(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】回転塗布装置及び回転塗布方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20230412BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20230412BHJP
B05C 11/08 20060101ALI20230412BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20230412BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230412BHJP
B05D 1/40 20060101ALI20230412BHJP
B05B 7/26 20060101ALN20230412BHJP
【FI】
H01L21/30 564C
B05C11/10
B05C11/08
B05D1/02 H
B05D3/00 B
B05D3/00 C
B05D1/40 A
B05B7/26
(21)【出願番号】P 2019061429
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(73)【特許権者】
【識別番号】310018593
【氏名又は名称】ジャパンクリエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】上杉 昌義
(72)【発明者】
【氏名】的野 恒夫
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-092118(JP,A)
【文献】特開2006-278856(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020863(WO,A1)
【文献】特開2005-019560(JP,A)
【文献】特開2003-093943(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0508454(KR,B1)
【文献】特開2011-018717(JP,A)
【文献】特開2005-340515(JP,A)
【文献】特開2010-192619(JP,A)
【文献】特開2000-124120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/027、21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物を載置するテーブルと、
前記テーブルを回転させるテーブル回転装置と、
前記テーブルと対向して設けられ、気体と混合された微粒子状の塗布液を散布する二流体混合ノズルと、
前記テーブルの上方で前記二流体混合ノズルを移動させるノズル移動装置と、
1つの前記加工対象物に対して前記塗布液を散布する場合に、前記テーブルの回転動作と、前記二流体混合ノズルの移動とを交互に繰り返し行うように、前記テーブル回転装置及び前記ノズル移動装置を制御する制御部と、
を備える回転塗布装置。
【請求項2】
前記気体及び前記塗布液の流量を制御するノズル制御部を更に備える請求項1に記載の回転塗布装置。
【請求項3】
加工対象物を載置するテーブルを回転させている状態で、前記テーブルと対向して設けられた二流体混合ノズルから微粒子状の塗布液を散布する工程と、
前記テーブルの上方で前記二流体混合ノズルを移動させるノズル移動工程と、
1つの前記加工対象物に対して前記塗布液を散布する場合に、前記テーブルの回転動作と、前記二流体混合ノズルの移動とを交互に繰り返し行う制御工程と、
を含む回転塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布液を加工対象物に塗布する塗布装置に関し、特に半導体ウェハのような平板状の加工対象物を回転させながら塗布液を塗布する回転塗布装置及び回転塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造では各種の膜をウェハの表面上に形成しつつ、ウェハを加工している。例えば、露光時にはウェハの表面にレジスト膜を形成したり、グルービング(溝加工)の際にはデバイス層を保護する保護膜を形成したりする。これらの膜を形成するために、種々の塗布装置が用いられているが、その1つとして回転塗布装置がある。この回転塗布装置では、加工対象物の表面の中心付近に塗布液を供給し、その加工対象物の中心軸を回転軸として加工対象物を回転させることにより、遠心力を用いて塗布液を加工対象物の表面全体に塗布している。
