(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】配線基板、半導体パッケージ及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/38 20060101AFI20230413BHJP
C23C 18/12 20060101ALI20230413BHJP
C23C 18/18 20060101ALI20230413BHJP
C23C 18/48 20060101ALI20230413BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20230413BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20230413BHJP
H01L 23/15 20060101ALI20230413BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20230413BHJP
H05K 3/42 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H05K3/38 B
C23C18/12
C23C18/18
C23C18/48
C25D7/00 J
C23C28/00 B
H01L23/14 C
H01L23/12 Q
H05K3/42 630A
(21)【出願番号】P 2018127004
(22)【出願日】2018-07-03
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中林 陽子
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533429(JP,A)
【文献】特開2012-136769(JP,A)
【文献】特開2008-231459(JP,A)
【文献】特開2013-185216(JP,A)
【文献】特開2017-025405(JP,A)
【文献】米国特許第09105628(US,B1)
【文献】特開2017-157580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/38- 3/42
C23C 18/12
C23C 18/18
C23C 18/48
C23C 28/00
C25D 7/00
H01L 23/12-23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の表面に形成された、Ti若しくはZr又はこれらの両方の酸化膜と、
前記酸化膜上に形成された、Ni、Co若しくはW又はこれらの任意の組み合わせとCuとの合金膜と、
前記合金膜上に形成された無電解Cuめっき層と、
前記無電解Cuめっき層上に形成された電解Cuめっき層と、
を有
し、
前記基材はガラス基材又はシリコン基材であり、
前記合金膜及び前記無電解Cuめっき層は、Ni、Co若しくはW又はこれらの任意の組み合わせを含む無電解Cuめっき液を用いた無電解めっきにより連続して形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記基材に貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記酸化膜、前記合金膜
、前記無電解Cuめっき層及び前記
電解Cu
めっき層は、前記貫通孔の側面から前記基材の第1の面及び前記第1の面とは反対側の第2の面にかけて形成されていることを特徴とする請求項
2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記酸化膜の表面粗さRaは0.5nm~2.0nmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記無電解Cuめっき液は、
硫酸銅五水和物と、
硫酸ニッケル(II)六水和物、硫酸コバルト(II)七水和物、タングステン酸カリウム若しくは酸化タングステン又はこれらの任意の組み合わせと、
酒石酸ナトリウムカリウムと、
ホルムアルデヒド溶液と、
を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の配線基板と、
前記配線基板に実装された半導体チップと、
を有し、
前記半導体チップは、
前記
電解Cu
めっき層に接続された接続端子を有することを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項7】
