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特許7261841二色成形品の強度低下抑制方法、二色成形用樹脂組成物、並びに二色成形品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】二色成形品の強度低下抑制方法、二色成形用樹脂組成物、並びに二色成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20230413BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20230413BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20230413BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230413BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K5/29
C08L69/00
C08K3/013
B29C45/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021132271
(22)【出願日】2021-08-16
(65)【公開番号】P2023026857
(43)【公開日】2023-03-01
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浅井 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】深津 博樹
(72)【発明者】
【氏名】五島 一也
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-073719(JP,A)
【文献】国際公開第2009/150833(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/147811(WO,A1)
【文献】特開2003-320548(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0011281(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/02
C08K 5/29
C08L 69/00
C08K 3/013
B29C 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂にカルボジイミド化合物を加えることにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂との二色成形品の強度低下を抑制する方法。
【請求項2】
カルボジイミド化合物の添加量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.1~3.0質量部である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カルボジイミド化合物が、芳香族ポリカルボジイミドを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリブチレンテレフタレート樹脂に、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1~75質量部のポリカーボネート樹脂をさらに加える、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
二色成形品の、温度121℃、湿度100%、203kPaの水蒸気環境下で24時間湿熱処理後の強度低下を抑制する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)カルボジイミド化合物とを含み、
(B)カルボジイミド化合物の含有量が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し0.1質量部以上である、ポリカーボネート樹脂との二色成形用樹脂組成物。
【請求項7】
(B)カルボジイミド化合物の含有量が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し0.1~3.0質量部である、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(B)カルボジイミド化合物が、芳香族ポリカルボジイミドを含む、請求項6又は7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(C)ポリカーボネート樹脂をさらに含み、
(C)ポリカーボネート樹脂の含有量が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し1~75質量部である、請求項6から8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の、o-クロロフェノール中、温度35℃で測定した固有粘度が0.65~1.15dL/gである、請求項6から9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
(D)無機充填剤をさらに含み、
(D)無機充填剤の含有量が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し0質量部を超え90質量部以下である、請求項6から10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
ポリカーボネート樹脂を含む部分と、請求項6から11のいずれか一項に記載の二色成形用樹脂組成物を含む部分とを有する二色成形品。
【請求項13】
自動車部品用である、請求項12に記載の二色成形品。
【請求項14】
二色成形品の製造方法であり、
ポリカーボネート樹脂を含む一次成形品を得ること;
一次成形品を金型のキャビティ内に配置し、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を前記キャビティ内に射出すること;を有し、
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)カルボジイミド化合物とを含み、
(B)カルボジイミド化合物の含有量が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し0.1質量部以上である、製造方法。
【請求項15】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(B)カルボジイミド化合物0.1~3.0質量部を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二色成形品の強度低下抑制方法、二色成形用樹脂組成物、並びに二色成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二色成形(Double molding)は、材質や色が異なる複数の樹脂が一体化された成形品を少ない工程で得ることができる射出成形方法であり、それぞれの樹脂の成形品を作製した後にネジ止め、溶着、又は接着させる方法よりも、工程を簡略化できる点で優れた方法である。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械的性質、電気的性質、並びにその他の物理的特性及び化学的特性に優れ、かつ加工性が良好である。そのため、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、エンジニアリングプラスチックとして自動車用部品、電気・電子部品などの広汎な用途に使用されている。自動車部品には多様な特性が求められていることから、部品毎に適した樹脂が使用されており、複数種類の樹脂を組み合わせたモジュールとして使用されることも多い。
特許文献1には、耐アルカリ性に加え、ポリカーボネート樹脂成形品との二重成形品における接合強度にも優れる成形品を成形することが可能なポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が提案されている。
