(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】プラズマ装置、電源装置、プラズマ維持方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230417BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20230417BHJP
C23C 14/54 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H02M3/28 P
C23C14/54 B
(21)【出願番号】P 2019185756
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】杉田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】坂田 光司
(72)【発明者】
【氏名】児玉 康夫
(72)【発明者】
【氏名】田上 正幹
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-076054(JP,A)
【文献】特開2008-253096(JP,A)
【文献】特開2009-059714(JP,A)
【文献】特開2009-238670(JP,A)
【文献】特開2017-106153(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0242487(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H02M 3/28
C23C 14/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電圧端子と負電圧端子との間に一次側直流電圧を出力する直流電圧源と、
一次巻線と前記一次巻線に磁気結合した二次巻線とを有するトランスと、
導通すると前記一次巻線の一端を前記正電圧端子に接続する第一の主スイッチ素子と、導通すると前記一端を前記負電圧端子に接続する第二の主スイッチ素子とを有するブリッジ回路と、
前記第一の主スイッチ素子と前記第二の主スイッチ素子とを交互に導通させ、前記一次巻線に一次側交流電流を流す主制御回路と、
前記一次側交流電流の流れによって前記二次巻線に誘起された二次側交流電圧を整流平滑して直流出力電圧を出力する整流平滑回路と、
内部に真空雰囲気が形成される真空槽と、
前記真空雰囲気に接触するアノード電極とカソード電極と、
を有し、
前記主制御回路は、
所定の設定周波数の三角波電圧を生成する発振回路と、
前記第一の主スイッチ素子又は前記第二の主スイッチ素子を出力期間の間導通させるPWM回路と、
を有し、
前記カソード電極には前記出力電圧の負電圧が出力されて前記真空雰囲気中にプラズマが生成され、維持されるプラズマ装置であって、
前記プラズマに流れるプラズマ電流を検出し、検出した前記プラズマ電流の電流値を示す電流信号を出力する電流検出器と、
前記プラズマに印加されるプラズマ電圧を検出し、検出した前記プラズマ電圧の電圧値を示す電圧信号を出力する電圧検出器と、
前記電圧信号と前記電流信号とを用いて電力信号を求め、出力する演算回路と、
を有し、
前記ブリッジ回路は、前記プラズマが消費する電力が目標電力値になるように動作が制御され、
抵抗値が可変の抵抗回路と、
前記目標電力値に基づいて前記抵抗回路の抵抗値を変更させる抵抗制御回路とを有し、
前記抵抗回路は前記プラズマ電流が流れる経路に挿入されたプラズマ装置。
【請求項2】
前記抵抗回路は、少なくとも小抵抗値と、前記小抵抗値よりも大きい中抵抗値と、前記中抵抗値よりも大きい大抵抗値とのいずれの抵抗値にも設定されるように構成され、
前記抵抗制御回路には、第一基準値と、第一基準値よりも大きい第二基準値とが設定されており、前記抵抗制御回路は、前記目標電力値が前記第一基準値が示す電力値よりも小さいときは前記抵抗回路を前記大抵抗値に設定し、前記目標電力値が前記第一基準値が示す電力値以上であって前記第二基準値が示す電力値よりも小さいときは前記抵抗回路を前記中抵抗値に設定し、前記目標電力値が前記第二基準値が示す電力値以上であるときは前記抵抗回路を前記小抵抗値に設定する請求項1記載のプラズマ装置。
【請求項3】
前記抵抗回路は、直列接続された複数の抵抗素子を有し、
前記抵抗制御回路は、導通すると前記抵抗素子の両端をそれぞれ短絡させる副スイッチ素子を有し、
前記副スイッチ素子の導通と遮断は、前記目標電力値と前記第一、第二基準値との比較結果によって制御され、前記小抵抗値と前記中抵抗値と前記大抵抗値との間は、所定の前記副スイッチ素子の導通と遮断とが変更されて生成される請求項2記載のプラズマ装置。
【請求項4】
前記ブリッジ回路は、前記第一、第二の主スイッチ素子の主直列接続回路と第一、第二のコンデンサの副直列接続回路とが並列接続され、前記主直列接続回路と前記副直列接続回路とには、前記一次側直流電圧がそれぞれ印加され、前記第一、第二の主スイッチ素子の接続点が前記一次巻線の一端に電気的に接続され、前記第一、第二のコンデンサの接続点が前記一次巻線の他端に電気的に接続された請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のプラズマ装置。
【請求項5】
正電圧端子と負電圧端子との間に一次側直流電圧を出力する直流電圧源と、
一次巻線と前記一次巻線に磁気結合した二次巻線とを有するトランスと、
導通すると前記一次巻線の一端を前記正電圧端子に接続する第一の主スイッチ素子と、導通すると前記一端を前記負電圧端子に接続する第二の主スイッチ素子とを有するブリッジ回路と、
