(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】複合材部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
B29C45/14
(21)【出願番号】P 2020540264
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2019050423
(87)【国際公開番号】W WO2019141560
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-07
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヴュスト,アンドレアス
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-082588(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2016-0002258(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサートと熱可塑性ポリマーで作られたプラスチック部分(17)を含むエネルギー吸収部品の製造方法であって、前記プラスチック部分(17)は少なくとも部分的に前記インサートを封入し、前記エネルギー吸収部品は運動エネルギーの制御された散逸のために確立され、
a)前記インサートの少なくとも
2つのパーツ(1
)を射出成形金型(11)に配置する工程、
b)前記射出成形金型(11)を閉じる工程、
c)熱可塑性ポリマーを前記金型(11)内に注入し、それによって前記インサートを少なくとも部分的に上乗せ成形する工程、を含み、
前記インサートは前記射出成形金型(11)に配置される前に修正されるか、又は、複合材部品を取り出すために前記射出成形金型を開ける前の、前記インサートが前記射出成形金型(11)にある間に修正され、前記インサートは、
エネルギー吸収の特性を調整するために、該インサートにくぼみ、波形、折り目、又は開口部を導入することによって修正され
、前記インサートが、前記射出成形金型を閉じる際に、又は、前記射出成形金型が閉じられた後であり前記ポリマーを射出する前において前記インサートの少なくとも2つのパーツに衝撃を与えるダイによって前記インサートのパーツ(1)を最終位置に押し込んで、前記インサートの少なくとも2つのパーツ(1)を接合又は接続することによって形成される、製造方法。
【請求項2】
前記インサートが分割され、前記分割されたインサートを接合することによって修正される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インサートは、ボルト、ネジ又はピンを追加することによって修正される、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
輪郭が前記インサートの少なくとも1つの端部に切られている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記インサートが金属、ポリマー又はセラミックから製造される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記プラスチック部分(17)を構成する熱可塑性ポリマーが強化されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記インサートの各パーツは2つの端部を含み、一方の端部が舌部として形成され、他方の端部が溝部として形成され、2つのパーツが、第一パーツの舌部を第二パーツの溝部に挿入し、かつ、その第二パーツの舌部をその第一パーツの溝部に挿入することにより接続される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサートと熱可塑性ポリマーで作られたプラスチック部分を含む複合材部品の製造方法に関し、そこではプラスチック部分が少なくとも部分的にインサートを封入しており、該方法は、
a)インサートのパーツを射出成形金型に配置する工程、
b)射出成形金型を閉じる工程、
c)熱可塑性ポリマーを金型に注入し、それによってインサートを少なくとも部分的に上乗せ成形する工程、
を含む。
【背景技術】
【0002】