一方、カルボジイミド化合物は、エラストマーとともに樹脂に配合されることで、樹脂の冷熱サイクル環境での高度な耐久性と耐加水分解性を向上させることが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/116629号
【文献】国際公開第2009/150831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
母材(二色成形品を構成する各樹脂組成物)の耐加水分解性が優れている場合であっても、組成が異なる樹脂組成物との二色成形品とした場合は湿熱環境下(つまり、高温多湿の環境下)での使用により強度が低下してしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、ポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂との二色成形品の強度の低下を抑制する方法を提供することを課題とする。本発明は、二色成形品の強度低下を抑制することができる二色成形用樹脂組成物、並びにその樹脂組成物を含む二色成形品及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂とを用いた二色成形品の特性の向上について研究を続ける過程で、母材であるポリブチレンテレフタレート樹脂にカルボジイミド化合物を加えることで、二色成形品とした場合でも湿熱処理後の強度の保持率が向上する(つまり、湿熱処理後の強度の低下が抑制される)ことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
[1]ポリブチレンテレフタレート樹脂にカルボジイミド化合物を加えることにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂との二色成形品の強度低下を抑制する方法。
[2]カルボジイミド化合物の添加量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.1~3.0質量部である、[1]に記載の方法。
[3]カルボジイミド化合物が、芳香族ポリカルボジイミドを含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]ポリブチレンテレフタレート樹脂に、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1~75質量部のポリカーボネート樹脂をさらに加える、[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5]二色成形品の、温度121℃、湿度100%、203kPaの水蒸気環境下で24時間湿熱処理後の強度低下を抑制する、[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
[6](A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)カルボジイミド化合物とを含む、ポリカーボネート樹脂との二色成形用樹脂組成物。
[7](B)カルボジイミド化合物の含有量が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し0.1~3.0質量部である、[6]に記載の樹脂組成物。
[8](B)カルボジイミド化合物が、芳香族ポリカルボジイミドを含む、[6]又は[7]に記載の樹脂組成物。
[9](C)ポリカーボネート樹脂をさらに含み、(C)ポリカーボネート樹脂の含有量が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し1~75質量部である、[6]から[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10](A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の、o-クロロフェノール中、温度35℃で測定した固有粘度が0.65~1.15dL/gである、[6]から[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11](D)無機充填剤をさらに含み、(D)無機充填剤の含有量が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し0質量部を超え90質量部以下である、[6]から[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12]ポリカーボネート樹脂を含む部分と、[6]から[11]のいずれかに記載の二色成形用樹脂組成物を含む部分とを有する二色成形品。
[13]自動車部品用である、[12]に記載の二色成形品。
[14]二色成形品の製造方法であり、ポリカーボネート樹脂を含む一次成形品を得ること;
一次成形品を金型のキャビティ内に配置し、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を前記キャビティ内に射出すること;を有し、
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)カルボジイミド化合物とを含む、製造方法。
[15]ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、(B)カルボジイミド化合物0.1~3.0質量部を含む、[14]に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂との二色成形品の強度の低下を抑制する方法を提供することができる。本発明によれば、二色成形品の強度低下を抑制することができる二色成形用樹脂組成物、並びにその樹脂組成物を含む二色成形品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例及び比較例の二色成形品の評価に使用した試験片の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。なお、各実施形態において、内容が重複する記載は省略することがある。
【0011】
[二色成形品の強度低下抑制方法]
本実施形態に係る方法は、ポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂との二色成形品の強度低下を抑制する方法であり、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に、(B)カルボジイミド化合物を加えることを含む。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)カルボジイミド化合物とを含む組成物を、以下では「ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」ということがある。
本発明者の研究により、驚くべきことに、カルボジイミド化合物を、二色成形品の一方の母材であるポリブチレンテレフタレート樹脂に添加することで、二色成形品の接合部の湿熱処理後の強度の低下を抑制できることが分かった。
二色成形の対象となるポリカーボネート樹脂にカルボジイミド化合物を配合しなくても、この効果を得ることができる。ポリカーボネート樹脂にもカルボジイミドを配合することもできるが、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物にカルボジイミド化合物を配合するだけで上記の効果が得られるので、ポリカーボネート樹脂にはカルボジイミド化合物を配合しなくともよい。特にポリカーボネート樹脂は透明性に特徴がある樹脂であり、ポリカーボネート樹脂以外の添加剤を減らすことでその透明性を維持することが出来る。
一方、母材であるポリブチレンテレフタレート樹脂の成形品(単独成形品)について湿熱処理後の強度の保持率を測定したところ、カルボジイミド化合物の有無によって大きな違いは見られなかった。
【0012】
