(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用複合正極活物質、その製造方法、及びそれを含む正極を含むリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20230411BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230411BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230411BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/505
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2021019813
(22)【出願日】2021-02-10
(62)【分割の表示】P 2019511379の分割
【原出願日】2017-08-22
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】10-2016-0109541
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20, Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17084,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ホ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ヨン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】キ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ミ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】クワン・ファン・チョ
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/125444(WO,A1)
【文献】特開2011-159619(JP,A)
【文献】特開2007-053083(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0126542(US,A1)
【文献】特開2015-099722(JP,A)
【文献】特開2013-182757(JP,A)
【文献】国際公開第2009/157524(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/36
H01M 4/505
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池用複合正極活物質であって、
ニッケル含量が遷移金属総量を基準に、50モル%ないし100モル%であるニッケルリッチリチウムニッケル系化合物と、
前記ニッケルリッチリチウムニッケル系化合物の表面に配置された、希土類金属ヒドロキシドを含むコーティング膜と、を含み、
前記リチウムイオン電池用複合正極活物質の比表面積が、1.357m
2/gないし1.8m
2/gであり、
前記希土類金属ヒドロキシドは、イットリウムヒドロキシド、セリウムヒドロキシド、ランタンヒドロキシド、ユウロピウムヒドロキシド、ガドリニウムヒドロキシド、スカンジウムヒドロキシド及びテルビウムヒドロキシドからなる群から選択された1以上であり、
前記ニッケルリッチリチウムニッケル系化合物は、下記化学式1で表示される化合物であり、
前記リチウムイオン電池用複合正極活物質において、残留リチウムの含量は、複合正極活物質総量を基準に、
0.11質量%ないし0.13質量%である、リチウムイオン電池用複合正極活物質。
【化1】
[化学式1]
(前記化学式1で、0.9≦x≦1.2、0.5≦y<1.0であり、Mは、コバルト(Co)、マンガン(Mn)及びアルミニウム(Al)のうちから選択された1以上である。)
【請求項2】
前記希土類金属ヒドロキシドの含量は、前記ニッケルリッチリチウムニッケル系化合物100質量部を基準に、0.14質量部ないし1.4質量部であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用複合正極活物質。
【請求項3】
前記化学式1の化合物は、下記化学式2で表示される化合物、または下記化学式3で表示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用複合正極活物質。
【化2】
[化学式2]
(前記化学式2で、1≦x≦1.2、0.5≦y<1、0≦z≦0.5、0≦1-y-z≦0.5である。)
【化3】
[化学式3]
(前記化学式3で、1≦x≦1.2、0.5≦y≦1.0、0≦z≦0.5である。)
【請求項4】
前記希土類金属ヒドロキシドの含量は、ニッケルリッチリチウムニッケル系化合物100質量部を基準に、0.29質量部ないし1.4質量部であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用複合正極活物質。
【請求項5】
i)ニッケル含量が遷移金属総量を基準に、50モル%ないし100モル%であるニッケルリッチリチウムニッケル系化合物の前駆体である遷移金属ヒドロキシド、及びii)リチウム前駆体を酸化性雰囲気で熱処理し、ニッケルリッチリチウムニッケル系化合物を得る段階と、
前記ニッケルリッチリチウムニッケル系化合物に希土類金属を含む塩と水とを含む洗浄液を付加して撹拌し、洗浄を実施する段階と、
前記洗浄を実施する段階を経た生成物を乾燥させる段階と、を含み、
