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特許7262511アミド化合物、含窒素複素環含有化合物および架橋物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】アミド化合物、含窒素複素環含有化合物および架橋物
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/12 20060101AFI20230414BHJP
   C08G 73/18 20060101ALI20230414BHJP
   C09D 179/04 20060101ALI20230414BHJP
   C09D 179/08 20060101ALI20230414BHJP
   C09J 179/04 20060101ALI20230414BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
C08G73/12
C08G73/18
C09D179/04 A
C09D179/08
C09J179/04 A
C09J179/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021080679
(22)【出願日】2021-05-11
(65)【公開番号】P2021178955
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2020083262
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 好行
(72)【発明者】
【氏名】野口 剛
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-093178(JP,A)
【文献】国際公開第89/010946(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/098791(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00- 73/26
C09D 179/00-179/08
C09J 179/00-179/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される繰り返し単位、および、分子末端に式(2)で示される架橋部位を有するアミド化合物。
式(1):
【化47】
(式(1)中、
Rfは炭素数4以上80以下のパーフルオロアルキレン基、
Rfは、単結合、-O-、または、炭素数が1~15のフッ化アルキレン基
Aはアミド結合、
Yは、独立に、-CORまたは-NHR
は、独立に、OH、置換基を有していないフェノキシ基、メトキシ基、エトキシ基、塩素原子、または、下記式で示される置換基
【化53】
は、独立に、H、炭素数1~10の低級アルキル基、炭素数1~10のフッ素原子含有低級アルキル基、フェニル基、ベンジル基、フッ素原子で1~5個の水素原子が置換されたフェニル基もしくはベンジル基、または、炭素数1~10のフッ素原子含有アルキル基で置換されたフェニル基
を表す。)
式(2):
-C≡CX
(式(2)中、Xは、H、炭素数1~10の低級アルキル基、炭素数1~10のフッ素原子含有低級アルキル基、フェニル基、ベンジル基、フッ素原子で1~5個の水素原子が置換されたフェニル基もしくはベンジル基、または、炭素数1~10のフッ素原子含有アルキル基で置換されたフェニル基を表す。)
【請求項2】
式(1)で示される繰り返し単位の平均重合度が2~10である請求項1に記載のアミド化合物。
【請求項3】
式(1)で示される繰り返し単位が、式(1a)で示される繰り返し単位である請求項1または2に記載のアミド化合物。
式(1a):
【化48】
(式(1a)中、Rfは炭素数4以上80以下のパーフルオロアルキレン基、Rfは、単結合、-O-、または、炭素数が1~15のフッ化アルキレン基、Rは、独立に、OH、置換基を有していないフェノキシ基、メトキシ基、エトキシ基、塩素原子、または、下記式で示される置換基を表す。)
【化54】
【請求項4】
式(1)で示される繰り返し単位が、式(1b)で示される繰り返し単位である請求項1または2に記載のアミド化合物。
式(1b):
【化49】
(式(1b)中、Rfは炭素数4以上80以下のパーフルオロアルキレン基、Rfは、単結合、-O-、または、炭素数が1~15のフッ化アルキレン基、Rは、独立に、H、炭素数1~10の低級アルキル基、炭素数1~10のフッ素原子含有低級アルキル基、フェニル基、ベンジル基、フッ素原子で1~5個の水素原子が置換されたフェニル基もしくはベンジル基、または、炭素数1~10のフッ素原子含有アルキル基で置換されたフェニル基を表す。)
【請求項5】
式(3)で示される繰り返し単位、および、分子末端に式(2)で示される架橋部位を有する含窒素複素環含有化合物。
式(3):
【化50】
(式(3)中、
Rfは炭素数4以上80以下のパーフルオロアルキレン基、
Rfは、単結合、-O-、または、炭素数が1~15のフッ化アルキレン基
環Cはイミド環または、ベンゼン環と共にベンゾイミダゾール環を形成する環であり、環Cは置換基を有していてもよく、
前記置換基は、炭素数1~10の低級アルキル基、炭素数1~10のフッ素原子含有低級アルキル基、フェニル基、ベンジル基、フッ素原子で1~5個の水素原子が置換されたフェニル基もしくはベンジル基、または、炭素数1~10のフッ素原子含有アルキル基で置換されたフェニル基である。)
式(2):
-C≡CX
(式(2)中、Xは、H、炭素数1~10の低級アルキル基、炭素数1~10のフッ素原子含有低級アルキル基、フェニル基、ベンジル基、フッ素原子で1~5個の水素原子が置換されたフェニル基もしくはベンジル基、または、炭素数1~10のフッ素原子含有アルキル基で置換されたフェニル基を表す。)
【請求項6】
式(3)で示される繰り返し単位の平均重合度が2~10である請求項5に記載の含窒素複素環含有化合物。
【請求項7】
式(3)で示される繰り返し単位が、式(3a)で示される繰り返し単位である請求項5または6に記載の含窒素複素環含有化合物。
式(3a):
【化51】
(式(3a)中、Rfは炭素数4以上80以下のパーフルオロアルキレン基、Rfは、単結合、-O-、または、炭素数が1~15のフッ化アルキレン基を表す。)
【請求項8】
式(3)で示される繰り返し単位が、式(3b)で示される繰り返し単位である請求項5または6に記載の含窒素複素環含有化合物。
式(3b):
【化52】
(式(3b)中、Rfは炭素数4以上80以下のパーフルオロアルキレン基、Rfは、単結合、-O-、または、炭素数が1~15のフッ化アルキレン基、Rは、独立に、H、炭素数1~10の低級アルキル基、炭素数1~10のフッ素原子含有低級アルキル基、フェニル基、ベンジル基、フッ素原子で1~5個の水素原子が置換されたフェニル基もしくはベンジル基、または、炭素数1~10のフッ素原子含有アルキル基で置換されたフェニル基を表す。)
【請求項9】
請求項1~4のいずれかに記載のアミド化合物、または、請求項5~8のいずれかに記載の含窒素複素環含有化合物を含有する接着剤。
【請求項10】
請求項1~4のいずれかに記載のアミド化合物、または、請求項5~8のいずれかに記載の含窒素複素環含有化合物を含有する塗料。
【請求項11】
請求項1~4のいずれかに記載のアミド化合物、または、請求項5~8のいずれかに記載の含窒素複素環含有化合物を架橋することにより得られる架橋物。
【請求項12】
半導体製造装置に用いる部材である請求項11に記載の架橋物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アミド化合物、含窒素複素環含有化合物および架橋物に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1や特許文献1には、ポリイミドやポリベンゾイミダゾールは高分子材料としては最高レベルの耐熱性、強度、化学安定性を持ち、耐熱性繊維、成形品、塗工用ワニス等として様々な分野で使用されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】日本ポリイミド・芳香族系高分子研究会編、「新訂最新ポリイミド-基礎と応用-」、株式会社エヌ・ティー・エス、2010年8月25日発行、222~230頁
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-208699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、架橋することにより、高温で、なおかつ、幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、架橋することにより、優れた耐熱性を有する架橋物を得ることができるアミド化合物を提供することを目的とする。
また、本開示では、架橋することにより、高温で、なおかつ、幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、架橋することにより、優れた耐熱性を有する架橋物を得ることができる含窒素複素環含有化合物を提供することを目的とする。
また、本開示では、高温で、なおかつ、幅広い温度範囲でエラストマー特性を示すとともに、優れた耐熱性を有する架橋物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、式(1)で示される繰り返し単位、および、分子末端に式(2)で示される架橋部位を有するアミド化合物が提供される。
【0007】
式(1):
【化1】
(式(1)中、
Rfは2価のフッ素化有機基、
Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、
Aはアミド結合、
Yは、独立に、-CORまたは-NHR
は、独立に、OH、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族オキシ基、または、ハロゲン原子、
は、独立に、Hまたは1価の有機基
を表す。)
【0008】
式(2):
-C≡CX
(式(2)中、Xは、Hまたは1価の有機基を表す。)
【0009】
式(1)で示される繰り返し単位の平均重合度が2~10であることが好ましい。
【0010】
式(1)で示される繰り返し単位が、式(1a)で示される繰り返し単位であることが好ましい。
式(1a):
【化2】
(式(1a)中、Rfは2価のフッ素化有機基、Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、Rは、独立に、OH、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族オキシ基、または、ハロゲン原子を表す。)
【0011】
式(1)で示される繰り返し単位が、式(1b)で示される繰り返し単位であることが好ましい。
式(1b):
【化3】
(式(1b)中、Rfは2価のフッ素化有機基、Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、Rは、独立に、Hまたは1価の有機基を表す。)
【0012】
Rfが、炭素数4以上のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0013】
また、本開示によれば、式(3)で示される繰り返し単位、および、分子末端に式(2)で示される架橋部位を有する含窒素複素環含有化合物が提供される。
【0014】
式(3):
【化4】
(式(3)中、
Rfは2価のフッ素化有機基、
Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、
環Cは置換基を有していてもよいイミド環またはベンゾイミダゾール環を表す。)
【0015】
式(2):
-C≡CX
(式(2)中、Xは、Hまたは1価の有機基を表す。)
【0016】
式(3)で示される繰り返し単位の平均重合度が2~10であることが好ましい。
式(3)で示される繰り返し単位が、式(3a)で示される繰り返し単位であることが好ましい。
式(3a):
【化5】
(式(3a)中、Rfは2価のフッ素化有機基、Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基を表す。)
【0017】
式(3)で示される繰り返し単位が、式(3b)で示される繰り返し単位であることが好ましい。
式(3b):
【化6】
(式(3b)中、Rfは2価のフッ素化有機基、Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、Rは、独立に、Hまたは1価の有機基を表す。)
【0018】
Rfが、炭素数4以上のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0019】
また、本開示によれば、上記のアミド化合物、または、上記の含窒素複素環含有化合物を含有する接着剤が提供される。
また、本開示によれば、上記のアミド化合物、または、上記の含窒素複素環含有化合物を含有する塗料が提供される。
また、本開示によれば、上記のアミド化合物、または、上記の含窒素複素環含有化合物を架橋することにより得られる架橋物が提供される。
上記の架橋物は、半導体製造装置に用いる部材として好適に利用できる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、架橋することにより、高温で、なおかつ、幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、架橋することにより、優れた耐熱性を有する架橋物を得ることができるアミド化合物を提供することができる。
また、本開示によれば、架橋することにより、高温で、なおかつ、幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、架橋することにより、優れた耐熱性を有する架橋物を得ることができる含窒素複素環含有化合物を提供することができる。
また、本開示によれば、高温で、なおかつ、幅広い温度範囲でエラストマー特性を示すとともに、優れた耐熱性を有する架橋物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
<アミド化合物>
本開示のアミド化合物は、式(1)で示される繰り返し単位、および、分子末端に式(2)で示される架橋部位を有する。
【0023】
式(1):
【化7】
(式(1)中、
Rfは2価のフッ素化有機基、
Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、
Aはアミド結合、
Yは、独立に、-CORまたは-NHR
は、独立に、OH、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族オキシ基、または、ハロゲン原子、
は、独立に、Hまたは1価の有機基
を表す。)
【0024】
Rfは、2価のフッ素化有機基を表す。上記フッ素化有機基は、1つ以上のフッ素原子を有する2価の有機基である。Rfとしては、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、直鎖状もしくは分岐鎖状のフッ素化アルキレン基、または、直鎖状もしくは分岐鎖状のフッ素化(ポリ)オキシアルキレン基が好ましく、直鎖状もしくは分岐鎖状のフッ素化アルキレン基がより好ましい。
