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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】溶出物試験方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/00 20060101AFI20230414BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20230414BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230414BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20230414BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20230414BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
C12N5/00
C12M3/00 A
C12M1/00 A
G01N30/88 C
G01N30/06 Z
G01N30/74 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018209426
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2020074704
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507130912
【氏名又は名称】株式会社 東ソー分析センター
(72)【発明者】
【氏名】今富 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 悟
(72)【発明者】
【氏名】平床 聖也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博之
(72)【発明者】
【氏名】安念 真司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昌俊
(72)【発明者】
【氏名】香川 信之
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/198495(WO,A1)
【文献】特開平07-113742(JP,A)
【文献】特開2018-154752(JP,A)
【文献】特開2018-087316(JP,A)
【文献】特開2004-189800(JP,A)
【文献】特開2005-060593(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116904(WO,A1)
【文献】特表2016-512459(JP,A)
【文献】国際公開第2007/060891(WO,A1)
【文献】特開2016-214644(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003569(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12Q 1/00-3/00
C12N 5/00-5/28
G01N 30/88
G01N 30/06
G01N 30/74
C08F 293/00-301/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロで培養した細胞を含む培地に溶出した1μg/mL以上10mg/mL以下の培養基材由来のクロロホルムに可溶なブロック共重合体(1)ポリ(N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート-n-ブチルメタクリレート-N-イソプロピルアクリルアミド)、ないし、ブロック共重合体(2)ポリ(2-メトキシエチルアクリレート-n-ブチルアクリレート-N-イソプロピルアクリルアミド)を、下記(A)~(C)の工程を含む方法で定量する方法。
(A)クロロホルムを用いて高分子化合物を培地から抽出する工程。
(B)サイズ排除クロマトグラフィーを用いて高分子化合物を分離する工程。
(C)高分子化合物由来の検出強度から高分子化合物を定量する工程。
【請求項2】
請求項1記載の(A)工程で、冷却で水を凍結させ、ブロック共重合体(1)、ないし、ブロック共重合体(2)が抽出されたクロロホルムのみを回収する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
請求項1記載の(B)工程で、試料の注入量が10μL以上500μL以下であることを特徴とする請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