前記第一の主スイッチ素子と前記第二の主スイッチ素子とを交互に導通させ、前記一次巻線に一次側交流電流を流す主制御回路と、
前記一次側交流電流の流れによって前記二次巻線に誘起された二次側交流電圧を整流平滑して直流出力電圧を出力する整流平滑回路と、
を有し、
前記主制御回路は、
所定の設定周波数の三角波電圧を生成する発振回路と、
前記第一の主スイッチ素子又は前記第二の主スイッチ素子を出力期間の間導通させるPWM回路と、
を有し、
真空雰囲気に接触されたカソード電極に前記出力電圧の負電圧を出力して前記真空雰囲気中にプラズマを生成して維持する電源装置であって、
前記プラズマに流れるプラズマ電流を検出し、検出した前記プラズマ電流の電流値を示す電流信号を出力する電流検出器と、
前記プラズマに印加されるプラズマ電圧を検出し、検出した前記プラズマ電圧の電圧値を示す電圧信号を出力する電圧検出器と、
前記電圧信号と前記電流信号とを用いて電力信号を求め、出力する演算回路と、
を有し、
前記ブリッジ回路は、前記プラズマが消費する電力が目標電力値になるように動作が制御され、
抵抗値が可変の抵抗回路と、
前記目標電力値に基づいて前記抵抗回路の抵抗値を変更させる抵抗制御回路とを有し、
前記抵抗回路は前記プラズマ電流が流れる経路に挿入された電源装置。
【請求項6】
前記抵抗回路は、少なくとも小抵抗値と、前記小抵抗値よりも大きい中抵抗値と、前記中抵抗値よりも大きい大抵抗値とのいずれの抵抗値にも設定されるように構成され、
前記抵抗制御回路には、第一基準値と、第一基準値よりも大きい第二基準値とが設定されており、前記抵抗制御回路は、前記目標電力値が前記第一基準値が示す電力値よりも小さいときは前記抵抗回路を前記大抵抗値に設定し、前記目標電力値が前記第一基準値が示す電力値以上であって前記第二基準値が示す電力値よりも小さいときは前記抵抗回路を前記中抵抗値に設定し、前記目標電力値が前記第二基準値が示す電力値以上であるときは前記抵抗回路を前記小抵抗値に設定する請求項5記載の電源装置。
【請求項7】
前記抵抗回路は、直列接続された複数の抵抗素子を有し、
前記抵抗制御回路は、導通すると前記抵抗素子の両端をそれぞれ短絡させる副スイッチ素子を有し、
前記副スイッチ素子の導通と遮断は、前記目標電力値と前記第一、第二基準値との比較結果によって制御され、前記小抵抗値と前記中抵抗値と前記大抵抗値との間は、所定の前記副スイッチ素子の導通と遮断とが変更されて生成される請求項6記載の電源装置。
【請求項8】
前記ブリッジ回路は、前記第一、第二の主スイッチ素子の主直列接続回路と第一、第二のコンデンサの副直列接続回路とが並列接続され、前記主直列接続回路と前記副直列接続回路とには、前記一次側直流電圧がそれぞれ印加され、前記第一、第二の主スイッチ素子の接続点が前記一次巻線の一端に電気的に接続され、前記第一、第二のコンデンサの接続点が前記一次巻線の他端に電気的に接続された請求項5乃至請求項7のいずれか1項記載の電源装置。
【請求項9】
出力電圧を出力する電源装置をアノード電極とカソード電極とに接続し、前記アノード電極と前記カソード電極との間に直流電圧を印加して真空槽の内部にプラズマを発生させて前記プラズマにプラズマ電流を流し、前記プラズマで消費される電力を目標電力値にして前記プラズマを維持するプラズマ維持方法であって、
前記プラズマを維持する間に前記目標電力値と基準値とを比較し、
前記目標電力値が前記基準値よりも小さい場合に、前記プラズマ電流が流れる経路の抵抗値を増加させるプラズマ維持方法。
【請求項10】
前記アノード電極と前記電源装置の間と前記カソード電極と前記電源装置の間のうち、少なくともいずれか一方の間に抵抗回路を配置しておき、前記プラズマ電流が流れる経路の抵抗値を増加させるときには、前記抵抗回路の抵抗値を増加させる請求項9記載のプラズマ維持方法。
【請求項11】
前記目標電力値は前記電源装置の外部から入力される請求項9又は請求項10のいずれか1項記載のプラズマ維持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ装置とプラズマ用電源装置に係り、特に、消費電力が小さいプラズマを安定して維持することができるプラズマ装置とプラズマ用の電源装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
アノード電極とカソード電極との間に電力を供給し、真空槽の内部にプラズマを生成し、維持するために、従来よりPWM回路を有する電源装置が用いられている。
【0003】
PWM回路では、アノード電極とカソード電極との間の電圧値を示すプラズマ電圧と基準電圧との差電圧が、比較器によって発振回路が出力する三角波電圧と比較され、三角波電圧が差電圧よりも大きい期間、トランスの一次巻線に一次電流を供給するブリッジ回路が導通するように制御されており、アノード電極とカソード電極との間には定電圧が印加されるようになっている。
【0004】
PWM回路は、例えば、基準電圧の電圧値を電源装置の定格電圧の電圧値の50%にしたときには、プラズマ電圧の電圧値は定格電圧の電圧値の50%となるように制御されるから、差電圧が三角波電圧の振幅中点近傍で安定する状況が観察される。
【0005】
しかしながらPWM回路では、負荷となっているプラズマが消費する電力が小さいときは、
図3のように、差電圧が三角波電圧よりも大きくなる期間が発生し、その期間中では、ブリッジ回路を動作させるための矩形波電圧は出力されなくなる。従って、ブリッジ回路は間欠動作し、出力電圧が不安定になる。
