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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】地中熱利用システム
(51)【国際特許分類】
   F24T 10/20 20180101AFI20230413BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
F24T10/20
F24F3/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018152612
(22)【出願日】2018-08-14
(65)【公開番号】P2020026934
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】崔 林日
(72)【発明者】
【氏名】坂井 正頌
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹
(72)【発明者】
【氏名】中尾 正喜
(72)【発明者】
【氏名】中曽 康壽
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04448237(US,A)
【文献】米国特許第2879975(US,A)
【文献】特開2011-185521(JP,A)
【文献】特開平10-292765(JP,A)
【文献】特開平07-207715(JP,A)
【文献】特開2011-242087(JP,A)
【文献】特開2014-205086(JP,A)
【文献】特開昭60-162141(JP,A)
【文献】特開2010-117081(JP,A)
【文献】特開2020-026933(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059788(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24T
F24F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、
上部帯水層で開口している上部開口部と、下部帯水層で開口している下部開口部と、前記上部開口部と前記下部開口部との間に設けられ、内部に地下水を貯留可能な水室と、前記水室の内部に設けられ、前記地下水を揚水可能なポンプと、を備える井戸と、
前記ポンプから前記熱交換器に向かって延びる吸水配管と、を備え、
前記水室は、前記上部開口部に向けて開閉可能な上部吸込弁と、前記下部開口部に向けて開閉可能な下部吸込弁と、を備え、
前記井戸は、前記上部吸込弁及び前記下部吸込弁が固定され、上下可動な操作ロッドをさらに備え、
前記操作ロッドの上下動により、前記上部吸込弁と前記下部吸込弁とのうち、いずれか一方が開いているとき、他方が閉じるように構成されている
地中熱利用システム。
【請求項2】
前記操作ロッドを上に動かすと、前記上部吸込弁が開き、前記下部吸込弁が閉じるように、前記上部吸込弁及び前記下部吸込弁が、前記操作ロッドに固定されている請求項1に記載の地中熱利用システム。
【請求項3】
前記操作ロッドを下に動かすと、前記上部吸込弁が閉じ、前記下部吸込弁が開くように、前記上部吸込弁及び前記下部吸込弁が、前記操作ロッドに固定されている請求項1又は2に記載の地中熱利用システム。
【請求項4】
前記操作ロッドの上下動により、前記上部吸込弁及び前記下部吸込弁が上下動するように、前記上部吸込弁及び前記下部吸込弁が、前記操作ロッドに固定されている請求項1から3の何れか一項に記載の地中熱利用システム。
【請求項5】
前記熱交換器から前記下部開口部に向かって延びる注水配管と、をさらに備え、
前記井戸は、
前記注水配管内の水を前記上部開口部に注水可能な上部注水弁と、
前記注水配管内の水を前記下部開口部に注水可能な下部注水弁と、をさらに備える
請求項1から4の何れか一項に記載の地中熱利用システム。
【請求項6】
前記水室は、上面を覆っている上面パッカーと、下面を覆っている下面パッカーと、をさらに備え、前記上部開口部及び前記下部開口部のうち少なくとも一方に対し、密閉可能である
請求項1から5の何れか一項に記載の地中熱利用システム。
