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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-13
(45)【発行日】2023-04-21
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20230414BHJP
   C23C 14/54 20060101ALI20230414BHJP
【FI】
C23C14/24 U
C23C14/54 F
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022070776
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2018162790の分割
【原出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2022090053
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】添田 雄二郎
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-008164(JP,A)
【文献】特開2006-193811(JP,A)
【文献】特開平10-251844(JP,A)
【文献】特開平11-222670(JP,A)
【文献】特開平07-180055(JP,A)
【文献】特開2014-055335(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017108(WO,A1)
【文献】米国特許第05665214(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00 -14/58
C23C 16/00 -16/56
H01L 21/203
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/363
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
H01L 27/32
H01L 51/50 -51/56
H05B 33/00 -33/28
G01B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜対象物を収容するチャンバと、
前記チャンバ内に配置された容器に収容される成膜材料を加熱するための加熱源へ供給する電力を制御する加熱制御部と、
前記チャンバ内に配置される、成膜対象物に対する成膜材料の成膜レートを検知するためのモニタユニットであって、水晶振動子と、遮蔽部及び開口部を有し前記水晶振動子と前記容器との間に配置される回転体と、を有するモニタユニットと、
前記遮蔽部が前記容器と前記水晶振動子との間に位置する遮蔽状態と、前記開口部が前記容器と前記水晶振動子との間に位置する非遮蔽状態と、のいずれかを取り得るように、前記回転体の回転を制御する回転制御部と、
前記水晶振動子の共振周波数の変化に基づいて前記成膜レートを取得する取得部と、
を備え、
前記成膜対象物に前記成膜材料による膜を成膜する成膜装置において、
前記加熱制御部が前記加熱源へ供給する電力を一定に保った状態で、所定の期間における前記非遮蔽状態となる期間の長さが変化するように前記回転制御部が前記回転体の回転速度を変動させたときの前記所定の期間における前記共振周波数の変動量が、所定の期間における前記非遮蔽状態となる期間の長さの変化に応じた変動量でない場合、もしくは、所定の範囲に収まらない場合、前記モニタユニットに故障が発生している状態であると判定する状態判定部を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記成膜を、前記取得部が取得する前記成膜レートが所定の値に維持されるように前記加熱制御部が前記加熱源へ供給する電力量を制御するレート制御により行い、
前記取得部が取得する前記成膜レートが所定の閾値を超えたときに、前記状態判定部による成膜装置の状態の判定シーケンスが実行されることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記取得部が取得する前記成膜レートが所定の閾値を超えたときに、前記レート制御から、前記取得部が取得する前記成膜レートに依らずに設定される電力量で前記加熱制御部が前記加熱源へ電力供給する電力制御に切り替えることを特徴とする請求項2に記載の成
膜装置。
【請求項4】
所定の期間における前記非遮蔽状態となる期間の長さが変化するように前記回転制御部が前記回転体の回転速度を変動させたときの前記所定の期間における前記共振周波数の変動量が、所定の期間における前記非遮蔽状態となる期間の長さの変化に応じた変動量の場合、もしくは、所定の範囲に収まる場合、前記状態判定部は前記容器に収容された前記成膜材料に突沸が発生した状態であると判定することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記状態判定部が成膜装置の状態を前記容器に収容された前記成膜材料に突沸が発生した状態であると判定した場合、その後の前記成膜を、前記取得部が取得する前記成膜レートが所定の値に維持されるように前記加熱制御部が前記加熱源へ供給する電力を制御するレート制御により行うことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記状態判定部が成膜装置の状態を前記モニタユニットに故障が発生している状態であると判定した場合、その後の前記成膜を、前記取得部が取得する前記成膜レートに依らずに設定される電力量で前記加熱制御部が前記加熱源へ電力供給する電力制御により行うことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項7】