【0006】
そのため、従来技術では、抵抗素子と補助スイッチとが直列接続された負荷回路をプラズマと並列接続し、プラズマが消費する電力が小さいことを検出したときに補助スイッチを導通させ、プラズマに抵抗素子を並列接続させて、プラズマの消費電力に抵抗素子の消費電力を加え、トランスの二次側全体の消費電力が大きくなるようにしていた。
【0007】
しかしながらDC放電によって発生させたプラズマを維持する際には、プラズマは定電圧負荷となるため、抵抗素子がプラズマに並列接続されても平滑回路の出力電圧は、プラズマ変化に対応した変化ができないから、電源装置としての動作が不安定になるという問題がある。
抵抗素子と補助スイッチとが直列接続された負荷回路の動作は後述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来技術のプラズマ装置の動作を安定させるために創作されたものであり、ブリッジ回路が所定周波数で安定して動作し、プラズマを維持させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を課題を解決するため、本発明は、正電圧端子と負電圧端子との間に一次側直流電圧を出力する直流電圧源と、一次巻線と前記一次巻線に磁気結合した二次巻線とを有するトランスと、導通すると前記一次巻線の一端を前記正電圧端子に接続する第一の主スイッチ素子と、導通すると前記一端を前記負電圧端子に接続する第二の主スイッチ素子とを有するブリッジ回路と、前記第一の主スイッチ素子と前記第二の主スイッチ素子とを交互に導通させ、前記一次巻線に一次側交流電流を流す主制御回路と、前記一次側交流電流の流れによって前記二次巻線に誘起された二次側交流電圧を整流平滑して直流出力電圧を出力する整流平滑回路と、内部に真空雰囲気が形成される真空槽と、前記真空雰囲気に接触するアノード電極とカソード電極と、を有し、前記主制御回路は、所定の設定周波数の三角波電圧を生成する発振回路と、前記第一の主スイッチ素子又は前記第二の主スイッチ素子を出力期間の間導通させるPWM回路と、を有し、前記カソード電極には前記出力電圧の負電圧が出力されて前記真空雰囲気中にプラズマが生成され、維持されるプラズマ装置であって、前記プラズマに流れるプラズマ電流を検出し、検出した前記プラズマ電流の電流値を示す電流信号を出力する電流検出器と、前記プラズマに印加されるプラズマ電圧を検出し、検出した前記プラズマ電圧の電圧値を示す電圧信号を出力する電圧検出器と、前記電圧信号と前記電流信号とを用いて電力信号を求め、出力する演算回路と、を有し、前記ブリッジ回路は、前記プラズマが消費する電力が目標電力値になるように動作が制御され、抵抗値が可変の抵抗回路と、前記目標電力値に基づいて前記抵抗回路の抵抗値を変更させる抵抗制御回路とを有し、前記抵抗回路は前記プラズマ電流が流れる経路に挿入されたプラズマ装置である。
本発明は、前記抵抗回路は、少なくとも小抵抗値と、前記小抵抗値よりも大きい中抵抗値と、前記中抵抗値よりも大きい大抵抗値とのいずれの抵抗値にも設定されるように構成され、前記抵抗制御回路には、第一基準値と、第一基準値よりも大きい第二基準値とが設定されており、前記抵抗制御回路は、前記目標電力値が前記第一基準値が示す電力値よりも小さいときは前記抵抗回路を前記大抵抗値に設定し、前記目標電力値が前記第一基準値が示す電力値以上であって前記第二基準値が示す電力値よりも小さいときは前記抵抗回路を前記中抵抗値に設定し、前記目標電力値が前記第二基準値が示す電力値以上であるときは前記抵抗回路を前記小抵抗値に設定するプラズマ装置である。
本発明は、前記抵抗回路は、直列接続された複数の抵抗素子を有し、前記抵抗制御回路は、導通すると前記抵抗素子の両端をそれぞれ短絡させる副スイッチ素子を有し、前記副スイッチ素子の導通と遮断は、前記目標電力値と前記第一、第二基準値との比較結果によって制御され、前記小抵抗値と前記中抵抗値と前記大抵抗値との間は、所定の前記副スイッチ素子の導通と遮断とが変更されて生成されるプラズマ装置である。
本発明は、前記ブリッジ回路は、前記第一、第二の主スイッチ素子の主直列接続回路と第一、第二のコンデンサの副直列接続回路とが並列接続され、前記主直列接続回路と前記副直列接続回路とには、前記一次側直流電圧がそれぞれ印加され、前記第一、第二の主スイッチ素子の接続点が前記一次巻線の一端に電気的に接続され、前記第一、第二のコンデンサの接続点が前記一次巻線の他端に電気的に接続されたプラズマ装置である。
本発明は、正電圧端子と負電圧端子との間に一次側直流電圧を出力する直流電圧源と、一次巻線と前記一次巻線に磁気結合した二次巻線とを有するトランスと、導通すると前記一次巻線の一端を前記正電圧端子に接続する第一の主スイッチ素子と、導通すると前記一端を前記負電圧端子に接続する第二の主スイッチ素子とを有するブリッジ回路と、前記第一の主スイッチ素子と前記第二の主スイッチ素子とを交互に導通させ、前記一次巻線に一次側交流電流を流す主制御回路と、前記一次側交流電流の流れによって前記二次巻線に誘起された二次側交流電圧を整流平滑して直流出力電圧を出力する整流平滑回路と、を有し、前記主制御回路は、所定の設定周波数の三角波電圧を生成する発振回路と、前記第一の主スイッチ素子又は前記第二の主スイッチ素子を出力期間の間導通させるPWM回路と、を有し、真空雰囲気に接触されたカソード電極に前記出力電圧の負電圧を出力して前記真空雰囲気中にプラズマを生成して維持する電源装置であって、前記プラズマに流れるプラズマ電流を検出し、検出した前記プラズマ電流の電流値を示す電流信号を出力する電流検出器と、前記プラズマに印加されるプラズマ電圧を検出し、検出した前記プラズマ電圧の電圧値を示す電圧信号を出力する電圧検出器と、前記電圧信号と前記電流信号とを用いて電力信号を求め、出力する演算回路と、を有し、前記ブリッジ回路は、前記プラズマが消費する電力が目標電力値になるように動作が制御され、抵抗値が可変の抵抗回路と、前記目標電力値に基づいて前記抵抗回路の抵抗値を変更させる抵抗制御回路とを有し、前記抵抗回路は前記プラズマ電流が流れる経路に挿入された電源装置である。