Ti若しくはZr又はこれらの両方の有機金属錯体を用いて基材の表面上にTi若しくはZr又はこれらの両方の酸化膜を形成する工程と、
Ni、Co若しくはW又はこれらの任意の組み合わせを含む無電解Cuめっき液を用い
た無電解めっきにより、前記酸化膜上にNi、Co若しくはW又はこれらの任意の組み合わせとCuとの合金膜を形成し、
前記合金膜の形成に連続して前記合金膜上に無電解Cuめっき層を形成する工程と、
前記無電解Cuめっき層上に電解Cuめっき層を形成する工程と、
を有
し、
前記基材はガラス基材又はシリコン基材であることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記基材に貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項
7に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記酸化膜、前記合金膜、前記無電解Cuめっき層及び前記電解Cuめっき層を、前記貫通孔の側面から前記基材の第1の面及び前記第1の面とは反対側の第2の面にかけて形成することを特徴とする請求項
8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記酸化膜の表面粗さRaは0.5nm~2.0nmであることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記酸化膜を形成する工程は、
前記有機金属錯体を溶媒に溶解させたコーティング液を前記基材の表面に設ける工程と、
前記コーティング液を乾燥させる工程と、
を有することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記電解Cuめっき層を形成する工程の後に、アニールにより、前記電解Cuめっき層を再結晶させる工程を有することを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項13】
前記無電解Cuめっき液は、
硫酸銅五水和物と、
硫酸ニッケル(II)六水和物、硫酸コバルト(II)七水和物、タングステン酸カリウム若しくは酸化タングステン又はこれらの任意の組み合わせと、
酒石酸ナトリウムカリウムと、
ホルムアルデヒド溶液と、
を含むことを特徴とする請求項7乃至12のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板、半導体パッケージ及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターポーザの基材にガラスを用いたものがある。インターポーザでは、基材に貫通孔(スルーホール)が形成されており、基材の表面及び裏面に形成されたCuめっき層が貫通孔内の導電材料を介して、互いに接続されている。
【0003】
そして、ガラス基材上にCuめっき層を形成するための種々の方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-126743号公報
【文献】国際公開第2013/083600号
【文献】特許第5405677号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】平松実、川崎仁士、表面技術40(3)(1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガラス基材上にCu層を形成する方法は、乾式法及び湿式法に大別できるが、装置の導入コスト等の観点で、乾式法よりも湿式法が好ましい。しかしながら、従来、基材との密着性が優れたCu層を湿式法にて形成することは困難である。
【0007】
本発明は、基材とCu層との間に優れた密着性を得ることができる配線基板、半導体パッケージ及び配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
配線基板の一態様は、基材と、前記基材の表面に形成された、Ti若しくはZr又はこれらの両方の酸化膜と、前記酸化膜上に形成された、Ni、Co若しくはW又はこれらの任意の組み合わせとCuとの合金膜と、前記合金膜上に形成された無電解Cuめっき層と、前記無電解Cuめっき層上に形成された電解Cuめっき層と、を有し、前記基材はガラス基材又はシリコン基材であり、前記合金膜及び前記無電解Cuめっき層は、Ni、Co若しくはW又はこれらの任意の組み合わせを含む無電解Cuめっき液を用いた無電解めっきにより連続して形成されている。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、基材とCu層との間に優れた密着性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係るインターポーザを示す断面図である。