請求項1記載の(C)工程で、ブロック共重合体(1)、ないし、ブロック共重合体(2)由来の検出が示差屈折率検出器を用いること特徴とする請求項1~3いずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1記載の(C)工程で、濃度が既知のブロック共重合体(1)、ないし、ブロック共重合体(2)溶液の試料から作成した検量線を用いて定量する請求項1~4いずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビトロで培養した細胞を含む培地に溶出した高分子化合物を定量する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インビトロでの細胞培養では、従来から用いられている培養基材に機能性高分子をコーティングした培養基材が用いられている。これら素材の溶出は培養細胞に悪影響を与える可能性が懸念されることから、悪影響を与えないことを担保するための手段として溶出物試験がある。
【0003】
溶出物試験法は、第十七改正日本薬局方一般試験法_プラスチック医薬品容器試験法_溶出物試験に記載されている。本記載の方法によれば、例えば、幅0.5cmに細断した約1,200cmの試料(φ10cmディッシュ10枚相当)を、水200mLと共にガラス製瓶に加え、70℃24時間加熱した液を試験液として用いる。試験液は空試験液と共に、泡立ち試験、pH試験、過マンガン酸カリウム還元性試験、紫外吸収スペクトル試験、蒸発残留物試験が行われる。蒸発残留物試験では、試験液20mLを水浴上で蒸発乾固し、残留物を105℃で1時間乾燥し、その質量を量ることで、不揮発性溶出物を定量評価できる。しかしながら、不揮発性蒸発物が1mgを下回る場合は定量が困難であった。また本溶出物試験法で溶出しなくとも、特許文献1記載の技術では、細胞を基材から回収する際に高分子膜が細胞ごと剥離するため、従来の溶出物試験法では細胞に対し必ずしも安全であることは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-266980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、インビトロで培養した細胞を含む培地に含まれる培養基材由来の高分子化合物を定量評価する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以上の点を鑑み、鋭意研究を重ねた結果、インビトロで培養した細胞を含む培地に溶出した1μg/mL以上10mg/mL以下の培養基材由来の高分子化合物を、有機溶媒を用いて高分子化合物を培地から抽出する工程、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて高分子化合物を分離する工程、高分子化合物由来の検出強度から高分子化合物を定量する工程、それぞれを含む方法で定量できることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は以下の態様を包含する。
<1> インビトロで培養した細胞を含む培地に溶出した1μg/mL以上10mg/mL以下の培養基材由来の高分子化合物を、下記(A)~(C)の工程を含む方法で定量する方法。
(A)有機溶媒を用いて高分子化合物を培地から抽出する工程。
(B)サイズ排除クロマトグラフィーを用いて高分子化合物を分離する工程。
(C)高分子化合物由来の検出強度から高分子化合物を定量する工程。
<2> <1>記載の(A)工程で、冷却で水を凍結させ、高分子化合物が抽出された有機溶液のみを回収する工程を含む<1>記載の方法。
<3> <1>記載の有機溶媒が、水と非相溶性であることを特徴とする<1>~<2>いずれかに記載の方法。
<4> <1>記載の(B)工程で、試料の注入量が10μL以上500μL以下であることを特徴とする<1>~<3>のいずれかに記載の方法。
<5> <1>記載の(B)工程で、検出器が示差屈折率検出器であること特徴とする<1>~<4>いずれかに記載の方法。
<6> <1>記載の(C)工程で、濃度が既知の高分子化合物溶液の試料から作成した検量線を用いて定量する<1>~<5>いずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インビトロで培養した細胞を含む培地に溶出した1μg/mL以上10mg/mL以下の培養基材由来の高分子化合物を定量できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の検量線を示す図である。
図2】実施例2の検量線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明は、インビトロで培養した細胞を含む培地に溶出した1μg/mL以上10mg/mL以下の培養基材由来の高分子化合物を、有機溶媒を用いて高分子化合物を培地から抽出する工程、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて高分子化合物を分離する工程、高分子化合物由来の検出強度から高分子化合物を定量する工程、それぞれを含む方法で定量できる。
【0011】
本発明の培養基材由来の高分子化合物は特に限定はないが、一般的な培養基材として用いられるポリスチレンやポリエチレンに加え、これらの表面にコーティングした高分子化合物を例示できる。表面にコーティングする高分子化合物としては、一例として、温度応答性を有するN-イソプロピルアクリルアミドからなる、およびまたは、を含む合成高分子に加え、糖鎖やタンパク、アミノ酸や核酸などの生体由来高分子を例示できる。
