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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】新規食感を有するドーナツ
(51)【国際特許分類】
   A21D 10/02 20060101AFI20230412BHJP
   A21D 2/38 20060101ALI20230412BHJP
   A21D 13/60 20170101ALI20230412BHJP
【FI】
A21D10/02
A21D2/38
A21D13/60
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019075339
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020171237
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】本田 聡
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/151034(WO,A1)
【文献】特開2007-166950(JP,A)
【文献】特開平04-311356(JP,A)
【文献】国際公開第2009/122900(WO,A1)
【文献】コーンスターチの特性と新加工・利用技術 でん粉情報 2008年5月, [online], 15-05-2017 uploaded, [Retrieved on 24-11-2022], Retrieved from the internet:<URL: https://www.alic.go.jp/joho-d/joho08_200805-01.html>
【文献】月刊フードケミカル 2015年11月号,2015年,pp.19-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉原料と、α化ハイアミロースコーンスターチとを含む澱粉質原料を含み、澱粉質原料の合計質量に対する、α化ハイアミロースコーンスターチの質量が45質量%以上である、ドーナツ用ミックス粉またはドーナツ用生地。
【請求項2】
穀粉原料と、酸化処理澱粉及びα化ハイアミロースコーンスターチからなる群より選択される少なくとも一種とを含む澱粉質原料を含み、澱粉質原料の合計質量に対する、酸化処理澱粉及びα化ハイアミロースコーンスターチの合計質量が45質量%以上であり、穀粉原料に対する酸化処理澱粉の質量比が2以下である、ドーナツ用ミックス粉またはドーナツ用生地。
【請求項3】
澱粉質原料の合計質量に対する、α化ハイアミロースコーンスターチの質量、または、酸化処理澱粉及びα化ハイアミロースコーンスターチの合計質量が85質量%以下である、請求項1または2記載のドーナツ用ミックス粉またはドーナツ用生地
【請求項4】
さらに少なくとも一種の他の加工澱粉を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のドーナツ用ミックス粉またはドーナツ用生地。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載のドーナツ用生地または請求項1~4のいずれか一項記載のドーナツ用ミックス粉を含むドーナツ用生地をフライしてなるドーナツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な食感を有するドーナツ及びそれを製造するためのドーナツ用ミックス粉あるいはドーナツ用生地に関する。
【背景技術】
【0002】
ドーナツには多様多種の製品があり、様々な食感や風味、テクスチャーが楽しまれている。それらの中で、コーティングなどを用いずに、ドーナツ生地に由来する表面がパリパリしたドーナツは、その独特の食感が好まれている。食感をウエット/ドライとソフト/ハードの2軸で考える食感言語マップによると、「パリパリ」した食感と、パイやスナック菓子について使用される「サクサク」した食感と比較すると、両者は共にドライな食感を表しているが「パリパリ」の方が「サクサク」よりもよりハードな食感であると言われている。
従来の表面がパリパリしたドーナツは、例えば、フライしたドーナツをさらに焼成する方法、折パイ製法や練りパイ製法によって作製されたいわゆるパイ生地をフライする方法、冷凍焼成パンを解凍後フライする方法などにより製造されることが知られている(特許文献1~3)。