所定の期間において前記非遮蔽状態となる期間が第1の長さとなるように前記回転制御部が前記遮蔽部を回転させる第1遮蔽モードと、
前記所定の期間において前記非遮蔽状態となる期間が前記第1の長さよりも長い第2の長さとなるように前記回転制御部が前記遮蔽部を回転させる第2遮蔽モードと、
を有し、
前記加熱制御部が前記加熱源へ供給する電力を一定に保った状態で、前記第1遮蔽モードから前記第2遮蔽モードに切り替えたときの、前記所定の期間における前記共振周波数の変動量の変化に基づいて、前記状態判定部が成膜装置の状態を判定することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記回転制御部は、前記第2遮蔽モードにおいて、前記非遮蔽状態における回転速度が、前記遮蔽状態における回転速度よりも遅くなるように、前記遮蔽部を回転させることを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記回転制御部は、前記第2遮蔽モードの前記非遮蔽状態における回転速度が、前記第1遮蔽モードの前記非遮蔽状態における回転速度よりも遅くなるように、前記遮蔽部を回転させることを特徴とする請求項7または8に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記回転制御部は、前記第2遮蔽モードにおける前記所定の期間において前記非遮蔽状態となる頻度が、前記第1遮蔽モードにおける前記所定の期間において前記非遮蔽状態となる頻度よりも高くなるように、前記第2遮蔽モードにおいて前記遮蔽部を往復回転させることを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項11】
成膜対象物を収容するチャンバと、
前記チャンバ内に配置された容器に収容される成膜材料加熱するための加熱源へ供給する電力を制御する加熱制御部と、
前記チャンバ内に配置される、成膜対象物に対する成膜材料の成膜レートを検知するためのモニタユニットであって、水晶振動子と、遮蔽部及び開口部を有し前記水晶振動子と前記容器との間に配置される回転体と、を有するモニタユニットと、
前記遮蔽部が前記容器と前記水晶振動子との間に位置する遮蔽状態と、前記開口部が前記容器と前記水晶振動子との間に位置する非遮蔽状態と、のいずれかを取り得るように、
前記回転体の回転を制御する回転制御部と、
前記水晶振動子の共振周波数の変化に基づいて前記成膜レートを取得する取得部と、
を備え、
前記成膜対象物に前記成膜材料による膜を成膜する成膜装置の制御方法において、
前記取得部が取得する前記成膜レートが所定の値に維持されるように前記加熱制御部が前記加熱源へ供給する電力量を制御するレート制御により前記成膜を行う第1工程と、
前記取得部が取得する前記成膜レートが所定の閾値を超えたときに、前記レート制御から、前記取得部が取得する前記成膜レートに依らずに設定される電力量で前記加熱制御部が前記加熱源へ電力供給する電力制御に切り替えて前記成膜を行う第2工程と、
前記第2工程の間に、所定の期間における前記非遮蔽状態となる期間の長さが変化するように前記回転制御部が前記回転体の回転速度を変動させる第3工程と、
前記第3工程において前記回転速度を変動させたときの前記所定の期間における前記共振周波数の変動量が、所定の期間における前記非遮蔽状態となる期間の長さの変化に応じた変動量でない場合、もしくは、所定の範囲に収まらない場合、前記モニタユニットに故障が発生している状態であると判定する第4工程と、
を有することを特徴とする成膜装置の制御方法。
【請求項12】
前記第4工程において、前記変動量が所定の値を超えない場合、もしくは、前記変動量が所定の範囲に収まる場合、前記容器に収容された前記成膜材料に突沸が発生した状態であると判定することを特徴とする請求項11に記載の成膜装置の制御方法。
【請求項13】
前記第4工程において、成膜装置の状態を前記容器に収容された前記成膜材料に突沸が発生した状態であると判定した場合、前記電力制御から前記レート制御に切り替えて前記成膜を継続する第5工程をさらに有することを特徴とする請求項12に記載の成膜装置の制御方法。
【請求項14】
前記第4工程において、成膜装置の状態を前記モニタユニットに故障が発生している状態であると判定した場合、前記電力制御により前記成膜を継続する第6工程をさらに有することを特徴とする請求項11~13のいずれか1項に記載の成膜装置の制御方法。
【請求項15】
前記成膜装置は、
所定の期間において前記非遮蔽状態となる期間が第1の長さとなるように前記回転制御部が前記遮蔽部を回転させる第1遮蔽モードと、
前記所定の期間において前記非遮蔽状態となる期間が前記第1の長さよりも長い第2の長さとなるように前記回転制御部が前記遮蔽部を回転させる第2遮蔽モードと、
を有し、
前記第1工程において、前記第1遮蔽モードを実行し、
前記第3工程において、前記第1遮蔽モードから前記第2遮蔽モードに切り替えることを特徴とする請求項11~14のいずれか1項に記載の成膜装置の制御方法。
【請求項16】