【0012】
本発明の高分子化合物は特に限定はないが、サイズ排除クロマトグラフィーで分離できるのであれば、合成高分子でも生体高分子で有っても良い。高分子化合物の分子量はサイズ排除クロマトグラフィーで分離するため、500以上10,000,000以下であり、より好ましくは1,000以上1,000,000である。また含まれる高分子化合物の種類は1種類であっても良く、2種類以上であっても良い。
【0013】
本発明のインビトロで培養した細胞を含む培地には、細胞を含んでいれば特に制限はない。培地には細胞の他に塩や有機化合物、生体材料を含んでも良い。細胞の種類は特に限定はないが、例えば、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト肺由来繊維芽細胞、ヒト皮膚繊維芽細胞、チャイニーズハムスター卵巣由来CHO細胞、マウス結合組織L929細胞、ヒト胎児腎臓由来細胞HEK293細胞、ヒト子宮頸癌由来HeLa細胞等の種々の培養細胞株に加え、生体内の各組織や臓器を構成する上皮細胞や内皮細胞、収縮性を示す骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、神経系を構成するニューロン細胞、グリア細胞、繊維芽細胞、生体の代謝に関与する肝実質細胞、肝非実質細胞や脂肪細胞などを用いることができる。これら以外でも、血液、リンパ液、髄液、喀痰、尿又は便に含まれる細胞や、体内あるいは環境中に存在する微生物、ウイルス、原虫等を例示できる。
【0014】
本発明の培養基材の形状は特に限定はないが、ディッシュ形状、フラスコ形状、フィルム状、球状などを例示できる。
【0015】
本発明の高分子化合物を抽出する有機溶媒は、溶液あるいは懸濁に含まれる高分子を抽出できるものであれば特に限定はないが、高分子が抽出された有機溶液の回収を容易にすることから、水と非相溶の溶媒を用いることが好ましい。一例として、クロロホルム、トルエン、酢酸エチルが挙げられる。また、水と相溶な溶媒であっても、水のみを凍結させることで、高分子が抽出された液体の有機溶液のみを回収できるため好ましい。本高分子が抽出された液体の有機溶液を試料として取り扱う。抽出を行う際に用いる容器の材質は、用いる有機溶媒に溶出しないものであれば良く、有機溶媒としてクロロホルムを用いる場合は、一例として、ガラス製の容器が挙げられる。
【0016】
本発明のサイズ排除クロマトグラフィーとは、高分子の分子サイズの違いによってカラムへの担持時間が変わってくる性質を利用し、分離・精製をする方法である。適用される評価試料は先述の高分子化合物を抽出した有機溶媒を用いる。フィルター濾過で不溶物を除去することが好ましい。適用される溶離液は、検出する高分子化合物ごとに最適なものが異なり、検出する高分子化合物が溶解する溶媒を使用する。本特許の実施例では、一例として、10mMトリフルオロ酢酸ナトリウムを含む2,2,2-トリフルオロエタノールを使用している。適用されるカラムも検出する高分子化合物ごとに最適なものが異なり、検出する高分子化合物の極性や溶解性を考慮して最適なカラムを使用する。本特許の実施例では、一例として、東ソー製 TSKgel SuperAWM-Hを使用している。適用される分離された高分子は、示差屈折、紫外/可視/赤外検出、核磁気共鳴などの検出器を用い検出できる。検出強度は試料中の高分子濃度に相関するため、高分子濃度と検出強度の検量線をあらかじめ作成しておくことで、試料中の高分子濃度を定量できる。試料の注入量は、10μL以上500μL以下が好ましく、試料中の高分子化合物濃度が高い場合は10μL以上100μL以下、高分子化合物濃度が低い場合は300μL以上500μL以下であることがそれぞれ好ましい。
【0017】
本発明の検量線作成方法は特に限定はないが、試料をサイズ排除クロマトグラフィーで測定する際のカラム温度や溶離液流量と同一な条件が好ましい。カラム温度は特に限定なく、室温以上、適用する溶離液の沸点未満を例示できる。溶離液流速は特に限定なく、測定時間の短縮とカラムの分離能のバランスをとって、0.1mL/min~2mL/minを例示できる。検量線作成に用いるピークは、ピークトップ高さやピーク面積を用いることができる。
【0018】
本発明は、先述の検量線を用いることで、試料中の高分子化合物の濃度を1μg/mL以上10mg/mL以下で解析できるが、用いる高分子化合物やカラムの種類、試料注入量、溶離液の流速によっては1μg/mL未満の濃度や10mg/mLを超える濃度であっても測定できる。
【実施例
【0019】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。なお、断りのない限り、試薬は市販品を用いた。
【0020】
<細胞培養基材コーティング用高分子化合物の組成>
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM-ECZ400S/LI)を用いたプロトン核磁気共鳴分光(1H-NMR)スペクトル分析より求めた。
【0021】