前記希土類金属を含む塩は、イットリウムアセテート、イットリウムサルフェート、イットリウムクロライド、イットリウムナイトレート、セリウムアセテート、セリウムサルフェート、セリウムクロライド、セリウムナイトレート、ランタンアセテート、ランタンサルフェート、ランタンクロライド、ランタンナイトレート、ユウロピウムアセテート、ユウロピウムサルフェート、ユウロピウムクロライド、ユウロピウムナイトレート、ガドリニウムアセテート、ガドリニウムサルフェート、ガドリニウムクロライド、ガドリニウムナイトレート、スカンジウムアセテート、スカンジウムサルフェート、スカンジウムクロライド、スカンジウムナイトレート、テルビウムアセテート、テルビウムサルフェート、テルビウムクロライド及びテルビウムナイトレートからなる群から選択された1以上である、リチウムイオン電池用複合正極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記洗浄液において、前記希土類金属を含む塩の含量は、0.1Mないし1.0Mであることを特徴とする請求項5に記載のリチウムイオン電池用複合正極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記乾燥が200℃以下で実施されることを特徴とする請求項5に記載のリチウムイオン電池用複合正極活物質の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極活物質を含む正極を含む、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用複合正極活物質、その製造方法、及びそれを含む正極を含むリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高電圧及び高エネルギー密度を有することにより、多様な用途に使用される。例えば、該リチウムイオン電池が、電気自動車(HEV、PHEV)のような分野に使用される場合、該リチウムイオン電池は、高温で作動することができ、多量の電気を充放電できなければならず、長期間使用されなければならないので、放電容量及び寿命特性にすぐれていなければならない。
【0003】
前記正極活物質において、LiCoO2は、寿命特性及び充放電効率にすぐれ、最も多用されているが、容量が少なく、原料として使用されるコバルトの資源的限界により、高価であるので、電気自動車のような中大型電池分野の動力源として大量に使用するには価格競争力に限界があるという短所がある。LiMnO2、LiMn2O4のようなリチウムマンガン酸化物は、原料として使用されるマンガン資源が豊かであり、廉価であり、環境親和的であり、熱的安定性にすぐれるという長所があるが、容量が少なく、高温特性及びサイクル特性などが劣悪であるという問題がある。そのような短所を補完するために、正極活物質として、ニッケルリッチ正極活物質に対する需要が増えた。そのように、需要が増え始めたが、そのようなニッケルリッチ正極活物質は、高容量を出す優秀な長所を有している一方、未反応リチウムが多く、スウェリング現象誘発、及び電解液との反応によるガス発生というような問題点を有している。そのような未反応Liを除去するために、一般的に水洗い工程を取り入れるが、その場合、水洗い時、正極活物質表面損傷が発生し、容量と高率との特性が低下し、また高温保存時、抵抗が上昇するという他の問題を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一側面は、残留リチウムの含量が低減されたリチウムイオン電池用複合正極活物質及びその製造方法を提供するものである。
【0005】
他の側面は、前述の複合正極活物質を含む正極を採用し、寿命特性及び高温保存特性が向上されたリチウムイオン電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面により、
ニッケル含量が遷移金属総量を基準に、50モル%ないし100モル%であるニッケルリッチリチウムニッケル系化合物と、
前記ニッケルリッチリチウムニッケル系化合物の表面に配置された、希土類金属ヒドロキシド(rare earth metal hydroxide)を含むコーティング膜と、を含むリチウムイオン電池用複合正極活物質が提供される。
【0007】
前記リチウムイオン電池用複合正極活物質の比表面積は、1.2m2/gないし1.8m2/gである。
【0008】
他の側面により、ニッケル含量が遷移金属総量を基準に、50モル%ないし100モル%であるニッケルリッチリチウムニッケル系化合物の前駆体である遷移金属ヒドロキシド、及びリチウム前駆体を酸化性雰囲気で熱処理し、ニッケルリッチリチウムニッケル系化合物を得る段階と、
前記ニッケルリッチリチウムニッケル系化合物に、希土類金属を含む塩、及び水を含有した洗浄液を付加して撹拌し、洗浄を実施する段階と、
前記洗浄を実施する段階を経た生成物を乾燥させる段階と、を含み、前述のリチウムイオン電池用複合正極活物質を得るリチウムイオン電池用複合正極活物質の製造方法が提供される。
【0009】
さらに他の側面により、前述のリチウムイオン電池用複合正極活物質を含む正極を含むリチウムイオン電池が提供される。
【発明の効果】
【0010】
一具現例による複合正極活物質は、残留リチウム含量が低減し、比表面積が増大し、それを利用した正極を採用すれば、容量、寿命及び高温保存の特性が改善されたリチウムイオン電池を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】例示的な具現例によるリチウム二次電池の模式図である。
【
図2A】実施例1によって製造された複合正極活物質に対する電子走査顕微鏡分析結果を示したイメージである。
【
図2B】比較例1によって製造された正極活物質に対する電子走査顕微鏡分析結果を示したイメージである。
【
図2C】比較例2によって製造された正極活物質に対する電子走査顕微鏡分析結果を示したイメージである。
【
図3A】実施例1によって製造された複合正極活物質に対する透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図4】製作例1-4及び比較製作例1-2によって製造されたリチウムイオン電池の充放電特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、例示的な具現例によるリチウムイオン電池用複合正極活物質、及びその製造方法、並びに前記複合正極活物質を含む正極を具備したリチウムイオン電池について、さらに詳細に説明する。
【0013】
一具現例による複合正極活物質は、ニッケル含量が遷移金属総量を基準に、50モル%ないし100モル%であるリチウムニッケル系化合物と、前記リチウムニッケル系化合物の表面に配置された、希土類金属ヒドロキシド(rare earth metal hydroxide)を含むコーティング膜と、を含む。
【0014】
一具現例による複合正極活物質は、比表面積が1.2m2/gないし1.8m2/gと、一般的な正極活物質の場合に比べ、比表面積が増大する。
【0015】
一般的なニッケルリッチ正極活物質は、容量及び高率の特性にすぐれ、廉価であるという長所を有している。しかし、表面に水酸化リチウム、炭酸リチウムのような残留リチウムにより、サイクル特性と安定性が低下し、それに対する改善が要求される。該正極活物質表面に存在する残留リチウムを除去し、水洗浄を施すことが知られている。
