の第1実施形態の発光装置1の製造工程の工程2において、波長変換部材12aおよび保護部材13aの形成を省略することにより、製造することができる。
変形例1の発光装置1aの製造に際しては、上述の工程6において、一例として封止部30の上面が光透過部材11の上面と同一平面(面一)になるように、封止部30を研磨等により除去する。
【0027】
(第1実施形態の発光装置の変形例2)
図3(b)は、上述の第1実施形態の発光装置1に対する変形例2の発光装置1bを示す図である。変形例2の発光装置1bの構成は、上述の変形例1と概ね共通しているが、複数の光源ユニット15を覆う1つの波長変換部材12aを有する点が異なっている。
【0028】
変形例2の発光装置1bは、上述の変形例1の発光装置1aを製造した後に、複数の光源ユニット15のそれぞれの光透過部材11の上に、波長変換部材12aを一括して形成することにより、製造することができる。
【0029】
(発光装置の第2実施形態)
以下、図4から図6を参照して、第2実施形態の発光装置1cについて説明する。
後述する図6(a)に示した第2実施形態の発光装置1cの構成および製造方法は、その多くの部分が上述の第1実施形態の発光装置1と共通している。従って、以下では同一の構成には同一の符号を付して、適宜説明を省略する。
【0030】
第2実施形態の発光装置1cの製造方法は、図1(b)に示した上述の工程2までは、上述の第1実施形態の発光装置1の製造方法と同一である。
従って、以下では、第2実施形態の発光装置1cの製造に固有の工程3A以降について説明する。
【0031】
(工程3A)
光透過部材11a上に、発光部10を覆って絶縁膜34を形成し、フォトリソグラフィ工程により、n型電極パッド3およびp型電極パッド8上の絶縁膜34に、開口部を形成する。そして、絶縁膜34上および上記の開口部に、無電解メッキまたはスパッタ等により銅等の導体を成膜することによりシード層35を形成する。
図4(a)は、シード層35が形成された状態を示している。
【0032】
(工程4A)
光透過部材11a上に、シード層35を覆ってフォトレジスト36を形成する。そして、所定のフォトマスクを用いてフォトレジスト36を露光し、現像を行い、フォトレジスト36上の所定位置に開口部を形成する。この開口部から露出したシード層35を電極として、この開口部に銅等の導体を電解メッキすることにより導電層37を形成する。
図4(b)は、導電層37が形成された状態を示している。
【0033】
(工程5A)
図4(b)に示した状態から、フォトレジスト36を剥離し、シード層35および導電層37を覆って、新たにフォトレジスト38を形成する。そして、所定のフォトマスクを用いてフォトレジスト38を露光し、現像を行い、フォトレジスト38上の所定位置に開口部を形成する。この開口部から露出した導電層37を電極として、この開口部に銅等の導体を電解メッキすることにより柱状電極39を形成する。
図4(c)は、柱状電極39が形成された状態を示している。
【0034】
(工程6A)
図4(c)に示した状態から、フォトレジスト38を剥離し、シード層35を除去する。シード層35の除去は、導電層37をマスクとしてシード層35をエッチングすることにより行う。
図4(d)は、シード層35が除去された状態を示している。
【0035】
(工程7A)
導電層37、柱状電極39、および絶縁膜34を、絶縁部材41で封止する。すなわち、絶縁部材41を、図4(d)中の柱状電極39の上端面と同じ高さまで充填する。絶縁部材41として、例えばエポキシ樹脂等の樹脂材料を使用する。
図5(a)は、導電層37、柱状電極39、および絶縁膜34が絶縁部材41により封止された状態を示している。図5(a)は、図4(a)~図4(d)の各図とは上下方向を反転して示している。
【0036】
導電層37および柱状電極39はどちらも、光透過部材11aの面内方向(図中の左右方向および奥行方向)に配線を行うための配線層とすることができる。配線層である導電層37および柱状電極39により、後述するはんだボール31を、n型電極パッド3およびp型電極パッド8の直下以外の位置に形成することができる。
