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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】スパッタ成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20230417BHJP
   C23C 14/35 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
C23C14/34 C
C23C14/35 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019090393
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2020186426
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】金子 俊則
(72)【発明者】
【氏名】大野 哲宏
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-345337(JP,A)
【文献】特開2009-057608(JP,A)
【文献】特開2017-133065(JP,A)
【文献】特開2015-092025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリングによって基板上に成膜を行うスパッタ成膜装置であって、
真空槽と、
前記真空槽内において、バッキングプレートに電気的に接続されて並べられた複数のターゲットと、
前記複数のターゲットの隣接するターゲットの間にそれぞれ配置されたアースシールドと、
前記真空槽内において前記複数のターゲットの背面側に設けられた複数の磁石装置とを有し、
前記アースシールドと前記磁石装置との間に、当該磁石装置に対する前記アースシールドからの放射熱を遮る遮熱部材が設けられ
前記遮熱部材が、前記磁石装置の前記アースシールド及び前記バッキングプレート側の部分を覆うように設けられているスパッタ成膜装置。
【請求項2】
前記遮熱部材が、前記磁石装置に取り付けられている請求項記載のスパッタ成膜装置。
【請求項3】
前記遮熱部材が、前記アースシールドに取り付けられている請求項記載のスパッタ成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空中で基板上にスパッタリングによって成膜を行うスパッタリング装置に関し、特にマグネトロンスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁気回路を生成する磁石装置を用いてマグネトロンスパッタリングを行うスパッタ成膜装置が知られている。
【0003】
図4は、従来のスパッタ成膜装置の内部構成を示す部分断面図である。
【0004】
図4に示すように、このスパッタ成膜装置101は、接地電位にされた真空槽102を有し、この真空槽102の内部に、基板ホルダ105に保持された基板106が配置されるようになっている。
【0005】
真空槽102内には、基板106と対向するように、バッキングプレート108に取り付けられたターゲット107が複数個設けられるとともに、真空槽102内のバッキングプレート108の基板106と反対側には、複数の磁石装置110が設けられている。
【0006】
このような構成の下、真空槽102内にスパッタガスを導入し、複数のターゲット107に対してそれぞれ所定の電力を印加することにより、スパッタガスのプラズマを発生させてスパッタリングを行い、基板106上に薄膜を形成する。
【0007】
しかし、近年、この種のスパッタ成膜装置においては、装置の大型化に伴って磁石装置が大型化し、その結果、磁石装置の反りが発生するという問題が生じている。
【0008】
すなわち、例えば図4に示すスパッタ成膜装置101では、装置の構成上、磁石装置110とバッキングプレート108との間のクリアランスが10mm程度しかなく、磁石装置110の熱伸びに起因する反りによりクリアランスが消失して磁石装置110とバッキングプレート108とが擦れる場合がある。
【0009】
磁石装置110とバッキングプレート108に擦れが発生しない場合であっても、磁石装置110の熱伸びに起因する反りによって磁場が変動し、形成されるスパッタ膜の面内分布に影響する場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来の技術の課題を考慮してなされたもので、その目的とするところは、マグネトロンスパッタリングによって成膜を行う装置において、磁石装置の熱伸びに起因する反りを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明は、スパッタリングによって基板上に成膜を行うスパッタ成膜装置であって、真空槽と、前記真空槽内において、バッキングプレートに電気的に接続されて並べられた複数のターゲットと、前記複数のターゲットの隣接するターゲットの間にそれぞれ配置されたアースシールドと、前記真空槽内において前記複数のターゲットの背面側に設けられた複数の磁石装置とを有し、前記アースシールドと前記磁石装置との間に、当該磁石装置に対する前記アースシールドからの放射熱を遮る遮熱部材が設けられているものである。
本発明では、前記遮熱部材が、前記磁石装置の前記アースシールド及び前記バッキングプレート側の部分を覆うように設けられている場合にも効果的である。
本発明では、前記遮熱部材が、前記磁石装置に取り付けられている場合にも効果的である。