【0003】
このような回転塗布装置の例として特許文献1及び特許文献2に記載の発明が挙げられる。特許文献1は、加工対象物(被処理基板)の表面に気体を吹き付ける気体吹出し装置を備える回転塗布装置を開示する。特許文献1の回転塗布装置は、加工対象物(被処理基板)の表面に気体を吹き付けることにより、塗布液を均一に表面上に拡散させ、且つ、塗布液の乾燥時間を短縮することを可能とする。
【0004】
特許文献2は、加工対象物(シリコン基板)の表面に塗布液(レジスト液)を液滴として滴下する際に回転軸の径方向に滴下位置を変えることができる回転塗布装置を開示する。特許文献2の回転塗布装置は、径方向に滴下位置を変えながら塗布液を滴下することにより、塗布液を均一に塗布することを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-128214号公報
【文献】特開2004-103781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1及び特許文献2を含む従来の回転塗布装置は、加工対象物を高速回転させることにより、滴下した塗布液を加工対象物の表面全体に遠心力を用いて拡散させている。塗布液を拡散させる際、多くの塗布液が加工対象物の表面上から飛散する。この飛散する塗布液の量は滴下した塗布液の約50%、場合によっては90%にもなり、塗布液に無駄が生じているという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、塗布液の飛散を低減することが可能な回転塗布装置及び回転塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係わる回転塗布装置は、加工対象物を載置するテーブルと、テーブルを回転させるテーブル回転装置と、テーブルと対向して設けられ、気体と混合された微粒子状の塗布液を散布する二流体混合ノズルと、テーブルの上方でノズルを移動させるノズル移動装置と、を備える。
【0009】
テーブルの回転とノズルの移動とを併用して塗布液を散布するため、遠心力を用いて塗布液を拡散させている従来技術よりもテーブルの回転速度を低くすることができ、ひいては、テー加工対象物の表面上からの塗布液の飛散を低減することができる。
【0010】
加えて、微細な粒子状の塗布液が散布されるため、塗布液を液滴として滴下する場合と比べて塗布液の乾燥時間を短縮させることができる。ベーキング等の処理を行う装置を設ける必要がないため、安価な設備導入コストで乾燥時間の短縮を実現することができる。
【0011】
好ましくは、テーブルの回転速度(回転数)は約500rpm未満であり、より好ましくはテーブルの回転速度は約100から約300rpmである。また、好ましくはノズルの揺動速度(角速度)は、数rpmである。
【0012】
好ましくは、二流体混合ノズルは、気体及び塗布液の流量を制御するノズル制御部を備える。
【0013】
好ましくは、回転塗布装置はテーブルの回転動作と、ノズルの移動とを交互に繰り返し行うように、テーブル回転装置及びノズル移動装置を制御する制御部を更に備える。又は、好ましくは、回転塗布装置はテーブルの回転動作と、ノズルの移動とを並列的に(同時に)行うように、テーブル回転装置及びノズル移動装置を制御する制御部を更に備える。
【0014】
回転塗布装置はテーブルの回転動作とノズルの移動とを並列的に行う場合、好ましくは、制御部はテーブルの径方向におけるノズルの位置に応じてテーブルの回転速度を変化させる。あるいは、テーブルの回転速度を制御(変更)する代わりに、制御部はテーブルの径方向におけるノズルの位置に応じてノズルの移動速度を制御(変更)することにしてもよい。
【0015】
回転塗布装置はテーブルの回転動作とノズルの移動とを並列的に行う場合、塗布液の散布中にノズルの揺動又は移動によりテーブルの径方向におけるノズルの位置が変化するため、制御部は、ノズルの位置に応じてノズルとテーブルとの相対速度が大きく変化しないようにテーブルの回転速度又はノズルの移動速度を制御(変更)する。これにより、塗布液が不均一に散布されることを抑制する。
【0016】
ここで、ノズルを固定した状態でテーブル回転装置によりテーブルを回転させつつ、ノズルから塗布液を散布させる動作を、ノズルの位置を変えて複数回行うこととしてもよい。この場合、テーブルの径方向におけるノズルの位置に応じてテーブルの回転速度を変化させる必要はない。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の別の態様に係わる回転塗布方法は、テーブルを回転させている状態で、テーブルと対向して設けられた二流体混合ノズルから微粒子状の塗布液を散布する工程と、テーブルの上方で二流体混合ノズルを移動させるノズル移動工程と、を含む。