【請求項7】
前記水室は、全面を覆っている全面パッカーを備え、前記上部開口部及び前記下部開口部のうち少なくとも一方に対し、密閉可能である請求項1から6の何れか一項に記載の地中熱利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、帯水層の地下水を井戸からくみ上げて、温熱源又は冷熱源として利用する地中熱利用システムが提案されている。
【0003】
これに関連する技術として、特許文献1には、上下帯水層を1本の井戸で利用する地中熱利用システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-280689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような地中熱利用システムでは、上下帯水層の利用において、1本の井戸に2台のポンプを設ける必要があり、ポンプの台数が多くなってしまう。
【0006】
本発明は、上下帯水層の利用において、ポンプの台数を減らすことができる地中熱利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様の地中熱利用システムは、熱交換器と、上部帯水層で開口している上部開口部と、下部帯水層で開口している下部開口部と、前記上部開口部と前記下部開口部との間に設けられ、内部に地下水を貯留可能な水室と、前記水室の内部に設けられ、前記地下水を揚水可能なポンプと、を備える井戸と、前記ポンプから前記熱交換器に向かって延びる吸水配管と、を備え、前記水室は、前記上部開口部に向けて開閉可能な上部吸込弁と、前記下部開口部に向けて開閉可能な下部吸込弁と、を備え、前記上部吸込弁と前記下部吸込弁とのうち、いずれか一方が開いているとき、他方が閉じるように構成されている。
【0008】
本態様によれば、上下帯水層の地下水を水室内に設けられているポンプで揚水できるため、上部開口部と下部開口部とでポンプを共有できる。このため、上下帯水層を利用する地中熱利用システムにおいて、ポンプの台数を減らすことができる。
【0009】
第2の態様の地中熱利用システムは、前記熱交換器から前記下部開口部に向かって延びる注水配管と、をさらに備え、前記井戸は、前記注水配管内の水を前記上部開口部に注水可能な上部注水弁と、前記注水配管内の水を前記下部開口部に注水可能な下部注水弁と、をさらに備える第1の態様の地中熱利用システムである。
【0010】
本態様によれば、井戸から地下水を吸水する一方で、注水可能であるため、地中熱利用システムは、地盤沈下や地盤上昇を抑制できる。
【0011】
第3の態様の地中熱利用システムにおいて、前記水室は、上面を覆っている上面パッカーと、下面を覆っている下面パッカーと、をさらに備え、前記上部開口部及び前記下部開口部のうち少なくとも一方に対し、密閉可能である第1又は第2の態様の地中熱利用システムである。
【0012】
本態様によれば、上部帯水層の地下水と、下部帯水層の地下水が混ざることを抑制できる。このため、地中熱利用システムでは、上部帯水層及び下部帯水層を利用に際し、井戸の閉塞が抑制される。
【0013】
第4の態様の地中熱利用システムにおいて、前記水室は、全面を覆っている全面パッカーを備え、前記上部開口部及び前記下部開口部のうち少なくとも一方に対し、密閉可能である第1又は第2の態様の地中熱利用システムである。
【0014】
本態様によれば、上部帯水層の地下水と、下部帯水層の地下水が混ざることを抑制できる。このため、地中熱利用システムでは、上部帯水層及び下部帯水層を利用に際し、井戸の閉塞が抑制される。
【0015】
第5の態様の地中熱利用システムにおいて、前記井戸は、前記上部吸込弁及び前記下部吸込弁が固定され、上下可動な操作ロッドをさらに備える第1から第4の何れかの態様の地中熱利用システムである。
【0016】
本態様によれば、操作ロッドの上下により、上部吸込弁及び下部吸込弁を上下動させることができる。このため、地中熱利用システムにおいて、上部吸込弁及び下部吸込弁の開閉操作が容易である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の地中熱利用システムは、上下帯水層の利用において、ポンプの台数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る実施形態における地中熱利用システムの系統図である。