前記回転制御部は、前記第2遮蔽モードにおいて、前記非遮蔽状態における回転速度が、前記遮蔽状態における回転速度よりも遅くなるように、前記遮蔽部を回転させることを特徴とする請求項15に記載の成膜装置の制御方法。
【請求項17】
前記回転制御部は、前記第2遮蔽モードの前記非遮蔽状態における回転速度が、前記第1遮蔽モードの前記非遮蔽状態における回転速度よりも遅くなるように、前記遮蔽部を回転させることを特徴とする請求項15または16に記載の成膜装置の制御方法。
【請求項18】
前記回転制御部は、前記第2遮蔽モードにおける前記所定の期間において前記非遮蔽状態となる頻度が、前記第1遮蔽モードにおける前記所定の期間において前記非遮蔽状態と
なる頻度よりも高くなるように、前記第2遮蔽モードにおいて前記遮蔽部を往復回転させることを特徴とする請求項15に記載の成膜装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着方式により成膜対象物に薄膜を形成する成膜装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成膜対象物としての基板上に薄膜を形成する成膜装置として、真空チャンバ内において、成膜材料を収容した容器(坩堝)を加熱し、成膜材料を蒸発(昇華又は気化)させて容器外へ噴射させ、基板の表面に付着・堆積させる真空蒸着方式の成膜装置がある。かかる成膜装置において、所望の膜厚を得るべく、真空チャンバ内に配置したモニタユニットを用いて成膜レートを取得し、容器の加熱制御にフィードバックする装置構成が知られている。モニタユニットには水晶振動子が備えられており、成膜レートは、成膜材料の付着による水晶振動子の固有振動数の変化に基づいて取得される。水晶振動子に対する成膜材料の付着量が増え過ぎると、付着量の変化が固有振動数の変化として正確に表れなくなるため、新しい水晶振動子に交換することが必要となる。
【0003】
ここで、水晶振動子に対する成膜材料の付着量は、加熱を一定に制御すれば常に安定したものとなるわけではなく、例えば、成膜材料の突沸によって突発的に変動することがある。このような突発的な成膜材料の付着量の乱れは、実際の基板上の成膜量とモニタ値とを乖離させ、また水晶振動子の適切な交換タイミングを逸せしめる可能性があり、成膜レートのモニタ精度の低下につながる懸念がある。特許文献1には、モニタ値を予め設定した基準値と比較することで、坩堝内の蒸着原料の突沸により生じる不所望なスプラッシュの有無を検知する構成が開示されている。
【0004】
しかしながら、モニタ値の変動は、モニタユニットの不具合や故障によって生じる場合もあり、モニタ値から直ちにその原因を特定することが容易ではない場合がある。また、真空チャンバ内に配置されるモニタユニットは、その動作状態を直接確認することが容易でなく、そのような確認作業の発生は製造タクトに大きな影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-45581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、装置の状況をより正確に簡易に把握して成膜制御を行うことを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の成膜装置は、
成膜対象物を収容するチャンバと、
前記チャンバ内に配置された容器に収容される成膜材料を加熱するための加熱源へ供給する電力を制御する加熱制御部と、
前記チャンバ内に配置される、成膜対象物に対する成膜材料の成膜レートを検知するためのモニタユニットであって、水晶振動子と、遮蔽部及び開口部を有し前記水晶振動子と前記容器との間に配置される回転体と、を有するモニタユニットと、
前記遮蔽部が前記容器と前記水晶振動子との間に位置する遮蔽状態と、前記開口部が前記容器と前記水晶振動子との間に位置する非遮蔽状態と、のいずれかを取り得るように、前記回転体の回転を制御する回転制御部と、
前記水晶振動子の共振周波数の変化に基づいて前記成膜レートを取得する取得部と、
を備え、
前記成膜対象物に前記成膜材料による膜を成膜する成膜装置において、
前記加熱制御部が前記加熱源へ供給する電力を一定に保った状態で、所定の期間における前記非遮蔽状態となる期間の長さが変化するように前記回転制御部が前記回転体の回転速度を変動させたときの前記所定の期間における前記共振周波数の変動量が、所定の期間における前記非遮蔽状態となる期間の長さの変化に応じた変動量でない場合、もしくは、所定の範囲に収まらない場合、前記モニタユニットに故障が発生している状態であると判定する状態判定部を備えることを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明の成膜装置の制御方法は、
成膜対象物を収容するチャンバと、
前記チャンバ内に配置された容器に収容される成膜材料加熱するための加熱源へ供給する電力を制御する加熱制御部と、
前記チャンバ内に配置される、成膜対象物に対する成膜材料の成膜レートを検知するためのモニタユニットであって、水晶振動子と、遮蔽部及び開口部を有し前記水晶振動子と前記容器との間に配置される回転体と、を有するモニタユニットと、
前記遮蔽部が前記容器と前記水晶振動子との間に位置する遮蔽状態と、前記開口部が前記容器と前記水晶振動子との間に位置する非遮蔽状態と、のいずれかを取り得るように、前記回転体の回転を制御する回転制御部と、
前記水晶振動子の共振周波数の変化に基づいて前記成膜レートを取得する取得部と、