【0018】
ここで、散布工程とノズル移動工程とを交互に繰り返し行うことにしてもよいし、散布工程とノズル移動工程とを並列的に行うことにしてもよい。
【0019】
テーブルの回転とノズルの移動とを併用して塗布液を散布するため、遠心力を用いて塗布液を拡散させている従来技術よりもテーブルの回転速度を低くすることができ、ひいては、加工対象物の表面上からの塗布液の飛散を低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、テーブルの回転と二流体混合ノズルの移動とを併用して粒子状の塗布液を散布することにより、テーブルの回転速度を従来よりも低くすることができ、ひいては、加工対象物の表面上からの塗布液の飛散を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】テーブルの上方から見たアームの動作の説明図
【
図6】第2実施形態に係わる回転塗布装置におけるノズルの動きを説明する図
【
図7】第3実施形態に係わる回転塗布装置におけるノズルの動きを説明する図
【
図8】第2及び第3実施形態におけるノズルの位置とテーブルの回転速度との関係を概念的に示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。以下の説明において、例として加工対象物(ワーク)をウェハとするが、加工対象物を限定する趣旨ではない。
【0023】
<第1実施形態>
図1及び
図2は第1実施形態に係る回転塗布装置10の概略構成を示す平面図及び正面図である。なお、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は互いに直交する方向であり、X軸方向は水平方向、Y軸方向はX軸方向に直交する水平方向、Z軸方向は上下方向(鉛直方向)である。
図1及び
図2に示す回転塗布装置10は、テーブル14と、ノズル22と、アーム25と、ノズル揺動装置(ノズル移動装置)20と、テーブル回転装置30と、を備える。
【0024】
ウェハ12は平板状であり、ウェハ12の中心がテーブル14の中心とほぼ一致するように、ウェハ12はテーブル14上に載置される。テーブル14は水平方向に平行であり、不図示の吸引装置を用いてウェハ12を吸着保持する。テーブル回転装置30は、不図示のモータを用いて、テーブル14の中心を通りテーブル14面に垂直な(Z軸に平行な)回転軸を中心にしてテーブル14を回転させる。
【0025】
ノズル22は、塗布液を吐出する吐出口を有し、テーブル14(ウェハ12)に対向するように配置される。ノズル22は、気体と塗布液とを混合して散布する二流体混合ノズルであり、気体と混合された塗布液をテーブル14に向かって散布する。塗布液の吐出量は、例えば、数ml/min程度である。
【0026】
塗布液は半導体の製造段階に応じて適宜選択される。塗布液として例えば、露光時にはレジスト膜を形成するためのレジスト液、グルービング時には保護膜を形成するためのコート剤等が挙げられる。気体は、塗布液との反応性が低いものが適宜選択される。例えば、塗布液がコート剤である場合、好ましくは、気体は窒素である。ノズル22の周辺の構成について詳しくは後述する。
【0027】
アーム25の一方端にはノズル22が固定され、アーム25の他方端はノズル揺動装置20のアーム回転軸26に接続される。好ましくは、アーム25は、ノズル22がテーブル14の中心の上方を通過することができる長さを有する。
図1及び
図2ではアーム25はX軸方向及びY軸方向に対して傾斜した位置に配置されているが、この例に限らない。回転塗布装置10を構成する各部の位置関係や空きスペースに応じてアーム25の位置は適宜決定される。
【0028】
アーム回転軸26はZ軸方向に延びる柱状であり、アーム25を略水平に支持する。ノズル揺動装置20はアーム回転軸26を中心にアーム25を揺動(回動)させることにより、テーブル14の上方でX-Y平面上で円弧を描くようにノズル22を揺動させる(振り子運動させる)。アーム25の揺動速度(角速度)は、例えば数rpmである。
【0029】
ノズル22が揺動する角度範囲(円弧の中心角)は、少なくとも、ノズル22がテーブル14の外周とテーブル14の中心との間を移動することができる大きさであることが望ましい。ノズル22が揺動する角度範囲について詳しくは後述する。
【0030】