インサートと熱可塑性ポリマーで作られたプラスチック部分を含む複合材部品は、例えばエネルギー吸収部品である。このようなエネルギー吸収部品は、例えば自動車産業において、例えば乗客又は重要で価値のある隣接構造物への悪影響を最小限に抑えるために、衝撃からの大量な運動エネルギーを制御された状態で散逸させる要求がある場合に使用される。エネルギーは、例えば衝突時などに部品の変形や制御された破壊によって吸収される。燃料消費量を削減するという願望の観点から、軽量化が不可欠であるため、プラスチックのようなより軽い材料から部品を製造することが望ましい。バンパーに使用されるタイプのエネルギー吸収部品に特に求められるもう1つの要求は、部品が最適化された破壊挙動を示すことである。その目的は、設置スペースを最小限に抑えつつ、より多くのエネルギーを吸収することである。
【0003】
このようなエネルギー吸収部品及びエネルギー吸収部品の製造方法は、例えばWO-A2017/137480に開示されている。エネルギー吸収部品は、コア構造と呼ばれるインサートと、補助構造と呼ばれるプラスチック部分とを含む。コア構造は、金属又は連続フィラメント繊維で補強されたポリマーで作られ、補助構造は、補強されていないか又は短繊維又は長繊維で補強されたポリマー材料で作られている。
【0004】
さらなるエネルギー吸収構造体が、例えばWO-A2012/140151、FR-A2936469、EP-A1316409、EP-A2380782、WO-A2016/177440又はWO-A2016/176319に開示されている。これらのエネルギー吸収構造体の大部分はポリマーで作られており、エネルギー吸収効果はエネルギー吸収構造の複雑な形状によって生じる。
【0005】
エネルギー吸収構造体として複合材部品を提供することは、複合材部品に使用される異なる材料のため、より複雑な効果が実装され得るという利点を有する。特に、複合材部品を用いることにより、一定又は一定に上昇する力-変位曲線を確立することがより容易になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、当技術分野で知られている方法より容易な方法で複合材部品に所定の特性を適用するように適合させることができ、また、同じ外形形状を有するが異なる特性を有する複合材部品を製造することを可能にする複合材部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、インサートと熱可塑性ポリマーで作られたプラスチック部分を含む複合材部品の製造方法によって達成され、そこではプラスチック部分は少なくとも部分的にインサートを封入しており、該方法は、
a)インサート少なくとも一部又はインサートを射出成形金型に配置する工程、
b)射出成形金型を閉じる工程、
c)熱可塑性ポリマーを金型内に注入し、それによってインサートを少なくとも部分的に上乗せ成形する工程、
を含み、
ここで、インサートは射出成形金型に配置される前に修正されるか、又はインサートは射出成形金型が開放されて複合材部品が取り外される前に射出成形金型内で修正される。
【0008】
インサートとプラスチック部分を含む複合材部品を使用することにより、複雑な特性、例えば一定又は一定に上昇する力-変位曲線を適用することが可能になる。複合材部品は、特性の一部をインサートに適用し、特性の一部をプラスチック部分に適用することを可能にする。複合材部品の特性が、インサートとプラスチック部分の特性によって構成されるため、エネルギー吸収部品が追加のインサートなしに強化プラスチックのみから作られる場合に比べて、プラスチック部品をより少ない複雑さで形成することが可能である。
【0009】
射出成形金型に配置する前に、又は射出成形金型を開放して複合材部品を取り外す前に射出成形金型内でインサートを修正する発明的ステップは、より複雑でないインサートを製造し、プラスチック部分のポリマー材料を注入する工程中にインサートを最終的な形態にすることを可能にする。
【0010】
インサートを射出成形金型に配置する前のインサートの修正は、例えば、この接続によってインサートを形成するインサートの少なくとも2つのパーツを接合又は接続することを含む。しかし、インサートが少なくとも2つのパーツから形成されている場合には、射出成形金型の外側でそれらを接続する必要はない。代替的かつ好ましくは、インサートのパーツを射出成形金型内に配置し、インサートの金型を閉じる際にそれらを接合することも可能である。さらに、射出成形金型が閉じられた後に、例えば、ポリマーを射出する前に、インサートのパーツに衝撃を与えるダイによって、インサートのパーツを最終位置に押し込んでインサートのパーツを接合することも可能である。