【
図2】第2の実施形態に係る配線基板の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図3】第2の実施形態に係る配線基板の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図4】第2の実施形態に係る配線基板の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図5】Tiの有機金属錯体を用いた場合の化学反応を示す図(その1)である。
【
図6】Tiの有機金属錯体を用いた場合の化学反応を示す図(その2)である。
【
図7】Tiの有機金属錯体を用いて形成される酸化膜を示す断面図である。
【
図8】第3の実施形態に係る半導体パッケージを示す断面図である。
【
図9】第3の実施形態に係る半導体パッケージの製造方法を示す断面図である。
【
図10】ガラス基材の表面のSEM像を示す図である。
【
図12】無電解Cuめっき層の表面のSEM像を示す図である。
【
図13】参考例における無電解Cuめっき層の表面のSEM像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0012】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態はインターポーザに関し、インターポーザは配線基板の一例である。
図1は、第1の実施形態に係るインターポーザを示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、第1の実施形態に係るインターポーザ100は、複数の貫通孔(スルーホール)102が形成されたガラス基材101を含む。例えば、ガラス基材101の厚さは100μm~1000μmであり、貫通孔102の直径は10μm~100μmである。ガラス基材101の材料には、例えばほうケイ酸ガラスが用いられる。ガラス基材101の材料に、石英ガラス、無アルカリガラス等の他のガラスが用いられてもよい。
【0014】
ガラス基材101にはインターポーザを得るための複数のインターポーザ領域が画定されており、各インターポーザ領域に複数の貫通孔102が形成されている。
図1にはガラス基材101の一つのインターポーザ領域が模式的に示されている。
【0015】
各貫通孔102において、その側面からガラス基材101の第1の面101a及び第2の面101bにかけてチタン(Ti)又はジルコニウム(Zr)の酸化膜111が形成されている。第2の面101bは第1の面101aの反対側の面である。例えば、酸化膜111は粒状のTi又はZrの酸化物が面内で集合して形成されており、酸化膜111の表面には比較的大きな凹凸が存在する。酸化膜111がTi及びZrの酸化膜であってもよい。酸化膜111の表面粗さRaは、好ましくは0.5nm~2.0nmである。
【0016】
酸化膜111上にニッケル(Ni)、コバルト(Co)又はタングステン(W)とCuとの合金膜112が形成され、合金膜112上に無電解Cuめっき層113が形成され、無電解Cuめっき層113上に電解Cuめっき層114が形成されている。無電解Cuめっき層113及び電解Cuめっき層114がCuめっき層115に含まれる。合金膜112がNi、Co及びWのうちの2種以上とCuとの合金膜であってもよい。合金膜112及びCuめっき層115がインターポーザ100の配線として機能する。また、信号は主にCuめっき層115を流れる。
【0017】
ガラス基材101に使用可能なほうケイ酸ガラスの線熱膨張係数は20℃~350℃の温度範囲で3.68×10-6K-1である。Cuの線熱膨張係数は、-103℃~0℃の温度範囲で15.4×10-6K-1であり、0℃~101℃の温度範囲で16.2×10-6K-1であり、300℃で17.5×10-6K-1である。また、ルチル型のTi酸化物(TiO2)の線熱膨張係数は7.19×10-6K-1であり、Zr酸化物(ZrO2)の線熱膨張係数は7.9×10-6K-1~11×10-6K-1である。
【0018】
従って、インターポーザ100に温度変化が生じる際に、酸化膜111が、ガラス基材101とCuめっき層115との間の応力緩和層として機能し、Cuめっき層115のガラス基材101からの剥がれを抑制する。
【0019】