本発明では、前記遮熱部材が、前記アースシールドに取り付けられている場合にも効果的である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、隣接するターゲットの間に配置されたアースシールドとターゲットの背面側に設けられた磁石装置との間に、磁石装置に対するアースシールドからの放射熱を遮る遮熱部材が設けられていることから、磁石装置の温度上昇が抑えられ、その結果、磁石装置の熱伸びに起因する反りを抑制することができる。
【0013】
本発明において、遮熱部材が、前記磁石装置のアースシールド及びバッキングプレート側の部分を覆うように設けられている場合には、アースシールド及びバッキングプレートからの熱が遮熱部材によって遮られ、これにより磁石装置の熱伸びに起因する反りを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a):本発明に係るスパッタ成膜装置の実施の形態の内部構成を示す部分断面図、(b):本実施の形態の要部を示す部分断面図
図2】(a):本実施の形態における磁石装置及びアースシールドの構成を示す平面図、(b):本実施の形態における磁石装置、アースシールド及び遮熱部材の構成を示す平面図
図3】(a):本発明の他の実施の形態の内部構成を示す部分断面図、(b):本実施の形態の要部を示す部分断面図
図4】従来のスパッタ成膜装置の内部構成を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1(a)は、本発明に係るスパッタ成膜装置の実施の形態の内部構成を示す部分断面図、図1(b)は、本実施の形態の要部を示す部分断面図である。
【0017】
本実施の形態のスパッタ成膜装置1は、マグネトロンスパッタリング方式のもので、図1(a)に示すように、接地電位にされた真空槽2を有している。
【0018】
真空槽2は、その内部の真空排気を行う真空排気装置3に接続されるとともに、真空槽2内にアルゴン(Ar)ガス等のスパッタガスを導入可能なスパッタガス源4に接続されている。
【0019】
真空槽2内には、基板ホルダ5に保持された基板6が配置されるようになっており、この基板6と対向するように、バッキングプレート8に取り付けられたターゲット7が複数個設けられている。
【0020】
バッキングプレート8は、図示しない絶縁物を介して真空槽2の壁面に取り付けられ、これによりバッキングプレート8は真空槽2に対して電気的に絶縁されている。
【0021】
バッキングプレート8は、図示しない電源装置に電気的に接続され、バッキングプレート8を介してターゲット7に対して所定の電力(電圧)を印加するように構成されている。
【0022】
ターゲット7に印加する電力の種類は特に限定されるものではなく、直流、交流(高周波、パルス状のものも含む)のいずれであってもよい。
【0023】
複数のターゲット7の隣接するターゲット7の間には、アースシールド9がそれぞれ設けられている。
【0024】
このアースシールド9は、隣接するターゲット7間の異常放電を防止するためのもので、例えばチタン(Ti)からなり、接地電位となるように構成されている。
【0025】
アースシールド9には、後述する磁石装置10側に延びる基部9aが設けられている。
【0026】
真空槽2内のバッキングプレート8の背面側即ち基板6に対して反対側には、複数の磁石装置10が設けられている。
【0027】
図2(a)は、本実施の形態における磁石装置及びアースシールドの構成を示す平面図、図2(b)は、本実施の形態における磁石装置、アースシールド及び遮熱部材の構成を示す平面図である。
【0028】
図1(a)(b)及び図2(a)(b)に示すように、各磁石装置10は、ターゲット7のスパッタ面7a上に磁場を発生させるようにヨーク10a上に設置された、中心磁石11と、中心磁石11の周囲に連続的な形状で設置された外周磁石12とを有し、これらは磁石固定板13上に設けられている。
【0029】
中心磁石11はバッキングプレート8と平行となるような例えば長方体形状に形成されるとともに、外周磁石12はヨーク10a上で中心磁石11の周縁部から所定距離をおいて環状に形成され、中心磁石11を取り囲むように配置されている。
【0030】
この外周磁石12は、必ずしも一つの継ぎ目のない環形状であることを意味しない。すなわち、中心磁石11の周囲を取り囲む形状であれば、複数の部品から構成されていてもよいし、ある部分に直線的な形状を有していてもよい。また、閉じた円環又は円環を閉じたまま変形させた形状でもよい。
【0031】
なお、本例の磁石装置10は、外周磁石12(ヨーク10a)の外径が各ターゲット7の外径より小さくなるようにその寸法が設定されている。
【0032】
外周磁石12と中心磁石11は、ターゲット7のスパッタ面7aに対して互いに異なる極性の磁極を対向させて配置されている。
【0033】
磁石装置10のヨーク10aの背面側には、図示しない駆動機構によって駆動されるXYステージ等の移動装置(図示せず)が配置され、この移動装置によって磁石装置10が移動するように構成されている。
【0034】
本実施の形態では、各磁石装置10をターゲット7のスパッタ面7aに沿って中心磁石11の延びる方向(長手方向)に対して直交する方向に往復移動させるように構成されている。
【0035】
図1(a)(b)及び図2(b)に示すように、アースシールド9と磁石装置10との間には、磁石装置10に対するアースシールド9からの熱を遮る遮熱部材14が設けられている。
【0036】