図3は、ノズル22の周辺の構成の概要図である。
図3では概略的にノズル22の断面が示されている。ノズル22は、塗布液供給路23と気体供給路24とに接続される。塗布液供給路23は流量制御弁15及び塗布液タンク16を備え、塗布液をノズル22に供給する。気体供給路24は流量制御弁17、気体タンク18及び不図示のコンプレッサを備え、気体をノズル22に圧送する。圧送された気体とノズル22内で混合されて微細な粒子状になった塗布液は、テーブル14(ウェハ12)に向かって散布される。
【0031】
ノズル制御部21は、入出力インターフェース(不図示)を介して入力されたユーザの指示に基づいて塗布液供給路23及び気体供給路24に各々設けられた流量制御弁15及び17の開度を調節することにより、ノズル22に供給する塗布液及び気体の流量を制御する。ノズル制御部21は、例えばプロセッサによって実現される。
【0032】
なお、このノズル22は塗布液を液滴として滴下(吐出)することも可能であるため、本実施形態の回転塗布装置10を従来の回転塗布装置と同様に用いることが可能である。
【0033】
次に、ノズル22の揺動運動について
図4を用いて説明する。回転塗布装置10では、テーブル14(ウェハ12)を回転させながらノズル22を揺動させて、塗布液をウェハ12の表面に散布する。例えば、ノズル22がテーブル14の中心の直上にある場合にアーム25がX軸に対して45°傾斜するように配置されてもよい。当然ながら、ノズル揺動装置20の配置はこの例に限定されない。
【0034】
図4に示すように、ノズル22がテーブル14の中心の直上に位置する場合のアーム25の角度を0(ゼロ)°とし、アーム25を時計回りに回転させる場合を正方向(+方向)とすると、アーム25(ノズル22)は、角度0(ゼロ)°を中心に正方向及び負方向の両方向に所定角度だけ揺動可能であることが望ましい。この所定角度は、アーム回転軸26とテーブル14との幾何学的配置によって決めることができる。具体的には、この所定角度は、ノズル22が正方向に揺動することでテーブル14(ウェハ12)の一方側の外周に到達し、負方向に揺動することでテーブル14(ウェハ12)の他方側の外周に到達することができるような大きさである。
【0035】
ウェハ12の大きさがテーブル14の大きさと比べて小さい場合、塗布液を散布する際にアーム25(ノズル22)が揺動する角度範囲をウェハ12の大きさに合わせて適宜小さくしてもよい。例えば、ノズル22がテーブル14の中心の直上にある場合にアーム25がX軸に対して45°傾斜するように配置されているとすると、アーム25が揺動する角度範囲は正方向及び負方向にそれぞれ26°にしてもよい。
【0036】
ノズル22の揺動は任意のノズルの位置から開始することができる。例えば、ノズル22がテーブル14(ウェハ12)の中心付近(アーム25の角度が0°)にある状態からノズル22の揺動運動を開始してもよい。また、例えば、ノズル22がテーブル14(ウェハ12)の外周付近にある状態からノズル22の揺動運動を開始してもよい。
【0037】
図5はノズル揺動装置20の機能ブロック図である。ノズル揺動装置20は、アーム角度検出部(アーム揺動速度検出部)27、テーブル回転制御部28、ノズル揺動制御部29及びモータ(不図示)を備える。
【0038】
アーム角度検出部27はアーム回転軸26の回転角度を検出することによりアーム25の角度位置を検出する回転角度検出器(回転角度センサ)である。アーム角度検出部27として任意の回転角度検出器を用いることが可能である。回転角度検出器として、例えばロータリーエンコーダやポテンショメータが挙げられるが、この例に限らない。回転角度検出器については広く知られているため、説明を省略する。アーム角度検出部27により、テーブル14の径方向におけるノズル22の現在の位置及びアーム25の揺動速度を検出することができる。
【0039】
テーブル回転制御部28及びノズル揺動制御部29はプロセッサを用いて実現される。
図5では機能に応じてテーブル回転制御部28及びノズル揺動制御部29に分けて示しているが、実際は、1つのプロセッサで実現することも可能である。テーブル回転制御部28及びノズル揺動制御部29は、ROM(Read Only Memory)(不図示)、RAM(Random Access Memory)(不図示)、及び入出力インターフェース(不図示)等を備える。テーブル回転制御部28及びノズル揺動制御部29では、ROMに記憶されている制御プログラム等の各種プログラムがRAMに展開され、RAMに展開されたプログラムがプロセッサによって実行されることにより、入出力インターフェースを介して各種の演算処理や制御処理が実行される。