【0016】
ところで、そのように水洗浄を施す場合、水洗浄された正極活物質は、残留リチウムの除去により、表面が過度に露出してしまい、電解液との接触面積が増大し、それを利用した正極を採用したリチウムイオン電池の容量及び寿命が低下し、正極活物質の表面抵抗が増大し、高温保存特性が低下してしまう。
【0017】
そのために、本発明者らは、前述の問題点を解決するために、水洗浄時、希土類金属を含む塩、及び水を含む洗浄液を使用し、それを利用した洗浄後、乾燥過程を経て、水洗浄による正極活物質の変化を最小化させながら、正極活物質表面に、希土類金属ヒドロキシドコーティング膜が配置された複合正極活物質を提供する。そのような複合正極活物質は、比表面積が、例えば、1.3m2/gないし1.6m2/g、具体的には、1.357m2/gないし1.563m2/gである。そのような複合正極活物質を利用すれば、電気化学的特性と高温保存特性とが向上されたリチウムイオン電池を製造することができる。
【0018】
前記希土類金属ヒドロキシドは、非制限的な例として、イットリウムヒドロキシド、セリウムヒドロキシド、ランタンヒドロキシド、ユウロピウムヒドロキシド、ガドリニウムヒドロキシド、スカンジウムヒドロキシド及びテルビウムヒドロキシドからなる群から選択された1以上を有することができる。
【0019】
前記洗浄液において、希土類金属を含む塩の含量は、0.1Mないし1.0M、例えば、0.2Mないし0.5Mである。希土類金属を含む塩の含量が前記範囲であるとき、リチウムイオン電池用複合正極活物質の比表面積が適切な範囲に制御され、それを利用すれば、電気化学的特性と高温保存特性とにすぐれるリチウムイオン電池を製造することができる。
【0020】
前記希土類金属ヒドロキシドの含量は、リチウムニッケル系化合物100質量部を基準に、0.14質量部ないし1.4質量部、例えば、0.29質量部ないし0.71質量部である。該希土類金属ヒドロキシドの含量が、前記範囲であるとき、電気化学的特性と高温保存特性とにすぐれるリチウムイオン電池を製造することができる。
【0021】
前記ニッケルの含量が50モル%ないし100モル%であるニッケルリッチリチウムニッケル系化合物においては、下記化学式1で表示される化合物を挙げることができる。
【0022】
【0023】
化学式1で、0.9≦x≦1.2、0.5≦y<1.0、Mは、コバルト(Co)、マンガン(Mn)及びアルミニウム(Al)のうちから選択された1以上である。
【0024】
前記化学式1の化合物は、例えば、下記化学式2で表示される化合物、または下記化学式3で表示される化合物がある。
【0025】
【0026】
化学式2で、1≦x≦1.2、0.5≦y<1、0≦z≦0.5、0≦1-y-z≦0.5であり、
【0027】
【0028】
化学式3で、1≦x≦1.2、0.5≦y≦1.0、0≦z≦0.5である。
【0029】
前記リチウムイオン電池用複合正極活物質において、残留リチウムの含量は、複合正極活物質総量を基準に、0.15質量%以下、例えば、0.11質量%ないし0.13質量%と少ない。
【0030】
前記ニッケルリッチリチウムニッケル系化合物は、例えば、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.3Mn0.1O2、LiNi0.7Co0.15Mn0.15O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.88Co0.1Al0.02O2、LiNi0.84Co0.15Al0.01O2、またはその混合物を挙げることができる。
【0031】
一具現例による複合正極活物質において、希土類金属ヒドロキシドを含むコーティング膜の厚みは、500nm以下、例えば、50nmないし200nmである。コーティング膜厚が前記範囲であるとき、電気化学的特性及び高温保存特性が良好なリチウムイオン電池を作製することができる。
【0032】
以下、一具現例による複合正極活物質の製造方法について説明する。
【0033】
まず、ニッケル含量が遷移金属総量を基準に、50モル%ないし100モル%であるニッケルリッチリチウムニッケル系化合物の前駆体である遷移金属ヒドロキシド、及びリチウム前駆体を、酸化性雰囲気で熱処理し、ニッケル含量が遷移金属総量を基準に、50モル%ないし100モル%であるニッケルリッチリチウムニッケル系化合物を得る。
【0034】
前記遷移金属ヒドロキシドは、例えば、下記化学式4で表示される化合物を挙げることができる。
【0035】
【0036】
化学式4で、yは、0.5ないし1.0であり、Mは、コバルト(Co)、マンガン(Mn)及びアルミニウム(Al)のうちから選択された1以上である。
【0037】
前記化学式4の化合物は、例えば、下記化学式5で表示される化合物、または下記化学式6で表示される化合物である。
【0038】
【0039】
化学式5で、0.5≦y<1、0≦z≦0.5、0≦1-y-z≦0.5であり、
【0040】
【0041】
化学式6で、yは、0.5ないし1.0であり、zは、0ないし0.5である。
【0042】
前記酸化性雰囲気は、酸素雰囲気または大気雰囲気を言い、該酸素雰囲気は、酸素を単独で使用するか、あるいは酸素と不活性ガスとの混合ガスを言う。該不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどを利用することができる。
【0043】
前記熱処理は、400℃ないし1,200℃、例えば、500℃ないし900℃で実施することによっても行われる。該熱処理が前記温度範囲であるとき、目的とする組成を有する正極活物質を得ることができる。
【0044】
該熱処理時間は、該熱処理温度によって可変的であるが、例えば、5分ないし20時間の範囲で実施する。
【0045】
前記遷移金属ヒドロキシドは、例えば、Ni0.5Co0.2Mn0.3OH、Ni0.6Co0.3Mn0.1OH、Ni0.7Co0.15Mn0.15OH、Ni0.8Co0.1Mn0.1OH、Ni0.6Co0.2Mn0.2OH、Ni0.88Co0.1Al0.02OH、Ni0.84Co0.15Al0.01O2、またはその混合物を挙げることができる。
【0046】
前記遷移金属ヒドロキシドは、遷移金属前駆体、例えば、コバルト前駆体、マンガン前駆体及びアルミニウム前駆体のうちから選択された一つと、ニッケル前駆体とを混合し、それに対して、共沈法、固相法などによって実施し、製造することができる。そのような遷移金属ヒドロキシドの製造過程は、一般的な方法による。