本発明は、前記抵抗回路は、少なくとも小抵抗値と、前記小抵抗値よりも大きい中抵抗値と、前記中抵抗値よりも大きい大抵抗値とのいずれの抵抗値にも設定されるように構成され、前記抵抗制御回路には、第一基準値と、第一基準値よりも大きい第二基準値とが設定されており、前記抵抗制御回路は、前記目標電力値が前記第一基準値が示す電力値よりも小さいときは前記抵抗回路を前記大抵抗値に設定し、前記目標電力値が前記第一基準値が示す電力値以上であって前記第二基準値が示す電力値よりも小さいときは前記抵抗回路を前記中抵抗値に設定し、前記目標電力値が前記第二基準値が示す電力値以上であるときは前記抵抗回路を前記小抵抗値に設定する電源装置である。
本発明は、前記抵抗回路は、直列接続された複数の抵抗素子を有し、前記抵抗制御回路は、導通すると前記抵抗素子の両端をそれぞれ短絡させる副スイッチ素子を有し、前記副スイッチ素子の導通と遮断は、前記目標電力値と前記第一、第二基準値との比較結果によって制御され、前記小抵抗値と前記中抵抗値と前記大抵抗値との間は、所定の前記副スイッチ素子の導通と遮断とが変更されて生成される電源装置である。
本発明は、前記ブリッジ回路は、前記第一、第二の主スイッチ素子の主直列接続回路と第一、第二のコンデンサの副直列接続回路とが並列接続され、前記主直列接続回路と前記副直列接続回路とには、前記一次側直流電圧がそれぞれ印加され、前記第一、第二の主スイッチ素子の接続点が前記一次巻線の一端に電気的に接続され、前記第一、第二のコンデンサの接続点が前記一次巻線の他端に電気的に接続された電源装置である。
本発明は、出力電圧を出力する電源装置をアノード電極とカソード電極とに接続し、前記アノード電極と前記カソード電極との間に直流電圧を印加して真空槽の内部にプラズマを発生させて前記プラズマにプラズマ電流を流し、前記プラズマで消費される電力を目標電力値にして前記プラズマを維持するプラズマ維持方法であって、前記プラズマを維持する間に前記目標電力値と基準値とを比較し、前記目標電力値が前記基準値よりも小さい場合に、前記プラズマ電流が流れる経路の抵抗値を増加させるプラズマ維持方法である。
本発明は、前記アノード電極と前記電源装置の間と前記カソード電極と前記電源装置の間のうち、少なくともいずれか一方の間に抵抗回路を配置しておき、前記プラズマ電流が流れる経路の抵抗値を増加させるときには、前記抵抗回路の抵抗値を増加させるプラズマ維持方法である。
本発明は、前記目標電力値は前記電源装置の外部から入力されるプラズマ維持方法である。
【発明の効果】
【0011】
低消費電力のプラズマでも安定して維持できるプラズマ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】その副スイッチ素子の動作と抵抗値の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1の符号2は、本発明のプラズマ装置であり電源装置3と真空装置4とを有している。
【0014】
真空装置4は、真空槽42とカソード電極41とプラズマガス源45とを有しており、カソード電極41は真空槽42の内部に配置されている。この例ではカソード電極41にはスパッタリングターゲット44が設けられている。
【0015】
真空槽42の内部のスパッタリングターゲット44に対面する位置には台43が配置されている。
【0016】
真空槽42は接地電位に接続されアノード電極として機能しており、アノード電極として機能する真空装置をアノード電極40と呼ぶと、電源装置3から出力された出力電圧の正負二極性のうち、正極性側がアノード電極40に印加され、負極性側がカソード電極41に印加されるようになっている。
【0017】
台43上に基板46を配置し、真空槽42に接続された真空排気装置47によって真空槽42の内部を真空排気し、プラズマガス源45から真空槽42の内部にプラズマ用ガスを導入し、電源装置3によってカソード電極41とアノード電極40の間にプラズマ生成用の出力電圧を印加すると、スパッタリングターゲット44の表面にプラズマ用ガスのプラズマが直流電圧によって生成される。
【0018】
このプラズマ装置2では、プラズマ用ガスはスパッタリングガスとして用いられている。
【0019】
プラズマ用ガスのプラズマは、プラズマが生成された後、カソード電極41とアノード電極40との間に印加される電圧によって維持されており、スパッタリングターゲット44は維持されたプラズマによってスパッタリングされ、基板46の表面に薄膜が形成される。
【0020】
カソード電極41とアノード電極40との間に印加される電圧は電源装置3によって供給されており、その電源装置3を説明する。
【0021】
電源装置3は、主制御回路30とトランス13とを有しており、トランス13の一次側には直流電圧源11とブリッジ回路12とが設けられ、二次側には整流平滑回路14と、電圧検出器21と、電流検出器22とが設けられている。
【0022】
直流電圧源11は、正電圧端子Aと負電圧端子Bとを有しており、正電圧端子Aと負電圧端子Bとの間に一次側直流電圧が出力される。正電圧端子Aが、一次側直流電圧の正電圧側である。
【0023】