【0040】
テーブル回転制御部28は、アーム角度検出部27により検出されたアーム25の角度位置に応じてテーブル14の回転速度を決定し、決定した回転速度でテーブル14を回転させるようにテーブル回転装置30を制御する。テーブル14の回転速度の制御について詳しくは後述する。
【0041】
ノズル揺動制御部29は、不図示の入出力インターフェースを介して入力されたユーザの指示に基づいて所定の揺動速度でアーム25を揺動させるように、モータを用いてアーム回転軸26を回転させる。
【0042】
本実施形態では塗布液をウェハ12の表面に散布する際に、テーブル14を回転させながらノズル22を揺動させている。塗布液の散布中にノズル22の揺動によりノズル22とテーブル14の中心との距離が変化するため、テーブル14とノズル22との相対速度もそれに応じて変化する。そのため、仮にテーブル14の回転速度(回転数)とノズル22の揺動速度(角速度)とを不変にすると、塗布液がウェハ12の表面上に不均一に散布される恐れがある。具体的にはテーブル14の周速度はテーブル14の中心からの距離に依存するため、テーブル14の中央付近では塗布液が多く散布され、テーブル14の外周付近では塗布液が少なく散布される可能性がある。
【0043】
そこで、ノズル22とテーブル14との相対速度が大きく変化しないようにする、あるいは、ほぼ一定にするために、テーブル回転制御部28は、テーブル14の径方向におけるノズル22の位置に応じてテーブル14の回転速度を変化させるようにテーブル回転装置30を制御する。
【0044】
具体的には、塗布液の散布が不均一になることを抑制するために、テーブル回転制御部28は、ノズル22がテーブル14(ウェハ12)の中心付近にある場合に比べて、ノズル22がテーブル14の外周付近にある場合にはテーブル14の回転速度が遅くなるように、テーブル14の回転速度を変更する。このテーブル回転制御部28によるテーブル14の回転速度の制御は予め、制御プログラムとしてROMに記憶されることにしてもよい。
【0045】
なお、本実施形態ではテーブル14の回転速度を変更する場合について説明するが、テーブル14の回転速度を変更する代わりに、ノズル22の揺動速度を変更することにしてもよい。
【0046】
この場合、塗布液の散布が不均一になることを抑制するために、ノズル揺動制御部29は、ノズル22がテーブル14(ウェハ12)の中心付近にある場合に比べて、ノズル22がテーブル14の外周付近にある場合にはノズル22の揺動速度が遅くなるように(あるいはほぼ0(ゼロ)になるように)、ノズル22の揺動速度を変更する。
【0047】
従来の回転塗布装置ではウェハ12上に液滴として滴下された塗布液をウェハ12の表面全体に拡散させることができる遠心力を得られるようにテーブル14の回転速度を大きくする必要があった。具体的には、従来の回転塗布装置ではテーブル14の回転速度は500rpmから2000rpmの範囲であり、多くの場合、1000から1500rpmほどであった。このため、塗布液がウェハ12の表面上から飛散し、塗布液に無駄が生じていた。
【0048】
一方、本実施形態では、テーブル14を回転させている状態でノズル22を揺動させることによって塗布液をウェハ12の表面に散布しているため、テーブル14の回転速度を従来よりも低くすることができる。具体的には、本実施形態ではテーブル14の回転速度は約500rpm未満であり、好ましくはテーブル14の回転速度は100から300rpm程度である。このようにテーブル14の回転速度を従来と比べて大幅に低くすることにより、塗布液の飛散を低減することが可能となる。加えて、飛散した塗布液によりテーブル14の周辺の装置等が汚損することも抑制することができる。
【0049】
更に、本実施形態では二流体混合ノズルで気体と混合された微細な粒子状の塗布液を散布している。これにより、塗布液を滴下していた従来技術と比べて、塗布液の乾燥時間を短縮させることができる。このため、塗布液を乾燥させるベーキング等の処理を省くことができる。ひいては、半導体の生産効率及び製造コストを向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態の回転塗布装置では、1μmから3μm程度の厚さの膜を良好に短時間で形成できる。ウェハ12の表面上に形成した膜の上へ更に塗布液を繰り返し散布することにより、膜の厚さを正確に制御しながら、大きな厚みを有する膜を従来よりも低コストで形成することができる。例えば、数十μm程度の厚みを有する膜であっても、本実施形態の回転塗布装置10を適用することにより、塗布液を乾燥させるベーキング機能等を追加することなく、低い設備導入コストで良好に所望の膜厚を有する膜を形成することができる。当然ながら、塗布液の乾燥を促進させるために、ベーキング機能等を追加することも可能である。