<細胞培養基材コーティング用高分子化合物の分子量、分子量分布>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定した。SEC装置は東ソー(株)製 HLC-8320GPCを用い、カラムは東ソー製 TSKgel SuperAWM-Hを2本用い、カラム温度を40℃に設定し、溶離液は10mMトリフルオロ酢酸ナトリウムを含む2,2,2-トリフルオロエタノールを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mLで調製して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリメタクリル酸メチル(Sigma-Aldrich社製)を用いた。
【0022】
<細胞培養基材コーティング用高分子化合物の被覆量>
濃度が既知の表面処理剤を細胞培養基材(IWAKI製Φ6cm組織培養用ディッシュ)に塗布し、室温で5分間放置した後、加えた表面処理剤をパスツールピペットで回収し、細胞培養基材上に残った表面処理剤の量を電子天秤で秤量した。表面処理剤の濃度と表面処理剤の量、および細胞培養基材への被覆面積から、高分子化合物の被覆量を単位μg/cmで算出した。
【0023】
<細胞培養基材コーティング用高分子化合物(1)の合成>
100mL2口フラスコにN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)0.94g(6mmol)を加え、さらに4-シアノ-4-[(ドデシルスルフォニルチオカルボニル)スルフォニル]ペンタノイックアシッドを41mg(100μmol)とアゾビスイソブチロニトリル1.6mg(10μmol)と1,4-ジオキサン10mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で24時間加熱撹拌した。
【0024】
1回目の加熱撹拌後、上記にn-ブチルメタクリレート(BMA)4.26g(30mmol)を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリル1.6mg(10μmol)と1,4-ジオキサン10mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で24時間加熱撹拌した。
【0025】
2回目の加熱撹拌後、上記にN-イソプロピルアクリルアミド(IPAAm)6.78g(60mmol)を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリル1.6mg(10μmol)と1,4-ジオキサン35mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で48時間加熱撹拌した。
【0026】
3回目の加熱撹拌後、反応液を水で再沈精製し、減圧乾燥することで黄色固体を得た。得られた黄色固体をクロロホルムに溶解し、分液ロートを用いクロロホルム相を回収した。回収したクロロホルム相をエバポレーターで濃縮し、ヘキサンで再沈精製した。沈殿物をろ過で回収し、減圧乾燥することで、ブロック共重合体(1)poly(DMAEMA-BMA-IPAAm)を4.705g得た。得られたブロック共重合体の組成はDMAEMA/BMA/IPAAm=6/32/62(mol%)、Mn=11.0×10、およびMw/Mn=1.5であった。
【0027】
<細胞培養基材コーティング用高分子化合物(2)の合成>
100mL2口フラスコに2-メトキシエチルアクリレート(MEA)0.65g(5mmol)を加え、さらにシアノメチルドデシルカルボナトを31.8mg(100μmol)とアゾビスイソブチロニトリル1.6mg(10μmol)と1,4-ジオキサン10mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で24時間加熱撹拌した。
【0028】
1回目の加熱撹拌後、上記にn-ブチルアクリレート(BA)3.85g(30mmol)を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリル1.6mg(10μmol)と1,4-ジオキサン5mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で48時間加熱撹拌した。
【0029】
2回目の加熱撹拌後、上記にN-イソプロピルアクリルアミド(IPAAm,LCST=32℃)7.36g(65mmol)を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリル1.6mg(10μmol)と1,4-ジオキサン35mLを加え、アルゴンガス置換後、62℃で48時間加熱撹拌した。
【0030】
3回目の加熱撹拌後、反応液を水で再沈精製し、減圧乾燥することで黄色固体を得た。得られた黄色固体をクロロホルムに溶解し、分液ロートを用いクロロホルム相を回収した。回収したクロロホルム相をエバポレーターで濃縮し、ヘキサンで再沈精製した。沈殿物をろ過で回収し、減圧乾燥することで、ブロック共重合体(2)poly(MEA-BA-IPAAm)を5.805g得た。得られたブロック共重合体の組成はMEA/BA/IPAAm=5/26/69(mol%)、Mn=11.7×10、およびMw/Mn=1.5であった。