【0011】
インサートのパーツを接合するためには、各パーツが一方の端部に沿った溝部と他方の端部に沿った舌部を有していることが特に好ましい。パーツを接合するために、一方のパーツの舌部は他方のパーツの溝部に挿入され、またその逆である。これは、ねじやボルトのような追加の固定装置なしに、あるいは溶接又は接着による追加の固定なしに、単に差し込むことだけにより、インサートを形成するパーツの接続を可能にする。差し込まれたインサートは、最終的に射出成形金型に射出されたプラスチック部分のポリマーによって固定される。
【0012】
主軸に沿って対称なインサートの場合、インサートのパーツがすべて同じ形状を有し、各パーツが、主軸の方向に舌部を有する1つの端部と、軸方向に沿って溝部を有する第2の端部を含むことが好ましい。パーツを接合するために、1つのパーツの舌部は、隣接するパーツの溝部に挿入される。
【0013】
複合材部品がエネルギー吸収部品である場合、主軸は、部品への衝撃の主作用方向の軸を示す。また、この方向は、一般に、エネルギー吸収部品の長さが最大となる方向と同じである。
【0014】
全て同じ形状のパーツを使用する以外にも、接合されてインサートを形成する異なる形状を有するパーツを使用することも可能である。インサートが2つのパーツからなる場合、この場合、1つのパーツの舌部と溝部の間の距離は、接続される2つのパーツが互いに嵌合するように、第2のパーツの舌部と溝部の距離に対応している。インサートが3つ以上のパーツを有している場合、それぞれのパーツは、パーツを接続するときに、接続される最後のパーツがすでに接合されたパーツの間に残された空間に接続嵌合するように、形成される必要がある。
【0015】
接合される少なくとも2つのパーツからインサートを形成すること以外に、インサートを分割インサートとして製造し、分割インサートを接合してインサートを修正することも可能である。分割インサートが使用される場合、インサートが片側で接続されていることが好ましく、接続がヒンジを有する場合が特に好ましい。この場合、インサートはヒンジで折り畳まれ、ヒンジに対向する端部で接合される。
【0016】
代替的又は追加的に、インサートは、くぼみ、波形、折り目、又は開口部をインサートに導入することで、修正され得る。くぼみ、波形、折り目、又は開口部をインサートに導入することにより、インサートの特性、特に剛性と硬直性を変更することができる。この修正により、インサートを複合材部品の使用目的の必要な要求に適合させることが特に可能になる。
【0017】
特に、複合材部品が、くぼみ、波形、折り目、又は開口部を導入することにより、エネルギー吸収部品として使用される場合には、エネルギー吸収特性、すなわち特に力-変位特性を調整することが可能である。
【0018】
本発明の文脈において、力-変位特性という表現は、部品の進行的な破壊から生じる部品の寸法の破壊、又は力の作用としてエネルギー吸収部品の変形に必要な力を意味する。
【0019】
追加的に又は代替として、ボルト、ネジ又はピンを追加することにより、インサートを修正することも可能である。ボルト、ネジ、又はピンを追加することは、射出成形による製造後に、複合材部品にさらなる部品を固定することを可能にする。さらに、例えば、複合材部品が車体の一部のエネルギー吸収部品である場合、複合材部品を別の部品に固定することも可能である。
【0020】
複合材部品がエネルギー吸収構造として使用されている場合、インサートは、例えば、管形状又は円錐台形状を有する。特に、インサートが管形状の場合、インサートは、1つの端部が舌部として形成され、1つの端部が舌と溝の継手の溝部として形成された、少なくとも2つの同一の半円状パーツによって作成され、1つのパーツの舌部を他方のパーツの溝部に挿入することによってパーツが接続され、管状インサートが形成される。しかし、上述したように、パーツを接続すると、円形の断面とは異なる断面を有する管が形成されるように、インサートのパーツを他の任意の形態で提供することも可能である。このような断面は、インサートの力-変位特性を予め設定された曲線に適合させることを可能にする。
【0021】