【0051】
<第2実施形態>
第1実施形態ではノズル揺動装置20によりノズル22が揺動される場合について説明した。第2実施形態ではノズル22の動きの他の例について説明する。第2実施形態の回転塗布装置の構成は第1実施形態と同じであるため、構成についての説明は省略する。
【0052】
図6は第2実施形態に係わる回転塗布装置におけるノズル22の動きを説明する図である。第2実施形態では、まずノズル22の位置をテーブル14の中心付近に固定した状態で、ノズル22から塗布液を散布しつつ、テーブル回転制御部28はテーブル回転装置30にテーブル14を1周回転させる。テーブル14の回転速度は第1実施形態と同程度である。テーブル14を1周回転させ、その位置での塗布液の散布が終了した後、テーブル回転制御部28はテーブル14の回転を一旦停止する。
【0053】
続いて、テーブル14の回転が停止している状態でノズル揺動装置20はアーム25を数°移動(回動)させることにより、テーブル14の径方向におけるノズル22の位置を変更させる。その後、ノズル22の位置を固定した状態でノズル22から塗布液を散布しつつ、テーブル回転制御部28はテーブル回転装置30にテーブル14を1周回転させる。
【0054】
この動作をノズル22の位置がテーブル14の外周付近に至るまで繰り返すことにより、ウェハ12の表面の全体に塗布液を散布する。
図6において太い実線で示すように、第2実施形態ではウェハ12に塗布される塗布液の塗布軌跡はテーブル14の中心を中心とする同心円を描く。
【0055】
図4に示す装置構成例を用いてより詳しく説明すると、第2実施形態においてノズル22が移動する範囲は、テーブル14の中心(アーム25の角度が0(ゼロ)°)から始まり、負方向(又は正方向)にノズルが所定角度(例として26°)だけ回転(回動)してテーブル14(ウェハ12)の外周に至るまでである。
【0056】
第1実施形態と同様に、第2実施形態でも、ウェハ12の大きさがテーブル14と比べて小さい場合、実際に塗布液を散布する際にノズル22が移動する角度範囲をウェハ12の大きさに合わせて小さくしてもよい。
【0057】
また、ノズル22をテーブル14の中心付近からテーブル14の外周付近まで移動させる場合について説明したが、ノズル22をテーブル14の外周付近からテーブル14の中心付近まで移動させることにしてもよい。
【0058】
第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、塗布液の飛散の低減、塗布液の乾燥時間の短縮、及び、乾燥処理を省くことによる生産効率と製造コストとの向上を実現することができる。
【0059】
<第3実施形態>
第3実施形態ではノズル22の動きの更なる他の例について説明する。第3実施形態の回転塗布装置の構成は第1実施形態と同じであるため、構成についての説明は省略する。
【0060】
図7は第3実施形態に係わる回転塗布装置におけるノズル22の動きを説明する図である。第3実施形態では、テーブル14を回転させている状態でノズル22の位置をテーブル14の中心付近からテーブル14の外周に向かってアーム25を移動(回動)させながら塗布液をウェハ12の表面に散布する。テーブル14の回転速度及びアーム25の移動速度は第1実施形態と同程度である。第3実施形態では、
図7において太い実線で示すように、ウェハ12に塗布される塗布液の塗布軌跡はテーブル14の中心からテーブル14の外周に向かう渦巻(スパイラル)を描く。
【0061】
本実施形態では第1実施形態と同様に、塗布液をウェハ12の表面に散布する際に、テーブル14の回転をさせながらノズル22を移動させる。そのため、テーブル14とノズル22との相対速度が大きく変化しないようにするために(ほぼ一定にするために)、テーブル回転制御部28は、テーブル14の径方向におけるノズル22の位置に応じてテーブル14の回転速度を変化させるようにテーブル回転装置30を制御する。テーブル14の回転速度の変化について詳しくは後述する。
【0062】
ノズル22が移動する範囲は、第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
また、ノズル22をテーブル14の中心付近からテーブル14の外周付近まで移動させる場合について説明したが、ノズル22をテーブル14の外周付近からテーブル14の中心付近まで移動させることにしてもよい。