トランス13は、一次巻線W1と、この一次巻線W1に磁気結合された二次巻線W2とを有している。
【0024】
ブリッジ回路12は、第一の主スイッチ素子Q11と第二の主スイッチ素子Q12と第一のコンデンサC11と第二のコンデンサC12とを有しており、第一の主スイッチ素子Q11と第二の主スイッチ素子Q12とは直列接続されて主直列接続回路が構成され、また、第一のコンデンサC11と第二のコンデンサC12とは直列接続されて副直列接続回路が構成されている。
【0025】
主直列接続回路と副直列接続回路とは、一端がそれぞれ正電圧端子Aに接続され、他端がそれぞれ負電圧端子Bに接続されている。
【0026】
第一の主スイッチ素子Q11と第二の主スイッチ素子Q12とが互いに接続された接続点は、一次巻線W1の一端に接続されており、従って、第一の主スイッチ素子Q11と第二の主スイッチ素子Q12との接続された接続点は、第一の主スイッチ素子Q11を介して正電圧端子Aに接続され、同様に、第二の主スイッチ素子Q12を介して負電圧端子Bに接続されている。
【0027】
第二の主スイッチ素子Q12が遮断した状態で第一の主スイッチ素子Q11が導通すると一次巻線のW1の一端は正電圧端子Aに接続される。第一の主スイッチ素子Q11が遮断した状態で第二の主スイッチ素子Q12が導通すると一次巻線のW1の一端は負電圧端子Bに接続される。
【0028】
第一のコンデンサC11と第二のコンデンサC12とが互いに接続された接続点は、一次巻線W1の他端に接続されており、従って、一次巻線W1の他端は、第一のコンデンサC11を介して正電圧端子Aに接続され、同様に、第二のコンデンサC12を介して負電圧端子Bに接続されている。
【0029】
ブリッジ回路12の動作は主制御回路30によって制御されており、第一、第二の主スイッチ素子Q11、Q12は、交互に導通するようにされている。
【0030】
第二の主スイッチ素子Q12が遮断した状態で第一の主スイッチ素子Q11が導通すると一次巻線W1の一端は、正電圧端子Aに接続され、正電圧端子Aと負電圧端子Bとの間で、第一の主スイッチ素子Q11と、一次巻線W1と、第二のコンデンサC12とをこの順序で通る第一の電流が流れる。
【0031】
第一の主スイッチ素子Q11が遮断した状態で、第二の主スイッチ素子Q12が導通すると一次巻線W1の一端は負電圧端子Bに接続され、正電圧出力端子Aと負電圧出力端子Bとの間で、第一の主コンデンサC11と、一次巻線W1と、第二の主スイッチ素子Q12とをこの順序で通る第二の電流が流れる。
【0032】
第一の電流と第二の電流とが一次巻線W1に流れる向きは互いに逆向きであり、第一の主スイッチ素子Q11と第二の主スイッチ素子Q12とは交互に導通するため、第一の電流と第二の電流とは交互に流れるから、一次巻線W1には交流電流である一次側交流電流が流れ、二次巻線W2には交流電圧である二次側交流電圧が誘起される。
【0033】
二次側交流電圧は整流平滑回路14によって直流電圧に変換され、整流平滑回路14の負電圧側の端子Dと正電圧側の端子Fとの間に出力電圧として出力される。
【0034】
負電圧側の端子Dは、カソード電極41に電気的に接続されており、正電圧側の端子Fはアノード電極40に電気的に接続されている。
【0035】
アノード電極40とカソード電極41との間に形成されたプラズマに流れる電流をプラズマ電流とすると、プラズマ電流は、正電圧側の端子Fから出力され、プラズマを流れて負電圧側の端子Dに戻る。
【0036】
電圧検出器21の一端は、カソード電極41に接続され、他端はアノード電極40に接続されている。この例ではアノード電極40は接地電位に接続されており、電圧検出器21の他端は接地電位に接続されている。
【0037】
この電源装置3は、抵抗値が可変の抵抗回路15を有しており、抵抗回路15と電流検出器22とは、電源装置3の内部のプラズマ電流が流れる経路に挿入されている。
【0038】
抵抗回路15と電流検出器22とは、具体的には、整流平滑回路14の負電圧側の端子Dとカソード電極41の間、又は、正電圧側の端子Fとアノード電極40の間に、別々に又は一緒に挿入することができる。
【0039】
なお、整流平滑回路14は、整流回路14aと平滑回路14bとを有している。
【0040】
整流回路14aは、4個のダイオードD11~D14がブリッジ接続されたダイオードブリッジ回路であり、平滑回路14bは、平滑インダクタI1と平滑コンデンサC1とから成るLCフィルタ回路であり、平滑インダクタI1は二次側交流電圧によって流れる電流経路に挿入されており、平滑コンデンサC1は平滑インダクタI1よりもプラズマ側で、生成されたプラズマと並列に接続されている。ここでは平滑インダクタI1は、整流平滑回路14の正電位側の端子Fと整流回路14aの一端との間に挿入されており、平滑回路14bの出力端子は、整流平滑回路14の負電圧側の端子Dと正電圧側の端子Fである。
【0041】
抵抗回路15は抵抗制御回路16に接続されており、抵抗制御回路16によって抵抗値が設定される。ここでは抵抗回路15はゼロΩである小抵抗値に設定されているものとする。また、電流検出器22には電圧降下は発生せず、電圧検出器21には電流が流れないものとすると、カソード電極41とアノード電極40とには整流平滑回路14の負電圧側の端子Dと正電圧側の端子Fとの間に出力された出力電圧が印加されている。
【0042】
真空槽42の内部で生成されたプラズマにはカソード電極41とアノード電極40との間の電圧が印加されており、カソード電極41とアノード電極40との間の電圧をプラズマ電圧とすると、プラズマ電圧の大きさは電圧検出器21によって検出され、検出されたプラズマ電圧の電圧値を示す電圧信号が電圧検出器21から主制御回路30に出力される。