従って、絶縁膜34および絶縁部材41と、絶縁部材41に接している導電層37、柱状電極39およびシード層35とは、全体として絶縁部材と導電層を含む配線構造物の一例としての再配線層40を構成している。そして、絶縁膜34および絶縁部材41は、再配線層40のうちの絶縁部を構成している。
【0037】
(工程8A)
図5(b)に示すように、隣り合う発光部10同士を分割するように、保護部材13a、波長変換部材12a、光透過部材11a、n型半導体層2、および保護膜7を、保護部材13aの側からダイシングソーで切断し、空隙部42を形成する。さらに、空隙部42に沿って、ダイシングソーにより絶縁膜34に溝43を形成する。上述のとおり、絶縁膜34は再配線層40の一部であるから、溝43は再配線層40に形成されている。
【0038】
空隙部42および溝43は、発光部10の図5(b)中の左右のみではなく、紙面の奥行き方向にも形成する。
溝43の形成は、上述の空隙部42を形成する光透過部材11a等の切断と同時に行っても良く、空隙部42の形成後に別途、形成された空隙部42を介して行っても良い。
空隙部42の幅および溝43の幅は、使用したダイシングソーのブレードの厚さに相当する。
【0039】
上述の第1実施形態と同様に、ダイシングソーにより切断された光透過部材11a、波長変換部材12a、および保護部材13aを、それぞれ、光透過部材11、波長変換部材12、および保護部材13と呼ぶ。
同じく上述の第1実施形態と同様に、発光部10と、それぞれの発光部10と一体的に構成されている光透過部材11、波長変換部材12、および保護部材13とを、合わせて光源ユニット15とも呼ぶ。また、光源ユニット15は、必ずしも光透過部材11、波長変換部材12、および保護部材13の全てを有している必要は無く、光透過部材11、波長変換部材12、および保護部材13のいずれか1つ以上が省略されていても良い。
【0040】
工程8Aにおける切断後も、複数の光源ユニット15は、はんだ24および絶縁膜34を介して、絶縁部材41により一体的に保持されている。また、複数の光透過部材11、波長変換部材12および保護部材13も、複数の光源ユニット15のそれぞれと密着しており、光源ユニット15を介して絶縁部材41により一体的に保持されている。
【0041】
(工程9A)
工程8Aにおける切断により形成された複数の光源ユニット15を、封止部44で封止する。封止部44として、例えばエポキシ樹脂等の樹脂材料を使用する。なお、高反射性の特性を持つ樹脂材料や、遮光性の高い特性を持つ樹脂材料を用いても良い。
図5(c)は、複数の光源ユニット15が、封止部44で封止された状態を示している。封止部44を構成する封止材は、複数の保護部材13のそれぞれの間から空隙部42に流入し、空隙部42および溝43内に充填される。従って、封止部44は、光源ユニット15の側面、および溝43を含む絶縁膜34の表面と接触している。
【0042】
絶縁膜34の表面に溝43が形成されているために、封止部44が溝43に流入することにより、絶縁膜34と封止部44の接触面積を増大させ、再配線層40の一部である絶縁膜34と封止部44との接合力を増大させることができる。
なお、接合力を強化するための構造は上述の溝43に限られるものではない。例えば、溝43は、絶縁膜34を貫通し、絶縁部材41の一部に達する深さまで形成されていても良い。すなわち、絶縁膜34および絶縁部材41を含む再配線層40の発光部10側の面に、溝、穴、突起等の凹凸部を形成することで、再配線層40と封止部44との接合力を強化することができる。凹凸部は、上述のようにダイシングソーにより空隙部42を形成した後に、空隙部42を通じて再配線層40をドリル等で掘削して形成しても良い。
【0043】
また、溝43等の凹凸部は、再配線層40の絶縁部(絶縁膜34または絶縁部材41)の表面に形成するとしたが、再配線層40に含まれる導電層37または柱状電極39を凹凸部としても良い。
ただし、上述の第1実施形態と同様に、溝43等の凹凸部を再配線層40の絶縁部(絶縁膜34または絶縁部材41)の表面に形成することにより、再配線層40と封止部44との接合力を一層強化することができる。
【0044】
(工程10A)