「二色成形品」とは、ここでは、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂とが二色成形法により射出成形された成形品のことを意味している。二色成形品であることは、二色成形品におけるポリブチレンテレフタレート樹脂を含む部分とポリカーボネート樹脂を含む部分とが、接着層やねじ等を介さずに、少なくとも一部が接するように一体的に成形されていることで区別することができる。また、二色成形品は、接合面に超音波溶着や振動溶着などによる摺動跡や摩耗粉又はバリがないことや、レーザー溶着などによる溶融プール跡などがないことにより区別することができる。なお、本明細書において、母材としての「ポリブチレンテレフタレート樹脂」は、「ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」を意味する。母材としての「ポリカーボネート樹脂」は、「ポリカーボネート樹脂及び/又はポリカーボネート樹脂組成物」を意味する。
「強度低下を抑制する」とは、ここでは湿熱処理前の二色成形品の接合強度に対する、湿熱処理後の二色成形品の接合強度の保持率を高めることを意味している。
「湿熱処理」は、温度121℃、湿度100%、203kPaの水蒸気環境下で24時間処理し、温度23℃、湿度50%の環境下で24時間放置する処理を意味している。
【0013】
((A)ポリブチレンテレフタレート樹脂)
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)は、二色成形品の第1の母材である。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも、炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4-ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート樹脂である。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上(特に75モル%以上95モル%以下)含有する共重合体であってもよい。
【0014】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂において、コモノマー成分としてテレフタル酸及びそのエステル形成性誘導体以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)を用いる場合、その例としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8-14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4-16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5-10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0015】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8-12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6-12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0016】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂において、コモノマー成分として1,4-ブタンジオール以外のグリコール成分(コモノマー成分)を用いる場合、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-オクタンジオール等のC2-10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2-4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0017】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC2-6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-カルボキシ-4’-ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε-カプロラクトン等)等のC3-12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0018】
以上説明したコモノマー成分を共重合したポリブチレンテレフタレート共重合体は、いずれも(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂として好適に使用できる。また、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ホモポリブチレンテレフタレート重合体とポリブチレンテレフタレート共重合体とを組み合わせて使用してもよい。
【0019】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、成形性を向上させる観点から、0.65~1.15dL/gであることが好ましく、0.67~1.00であることがより好ましい。異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂を調製することができる。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、ウベローデ型粘度計を用いて、o-クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定した値とする。
【0020】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本実施形態において用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、5meq/kg以上30meq/kg以下が好ましく、10meq/kg以上25meq/kg以下がより好ましい。かかる範囲の末端カルボキルシル基量のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることで、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の湿熱環境下での強度低下をより抑制することができる。
【0021】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂には、後述する(C)ポリカーボネート樹脂や、その他の樹脂を加えることができるが、二色成形品においてポリブチレンテレフタレート樹脂が有する機械的性質及び化学的特性等をより発現する観点から、樹脂成分全体の50質量%以上が(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂であることが好ましく、55質量%以上が(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂であることがより好ましい。
【0022】
((B)カルボジイミド化合物)
(B)カルボジイミド化合物は、分子中にカルボジイミド基(-N=C=N-)を有する化合物である。カルボジイミド化合物としては、主鎖が脂肪族の脂肪族カルボジイミド化合物、主鎖が脂環族の脂環族カルボジイミド化合物、主鎖が芳香族の芳香族カルボジイミド化合物を挙げることができ、これらから選択される1以上を用いることが好ましい。中でも、ポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂との二色成形品の湿熱処理後の強度の低下をより抑制できる点で、芳香族カルボジイミド化合物を含有することが好ましい。
【0023】
脂肪族カルボジイミド化合物としては、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド等を挙げることができる。脂環族カルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド等を挙げることができる。これらは2種以上を併用することもできる。
【0024】