また、特許文献4には、油っぽさを抑え、サクサクした食感のフライドベーカリー食品を製造する方法として、一定の組成の粒状澱粉組成物を小麦粉に配合することを特徴とする方法が開示されている。特許文献5には、グルタチオン高含有乾燥酵母を添加することにより、油ちょうした際の吸油量が抑制され、かつサクサクした食感の油ちょう食品を製造できることが記載されている。特許文献6には、ホスホリパーゼまたはガラクトリパーゼ活性を有する脂肪分解酵素を含んで成る生地を用いることによりパリパリした食感の揚げスナック製品等を製造できることが記載されている。
しかしながら、上述したような特別な製法や酵母や酵素などを用いずに、従来の小麦粉を主体とするミックス粉と水、卵などを混合した生地を単純にフライして製造する方法では、生地表面がパリパリした食感を有するドーナツを製造することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-306057号公報
【文献】特開2007-37539号公報
【文献】特開2016-67335号公報
【文献】特開2016-21946号公報
【文献】特開2005-80584号公報
【文献】特開2009-65984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、特別な製法や、酵母や酵素などを用いずに、表面がパリパリした新しい食感を有するドーナツを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、小麦粉等の穀粉原料と、酸化処理澱粉及びα化ハイアミロース澱粉からなる群より選択される少なくとも一種とを含む、澱粉質原料を含むドーナツ用ミックス粉またはドーナツ用生地を用いてドーナツを製造することにより、従来にないパリパリした食感のドーナツを提供できること見いだした。
【0006】
本発明は以下を提供する。
[1]穀粉原料と、酸化処理澱粉及びα化ハイアミロース澱粉からなる群より選択される少なくとも一種とを含む澱粉質原料を含み、澱粉質原料の合計質量に対する、酸化処理澱粉及びα化ハイアミロース澱粉の合計質量が45質量%以上である、ドーナツ用ミックス粉またはドーナツ用生地。
[2]澱粉質原料の合計質量に対する、酸化処理澱粉及びα化ハイアミロース澱粉の合計質量が85質量%以下である、[1]記載のドーナツ用ミックス粉またはドーナツ用生地。
[3]穀粉原料に対する酸化処理澱粉の質量比が2以下である、[1]または[2]記載のドーナツ用ミックス粉またはドーナツ用生地。
[4]さらに少なくとも一種の他の加工澱粉を含む、[1]~[3]のいずれか一記載のドーナツ用ミックス粉またはドーナツ用生地。
[5][1]~[4]のいずれか一記載のドーナツ用生地または[1]~[4]のいずれか一記載のドーナツ用ミックス粉を含むドーナツ用生地をフライしてなるドーナツ。
【発明の効果】
【0007】
様々な工程を経ることなく、手間のかからない方法で、表面がパリパリした新しい食感を有するドーナツが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のドーナツ用生地または本発明のドーナツ用ミックス粉は、穀粉原料と、酸化処理澱粉及びα化ハイアミロース澱粉からなる群より選択される少なくとも一種とを含む澱粉質原料を含み、澱粉質原料の合計質量に対する、酸化処理澱粉及びα化ハイアミロース澱粉の合計質量が45質量%以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明において「ドーナツ」はイースト発酵により製造されるイーストドーナツでも、あるいは化学膨張剤やメレンゲを用いて製造されるケーキドーナツでもよいが、本発明の効果は特にケーキドーナツにおいて顕著であるため好ましい。
本発明において「ドーナツ用生地」とは、穀粉原料と、酸化処理澱粉及びα化ハイアミロース澱粉からなる群より選択される少なくとも一種とを含む澱粉質原料を含み、さらに必要に応じてその他の澱粉質原料(他の穀粉原料や他の加工澱粉を含む)及び他の粉体原料、並びに液体原料を混合して、混捏して製造されるものである。
本発明において「ドーナツ用ミックス粉」とは、穀粉原料と、酸化処理澱粉及びα化ハイアミロース澱粉からなる群より選択される少なくとも一種とを含む澱粉質原料を含み、さらに必要に応じてその他の澱粉質原料(他の穀粉原料や他の加工澱粉を含む)及び他の粉体原料を含んでいてもよく、その他、ドーナツ用ミックス粉の原料として知られているものはいずれを用いてもよい。
澱粉質原料及び任意成分については後述する。
【0010】
(α化ハイアミロース澱粉)