【0043】
また、真空槽42の内部で生成されたプラズマには真空槽42の内部でカソード電極41とアノード電極40との間に流れる電流が流れており、真空槽42の内部でカソード電極41とアノード電極40との間に流れる電流をプラズマ電流とすると、プラズマ電流は電流検出器22によって検出され、検出されたプラズマ電流の電流値を示す電流信号が電流検出器22から主制御回路30に出力される。
【0044】
主制御回路30は、PWM回路36と発振回路32と演算回路31と入力回路37と記憶回路35とを有しており、電圧信号と電流信号とは演算回路31に入力されており、演算回路31の内部では、電圧信号と電流信号とが演算され、プラズマで消費された電力の大きさを示す電力信号が生成される。
【0045】
入力回路37と記憶回路35とは演算回路31に接続されており、外部機器から出力された信号が、入力回路37を介して演算回路31に入力されるようになっている。
【0046】
入力回路37はキーボード等で人手で生成された信号を演算回路31に入力させるコンピュータ等の装置も含まれる。
【0047】
プラズマに印加されるべき電圧の値を目標電圧値とし、プラズマに流されるべき電流の値を目標電流値とし、プラズマが消費すべき電力の値を目標電力値とすると、演算回路31には、それらの値のうちの少なくとも一つの値が入力回路37を介して入力され、記憶回路35に記憶され、演算回路31が読み込むことができる。
【0048】
他方、記憶回路35には、入力回路37を介さずに、予め目標電圧値、目標電流値、又は目標電力値を記憶しておくこともできる。この場合は、演算回路31は記憶された値のうち、何れかを選択して読み込むことができる。
【0049】
外部機器が、目標電圧値、目標電流値、又は目標電力値のうちのいずれかを示す信号を出力して入力回路37に入力する場合は、外部機器が出力する信号は、入力回路37を介して演算回路31に入力されるから、記憶回路35と入力回路37とが目標値を演算回路31に示す役割を担っている。
【0050】
主制御回路30は、記憶回路35の目標値を記憶する部分と入力回路37とのうち、いずれか一方のみが設けられていてもよく、また、入力回路37と記憶回路35とを一つの記憶入力回路として一個の回路で構成してもよい。
【0051】
演算回路31は、目標電圧値が入力されると、目標電圧値と電圧信号が示す電圧値との間の差である差電圧を求め、差電圧の値を示す差電圧信号を生成する。目標電流値が入力されると、目標電流値と電流信号が示す電流値との間の差である差電流を求め、差電流の値を示す差電流信号を生成する。また、目標電力値が入力されると、目標電力値と電力信号が示す電力値との間の差である差電力を求め、差電力の値を示す差電力信号を生成する。
【0052】
差電圧は、目標電圧値と電圧信号が示す電圧値との間の誤差であり、差電流は、目標電流値と電流信号が示す電流値との間の誤差であり、差電力は、目標電力値と電力信号が示す電力値との間の誤差である。
【0053】
差電流の値と差電力の値とを差の値とすると、差の値は、信号が示す値と目標値との間の誤差であり、演算回路31はこの誤差を算出していることになる。
【0054】
電源装置3は、プラズマに定電圧を印加する定電圧モードと、プラズマに定電流を流す定電流モードと、プラズマの消費電力を一定にする定電力モードのいずれかのモードで動作するように設定されており、定電圧モードで動作するときは差電圧信号が制御信号として演算回路31からPWM回路36に出力され、定電流モードで動作するときは差電流信号が制御信号として演算回路31からPWM回路36に出力され、定電力モードで動作するときは差電力信号が制御信号として演算回路31からPWM回路36に出力される。
【0055】
ここでは、演算回路31は、差電圧信号と差電流信号と差電力信号のいずれか1個の信号を制御信号としてPWM回路36に出力しているものとする。例えば、演算回路31は、各モードのうち記憶された何れかのモードに従った誤差を制御信号としてPWM回路36に出力する。
【0056】
発振回路32が同じ形状で同じピーク電圧を有する三角波の電圧波形を一定の周波数で継続して生成して発振信号として発振回路32からPWM回路36に出力されている。
【0057】
PWM回路36は、比較器33と駆動回路34とを有している。
【0058】
比較器33には、発振回路32が出力する発振信号と、演算回路31が出力する制御信号とが電圧値から成る信号又は電圧変化から成る信号として入力されている。ここでは、例えば差電圧信号は、差電圧信号の電圧値が差電圧の電圧値を示しており、差電流信号は差電流信号の電圧値が差電流の電流値を示している。また、差電力信号は差電力信号の電圧値が差電力の電力値を示している。
【0059】
比較器33は発振信号の電圧の絶対値と制御信号の電圧の絶対値とを比較し、発振信号の電圧の絶対値が制御信号の電圧の絶対値よりも大きい期間を出力時間とした矩形波電圧を駆動回路34に出力する。
【0060】
発振信号の電圧波形は鋸歯状波であり、繰り返し出力される矩形波電圧の終期の周期が三角波電圧の周波数と同じになる。
【0061】
駆動回路34は入力された矩形波の始期と同期して、第一、第二の主スイッチ素子Q11、Q12を交互に導通させており、第一、第二の主スイッチ素子Q11、Q12の導通期間は、矩形波電圧の時間幅になっている。矩形波電圧の時間幅は、制御信号の電圧の絶対値が大きい場合は短くなり、小さい場合は長くなる。
【0062】