を備え、
前記成膜対象物に前記成膜材料による膜を成膜する成膜装置の制御方法において、
前記取得部が取得する前記成膜レートが所定の値に維持されるように前記加熱制御部が前記加熱源へ供給する電力量を制御するレート制御により前記成膜を行う第1工程と、
前記取得部が取得する前記成膜レートが所定の閾値を超えたときに、前記レート制御から、前記取得部が取得する前記成膜レートに依らずに設定される電力量で前記加熱制御部が前記加熱源へ電力供給する電力制御に切り替えて前記成膜を行う第2工程と、
前記第2工程の間に、所定の期間における前記非遮蔽状態となる期間の長さが変化するように前記回転制御部が前記回転体の回転速度を変動させる第3工程と、
前記第3工程において前記回転速度を変動させたときの前記所定の期間における前記共振周波数の変動量が、所定の期間における前記非遮蔽状態となる期間の長さの変化に応じ
た変動量でない場合、もしくは、所定の範囲に収まらない場合、前記モニタユニットに故障が発生している状態であると判定する第4工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置の状況をより正確に簡易に把握して成膜制御を行うこが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例における成膜装置の模式的断面図
図2】本発明の実施例における成膜レートモニタ装置の構成を示す模式図
図3】本発明の実施例における水晶モニタヘッドと遮蔽部材の構成を示す模式図
図4】本発明の実施例におけるヒータへの電力供給制御のフローチャート
図5】本発明の実施例における遮蔽部材の回転制御の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲をそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な
記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
[実施例1]
図1図5を参照して、本発明の実施例に係る成膜レートモニタ装置及び成膜装置について説明する。本実施例に係る成膜装置は、真空蒸着により基板に薄膜を成膜する成膜装置である。本実施例に係る成膜装置は、各種半導体デバイス、磁気デバイス、電子部品などの各種電子デバイスや、光学部品などの製造において基板(基板上に積層体が形成されているものも含む)上に薄膜を堆積形成するために用いられる。より具体的には、本実施例に係る成膜装置は、発光素子や光電変換素子、タッチパネルなどの電子デバイスの製造において好ましく用いられる。中でも、本実施例に係る成膜装置は、有機EL(ErectroLuminescence)素子などの有機発光素子や、有機薄膜太陽電池などの有機光電変換素子の製造において特に好ましく適用可能である。なお、本発明における電子デバイスは、発光素子を備えた表示装置(例えば有機EL表示装置)や照明装置(例えば有機EL照明装置)、光電変換素子を備えたセンサ(例えば有機CMOSイメージセンサ)も含むものである。本実施例に係る成膜装置は、スパッタ装置等を含む成膜システムの一部として用いることができる。
【0012】
<成膜装置の概略構成>
図1は、本発明の実施例に係る成膜装置2の構成を示す模式図である。成膜装置2は、排気装置24、ガス供給装置25により、内部が真空雰囲気か窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持される真空チャンバ(成膜室、蒸着室)200を有する。なお、本明細書において「真空」とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態をいう。
【0013】
成膜対象物である基板100は、搬送ロボット(不図示)によって真空チャンバ200内部に搬送されると真空チャンバ200内に設けられた基板保持ユニット(不図示)によって保持され、マスク220上面に載置される。マスク220は、基板100上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターン221を有するメタルマスクであり、真空チャンバ200内部において水平面に平行に設置されている。基板100は、基板保持ユニットによってマスク220の上面に載置されことで、真空チャンバ200内部において、水平面と平行に、かつ、被処理面である下面がマスク220で覆われる態様で設置される。
【0014】
真空チャンバ200内部におけるマスク220の下方には、蒸発源装置300が設けられている。蒸発源装置300は、概略、成膜材料(蒸着材料)400を収容する蒸発源容器(坩堝)301(以下、容器301)と、容器301に収容された成膜材料400を加熱する加熱手段(加熱源)としてのヒータ302と、を備える。容器301内の成膜材料400は、ヒータ302の加熱によって容器301内で蒸発し、容器301上部に設けられたノズル303を介して容器301外へ噴出される。容器301外へ噴射した成膜材料400は、装置300上方に設置された基板100の表面に、マスク220に設けられた開口パターン221に対応して、蒸着する。
【0015】
ヒータ302は、通電により発熱する一本の線状(ワイヤ状)の発熱体を容器301の筒状部外周に複数回巻き回した構成となっている。なお、複数本の発熱体を巻き回す構成であってもよい。ヒータ302としては、発熱体としてステンレス鋼等の金属発熱抵抗体を用いたものでもよいし、カーボンヒータ等でもよい。