また、Ni、Co及びWはCuよりも酸化しやすいため、Ni、Co又はWを含有する合金膜112は無電解Cuめっき層113よりも酸化膜111と強固に密着する。従って、Cuめっき層115と酸化膜111との間に優れた密着性を得ることができる。
【0020】
従って、第1の実施形態に係るインターポーザ100によれば、ガラス基材101とCuめっき層115との間に優れた密着性を得ることができる。
【0021】
更に、詳細は後述するが、酸化膜111の形成には、ゾルゲル法による表面処理に必要な高温焼成が必要とされない。従って、ガラス基材101の性質の安定性が良好である。
【0022】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態に係るインターポーザを製造する方法に関する。
図2~
図4は、第2の実施形態に係る配線基板の製造方法を示す断面図である。
【0023】
先ず、
図2(a)に示すように、ガラス基材101を準備し、
図2(b)に示すように、ガラス基材101に複数の貫通孔102を形成する。例えば、貫通孔102はレーザ加工又はエッチング加工により形成することができる。貫通孔102をエッチング加工により形成する場合、例えば、開口部が設けられたレジスト(不図示)をガラス基材101の上にフォトリソグラフィによって形成し、レジストの開口部を通して反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)などのドライエッチングによってガラス基材101を貫通加工し、その後に、レジストを除去する。予め貫通孔102が形成されたガラス基材101を準備してもよい。
【0024】
その後、
図2(c)に示すように、ガラス基材の第1の面101a及び第2の面101b並びに貫通孔102の側面にTi又はZrの酸化膜111を形成する。酸化膜111は、例えば、Ti又はZrの有機金属錯体を溶媒に溶解させたコーティング液にガラス基材101を浸漬し、ガラス基材101をコーティング液から引き上げ、100℃~160℃で乾燥させることで形成する。例えば、コーティング液の温度は室温とし、浸漬の回数は1回~5回とする。
【0025】
Tiの有機金属錯体としては、例えば、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩及びチタントリエタノールアミネートを用いることができる。チタンテトラアセチルアセトネートの示性式はTi(C5H7O2)4である。チタンオクチレングリコレートの示性式はTi(OC8H17)2(C8H17O2)2である。チタンラクテートアンモニウム塩の示性式はTi(OH)2[OCH(CH3)COO-]2(NH4
+)2である。チタントリエタノールアミネートの示性式はTi(O-i-C3H7)2(C6H14O3N)2である。これらを含む製品として、マツモトファインケミカル株式会社のオルガチックスTC-401、オルガチックスTC-201、オルガチックスTC-300及びオルガチックスTC-400が挙げられる。オルガチックスTC-401は、2-プロパノールの溶剤に65質量%のチタンテトラアセチルアセトネートを含む。オルガチックスTC-201は、1-ブタノールの溶剤に67質量%のチタンオクチレングリコレートを含む。オルガチックスTC-300は、2-プロパノール及び水の溶剤に41質量%のチタンラクテートアンモニウム塩を含む。及びオルガチックスTC-400は、2-プロパノールの溶剤に79質量%のチタントリエタノールアミネートを含む。これらは例示であり、他のTiの有機金属錯体を用いてもよい。
【0026】
Zrの有機金属錯体としては、例えば、ジルコニウムモノアセチルアセトネート及びジルコニウムラクテートアンモニウム塩を用いることができる。ジルコニウムモノアセチルアセトネートの示性式はZr(O-n-C4H9)3(C5H7O2)である。ジルコニウムラクテートアンモニウム塩の示性式はZr(OH)[OCH(CH3)COO-]3(NH4
+)3である。これらを含む製品として、マツモトファインケミカル株式会社のオルガチックスZC-540及びオルガチックスZC-300が挙げられる。オルガチックスZC-540は、トルエン、1-ブタノール及び酢酸ブチルの溶剤に45質量%のジルコニウムモノアセチルアセトネートを含む。オルガチックスZC-300は、水及び1-プロパノールの溶剤に12質量%のジルコニウムラクテートアンモニウム塩を含む。これらは例示であり、他のZrの有機金属錯体を用いてもよい。
【0027】