図2図1のII部拡大図である。
図3】本発明に係る実施形態の変形例における井戸の断面図である。
図4】本発明に係る実施形態の変形例における弁体の正面図である。
図5】本発明に係る実施形態の変形例における弁体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において同一または相当する構成には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0020】
<実施形態>
本発明に係る地中熱利用システムの実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
なお、図1及び図2に示す矢印は、各部分における(地下水を含む)冷媒の流れを示す。
【0021】
(地中熱利用システムの構成)
地中熱利用システム10は、2つの異なる帯水層である上部帯水層LY1と下部帯水層LY2とに蓄熱する。上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2は、例えば、洪積粘土層LYmを挟んで形成されている。
図1に示すように、地中熱利用システム10は、第一井戸20と第二井戸30とを備える。
地中熱利用システム10は、第一配管40と、第二配管50と、第一熱交換器60と、第二熱交換器70と、をさらに備える。
【0022】
(第一熱交換器の構成)
第一熱交換器60の一次側(一次側配管60a)は、第一配管40の途中に接続されている。
第一熱交換器60の二次側(二次側配管60b)は、冷暖房器具等の負荷Rに接続されている。
第一熱交換器60は、一次側と二次側との間で熱交換可能である。
【0023】
(第二熱交換器の構成)
第二熱交換器70の一次側(一次側配管70a)は、第二配管50の途中に接続されている。
第二熱交換器70の二次側(二次側配管70b)は、負荷Rに接続されている。
第二熱交換器70は、一次側と二次側との間で熱交換可能である。
第二熱交換器70の二次側配管70bと、第一熱交換器60の二次側配管60bとは、直列に接続されている。
【0024】
(第一井戸の構成)
第一井戸20は、地上から地下に向かって、上部帯水層LY1を貫通し、下部帯水層LY2に延びる井戸である。
第一井戸20は、第一上部開口部23と、第一下部開口部24と、第一水室25と、第一ポンプ26と、を備える。
第一井戸20は、地表SGから下部帯水層LY2に至る地下に向かって掘削された掘削孔HOL1に埋め込まれたケーシング20aをさらに備えてもよい。
第一井戸20は、第一上部開口部23に注水可能な第一上部注水弁27と、第一下部開口部24に注水可能な第一下部注水弁28と、第一操作ロッド29と、をさらに備えてもよい。
【0025】
第一上部開口部23は、上部帯水層LY1で開口している。
第一上部開口部23は、第一井戸20のうち、上部帯水層LY1に相当する深さに位置する部分である。
第一上部開口部23には、地下水が貯留されている。
例えば、ケーシング20aには、上部帯水層LY1において、複数のスリットからなるストレーナー23aが設けられている。ストレーナー23aを介して、第一上部開口部23は、上部帯水層LY1の地下水をケーシング20aの内部に取り込んだり、ケーシング20aの内部から上部帯水層LY1へ地下水を戻したりできるように構成されている。
【0026】
第一下部開口部24は、下部帯水層LY2で開口している。
第一下部開口部24は、第一井戸20のうち、下部帯水層LY2に相当する深さに位置する部分である。
第一下部開口部24には、地下水が貯留されている。
第一上部開口部23と、第一下部開口部24とは、上下に並んでいる。
例えば、ケーシング20aには、下部帯水層LY2において、複数のスリットからなるストレーナー24aが設けられている。ストレーナー24aを介して、第一下部開口部24は、下部帯水層LY2の地下水をケーシング20aの内部に取り込んだり、ケーシング20aの内部から下部帯水層LY2へ地下水を戻したりできるように構成されている。