芳香族カルボジイミド化合物としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N-トルイル-N’-フェニルカルボジイミド、ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ-p-クロロフェニルカルボジイミド、ジ-p-メトキシフェニルカルボジイミド、ジ-3,4-ジクロロフェニルカルボジイミド、ジ-2,5-ジクロロフェニルカルボジイミド、ジ-o-クロロフェニルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-o-トルイルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジシクロヘキシルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-p-クロロフェニルカルボジイミド、エチレン-ビス-ジフェニルカルボジイミド等のモノ又はジカルボジイミド化合物;及びポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ビフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1-メチル-3,5-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリエチルフェニレンカルボジイミド)およびポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等のポリカルボジイミド化合物:を挙げることができる。これらは2種以上を併用することもできる。
【0025】
これらの中でも特にジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(フェニレンカルボジイミド)およびポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)から選択される1以上を好適に用いることができる。
【0026】
(B)カルボジイミド化合物の数平均分子量は、300以上であることが好ましく、8000以上であることが更に好ましい。数平均分子量を上記範囲にすることで、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の溶融混練時や成形時に滞留時間が長い場合において、ガスや臭気が発生することを防ぐことができる。数平均分子量は、ポリスチレン標準サンプル基準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0027】
(B)カルボジイミド化合物の添加量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~3.0質量部であり、より好ましくは0.1~2.6質量部であり、さらに好ましくは0.2~2.6質量部であり、特に好ましくは0.2~2.4質量部である。
(B)カルボジイミド化合物の添加量を、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.1質量部以上にすることで、ポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂との二色成形品の強度の低下をより抑制することができる。3.0質量部以下にすることで、有毒なイソシアネートガスが発生することを防ぐことができる。
一実施形態において、(B)カルボジイミド化合物の添加量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1.0~3.0質量部とすることができ、1.2~2.5質量部とすることができる。
【0028】
(B)カルボジイミド化合物は、取り扱いを容易にするため、マトリックス樹脂中にカルボジイミド化合物が分散しているマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチとして用いる場合、カルボジイミド化合物の配合量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂とマトリックス樹脂との総量100質量部に対して上記した配合量となるように用いることが好ましい。マトリックス樹脂の種類は、特に限定されず、上記したポリブチレンテレフタレート樹脂から選択することが好ましい。
【0029】
マスターバッチの調整方法は、特に限定されず、マトリックス樹脂とカルボジイミド化合物とを、通常の方法で混練して製造することができる。例えば、マトリックス樹脂及びカルボジイミド化合物を攪拌機に投入して均一に混ぜ合わせた後、押出機で溶融及び混練することにより製造することができる。
【0030】
((C)ポリカーボネート樹脂)
本実施形態に係る方法は、必要に応じて、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に(C)ポリカーボネート樹脂をさらに加えることが好ましい。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に(C)ポリカーボネート樹脂をさらに加えることで、二色成形品のポリブチレンテレフタレート樹脂を含む部分とポリカーボネート樹脂成形品との初期密着性をより高めることができる。
【0031】
(C)ポリカーボネート樹脂としては、ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン又はジフェニルカーボネート等の炭酸エステルと、の反応により得られる重合体が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。
【0032】
ジヒドロキシ化合物としては、例えば、脂環族化合物(例えば、脂環式ジオール)及びビスフェノール化合物が挙げられるが、ビスフェノール化合物であることが好ましい。
【0033】
ビスフェノール化合物としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン、2,2,2’,2’-テトラヒドロ3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビ-[1H-インデン]-6,6’-ジオールなどのビス(ヒドロキシアリール)C1-10アルカン、好ましくはビス(ヒドロキシアリール)C1-6アルカン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)C4-10シクロアルカン;4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシアリールスルホン;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシアリールスルフィド;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフォキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフォキシド等のジヒドロキシアリールスルフォキシド;4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルケトン等のジヒドロキシアリールケトンなどが挙げられる。
【0034】
好ましい(C)ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールA型ポリカーボネートが挙げられる。
【0035】
(C)ポリカーボネート樹脂は、ホモポリカーボネートであってもよいし、コポリカーボネートであってもよい。また、ポリカーボネート樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(C)ポリカーボネート樹脂の溶融粘度は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂成形品との二色成形時の密着性をより高める観点から、ISO11443に準拠した、300℃、1000sec-1での溶融粘度として、0.40kPa・s以下であることが好ましく、0.35kPa・s以下であることがより好ましく、0.30kPa・s以下であることがさらに好ましい。
なお、溶融粘度は、東洋精機製作所製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmL/フラットダイを使用し、バレル温度300℃、せん断速度1000sec-1で測定した値とする。
【0037】