蒸発源装置300は、その他、図示は省略しているが、ヒータ302による加熱効率を高めるためのリフレクタや伝熱部材、それらを含む蒸発源装置300の各構成全体を収容する枠体、シャッタなどが備えられる場合がある。また、蒸発源装置300は、成膜を基板100全体に一様に行うため、固定載置された基板100に対して相対移動可能に構成される場合がある。
【0016】
本実施例に係る成膜装置2は、容器301から噴出する成膜材料400の蒸気量、あるいは基板100に成膜される薄膜の膜厚を検知するための手段として、成膜レートモニタ装置1を備えている。成膜レートモニタ装置1は、容器301から噴出する成膜材料400の一部を、回転体としての遮蔽部材12により間欠的に遮蔽状態と非遮蔽状態とを繰り返して、水晶モニタヘッド11に備えられた水晶振動子に付着させるように構成されている。成膜材料400が堆積することによる水晶振動子の共振周波数(固有振動数)の変化量(減少量)を検知することで、所定の制御目標温度に対応した成膜レート(蒸着レート)として、単位時間当たりの成膜材料400の付着量(堆積量)を取得することができる。この成膜レートをヒータ302の加熱制御における制御目標温度の設定にフィードバックすることで、成膜レートを任意に制御することが可能となる。したがって、成膜レートモニタ装置1によって成膜処理中に常時、成膜材料400の吐出量あるいは基板100上の膜厚をモニタすることで、精度の高い成膜が可能となる。本実施例に係る成膜装置2の制御部(演算処理装置)20は、モニタユニット10の動作の制御、成膜レートの測定、取得を行うモニタ制御部21と、蒸発源装置300の加熱制御を行う加熱制御部22と、を有する。
【0017】
<成膜レートモニタ装置>
図2は、本実施例に係る成膜レートモニタ装置1の概略構成を示す模式図である。図2に示すように、本実施例に係る成膜レートモニタ装置1は、モニタヘッド11や遮蔽部材(チョッパ)12などを備えるモニタユニット10と、モニタ制御部21と、を備える。モニタユニット10は、モニタヘッド11と、遮蔽部材12と、水晶モニタヘッド11に組み込まれた水晶ホルダ(回転支持体)14の回転駆動源としてのサーボモータ16と、遮蔽部材12の回転駆動源としてのサーボモータ15と、を備える。モニタ制御部21は、遮蔽部材12の回転駆動を制御する遮蔽部材制御部(回転制御部)212と、水晶振動子13の共振周波数(の変化量)の取得を行う成膜レート取得部213と、水晶ホルダ14の回転駆動を制御するホルダ制御部214と、を有する。
【0018】
図3は、モニタヘッド11(水晶ホルダ14)と遮蔽部材12をそれぞれの回転軸線方向に沿って見たときの両者の配置関係を示す模式図である。図3に示すように、モニタヘッド11の内部には、複数の水晶振動子13(13a、13b)を円周方向に等間隔で配置して支持する水晶ホルダ14が組み込まれている。モニタヘッド11には、水晶振動子13よりも僅かに大きいモニタ開口11aが一つ設けられており、水晶ホルダ14は、支持する水晶振動子13のうちの1つを、モニタ開口11aを介して外部(蒸着源装置300)に暴露される位置(回転位相)で支持する。
【0019】
図2及び図3に示すように、水晶ホルダ14は、その中心がサーボモータ16のモータ軸16aに連結されており、サーボモータ16によって回転駆動される。これにより、モニタ開口11aを介して外部に暴露される水晶振動子13を順次切り替えることができるように構成されている。すなわち、水晶ホルダ14に支持された複数の水晶振動子13のうち、1つの水晶振動子13aがモニタ開口11aと位相が重なる位置にあり、他の水晶振動子13bは、使用済み又は交換用の水晶振動子として、モニタヘッド11の内部に隠れた位置にある。モニタ開口11aを介して外部に暴露されている水晶振動子13が、成膜材料400の付着量が所定量を超えて寿命に到達すると、水晶ホルダ14が回転して、新しい水晶振動子13を、モニタ開口11aと重なる暴露位置に移動させる。
ホルダ制御部214によるサーボモータ16の回転制御は、検出部18aと被検出部18bとからなる位相位置検出手段18が検出する水晶ホルダ14の回転位置(回転位相)に基づいて行われる。なお、位置(位相)検知手段としては、ロータリーエンコーダ等の既知の位置センサを用いてもよい。
【0020】
図3に示すように、遮蔽部材12は、略円盤状の部材であり、その中心がサーボモータ
15のモータ軸15aに連結されており、サーボモータ15によって回転駆動される。遮蔽部材12は、扇型の開口スリット(開口部、非遮蔽部)12aが、回転中心から離れた位置であって、その回転軌道が、モニタヘッド11のモニタ開口11aと重なる位置に設けられている。
【0021】
図2及び図3に示すように、遮蔽部材12が回転することで、モニタ開口11aに対する開口スリット12aの相対位置(相対位相)が、モニタ開口11aと重なる位置(開口位置、非遮蔽位置)と、重ならない位置(非開口位置、遮蔽位置)と、に変化する。これにより、遮蔽部材12において開口スリット12aを除いた領域部分が遮蔽部12bとなり、これがモニタ開口11aと重なる(覆う)位置(位相)にあるとき、水晶振動子13aへの成膜材料400の付着が妨げられる遮蔽状態(非開口状態)となる。また、開口スリット12aがモニタ開口11aと重なる位置(位相)にあるとき、水晶振動子13aへの成膜材料400の付着が許容される非遮蔽状態(開口状態)となる。