【0027】
第一水室25は、第一上部開口部23の下方であって、第一下部開口部24の上方に設けられている。すなわち、第一水室25は、第一上部開口部23と第一下部開口部24との間に設けられている。
第一水室25は、内部に地下水を貯留可能に構成されている。
第一水室25は、第一上部開口部23及び第一下部開口部24のうち、少なくともいずれか一方に対し、密閉可能である。
第一水室25は、上面パッカー25aと、下面パッカー25bと、上部吸込弁25cと、下部吸込弁25dと、を備える。
第一水室25は、上面パッカー25aに設けられている上面吸込口25eと、下面パッカー25bに設けられている下面吸込口25fと、を有する。
上面パッカー25aは、ケーシング20a内において、上面を覆っている。
下面パッカー25bは、ケーシング20a内において、下面を覆っている。
【0028】
上面パッカー25aは、第一水室25と第一上部開口部23との間で地下水が漏れないように密閉することができる。
【0029】
下面パッカー25bは、第一水室25と第一下部開口部24との間で地下水が漏れないように密閉することができる。
【0030】
上部吸込弁25cは、第一上部開口部23に向けて開閉可能である。
上部吸込弁25cが開くと、第一水室25は、上面吸込口25eから、第一上部開口部23に貯留されている地下水を吸い込むことができる。
上部吸込弁25cが閉じると、第一水室25は、第一上部開口部23に対し、密閉される。
【0031】
下部吸込弁25dは、第一下部開口部24に向けて開閉可能である。
下部吸込弁25dが開くと、第一水室25は、下面吸込口25fから、第一下部開口部24に貯留されている地下水を吸い込むことができる。
下部吸込弁25dが閉じると、第一水室25は、第一下部開口部24に対し、密閉される。
【0032】
第一ポンプ26は、第一水室25の内部に設けられている。
第一ポンプ26は、第一水室25の内部の地下水を、第一配管40に向かって揚水する。
【0033】
第一上部注水弁27は、第二熱交換器70から第一井戸20へ送水される第二配管50内の環水を、第一上部開口部23に注水可能である。
本実施形態では、第一上部注水弁27は、第一上部開口部23の上方に設けられている。
【0034】
第一下部注水弁28は、第二熱交換器70から第一井戸20へ送水される第二配管50内の環水を第一下部開口部24に注水可能である。
本実施形態では、第一下部注水弁28は、第一水室25の下方であって、第一下部開口部24の上方に設けられている。
【0035】
第一操作ロッド29は、上部吸込弁25c及び下部吸込弁25dに固定されている。
第一操作ロッド29は、上面パッカー25a及び下面パッカー25bに対し、上下可動である。
本実施形態では、第一操作ロッド29により、地中熱利用システム10は、上部吸込弁25cと下部吸込弁25dとのうち、いずれか一方が開いているとき、他方が閉じるように構成されている。
すなわち、第一操作ロッド29を上に動かすと、上部吸込弁25cが開き、下部吸込弁25dが閉じる。
また、第一操作ロッド29を下に動かすと、上部吸込弁25cが閉じ、下部吸込弁25dが開く。
【0036】
(第二井戸の構成)
第二井戸30は、地上から地下に向かって、上部帯水層LY1を貫通し、下部帯水層LY2に延びる井戸である。
第二井戸30は、第二上部開口部33と、第二下部開口部34と、第二水室35と、第二ポンプ36と、を備える。
第二井戸30は、地表SGから下部帯水層LY2に至る地下に向かって掘削された掘削孔HOL2に埋め込まれたケーシング30aをさらに備えてもよい。
第二井戸30は、第二上部開口部33に注水可能な第二上部注水弁37と、第二下部開口部34に注水可能な第二下部注水弁38と、第二操作ロッド39と、をさらに備えてもよい。
【0037】
第二上部開口部33は、上部帯水層LY1で開口している。
第二上部開口部33は、第二井戸30のうち、上部帯水層LY1に相当する深さに位置する部分である。
第二上部開口部33には、地下水が貯留されている。
例えば、ケーシング30aには、上部帯水層LY1において、複数のスリットからなるストレーナー33aが設けられている。ストレーナー33aを介して、第二上部開口部33は、上部帯水層LY1の地下水をケーシング30aの内部に取り込んだり、ケーシング30aの内部から上部帯水層LY1へ地下水を戻したりできるように構成されている。