【0025】
上記フッ素化アルキレン基は、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。上記パーフルオロアルキレン基とは、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたアルキレン基であり、分子中に炭素原子-水素原子結合を含まないアルキレン基である。
【0026】
上記フッ素化アルキレン基の炭素数は、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、好ましくは1~80であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは3以上であり、特に好ましくは4以上であり、最も好ましくは5以上であり、より好ましくは60以下であり、さらに好ましくは40以下であり、特に好ましくは20以下であり、最も好ましくは10以下である。上記フッ素化アルキレン基の炭素数は、4、6または8であってよく、6または8であってもよい。
【0027】
上記フッ素化アルキレン基としては、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、-CRf -(式中、Rfは、独立に、F、炭素数1~8の直鎖状もしくは分岐鎖状のフッ素化アルキル基、または、炭素数1~8の直鎖状もしくは分岐鎖状のフッ素化アルコキシ基)で示される単位を含むことが好ましい。上記フッ素化アルキレン基としては、-CF-、-CF(CF)-、-C(CF-、-CF(OCF)-、-CF(OC)-、または、-CF(OC)-で示される単位を含むことがより好ましく、-CF-、-CF(CF)-、-CF(OCF)-、-CF(OC)-、または、-CF(OC)-で示される単位を含むことがさらに好ましく、-CF-で示される単位を含むことが特に好ましい。
【0028】
上記フッ素化アルキレン基としては、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、-(CF-CF-、-(CF-CF(CF))-、-(CF-CF(OCF))-、-(CF-CF(OC))-、または、-(CF-CF(OC))-(各式中、nは1~8の整数を表す)で示される基が好ましく、-(CF-CF-で示される基がより好ましい。nとしては、得られる架橋物のエラストマー特性、耐熱性、接着性の観点から、好ましくは2以上の整数であり、より好ましくは2~4の整数であり、さらに好ましくは3または4である。
【0029】
上記フッ素化(ポリ)オキシアルキレン基には、フッ素化オキシアルキレン基およびフッ素化ポリオキシアルキレン基が含まれる。上記フッ素化ポリオキシアルキレン基とは、2以上のフッ素化オキシアルキレン基が結合した基である。
【0030】
上記フッ素化(ポリ)オキシアルキレン基としては、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、パーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基が好ましい。上記パーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基とは、全ての水素原子がフッ素原子に置換された(ポリ)オキシアルキレン基であり、分子中に炭素原子-水素原子結合を含まない(ポリ)オキシアルキレン基である。
【0031】
上記フッ素化(ポリ)オキシアルキレン基の炭素数は、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、好ましくは1~80であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは3以上であり、より好ましくは60以下であり、さらに好ましくは40以下であり、特に好ましくは20以下である。上記フッ素化オキシアルキレン基の炭素数は、4、6または8であってよい。
【0032】
上記フッ素化(ポリ)オキシアルキレン基としては、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、-O-CRf -(式中、Rfは、独立に、F、炭素数1~8の直鎖状もしくは分岐鎖状のフッ素化アルキル基、または、炭素数1~8の直鎖状もしくは分岐鎖状のフッ素化アルコキシ基)で示される単位を含むことが好ましい。上記フッ素化(ポリ)オキシアルキレン基としては、-O-CF-、-O-CF(CF)-、-O-CF(OCF)-、-O-CF(OC)-、または、-O-CF(OC)-で示される単位を含むことがより好ましい。
【0033】
上記フッ素化(ポリ)オキシアルキレン基としては、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、-(O-CF-CF-、-(O-CF-CF(CF))-、-(O-CF-CF(OCF))-、-(O-CF-CF(OC))-、または、-(O-CF-CF(OC))-(各式中、nは1~8の整数を表す)で示される基であることが好ましい。nとしては、得られる架橋物のエラストマー特性、耐熱性、接着性の観点から、好ましくは2以上の整数であり、より好ましくは2~4の整数である。
【0034】
Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基を表す。Rfとしては、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、-O-または2価のフッ素化有機基が好ましく、2価のフッ素化有機基がより好ましい。
【0035】
上記非フッ素化有機基は、フッ素原子を有しない2価の有機基である。上記非フッ素化有機基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状の非フッ素化アルキレン基または2価の非フッ素化アリール基が好ましい。
【0036】
上記フッ素化有機基は、1つ以上のフッ素原子を有する2価の有機基である。Rfとしては、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、直鎖状もしくは分岐鎖状のフッ素化アルキレン基が好ましい。
【0037】
上記フッ素化アルキレン基は、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0038】
上記フッ素化アルキレン基の炭素数は、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、好ましくは1~15であり、より好ましくは2以上であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下である。
【0039】
上記フッ素化アルキレン基としては、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、-C(CF-が好ましい。
【0040】
は、独立に、OH、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族オキシ基、または、ハロゲン原子である。
【0041】
としてのアルコキシ基の炭素数は、好ましくは1~12であり、より好ましくは1~6である。
【0042】
としてのアルコキシ基および芳香族オキシ基が有し得る置換基としては、アルコキシ基、アルキル基、フッ素化アルキル基、ハロ基(ハロゲン原子)、ニトロ基、シアノ基またはエステル基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
【0043】
としての芳香族オキシ基としては、置換基を有していないフェノキシ基、置換基を有していてもよいトリアジニルオキシ基等が挙げられる。
【0044】
としては、独立に、OH、置換基を有していないフェノキシ基、メトキシ基、エトキシ基、塩素原子、または、
【化8】
が好ましい。
【0045】
は、独立に、Hまたは1価の有機基である。1価の有機基は、炭素原子を含有する1価の基、または、有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基である。上記1価の有機基としては、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族基等が挙げられる。
【0046】
上記1価の有機基の具体例としては、-CH、-C、-C等の炭素数1~10、特に1~6の低級アルキル基;-CF、-C、-CHF、-CHCF、-CH等の炭素数1~10、特に1~6のフッ素原子含有低級アルキル基;(置換基を有していない)フェニル基;(置換基を有していない)ベンジル基;-C、-CH等のフッ素原子で1~5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基;-C5-n(CF、-CH5-n(CF(nは1~5の整数)等の-CFで1~5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基が挙げられる。
【0047】
としては、独立に、Hまたは置換基を有していてもよい芳香族基が好ましく、Hまたは置換基を有していてもよいフェニル基がより好ましく、H、置換基を有していないフェニル基または炭素数1~10のフッ素原子含有アルキル基で置換されたフェニル基がさらに好ましい。
【0048】
としては、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、置換基を有していないフェニル基または炭素数1~10のフッ素原子含有アルキル基で置換されたフェニル基が好ましい。
【0049】
本開示のアミド化合物は、上記の繰り返し単位を有することに加えて、分子末端に架橋部位を有する。したがって、本開示のアミド化合物は架橋性を有しており、本開示のアミド化合物を架橋することにより、架橋物が得られる。本開示のアミド化合物がこのような構造を有することによって、本開示のアミド化合物を架橋させることにより得られる架橋物は、高温で、なおかつ、幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す。また、本開示のアミド化合物がこのような構造を有することによって、本開示のアミド化合物を架橋させることにより得られる架橋物は、優れた耐熱性を有しており、基材と強固に接着する。
【0050】
本開示のアミド化合物は、架橋部位を分子末端に有する。分子末端とは、式(1)で示される繰り返し単位を含む鎖の末端である。したがって、分子末端は、通常2個である。本開示のアミド化合物は、分子末端の2個の主鎖末端の一方または両方に架橋部位を有することができ、得られる架橋物のエラストマー特性、耐熱性、接着性の観点から、2個の主鎖末端の両方に架橋部位を有することが好ましい。また、本開示のアミド化合物は、化合物が有するすべての分子末端に架橋部位を有することが好ましい。
【0051】
本開示のアミド化合物が有する架橋部位は、式(2)で示される。
式(2):
-C≡CX
(式(2)中、Xは、Hまたは1価の有機基を表す。)
【0052】
は、Hまたは1価の有機基である。1価の有機基は、炭素原子を含有する1価の基、または、有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基である。上記1価の有機基としては、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族基等が挙げられる。
【0053】
上記1価の有機基の具体例としては、-CH、-C、-C等の炭素数1~10、特に1~6の低級アルキル基;-CF、-C、-CHF、-CHCF、-CH等の炭素数1~10、特に1~6のフッ素原子含有低級アルキル基;(置換基を有していない)フェニル基;(置換基を有していない)ベンジル基;-C、-CH等のフッ素原子で1~5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基;-C5-n(CF、-CH5-n(CF(nは1~5の整数)等の-CFで1~5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基が挙げられる。
【0054】
としては、独立に、Hまたは置換基を有していてもよい芳香族基が好ましく、Hまたは置換基を有していてもよいフェニル基がより好ましく、H、置換基を有していないフェニル基または炭素数1~10のフッ素原子含有アルキル基で置換されたフェニル基がさらに好ましい。
【0055】
としては、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られることから、置換基を有していないフェニル基または炭素数1~10のフッ素原子含有アルキル基で置換されたフェニル基が好ましく、置換基を有していないフェニル基がより好ましい。
【0056】
式(2)で示される架橋部位は、アミド結合を介して、式(1)で示される繰り返し単位を含む鎖と結合することができる。本開示のアミド化合物としては、たとえば、以下のいずれかの式で表される化合物が挙げられる。
【化9】
(式中、Rf、Rf、AおよびYは、式(1)と同様である。Xは、式(2)と同様である。Lは連結基、nは、式(1)で示される繰り返し単位の平均重合度を表す。)
【0057】
連結基Lとしては、単結合、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基などが挙げられ、なかでも、置換基を有していてもよいアリーレン基が好ましい。置換基としては、-CORまたは-NHR(RおよびRは、上記したとおり)が好ましい。
【0058】
このような架橋部位を含む構造は、式(2)で示される架橋部位を有する化合物(たとえば後述する化合物(6))により、式(1)で示される繰り返し単位を含む鎖の末端を修飾することにより、形成させることができる。
【0059】
式(1)で示される繰り返し単位としては、式(1a)で示される繰り返し単位が好ましい。
式(1a):
【化10】
(式(1a)中、Rf、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0060】
式(1a)で示される繰り返し単位を含有するアミド化合物としては、たとえば、以下の式で表される化合物が挙げられる。
【化11】
(式中、Rf、RfおよびRは、式(1)と同様である。Xは、式(2)と同様である。Lは連結基、nは、式(1a)で示される繰り返し単位の平均重合度を表す。)
【0061】
式(1)で示される繰り返し単位として、式(1a)で示される繰り返し単位を含有するアミド化合物は、式(3a)で示される繰り返し単位を有する含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)の前駆体として、好適に利用できる。また、式(1a)で示される繰り返し単位を含有するアミド化合物を熱架橋することにより、後述する架橋物が得られ、得られる架橋物は、高温で、なおかつ、幅広い温度範囲でエラストマー特性を示すとともに、優れた耐熱性を有しており、基材と強固に接着する。