(C)ポリカーボネート樹脂の添加量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1~75質量部であることが好ましく、2~73質量部であることが好ましく、2~72質量部であることがより好ましく、2.4~71.3質量部であることが更に好ましい。(C)ポリカーボネート樹脂を(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1~75質量部添加することで、ポリカーボネート樹脂成形品との二色成形時の密着性をより向上することができるとともに、二色成形品の湿熱処理後の強度の低下をより抑制することができる。
【0038】
((D)無機充填剤)
本実施形態に係る方法は、必要に応じて、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に(D)無機充填剤をさらに加えることができる。(D)無機充填剤をさらに加えることで、二色成形品のポリブチレンテレフタレート樹脂を含む部分の剛性をより向上させることができる。
【0039】
(D)無機充填剤としては、例えば、繊維状無機充填剤[例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、炭化珪素繊維、ウィスカー(炭化珪素、アルミナ、窒化珪素などのウィスカー)]、板状無機充填剤[例えば、タルク、マイカ、ガラスフレーク、グラファイトなど]、粉状無機充填剤[例えば、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ミルドファイバー(ガラスなどのミルドファイバー)、ウォラストナイトなど]が挙げられる。これらの無機充填剤のうち、ガラス系無機充填剤(ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズなど)、タルク、マイカ、ウォラストナイトなどが好ましく、中でもガラス繊維は、入手性や強度及び剛性の面から、好適に使用できる。また、板状や粉状の無機充填剤は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成形収縮率や線膨張係数の異方性抑制の面から、好適に使用できる。これらの無機充填剤の使用に際しては、必要に応じ公知の表面処理剤を使用することができる。
【0040】
(D)無機充填剤として繊維状充填剤を用いる場合、その形状は特に限定されないが、例えば平均長さは100μm~5mm、より好ましくは500μm~3mm程度とすることができ、平均直径は例えば1~50μm、より好ましくは3~30μm程度とすることができる。板状充填剤又は粉状充填剤を用いる場合、その平均粒子径も特に限定されないが、例えば0.1~100μm、より好ましくは0.1~50μm程度とすることができる。これらの(D)無機充填剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
「平均長さ」、「平均直径」、及び「平均粒子径」は、樹脂組成物を600℃で2時間加熱し灰化して灰化残渣を得、この灰化残渣をCCDカメラ(例えば、株式会社セイシン企業製、動的画像解析法/粒子(状態)分析計PITA-3)で撮影した画像を解析し、加重平均により算出することができる。
【0041】
(D)無機充填剤の添加量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0~90質量部であり、より好ましくは30~90質量部であり、より好ましくは40~85質量部であり、更に好ましくは50~85質量部である。(D)無機充填剤を、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物100質量部に対して90質量部以下添加することで、二色成形品の湿熱処理後の強度低下の抑制効果を維持したまま二色成形品のポリブチレンテレフタレート樹脂を含む部分の機械的特性をより向上させることができる。
一実施形態において、(D)無機充填剤の添加量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して40.3~83.2質量部である。
【0042】
(その他の添加剤)
本実施形態に係る方法は、耐衝撃性の観点から、ポリブチレンテレフタレート樹脂にエラストマーを配合してもよい。一実施形態において、エラストマーの添加量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、5~25質量部であることが好ましく、10~20質量部であることがより好ましい。
【0043】
本実施形態に係る方法は、エラストマーを配合しなくても二色成形品の強度の低下を抑制する効果を得ることができる。一実施形態において、エラストマーの添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、5質量部未満とすることができ、1質量部未満とすることもできる。
【0044】
本実施形態に係る方法は、さらに酸化防止剤、安定剤、分子量調整剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤、赤外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、耐加水分解性向上剤、流動性改良剤等の添加剤を含有してもよい。添加剤の添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0~20質量部とすることができる。
【0045】
後述する比較例に示すように、(B)カルボジイミド化合物に替えて、耐加水分解性向上剤として知られているエポキシ樹脂を使用した場合は、二色成形品の湿熱処理後の強度低下抑制効果が得られにくい。
【0046】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に(C)ポリカーボネート樹脂を添加する場合、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(C)ポリカーボネート樹脂との間のエステル交換を抑制するために、リン系の安定剤(有機ホスファイト系、ホスフォナイト系化合物、リン酸金属塩等など)を添加することが好ましい。その他の添加剤の添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.01~2.0質量部とすることができる。
【0047】
(添加方法)
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に、(B)カルボジイミド化合物、及び必要に応じて、(C)ポリカーボネート、(D)無機充填剤及び/又はその他の添加剤を添加する方法は、限定されず、例えば公知の攪拌機に投入して均一に混ぜ合わせた後、押出機で溶融及び混練することにより添加してもよいし、サイドフィーダーから投入してもよいし、あらかじめポリブチレンテレフタレート樹脂のマスターバッチ化し、射出成形前にブレンドして投入してもよい。
【0048】
(ポリカーボネート樹脂)
ここで述べるポリカーボネート樹脂は、上記したポリブチレンテレフタレート樹脂と二色成形される樹脂であり、二色成形品の第2の母材である。ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂成分を含むことができるが、ポリカーボネート樹脂の含有量は、樹脂成分全体の70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%であることがよりさらに好ましい。
【0049】
ポリカーボネート樹脂としては、ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン又はジフェニルカーボネート等の炭酸エステルと、の反応により得られる重合体が挙げられる。ジヒドロキシ化合物、並びに、ホスゲン又はジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、上記した二色成形品の強度低下抑制方法においてポリブチレンテレフタレート樹脂に加えることができる(C)ポリカーボネート樹脂で説明したものから選択して用いることができる。
【0050】
第2の母材としてのポリカーボネート樹脂は、第1の母材である(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に加えることができる(C)ポリカーボネート樹脂と同じ組成のものを使用することができ、異なる組成のものを使用することもできる。