【0047】
前記ニッケル前駆体としては、酸化ニッケル、酢酸ニッケル、水酸化ニッケル、硝酸ニッケルなどを使用することができ、該コバルト前駆体としては、酸化コバルト、酢酸コバルト、水酸化コバルト、硝酸コバルトなどを使用することができる。そして、マンガン前駆体としては、酸化マンガン、酢酸マンガン、水酸化マンガン、硝酸マンガンなどを使用する。ここで、ニッケル前駆体及びコバルト前駆体の含量は、目的とする遷移金属ヒドロキシドを得ることができるように、化学量論的に制御される。
【0048】
リチウム前駆体は、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(Li2CO3)、硫酸リチウム(Li2SO4)、硝酸リチウム(LiNO3)などを使用することができるが、当該技術分野において、一般的に使用可能なものであるならば、いずれも使用可能である。
【0049】
該遷移金属ヒドロキシド及び該リチウム前駆体の含量は、ニッケルリッチリチウムニッケル系化合物を得ることができるように、化学量論的に制御される。
【0050】
次に、前記過程によって製造されたニッケルリッチリチウムニッケル系化合物に、希土類金属を含む塩、及び水を含む洗浄液を付加して撹拌し、洗浄過程を実施する。そのような洗浄過程を実施した結果、該ニッケルリッチリチウムニッケル系化合物から残留リチウムを除去することができる。
【0051】
前記希土類金属を含む塩は、例えば、希土類金属アセテート、希土類金属サルフェート、希土類金属クロライド、希土類金属ナイトレートからなる群から選択された1以上である。希土類金属を含む塩は、具体的には、イットリウムアセテート、イットリウムサルフェート、イットリウムクロライド、イットリウムナイトレート、セリウムアセテート、セリウムサルフェート、セリウムクロライド、セリウムナイトレート、ランタンアセテート、ランタンサルフェート、ランタンクロライド、ランタンナイトレート、ユウロピウムアセテート、ユウロピウムサルフェート、ユウロピウムクロライド、ユウロピウムナイトレート、ガドリニウムアセテート、ガドリニウムサルフェート、ガドリニウムクロライド、ガドリニウムナイトレート、スカンジウムアセテート、スカンジウムサルフェート、スカンジウムクロライド、スカンジウムナイトレート、テルビウムアセテート、テルビウムサルフェート、テルビウムクロライド及びテルビウムナイトレートからなる群から選択された1以上を有することができる。
【0052】
一具現例によれば、希土類金属を含む塩として、イットリウムアセテート、セリウムアセテート、ランタンアセテート、ユウロピウムアセテート、ガドリニウムアセテート、スカンジウムアセテート、テルビウムアセテートのような希土類金属アセテートを使用することにより、最終的に製造される複合正極活物質の残留リチウム含量が低減され、比表面積特性が適切に制御され、それを利用すれば、電気化学的特性と高温保存特性とが向上されたリチウムイオン電池を製造することができる。
【0053】
前述の洗浄を実施する段階を経た生成物を乾燥させる段階を実施する。ここで、該乾燥は、例えば、200℃以下、具体的には、120℃ないし150℃の範囲で実施する。該乾燥が前記温度範囲で実施されるとき、電気化学的特性及び高温保存特性にすぐれる複合正極活物質を製造することができる。
【0054】
一具現例による複合正極活物質を含む正極活物質層を有する正極は、下記過程によっても製造される。
【0055】
下記方法により、正極が準備される。
【0056】
複合正極活物質、結合剤及び溶媒が混合された正極活物質組成物が準備される。
【0057】
該正極活物質組成物には、導電剤がさらに付加される。
【0058】
前記正極活物質組成物が、金属集電体上に、直接コーティングされて乾燥され、正極板が製造される。代案としては、前記正極活物質組成物が、別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが、金属集電体上にラミネーションされ、正極板が製造される。
【0059】
前記正極の製造時、前述の複合正極活物質以外に、リチウムイオン電池で一般的に使用される正極活物質である第1正極活物質をさらに含んでもよい。
【0060】
前記第1正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウム鉄リン酸化物、及びリチウムマンガン酸化物からなる群から選択された1以上をさらに含んでもよいが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で利用可能な全ての正極活物質が使用される。
【0061】
例えば、LiaA1-bB’bD2(前記式で、0.90≦a≦1.8及び0≦b≦0.5である);LiaE1-bB’bO2-cDc(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-bB’bO4-cDc(前記式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobB’cDα(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobB’cO2-αF’α(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbB’cDα(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbB’cO2-αF’α(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbB’cO2-αF’2(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNibEcGdO2(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiaNibCocMndGeO2(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiaNiGbO2(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaCoGbO2(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaMnGbO2(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaMn2GbO4(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiI’O2;LiNiVO4;Li3-fJ2(PO4)3(0≦f≦2;Li3-fFe2(PO4)3(0≦f≦2;LiFePO4の化学式のうちいずれか一つによって表現される化合物を使用することができる。