【0062】
式(1a)中のRf、RfおよびRは、式(1)と同様であり、式(1)と同様の好適な構成とすることにより、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られる。
【0063】
また、式(1)で示される繰り返し単位としては、式(1b)で示される繰り返し単位が好ましい。
式(1b):
【化12】
(式(1b)中、Rf、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0064】
式(1b)で示される繰り返し単位を含有するアミド化合物としては、たとえば、以下の式で表される化合物が挙げられる。
【化13】
(式中、Rf、RfおよびRは、式(1)と同様である。Xは、式(2)と同様である。Lは連結基、nは、式(1b)で示される繰り返し単位の平均重合度を表す。)
【0065】
式(1)で示される繰り返し単位として、式(1b)で示される繰り返し単位を含有するアミド化合物は、式(3b)で示される繰り返し単位を有する含窒素複素環含有化合物(ベンゾイミダゾール化合物)の前駆体として、好適に利用できる。また、式(1b)で示される繰り返し単位を含有するアミド化合物を熱架橋することにより、後述する架橋物が得られ、得られる架橋物は、高温で、なおかつ、幅広い温度範囲でエラストマー特性を示すとともに、優れた耐熱性を有しており、基材と強固に接着する。
【0066】
式(1b)中のRf、RfおよびRは、式(1)と同様であり、式(1)と同様の好適な構成とすることにより、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られる。
【0067】
本開示のアミド化合物のガラス転移温度は、好ましくは100℃~300℃であり、より好ましくは100℃~250℃である。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により、測定する値である。
【0068】
本開示のアミド化合物において、式(1)で示される繰り返し単位の平均重合度としては、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、さらに好ましくは4以下であり、2以上であってよく、3以上であってもよい。平均重合度は、本開示のアミド化合物を合成するときのモノマーのモル比およびアミド化合物の数平均分子量から求められる。
架橋後に優れた特性が得られることから、アミド化合物としては、平均重合度が比較的小さいオリゴマーが好ましいが、たとえば、平均重合度が10超のポリマーであってもよい。
【0069】
本開示のアミド化合物の数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で、好ましくは1000以上であり、より好ましくは3000以上であり、好ましくは10000以下であり、より好ましくは5000以下である。
【0070】
本開示のアミド化合物の分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは2以上であり、好ましくは4以下である。
【0071】
本開示のアミド化合物の対数粘度ηinh(dL/g)は、好ましくは0.1dL/g以上であり、好ましくは0.5dL/g以下である。対数粘度ηinh(dL/g)は、溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)にアミド化合物を溶解させて、溶液濃度0.5g/dLの溶液を調製し、得られた溶液の30℃での溶液粘度を測定し、以下の式により算出できる。
対数粘度ηinh=ln(溶液粘度/溶媒粘度)/溶液濃度
【0072】
本開示のアミド化合物は、後述する式(3)で示される繰り返し単位を有する含窒素複素環含有化合物の前駆体として、好適に利用できる。また、本開示のアミド化合物を熱架橋することにより、後述する架橋物を得ることができる。
【0073】
<含窒素複素環含有化合物>
本開示の含窒素複素環含有化合物は、式(3)で示される繰り返し単位、および、分子末端に式(2)で示される架橋部位を有する。
式(3):
【化14】
(式(3)中、RfおよびRfは、式(1)と同様であり、環Cは置換基を有していてもよいイミド環またはベンゾイミダゾール環を表す。)
式(2):
-C≡CX
(式(2)中、Xは上記したとおり。)
【0074】
RfおよびRfは、式(1)と同様である。RfおよびRfを、式(1)と同様の好適な構成とすることにより、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られる。
【0075】
環Cは、置換基を有していてもよいイミド環またはベンゾイミダゾール環である。イミド環は置換基を有していないことが好ましい。ベンゾイミダゾール環は、置換基を有していなくても、置換基を有していてもよい。ベンゾイミダゾールが有し得る置換基としては、1価の有機基が挙げられ、式(1)のRとして説明した基が好ましい。
【0076】
本開示の含窒素複素環含有化合物は、上記の繰り返し単位を有することに加えて、分子末端に架橋部位を有する。したがって、本開示の含窒素複素環含有化合物は架橋性を有しており、本開示の含窒素複素環含有化合物を架橋することにより、架橋物が得られる。本開示の含窒素複素環含有化合物がこのような構造を有することによって、本開示の含窒素複素環含有化合物を架橋させることにより得られる架橋物は、高温で、なおかつ、幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す。また、本開示の含窒素複素環含有化合物がこのような構造を有することによって、本開示の含窒素複素環含有化合物を架橋させることにより得られる架橋物は、優れた耐熱性を有しており、基材と強固に接着する。
【0077】
本開示の含窒素複素環含有化合物は、架橋部位を分子末端に有する。分子末端とは、式(3)で示される繰り返し単位を含む鎖の末端である。したがって、分子末端は、通常2個である。本開示の含窒素複素環含有化合物は、分子末端の2個の主鎖末端の一方または両方に架橋部位を有することができ、得られる架橋物のエラストマー特性、耐熱性、接着性の観点から、2個の主鎖末端の両方に架橋部位を有することが好ましい。また、本開示の含窒素複素環含有化合物は、化合物が有するすべての分子末端に架橋部位を有することが好ましい。
【0078】
本開示の含窒素複素環含有化合物が有する架橋部位は、式(2)で示される。本開示の含窒素複素環含有化合物が有する式(2)で示される架橋部位は、本開示のアミド化合物が有する架橋部位と同様である。本開示の含窒素複素環含有化合物が有する式(2)で示される架橋部位を、本開示のアミド化合物と同様の好適な構成とすることにより、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られる。
【0079】
式(2)で示される架橋部位は、イミド環を介して、式(3)で示される繰り返し単位を含む鎖と結合することができる。本開示の含窒素複素環含有化合物としては、たとえば、以下のいずれかの式で表される化合物が挙げられる。
【化15】
(式中、Rf、RfおよびYは、式(1)と同様であり、環Cは、式(3)と同様であり、Xは、式(2)と同様である。nは、式(3)で示される繰り返し単位の平均重合度を表す。)
【0080】
このような架橋部位を含む構造は、式(2)で示される架橋部位を有する化合物(たとえば後述する化合物(6))により、式(3)で示される繰り返し単位を含む鎖の末端を修飾することにより、形成させることができる。
【0081】
式(3)で示される繰り返し単位としては、式(3a)で示される繰り返し単位が好ましい。
式(3a):
【化16】
(式(3a)中、RfおよびRfは、式(1)と同様である。)
【0082】
式(3a)で示される繰り返し単位を含有する含窒素複素環含有化合物としては、たとえば、以下の式で表される化合物が挙げられる。
【化17】
(式中、RfおよびRfは、式(1)と同様である。Xは、式(2)と同様である。nは、式(3a)で示される繰り返し単位の平均重合度を表す。)
【0083】
式(3)で示される繰り返し単位として、式(3a)で示される繰り返し単位を含有する含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)を架橋することにより、後述する架橋物が得られ、得られる架橋物は、高温で、なおかつ、幅広い温度範囲でエラストマー特性を示すとともに、優れた耐熱性を有しており、基材と強固に接着する。
【0084】
式(3a)中のRfおよびRfは、式(1)と同様であり、式(1)と同様の好適な構成とすることにより、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られる。
【0085】
また、式(3)で示される繰り返し単位としては、式(3b)で示される繰り返し単位が好ましい。
式(3b):
【化18】
(式(3b)中、Rf、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0086】
式(3b)で示される繰り返し単位を含有する含窒素複素環含有化合物としては、たとえば、以下の式で表される化合物が挙げられる。
【化19】
(式中、Rf、Rf、RおよびYは、式(1)と同様である。Xは、式(2)と同様である。nは、式(3b)で示される繰り返し単位の平均重合度を表す。)
【0087】
式(3)で示される繰り返し単位として、式(3b)で示される繰り返し単位を含有する含窒素複素環含有化合物(ベンゾイミダゾール化合物)を架橋することにより、後述する架橋物が得られ、得られる架橋物は、高温で、なおかつ、幅広い温度範囲でエラストマー特性を示すとともに、優れた耐熱性を有しており、基材と強固に接着する。
【0088】
式(3b)中のRf、RfおよびRは、式(1)と同様であり、式(1)と同様の好適な構成とすることにより、より一層高温で、なおかつ、より一層幅広い温度範囲でエラストマー特性を示す架橋物を得ることができるとともに、より一層優れた耐熱性を有しており、基材とより一層強固に接着する架橋物が得られる。
【0089】
式(3b)で示される繰り返し単位としては、より一層優れた耐熱性を示し、基材とより一層強固に接着する含窒素複素環含有化合物が得られることから、式(3b-1)または式(3b-2)で示される繰り返し単位が好ましい。
【0090】
式(3b-1)
【化20】
(式(3b-1)中、Rf、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0091】
式(3b-2)
【化21】
(式(3b-2)中、Rf、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0092】
本開示の含窒素複素環含有化合物のガラス転移温度は、好ましくは80℃~250℃であり、より好ましくは100℃~200℃である。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により、測定する値である。
【0093】
本開示の含窒素複素環含有化合物において、式(3)で示される繰り返し単位の平均重合度としては、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、さらに好ましくは4以下であり、2以上であってよく、3以上であってもよい。平均重合度は、本開示の含窒素複素環含有化合物の仕込みモル比および数平均分子量から求められる。
架橋後に優れた特性が得られることから、含窒素複素環含有化合物としては、平均重合度が比較的小さいオリゴマーが好ましいが、たとえば、平均重合度が10超のポリマーであってもよい。
【0094】
本開示の含窒素複素環含有化合物の数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で、好ましくは1000以上であり、より好ましくは3000以上であり、好ましくは10000以下であり、より好ましくは5000以下である。
【0095】
本開示の含窒素複素環含有化合物の分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは2以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは4以下である。
【0096】
本開示の含窒素複素環含有化合物の対数粘度ηinh(dL/g)は、好ましくは0.1dL/g以上であり、好ましくは0.5dL/g以下である。対数粘度ηinh(dL/g)は、溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に含窒素複素環含有化合物を溶解させて、溶液濃度0.5g/dLの溶液を調製し、得られた溶液の30℃での溶液粘度を測定し、以下の式により算出できる。
対数粘度ηinh=ln(溶液粘度/溶媒粘度)/溶液濃度
【0097】
本開示の含窒素複素環含有化合物を架橋することにより、後述する架橋物を得ることができる。
【0098】
<架橋物>
アミド化合物または含窒素複素環含有化合物を架橋することにより、本開示の架橋物を得ることができる。たとえば、アミド化合物または含窒素複素環含有化合物を加熱することによって、3つの分子の各々の末端に位置する3つの架橋部位がお互いに反応して環を形成し、架橋物が形成されると推測される。アミド化合物または含窒素複素環含有化合物が有する繰り返し単位により形成される骨格、および、架橋により形成される架橋構造によって、本開示の架橋物は、高温で、なおかつ、幅広い温度範囲でエラストマー特性を示すとともに、優れた耐熱性を有しており、基材と強固に接着する。
【0099】
本開示において、エラストマー特性(ゴム特性)とは、架橋物を延伸することができ、架橋物を延伸するのに必要とされる力がもはや適用されなくなったときに、その元の長さを保持できる特性を意味する。エラストマー特性は、架橋物の動的粘弾性測定(DMA)によってDMA曲線を得て、貯蔵弾性率(E’)の温度依存性を評価することにより確認できる。
【0100】
本開示の架橋物は、充填剤を含有してもよい。充填剤としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどのイミド構造を有するイミド系フィラー、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリオキシベンゾエートなどのエンジニアリングプラスチック製の有機物フィラー、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウムなどの金属酸化物フィラー、炭化ケイ素、炭化アルミニウムなどの金属炭化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物フィラー、フッ化アルミニウム、フッ化カーボン、硫酸バリウム、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルクなどの無機物フィラーがあげられる。
【0101】
これらの中でも、各種プラズマの遮蔽効果の点から、カーボンブラック、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ケイ素、ポリイミド、フッ化カーボンが好ましい。