α化ハイアミロース澱粉とは、通常の非加工澱粉よりアミロース含量が多い澱粉であり、さらにそれをα化したものである。好ましくはα化ハイアミロースコーンスターチが挙げられる。ここでのハイアミロースコーンスターチとは、通常のコーンスターチりもアミロース含量が多いコーンスターチを指す。それをα化したものが、α化ハイアミロースコーンスターチである。α化とは、粘性を持った透明または半透明の澱粉糊液の状態を意味する。」
【0011】
(酸化処理澱粉)
本明細書において「酸化処理澱粉」とは、澱粉を次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤により酸化処理して得られる澱粉を意味する。
酸化処理澱粉には、一般に「酸化澱粉」と称される澱粉の他、酸化処理澱粉分子の一部(水酸基)をアセチル化した「アセチル化酸化澱粉」のようなさらに化学修飾された酸化処理澱粉も含まれる。
酸化処理澱粉であれば特に制限無く使用でき、例えば小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉等の食品用に使用できる澱粉の酸化澱粉あるいはアセチル化酸化澱粉などを使用することができる。
酸化処理澱粉として、酸化澱粉またはアセチル化酸化澱粉が好ましく、特にアセチル化酸化澱粉が好ましい。
【0012】
(穀粉原料)
本明細書において、「穀粉原料」とは、小麦粉、米粉、大麦粉、ライ麦粉、大豆粉、緑豆粉等の公知の食用穀粉(熱加工しα化したものなども含む)が挙げられる。好ましくは小麦粉、米粉などであり、より好ましくは小麦粉である。本明細書において「穀粉原料」には澱粉類は含まない。
【0013】
(澱粉質原料)
本明細書において、「澱粉質原料」とは、上述の「穀粉原料」に加えて、酸化処理澱粉及びα化ハイアミロース澱粉からなる群より選択される少なくとも一種の澱粉を含み、さらに必要に応じて、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ等の食用澱粉;食用澱粉を化学的、物理的、酵素的に変性させた加工澱粉;食用澱粉をα化したα化澱粉等を含むものである。
【0014】
本発明の「ドーナツ用生地」あるいは「ドーナツ用ミックス粉」には、上記必須成分のほか、必要に応じて、ドーナツ用生地あるいはドーナツ用ミックス粉の原料として知られているものはいずれの成分を用いてもよい。具体的には、糖や油脂、塩、乳、乳化剤、膨張剤、甘味料、香料、調味料、増粘剤、などを配合することができる。小麦蛋白質(グルテン)や大豆蛋白質のような植物性蛋白質を添加してもよい。
【0015】
本発明において、α化ハイアミロース澱粉及び酸化処理澱粉から選択される少なくとも一種を所定量含めば本発明の効果を奏するが、双方を含む場合には、より高い効果を奏する。双方を用いる場合にはα化ハイアミロース澱粉及び酸化処理澱粉をそれぞれ単独で用いた場合よりも使用量を低減することができるため好ましい。
澱粉質原料の合計質量に対する、α化ハイアミロース澱粉と酸化処理澱粉の合計質量(α化ハイアミロース澱粉あるいは酸化処理澱粉のみを含む場合にはそれぞれの質量であり、双方を含む場合にはそれらの合計質量)は45質量%以上である。より好ましくは45~85質量%であり、さらにより好ましくは66~85質量%である。これらの範囲にあればパリパリとした食感を得ることができ、またフライ時に形状を維持することができるため好ましい。
α化ハイアミロース澱粉の使用量は、上述のα化ハイアミロース澱粉と酸化処理澱粉の合計質量の範囲を満たす限りにおいて、澱粉質原料の合計質量0~85質量%の範囲で添加することができ、より好ましくは15~85質量%である。
酸化処理澱粉の使用量は、上述のα化ハイアミロース澱粉と酸化処理澱粉の合計質量の範囲を満たす限りにおいて、澱粉質原料の合計質量0~65質量%の範囲で添加することができ、より好ましくは3~50質量%である。ただし、後述するように酸化処理澱粉は穀粉原料に対し一定の比率で用いることが好ましい。
【0016】
α化ハイアミロース澱粉及び酸化処理澱粉の合計使用量が多くなると、フライ時に形状を維持することが難しくなるため、当然ながら形状を維持でき、ドーナツとして製造できるような範囲で使用することが必要である。その観点からα化ハイアミロース澱粉及び酸化処理澱粉の合計量は85質量%を越えないことが好ましい。
【0017】
また、酸化処理澱粉の量についても同様に、使用量を多くしていくと、フライ時に形状を維持することが難しくなるため、当然ながら形状を維持できるような範囲で使用することが必要である。酸化処理澱粉は、好ましくは穀粉原料の質量に対し2倍以下の量で用いることが好ましく、1.9倍以下で用いることがより好ましい。
【0018】