【0064】
第3実施形態でも、第1実施形態と同様に、塗布液の飛散の低減、塗布液の乾燥時間の短縮、及び、乾燥処理を省くことによる生産効率と製造コストとの向上を実現することができる。
【0065】
次に、第2及び第3実施形態でのテーブル14の回転速度の制御について説明する。以下の説明では、テーブル14の直径を300mmとし、ノズル22がテーブル14の中心に位置する場合のアーム25の角度を0(ゼロ)°とする。更に、ノズル22の移動はテーブル14の中心から始まり、アーム25が負方向に26°(又は正方向に26°)移動してノズル22がウェハ12の外周に至ると終了すると仮定する(
図4参照)。
【0066】
図8は第2及び第3実施形態におけるノズル22の位置とテーブル14の回転速度との関係を概念的に示すグラフである。
図8において、横軸はテーブル14の径方向におけるノズル22の位置(mm)を示し、縦軸はテーブル14の回転速度(rpm(rotation per minute))を示す。
【0067】
図8において、点線は第2実施形態のデータの例を示し、一点鎖線は第3実施形態のデータの例を示し、実線は比較例としてテーブル14の回転速度(回転数)を一定にした場合のデータの例を示す。第3実施形態の例では、テーブル14の中心から外周に向かってノズル22が角速度2.6(rad/s)で回動する。比較例ではテーブル14の回転速度(回転数)を100(rpm)に固定している。
【0068】
第2実施形態では、テーブル14の回転を止めた状態でノズル22を移動させ、テーブル14が回転している間にはノズル22を移動させない。そのため、テーブル14の径方向におけるノズル22の位置に応じてテーブル14の回転速度を変化させる必要がなく、テーブル14の回転速度は一定である。その結果、第2実施形態のデータ(点線)は比較例のデータ(実線)と重なる。
【0069】
一方、第3実施形態では、テーブル14が回転している状態でノズル22を移動させる。テーブル14の回転速度(回転数)が一定の場合、テーブル14の中心ではテーブル14の周速度は0(ゼロ)であり、テーブル14の中心からの径方向の距離が大きくなるほどテーブル14の周速度は大きくなる。テーブル14の外周ではテーブル14の周速度は最速になる。そのため、一定の角速度でノズル22を移動(回動)させながら塗布液を散布すると、塗布液の散布が不均一になるおそれがある。
【0070】
そこで、第3実施形態では、
図8の一点鎖線に示すように、テーブル14の径方向におけるノズル22の位置に応じてテーブル14の回転速度を変化させる。具体的には、第3実施形態ではノズル22がテーブル14の中心付近から外周に向かうにつれてテーブル14の回転速度を低くする。
図8の例では、ノズル22がテーブル14の中心付近にある場合のテーブル14の回転速度は160rpmである。ノズル22がテーブル14の中心付近からテーブル14の外周に向かうにつれてテーブル14の回転速度は遅くなる。ノズル22がテーブル14の外周に至るとテーブル14の回転が止まり、塗布液の散布が終了する。
【0071】
このように、第3実施形態ではテーブル14の径方向におけるノズル22の位置が変化しても、テーブル14とノズル22との相対速度が大きく変化しないようにテーブル14の回転速度を制御することにより、不均一な塗布液の散布を抑制している。
【0072】
<効果>
以上説明したように、各実施形態に係わる回転塗布装置10では、テーブル14の回転とノズル22の移動とを併用して塗布液をウェハ12の表面に散布する。これにより、テーブル14の回転速度を従来よりも低くすることができ、ひいては、塗布液の飛散を低減することができる。
【0073】
回転塗布装置10では、微細な粒子状の塗布液がウェハ12の表面に散布されるため、塗布液を液滴として滴下する場合と比べて塗布液の乾燥時間を短縮させることができる。
【0074】
回転塗布装置10を用いてウェハ12の表面上に塗布液を繰り返して散布することにより、厚みを正確に制御しつつ、数十μm程度の厚みを有する膜を形成することができる。したがって、低い設備導入コストで厚みの大きい膜を良好に形成することができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0076】
10…回転塗布装置、12…ウェハ、14…テーブル、15,17…流量制御弁、16…塗布液タンク、18…気体タンク、20…ノズル揺動装置、21…ノズル制御部、22…ノズル、23…塗布液供給路、24…気体供給路、25…アーム、26…アーム回転軸、27…アーム角度検出部、28…テーブル回転制御部、29…揺動制御部、30…テーブル回転装置