【0038】
第二下部開口部34は、下部帯水層LY2で開口している。
第二下部開口部34は、第二井戸30のうち、下部帯水層LY2に相当する深さに位置する部分である。
第二下部開口部34には、地下水が貯留されている。
第二上部開口部33と、第二下部開口部34とは、上下に並んでいる。
例えば、ケーシング30aには、下部帯水層LY2において、複数のスリットからなるストレーナー34aが設けられている。ストレーナー34aを介して、第二下部開口部34は、下部帯水層LY2の地下水をケーシング30aの内部に取り込んだり、ケーシング30aの内部から下部帯水層LY2へ地下水を戻したりできるように構成されている。
【0039】
第二水室35は、第二上部開口部33の下方であって、第二下部開口部34の上方に設けられている。すなわち、第二水室35は、第二上部開口部33と第二下部開口部34との間に設けられている。
第二水室35は、内部に地下水を貯留可能に構成されている。
第二水室35は、第二上部開口部33及び第二下部開口部34のうち、少なくともいずれか一方に対し、密閉可能である。
第二水室35は、上面パッカー35aと、下面パッカー35bと、上部吸込弁35cと、下部吸込弁35dと、を備える。
第二水室35は、上面パッカー35aに設けられている上面吸込口35eと、下面パッカー35bに設けられている下面吸込口35fと、を有する。
上面パッカー35aは、ケーシング30a内において、下面を覆っている。
下面パッカー35bは、ケーシング30a内において、下面を覆っている。
【0040】
上面パッカー35aは、第二水室35と第二上部開口部33との間で地下水が漏れないように密閉することができる。
【0041】
下面パッカー35bは、第二水室35と第二下部開口部34との間で地下水が漏れないように密閉することができる。
【0042】
上部吸込弁35cは、第二上部開口部33に向けて開閉可能である。
上部吸込弁35cが開くと、第二水室35は、上面吸込口35eから、第二上部開口部33に貯留されている地下水を吸い込むことができる。
上部吸込弁35cが閉じると、第二水室35は、第二上部開口部33に対し、密閉される。
【0043】
下部吸込弁35dは、第二下部開口部34に向けて開閉可能である。
下部吸込弁35dが開くと、第二水室35は、下面吸込口35fから、第二下部開口部34に貯留されている地下水を吸い込むことができる。
下部吸込弁35dが閉じると、第二水室35は、第二下部開口部34に対し、密閉される。
【0044】
第二ポンプ36は、第二水室35の内部に設けられている。
第二ポンプ36は、第二水室35の内部の地下水を、第二配管50に向かって揚水する。
【0045】
第二上部注水弁37は、第一熱交換器60から第二井戸30へ送水される第一配管40内の環水を、第二上部開口部33に注水可能である。
本実施形態では、第二上部注水弁37は、第二上部開口部33の上方に設けられている。
【0046】
第二下部注水弁38は、第一熱交換器60から第二井戸30へ送水される第一配管40内の環水を第二下部開口部34に注水可能である。
本実施形態では、第二下部注水弁38は、第二水室35の下方であって、第二下部開口部34の上方に設けられている。
【0047】
第二操作ロッド39は、上部吸込弁35c及び下部吸込弁35dに固定されている。
第二操作ロッド39は、上面パッカー35a及び下面パッカー35bに対し、上下可動である。
本実施形態では、第二操作ロッド39により、地中熱利用システム10は、上部吸込弁35cと下部吸込弁35dとのうち、いずれか一方が開いているとき、他方が閉じるように構成されている。
すなわち、第二操作ロッド39を上に動かすと、上部吸込弁35cが開き、下部吸込弁35dが閉じる。
また、第二操作ロッド39を下に動かすと、上部吸込弁35cが閉じ、下部吸込弁35dが開く。
【0048】
(第一配管の構成)
第一配管40は、第一熱交換器60の一次側(一次側配管60a)を介して、第一端40aから第二端40bへ延びている。
第一配管40は、第一熱交換器60より第一端40a側に第一吸水配管41と、第一熱交換器60より第二端40b側に第一注水配管42を備える。