【0062】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、B’は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、F’は、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、I’は、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである。
【0063】
該正極活物質組成物において該結合剤は、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸(PAA)、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、リチウムポリアクリレート、リチウムポリメタクリレート、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などを挙げることができる。
【0064】
該導電剤は、例えば、カーボンブラック、炭素ファイバ及びグラファイトからなる群から選択された少なくとも一つの炭素系導電剤を含んでもよい。前記カーボンブラックは、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、スーパーP、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラックからなる群から選択されたものでもある。前記グラファイトは、天然グラファイトまたは人造グラファイトでもある。
【0065】
該溶媒は、ブタノール、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などを使用することができるが、それ以外にも、一般的に使用可能な溶媒であるならば、いずれも使用することができる。
【0066】
一方、前述の正極活物質組成物及び/または負極活物質組成物に可塑剤をさらに付加し、電極板内部に気孔を形成することも可能である。
【0067】
前述の正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含量は、リチウムイオン電池において、一般的に使用するレベルである。リチウムイオン電池の用途及び構成により、前述の導電剤、結合剤及び溶媒のうち1以上が省略されてもよい。
【0068】
該負極は、前述の正極製造過程において、正極活物質の代わりに、負極活物質を使用したことを除いては、ほぼ同一方法によって実施し、得ることができる。
【0069】
該負極活物質としては、炭素系材料、シリコン、シリコン酸化物、シリコン系合金、シリコン・炭素系材料複合体、スズ、スズ系合金、スズ・炭素複合体、金属酸化物、またはその組み合わせを使用する。
【0070】
前記炭素系材料は、結晶質炭素、非晶質炭素、またはそれらの混合物でもある。前記結晶質炭素は、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形またはファイバ型の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛でもあり、前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(soft carbon(低温焼成炭素))またはハードカーボン(hard carbon)、メゾ相ピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークス、グラフェン、カーボンブラック、フラーレンスート(fullerene soot)、カーボンナノチューブ及び炭素ファイバでなどでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0071】
前記負極活物質は、Si、SiOx(0<x<2、例えば、0.5ないし1.5)、Sn、SnO2またはシリコン含有金属合金、及びそれらの混合物からなる群から選択されるものを使用することができる。前記シリコン合金を形成することができる金属としては、Al、Sn、Ag、Fe、Bi、Mg、Zn、in、Ge、Pb及びTiのうち1以上選択して使用することができる。
【0072】
前記負極活物質は、リチウムと合金可能な金属/準金属、それらの合金、またはその酸化物を含んでもよい。例えば、前記リチウムと合金可能な金属/準金属は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)、MnOx(0<x≦2などでもある。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはそれらの組み合わせでもある。例えば、前記リチウムと合金可能な金属/準金属の酸化物は、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物、SnO2、SiOx(0<x<2などでもある。
【0073】
例えば、前記負極活物質は、元素周期律表の13族元素、14族元素及び15族元素からなる群から選択された1以上の元素を含んでもよい。
【0074】
例えば、前記負極活物質は、Si、Ge及びSnからなる群から選択された1以上の元素を含んでもよい。
【0075】
該負極活物質組成物において、導電剤、結合剤及び溶媒は、前記正極活物質組成物の場合と同一のものを使用することができる。そして、前述の負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含量は、リチウム電池で一般的に使用されるレベルである。
【0076】
セパレータは、正極と負極との間に介在され、高イオン透過度と機械的強度とを有する絶縁性の薄膜が使用される。
【0077】
該セパレータの気孔径は、一般的には、0.01~10μmであり、厚みは、一般的に5~20μmである。そのようなセパレータとしては、例えば、ポリプロピレンなどのオレフィン系高分子;ガラスファイバまたはポリエチレンなどから作られたシートや不織布などが使用される。電解質として固体高分子電解質が使用される場合には、固体高分子電解質がセパレータを兼ねることもできる。