コーティング液の溶媒としては、例えば沸点が200℃以下の低沸点溶媒を用いる。このような溶媒としては、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、ヘプタン(n-ヘプタン)、メタノール、2-プロパノール、エタノール(99.5%)、クメン(イソプロピルベンゼン)、1-ブタノール、3-メトキシ-1-プロパノール、2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、吉草酸エチル(98%)、イソ酪酸イソブチル、1,8-ノナジイン、4-ペンテン-1-オール、2-ペンチルフラン(2-n-アミルフラン)、酢酸ペンチル、ピルビン酸エチル、3,5,5-トリメチルヘキサナール、シクロヘキサノン、2-メチル-3-ヘキシン-2-オール、5-ヘキセン-1-オール、4-ヘプタノン、1-ペンタノール、シクロペンタノール、2-ブチン-1-オール、2-エトキシシクロヘキサノン、2-エチル-1-ブタノール、2-アセチル-5-ノルボルネン、α-ピネンオキシド、6-メチル-5-ヘプテン-2-オール、α-アンゲリカラクトン、5-ヘキシン-1-オール、2-メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、1-アセトキシ-2-メトキシエタン(酢酸2-メトキシエチル)、2-エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、酢酸、ギ酸、2-イソプロポキシエタノール(エチレングリコールモノイソプロピルエーテル)、アクリル酸、ヒドロキシアセトン及び酢酸2-エトキシエチル(酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル)が挙げられる。
【0028】
コーティング液は界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(Brij(登録商標))、ポリプロピレングリコール、PEG(ポリエチレングリコール)-PPG(ポリプロピレングリコール)-PEG及びアセチレン系界面活性剤が挙げられる。アセチレン系界面活性剤の製品として、日信化学工業株式会社のサーフィノール104PG-50、サーフィノール465、サーフィノール61、サーフィノール440、サーフィノールSE-F、ダイノール604、オルフィンWE-003及びオルフィンPD-201が挙げられる。
【0029】
例えば、コーティング液におけるTi又はZrの有機金属錯体の含有量は0.1体積%~10体積%であり、界面活性剤の含有量は0.01体積%~1体積%である。このコーティング液に0.1質量%~10質量%の増粘剤が含まれてもよい。増粘剤としては、グリセリン及びキサンタンガムが挙げられる。
【0030】
ここで、Tiの有機金属錯体を用いた場合の化学反応について説明する。
図5~
図6は、Tiの有機金属錯体を用いた場合の化学反応を示す図である。
図7は、Tiの有機金属錯体を用いて形成される酸化膜111を示す断面図である。
【0031】
100℃~160℃での乾燥の際に、先ず、
図5に示す加水分解が生じ、Ti(OR)
3OHで表される生成物が得られる。Rはアルキル基である。次いで、
図6に示す縮重合反応が生じ、3次元網目構造のTi酸化物が得られる。すなわち、Tiの酸化膜111が形成される。そして、加水分解及び縮重合反応を経て形成されるTiの酸化膜111は、例えば粒状のTi酸化物が面内で集合して形成されており、酸化膜111の表面には、
図7に示すように、比較的大きな凹凸が存在する。酸化膜111の表面粗さRaは、好ましくは0.5nm~2.0nmである。
【0032】
図5~
図6には、Tiの有機金属錯体を用いた場合の化学反応を示しているが、Zrの有機金属錯体を用いた場合も同様に、加水分解及び縮重合反応を経てZrの酸化膜111が形成される。また、加水分解及び縮重合反応を経て形成されるZrの酸化膜111の表面にも、比較的大きな凹凸が存在する。コーティング液がTiの有機金属錯体及びZrの有機金属錯体の両方を含んでいてもよい。
【0033】
このようにして酸化膜111を形成することができる。
【0034】
例えば、酸化膜111の厚さは5nm~50nmとする。酸化膜111の厚さが5nm未満であると、Cuめっき層115とガラス基材101との間の熱変形量の相違を十分に緩和できない可能性がある。一方、酸化膜111の厚さが50nm超であると、酸化膜111の厚さにばらつきが生じることがある。
【0035】
酸化膜111の形成後、酸化膜111の表面に触媒を付与する。触媒としては、例えば金属パラジウム(Pd)を用いる。金属Pdの付与では、例えば、Pdの有機金属錯体を用いた表面処理を行い、その後に、Pdを還元する。触媒として、金属Pdに代えて、金属Au又は金属Agを用いてもよい。金属Au又は金属Agも同様の方法で付与することができる。