【0102】
また、上記無機物フィラー、有機物フィラーを単独で、または2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0103】
架橋物における充填剤の含有量は、アミド化合物および含窒素複素環含有化合物の合計100質量部に対して、好ましくは0.5~100質量部、より好ましくは5~50質量部である。
【0104】
また、本開示の架橋物は、必要に応じてゴムに配合される通常の添加物、たとえば加工助剤、可塑剤、着色剤などを含有してもよい。
【0105】
<アミド化合物の製造方法>
本開示のアミド化合物は、式(4)で示される化合物(4)と、式(5)で示される化合物(5)とを重合させることにより、式(1)で示される繰り返し単位を有する化合物を得た後、得られた化合物の分子末端の基Yと、式(6)で示される化合物(6)とを反応させて、式(2)で示される架橋部位を分子末端に導入する製造方法により、好適に製造することができる。
【0106】
式(4):
【化22】
(式(4)中、RfおよびYは、式(1)と同様である。)
【0107】
式(5):
【化23】
(式(5)中、RfおよびYは、式(1)と同様である。ただし、式(4)中のYが-CORである場合は、式(5)中のYは-NHRである。また、式(4)中のYが-NHRである場合は、式(5)中のYは-CORである。また、式(5)中のYが-CORである場合は、隣接する2つのYが酸無水物結合(-CO-O-CO-)を介してお互いに結合することにより、2つのYが結合する2つの炭素原子とともに、環を形成してもよい。RおよびRは、式(1)と同様である。)
【0108】
式(6):R-C≡CX
(式(6)中、Rは、化合物(4)と化合物(5)とを重合することにより得られる化合物の分子末端の基Yと反応し得る反応性基を有する1価の有機基、Xは式(2)と同様である。)
【0109】
化合物(4)および化合物(5)としては、化合物(4)が一般式(4a)で示される化合物(4a)であり、化合物(5)が一般式(5a)で示される化合物(5a)であるか、または、化合物(4)が一般式(4b)で示される化合物(4b)であり、化合物(5)が一般式(5b)で示される化合物(5b)であることが好ましい。化合物(4a)と化合物(5a)とを重合させることにより、式(1a)で示される繰り返し単位を有するアミド化合物が得られる。また、化合物(4b)と化合物(5b)とを重合させることにより、式(1b)で示される繰り返し単位を有するアミド化合物が得られる。
【0110】
一般式(4a):
【化24】
(式(4a)中、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0111】
一般式(5a):
【化25】
(式(5a)中、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0112】
一般式(4b):
【化26】
(式(4b)中、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0113】
一般式(5b):
【化27】
(式(5b)中、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0114】
化合物(4)と化合物(5)との重合は、溶媒中で行うことができる。溶媒は化合物(4)および化合物(5)と実質的に反応せず、かつ、化合物(4)および化合物(5)を良好に溶解させる性質を有する他、化合物(4)と化合物(5)とを重合することにより得られる化合物に対して良溶媒であることが望ましい。このような溶媒としては、特に限定はされないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリドン(DMI)、スルホラン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンなどがあげられる。中でも、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリドン(DMI)が好ましい。これら溶媒の使用量は、化合物(4)または化合物(5)の0.1モルに対して通常10~1000mL、好ましくは50~400mLである。
【0115】
重合は、添加剤の存在下に実施することもできる。例えば、分子量の大きな化合物を得るために、塩化リチウムや塩化カルシウム等の無機塩類を添加してもよい。添加剤としては、なかでも塩化リチウムが好ましい。添加剤の添加量は、溶媒量に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0116】
重合は、例えば、化合物(4)および化合物(5)のいずれか一方を溶媒に溶解させ、得られた溶液に他方の化合物を添加し、次いで窒素等の不活性雰囲気下で撹枠しながら反応させることにより、行うことができる。重合温度としては、-50~150℃が好ましく、0~100℃がより好ましく、35~80℃がさらに好ましい。重合時間としては、0.1~50時間が好ましく、1~24時間がより好ましい。
【0117】
式(1)で示される繰り返し単位の平均重合度は、化合物(4)と化合物(5)とのモル比、重合溶液濃度、重合温度、重合時間などを変化させることによって、調整することができる。
【0118】
重合終了後、反応混合物をメタノールや水等の貧溶媒に投じて重合体を分離した後、再沈殿法によって精製を行って副生成物や無機塩類等を除去することにより、純度の高い化合物を得てもよい。
【0119】
次に、得られた化合物と、式(6)で示される化合物とを反応させて、化合物の分子末端に式(2)で示される架橋部位を導入する。式(6)で示される化合物は、得られる化合物の分子末端の基Yと反応し得る反応性基を有する1価の有機基Rを有しており、得られた化合物の分子末端の基Yと、有機基R中の反応性基が反応し、化合物(4)と化合物(5)とを重合することにより得られた化合物に式(6)で示される化合物が付加される。
【0120】
式(6)におけるRが有する反応性基としては、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基などが挙げられる。得られた化合物の分子末端の基Yが-CORである場合は、式(6)におけるRが有する反応性基は-NHRであることが好ましい。また、得られた化合物の分子末端の基Yが-NHRである場合は、式(6)におけるRが有する反応性基は-CORまたは酸無水物基(-CO-O-CO-)であることが好ましい。RおよびRは、式(1)と同様である。
【0121】
化合物(6)としては、4-フェニルエチニルフタル酸無水物(PEPA)、プロパルギルアルコール、フェニルプロパルギルアルコール、プロパルギルアミン、フェニルエチニルアニリン、エチニルアニリンなどが挙げられる。
【0122】
化合物(6)の使用量は、化合物(4)と化合物(5)とを重合することにより得られる化合物が有する分子末端の基Yの当量に合わせて調整すればよい。たとえば、化合物(6)の使用量は、化合物(4)と化合物(5)とを重合することにより得られる化合物1モルに対して、2.0~2.5モルの範囲で使用することができる。
【0123】
化合物(4)と化合物(5)とを重合することにより得られる化合物と、化合物(6)との反応条件は、特に限定されない。反応温度としては、0~100℃が好ましく、20~80℃がより好ましい。反応時間としては、0.1~50時間が好ましく、1~24時間がより好ましい。
【0124】
反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、化合物(4)と化合物(5)とを重合することにより得られる化合物を溶解できる溶媒が好ましい。このような溶媒としては、特に限定はされないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリドン(DMI)、スルホラン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンなどがあげられる。中でも、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリドン(DMI)が好ましい。これら溶媒の使用量は、化合物0.1モルに対して通常10~1000mL、好ましくは50~400mLである。
【0125】
反応終了後、反応混合物をメタノールや水等の貧溶媒に投じてアミド化合物を分離した後、再沈殿法によって精製を行って副生成物や無機塩類等を除去することにより、純度の高いアミド化合物を得てもよい。
【0126】
化合物(4a)のうち、式(4a-1)で示される化合物(4a-1)は新規化合物である。
【0127】
式(4a-1):
【化28】
(式(4a-1)中、Rは、式(1)と同様である。)
【0128】
化合物(4a-1)は、式(7a)で示される化合物(7a)と、1,8-ジヨードパーフルオロオクタンとを反応させることにより製造することができる。
式(7a):
【化29】
(式(7a)中、Rは、式(1)と同様である。)
【0129】
化合物(7a)と1,8-ジヨードパーフルオロオクタンとの反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒は、化合物(7a)および1,8-ジヨードパーフルオロオクタンと実質的に反応せず、かつ、化合物(7a)および1,8-ジヨードパーフルオロオクタンを良好に溶解させる性質を有する他、得られる化合物(4a-1)に対して良溶媒であることが望ましい。このような溶媒としては、特に限定はされないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリドン(DMI)、スルホラン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンなどがあげられる。中でも、ジメチルスルホキシド(DMSO)が好ましい。これら溶媒の使用量は、化合物(7a)または1,8-ジヨードパーフルオロオクタンの0.1モルに対して通常10~1000mL、好ましくは50~400mLである。
【0130】
化合物(7a)と1,8-ジヨードパーフルオロオクタンとの反応は、たとえば、化合物(7a)および1,8-ジヨードパーフルオロオクタンのいずれか一方を溶媒に溶解させ、得られた溶液に他方の化合物を添加し、次いで窒素等の不活性雰囲気下で撹枠しながら反応させることにより、行うことができる。反応温度としては、50~150℃が好ましく、100~140℃がより好ましい。反応時間としては、1~50時間が好ましく、1~30時間がより好ましい。
【0131】
化合物(7a)と1,8-ジヨードパーフルオロオクタンとの反応は、銅化合物などの触媒の存在下に行っても良い。
【0132】
反応終了後、反応混合物をメタノールや水等の貧溶媒に投じて化合物(4a-1)を分離した後、再結晶法によって精製を行って副生成物や無機塩類等を除去することにより、純度の高い化合物(4a-1)を得てもよい。
【0133】
次に、化合物(4b)の製造方法を説明する。RがOHである化合物(4b)は、式(7b1)で示される化合物(7b1)と、式(7b2)で示される化合物(7b2)とを反応させることにより、式(8)で示される化合物(8)を得た後、得られた化合物(8)を酸化させることにより、製造することができる。
【0134】
式(7b1):
【化30】
【0135】
式(7b2):
I-Rf-I
(式(7)中、Rfは、式(1)と同様である。)
式(8):
【化31】
(式(8)中、Rfは、式(1)と同様である。)
【0136】
化合物(7b1)としては、4-ヨードトルエンまたは3-ヨードトルエンがより好ましい。
【0137】
さらに、RがOHである化合物(4b)と、式(9)で示される化合物(9)とを反応させることにより、所望のRで示される基(たとえば、アルコキシ基、芳香族オキシ基)を有する化合物(4b)を製造することができる。
式(9):
R-OH
(式(9)中、Rは、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基または置換基を有していてもよい芳香族基である。)
【0138】
また、RがOHである化合物(4b)と、ハロゲン化剤とを反応させることにより、Rがハロゲン原子である化合物(4b)を製造することができる。
【0139】
また、RがOHである化合物(4b)と、塩化トリアジン化合物とを反応させることにより、Rがトリアジニルオキシ基である化合物(4b)を製造することができる。
【0140】
化合物(7b1)と化合物(7b2)との反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒は、化合物(7b1)と化合物(7b2)と実質的に反応せず、かつ、化合物(7b1)と化合物(7b2)を良好に溶解させる性質を有する他、得られる化合物(8)に対して良溶媒であることが望ましい。このような溶媒としては、特に限定はされないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリドン(DMI)、スルホラン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンなどがあげられる。中でも、ジメチルスルホキシド(DMSO)が好ましい。これら溶媒の使用量は、化合物(7b1)と化合物(7b2)の0.1モルに対して通常10~1000mL、好ましくは50~400mLである。
【0141】
化合物(7b1)と化合物(7b2)との反応は、たとえば、化合物(7b1)と化合物(7b2)のいずれか一方を溶媒に溶解させ、得られた溶液に他方の化合物を添加し、次いで窒素等の不活性雰囲気下で撹枠しながら反応させることにより、行うことができる。反応温度としては、50~150℃が好ましく、100~140℃がより好ましい。反応時間としては、1~50時間が好ましく、1~30時間がより好ましい。
【0142】
化合物(7b1)と化合物(7b2)との反応は、銅、銅化合物などの触媒の存在下に行ってもよい。
【0143】
化合物(8)の酸化は、たとえば、CrO、KMnOなどの酸化剤を用いて行うことができる。また、化合物(8)の酸化は、硫酸、酢酸などの酸性化合物の存在下に行うことが好ましい。
【0144】
がOHである化合物(4b)と、ハロゲン化剤との反応に用いるハロゲン化剤としては、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リンなどが挙げられる。反応温度は、たとえば、20~100℃であってよい。化合物(4b)とハロゲン化剤との反応は、溶媒中で行うこともできる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテルが挙げられる。
【0145】