【0049】
第一吸水配管41は、第一井戸20内に延びている。
第一吸水配管41は、第一ポンプ26から第一熱交換器60まで延びている。
第一吸水配管41は、上面パッカー25aを貫通し、第一ポンプ26に接続されている。
第一吸水配管41は、第一ポンプ26の駆動によって、第一水室25の内部に貯留されている地下水を、第一熱交換器60に向かって揚水可能である。
【0050】
第一注水配管42は、第二井戸30内に延びている。
第一注水配管42は、第一熱交換器60から第二下部開口部34に向かって延びている。
第一注水配管42は、第一熱交換器60へ揚水された地下水を、第二井戸30に向かって環水可能である。
したがって、第二上部注水弁37は、第一注水配管42内の地下水を第二上部開口部33に注水可能である。
また、第二下部注水弁38は、第一注水配管42内の地下水を第二下部開口部34に注水可能である。
【0051】
(第二配管の構成)
第二配管50は、第二熱交換器70の一次側(一次側配管70a)を介して、第一端50aから第二端50bへ延びている。
第二配管50は、第二熱交換器70より第一端50a側に第二吸水配管51と、第二熱交換器70より第二端50b側に第二注水配管52を備える。
【0052】
第二吸水配管51は、第二井戸30内に延びている。
第二吸水配管51は、第二ポンプ36から第二熱交換器70まで延びている。
第二吸水配管51は、上面パッカー35aを貫通し、第二ポンプ36に接続されている。
第二吸水配管51は、第二ポンプ36の駆動によって、第二水室35の内部に貯留されている地下水を、第二熱交換器70に揚水可能である。
【0053】
第二注水配管52は、第一井戸20内に延びている。
第二注水配管52は、第二熱交換器70から第一下部開口部24に向かって延びている。
第二注水配管52は、第二熱交換器70へ揚水された地下水を、第一井戸20に向かって環水可能である。
したがって、第一上部注水弁27は、第二注水配管52内の地下水を第一上部開口部23に注水可能である。
また、第一下部注水弁28は、第二注水配管52内の地下水を第一下部開口部24に注水可能である。
【0054】
(動作)
本実施形態の地中熱利用システム10の動作について説明する。
例えば、図1に示すように、第一操作ロッド29を上に動かし、第二操作ロッド39を下に動かす。
この場合、第一水室25において、上部吸込弁25cが開き、下部吸込弁25dが閉じる。他方、第二水室35において、上部吸込弁35cが閉じ、下部吸込弁35dが開く。
その際、第一下部注水弁28及び第二上部注水弁37を開き、第一上部注水弁27及び第二下部注水弁38を閉じてもよい。
【0055】
上部吸込弁25cが開くと、第一ポンプ26の駆動によって、第一水室25及び第一配管40を介して第一上部開口部23に貯留している地下水が、第一熱交換器60に向かって揚水される。
本実施形態の場合、第一上部開口部23周辺の上部帯水層LY1に貯留されている温水が第一熱交換器60に向かって揚水される。
第一熱交換器60に向かって揚水された温水は、熱交換されて冷水となる。
熱交換された冷水は、第一配管40、第二上部注水弁37、及び第二上部開口部33を介して、第二上部開口部33周辺の上部帯水層LY1に貯留される。
【0056】
下部吸込弁35dが開くと、第二ポンプ36の駆動によって、第二水室35及び第二配管50を介して第二下部開口部34に貯留している地下水が、第二熱交換器70に向かって揚水される。
本実施形態の場合、第二下部開口部34周辺の下部帯水層LY2に貯留されている温水が第二熱交換器70に向かって揚水される。
第二熱交換器70に向かって揚水された温水は、熱交換されて冷水となる。
熱交換された冷水は、第二配管50、第一下部注水弁28、及び第一下部開口部24を介して、第一下部開口部24周辺の下部帯水層LY2に貯留される。
【0057】
各帯水層に冷水を貯留後、第一操作ロッド29を下に動かし、第二操作ロッド39を上に動かしてもよい。
この場合、第一水室25において、下部吸込弁25dが開き、上部吸込弁25cが閉じる。他方、第二水室35において、下部吸込弁35dが閉じ、上部吸込弁35cが開く。