【0078】
前記セパレータにおいて、オレフィン系高分子の具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、またはそれらの2層以上の多層膜が使用され、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータのような混合多層膜が使用される。
【0079】
リチウム塩含有非水電解質は、非水電解質とリチウム塩とからなる。
【0080】
該非水電解質としては、非水電解液、有機固体電解質または無機固体電解質が使用される。
【0081】
前記非水電解液は有機溶媒を含む。そのような有機溶媒は、当該技術分野において、有機溶媒として使用されるものであるならば、いずれも使用される。例えば、プロピルレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、ジオキソラン、4-メチルデ-オキソラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、またはそれらの混合物などである。
【0082】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステル高分子、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデンなどが使用される。
【0083】
前記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などが使用される。
【0084】
前記リチウム塩は、前記非水係電解質に溶解されやすい物質であり、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、Li(FSO22N、LiC4F9SO3、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2(CyF2y+1SO2(ただし、x、yは、自然数である)、LiCl、LiI、またはそれらの混合物などがある。そして、非水系電解質には、充放電特性、難燃性などの改善を目的に、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルホスホアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウムヨック、ピロール2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されもする。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンのようなハロゲン含有溶媒をさらに含めることもできる。
【0085】
図1から分かるように、リチウムイオン電池11は、正極13、負極12及びセパレータ34を含む。前述の正極13、負極12及びセパレータ14が巻き取られたり、折り畳まれたりし、電池ケース15に収容される。次に、前記電池ケース15に有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリ16に密封され、リチウムイオン電池11が完成される。前記電池ケースは、円筒状、角形、薄膜型などでもある。
【0086】
前述の正極及び負極の間にセパレータが配置され、電池構造体が形成される。前記電池構造体がバイセル構造に積層された後、有機電解液に含浸され、得られた結果物がパウチに収容されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。
【0087】
また、前記電池構造体は、複数個積層されて電池パックを形成し、そのような電池パックが、高容量及び高出力が要求される全ての機器にも使用される。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両などにも使用される。
【0088】
以下、実施例及び比較例を介して、本発明についてさらに詳細に説明する。ただし、該実施例は、本発明を例示するためのものであり、それらだけにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【実施例】
【0089】
実施例1:複合正極活物質の製造
まず、LiNi0.84Co0.15Al0.01O2を製造するために、遷移金属ヒドロキシド前駆体Ni0.85Co0.15(OH)2を下記過程によって製造した。
【0090】
Ni0.85Co0.15(OH)2 100gに水酸化アルミニウム(Al(OH)3)0.849gと水酸化リチウム(LiOH・H20)46.62gを付加し、それを酸素雰囲気下で760℃で熱処理し、LiNi0.84Co0.15Al0.01O2を製造した。
【0091】
LiNi0.84Co0.15Al0.01O2に対して、下記過程によって洗浄過程を実施した。
【0092】
LiNi0.84Co0.15Al0.01O2 30gに、イットリウムアセテート0.0043g及び水30mlを付加し、その混合物を約30分間撹拌し、LiNi0.84Co0.15Al0.01O2の洗浄過程を実施し、複合正極活物質を製造した。前記洗浄過程において、イットリウムアセテートの含量は、洗浄過程で使用された洗浄液の総量(イットリウムアセテート及び水の総重量)に対して、約0.1×10-2Mになった。前記正極活物質は、コア活物質(LiNi0.84Co0.15Al0.01O2、及びそのコア活物質の表面にイットリウムヒドロキシドを含むコーティング膜が配置された構造を有した。
【0093】
実施例2-4:複合正極活物質の製造
イットリウムアセテートの含量が、約0.2×10-2M、0.5×10-2M及び1.0×10-2Mになるように、イットリウムアセテートの含量がそれぞれ変化されたことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、複合正極活物質を製造した。
【0094】
比較例1:正極活物質の製造
LiNi0.84Co0.15Al0.01O2の洗浄過程を実施しないことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、正極活物質を製造した。
【0095】
比較例2:正極活物質の製造
LiNi0.84Co0.15Al0.01O2の洗浄過程が下記過程によって実施されたことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、正極活物質を製造した。