がOHである化合物(4b)と、塩化トリアジン化合物との反応は、N-メチルモルホリン(NMM)の存在下で、溶媒中で行うことができ、この反応により、トリアジン系活性ジエステルを合成することができる。溶媒は、化合物(4b)、塩化トリアジン化合物およびN-メチルモルホリン(NMM)と実質的に反応せず、かつ、化合物(4b)、塩化トリアジン化合物およびN-メチルモルホリン(NMM)を良好に溶解させる性質を有する他、得られるトリアジン系活性ジエステルに対して良溶媒であることが望ましい。このような溶媒としては、特に限定はされないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリドン(DMI)、スルホラン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンなどがあげられる。中でも、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が好ましい。これら溶媒の使用量は、化合物(4b)または塩化トリアジン化合物の0.1モルに対して通常10~1000mL、好ましくは50~400mLである。
【0146】
がOHである化合物(4b)と、塩化トリアジン化合物との反応は、たとえば、RがOHである化合物(4b)および塩化トリアジン化合物のいずれか一方を溶媒に溶解させ、得られた溶液に他方の化合物を添加し、次いで窒素等の不活性雰囲気下で撹枠しながら反応させることにより、行うことができる。反応温度としては、0~150℃が好ましく、50~150℃がより好ましく、100~140℃がさらに好ましい。反応時間としては、1~50時間が好ましく、1~30時間がより好ましい。
【0147】
<含窒素複素環含有化合物の製造方法>
本開示の含窒素複素環含有化合物は、上記の製造方法によりアミド化合物を得た後、アミド化合物を脱水環化させる製造方法により、好適に製造することができる。また、アミド化合物を製造する際に、化合物(4)と化合物(5)とを重合することにより得られる化合物と、化合物(6)との反応を加温状態で行った場合には、化合物の一部または全部が脱水環化して、式(3)で示される繰り返し単位を有する化合物が形成され、結果として、生成物の一部または全部として、本開示の含窒素複素環含有化合物が得られることがある。すなわち、本開示には、アミド化合物および含窒素複素環含有化合物の混合物も含まれる。
【0148】
アミド化合物の脱水環化は、アミド化合物を加熱することにより実施できる。脱水環化のための加熱の温度としては、架橋反応を進行させない温度であることが好ましい。脱水環化のための加熱の温度としては、110~290℃が好ましく、150~260℃がより好ましい。加熱の時間としては、0.1~10時間が好ましく、0.5~8時間がより好ましい。脱水環化は、大気中、窒素もしくはアルゴン雰囲気中または減圧下で実施できる。
【0149】
上記の製造方法によって、通常は、アミド化合物または含窒素複素環含有化合物の溶液が得られる。得られた溶液を各種の用途にそのまま用いてもよいし、得られた溶液をメタノールや水等の貧溶媒に投じて含窒素複素環含有化合物を分離した後、乾燥させて、含窒素複素環含有化合物の粉末を作製し、得られた粉末を用いてもよい。
【0150】
<架橋物の製造方法>
本開示の架橋物は、上記の製造方法によりアミド化合物または含窒素複素環含有化合物を得た後、アミド化合物または含窒素複素環含有化合物を架橋させる製造方法により、好適に製造することができる。架橋には、アミド化合物、含窒素複素環含有化合物、または、アミド化合物および含窒素複素環含有化合物の混合物を用いることができる。アミド化合物または混合物中のアミド化合物は、架橋と同時に脱水環化して、含窒素複素環含有化合物が架橋して得られる架橋物と同じ構造を有する架橋物を与える。
【0151】
本開示のアミド化合物は、熱架橋性アミド化合物であり、本開示の含窒素複素環含有化合物は、熱架橋性含窒素複素環化合物である。したがって、架橋は、アミド化合物または含窒素複素環含有化合物を加熱することにより実施できる。架橋のための加熱の温度としては、250~550℃が好ましく、320~400℃がより好ましい。加熱の時間としては、0.1~5時間が好ましく、0.5~4時間がより好ましい。架橋の際には、アミド化合物または含窒素複素環含有化合物の温度をゆっくりと上昇させるように、アミド化合物または含窒素複素環含有化合物を加熱してもよい。昇温速度は、1~10℃/分であってよい。たとえば、アミド化合物または含窒素複素環含有化合物を300~330℃に加熱した後、1~10℃/分の速度で、温度を30℃以上上昇させるように加熱してもよい。
【0152】
架橋前に、アミド化合物または含窒素複素環含有化合物を、所望の形状に成形してもよい。成形は、圧縮成形などの公知の方法により行うことができる。アミド化合物または含窒素複素環含有化合物を、加熱溶融させて成形してもよいし、アミド化合物または含窒素複素環含有化合物を含有する溶液を調製し、得られた溶液に基材を含浸させたり、得られた溶液を基材に塗布したりすることにより、成形してもよい。
【0153】
架橋の前に、アミド化合物または含窒素複素環含有化合物と、充填剤とを混合してもよい。これによって、充填剤を含有する架橋物を得ることができる。また、架橋の前に、アミド化合物または含窒素複素環含有化合物と、ゴムに配合される通常の添加物、たとえば、加工助剤、可塑剤、着色剤などとを混合してもよい。
【0154】
アミド化合物または含窒素複素環含有化合物と充填剤または添加物との混合には、通常のポリマー用加工機械、たとえば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、密閉式混合機などを用いることができる。
【0155】
本開示の架橋物は、高温で、なおかつ、幅広い温度範囲でエラストマー特性を示すことから、特に耐熱性が要求される半導体製造装置の部材、特に半導体製造装置のシール材として好適に使用できる。上記シール材としては、O-リング、角-リング、ガスケット、パッキン、オイルシール、ベアリングシール、リップシール等が挙げられる。
そのほか、半導体製造装置に使用される各種のポリマー製品、例えばダイヤフラム、チューブ、ホース、各種ゴムロール、ベルト等としても使用できる。また、コーティング用材料、ライニング用材料としても使用できる。
【0156】
なお、本開示でいう半導体製造装置は、特に半導体を製造するための装置に限られるものではなく、広く、液晶パネルやプラズマパネルを製造するための装置等、高度なクリーン度が要求される半導体分野において用いられる製造装置全般を含むものであり、例えば次のようなものを挙げることができる。
【0157】
(1)エッチング装置
ドライエッチング装置
プラズマエッチング装置
反応性イオンエッチング装置
反応性イオンビームエッチング装置
スパッタエッチング装置
イオンビームエッチング装置
ウェットエッチング装置
アッシング装置
(2)洗浄装置乾式エッチング洗浄装置
UV/O洗浄装置
イオンビーム洗浄装置
レーザービーム洗浄装置
プラズマ洗浄装置
ガスエッチング洗浄装置
抽出洗浄装置
ソックスレー抽出洗浄装置
高温高圧抽出洗浄装置
マイクロウェーブ抽出洗浄装置
超臨界抽出洗浄装置
(3)露光装置
ステッパー
コータ・デベロッパー
(4)研磨装置
CMP装置
(5)成膜装置
CVD装置
スパッタリング装置
(6)拡散・イオン注入装置
酸化拡散装置
イオン注入装置
【0158】
本開示の架橋物は、例えば、CVD装置、プラズマエッチング装置、反応性イオンエッチング装置、アッシング装置またはエキシマレーザー露光機のシール材として優れた性能を発揮する。
【0159】
また、本開示のアミド化合物または含窒素複素環含有化合物が溶媒中に溶解した溶液を塗料として用いることもできる。本開示のアミド化合物または含窒素複素環含有化合物は、優れた耐熱性を有しているとともに、基材との接着性に優れていることから、基材の表面のコーティングに好適に適用することができる。たとえば、本開示のアミド化合物または含窒素複素環含有化合物が溶媒中に溶解した溶液を基材の表面に塗布し、加熱乾燥させることによって、耐熱コーティングを形成することができる。
【0160】
基材としては、金属基材、ガラス基材、樹脂基材、ゴム基材などが挙げられ、特に高い接着性が得られることから、金属基材が好ましい。金属基材としては、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、真鍮などからなる基材が挙げられる。
【0161】
また、本開示のアミド化合物または含窒素複素環含有化合物に加えて、充填剤を含有する溶液を調製して基材に塗布してもよい。充填剤としては、上述したものが挙げられる。充填剤を用いることにより、耐熱コーティングの耐熱性、硬度、耐摩耗性などの各種物性を向上させることができる。
【0162】
本開示のアミド化合物または含窒素複素環含有化合物に加えて、他のポリマーを含有する溶液を調製して基材に塗布してもよい。他のポリマーとしては、耐熱性に優れたポリマーが好ましく、たとえば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミドなどが挙げられる。本開示のアミド化合物または含窒素複素環含有化合物の含有割合としては、たとえば、他のポリマー100質量部に対して、0.0001~10000質量部であってよい。
【0163】
また、本開示のアミド化合物または含窒素複素環含有化合物が溶媒中に溶解した溶液に繊維状基材を含浸させることにより、繊維強化複合材料を得ることもできる。
【0164】
また、本開示のアミド化合物または含窒素複素環含有化合物が溶媒中に溶解した溶液を、接着剤として用いることもできる。本開示のアミド化合物または含窒素複素環含有化合物を含有する接着剤を用いることにより、耐熱性に優れた接着層を形成できる。
【0165】
本開示のアミド化合物または含窒素複素環含有化合物を溶解させる溶媒としては、特に限定はされないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリドン(DMI)、スルホラン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンなどがあげられる。中でも、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリドン(DMI)が好ましい。
【0166】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例
【0167】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0168】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
(1)GPC:東ソー(株)製高速GPCシステムHLC-8220GPC(カラム:東ソーTSKgel(α-M)、カラム温度:45℃、検出器:UV-8020、波長254nm、溶離液:N-メチル-2-ピロリドン(NMP)(0.01mol/L臭化リチウムを含む。)、検量線:標準ポリスチレン、カラム流速:0.2mL/min)
(2)赤外スペクトル(FT-IR):日本分光(株)製FT/IR-4200
(3)核磁気共鳴スペクトル(NMR):BRUKER製AC400P
(4)熱重量測定(TGA):(株)日立ハイテクサイエンス製TG/DTA7300、昇温速度10℃/min
(5)示差走査熱量測定(DSC):(株)日立ハイテクサイエンス製DSC7000、昇温速度10℃/min
(6)熱機械分析(TMA):(株)日立ハイテクサイエンス製TMA7000、昇温速度10℃/min
(7)動的粘弾性測定(DMA):(株)日立ハイテクサイエンス製DMA7100、昇温速度2℃/min
(8)引張試験:(株)島津製作所製オートグラフAGS-D型、引張速度10mm/min
(9)誘電率測定:AET製誘電率・誘電正接測定装置(空洞共振器タイプ、20GHz)
【0169】
<合成例1>
1,6-ビス(4-アミノフェニル)ドデカフルオロヘキサン(APDF6)
【0170】
【化32】
【0171】
撹拌子、ジムロート冷却管、三方コックを取り付けた100mLナスフラスコに、4-ヨードアニリン(15g、69mmol)、DMSO(60mL)を入れ溶解させたのち、銅粉(21.6g、342mmol)を空気中で酸化しないように素早く入れ、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン(18.9g、33mmol)を潮解する前に素早く入れた。その後、120℃まで昇温し、120℃で24時間撹拌し反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、吸引ろ過をしてDMSO溶液を回収した。DMSO溶液から減圧蒸留により、DMSOを留去し粗生成物を得た。この粗生成物をジクロロメタンに溶解させ蒸留水で洗浄後、ジクロロメタン溶液を回収し無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥させた。エバポレータでジクロロメタンを留去して、黄色の粗生成物を得た。ヘキサンで再結晶を行い、室温で減圧乾燥した。メタノールに溶かし、活性炭で脱色処理を行った。メタノールを除去後、60℃で一晩減圧乾燥し、黄色粉末状のAPDF6(収量:10.8g、収率:65%)を得た。
【0172】
FT-IR、H-NMR、13C-NMR、19F-NMRおよび元素分析によって構造を確認した。
FT-IR(KBr、cm-1):3444(N-H)、3057(C-H)、1609(C=C)、1185(C-F)
H-NMR(DMSO-d、ppm):5.82(s,4H,NH)、6.62(d,4H,Ar-H)、7.20(d,4H,Ar-H)
13C-NMR(DMSO-d、ppm):113.0、127.6、152.4
19F-NMR(DMSO-d、ppm):-122.2、-121.5、-108.0
融点:79.4℃(DSC)
元素分析:計算値 C,44.64%;H,2.50%;N,5.78%
実測値 C,44.66%;H,2.72%;N,5.49%
【0173】
<合成例2>
1,8-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサデカフルオロオクタン(APHF8)
【0174】
【化33】
【0175】
撹拌子、ジムロート冷却管、三方コックを取り付けた100mLナスフラスコに、4-ヨードアニリン(7.5g、34mmol)、DMSO(20mL)を入れ溶解させたのち、銅粉(10g、172mmol)を空気中で酸化しないよう素早く入れ、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン(11.6g、17mmol)を潮解する前に素早く入れた。その後、120℃まで昇温し、120℃で24時間撹拌し反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、吸引ろ過をしてDMSO溶液を回収した。DMSO溶液から減圧蒸留により、DMSOを留去し粗生成物を得た。この粗生成物をジクロロメタンに溶解させ蒸留水で洗浄後、ジクロロメタン溶液を回収し無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥させた。エバポレータでジクロロメタンを留去して、8.4g(80%)の粗生成物を回収した。ヘキサンで再結晶を行い、室温で減圧乾燥した。メタノールに溶かし活性炭で脱色処理を行った。メタノールを除去して黄色粉末状のAPHF8(収量:5.9g、収率:58%)を得た。
【0176】
FT-IR、H-NMR、13C-NMR、および19F-NMRによって構造を確認した。