半円形とは異なる形状、例えばジグザグ形状、角張った形状、楕円形状、又はその他の形状を有するインサートのパーツを使用すること以外に、パーツを射出成形金型に配置し、パーツを組み合わせて管を形成した後に、例えば、インサートにくぼみ、波形、折り目、又は開口部を挿入することによって、射出成形金型内のインサートの形状を修正すること、及び/又は、ボルト、ネジ又はピンを追加することも可能である。
【0022】
インサートを備えた複合材部品の設計により、エネルギー吸収部品として使用するために、非正面衝突から生じる横方向の力の場合のインサートの座屈を防止することも可能である。特に、修正されたインサートは、エネルギー吸収部品として使用される複合材部品の横方向の離脱を防止する。インサートは、したがって、必要なエネルギーの大部分を吸収できるように修正される。インサートの破壊を介して吸収されるエネルギーは、特に修正されたインサートを用いないエネルギー吸収部品の場合よりも大きくなり得る。射出成形金型を開放する前にインサートを修正することにより、正確には正面ではなく、横方向成分や側方向成分を含む衝撃の場合でも、意図した力-変位特性を実現するような形状を適用することができる。
【0023】
管又は円錐台の形状を有するインサートの代替として、波形状、ジグザグ形状、Ω形状のインサートや、直線部及び/又は曲線部から構成されるインサートを使用することも可能である。
【0024】
軸方向に垂直な平面断面では、インサートは、インサート材料を形成過程に付すことによって達成可能な最小のオーダー又はマグニチュードの曲率半径を有する曲率を有する端部を含むことが好ましい。これらの端部は、インサートに大きな安定性を提供し、衝撃が発生した場合には、インサートの制御された破壊を経てエネルギーが吸収される開始点として機能する。曲率を有する端部以外に、波形状、ジグザグ形状のような任意の適切な形状を有する軸方向に垂直なインサートの端部を提供することも可能である。インサートの端部の形状は、射出成形金型内で形成することができ、射出成形金型を開放する前にインサートを修正するための更なるオプションとすることができる。
【0025】
軸方向に垂直な端部の輪郭をカットする以外に、インサートの他の端部の輪郭をカットすることも可能である。輪郭は、さらにインサートの力-変位特性を定義し、事前に定義されたパターンに成形される。
【0026】
射出成形金型を開放する前のインサートの修正は、例えば有限差分法、有限要素法、有限体積法などのシミュレーション計算によって決定することができる。適切な形状を決定するためのこのようなシミュレーション計算は、当業者に周知であり、市販のコンピュータプログラムによって実行することができる。
【0027】
エネルギー吸収部品は、その特定の意図された目的のために一定の力-変位特性を有する必要があり、所定の量のエネルギーを吸収するのに適している必要がある。部品の設計において考慮が必要なもう1つの要因は、エネルギー吸収部品に作用するエネルギーが吸収されたとき、力の作用方向においてエネルギー吸収部品の背後に配置された要素への損傷を回避するために、所定の最大力を超えないようにする必要があるということである。また、所定の使用場所で他の部品と相互作用する必要があるため、非常に稀な場合にのみ、単独でエネルギー吸収部品を考慮することが可能である。ここで、エネルギー吸収部品の設計において考慮する必要がある要因は、特に、外形寸法と接続領域の配置である。エネルギー吸収部品として使用される複合材部品を、インサートと熱可塑性ポリマー製のプラスチック部分に分割することで、さまざまな要求をインサートとプラスチック部分に別々に割り当てることができる。これにより、例えば、複合材部品の外形を維持し、インサートの形状を変化させて、複合材部品を異なる要求、例えば、異なる所定の力-変位特性に適合させることができる。例えば、複合材部品が、異なる量のエネルギーを導入する必要がある異なる質量の車両において、同一の外観幾何学的設計を有するエネルギー吸収部品として使用される場合、力-変位特性は、少なくとも1つのコア構造の単純な変更によって、スケーリングされることができる。例として、複合材部品の外部設計を変更することなく、インサート及び/又はプラスチック部分の壁の厚さ、材料、又はインサートの修正によって導入される形状を変更することが可能である。
【0028】