【0036】
次いで、
図3(a)に示すように、Ni、Co又はWを含む無電解Cuめっき液を用いて、酸化膜111上にNi、Co又はWとCuとの合金膜112を形成し、合金膜112上に無電解Cuめっき層113を形成する。無電解Cuめっき液の一例は、下記表1に示す物質を含む。
【0037】
【0038】
硫酸銅五水和物は無電解Cuめっき層113の主原料である。硫酸ニッケル(II)六水和物は、硫酸銅五水和物と共に合金膜112の原料である。酒石酸ナトリウムカリウムはCuイオンの錯化剤である。33%水酸化ナトリウムはpH調整剤(アルカリ剤)である。2,2-ビピリジルは安定剤である。35%ホルムアルデヒド溶液は還元剤である。ポリエチレングリコール(PEG)4,000は界面活性剤である。
【0039】
この無電解Cuめっき処理において、例えば、無電解Cuめっき液の温度、pHはそれぞれ30℃~38℃、12以上とし、めっき時間は15分間~40分間とする。
【0040】
無電解Cuめっき液が硫酸ニッケル(II)六水和物を含む場合、NiとCuとの合金膜112が形成され、それに引き続いて無電解Cuめっき層113が形成される。無電解Cuめっき層113にNiが含有されてもよい。
【0041】
ここで、無電解Cuめっき処理におけるホルムアルデヒドの酸化反応について説明する。
【0042】
ホルムアルデヒド(HCHO)を含むアルカリ溶液中では、下記の式(1)及び式(2)に示す平衡反応が生じる。
【0043】
HCHO+H2O⇔CH2(OH)2 (1)
CH2(OH)2+OH-⇔CH2OHO-+H2O (2)
【0044】
また、酸化反応の素過程は下記の式(3)及び式(4)で表される。式(3)の反応は脱水素反応であり、式(4)の反応は酸化反応である。
【0045】
CH2OHO-→・CHOHO-+・H (3)
・CHOHO-+OH-→HCOO-+H2O+e- (4)
【0046】
本実施形態では、合金膜112がNiを含んでおり、この合金膜112上では、下記の式(5)に示す酸化反応が更に生じる。
【0047】
・H+OH-→H2O (5)
【0048】
従って、酸化反応の全反応式は下記の式(6)で表される。
【0049】
HCHO+3OH-→HCOO-+2H2O+2e- (6)
【0050】
この酸化反応で生じた液体の水(H2O)は、無電解Cuめっき層113に取り込まれることなく無電解Cuめっき層113の外に排出される。
【0051】
硫酸ニッケル(II)六水和物に代えて硫酸コバルト(II)七水和物を用いた場合は、CoとCuとの合金膜112が形成され、それに引き続いて無電解Cuめっき層113が形成される。CoとCuとの合金膜112上でも式(5)に示す酸化反応が生じ、酸化反応の全反応式は式(6)で表される。この酸化反応で生じた液体の水(H2O)は、無電解Cuめっき層113に取り込まれることなく無電解Cuめっき層113の外に排出される。無電解Cuめっき層113にCoが含有されてもよい。
【0052】
硫酸ニッケル(II)六水和物に代えてタングステン酸カリウム又は酸化タングステンを用いた場合は、WとCuとの合金膜112が形成され、それに引き続いて無電解Cuめっき層113が形成される。WとCuとの合金膜112上でも式(5)に示す酸化反応が生じ、酸化反応の全反応式は式(6)で表される。この酸化反応で生じた液体の水(H2O)は、無電解Cuめっき層113に取り込まれることなく無電解Cuめっき層113の外に排出される。無電解Cuめっき層113にWが含有されてもよい。
【0053】
無電解Cuめっき液が、Ni、Co又はWの原料を2種以上含有していてもよい。この場合、合金膜112は、これら2種以上の金属元素とCuとの合金膜となる。無電解Cuめっき層113にこれら2種以上の金属元素が含有されてもよい。
【0054】
なお、表1に記載の成分から硫酸ニッケル(II)六水和物を除いた無電解Cuめっき液を用いても無電解Cuめっき層を形成することができる。ただし、この無電解Cuめっき層の形成前に合金膜112は形成されない。このため、無電解Cuめっき層は酸化膜111上に形成されることとなる。この場合、式(1)~式(4)に示す反応が生じるものの、式(5)に示す酸化反応ではなく、下記の式(7)に示す反応が生じる。つまり、水素の再結合が生じる。
【0055】
・H+・H→H2 (7)
【0056】
従って、この場合の酸化反応の全反応式は下記の式(8)で表される。
【0057】
2HCHO+4OH-→2HCOO-+H2+H2O+2e- (8)
【0058】