【0096】
LiNi0.88Co0.1Al0.02O2 30gに水30mlを付加し、その混合物を約30分間撹拌し、LiNi0.88Co0.1Al0.02O2の水洗い過程を実施した。
【0097】
製作例1:リチウムイオン電池(コインハーフセル)の作製
実施例1によって製造された複合正極活物質、ポリフッ化ビニリデン、及び導電剤であるカーボンブラックの混合物を混合し、正極活物質層形成用スラリーを製造した。前記スラリーには、溶媒であるN-メチルピロリドンを付加し、正極活物質、ポリフッ化ビニリデン、カーボンブラックの混合比は、94:3:3重量比であった。
【0098】
前記過程によって製造されたスラリーを、ドクターブレードを使用し、アルミニウム箔上にコーティングし、薄極板状にした後、それを135℃で3時間以上乾燥させた後で圧延し、真空乾燥過程を経て正極を作製した。
【0099】
前記実施例1によって製造された正極と、相対極としてのリチウム金属対極とを使用し、2032タイプのコインハーフセル(coin half cell)を製造した。前記正極とリチウム金属対極との間には、多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなるセパレータ(厚み:約16μm)を介在させ、電解液を注入してリチウムイオン電池を作製した。
【0100】
前記電解液は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)とを3:4:3の体積比で混合した溶媒に溶解された1.3M LiPF6が含まれた溶液を使用した。
【0101】
製作例2-4:リチウムイオン電池(コインハーフセル)の製造
正極の製造時、実施例1によって製造された複合正極活物質の代わりに、実施例2-4によって製造された複合正極活物質を使用したことを除いては、製作例1と同一方法によって実施し、リチウムイオン電池を作製した。
【0102】
比較製作例1,2:リチウムイオン電池(コインハーフセル)の製造
正極の製造時、実施例1によって製造された複合正極活物質の代わりに、比較例1,2によって製造された正極活物質を使用したことを除いては、製作例1と同一方法によって実施し、リチウムイオン電池を作製した。
【0103】
評価例1:電子走査顕微鏡
前記実施例1によって製造された複合正極活物質、及び比較例1,2によって製造された正極活物質に対する電子走査顕微鏡分析を実施した。電子走査顕微鏡の分析時、フィリップス(Philips)社のSirion 200を利用した。
【0104】
前記実施例1によって製造された複合正極活物質と、比較例1及び2によって製造された正極活物質に対する電子走査顕微鏡分析結果を、
図2Aないし
図2Cに示した。
【0105】
図2Bから分かるように、比較例1による、洗浄過程を経ていない正極活物質は、表面に黒染みが観察された。その黒染みは、未反応リチウム化合物であり、水酸化リチウム及び炭酸リチウムに該当する。
図2Cは、比較例2による、水洗い過程を経た正極活物質の電子走査顕微鏡写真であり、それを参照すれば、正極活物質表面に染みがほとんどないことが分かった。
【0106】
それに反し、実施例1によって製造された複合正極活物質は、表面に染みがなく、コーティング膜が形成されているということを確認することができた。
【0107】
評価例2:比表面積
前記実施例1-3によって製造された複合正極活物質、及び比較例1,2によって製造された正極活物質の比表面積を、BET(Brunauer-Emmett-Teller)法を利用して測定し、その結果を下記表1に示した。
【0108】
【0109】
前記表1から分かるように、比較例1の正極活物質は、粒子表面及び一次粒子間に、未反応リチウム化合物であるリチウムヒドロキシド及びリチウムカーボネートが存在し、低い比表面積を示した。
【0110】
それに比べ、実施例1-4によって製造された複合正極活物質は、イットリウムアセテートの含量が約0.5×10-2Mを超えれば、表面にさらに多くの量がコーティングされ、むしろ比表面積がさらに増大する効果を示した。そのように、実施例1-4によって製造された複合正極活物質は、比較例1によって製造された正極活物質の場合と比較し、比表面積が増大するということが分かった。
【0111】
比較例2の正極活物質は、水洗浄で未反応がリチウムが除去され、一次粒子間に存在した未反応リチウムが共に除去されることにより、一次粒子が完全に現れ、実施例1-4によって製造された複合正極活物質の場合と比較し、増大して高い比表面積特性を示した。比較例2の正極活物質は、比表面積は、増加したが、他の評価例に示されているように、正極活物質の損傷があり、それを利用した正極を採用したリチウムイオン電池の特性が、実施例1-4の複合正極活物質を利用したリチウムイオン電池に比べて低下しているということが分かった。すなわち、そのような結果から、実施例1-4の複合正極活物質は、優秀なセル能を有するリチウムイオン電池に適する比表面積特性を有しているということが分かった。
【0112】
評価例3:未反応リチウム(残留リチウム)の含量測定
前記実施例1-4によって製造された複合正極活物質、及び比較例1,2によって製造された正極活物質において、未反応リチウムの含量を測定した。
【0113】
未反応リチウムの含量は、電位差中和滴定法により、残留するLiを含む化合物(例えば、LiOH別またはLi2CO3別に測定した後、Liだけの総量を別途に計算して求めた値(TTL:total lithium)とした。計算法は、下記数式1の通りである。
【0114】
【0115】
未反応リチウムの含量に対する測定結果を下記表2に示した。
【0116】
【0117】
前記表2から分かるように、比較例1によれば、高い未反応リチウムが存在するということが分かった。そして、比較例2によって製造された正極活物質は、水洗浄を介して未反応リチウムが除去され、比較例1の場合と比較し、低い未反応リチウムの含量を示した。
【0118】
それに比べ、実施例1-4によって製造された複合正極活物質は、比較例1,2によって製造された正極活物質と比較し、残留リチウムの含量が低減するということが分かった。そして、イットリウムアセテートの含量を変化させるとしても、未反応リチウムの含量は、ほとんど変化がないということが分かった。
【0119】
評価例4:透過電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(TEM(transmission electron microscopy) coupled with EDS(energy dispersive X-ray spectroscopy):TEM/EDS)