FT-IR(KBr、cm-1):3489~3392(N-H)、3050 (C-H)、1581(C=C)、1259~1145(C-F)
H-NMR(DMSO-d、ppm):5.86(s,4H,NH)、6.66(d,4H,Ar-H)、7.22(d,4H,Ar-H)
13C-NMR(DMSO-d、ppm):113.0、127.8、152.4
19F-NMR(DMSO-d、ppm):-121.7、-121.1、-107.5
融点:85.8℃(DSC)
元素分析:計算値 C,41.16%;H,2.08%;N,4.80%
実測値 C,41.23%;H,2.28%;N,4.85%
【0177】
<合成例3>
1,6-ビス(3-アミノフェニル)ドデカフルオロヘキサン(mAPDF6)
【0178】
【化34】
【0179】
撹拌子、ジムロート冷却管、三方コックを取り付けた100mLナスフラスコに、3-ヨードアニリン(5.0g、22.8mmol)、DMSO(20mL)を入れ溶解させたのち、銅粉(7.2g、114mmol)を空気中で酸化しないように素早く入れ、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン(6.3g、11.4mmol)を潮解する前に素早く入れた。その後、120℃まで昇温し、120℃で24時間撹拌し反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、吸引ろ過をしてDMSO溶液を回収した。DMSO溶液から減圧蒸留により、DMSOを留去し粗生成物を得た。この粗生成物をジクロロメタンに溶解させ蒸留水で洗浄後、ジクロロメタン溶液を回収し無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥させた。エバポレータでジクロロメタンを留去して、黄色の粗生成物を得た。メタノール/蒸留水の混合溶媒で再結晶を行い、60℃で減圧乾燥した。メタノールに溶かし、活性炭で脱色処理を行った。メタノールを除去後、60℃で一晩減圧乾燥し、黄色粉末状のmAPDF6(収量:3.0g、収率:54%)を得た。
【0180】
H-NMR、13C-NMR、19F-NMRおよび元素分析によって構造を確認した。
H-NMR(CDCl、ppm):3.81(s,4H,NH)、6.83(d,2H,Ar-H)、6.85(s,2H,Ar-H)、6.95(d,2H,Ar-H)、7.24(t,2H,Ar-H)
13C-NMR(CDCl、ppm):113.1、116.9、118.2、129.6,130.3,146.7
19F-NMR(CDCl、ppm):-121.9、-121.3、-110.7
融点:79.4℃(DSC)
元素分析:計算値 C,44.64%;H,2.50%;N,5.78%
実測値 C,44.75%;H,2.80%;N,5.52%
【0181】
<合成例4>
1,6-ビス(p-トリル)ドデカフルオロヘキサン(TDF6)
【0182】
【化35】
【0183】
攪拌子、冷却管、窒素導入管を取り付けた100mLの三口フラスコに、4-ヨードトルエン(8.72g、40mmol)とDMSO(20mL)を加えて溶解させた。次に、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン(11.08g、20mmol)と銅粉(12.69g、200mmol)を加え、段階的に120℃まで昇温して、120℃で24時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷し、吸引ろ過で銅粉を除去し、減圧蒸留でDMSOを留去した。得られた粗生成物をジエチルエーテル(100mL)に溶解させ、蒸留水で洗浄した。有機層を分取して無水硫酸ナトリウムで一晩脱水した。エバポレータでジエチルエーテルを留去することで、白色の生成物(TDF6)(収量:8.59g、収率:89%)を得た。
【0184】
得られた生成物の物性を以下に示す。
H-NMR(CDCl、ppm):2.34(s、6H、CH)、7.41(d、4H、Ar-H)、7.51(d、4H、Ar-H)
13C-NMR(CDCl、ppm):20.86、126.46、129.67,136.58,136.67,138.60,138.71,142.90
19F-NMR(CDCl、ppm):-109.72、-121.57、-122.13
【0185】
<合成例5>
1,6-ビス(4-カルボキシフェニル)ドデカフルオロヘキサン(CPDF6)
【0186】
【化36】
【0187】
攪拌子、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を取り付けた500mLの三口フラスコに、TDF6(14.47g、30mmol)、酢酸(150mL)、濃硫酸(20mL)を加えて溶解させ0℃に冷却した。無水酢酸(50mL)に酸化クロム(10.00g、100mmol)を溶解させた溶液を滴下し、滴下が終了した後に室温で12時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応溶液を蒸留水(1L)に投入して生成物を析出させ、吸引ろ過によって回収し、100℃で12時間減圧乾燥を行った。収量は15.9g(収率98%)であった。乾燥後の生成物をDMF/蒸留水の混合溶媒で再結晶を行い、100℃で12時間減圧乾燥を行うことで、白色粉末状の生成物(収量:6.35g、収率:39%)を得た。
【0188】
得られた生成物の物性を以下に示す。
H-NMR(DMSO-d、ppm):7.80(d、4H、Ar-H)、8.13(d、4H、Ar-H)、13.50(s、1H、COOH)
13C-NMR(DMSO-d、ppm):127.15,129.93,131.19,134.74,136.57,136.66,138.70,166.23
19F-NMR(DMSO-d、ppm):-110.41、-121.57、-122.04
【0189】
<合成例6>
1,6-ビス(4-クロロカルボニルフェニル)ドデカフルオロヘキサン(CCPDF6)
【0190】
【化37】
【0191】
撹拌子、冷却管、塩化カルシウム管を取り付けたナスフラスコ(100mL)に、CPDF6(5.38g、9.9mmol)と塩化チオニル(40mL)を加え、ゆっくりと85℃まで昇温し、1時間撹拌した。室温まで放冷し、減圧蒸留により過剰の塩化チオニルを留去し、固体の生成物を得た。これを昇華(140℃/0.8Torr)により精製し、白色の針状晶の生成物(収量:4.4g、収率:77%)を得た。
FT-IR、H-NMR、13C-NMR、19F-NMRおよび元素分析によって構造を確認した。
FT-IR(KBr、cm-1):3063(Ar-H)、1746(C=O)、1142(C-F)
H-NMR(CDCl、ppm):8.24(d,4H,Ar-H)、7.75(d,4H,Ar-H)
13C-NMR(CDCl、ppm):127.78、131.40、135.49,136.44、167.76、
19F-NMR(CDCl、ppm):-111.33、-121.10、-121.60
融点:129~130℃
元素分析:計算値 C,41.48%;H,1.39%
実測値 C,41.43%;H,1.48%
【0192】
<合成例7>
ビス(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-p-ドデカフルオロヘキシレンジベンゾエート(p-DFBBT)
【0193】
【化38】
【0194】
攪拌子、窒素導入管、温度計を取り付けた500mLの三口フラスコに、CPDF6(27.11g、50mmol)、クロロジメトキシトリアジン(CDMT)(17.51g、100mmol)、NMP(400mL)を加えて溶解させ、0℃に冷却した。この後に、N-メチルモルホリン(NMM)(11.59mL、110mmol)を加えて、0℃で1時間反応させた。反応終了後、酢酸を用いてpH3に調整した水溶液400mLに反応溶液を投入し、生成物を析出させた。これを吸引ろ過で回収し、50℃で12時間減圧乾燥を行った。粗収量は32.8g(粗収率80%)であった。乾燥後の粗生成物をクロロホルム/ヘキサン混合溶媒を用いて再結晶し、50℃で12時間減圧乾燥することで、白色粉末状の生成物(収量:21.33g、収率:52%)を得た。
【0195】
得られた生成物の物性を以下に示す。
H-NMR(CDCl、ppm):4.09(s、12H、CH)、7.76(d、4H、Ar-H)、8.30(s、4H、Ar-H)
13C-NMR(CDCl、ppm):56.20、127.64,130.90,131.61,137.01,137.10,139.19,161.54,170.70,171.13,174.39
19F-NMR(CDCl、ppm):-112.65、-122.53、-123.10
【0196】
<実験例1>
アミド化合物(6FTA-p-DFBBT)
【0197】
【化39】
【0198】
攪拌子、窒素導入管を取り付けた100mLの三口フラスコに、2,2-ビス(3,4-ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FTA)(1.82g、5mmol)とNMP(9mL)を加えて溶解させ、0℃に冷却した。次に、アミド化合物の繰り返し単位数(n)が4になるように、トリアジン系活性ジエステル(p-DFBBT)(3.28g、4mmol)を加え、0℃で1時間反応させた。その後、室温で12時間反応させた。反応終了後、重合溶液を蒸留水(300mL)に投入し、アミド化合物を析出させた。析出したアミド化合物を吸引ろ過で回収し、室温で12時間減圧乾燥を行った。粗収率は98%であった。乾燥後のポリマーをNMP(9mL)に溶解させ、蒸留水で再沈殿精製を行うことで、淡黄色粉末状のアミド化合物(6FTA-p-DFBBT)(収量:3.11g、収率:81%)を得た。
【0199】
得られたアミド化合物の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):1658(C=O)、1500(C=C)、1170(C-F)
数平均分子量(M):3600(計算値3700)、分子量分布(M/M):2.2
溶解性:NMP,DMAc,DMF,DMSO,THF,アセトン,メタノールに室温で溶解
【0200】
<実験例2>
アミド化合物(6FTAPh-p-DFBBT)
【0201】
【化40】
【0202】
攪拌子、窒素導入管を取り付けた100mLの三口フラスコに、6FTAPh(2.58g、5mmol)とNMP(9mL)を加えて溶解させた。次に、アミド化合物の繰り返し単位数(n)が4になるように、トリアジン系活性ジエステル(p-DFBBT)(3.28g、4mmol)を加えて、室温で12時間反応させた。反応終了後、重合溶液を蒸留水(300mL)に投入し、アミド化合物を析出させた。析出したアミド化合物を吸引ろ過で回収し、室温で12時間減圧乾燥を行った。粗収率は94%であった。乾燥後のアミド化合物をNMP(9mL)に溶解させ、蒸留水で再沈殿精製を行うことで、白色粉末状のアミド化合物(6FTAPh-p-DFBBT)(収量:3.44g、収率:77%)を得た。
【0203】
得られたアミド化合物の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):1661(C=O)、1598(C=C)、1169(C-F)
対数粘度:0.25dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
数平均分子量(M):4500(計算値4600)、分子量分布(M/M):2.0
溶解性:NMP,DMAc,DMF,DMSO,THF,クロロホルム,アセトン,メタノールに室温で溶解
【0204】
<実施例1>
アミド化合物(6FTA-p-DFBBT-PEPA)
【0205】
【化41】
【0206】
撹拌子、窒素導入管を取り付けた100mLの三口フラスコに、アミド化合物(6FTA-p-DFBBT)(0.371g、0.1mmol)、NMP(1.6mL)を加えて溶解させた。次に、架橋剤である4-フェニルエチニル無水フタル酸(PEPA)(0.050g、0.2mmol)を加えて、室温で12時間反応させた。反応終了後、重合溶液ガラス板上に塗布し、室温で6時間、60℃で6時間、100℃で6時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間減圧乾燥を行い、架橋性基を末端に導入したアミド化合物を得た。
【0207】
得られたアミド化合物の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):2214(C≡C)、1725(C=O)、1657(C=O)、1617(C=C)、1185(C-F)
溶解性:NMP,DMAc、DMFに室温で溶解
ガラス転移温度:250℃(DSC測定)
5%重量減少温度:429℃(空気中)、433℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:496℃(空気中)、504℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:57%(窒素中、800℃)(TGA)
【0208】
<実施例2>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APDF6-6FDA-PEPA)
【0209】
【化42】
【0210】
撹拌子、ジムロート冷却管、平栓、窒素導入管を取り付けた100mL三口フラスコをバーナーで熱し乾燥したのち、APDF6(1.211g、2.50mmol)と蒸留したNMP(7.0mL)を加え、撹拌して完全に溶解させた。その後、4,4’-(ヘキサフルオロイソピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)(0.888g、2.00mmol)を加え、氷浴につけて0~5℃で1時間撹拌させた。その後、徐々に昇温し60℃で6時間撹拌させたのち、架橋剤である4-フェニルエチニル無水フタル酸(PEPA)(0.248g、1.00mmol)を加え、60℃で15時間撹拌させた。室温まで冷却し、重合溶液をガラス板上に流延させ、室温で3時間減圧乾燥させて、前駆体であるアミド化合物を得た。その後、80℃で1時間、100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間のプログラムで減圧乾燥させることで、黄色粉末状の含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)を得た。
【0211】
得られた含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):2214(C≡C)、1787(C=O)、1727(C=O)、1373(C-N)、1298(C-F)、745(イミド環)
対数粘度(ηinh):0.14dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
数平均分子量(Mn):4700(計算値4500)、分子量分布(Mw/Mn):2.4
溶解性:NMP、DMSO、DMAc、DMF、DMI、γ-ブチロラクトン、THF、クロロホルムに室温で溶解