α化ハイアミロース澱粉の量についても同様に、使用量が多くなると、フライ時に形状を維持することが難しくなるため、形状を維持できるような範囲で使用することが必要である。α化ハイアミロース澱粉は、好ましくは穀粉原料の質量に対し7倍以下の量で用いることが好ましい。
【0019】
本発明において穀粉原料の量は特に制限されないが、澱粉質原料の合計質量に対して少なくとも10質量%以上含むことが好ましく、12質量%~55質量%がさらに好ましく、15質量%~50質量%がよりさらに好ましい。
【0020】
本発明のドーナツ用ミックス粉またはドーナツ用生地には、上述の原料の他、さらに少なくとも一種の他の加工澱粉を含んでいてもよい。酸化処理澱粉及びα化ハイアミロース澱粉以外の加工澱粉を加えると、ドーナツの形状を保持することがより容易となり好ましい。
他の加工澱粉としては例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ等の食用澱粉;食用澱粉を化学的、物理的、酵素的に変性させた加工澱粉を挙げることができる。より具体的には、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋、ヒドロキシプロピル化、アセチル化等の化学変性させた加工澱粉が挙げられ、より好ましくはタピオカ澱粉をヒドロキシプロピル化リン酸架橋、ヒドロキシプロピル化、アセチル化等の化学変性させた加工澱粉である。
その他の加工澱粉は、澱粉質原料の合計質量に対して0~30質量%程度含まれていてもよい。
【0021】
本発明のドーナツ用生地を製造するための液体原料としては、水、卵液、牛乳等が挙げられる。
水の量は生地の調製において重要であるが、穀粉原料及び澱粉の量により適宜変えることができる。例えば、澱粉質原料の合計100質量部に対し、100~500質量部程度であることが好ましく、150~400質量部であることがより好ましく、160~350質量部程度であることがよりさらに好ましい。
卵液など他の液体原料を用いる場合には、水に換算した質量部を差し引いて水を添加することが好ましい。
【0022】
本発明のドーナツは、従来公知のいずれの方法で製造してもよい。
例えば、上記した成分と全卵、水をミキサーで混捏し、フロアタイム後、生地を分割、フライしてドーナツを製造する。
より具体的には、例えば、澱粉質原料を含む粉体原料と液体原料の一部をミキサーで混捏し、その後さらに液体原料の残部を入れながら混捏する。捏上温度は室温付近で行うことが好ましい。得られた生地をドーナツカッターなどで適宜分割及び成形を行い、170~200℃程度の温度のフライ油で潜行させた状態で1~7分間フライしてドーナツを得ることができる。
【実施例
【0023】
実施例1
<製造例>
下記原材料表に記載される原材料を用意した。
[原材料表]
【0024】
原材料表に記載の粉体原材料及び液体原材料のうち全卵と水(A)(250質量部)をミキサー(KitchenAid社製、KSM5)に投入し、高速で3分間混捏し、その後、水(B)(370質量部)を徐々に入れながら低速で1分間、さらに高速で3分間混捏した。捏上温度は30℃であった。混捏した生地をドーナツカッター(ベルショー社製、Fカッター及びクリンクルプランジャー)で60g分割し、190℃のフライ油で潜行させた状態で5分間フライして本発明のドーナツを得た。
【0025】
<各澱粉の効果についての検討>
加工澱粉である、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉、α化ハイアミロースコーンスターチ及び酸化処理澱粉であるアセチル化酸化澱粉を用いて、それぞれの添加量を表1記載の添加量にした以外は<製造例>に従ってドーナツを製造した。フライ後室温で20分間静置し粗熱がとれた後、パネラー10名により[評価基準表]に従って評価した。<製造例>においてα化ハイアミロースコーンスターチ及びアセチル化酸化澱粉を両方とも配合しない場合の製品を1点とし、2点以上を合格とした。
【0026】
なお、加水量については、以下述べるように、生地性を合わせるためにα化ハイアミロースコーンスターチの添加量の増減にあわせて調整した。したがって加水量の違いはパリパリ感の評価には大きく影響していないと考えている。
【0027】
まず、<製造例>の配合の場合の加水量を決定し、生地性や加水量の基準とした。
具体的には、生地の状態を目視や触感で確かめながら加水した。第1の加水は、ミキサーに配合を入れ、混合しながら水を少しずつ加えていき、そぼろ状になったら加水を止め、しばらく水を馴染ませた。次に、第2の加水も水を少しずつ加えていき、適当な生地の状態になったところで加水を止めた。この時の第1の加水量と第2の加水量を基準とした。