第一、第二の主スイッチ素子Q11、Q12を、入力された矩形波電圧の時間幅だけ交互に導通させて一次側直流電圧を流し、二次側交流電圧を生成し、整流平滑回路14によって直流の出力電圧に変換し、プラズマに供給される。
【0063】
上記PWM回路36では、負荷となっているプラズマが消費する電力が小さいときは制御信号の電圧が必要以上に大きくなりやすく、制御信号の電圧の絶対値が、三角波電圧のピーク電圧の絶対値よりも大きくなると矩形波電圧が出力されなくなる。
【0064】
その場合、第一、第二の主スイッチ素子Q11、Q12が導通できない期間が発生し、出力電圧の値が不安定になり、プラズマを安定して維持できないことになるため、本発明ではプラズマ電力が小さいときほど、プラズマに直列接続される抵抗回路15の抵抗値を大きくする。
【0065】
抵抗回路15の抵抗値は、少なくとも小抵抗値と、小抵抗値よりも大きな大抵抗値を有しており、ここでは、小抵抗値と、小抵抗値よりも大きい中抵抗値と、前記中抵抗値よりも大きい大抵抗値との3種類の抵抗値を有している。
【0066】
この抵抗回路15の抵抗値は、小抵抗値と中抵抗値と大抵抗値のうちのどの値の抵抗値にも設定することができる。
【0067】
抵抗回路15の抵抗値は、2種類の抵抗値に設定できる場合も、4種類以上の抵抗値に設定できる場合も本発明に含まれるが、いずれの場合も最小の抵抗値はゼロΩに近い値にすることが望ましい。
【0068】
ここでは抵抗回路15は、例えば二個の抵抗素子R1、R2を直列接続して構成させ、二個の抵抗素子R1、R2の直列接続回路の一端を負電圧側の端子Dに接続し、他端をカソード電極41に接続する。または、二個の抵抗素子R1、R2の直列接続回路の一端を正電圧側の端子Fに接続し、他端をアノード電極40に接続してもよい。
【0069】
この抵抗回路15を動作させる抵抗制御回路16は、導通すると抵抗素子R1、R2の両端をそれぞれ個別に短絡させる二個の副スイッチ素子Q1、Q2と、副スイッチ素子Q1、Q2の導通と遮断とを切り替える副制御装置17とを有している。
【0070】
副制御装置17は演算回路31によって制御されており、演算回路31が副制御装置17を制御して二個の副スイッチ素子Q1、Q2を導通させると抵抗回路15は小抵抗値に設定され、二個の副スイッチ素子Q1、Q2を遮断させると抵抗回路15は大抵抗値に設定される。二個の副スイッチ素子Q1、Q2の一方を導通させ,他方を遮断させると抵抗回路15は中抵抗値に設定される。
【0071】
<目標電力値による抵抗値制御>
次に、抵抗回路15の抵抗値制御を説明する。
【0072】
プラズマは既に発生され、電源装置3は定電力モードで動作してプラズマを維持するようにされており、差電力信号が制御信号として演算回路31からPWM回路36に出力されているものとする。
【0073】
記憶回路35には、抵抗回路15の抵抗値を切り替えるための複数の基準値が記憶されており、ここでは小電力を示す第一基準値と、第一基準値よりも大きな電力を示す第二基準値とが記憶されている。
【0074】
演算回路31は、記憶回路35に記憶された目標電力値や、入力回路37を介して入力された目標電力値を読み取り、記憶された第一基準値と第二基準値と比較して、目標電力値が第一基準値よりも小さいときは、抵抗回路15を大抵抗値に設定し、目標電力値が第一基準値以上であり第二基準値よりも小さいときは抵抗回路15を中抵抗値に設定し、目標電力値が第二基準値以上であるときは抵抗回路15を小抵抗値に設定する。
【0075】
従って、プラズマ電力が第二基準値以上の場合はプラズマ電流が大きくなるため、抵抗回路15は小抵抗にされ、抵抗回路15の消費電力が小さくされる。プラズマ電力が第一基準値よりも小さい場合は、プラズマが不安定になるため、抵抗回路15は大抵抗値にされ、安定してプラズマを維持することができるようになる。
【0076】
上記例では、抵抗回路15は小抵抗値と中抵抗値と大抵抗値との3個の抵抗値に設定できるようにされていたが、二個の抵抗値に設定できるようにしてもよい。また、抵抗回路15が4個以上の抵抗値になるようにされることもできる。
【0077】
その場合は、印加するプラズマ電力の電力範囲を、互いに重複しないように分割して複数の電力区分を設け、小さい電力値の電力区分には大きい電力値の電力区分に関連付けられた抵抗値よりも大きな抵抗値が関連付けられるように、各電力区分に抵抗回路15が設定できる抵抗値を関連付け、入力された目標電力値が属する電力区分を特定し、抵抗回路15を、特定された電力区分に関連付けられた抵抗値に設定すればよい。
【0078】
この場合、プラズマ電力の電力範囲を複数の電力区分に区分けするときに、隣接する電力区分の境界となる基準値を、隣接する電力区分毎に記憶回路35に記憶させておき、入力された目標電力値と基準値とを比較して、電力区分を決定すればよい。
【0079】
抵抗回路15が二個の抵抗素子R1、R2を有する場合に、一方の抵抗素子R1の抵抗値よりも他方の抵抗素子R2の抵抗値が大きい場合は、二個の抵抗素子R1、R2と二個の副スイッチ素子Q1、Q2とによって、抵抗回路15の抵抗値を4種類の抵抗値(0、R1、R2、R1+R2)の中の2種類以上の抵抗値にすることができる。
【0080】
例えば、記憶回路35には電源装置3の定格の出力電力を設定しておき、また、第一基準値として定格出力電力の5%の値が設定され、第二基準値として定格出力電力の10%の値が設定されており、目標電力値と第一、第二の基準値とを比較し、
図2に示すように、目標電力値が第二基準値が示す電力値以上の場合は、二個の副スイッチ素子Q
1、Q
2を導通させ、抵抗回路15の抵抗値をゼロΩである小抵抗値にする。
【0081】