保護部材13の上面に形成された封止部44を、研磨等により除去する。一例として、封止部44の上面が保護部材13の上面と同一平面(面一)になるように、封止部44を研磨等により除去する。また、それぞれの発光部10に形成されている柱状電極39の端面(図5(c)中では下端面)に、はんだボール31を形成する。これにより、第2実施形態の発光装置1cが完成する。
図6(a)は、完成した第2実施形態の発光装置1cを示している。
【0045】
(第2実施形態の発光装置の変形例3)
図6(b)は、上述の第2実施形態の発光装置1cに対する変形例3の発光装置1dを示す図である。変形例3の発光装置1dの構成は、上述の第2実施形態の発光装置1cと概ね共通しているが、光源ユニット15が波長変換部材12および保護部材13を有しない点が異なっている。
【0046】
変形例3の発光装置1dは、上述の第2実施形態の発光装置1cの製造工程の工程2において、波長変換部材12aおよび保護部材13aの形成を省略することにより、製造することができる。
変形例3の発光装置1dの製造に際しては、上述の工程10Aにおいて、一例として封止部44の上面が光透過部材11の上面と同一平面(面一)になるように、封止部44を研磨等により除去する。
【0047】
(第2実施形態の発光装置の変形例4)
図6(c)は、上述の第2実施形態の発光装置1cに対する変形例4の発光装置1eを示す図である。変形例4の発光装置1eの構成は、上述の変形例3と概ね共通しているが、複数の光源ユニット15を覆う1つの波長変換部材12aを有する点が異なっている。
【0048】
変形例4の発光装置1eは、上述の変形例3の発光装置1dを製造した後に、複数の光源ユニット15のそれぞれの光透過部材11の上に、波長変換部材12aを一括して形成することにより、製造することができる。
【0049】
(第2実施形態の発光装置の変形例5)
図7(a)は、上述の第2実施形態の発光装置1cに対する変形例5の発光装置1fを示す図である。変形例5の発光装置1fの構成は、上述の第2実施形態の発光装置1cと概ね共通しているため、以下では、同一の構成には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0050】
上述の各実施形態および各変形例の発光装置1、1a~1eにおいては、配線(下層配線21、中層配線22、上層配線23、導電層37、柱状電極39)は、1つの発光部10内のn型電極パッド3またはp型電極パッド8と、はんだボール31とを電気的に接続する。
一方、図7(a)に示した変形例5の発光装置1fでは、少なくとも一部の導電層37は、複数の発光部10を相互に電気的に接続するように形成されている。
【0051】
なお、図7(a)では、一例として一部の導電層37が、1つの発光部10のn型電極パッド3と他の発光部10のp型電極パッド8とを電気的に接続した例を示しているが、配線の構成は、これに限るものではない。
すなわち、導電層37は、1つの発光部10のn型電極パッド3と他の発光部10のn型電極パッド3とを電気的に接続しても良く、3個以上の発光部10に含まれるn型電極パッド3またはp型電極パッド8のそれぞれを、相互に電気的に接続しても良い。
導電層37は、図7(a)に示したように紙面内の左右方向の一方向に限らず、紙面に垂直な方向等の任意の方向に形成されていても良い。
【0052】
なお、導電層37が、複数の発光部10を相互に電気的に接続するように形成される場合、導電層37は、再配線層40を、発光部10側の再配線層40に垂直な方向から見た上面視で、溝43等の凹凸部と交差して形成されることになる。従って、溝43等の凹凸部が、再配線層40の絶縁部材41に達する深さまで形成されていると、溝43の形成に際して、導電層37を破損する恐れがある。従って、変形例5の発光装置1fにおいては、溝43等の凹凸部の最深部が、絶縁膜34の内部になるように留めておく。
【0053】
なお、上述の変形例3および変形例4の発光装置1d、1eにおいても、変形例4の発光装置1fと同様に、導電層37を、複数の発光部10を相互に電気的に接続するように形成しても良い。
【0054】
(第1実施形態の発光装置の変形例6)
図7(b)は、上述の第1実施形態の発光装置1に対する変形例6の発光装置1gを示す図である。変形例6の発光装置1gの構成は、上述の第1実施形態の発光装置1と概ね共通しているため、以下では、同一の構成には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0055】