特に、複合材部品が自動車のエネルギー吸収部品として使用される場合、様々なタイプの車両で標準化されている形状と寸法、及び固定点を使用することが可能であり、一方、力-変位特性及び吸収可能なエネルギー量は、少なくとも1つのインサートの異なる選択を介してそれぞれ調整される。同様に、このようにして、車両の他の部品、例えばエネルギー吸収部品に固定される他の部品に結果として生じる影響なしに、車両の設計で複合材部品の設計を変更することは可能である。
【0029】
インサートが製造される材料は、例えば、金属、ポリマー又はセラミックである。
【0030】
インサートが金属製である場合、インサートはアルミニウム製であることが好ましい。しかし、インサートを製造するために使用することができる更なる他の金属は、例えば、鋼、チタン、マグネシウムである。
【0031】
インサートがポリマーから製造される場合、強化ポリマーを使用することが特に好ましい。適切な強化ポリマーは、特に連続フィラメント繊維で強化されているものである。この場合の複合材部品の特性は、連続フィラメント繊維で強化されたポリマー材料の適切な選択によってさらに影響を受ける可能性がある。特に、特性は、使用されるポリマー、繊維、繊維の割合、及び/又は繊維の配向によって影響を受ける可能性がある。
【0032】
連続フィラメント繊維で強化されたポリマー材料がインサートの製造に使用される場合、繊維の割合は、好ましくは1~70体積%、特に好ましくは10~60体積%、非常に特に好ましくは20~50体積%の範囲である。第1の材料の連続フィラメント繊維は、第1の材料に1つ以上の層で導入されていてもよい。ここで第1の材料は、例えば、織布、編物、不織布の形態、又は平行に配向された連続フィラメント繊維の形態の繊維を有することができる。特に好ましくは、繊維が平行に配向された連続フィラメント繊維である。
【0033】
繊維が平行に配向された連続フィラメント繊維の形態である場合には、例えば、テープとして知られているものを使用することが可能である。これらの中にある連続フィラメント繊維は、平行配向を有し、ポリマー材料で飽和されている。繊維は、1つの層のみであってもよいし、複数の層であってもよい。繊維が複数の層に導入されている場合、個々の層の配向は、個々の繊維の方向が互いに対して回転されるように、互いに対して変化させることができる。例えば、2層のテープが使用される場合、2つの異なる繊維方向の間に囲まれた角度は、90°であり得る。2つの織布を相互に重ね合わせる場合、織布の2つの層を互いに45°の角度で回転させることが好ましく、これにより、4つの繊維方向のそれぞれの間に45°の角度が与えられる。材料の厚さを通して層の対称的な配置が好ましい。
【0034】
本発明の実施形態は、図に示され、以下の説明にさらに示される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】
図1に示すパーツから形成されたインサートを示す。
【
図3】
図3aから3cは、複合材部品を製造する方法を概略的に示す。
【
図4】
図4aから4dは、インサートパーツの異なる断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1では、インサートの1つのパーツが断面図で示されている。
【0037】
図1に示されるインサートのパーツ1は、半円状の形状をしている。この形状により、インサートのパーツ1を押出成形で簡単に製造することができる。特に、中空体の製造とは異なり、インサートのパーツ1は、押出ダイにコアを使用することなく、形成され得る。インサートのパーツ1は、インサートのパーツ1に沿って軸方向に延びる2つの端部3を有している。一方の端部3は舌部5として形成され、他方の端部3は溝部7として形成されている。
【0038】
インサートを形成するために、
図1に示すように2つのパーツを接続して、管状の中空体9を形成することができる。このような中空体は、
図2に例として示されている。中空体を形成するために、インサートの1つのパーツ1の舌部5をインサートの第2のパーツ1の溝部7に挿入し、かつ、インサートの第2のパーツ1の舌部5をインサートの第1のパーツ1の溝部7に挿入することにより、管状の中空体を形成する。
【0039】
インサートの2つのパーツ1の接続は、熱可塑性ポリマーが射出されてプラスチック部分を形成する射出成形金型にインサートを入れる前に、あるいは金型内で行うことができる。
【0040】
複合材部品を製造するための方法が、例として
図3aから3cに概略的に示されている。