遮蔽部材制御部212によるサーボモータ15の回転制御は、検出部17aと被検出部17bとからなる位相位置検出手段17が検出する遮蔽部材12の回転位置(回転位相)に基づいて行われる。なお、位置(位相)検知手段としては、ロータリーエンコーダ等の既知の位置センサを用いてもよい。
【0022】
開口スリット12aは、本実施例では、閉じた孔となっているが、遮蔽部材12の周端で開放された切り欠き状になっていてもよい。また、設ける個数も2個以上でもよいし、スリット形状も、本実施例で示した扇型に限定されず種々の形状を採用し得るものであり。開口スリット12aを複数設ける場合には、個々に異なる形状としてもよい。
【0023】
水晶振動子13aは、電極、同軸ケーブル等を介して外部共振器19に接続されている。水晶振動子13a表面に堆積した成膜材料400の薄膜と、裏面の電極との間に電圧を印加することで生成される発信信号が、水晶振動子13の共振周波数(の変化量)として、共振器19から成膜レート取得部213に伝達され、取得される。
【0024】
図示を省略するが、モニタユニット10には、熱源となるモータ15、16の熱を冷却するための冷却水を流すための流路が備えられている。
なお、ここで示した成膜レートモニタ装置の構成はあくまで一例であり、これに限定されるものではなく、既知の種々の構成を適宜採用してよい。
【0025】
<本実施例の特徴>
図4は、本実施例に係る成膜装置2におけるヒータ302への電力供給制御のフローチャートである。以下で説明するフローの制御主体は、上述した制御部20であり、本発明における状態判定部を兼ねる。
【0026】
ヒータ302の発熱量は、ヒータ302に供給される電力量(電流値)が電源回路を含む加熱制御部22により制御されることで制御される。電力供給量は、例えば、不図示の温度検出手段により検出される温度が、所望の成膜レートを得るのに適した所定の制御目標温度に維持されるようにPID制御にて調整される。所定の成膜レートを維持できるヒータ302の発熱量(ヒータ302への供給電力)を、所定の時間維持することで、基板100の被成膜面に所望の膜厚の薄膜を成膜することができる(膜厚=成膜レート[Å/S]×時間[t])。
【0027】
本実施例に係る成膜装置2では、ヒータ302の加熱制御における供給電力の制御方法として、レート制御と平均パワー制御とを切り替えて実行可能に構成されている。なお、電力制御方法はこれらに限定されるものではない。
レート制御では、成膜レートモニタ装置1により取得される成膜レートのモニタ値(実
測値)が所望の目標レート(理論値)と一致するように制御目標温度が適時変更され、設定される制御目標温度に応じてヒータ302への供給電力量が制御される。
本実施例では、成膜レートモニタ装置1により取得される成膜レートのモニタ値(実測値)に依らずにヒータ302への供給電力量を決定する電力制御として、平均パワー制御を用いている。平均パワー制御では、供給電力の過去数サンプリングの移動平均を目標電力量として、かかる目標電力量を維持するようにヒータ302への電力供給を制御する。なお、予め設定された電力量(目標電力量)を維持するようにヒータ302に電力供給するパワー制御を用いてもよい。これらの電力制御では、成膜レートを、成膜材料の種類や基板と蒸発源との相対速度等の成膜条件に基づいて設定される理論値を用いて膜厚を制御する。
【0028】
本実施例においては、基本的な電力制御方法として、上述したレート制御(第1工程)を採用し、ヒータ302への供給電力が開始される(S101)。すなわち、成膜レートモニタ装置1により取得される成膜レートのモニタ値が、所望のレートを維持するように、ヒータ302への供給電力量(制御目標温度)が適時調整される。
【0029】
このとき、成膜レートモニタ装置1により取得される成膜レートのモニタ値が、何らかの原因で、目標レートから乖離した異常な値となる場合がある。モニタ値が異常な値を取る原因として、本実施例では、(1)成膜材料400の突沸の発生、(2)モニタユニット10の故障の発生、の2つの原因を想定し、これら成膜装置2の異常状態を判別する制御を行うことを特徴とする。容器301内の成膜材料400に突沸が発生すると、水晶振動子13aに対する成膜材料400の付着量が瞬間的・突発的に増加することがある。また、モニタユニット10の故障として、水晶振動子13に対する成膜材料400の付着量が過度に増えてモニタ値が異常な値となることがある。そこで、レート制御において取得されるモニタ値が上述した異常状態にある値を示しているのか否かを判断するための閾値を設定し、レート制御中において成膜レートの取得の度にその当否を確認する(S102)。
【0030】
取得される成膜レートが閾値を超えない場合(S102:YES)、引き続きレート制御が継続され(S101)、そのまま異常な成膜レートが取得されなければ、成膜シーケンスの終了までレート制御が継続される(S103)。
【0031】
取得される成膜レートが閾値に達した場合(S102:NO)、成膜装置2の状態を判定する判定シーケンスに移行し、電力制御がレート制御から平均パワー制御(第2工程)に切り替えられる(S104)。すなわち、固定された電力量でヒータ302に電力が供給される。そして、この状態で、遮蔽部材(チョッパ)12の回転制御モードが、レート制御時に実行される回転制御モード(第1遮蔽モード)とは異なる回転制御モード(第2遮蔽モード)に変更(第3工程)される(S105)。具体的には、所定の期間(所定の単位期間)における非遮蔽状態となる期間の長さが変化するように、つまり所定の期間における水晶振動子13aの暴露時間が変化するように、遮蔽部材12の回転制御を変化させる。そして、この回転制御の変化による所定の期間内における暴露時間の変動によって、所定の期間における水晶振動子13aの共振周波数の変化量(変動量)が、暴露時間の変動に応じた変化量なのか否か、すなわち、水晶振動子13aに対する成膜材料400の付着量の所定の期間における変動量が、所定の期間における暴露時間の変動量に応じた値を示すのか否か、が確認(第4工程)される(S106)。この共振周波数の変動量から、成膜装置2の状態が判定される。