実施例では、下記を目安に、生地性を見ながら加水し、最終的に加水量を調整した。
(1)α化ハイアミロースコーンスターチを+10g当たり、水(A)の加水量を+10g、水(B)の加水量を+20g
(2)アセチル化酸化澱粉を+10g当たり、水(A)または(B)の加水量を+10g
【0028】
[評価基準表]
【0029】
[表1-1]
*「質量%」は澱粉質原料100質量部の内の質量%を示している。
【0030】
[表1-2]
*「質量%」は澱粉質原料100質量部の内の質量%を示している。
【0031】
実施例1-5~1-8と比較例1-1との比較から明らかなとおり、α化ハイアミロースコーンスターチあるいは酸化処理澱粉(酸化澱粉若しくはアセチル化酸化澱粉)のいずれかが含まれることにより、ドーナツにパリパリ感を与えることができる。また、実施例1-1~1-4から明らかなように、α化ハイアミロースコーンスターチとアセチル化酸化澱粉とを併用すると、α化ハイアミロースコーンスターチとアセチル化酸化澱粉をそれぞれ単独で使用した場合よりもよりパリパリした食感を得ることができるため好ましい。またα化ハイアミロースコーンスターチあるいはアセチル化酸化澱粉を含む場合にはこれら以外の他の加工澱粉を加えても良好な結果が得られた(実施例1-1~1-3)。酸化処理澱粉やα化ハイアミロース澱粉以外の加工澱粉を加えると、ドーナツの形状を保持することがより容易となり好ましい。
【0032】
実施例2
α化ハイアミロースコーンスターチとアセチル化酸化澱粉(あるいは化学修飾澱粉)及び水(A)及び水(B)について表2に記載の材料と量を用いた以外は、<製造例>記載のとおりドーナツを製造し、実施例1と同様に評価した。
【0033】
[表2]:化学修飾澱粉の種類の検討
丸括弧内の数値は澱粉質原料100質量部の内の質量%を示している。
【0034】
表2から明らかなとおり、酸化処理澱粉であるアセチル化酸化澱粉を用いた場合には、パリパリ感が得られた(実施例2-1)が、他の化学修飾澱粉を用いた場合にはいずれも十分なパリパリ感が得られなかった(比較例2-1~2-3)。
【0035】
実施例3
α化ハイアミロースコーンスターチ(あるいはα化澱粉)とアセチル化酸化澱粉及び水(A)及び水(B)について表3に記載の材料と量を用いた以外は、<製造例>記載のとおりドーナツを製造し、実施例1と同様に評価した。
【0036】
[表3]:α化澱粉の種類の検討
丸括弧内の数値は澱粉質原料100質量部の内の質量%を示した。
【0037】
表3から明らかなとおり、α化ハイアミロースコーンスターチを用いた場合には、パリパリ感が得られた(実施例3-1)が、他のα化澱粉を用いた場合にはいずれも十分なパリパリ感が得られなかった(比較例3-1~3-4)。
【0038】
実施例4
アセチル化酸化澱粉及び水(A)及び水(B)について表4~5に記載の材料と量を用いた以外は、<製造例>記載のとおりドーナツを製造し、実施例1と同様に評価した。
【0039】
[表4]:各澱粉の使用量の検討
【0040】
上段:アセチル化酸化澱粉+α化ハイアミロースコーンスターチ合計(質量%)
中段:アセチル化酸化澱粉(質量%)/α化ハイアミロースコーンスターチ(質量%)
下段:パリパリ感評価結果(×:フライ中に形状を維持できず、評価できない、△:評点が1.0~1.5未満、□:評点が1.5~2.0未満、○:評点が2.0~2.5未満、◎:評点が2.5以上)
【0041】
なお、水(A)及び(B)の量の調整は、上述の加水量の調整方法に従って行い、下記表に記載される量を用いた。
【0042】
[表5]
【0043】
澱粉質原料の合計質量に対し、α化ハイアミロースコーンスターチと酸化処理澱粉の合計質量を45質量%以上用いるとパリパリ感のあるドーナツが得られた。
なお合計量が85質量%を超えると形状を維持できず、ドーナツとして製造することができなかった。
またアセチル化酸化澱粉の量が、小麦粉質量に対し2倍を超えた場合には、形状を維持できず、ドーナツとして製造することができなかった。
【0044】
実施例5
<製造例>の粉体原材料に、表6に記載した量の糖、膨張剤、油脂を添加し、<製造例>に従ってドーナツを製造した。フライ後室温で20分間静置し粗熱がとれた後、パネラー10名により評価基準表に従って評価した。製造例においてα化ハイアミロースコーンスターチ及びアセチル化酸化澱粉を両方とも配合しない場合の製品を1点とし、2点以上を合格とした。パリパリ感のあるドーナツを得ることができた。
【0045】
[表6]:糖、膨張剤、油脂の添加例