その際、第一下部注水弁28及び第二上部注水弁37を閉じ、第一上部注水弁27及び第二下部注水弁38を開いてもよい。
したがって、第一操作ロッド29を下に動かし、第二操作ロッド39を上に動かすと、上述とは逆に地下水が循環し、各帯水層に貯留された冷水が消費され、各帯水層に温水が貯留される。
【0058】
(作用及び効果)
本実施形態の地中熱利用システム10は、第一井戸20において、第一水室25内に設けられている第一ポンプ26で第一熱交換器60に向かって揚水できるため、第一上部開口部23と第一下部開口部24とでポンプを共有できる。このため、地中熱利用システム10は、第一井戸20において、ポンプの台数を減らすことができる。
第二井戸30においても、同様である。
【0059】
また、本実施形態の地中熱利用システム10では、第一井戸20において、第一水室25が、第一上部開口部23と第一下部開口部24との間にある。
このため、例えば、第一水室25が、第一上部開口部23の上方にある場合に比べて、第一下部開口部24と第一ポンプ26との間の水路を短くできるため、圧損を抑制することができる。
第二井戸30においても、同様である。
【0060】
また、本実施形態の地中熱利用システム10では、第一井戸20において、第一水室25が、第一上部開口部23と第一下部開口部24との間にある。
このため、第一ポンプ26の吸込み口には、少なくとも第一上部開口部23内における水圧以上の水圧がかかる。
したがって、第一ポンプ26の吸込み口において、地中熱利用システム10は、水圧を維持することができる。
第二井戸30においても、同様である。
【0061】
また、本実施形態の地中熱利用システム10では、各吸水弁、第一ポンプ26等が第一水室25に設けられている。このため、故障時においても第一水室25を容易に引き上げることができる。
したがって、地中熱利用システム10では、メンテナンスが容易である。
第二井戸30においても、同様である。
【0062】
また、本実施形態の地中熱利用システム10は、第一井戸20において、第一井戸20から地下水を吸水する一方で、第一井戸20に注水可能である。このため、地中熱利用システム10は、地盤沈下や地盤上昇を抑制できる。
第二井戸30においても、同様である。
【0063】
また、本実施形態の地中熱利用システム10では、第一井戸20において、第一水室25は、第一上部開口部23及び第一下部開口部24のうち少なくとも一方に対し、密閉可能である。このため、地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1の地下水と、下部帯水層LY2の地下水が混ざることを抑制できる。
このため、地中熱利用システム10では、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2を利用に際し、第一井戸20の閉塞が抑制される。
第二井戸30においても、同様である。
【0064】
さらに、本実施形態の地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1の地下水と、下部帯水層LY2の地下水とを別々に送水可能である。このため、上部帯水層LY1の地下水と下部帯水層LY2の地下水とが混ざることを抑制できる。
したがって、本実施形態の地中熱利用システム10では、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2を利用に際し、さらに井戸の閉塞が抑制される。
【0065】
本実施形態の地中熱利用システム10の第一井戸20は、第一操作ロッド29の上下により、上部吸込弁25c及び下部吸込弁25dを上下動させることができる。
このため、本実施形態の地中熱利用システム10において、上部吸込弁25c及び下部吸込弁25dの開閉操作が容易である。
第二井戸30においても、同様である。
【0066】
本実施形態の地中熱利用システム10における各水室は、パッカーとして、上面パッカー及び下面パッカーを備えているが、各水室は、ケーシング20a内において、パッカーとして、全面(上面、下面及び側周面)を覆う全面パッカーを備えてもよい。
【0067】
本実施形態の地中熱利用システム10は、第一井戸20と第二井戸30とを備えるが、1本の井戸で構成されていてもよい。その際、1本の井戸において、吸水及び注水可能であってもよい。