変形例6の発光装置1gは、上述の変形例6の発光装置1fと同様に、少なくとも一部の中層配線22が、複数の発光部10を相互に電気的に接続するように形成されている。
なお、図7(b)では、一例として一部の中層配線22が、1つの発光部10のn型電極パッド3と他の発光部10のp型電極パッド8とを電気的に接続した例を示しているが、配線の構成は、これに限るものではない。
【0056】
すなわち、中層配線22は、1つの発光部10のn型電極パッド3と他の発光部10のn型電極パッド3とを電気的に接続しても良く、3個以上の発光部10に含まれるn型電極パッド3またはp型電極パッド8のそれぞれを、相互に電気的に接続しても良い。
中層配線22は、図7(b)に示したように紙面内の左右方向の一方向に限らず、紙面に垂直な方向等の任意の方向に形成されていても良い。
また、中層配線22に代えて、下層配線21または上層配線23が、上記と同様に複数の発光部10を相互に電気的に接続するように形成されていても良い。
【0057】
(各実施形態および各変形例の発光装置に対する補足説明)
以上で説明した各実施形態および各変形例の発光装置1、1a~1eのいずれにおいても、発光部10が発する第1波長の光は、単一波長の光であっても良く、波長幅を有する光であっても良い。波長変換部材12は、第1波長の光の全てを第2波長の光に変換しても良く、第1波長の光の一部を第2波長の光に変換しても良い。第2波長の光は、第1波長の光とは波長が異なる光であり、単一波長の光であっても良く、波長幅を有する光であっても良い。波長変換部材12として蛍光体を含む材料を使用する場合には、一般的に第2波長は、第1波長よりも波長が長くなる。
【0058】
以上で説明した、各実施形態および各変形例の発光装置1、1a~1eは、必ずしもはんだボール31を備えなくても良いが、柱状電極39の端面または下層配線21が、はんだボール31を備えることにより、発光装置1、1aの電子基板等への実装時のコストの低減が図れる。ただし、発光装置1、1a~1eを実装すべき電子基板等に予めはんだが形成されている場合には、はんだボール31は不要である。
【0059】
以上で説明した、各実施形態および各変形例の発光装置1、1a~1eにおいて、配線構造物(配線基板20、再配線層40)の表面に形成する溝28、43等の凹凸部の段差は、配線構造物(配線基板20、再配線層40)の厚さの1/5以上、かつ4/5以下とすることができる。段差がこの範囲より小さいと、配線構造物(配線基板20、再配線層40)と封止部30、44との接触面積を十分に増大させることができず、段差がこの範囲より大きいと、配線構造物(配線基板20、再配線層40)の機械的な強度を弱めてしまう恐れがある。
【0060】
以上で説明した各実施形態および各変形例の発光装置1、1a~1eのいずれにおいても、溝28、43等の凹凸部は、上面視で複数の光源ユニット15の周囲の少なくとも一部に形成されている。ここで上面視とは、配線構造物(配線基板20、再配線層40)を、光源ユニット15側の、配線構造物(配線基板20、再配線層40)に垂直な方向から見た場合を言う。
封止部30、44は、主に複数の光源ユニット15のそれぞれの間を通って、配線構造物(配線基板20、再配線層40)の近傍に流入する。従って、溝部を上面視で複数の光源ユニット15の周囲の少なくとも一部に形成することにより、封止部30、44を高効率で溝部に充填することができ、配線構造物(配線基板20、再配線層40)と封止部30、44との接合力をさらに強化することができる。
【0061】
以上で説明した、各実施形態および各変形例の発光装置1、1a~1fのいずれにおいても、光透過部材11を省略しても良い。この場合、工程1において図1(a)に示した被加工基板9に代えて、機械的強度の高い波長変換部材12a上に直接複数の発光部10が形成された被加工基板を用意すれば良い。
【0062】
(第1実施形態、第2実施形態、および各変形例の発光装置の効果)
第1実施形態、第2実施形態、および各変形例の発光装置1、1a~1eによれば、以下の作用効果が得られる。