目標電力値が第二基準値が示す電力値よりも小さく、第一基準値が示す電力値以上の場合は、一方の副スイッチ素子Q1を導通させて一方の抵抗素子R1を短絡させ、他方の副スイッチ素子Q2を遮断させて抵抗回路15を他方の抵抗素子R2の中抵抗値の抵抗値R2にすることができる。第一基準値よりも小さい場合は、二個の副スイッチ素子Q1、Q2を遮断させ、抵抗回路15の抵抗値を、大抵抗値である二個の抵抗素子R1、R2の合計抵抗値R1+R2にする。
【0082】
<測定値による抵抗制御>
演算回路31は、入力された目標電力値と第一基準値と第二基準値と比較結果ではなく、電圧信号と電流信号との演算で求められた電力信号を第一基準値と第二基準値と比較し、電力信号が示す電力値が第一基準値よりも小さいときは大抵抗値に設定し、電力信号が示す電力値が第一基準値以上であって第二基準値よりも小さいときは中抵抗値に設定し、電力信号が示す電力値が第二基準値以上であるときは小抵抗値に設定することもできる。
【0083】
この場合に電力信号の変化によって抵抗回路15の抵抗値が小抵抗値から大抵抗値に変更されたときに、抵抗回路15で消費される電力値だけ、整流平滑回路14の負電圧側の端子Dと正電圧側の端子Fの間で消費される電力が大きくなる。これは二次側の消費電力が増加したことになり、一次側交流電流の電流量が増加するので、ブリッジ回路12の間欠動作が防止される。
【0084】
電圧検出器21はカソード電極41とアノード電極40との間の電圧を検出しており、抵抗回路15の両端に生じた電圧は、電圧検出器21には検出されないようになっている。
【0085】
<その他の抵抗値制御>
抵抗回路15の抵抗値を設定する信号が、入力回路37を介して演算回路31に入力されるようにしてもよい。その信号を抵抗値信号とすると、小抵抗値を示す抵抗値信号が入力されると演算回路31は抵抗制御回路16を動作させて抵抗回路15の抵抗値を小抵抗値に設定し、中抵抗値を示す抵抗値信号が入力されると演算回路31は抵抗制御回路16を動作させて抵抗回路15の抵抗値を中抵抗値に設定し、大抵抗値を示す抵抗値信号が入力されると演算回路31は抵抗制御回路16を動作させて抵抗回路15の抵抗値を大抵抗値に設定することができる。
【0086】
<他の内容>
以上説明したように、本発明では、抵抗回路15の抵抗値とプラズマのインピーダンスが直列接続されて出力電圧が印加され、プラズマ消費電力が小さくなったときに、プラズマに直列接続された抵抗回路15の抵抗値が大きくされ、二次側の消費電力が大きくなる。
【0087】
この場合、プラズマが消費する電力に変化が無くても、プラズマと抵抗回路15との直列接続回路が消費する電力は大きくなるため、供給電力を大きくするためにブリッジ回路12の導通期間が長くなり、間欠動作が防止される。
【0088】
それに対し、従来技術のプラズマ装置は、本願発明の抵抗回路15は設けられていない。
【0089】
図4の符号102は、従来技術のプラズマ装置を示しており、
図1のプラズマ装置2と同じ素子には同じ符号を付すと、プラズマの消費電力が、設定された比較用の基準値以上の場合は、本発明の
図1のプラズマ装置2の抵抗回路15の抵抗値がゼロの場合と同じである。
【0090】
図4のプラズマ装置102が
図1のプラズマ装置2と異なる点は、
図4のプラズマ装置102が有する電源装置103では、整流平滑回路14の負電圧側の端子Dとカソード電極41とは直結されており、負電圧側の端子Dと正電圧側の端子Fとの間に、副スイッチ素子Q
101と抵抗素子R
101とが直列接続されたブリーダ回路115が接続されている。
【0091】
記憶回路35には比較用の基準値が記憶されており、電力信号が示す電力値と比較用の基準値とが演算回路31によって比較され、電力信号が示す電力値が比較用の基準値よりも小さい場合は、演算回路31は抵抗制御回路116を制御して副スイッチ素子Q101を導通させ、負電圧側の端子Dと正電圧側の端子Fとを、抵抗素子R101によって接続し、二次側の消費電力を増加させる。
【0092】
しかしながらDC放電によって維持されているプラズマは定電圧負荷の電気的特性を有しているため、不安定な制御になり、カソード電極41に印加される電圧が安定しないという不都合が発生する。
【0093】
それに対し本発明は負電圧側の端子Dと正電圧側の端子Fとの間の出力電圧が大きくなるので、安定に制御することができる。
【0094】
なお、副スイッチ素子Q1、Q2は、光結合素子によって、電気的に絶縁された状態で、導通と遮断が制御されるようになっている。
【0095】
また、上記ブリッジ回路12はハーフブリッジ回路であったが、第一~第四の主スイッチ素子を使用するフルブリッジ回路であっても、一次巻線W1に交流電流を流せるように動作すればよい。
【0096】
また、抵抗値が連続的に変化できる抵抗回路15を用いたプラズマ装置も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
2……プラズマ装置
3……電源装置
4……真空装置
11……直流電圧源
12……ブリッジ回路
13……トランス
14……整流平滑回路
15……抵抗回路
16……抵抗制御回路
21……電圧検出器
22……電流検出器
31……演算回路
36……PWM回路
33……比較器
34……駆動回路
40……アノード電極
41……カソード電極
A……正電圧端子
B……負電圧端子
C11……第一のコンデンサ
C12……第二のコンデンサ
Q1,Q2……副スイッチ素子
Q11……第一の主スイッチ素子
Q12……第二の主スイッチ素子
R1、R2……抵抗素子
W1……一次巻線
W2……二次巻線