このように、気体の水素(H2)が発生し、H2が無電解Cuめっき層中に共析してしまう。H2が共析した無電解Cuめっき層は、電解Cuめっき層の形成後の再結晶のためのアニールの際に無電解Cuめっき層に圧縮応力を生じさせ、この圧縮応力は無電解Cuめっき層の剥がれを誘引する。
【0059】
本実施形態では、合金膜112がCuも含むため、式(8)に示す酸化反応も生じ得る。その一方で、合金膜112はNi、Co又はWを含むため、上記の式(6)に示す酸化反応が優先的に生じる。従って、H2共析に起因する無電解Cuめっき層113の剥がれを抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態では、無電解Cuめっき層113の形成の際のインダクションタイムが短縮される。これは、酸化膜111の表面に比較的大きな凹凸が形成され、より多くの金属Pdが酸化膜111の表面に吸着できるからである。
【0061】
例えば、合金膜112及び無電解Cuめっき層113の総厚は0.1μm以上1μm以下とする。これらの総厚が0.1μm未満であると、酸化膜111を十分に被覆することができず、シート抵抗が高くなって、電解Cuめっき処理が困難になる可能性がある。一方、これらの総厚が1μm超であると、再結晶のためのアニール後に無電解Cuめっき層113と電解Cuめっき層114との界面にボイドが生じたり、結晶性の相違に起因する密着性の低下を引き起こしたりする可能性がある。
【0062】
無電解Cuめっき層113の形成後、
図3(b)に示すように、Cuめっき層115を形成する部分に開口部121を設けためっきレジスト層120を無電解Cuめっき層113上に形成する。
【0063】
次いで、
図3(c)に示すように、無電解Cuめっき層113をめっき給電経路に利用する電解めっき法により、めっきレジスト層120の開口部121に電解Cuめっき層114を形成する。電解Cuめっき層114の形成に用いる電解Cuめっき液の一例は、下記表2に示す物質を含む。
【0064】
【0065】
ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール等の非イオン性界面活性剤を用いることができる。レベラーとしては、例えば、ヤヌスグリーン、チオ尿素誘導体、フェナジン化合物、ポリアクリルアミド及びポリアルキルアミンを用いることができる。ブライトナーとしては、例えば、SPS(ビス(3-スルホプロピルジスルフィドナトリウム塩))を用いることができる。
【0066】
この電解Cuめっき処理において、例えば、電流密度は1A/dm2とし、めっき時間は10分間~90分間とする。
【0067】
電解Cuめっき層114の形成後、
図4(a)に示すように、めっきレジスト層120を除去する。次いで、電解Cuめっき層114をマスクにして無電解Cuめっき層113、合金膜112及び酸化膜111をウェットエッチングにより除去する。
【0068】
その後、アニールを行うことで、電解Cuめっき層114を再結晶させる。このようにして、電解Cuめっき層114及び無電解Cuめっき層113を含むCuめっき層115を形成することができる。
【0069】
このようにして、第1の実施形態に係るインターポーザ100を製造することができる。
【0070】
第2の実施形態では、酸化膜111の形成から無電解Cuめっき層113の形成にかけて、ゾルゲル法による表面処理に必要な高温焼成が必要とされない。従って、加熱によるガラス基材101の変質を抑制することができる。また、Ni等を含む合金膜112を形成しているため、無電解Cuめっき層113における水素共析を抑制し、水素共析に起因する剥がれを抑制することができる。更に、酸化膜111の表面に比較的大きな凹凸が形成されるため、凹凸によるアンカー効果によりCuめっき層115のガラス基材101との密着性を向上させたり、インダクションタイムを短縮したりすることができる。
【0071】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は半導体パッケージに関する。
図8は、第3の実施形態に係る半導体パッケージを示す断面図である。
【0072】
図8に示すように、第3の実施形態に係る半導体パッケージ300は、第1の実施形態に係るインターポーザ100、半導体チップ310、バンプ320及びアンダーフィル樹脂330を有する。
【0073】