本実施の形態では、各磁石装置10における、外周磁石12及び中心磁石11のアースシールド9の基部9aと対向する面、さらにバッキングプレート8と対向する面、並びに、ヨーク10aのアースシールド9の基部9aと対向する面、さらにバッキングプレート8と対向する面をそれぞれ覆うように遮熱部材14が設けられている。
【0037】
この遮熱部材14は、例えばAl(アルミニウム)からなるもので、厚さ1~2mm程度の板状の部材を断面コ(U)字状に折り曲げることにより作成することができる。
【0038】
また、遮熱部材14の表面は鏡面加工が施され、反射率ができるだけ大きくなるようにされている。
【0039】
遮熱部材14は、磁石装置10に対する放射熱の量を最小限にするため、磁石装置10に接触させず、例えばねじ等の保持部材15を用いて各磁石装置10に保持させるように構成することが好ましい。
【0040】
一方、図2(b)に示すように、遮熱部材14は、各磁石装置10の長手方向の全範囲ではなく、それぞれの中腹部分にのみ設けることができる。
【0041】
これは、各磁石装置10の両端部には、図示しない磁力調整部材が設けられており、遮熱部材14がこの磁力調整部材と干渉することを考慮したものである。
【0042】
本発明者の知見によれば、各磁石装置10の両端部に遮熱部材14が存在しない場合であっても、遮熱部材14が磁石装置10の長さの50%以上の長さを有していれば、磁石装置10の反りを抑制可能であることが確認されている。
【0043】
また、遮熱部材14において例えば水等の冷却媒体を循環させるように構成することもでき、このような構成によれば磁石装置10の温度上昇を確実に防止することができる。
【0044】
このような構成を有する本実施の形態において、基板6上にスパッタリングによって成膜を行う場合には、真空槽2内を真空排気するとともに、真空槽2内にスパッタガスを導入し、図示しない電源装置からバッキングプレート8を介してターゲット7に所定の負電圧を印加する。
【0045】
そして、複数の磁石装置10を、ターゲット7のスパッタ面7aに沿って中心磁石11の延びる方向に対して直交する方向に往復移動させる。
【0046】
以上の動作により、ターゲット7と基板6の間で放電が生じ、ターゲット7上のスパッタガスが電離され、プラズマ化する。
【0047】
このプラズマ中に存在するスパッタガスのイオンは、磁石装置10によって発生させた磁場に捕捉される。
【0048】
本実施の形態では、ターゲット7に負電圧が印加されており、スパッタガスのイオンは負電位のターゲット7のスパッタ面7aに衝突し、ターゲット材料の粒子(スパッタ粒子)を弾き飛ばす。
【0049】
このスパッタ粒子が、上述した基板6の表面に到達して付着し、ターゲット材料の膜が基板6上に形成される。
【0050】
以上述べた本実施の形態によれば、隣接するターゲット7の間に配置されたアースシールド9と、ターゲット7の背面側に設けられた磁石装置10との間に、磁石装置10に対するアースシールド9からの放射熱を遮る遮熱部材14が設けられていることから、磁石装置10の温度上昇が抑えられ、その結果、磁石装置10の熱伸びに起因する反りを抑制することができる。
【0051】
特に本実施の形態においては、遮熱部材14が、磁石装置10のアースシールド9及びバッキングプレート8側の部分を覆うように設けられていることから、アースシールド9及びバッキングプレート8からの放射熱が遮熱部材14によって遮られ、これにより磁石装置10の熱伸びに起因する反りを確実に抑制することができる。
【0052】
図3(a)(b)は、本発明の他の実施の形態を示すもので、図3(a)は、内部構成を示す部分断面図、図3(b)は、本実施の形態の要部を示す部分断面図である。以下、上記実施の形態と対応する部分には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施の形態のスパッタ成膜装置1Aは、図3(a)に示すように、遮熱部材16が、各アースシールド9にも取り付けられているものである。
【0054】
具体的には、図3(b)に示すように、各アースシールド9の基部9aの遮熱部材14と対向する面、さらにアースシールド9の基部9aの先端部を覆うように遮熱部材16が設けられている。
【0055】
この遮熱部材16は、上記実施の形態と同じく表面に鏡面加工が施され、反射率ができるだけ大きくなるようにしたものを用いるとよい。
【0056】
また、アースシールド9側の遮熱部材16は、磁石装置10(遮熱部材14)に対して放射される熱の量を最小限にするため、アースシールド9の基部9aに接触させず、例えばねじ等の保持部材17を用いて各アースシールド9の基部9aに保持させることが好ましい。
【0057】
このような構成を有する本実施の形態によれば、磁石装置10に対するアースシールド9の放射熱を小さくすることができるので、磁石装置10の温度上昇が更に抑えられ、その結果、磁石装置10の熱伸びに起因する反りを確実に抑制することができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施の形態に限られず、種々の変更を行うことができる。例えば、図3(a)(b)に示す実施の形態では、磁石装置10とアースシールド9の両方に遮熱部材14、16を設けるようにしたが、本発明はこれに限られず、アースシールドにのみ遮熱部材を設けることもできる。
【0059】
ただし、この場合には、アースシールドから十分に熱を逃がすような構成にすることが好ましい。
【符号の説明】
【0060】
1……スパッタ成膜装置
2……真空槽
6……基板
7……ターゲット
7a…スパッタ面
8……バッキングプレート
9……アースシールド
10…磁石装置
11…中心磁石
12…外周磁石
14…遮熱部材
15…保持部材
図1
図2
図3
図4