ポリカーボネート樹脂の溶融粘度(ISO11443に準拠した、300℃、1000sec-1での溶融粘度)は、特に限定されず、例えば上記した二色成形品の強度低下抑制方法において(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に加えることができる(C)ポリカーボネート樹脂で説明したものと同様にすることができる。
【0051】
ポリカーボネート樹脂には、必要に応じて、無機充填剤、エラストマーを含有してもよく、さらに酸化防止剤、安定剤、分子量調整剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤、赤外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、耐加水分解性向上剤、流動性改良剤等の添加剤を含有してもよい。添加剤の添加量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0~30質量部とすることができる。
【0052】
ポリカーボネート樹脂は、通常、二色成形に先立ち、一次成形品(本明細書において、「ポリカーボネート樹脂成形品」ともいう。)として成形され得る。
一実施形態に係る方法は、ポリカーボネート樹脂成形品の少なくとも一部に接するようにポリブチレンテレフタレート樹脂が射出成形された二色成形品の強度低下を抑制する方法である。
ポリカーボネート樹脂成形品は、ポリブチレンテレフタレート樹脂との二色成形時の密着性をより高めるために、表面の少なくとも一部にアンカー構造を有していてもよい。アンカー構造は、ポリカーボネート樹脂成形品表面の突起、穴、くぼみなどのアンダーカットにより形成することできる。
【0053】
(二色成形品の強度低下抑制方法)
本実施形態に係る二色成形品の強度低下抑制方法は、ポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂との二色成形品の強度低下を抑制する方法である。一実施形態において、温度121℃、湿度100%、203kPaの水蒸気環境下で24時間湿熱処理後の二色成形品の強度低下を抑制する方法である。
一実施形態において、ポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂との二色成形品の、温度121℃、湿度100%、203kPaの水蒸気環境下で24時間湿熱処理し、温度23℃、湿度50%で24時間放置後の接合強度が、前記湿熱処理前の接合強度に対して、50%を超えることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、58%以上であることがさらに好ましい。
【0054】
[二色成形用樹脂組成物]
本実施形態に係る二色成形用樹脂組成物(以下、「ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」又は単に「樹脂組成物」ともいう。)は、ポリカーボネート樹脂との二色成形用樹脂組成物であり、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)カルボジイミド化合物とを含む。
【0055】
「二色成形用」とは、二色成形法による射出成形により成形品を製造するために用いられることを意味している。一実施形態において、二色成形用樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂成形品との二色成形に用いられる。
【0056】
((A)ポリブチレンテレフタレート樹脂)
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂としては、上記した二色成形品の強度低下抑制方法において使用する(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂として例示したものと同じものを例示することができ、上記から選択される1以上を含むことが好ましい。
【0057】
一実施形態において、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度が0.65~1.15dL/gであることが好ましく、0.67~1.00dL/gであることがより好ましい。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度が0.65~1.15dL/gであることにより、樹脂組成物の成形性を向上させることができる。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度に関して上記した二色成形品の強度低下抑制方法において述べた内容は、ここでも当てはまる。固有粘度の測定方法についても上記と同じである。
【0058】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量、及び樹脂成分中の(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、上記した二色成形品の強度低下抑制方法において述べた内容と同じであるからここでは記載を省略する。
【0059】
((B)カルボジイミド化合物)
(B)カルボジイミド化合物としては、上記した二色成形品の強度低下抑制方法においてポリブチレンテレフタレート樹脂に添加する(B)カルボジイミド化合物として例示したものと同じものを例示することができる。中でも、二色成形品の湿熱処理後の強度の低下をより抑制できる点で、芳香族カルボジイミド化合物を含有することが好ましい。
【0060】
(B)カルボジイミド化合物の数平均分子量、及びマスターバッチ等に関して上記した二色成形品の強度低下抑制方法において述べた内容は、ここでも当てはまる。
【0061】
(B)カルボジイミド化合物の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.1~3.0質量部であり、好ましくは0.1~2.6質量部であり、より好ましくは0.2~2.6質量部であり、さらに好ましくは0.2~2.4質量部である。
カルボジイミド化合物の含有量を、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.1質量部以上にすることで、二色成形品の強度の低下をより抑制することができる。3.0質量部以下にすることで、二色成形品の製造時に有毒なイソシアネートガスが発生することを防ぐことができる。
一実施形態において、(B)カルボジイミド化合物の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1.0~3.0質量部とすることができ、1.2~2.5質量部とすることができる。
【0062】
((C)ポリカーボネート樹脂)
本実施形態に係る樹脂組成物は、(C)ポリカーボネート樹脂をさらに含むことが好ましい。(C)ポリカーボネート樹脂をさらに含むことで、ポリカーボネート樹脂との二色成形時の初期密着性(湿熱処理前の密着性)をより高めることができる。
【0063】
(C)ポリカーボネート樹脂の具体例、溶融粘度についての記載は、二色成形品の強度低下抑制方法において(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に加えることができる(C)ポリカーボネート樹脂について述べたものと同じであるから、ここでは省略する。
【0064】
(C)ポリカーボネート樹脂の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1~75質量部であることが好ましく、2~73質量部であることが好ましく、2~72質量部であることがより好ましく、2.4~71.3質量部であることが更に好ましい。(C)ポリカーボネート樹脂の含有量を(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1~75質量部にすることで、ポリカーボネート樹脂との二色成形時の初期密着性(湿熱処理前の密着性)をより高めることができる。
【0065】
((D)無機充填剤)
本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、(D)無機充填剤をさらに含むことができる。(D)無機充填剤をさらに加えることで、二色成形品のポリブチレンテレフタレート樹脂を含む部分の機械的特性をより向上させることができる。