5%重量減少温度:522℃(空気中)、526℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:547℃(空気中)、551℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:50%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:171℃(DSC)
【0212】
<実施例3>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APDF6-ODPA-PEPA)
【0213】
【化43】
【0214】
撹拌子、ジムロート冷却管、平栓、窒素導入管を取り付けた100mL三口フラスコをバーナーで熱し乾燥したのち、APDF6(1.211g、2.50 mmol)と蒸留したNMP(7.7mL)を加え、撹拌して完全に溶解させた。その後、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)(0.620g、2.00mmol)を加え、氷浴につけて0~5℃で1時間撹拌させた。その後、徐々に昇温し60℃で6時間撹拌させたのち、架橋剤である4-フェニルエチニル無水フタル酸(PEPA)(0.248g、1.00mmol)を加え、60℃で12時間撹拌させた。室温まで冷却し、重合溶液をガラス板上に流延させ、室温で3時間減圧乾燥させて、前駆体であるアミド化合物を得た。その後、80℃で1時間、100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間のプログラムで減圧乾燥させることで、黄色粉末状の含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)を得た。
【0215】
得られた含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):2213(C≡C)、1785(C=O)、1727(C=O)、1370(C-N)、1275(C-F)、743(イミド環)
対数粘度(ηinh):0.19dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
数平均分子量(Mn):4100(計算値4000)、分子量分布(Mw/Mn):4.0
溶解性:NMP、DMAc、DMIに室温で溶解
5%重量減少温度:504℃(空気中)、523℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:539℃(空気中)、550℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:51%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:118℃(DSC)
【0216】
<実施例4>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APDF6-BPDA-PEPA)
【0217】
実施例3のODPAの代わりに3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を用いて同様に、黄色粉末状の含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)を得た。
【0218】
得られた含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):2214(C≡C)、1787(C=O)、1727 (C=O)、1373(C-N)、1298(C-F)、745(イミド環)
対数粘度(ηinh):0.21dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
5%重量減少温度:518℃(空気中)、534℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:557℃(空気中)、562℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:53%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:128℃(DSC)
【0219】
<実施例5>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APHF8-6FDA-PEPA)
【0220】
【化44】
【0221】
撹拌子、ジムロート冷却管、平栓、窒素導入管を取り付けた100mL三口フラスコをバーナーで熱し乾燥したのち、APHF8(1.461g、2.50mmol)と蒸留したNMP(9.7mL)を加え、撹拌して完全に溶解させた。その後、4,4’-(ヘキサフルオロイソピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)(0.888g、2.00mmol)を加え、氷浴につけて0~5℃で1時間撹拌させた。その後、徐々に昇温し60℃で6時間撹拌させたのち、架橋剤である4-フェニルエチニル無水フタル酸(PEPA)(0.248g、1.00mmol)を加え、60℃で15時間撹拌させた。室温まで冷却し、重合溶液をガラス板上に流延させ、室温で3時間減圧乾燥させて、前駆体であるアミド化合物を得た。その後、80℃で1時間、100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間のプログラムで減圧乾燥させることで、黄色粉末状の含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)を得た。
【0222】
得られた含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):2208(C≡C)、1785(C=O)、1728(C=O)、1370(C-N)、1258(C-F)、745(イミド環)
対数粘度(ηinh):0.14dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
数平均分子量(Mn):4900(計算値4500)、分子量分布(Mw/Mn):2.3
溶解性:NMP、DMAc、DMF、DMI、γ-ブチロラクトン、THF、クロロホルムに室温で溶解
5%重量減少温度:526℃(空気中)、537℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:557℃(空気中)、558℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:49%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:106℃(DSC)
【0223】
<実施例6>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APHF8-ODPA-PEPA)
【0224】
【化45】
【0225】
撹拌子、ジムロート冷却管、平栓、窒素導入管を取り付けた100mL三口フラスコをバーナーで熱し乾燥したのち、APHF8(1.461g、2.50mmol)と蒸留したNMP(8.7mL)を加え、撹拌して完全に溶解させた。その後、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)(0.620g、2.00mmol)を加え、氷浴につけて0~5℃で1時間撹拌させた。その後、徐々に昇温し60℃で6時間撹拌させたのち、架橋剤である4-フェニルエチニル無水フタル酸(PEPA)(0.248g、1.00mmol)を加え、60℃で15時間撹拌させた。室温まで冷却し、重合溶液をガラス板上に流延させ、室温で3時間減圧乾燥させて、前駆体であるアミド化合物を得た。その後、80℃で1時間、100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間のプログラムで減圧乾燥させることで、黄色粉末状の含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)を得た。
【0226】
得られた含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):2212(C≡C)、1785(C=O)、1727(C=O)、1375(C-N)、1276(C-F)、744(イミド環)
対数粘度(ηinh):0.15dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
5%重量減少温度:520℃(空気中)、529℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:545℃(空気中)、553℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:53%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:156℃(DSC)
【0227】
<実施例7>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:mAPDF6-6FDA-PEPA)
【0228】
実施例2のAPDF6の代わりにmAPDF6を用いて、同様に黄色粉末状の含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)を得た。
【0229】
得られた含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):2214(C≡C)、1787(C=O)、1727(C=O)、1373(C-N)、1298(C-F)、745(イミド環)
対数粘度(ηinh):0.15dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
数平均分子量(Mn):5000(計算値4500)、分子量分布(Mw/Mn):1.9
5%重量減少温度:495℃(空気中)、526℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:527℃(空気中)、552℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:54%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:146℃(DSC)
【0230】
<実施例8>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:mAPDF6-ODPA-PEPA)
【0231】
実施例3のAPDF6の代わりにmAPDF6を用いて、同様に黄色粉末状の含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)を得た。
【0232】
得られた含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):2214(C≡C)、1787(C=O)、1727(C=O)、1373(C-N)、1298(C-F)、745(イミド環)
対数粘度(ηinh):0.16dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
数平均分子量(Mn):4200(計算値4000)、分子量分布(Mw/Mn):2.5
5%重量減少温度:528℃(空気中)、535℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:568℃(空気中)、568℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:53%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:126℃(DSC)
【0233】
<実施例9>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:mAPDF6-BPDA-PEPA)
【0234】
実施例4のAPDF6の代わりにmAPDF6を用いて、同様に黄色粉末状の含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)を得た。
【0235】
得られた含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):2214(C≡C)、1787(C=O)、1727(C=O)、1373(C-N)、1298(C-F)、745(イミド環)
対数粘度(ηinh):0.17dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
数平均分子量(Mn):5000(計算値3900)、分子量分布(Mw/Mn):2.6
5%重量減少温度:526℃(空気中)、539℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:579℃(空気中)、575℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:53%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:140℃(DSC)
【0236】
<実施例10>
アミド化合物(6FTA-p-DFBBT-PEPA)からの架橋物
5cm×6cmの型枠に切り抜いたポリイミドフィルムの型枠の中に、架橋性基を有するアミド化合物(6FTA-p-DFBBT-PEPA)の粉末(0.55g)を入れ、320℃で加熱溶融を行った。次いで、3MPaに加圧して脱気の操作を5回行った。その後、320℃で5MPaと10MPaでそれぞれ10分間ずつプレスし、さらに370℃に昇温して15MPaで1時間加熱加圧することで、加熱脱水によるイミダゾール環の生成と架橋反応により架橋物フィルムが得られた。
【0237】
得られた架橋物フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):1725(C=O)、1495(C=C)、1460(C=N)、1171(C-F)
溶解性:有機溶媒に不溶
ガラス転移温度:297℃(DMA)
5%重量減少温度:493℃(空気中)、515℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:519℃(空気中)、544℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:60%(窒素中、800℃)(TGA)
貯蔵弾性率(E’):9×10Pa(室温~280℃、ガラス領域)、2×10Pa(360~400℃、ゴム領域)(DMA)
【0238】
<実施例11>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APDF6-6FDA-PEPA)からの架橋物