【0031】
<高分子化合物の定量評価装置>
定量評価装置は、東ソー(株)製 HLC-8320GPCを用いた。カラムは東ソー製 TSKgel SuperAWM-Hを2本用い、カラム温度を40℃に設定し、溶離液は10mMトリフルオロ酢酸ナトリウムを含む2,2,2-トリフルオロエタノールを用いた。溶離液の流量は0.6mL/minとし、検出器として示差屈折計を用いた。
【0032】
実施例1
[定量評価用検量線の作成]
高分子化合物(1)をクロロホルムに溶解し、濃度0.005mg/mL~3.584mg/mLの検量線用試料を得た。本試料を定量評価装置に100μL注入した。各ピーク面積から検量線作成を試みたところ、濃度0.008mg/mL~3.584mg/mLの範囲において直線性の良い検量線を得た。結果を表1および図1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
[本評価]
高分子化合物(1)被覆量1.0μg/cm、6.0μg/cm、20.0μg/cmのコートディッシュを得た。それぞれにヒト骨髄由来間葉系幹細胞2.0×10cellsを播種し、4mLの培地(DMEM+10%牛胎児血清)を加え、37℃5CO雰囲気下で4日間培養した。その後、4℃の冷蔵庫で1時間放置し、細胞を剥離させ、細胞を含む培地4mLをスクリュー瓶に回収した。さらに4mLのクロロホルムを加え、栓をし、超音波振動装置で2分間処理した。1時間静置後、-10℃の冷凍庫に2時間放置した。冷凍庫から取り出し、液体のクロロホルム層をパスツールピペットで回収し、定量評価装置に100μL注入した。高分子化合物(1)被覆量20.0μg/cmのコートディッシュから回収した試料において、0.010mg/mLの高分子化合物(1)の溶出が確認できた。結果を表2に示す。
【0035】
比較例1
[本評価]
高分子化合物(1)被覆量1.0μg/cm、6.0μg/cm、20.0μg/cmのコートディッシュを得た。それぞれにヒト骨髄由来間葉系幹細胞2.0×10cellsを播種し、4mLの培地(DMEM+10%牛胎児血清)を加え、37℃5CO雰囲気下で4日間培養した。その後、4℃の冷蔵庫で1時間放置し、細胞を剥離させ、細胞を含む培地4mLをスクリュー瓶に回収した。さらに4mLのクロロホルムを加え、栓をし、超音波振動装置で2分間処理した。1時間静置後、-10℃の冷凍庫に2時間放置した。冷凍庫から取り出し、液体のクロロホルム層をパスツールピペットで回収した。それぞれを105℃で蒸発乾固させ、残存物の質量を最小標示0.1mgの電子天秤で測定した。いずれのサンプルも残留物を検出できず、試料が同じ実施例1よりも低感度であった。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
実施例2
[定量評価用検量線の作成]
高分子化合物(2)をクロロホルムに溶解し、濃度0.001mg/mL~1.000mg/mLの検量線用試料を得た。本試料を定量評価装置に300μL注入した。各ピークトップ高さから検量線作成を試みたところ、濃度0.005mg/mL~1.000mg/mLの範囲において直線性の良い検量線を得た。結果を表3および図2に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
[本評価]
高分子化合物(2)被覆量5.0μg/cm、100.0μg/cmのコートディッシュを準備した。それぞれにヒト骨髄由来間葉系幹細胞2.0×10cellsを播種し、4mLの培地(DMEM+10%牛胎児血清)を加え、37℃5CO雰囲気下で4日間培養した。その後、4℃の冷蔵庫で1時間放置し、細胞を剥離させ、細胞を含む培地4mLをスクリュー瓶に回収した。さらに4mLのクロロホルムを加え、栓をし、超音波振動装置で2分間処理した。1時間静置後、-10℃の冷凍庫に2時間放置した。冷凍庫から取り出し、液体のクロロホルム層をパスツールピペットで回収し、定量評価装置に300μL注入した。高分子化合物(2)被覆量100.0μg/cmのコートディッシュから回収した試料において、0.022mg/mLの高分子化合物(2)の溶出が確認できた。結果を表4に示す。
【0040】
比較例2
[本評価]
高分子化合物(2)被覆量5.0μg/cm、100.0μg/cmのコートディッシュを準備した。それぞれにヒト骨髄由来間葉系幹細胞2.0×10cellsを播種し、4mLの培地(DMEM+10%牛胎児血清)を加え、37℃5CO雰囲気下で4日間培養した。その後、4℃の冷蔵庫で1時間放置し、細胞を剥離させ、細胞を含む培地4mLをスクリュー瓶に回収した。さらに4mLのクロロホルムを加え、栓をし、超音波振動装置で2分間処理した。1時間静置後、-10℃の冷凍庫に2時間放置した。冷凍庫から取り出し、液体のクロロホルム層をパスツールピペットで回収した。それぞれを105℃で蒸発乾固させ、残存物の質量を最小標示0.1mgの電子天秤で測定した。いずれのサンプルも残留物を検出できず、試料が同じ実施例2よりも低感度であった。結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
図1
図2