【0032】
ここで、図5を参照して、本実施例における遮蔽部材12の回転制御モードについて説明する。図5は、本実施例における遮蔽部材12の回転制御について説明するグラフであり、(a)は、第1モードにおける遮蔽部材12の回転制御を説明するグラフ、(b)は
、第2モードにおける遮蔽部材12の回転制御を説明するグラフである。図5において、遮蔽部材12が水晶振動子13を遮蔽した状態にあるときを0、遮蔽していない状態にあるときを1、でそれぞれ示している。
本実施例では、成膜装置2の状態を判定すべく、遮蔽部材12の回転動作の制御を変更することを特徴とする。具体的には、所定の期間内における水晶振動子13aの暴露時間が、通常のレート制御における回転制御である第1遮蔽モード(以下、第1モード)よりも長くなるように、遮蔽部材12の回転速度を制御する第2遮蔽モード(以下、第2モード)を実行する。
【0033】
第2モードでは、開口スリット12aがモニタ開口11aと重なる非遮蔽状態における遮蔽部材12の定常回転速度が、開口スリット12aがモニタ開口11aと重ならない遮蔽状態における定常回転速度の1/10となるように制御する。第1モードでは、開口スリット12aとモニタ開口11aの遮蔽・非遮蔽の如何にかかわらず、一定の定常回転速度で遮蔽部材13の回転を制御する。第2モードの遮蔽状態における定常回転速度と、第1モードにおける定常回転速度とは同じ速度となっており、したがって、第2モードでの非遮蔽状態のおける定常回転速度が、第1モードでの非遮蔽状態における定常回転速度の1/10となっている。これにより、同じ所定の期間(単位期間)で比較したときに、第2モードにおいて非遮蔽状態となる期間の時間長さ(第2の長さ)は、第1モードにおいて非遮蔽状態となる期間の時間長さ(第1の長さ)よりも長くなる。
【0034】
図5(a)に、第1モードにおいて非遮蔽状態(膜付け状態)となる期間の時間長さTO1を示し、図5(b)に、第2モードにおいて非遮蔽状態となる期間の時間長さTO2を示している。図5に示すように、定常回転速度が1/10となることで、TO2は、TO1の10倍の時間となっている。所定の期間として、図5に示した時間内において、第1モードと第2モードとを比較すると、第1モードにおいて非遮蔽状態となる回数が3回であるのに対し、第2モードにおいて非遮蔽状態となる回数は2回となり、回数は第1モードの方が多くある。しかしながら、1回の非遮蔽状態の継続時間は、第2モードの方が第1モードより長くなり、所定の期間内におけるトータルの非遮蔽状態の継続時間も、第2モードの方が第1モードよりも長くなる。
【0035】
図5に示す例では、単位時間当たりに占める非遮蔽状態の時間の割合が、第1モードでは約3.3%であるのに対し、第2モードでは約25%となっている。
第1モードにおける約3.3%の上記割合は、等速回転制御による数値であるので、遮蔽部材12の開口率(遮蔽部12bに対する開口部12aの面積比)と一致する数値である。つまり、本実施例における遮蔽部材12は、遮蔽部12bと開口部12aの面積比率が、開口部12a:1/30、遮蔽部12b:29/30で構成されており、遮蔽部材12の開口率は1/30=3.3%となる。
これに対し、第2モードにおける約25%の上記割合は、次のように求められる。すなわち、非遮蔽状態時における定常回転速度が遮蔽状態時における定常回転速度に対して1/10となることで、開状態(非遮蔽状態)となる時間が、第1モードと比して、1/30*1/10=10/30となる。一方、閉状態(遮蔽状態)となる時間は、第1モードと同様、29/30である。したがって、開口率=開状態の時間÷1回転の時間=10/30÷(10/30+29/30)=10/39=0.25となる。
すなわち、本実施例による遮蔽部材12の変速制御(非遮蔽状態における定常回転速度を遮蔽状態における定常回転速度よりも遅くする制御)により、遮蔽部材12の開口率を実質的に増大させることができる。これにより、遮蔽部材12の形状を物理的に変化させるなどの手法を取らずに(装置構成を複雑化させずに)、遮蔽部材12の開口率を可変に制御し、水晶振動子13に対する成膜量を任意に制御することが可能となる。
【0036】
遮蔽部材12の回転制御モードが変化すると、単位時間当たりに占める非遮蔽状態の時
間の割合が変動し、遮蔽部材12の実質的な開口率が変動することになる。その結果、所定の期間における水晶振動子13に対する成膜材料400の付着量が変動することになり、所定の期間における水晶振動子13の共振周波数の変動量も変動することになる。すなわち、モニタユニット10が正常に動作している限り、所定の期間内における遮蔽部材12による非遮蔽状態の期間の長さの変化が、所定の期間における水晶振動子13の共振周波数の変動量の変化として表れるはずである。しかしながら、上述したような故障が発生してモニタユニット10が正常に動作していない場合には、遮蔽部材12の回転制御を変えても、所定の期間における水晶振動子13の共振周波数の変動量が十分に変化しない、あるいは変動量がゼロとなるような状態となり得る。