【0068】
<変形例>
本実施形態の第一井戸20の変形例として、図3に示すような第一井戸120であってもよい。
第一井戸120は、第一水室125と、第一上部開口部23に注水可能な第一上部注水弁127と、第一下部開口部24に注水可能な第一下部注水弁128と、を備える。
第一水室125は、全面パッカー125aと、上部吸込弁125cと、下部吸込弁125dと、を備える。
第一井戸120は、上部吸込弁操作管129a、129b、及び下部吸込弁操作管129c、129dをさらに備える。
上部吸込弁操作管129a、129bは、一方を閉止し、他方へ注水することによって、上部吸込弁125cで第一水室125を閉じることができる。
下部吸込弁操作管129c、129dは、一方を閉止し、他方へ注水することによって、下部吸込弁125dで第一水室125を閉じることができる。
【0069】
さらに、上部注水弁操作管129e、129f、及び下部注水弁操作管129g、129hを備えてもよい。
上部注水弁操作管129e、129fは、一方を閉止し、他方へ注水することによって、第一上部注水弁127で第二配管50を閉じることができる。
下部注水弁操作管129g、129hは、一方を閉止し、他方へ注水することによって、第一下部注水弁128で第二配管50を閉じることができる。
【0070】
全面パッカー125aは、ケーシング20a内において、パッカーとして、全面(上面、下面及び側周面)を覆っている。
【0071】
さらに、上部吸込弁125cは、図4に示すように、弁体支持ガイド125caとダイアフラム125cbを備えてもよい。例えば、弁体支持ガイド125caは金属製、ダイアフラム125cbはゴム製であってもよい。
例えば、上部注水弁操作管129eを閉止し、129fに注水すると、図5に示すように、ダイアフラム125cbは、弁体支持ガイド125caから突出し、第一水室125を閉じる。
下部吸込弁125d、第一上部注水弁127、及び第一下部注水弁128についても同様である。
なお、図3図5では、弁体支持ガイド125caを透視してダイアフラム125cbが示されている。
【0072】
以上変形例は、第二井戸30にも、同様に適用できる。
【0073】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0074】
10 地中熱利用システム
20 第一井戸
20a ケーシング
23 第一上部開口部
23a ストレーナー
24 第一下部開口部
24a ストレーナー
25 第一水室
25a 上面パッカー
25b 下面パッカー
25c 上部吸込弁
25d 下部吸込弁
25e 上面吸込口
25f 下面吸込口
26 第一ポンプ
27 第一上部注水弁
28 第一下部注水弁
29 第一操作ロッド
30 第二井戸
30a ケーシング
33 第二上部開口部
33a ストレーナー
34 第二下部開口部
34a ストレーナー
35 第二水室
35a 上面パッカー
35b 下面パッカー
35c 上部吸込弁
35d 下部吸込弁
35e 上面吸込口
35f 下面吸込口
36 第二ポンプ
37 第二上部注水弁
38 第二下部注水弁
39 第二操作ロッド
40 第一配管
40a 第一端
40b 第二端
41 第一吸水配管
42 第一注水配管
50 第二配管
50a 第一端
50b 第二端
51 第二吸水配管
52 第二注水配管
60 第一熱交換器
60a 一次側配管
60b 二次側配管
70 第二熱交換器
70a 一次側配管
70b 二次側配管
120 第一井戸
125 第一水室
125a 全面パッカー
125c 上部吸込弁
125ca 弁体支持ガイド
125cb ダイアフラム
125d 下部吸込弁
127 第一上部注水弁
128 第一下部注水弁
129a 上部吸込弁操作管
129b 上部吸込弁操作管
129c 下部吸込弁操作管
129d 下部吸込弁操作管
129e 上部注水弁操作管
129f 上部注水弁操作管
129g 下部注水弁操作管
129h 下部注水弁操作管
HOL1 掘削孔
HOL2 掘削孔
LY1 上部帯水層
LY2 下部帯水層
LYm 洪積粘土層
R 負荷
SG 地表
図1
図2
図3
図4
図5