(1)第1実施形態、第2実施形態、および各変形例の発光装置1、a~1eは、配線構造物(配線基板20、再配線層40)と、配線構造物に電気的に接続されている複数の光源ユニット15と、配線構造物と複数の光源ユニット15とに接して配置されている封止部30、44とを備え、配線構造物は、複数の光源ユニット15の側に凹凸部(溝28、43)を有し、凹凸部の少なくとも一部は封止部30、44と接触している。
この構成により、配線構造物の凹凸部により、配線構造物と封止部30、44との接触面積が増大するとともに、アンカー効果が発揮される。そのため、光源ユニット15を保持する封止部30、44と配線構造物との間の接合力が強化された発光装置を実現できる。
【0063】
(2)さらに、凹凸部(溝28、43)は、配線構造物のうちの絶縁性の部材で構成された絶縁部(絶縁性基板25、絶縁部材41)に形成されている構成とすることで、配線構造物と封止部30、44との接合力を一層強化することができる。
(3)さらに、凹凸部は、配線構造物の複数の光源ユニット15の側の面に形成された溝部(溝28、43)とすることもできる。
【0064】
(4)さらに、溝部(溝28、43)は、上面視で複数の光源ユニット15の周囲の少なくとも一部に形成されている構成とすることで、配線構造物と封止部30、44との接合力をさらに強化することができる。封止部30、44は、主に複数の光源ユニット15のそれぞれの間を通って、配線構造物の近傍に流入する。従って、溝部を上面視で複数の光源ユニット15の周囲の少なくとも一部に形成することにより、封止部30、44を高効率で溝部に充填することができるためである。
【0065】
(5)さらに、溝部(溝28、43)の幅を、複数の光源ユニット15の間の間隔に等しくすると、ダイシングソーによる切断により複数の光源ユニット15を形成する工程(工程4、工程8A)において、上記の切断と同時に溝部を形成することができ、溝部の形成工程のコストダウンが図れる。
(6)さらに、凹凸部の段差を、配線構造物の厚さの1/5以上、かつ4/5以下とすることで、光源ユニット15を保持する封止部30、44と配線構造物との間の接合力を強化するとともに、配線構造物の機械的強度を維持することができる。
【0066】
(7)さらに、複数の光源ユニット15のそれぞれは、配線構造物に電気的に接続されている発光部10と、発光部10の、配線構造物とは反対側に配置されている光透過部材11と、を有する構成としても良い。この構成により、発光部10を、光透過部材11により機械的および化学的に保護することができる。
(8)さらに、複数の光源ユニット15のそれぞれは、光透過部材11の配線構造物とは反対側に配置され、複数の発光部10から発する第1波長の光を第2波長の光に変換する波長変換部をさらに有する構成としても良い。この構成により、より広い波長域を有する光を発生する発光装置を実現できる。
【0067】
(9)さらに、複数の光源ユニット15の配線構造物とは反対側に、複数の光源ユニット15から発する第1波長の光を第2波長の光に変換する波長変換部を有する構成としても良い。この構成により、より広い波長域を有する光を発生する発光装置を実現できる。
(10)さらに、配線構造物を、絶縁性基板25と絶縁性基板25内に形成された配線(21~23)とを有する配線基板20とすることで、発光装置1、1a、1bの機械的強度を一層高めることができる。
【0068】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1,1a~1e…発光装置、2…n型半導体層、3…n型電極パッド、4…発光層、5…p型半導体層、6…透明電極、7…保護膜、8…p型電極パッド、9…被加工基板、10…発光部、11,11a…光透過部材、12,12a…波長変換部材、13,13a…保護部材、20…配線基板、21…下層配線、22…中層配線、23…上層配線、25…絶縁性基板(絶縁部)、24…はんだ、27…空隙部、28,43…溝(凹凸部)、30,44…封止部、31…はんだボール、34…絶縁膜、35…シード層、36,38…フォトレジスト、37…導電層、39…柱状電極、40…再配線層、41…絶縁部材(絶縁部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7