前記実施例1によって製造された複合正極活物質に対するTEM/EDS分析を行った。TEM/EDS分析時、FEI company社のTecnai F30を利用した。
【0120】
【0121】
図3A及び
図3Bを参照すれば、複合正極活物質表面において、さまざまな粒子が重なっており、水酸化イットリウム相の区分が実質的に困難になっている。また、
図3Aの四角領域に対するEDSマッピング(mapping)分析結果、
図3Aの四角領域、すなわち、表面領域にイットリウムの存在を確認することができた。それにより、実施例1によって製造された複合正極活物質は、表面にイットリウムが存在するコーティング膜の存在が分かった。
【0122】
評価例5:高温保存特性
前記製作例1-4及び比較製作例1,2によって製造されたリチウムイオン電池に対して、常温(25℃)で0.1C rateの電流で、電圧が4.30V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.30Vを維持しながら、0.05C rateの電流でカットオフ(cut-off)した。次に、放電時、電圧が3.00V(対Li)に至るまで、0.1C rateの定電流で放電した(化成段階、最初サイクル)。
【0123】
前記化成段階を経たリチウムイオン電池に対して、25℃で0.5C rateの電流で、電圧が4.30V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.30Vを維持しながら、0.05C rateの電流でカットオフした。次に、放電時、電圧が3.00V(対Li)に至るまで、1.0C rateの定電流で放電した。そのとき放電値(mAh/g)を基準に、残存容量と回復容量とを計算した。次に、前記リチウムイオン電池に対して、25℃で0.5C rateの電流で、電圧が4.30V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.30Vを維持しながら、0.05C rateの電流でカットオフした。充電が終わった後、高温保存前の抵抗を測定した。
【0124】
前記4.3Vに充電された電池を60℃オーブンで7日保管した後、常温(25℃)に冷却させた。前記冷却されたリチウムイオン電池に対して、高温保存後の抵抗を測定した。
【0125】
前記高温保存前の抵抗と、60℃オーブンで7日保管した後、常温(25℃)で測定した高温保存後の抵抗とから抵抗変化を計算した。測定された抵抗変化の一部を、下記表3に示した。下記表3において、抵抗変化は、高温抵抗後の抵抗と、高温保存前の抵抗との差を示したものである。
【0126】
【0127】
前記表3を参照すれば、比較製作例1によって製造されたリチウムイオン電池は、高温保存後、高温保存前に比べ、抵抗が大きく増大した。そして、比較製作例2のリチウムイオン電池は、水洗浄を介して、未反応リチウムが多く除去され、表面露出が多くなされ、抵抗が高く、高温保存後の抵抗が高温保存前の場合と比較して増大した。
【0128】
それに比べ、製作例1ないし4によって製造されたリチウムイオン電池は、高温保存後、高温保存前の場合と比較し、抵抗が低下した結果を示した。それにより、製作例1-4によって製造されたリチウムイオン電池は、比較製作例1,2の場合と比較し、高温保存特性が向上することが分かった。
【0129】
評価例6:充放電特性(容量維持率)
前記リチウムイオン電池において、充放電特性などを充放電期にする条件で評価した。
【0130】
前記製作例1-4及び比較製作例1,2によって製造されたリチウムイオン電池に対して、常温(25℃)で0.1C rateの電流で、電圧が4.30V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.30Vを維持しながら、0.05C rateの電流でカットオフした。次に、放電時、電圧が3.00V(対Li)に至るまで、0.1C rateの定電流で放電した(化成段階、最初サイクル)。
【0131】
最初充放電は、0.1Cの電流で、4.3Vに逹するまで定電流充電を行った後、0.05Cの電流に逹するまで定電圧充電を施した。充電完了のセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.1Cの電流で、電圧が3Vに至るまで定電流放電を遂行した。2番目充放電サイクルは、0.2Cの電流で、4.3Vに逹するまで定電流充電を行った後、0.05Cの電流に逹するまで、定電圧充電を実施した。充電完了のセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.2Cの電流で、電圧が3Vに至るまで定電流放電を行った。
【0132】
寿命評価は、1Cの電流で、4.3Vに逹するまで定電流充電を行った後、0.05Cの電流に逹するまで、定電圧充電を施した。充電完了のセルは、約10分間の休止期間を経た後、1Cの電流で、電圧が3Vに至るまで定電流放電を行うサイクルを50回反復的に実施して評価した。その実験結果を、
図4及び表4に示した。容量維持率は、下記数式2から計算された。
【0133】
【0134】
【0135】
図4及び表4から分かるように、比較製作例1によって製造されたリチウムイオン電池は、高い残留リチウムを有しており、0.2C容量では、大差がないが、寿命の場合、50サイクルが進められた後、低い容量維持率を示した。そして、比較製作例2によって製造されたリチウムイオン電池は、残留リチウムの含量は、少ないものの、表面積が増大して抵抗が上昇した。それにより、比較製作例1の場合に比べ、容量維持率が低下した。
【0136】
それに比べ、製作例1-4によって製造されたリチウムイオン電池は、比較製作例1,2によって製造されたリチウムイオン電池に比べ、0.2C容量と、容量維持率が改善されるということが分かった。前記表4の結果を見るとき、酢酸イットリウム含量が約0.2Mないし0.5Mである場合、容量維持率がさらに優秀であり、具体的には、0.5Mであるとき、容量維持率が最も優秀な結果を示した。
【0137】
以上、製造例及び実施例を参照して説明したが、当該技術分野の当業者であるならば、特許請求の範囲に記載された思想及び領域から外れない範囲内で、多様に修正及び変更がなされるということを理解することができるであろう。
【符号の説明】
【0138】
11 リチウムイオン電池
12 負極
13 正極
14 セパレータ
15 電池ケース
16 キャップアセンブリ
34 セパレータ