半導体チップ310は、バンプ320を介してCuめっき層115に接続される接続端子311を含む。接続端子311は、例えば電極パッドである。バンプ320には、例えば、はんだボールが用いられる。はんだボールの材料としては、錫銀(SnAg)系合金、錫亜鉛(SnZn)系合金及び錫銅(SnCu)系合金等の無鉛はんだ、並びに鉛錫(PbSn)系合金の有鉛はんだが例示される。半導体チップ310とガラス基材101の第1の面101aとの間に、エポキシ樹脂等のアンダーフィル樹脂330が充填されている。
【0074】
次に、第3の実施形態に係る半導体パッケージ300の製造方法について説明する。
図9は、第3の実施形態に係る半導体パッケージの製造方法を示す断面図である。
【0075】
先ず、
図9に示すように、複数のインターポーザ領域を備えたインターポーザ100を準備し、各インターポーザ領域において、バンプ320を用いて、半導体チップ310をインターポーザ100にフリップチップ実装する。半導体チップ310のフリップチップ実装後、半導体チップ310とインターポーザ100との間にアンダーフィル樹脂330を充填する。
【0076】
その後、インターポーザ領域の境界の切断線CLに沿ってスライサー等によりインターポーザ100を切断する。これにより、1つのインターポーザ100を用いて複数の半導体パッケージ300が得られる。このようにして、第3の実施形態に係る半導体パッケージ300を製造することができる。
【0077】
(無電解Cuめっき液の好ましい組成)
本開示において、合金膜112が形成されれば、所望の目的を達成することができる。また、より適切な合金膜112が形成されれば、より優れた効果を得ることができる。そこで、本発明者は、より好ましい合金膜112を形成することができる条件を解明すべく、無電解Cuめっき液中の硫酸ニッケル(II)六水和物の濃度と密着性との関係に関する実験を行った。
【0078】
この実験では、表1に示す無電解Cuめっき液において、硫酸ニッケル(II)六水和物の濃度のみを変化させ、他の物質の濃度は一定値に固定した上で、無電解Cuめっき層を形成した。そして、無電解Cuめっき層と基材との間の密着性を評価し、また、合金膜及び無電解Cuめっき層中のNiの濃度を測定した。これらの結果を表3に示す。表3の密着性の欄において、Aは秀、Bは優、Cは良、Dは不可を示す。
【0079】
【0080】
表3に示すように、無電解Cuめっき液が硫酸ニッケル(II)六水和物を含む条件No.2~No.6にて良、優又は秀の密着性が得られた。また、表3に示す結果から、無電解Cuめっき液中の硫酸ニッケル(II)六水和物の濃度は、好ましくは0.5g/L以上3.0g/L以下であり、より好ましくは0.8g/L以上2.5g/L以下である。また、表3に示す結果から、合金膜及び無電解Cuめっき層中のNiの濃度は、好ましくは1.0質量%以上5.1質量%以下であり、より好ましくは2.0質量%以上4.0質量%以下である。
【0081】
(電子顕微鏡観察)
本発明者は、第2の実施形態に倣った方法により無電解Cuめっき層を形成し、種々の段階で電子顕微鏡観察を行った。
図10は、ガラス基材の表面の走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)像を示す図であり、
図11は、酸化膜の表面のSEM像を示す図であり、
図12は、無電解Cuめっき層の表面のSEM像を示す図である。また、
図13は、参考例における無電解Cuめっき層の表面のSEM像を示す図である。参考例では、酸化膜を形成せずにガラス基材上に無電解Cuめっき層を形成した。
【0082】
図10に示すように、ガラス基材の表面の平坦度は高いが、
図11に示すように、酸化膜の表面には凹凸が形成されている。また、
図12に示すように、第2の実施形態に倣って形成した無電解Cuめっき層の表面には、大きな凹凸が形成されている。この無電解Cuめっき層の外観は無光沢であった。一方、
図13に示すように、酸化膜を形成せずに形成した無電解Cuめっき層の表面の平坦度は高く、この無電解Cuめっき層の外観は金属光沢を呈していた。なお、参考例におけるインダクションタイムが3分間であったのに対し、第2の実施形態に倣った方法でのインダクションタイムは30秒間と、その1/6であった。
【0083】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。例えば、ガラス基材に代えてシリコン(Si)基材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0084】
100 インターポーザ
101 ガラス基材
102 貫通孔
111 酸化膜
112 合金膜
113 無電解Cuめっき層
114 電解Cuめっき層
115 Cuめっき層
300 半導体パッケージ
310 半導体チップ
320 バンプ
330 アンダーフィル樹脂