【0037】
そこで、遮蔽部材12の回転制御の変化の前後で取得される水晶振動子13の共振周波数の変動量の変化が、遮蔽部材12の回転制御の変化に応じた変化を示す場合には、S102における成膜レートの異常値の原因は突沸であると判定される(S106:YES)。例えば、モニタユニット10が正常に動作している場合に期待される共振周波数の変動量の変化の割合として予め実験等により設定された値もしくは所定の数値範囲に収まるか否かにより、判定される。取得された共振周波数の変動量の変化が、所定の値もしくは所定の数値範囲に収まる場合には、成膜レートの異常値の原因は突沸であると判定される。
この場合、突沸対応制御(第5工程)が実施される(S107)。本実施例では、突沸対応制御として、レート制御に戻す制御を行う。なお、突沸対応制御はこれに限定されず、突沸の程度や頻度等に応じて成膜シーケンスを中断する制御を行ってもよい。
【0038】
一方、遮蔽部材12の回転制御の変化の前後で取得される水晶振動子13の共振周波数の変動量が、遮蔽部材12の回転制御の変化に応じた変化を示さない場合(S106:NO)には、モニタユニット10に上述した何かしらの故障が発生していると判定する。例えば、取得された共振周波数の変動量の変化が、上述した所定の値とならない、もしくは所定の数値範囲に収まらない場合には、成膜レートの異常値の原因はモニタユニット10の故障であると判定される。具体的には、遮蔽部材12の回転制御を変化させた後(第1モード→第2モード)の水晶振動子13の共振周波数の変動量がゼロとなる場合や変動量の変化が著しく低下するような場合が考えられるが、これに限定されるものではない。
この場合、モニタ対応制御(第6工程)が実施される(S108)。本実施例では、モニタ対応制御として、S104において切り替えられた平均パワー制御を、成膜シーケンスの終了まで継続する制御を行う(S109)。なお、モニタ対応制御はこれに限定されず、例えば、成膜シーケンスを中断して、モニタユニット10の故障を使用者に報知する制御を行ってもよい。
【0039】
以上の制御により、成膜レートの異常値が、蒸発源容器301内の成膜材料400に突沸によるものなのか、モニタユニット10の故障によるものなのか、を適切に判定して、成膜制御を行うことができる。また、電力制御の切り替えと、遮蔽部材の回転制御の変更とによる簡易な制御により、原因の判定を行うことができる。特に、モニタユニット10の故障については、真空チャンバ内に配置されるモニタユニットを直接確認することは容易でなく、上記制御によって確認することができることで、製造タクトの短縮に非常に有利である。すなわち、本実施例によれば、装置の状況をより正確に簡易に把握して成膜制御を行うことが可能となる。
【0040】
所定の期間における水晶振動子の共振周波数の変動量の変化を確認するための遮蔽部材12の回転制御の手法としては、上述した制御方法に限定されない。例えば、第2モードにおける遮蔽部材12の回転制御において、遮蔽部材12の回転方向を一時的に逆方向に変えて往復動させることで、所定の期間内において非遮蔽状態となる回数を増やす(頻度を高める)ようにしてもよい。開口スリット12aがモニタ開口11aの近傍で行ったり来たりするように遮蔽部材12を往復回転運動させることで、単一方向に回転させて非遮
蔽状態を周期的に形成する場合よりも、所定の期間内における非遮蔽状態の発生回数を増やすことができる。これにより、所定の期間内におけるトータルの非遮蔽状態の継続時間を長くすることができる。なお、成膜ムラ回避の観点から、往復回転運動における回転方向の切り返しは、開口スリット12aがモニタ開口11aを完全に通過してから(すなわち、水晶振動子13aが十分に遮蔽された状態となってから)行うことが好ましい。
あるいは、第2モードにおいて、遮蔽状態における定常回転速度を、非遮蔽状態における定常回転速度(第1モードにおける定常回転速度)よりも速い速度に変更する制御により、所定期間内における非遮蔽状態の回数を増やすようにしてもよい。
また、第2モードにおいて、非遮蔽状態時に遮蔽部材12の回転を一時的に停止することで、所定の期間内における非遮蔽状態の継続期間を長くするようにしてもよい。
さらに、上述した制御を組み合わせた制御としてもよい。例えば、非遮蔽状態における定常回転速度を減速しつつ、遮蔽状態と非遮蔽状態とを短期間で繰り返すように往復回転させる制御としてもよい。
また、本実施例では、第2モードの遮蔽状態における定常回転速度と、第1モードにおける定常回転速度とを同じ速度としているが、遮蔽部材12の開口率を実質的に増大させる効果が得られる範囲で、適宜異なる速度に設定してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…成膜レートモニタ装置、10…モニタユニット、11…水晶モニタヘッド、11a…モニタ開口、12…遮蔽部材(チョッパ)、12a…開口スリット(開口部、非遮蔽部)、12b…遮蔽部、13(13a、13b)…水晶振動子、14…水晶ホルダ(回転支持体)、15…サーボモータ(駆動源)、15a…モータ軸、16…サーボモータ(駆動源)、16a…モータ軸16a、17(17a、17b)…位置(回転位相)検出手段、18(18a、18b)…位置(回転位相)検出手段、19…共振器、2…成膜装置、100…基板、20…制御部(取得部、加熱制御部)、200…真空チャンバ(成膜室)、300…蒸発源装置、301…蒸発源容器(坩堝)、302…ヒータ(加熱源)、303…ノズル
図1
図2
図3
図4
図5