(D)無機充填剤の具体例、平均長さ、平均粒径等についての記載は、上記した二色成形品の強度低下抑制方法において(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に加えることができる(D)無機充填剤について述べたものと同じであるから、ここでは省略する。
【0066】
(D)無機充填剤の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0~90質量部であり、より好ましくは30~90質量部であり、より好ましくは40~85質量部であり、更に好ましくは50~85質量部である。(D)無機充填剤の含有量を、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物100質量部に対して90質量部以下にすることで、二色成形品の湿熱処理後の強度低下の効果を維持したまま二色成形品のポリブチレンテレフタレート樹脂を含む部分の機械的特性をより向上させることができる。
一実施形態において、(D)無機充填剤の添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物100質量部に対して40.3~83.2質量部である。
【0067】
樹脂組成物には、必要に応じて、上記した二色成形品の強度低下抑制方法において(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に加えることができるその他の添加剤を含むことができる。その具体例及び含有量については、上記のとおりである。
【0068】
(樹脂組成物)
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂と二色成形して得られる成形品の、温度121℃、湿度100%、203kPaの水蒸気環境下で24時間湿熱処理後の接合強度が、前記湿熱処理前の接合強度に対して、50%を超えることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、58%以上であることがさらに好ましい。
【0069】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法で調製することができる。例えば、各成分を配合して、これらを1軸又は2軸押出機を用いて溶融混練処理することで、樹脂組成物の調製が行われる。
【0070】
[二色成形品]
本実施形態に係る二色成形品は、ポリカーボネート樹脂を含む部分と、上記した二色成形用樹脂組成物(ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物)を含む部分と、を有する。二色成形用樹脂組成物、及びポリカーボネート樹脂については、上記のとおりであるからここでは記載を省略する。
【0071】
ポリカーボネート樹脂を含む部分と二色成形用樹脂組成物を含む部分とは、接着剤等を介さずに、少なくとも一部が直接接して一体的に形成されている。二色成形用樹脂組成物を含む部分は、ポリカーボネート樹脂を含む部分の少なくとも一部と接しており、ポリカーボネートを含む部分の周囲の少なくとも一部を取り囲むように形成されていてもよい。ポリカーボネート樹脂を含む部分は、金属(合金)及び/又は無機固体を含むインサート部材であってもよい。
【0072】
ポリカーボネート樹脂を含む部分、二色成形用樹脂組成物を含む部分、及び二色成形品全体の大きさ及び形状は、限定されず、用途に応じた大きさ及び形状とすることができる。
【0073】
ポリカーボネート樹脂を含む部分は、ポリカーボネート樹脂の含有量が樹脂成分中に70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%であることがよりさらに好ましい。二色成形品の製法は、予めポリカーボネート樹脂を射出成形して得た一次成形品(ポリカーボネート樹脂成形品)を金型キャビティ内に配置した状態で、当該ポリカーボネート樹脂成形品の少なくとも一部に接するように二色成形用樹脂組成物を射出成形して二色成形品を得ることができる。製造方法の詳細については、後述する。
【0074】
二色成形品は、さらに金属(合金)及び/又は無機固体からなるインサート部材とともに射出成形して得られるインサート成形品とすることもできる。金属(合金)及び/又は無機固体の材質は限定されない。
インサート成形品の製法は特に限定されない。例えば、予めポリカーボネート樹脂を射出成形して得た一次成形品(ポリカーボネート樹脂成形品)を、金属及び/又は無機固体からなるインサート部材とともに金型キャビティ内に配置した状態で、当該ポリカーボネート樹脂成形品及びインサート部材上にポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形して二色成形品を得ることができる。
また、ポリカーボネート樹脂成形品を射出成形する際に金型内に金属及び/又は無機固体からなるインサート部材を配置してインサート部材上にポリカーボネート樹脂を射出成形することにより、インサート部材を有するポリカーボネート樹脂成形品を得た後、当該インサート部材を有するポリカーボネート樹脂成形品を金型キャビティ内に配置した状態で、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形することにより二色成形品を得ることもできる。
【0075】
本実施形態に係る二色成形品は、自動車部品、電気・電子部品等の種々の用途において使用することができる。特に、この二色成形品は、高温多湿の環境下で使用されても強度が低下することを抑制することができるので、自動車部品として好ましく用いることができる。
【0076】
[二色成形品の製造方法]
本実施形態に係る二色成形品の製造方法は、
ポリカーボネート樹脂を含む一次成形品を得ること;
一次成形品を金型のキャビティ内に配置し、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を前記キャビティ内に射出すること;を有する。
【0077】
一実施形態において、二色成形品は、予め成形されたポリカーボネート樹脂成形品の少なくとも一部に接するようにポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形して得られる。
【0078】
(第1工程)
第1工程では、ポリカーボネート樹脂を含む一次成形品を得る。一次成形品の形状及び大きさは限定されない。例えば、一次成形品の形状は、板状、柱状、球状であり得る。
ポリカーボネート樹脂を含む一次成形品の作製方法は、特に限定されず、通常の射出成形により作製することができる。射出成形の条件は、例えば、シリンダー温度260~320℃、金型温度70~120℃とすることができる。一次成形品の作製に用いられるポリカーボネート樹脂についての記載は、上記した二色成形品の強度低下抑制方法及び二色成形品用樹脂組成物において述べた第2の母材としてのポリカーボネート樹脂の記載と同じである。
【0079】
ポリカーボネート樹脂を含む一次成形品は、二色成形用樹脂組成物との初期密着性をより高めるために、表面の少なくとも一部にアンカー構造を有していることが好ましい。
アンカー構造は、ポリカーボネート樹脂成形品表面の突起、孔、くぼみなどのアンダーカットにより形成することができる。
【0080】
(第2工程)
第2工程では、一次成形品を金型のキャビティ内に配置し、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する。これにより二色成形品を得ることができる。一次成形品はインサート部材とすることができる。射出成形の条件は、例えば、シリンダー温度250~290℃、金型温度40~100℃とすることができる。
【0081】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)カルボジイミド化合物とを含む。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び(B)カルボジイミド化合物についての記載は、上記した二色成形品の強度低下抑制方法、及び二色成形品用樹脂組成物について述べたものと同じであるから、ここでは省略する。
【0082】