SUSプレートの上にポリイミドフィルムを載せ、その上に5cm×6cmの型枠が切り抜かれたポリイミドフィルムを置き、その型枠の中にイミド化合物(APDF6-6FDA-PEPA)の粉末(0.6g)を入れた。その上にポリイミドフィルムとSUSプレートを載せ、320℃で20分間加熱して溶融させた。その後、3MPaの圧力を1分間かけて脱気を行い、この操作を5回繰り返した。320℃のまま5MPaの圧力で10分間、さらに10MPaの圧力で10分間プレスを行った。その後、370℃まで昇温し、370℃で13MPaの圧力で1時間プレスを行うことで、茶色で透明な架橋物フィルムを作製した。
【0239】
得られた架橋物フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(フィルム、cm-1):1785(C=O)、1728(C=O)、1375(C-N)、1258(C-F)、735(イミド環)
溶解性:有機溶媒に不溶
5%重量減少温度:498℃(空気中)、514℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:519℃(空気中)、538℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:52%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:237℃(DSC)、234℃(DMA)、227℃(TMA)
貯蔵弾性率(E’):1×10Pa(室温~220℃、ガラス領域)、2×10Pa(260~410℃、ゴム領域)(DMA)
熱膨張係数:73ppm/℃
引張破断強度:75MPa(室温)
破断伸び:6.7%(室温)
引張弾性率:2.4GPa(室温)
誘電率:2.61(20GHz)
誘電正接:0.0045(20GHz)
【0240】
<実施例12>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APDF6-ODPA-PEPA)からの架橋物
SUSプレートの上にポリイミドフィルムを載せ、その上に5cm×6cmの型枠が切り抜かれたポリイミドフィルムを置き、その型枠の中にイミド化合物(APDF6-ODPA-PEPA)の粉末(0.6g)を入れた。その上にポリイミドフィルムとSUSプレートを載せ、320℃で20分間加熱して溶融させた。その後、3MPaの圧力を1分間かけて脱気を行い、この操作を5回繰り返した。320℃のまま5MPaの圧力で10分間、さらに10MPaの圧力で10分間プレスを行った。その後、370℃まで昇温し、370℃で13MPaの圧力で1時間プレスを行うことで褐色で不透明な架橋物フィルムを作製した。
【0241】
得られた架橋物フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(フィルム、cm-1):1785(C=O)、1727(C=O)、1375(C-N)、1276(C-F)、744(イミド環)
溶解性:有機溶媒に不溶
5%重量減少温度:494℃(空気中)、508℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:522℃(空気中)、537℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:52%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:206℃(DSC)、218℃(DMA)、210℃(TMA)
貯蔵弾性率(E’):1×10Pa(室温~200℃、ガラス領域)、2×10Pa(260~380℃、ゴム領域)(DMA)
熱膨張係数:70ppm/℃
誘電率:2.87(20GHz)
誘電正接:0.0037(20GHz)
【0242】
<実施例13>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APDF6-BPDA-PEPA)からの架橋物
実施例12と同様にして、茶色で透明な架橋物フィルムを作製した。
【0243】
得られた架橋物フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(フィルム、cm-1):1785(C=O)、1727(C=O)、1375(C-N)、1276(C-F)、744(イミド環)
溶解性:有機溶媒に不溶
5%重量減少温度:517℃(空気中)、533℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:534℃(空気中)、560℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:56%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:299℃(DMA)、274℃(TMA)
熱膨張係数:66ppm/℃
誘電率:2.80(20GHz)
誘電正接:0.0035(20GHz)
【0244】
<実施例14>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APHF8-6FDA-PEPA)からの架橋物
SUSプレートの上にポリイミドフィルムを載せ、その上に5cm×6cmの型枠が切り抜かれたポリイミドフィルムを置き、その型枠の中にイミド化合物(APHF8-6FDA-PEPA)の粉末(0.6g)を入れた。その上にポリイミドフィルムとSUSプレートを載せ、320℃で20分間加熱して溶融させた。その後、3MPaの圧力を1分間かけて脱気を行い、この操作を5回繰り返した。320℃のまま5MPaの圧力で10分間、さらに10MPaの圧力で10分間プレスを行った。その後、370℃まで昇温し、370℃で10MPaの圧力で1時間プレスを行うことで、茶色で透明な架橋物フィルムを作製した。
【0245】
得られた架橋物フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(フィルム、cm-1):1785(C=O)、1728(C=O)、1375(C-N)、1258(C-F)、735(イミド環)
溶解性:有機溶媒に不溶
5%重量減少温度:519℃(空気中)、530℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:546℃(空気中)、555℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:45%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:193℃(DSC)、193℃(DMA)、205℃(TMA)
貯蔵弾性率(E’):1×10Pa(室温~185℃、ガラス領域)、2×107Pa(250~410℃、ゴム領域)(DMA)
熱膨張係数:112ppm/℃
引張破断強度:46MPa(室温)
破断伸び:3.3%(室温)
引張弾性率:1.5GPa(室温)
誘電率:2.58(20GHz)
誘電正接:0.0022(20GHz)
【0246】
<実施例15>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APHF8-ODPA-PEPA)からの架橋物
【0247】
SUSプレートの上にポリイミドフィルムを載せ、その上に5cm×6cmの型枠が切り抜かれたポリイミドフィルムを置き、その型枠の中にイミド化合物(APHF8-ODPA-PEPA)の粉末(0.6g)を入れた。その上にポリイミドフィルムとSUSプレートを載せ、320℃で20分間加熱して溶融させた。その後、3MPaの圧力を1分間かけて脱気を行い、この操作を5回繰り返した。320℃のまま5MPaの圧力で10分間、さらに10MPaの圧力で10分間プレスを行った。その後、370℃まで昇温し、370℃で10MPaの圧力で1時間プレスを行うことで、褐色で不透明な架橋物フィルムを作製した。
【0248】
得られた架橋物フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(フィルム、cm-1):1785(C=O)、1727(C=O)、1375(C-N)、1276(C-F)、744(イミド環)
溶解性:有機溶媒に不溶
5%重量減少温度:496℃(空気中)、515℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:516℃(空気中)、540℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:51%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:229℃(DSC)、225℃(DMA)、228℃(TMA)
貯蔵弾性率(E’):1×109Pa(室温~200℃、ガラス領域)、9×10Pa(260~370℃、ゴム領域)(DMA)
熱膨張係数:82ppm/℃
誘電率:2.77(20GHz)
誘電正接:0.0024(20GHz)
【0249】
<実施例16>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:mAPDF6-6FDA-PEPA)からの架橋物
実施例11と同様にして、茶色で透明な架橋物フィルムを作製した。
【0250】
得られた架橋物フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(フィルム、cm-1):1785(C=O)、1727(C=O)、1375(C-N)、1276(C-F)、744(イミド環)
溶解性:有機溶媒に不溶
5%重量減少温度:496℃(空気中)、493℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:521℃(空気中)、519℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:49%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:196℃(DSC)、189℃(DMA)、193℃(TMA)
貯蔵弾性率(E’):1×109Pa(室温~180℃、ガラス領域)、1×10Pa(260~400℃、ゴム領域)(DMA)
熱膨張係数:95ppm/℃
誘電率:2.59(20GHz)
誘電正接:0.0026(20GHz)
【0251】
<実施例17>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:mAPDF6-ODPA-PEPA)からの架橋物
実施例11と同様にして、茶色で透明な架橋物フィルムを作製した。
【0252】
得られた架橋物フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(フィルム、cm-1):1785(C=O)、1727(C=O)、1375(C-N)、1276(C-F)、744(イミド環)
溶解性:有機溶媒に不溶
5%重量減少温度:534℃(空気中)、535℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:565℃(空気中)、568℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:53%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:184℃(DSC)、178℃(DMA)、176℃(TMA)
貯蔵弾性率(E’):1×109Pa(室温~150℃、ガラス領域)、2×10Pa(220~400℃、ゴム領域)(DMA)
熱膨張係数:93ppm/℃
【0253】
<実施例18>
含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:mAPDF6-BPDA-PEPA)からの架橋物
実施例11と同様にして、茶色で透明な架橋物フィルムを作製した。
【0254】
得られた架橋物フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(フィルム、cm-1):1785(C=O)、1727(C=O)、1375(C-N)、1276(C-F)、744(イミド環)
溶解性:有機溶媒に不溶
5%重量減少温度:545℃(空気中)、543℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:576℃(空気中)、572℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:56%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:207℃(DSC)、203℃(DMA)、199℃(TMA)
貯蔵弾性率(E’):1×109Pa(室温~200℃、ガラス領域)、2×10Pa(260~400℃、ゴム領域)(DMA)
熱膨張係数:67ppm/℃
誘電率:2.69(20GHz)
誘電正接:0.0024(20GHz)
【0255】
<比較例1>
イミド化合物:APDF6-6FDA
【0256】
【化46】
【0257】
撹拌棒、撹拌羽根、ジムロート冷却管、窒素導入管を取り付けた100mL三口フラスコをバーナーで熱し乾燥したのち、APDF6(0.726g、1.50mmol)、蒸留したNMP(3mL)を加え撹拌して溶解させた。その後、4,4’-(ヘキサフルオロイソピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)(0.666g、1.50mmol)を加え、徐々に昇温させ、60℃で18時間撹拌させ反応させることでアミド化合物の溶液を得た。アミド化合物の対数粘度(ηinh)は0.32dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)であった。室温まで冷却し、蒸留したNMP(2mL)を加え撹拌させることで溶液全体の濃度を薄め、その溶液をガラス板上に流延させた。これを室温で3時間減圧乾燥させ、その後、60℃で6時間、100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間のプログラムで減圧乾燥させることで、黄色透明のイミド化合物フィルム(膜厚22μm)を得た。
【0258】
得られたイミド化合物フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):1789(C=O)、1725(C=O)、1376(C-N)、1199(C-F)、745(イミド環)
対数粘度(ηinh):0.52dL/g(0.5 g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
GPC:数平均分子量(Mn)47000、分子量分布(Mw/Mn)2.5
溶解性:NMP、DMAc、DMF、DMI、THF、クロロホルムに室温で溶解
5%重量減少温度:509℃(空気中)、524℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:527℃(空気中)、544℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:52%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:221℃(DSC)、215℃(DMA)、213℃(TMA)
貯蔵弾性率(E’):9×10Pa(室温~200℃、ガラス領域)(DMA)