【0041】
好ましい実施形態では、
図3aに示すように、インサートを形成するパーツ1は、射出成形金型11内で接続される。インサートのパーツ1を金型内で接続するためには、インサートの1つのパーツ1を11の1つの部分13に配置し、インサートの第2のパーツ1を金型11の第2の部分15に配置する。インサートのパーツ1を金型11の部分13,15に配置した後に、
図3bに示されるように、金型11が閉じられる。金型11を閉じることにより、金型11の部分13,15に配置されたインサートのパーツ1が接続され、インサートとしての中空体9を形成する。
図3cに示す次の工程では、熱可塑性ポリマーが金型内に射出され、それによってインサートを少なくとも部分的に封入してプラスチック部分17を形成する。インサート、
図3cにおいては中空体9を封入するために、金型は好ましくは格納式ダイ19を含む。次に、インサートのパーツ1は、インサートの形成を可能にするために、格納式ダイ19上に配置され、インサートのパーツ1を接続してインサートを形成した後、格納式ダイ19は、インサートと可塑性ポリマーが射出され得る金型の表面との間の空間を開放して格納される。格納式ダイの形状がプラスチック部分の形状と一致しない場合には、例えば、格納式ダイ19をさらに格納させて、ここでは図示しない付加的な部品を金型内に移動させることが可能である。このような金型の構造は、当業者にはよく知られており、特に、金型内に次々と射出される異なるポリマーからなる部品を製造するために既に使用されている。
【0042】
追加的又は代替として、インサートを金型内で別の方法で、例えば、くぼみ、波形、折り目、又は開口部をインサートに導入することによって、及び/又は、ボルト、ネジ又はピンを追加することによって、修正することも可能である。
【0043】
くぼみ、波形、折り目、又は開口部は、例えば、金型の成形ダイをインサートに押し込むことによって導入され、その後、成形ダイを金型内に格納し、プラスチック部分を成形するために熱可塑性ポリマーを金型内に射出可能にする。
【0044】
インサートに輪郭付き端部を形成することを意図する場合には、インサートの端部に輪郭を切ることができるカッターを金型に設けることが可能である。この場合、熱可塑性ポリマーを射出する前に、インサートから切り取られた部分を金型から取り外すことが好ましい。ただし、複合材部品の形状によっては、インサートから切り取られた部分を金型内に保持し、複合材部品を金型から取り外した後に取り外すことも可能である。
【0045】
インサートのパーツ1の半円形の断面形状以外に、インサートのパーツ1は、任意の他の形状を有することができる。インサートのパーツの形状は、それによって複合材部品が満たすべき機能に依存し、シミュレーション計算によって設計することができる。インサートのパーツ1の適切な形状は、例として
図3a~3dに示されている。
【0046】
例えば、インサートのパーツ1の断面形状は、
図3aに示されるような長方形であってもよいし、
図3bに示されるような丸みを帯びた角を有する長方形であってもよい。さらに可能な形状としては、
図3cに示されるようなジグザグや、
図3dに示されるような波形のある形状である。しかしながら、示された形状の他に、インサートのパーツの任意の他の形状が可能である。
【0047】
インサートの少なくとも2つのパーツ1からインサートを形成するために、少なくとも2つの同一のパーツを接続するか、又は代替的に、異なる形状を有するインサートのパーツ1を接続することが可能である。
【0048】
インサートの少なくとも2つのパーツ1からインサートを形成するために、少なくとも2つの同一のパーツを接続することができ、又は代替として、異なる形状を有するインサートのパーツ1を接続することが可能である。接続するパーツが異なる形状を有する場合、インサートのパーツ1の形状が、舌部と溝部との間の距離が接続する両方のパーツにおいて同じであることだけが重要である。舌部と溝部との間の距離が同じであることにより、パーツの舌部をそれぞれの他方のパーツの溝部に挿入して、2つのパーツを接続することができる。異なる形状を有するパーツを接続するこの可能性は、複合材部品の異なる機能を実現することを可能にする。異なる形状の他に、類似の形状を有するが異なる断面積を有するパーツ1を接続することも可能である。これにより、事前に設定された要求を満たすように、複合材部品の特徴を適応させることが可能となる。