(B)カルボジイミド化合物の含有量は、好ましくは(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.1~3.0質量部であり、より好ましくは0.1~2.6質量部であり、さらに好ましくは0.2~2.6質量部であり、特に好ましくは0.2~2.4質量部である。
カルボジイミド化合物の含有量を、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.1質量部以上にすることで、得られる二色成形品の強度の低下をより抑制することができる。3.0質量部以下にすることで、二色成形時に有毒なイソシアネートガスが発生することを防ぐことができる。
一実施形態において、(B)カルボジイミド化合物の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1.0~3.0質量部でとすることができ、1.2~2.5質量部とすることができる。
【0083】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、必要に応じて、(C)ポリカーボネート樹脂、(D)無機充填剤、及び/又はその他の添加剤を含むことができる。(C)ポリカーボネート樹脂、(D)無機充填剤、及びその他の添加剤についての記載についても、上記した二色成形品の強度低下抑制方法、及び二色成形品用樹脂組成物について述べたものと同じである。
二色成形用樹脂組成物について上記で述べた他の内容は、ここでのポリブチレンテレフタレート樹脂組成物にも当てはまる。
【実施例
【0084】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0085】
[使用原料]
実施例及び比較例で使用した原料を以下に示す。
A-1:ポリブチレンテレフタレート樹脂(ポリプラスチックス株式会社製、固有粘度(IV):0.88dL/g)
A-2:イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート樹脂(ポリプラスチックス株式会社製、固有粘度(IV):0.74dL/g、イソフタル酸変性量:12.5モル%)
B-1:芳香族カルボジイミド(ランクセス社製、STABAXOL(登録商標)P-100)
B-2:モノカルボジイミド(ランクセス社製、STABAXOL(登録商標)I)
C:ポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製、溶融粘度:0.27kPa・s)
D:ガラス繊維(日本電気硝子株式会社製、ECS03T-127)
E:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製 1004K)
【0086】
[実施例1~10、比較例1,2]
(ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の作製)
表1、2に示す割合で原料を混合し、二軸押出機(日本製鋼所製TEX30)を用いて、シリンダー温度260℃、スクリュ回転130rpmで溶融混練して押出し、実施例1~10、比較例1,2のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を作製した。
【0087】
(ポリカーボネート樹脂成形品の作製)
ポリカーボネート樹脂を120℃で5時間乾燥させた後、シリンダー温度285℃、金型温度90℃の条件で短冊状試験片(50mm×10mm×厚さ2mm)を作製し、その後23℃、50%RHで24時間放置した。
【0088】
(二色成形品の試験片の作製)
上記で得られたポリカーボネート樹脂成形品の短冊状試験片をインサート部材として金型内に配し、上記で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いてシリンダー温度285℃、金型温度90℃にてインサート成形し、図1に示す形状を有する二色成形品の試験片を作製した。図1に示すように、試験片10は、ポリカーボネート樹脂を含む部分1の大きさが50mm×10mm×厚さ2mmであり、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を含む部分2の大きさが50mm×10mm×厚さ2mmであり、ポリカーボネート樹脂を含む部分とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を含む部分とが一つの接合面で接して一体的に形成されている。試験片10の全体の大きさは、100mm×10mm×厚さ2mmである。
【0089】
[評価]
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物成形品、及び二色成形品について、以下の評価を行った。結果を表1,2に示す。
【0090】
(ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物成形品の強度)
実施例1~5及び比較例1,2のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いて、ISO多目的試験片 Type 1A(以下、「ISO試験片」ともいう。)を作成した。
【0091】
上記試験片を、万能試験機を用いて、ISO 527-1,2に従い、つかみ具間距離115mm、速度5mm/minで引張試験を行い、破断時の最大応力を初期強度とした。
【0092】
上記試験片を、滅菌機を用いて121℃、100%RH、203kPaの水蒸気環境で24時間湿熱処理し、温度23℃、湿度50%で24時間放置した。その後、ISO 527-1,2に従い、万能試験機を用いて、つかみ具間距離115mm、速度5mm/minで引張試験を行い、破断時の最大応力を引張強さとして測定した。初期強度に対する前記引張強さの割合を算出し、湿熱処理後の強度保持率(%)とした。
【0093】
(二色成形品の強度)
上記で得られた二色成形品の試験片を、万能試験機を用いて、つかみ具間距離50mm、速度5mm/minで引張試験を行い、破断時の最大応力を接合強度として測定し初期強度とした。
【0094】
上記二色成形品の試験片を、滅菌機を用いて121℃、100%RH、203kPaの水蒸気環境で24時間湿熱処理し、温度23℃、湿度50%で24時間放置した。その後、万能試験機を用いて、つかみ具間距離50mm、速度5mm/minで引張試験を行い、破断時の最大応力を接合強度として測定した。初期の接合強度に対する前記接合強度の割合を算出し、湿熱処理後の強度保持率(%)とした。
【0095】

【表1】
【表2】
【0096】
表1,2に示すように、実施例と比較例について、ISO試験片(母材であるPBT樹脂組成物の成形品)の湿熱処理後の強度保持率はほぼ同等であるものの、二色成形品の湿熱処理後の強度保持率は、カルボジイミドを使用した実施例は比較例に比べ優れており、カルボジイミドが二色成形品の湿熱処理後の強度低下の抑制に寄与していることが分かる。
具体的には、表1に示すように、実施例のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いた二色成形品は、初期強度に対する湿熱処理後の強度の割合が50%を超えており、湿熱処理後の強度の低下を抑制することができる。
表2に示すように、カルボジイミド化合物を含まない比較例1のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、初期強度は実施例と同程度であるものの、初期強度に対する湿熱処理後の強度の割合が50%以下であり、湿熱処理後の強度が過度に低下してしまう。
カルボジイミド化合物に替えて、耐加水分解性向上作用を有することが知られているエポキシ樹脂を使用した比較例2は、初期強度は実施例と同程度であるものの、初期強度に対する湿熱処理後の強度の割合が50%以下であり、湿熱処理後の強度が過度に低下してしまう。
表1,2に示すように、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のみを用いたISO試験片(PBT樹脂組成物成形品)の、初期強度及び湿熱処理後の強度保持率は、カルボジイミド化合物の有無で大きな違いは見られなかった。表1において「-」は、測定していないことを示している。
【符号の説明】
【0097】
10 試験片
1 ポリカーボネート樹脂を含む部分
2 ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む部分
図1