(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20230417BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20230417BHJP
B60S 1/02 20060101ALI20230417BHJP
H05B 3/12 20060101ALI20230417BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20230417BHJP
H05B 3/86 20060101ALI20230417BHJP
B60J 1/00 20060101ALN20230417BHJP
【FI】
C03C27/12 M
B32B17/10
B60S1/02 300
H05B3/12 A
H05B3/20 326B
H05B3/20 355B
H05B3/86
B60J1/00 H
(21)【出願番号】P 2019538075
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2018030042
(87)【国際公開番号】W WO2019039318
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-02-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2017162339
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】儀間 裕平
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 誠一
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】伊藤 真明
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-47060(JP,U)
【文献】特表2004-528699(JP,A)
【文献】特開2017-117785(JP,A)
【文献】実開昭55-113654(JP,U)
【文献】特表2016-532624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/12
B32B7/02
B32B17/06
B60S1/02
H05B3/20
H05B3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する1対のガラス板と、
前記1対のガラス板の間に位置し、前記1対のガラス板にそれぞれ接する1対の中間接着層と、
前記1対の中間接着層の間に位置する配線と、
前記配線に接続される1組のバスバーと、を備える合わせガラスであって、
前記配線は、前記ガラス板の同一辺側に配置される1組のバスバーの間に並列に配置された複数の導電性細線を含み、
前記導電性細線の各々は、前記ガラス板の主面における少なくとも一部の領域に、一つのまとまりとして配置され、少なくとも1回の折り返しを有し、
前記導電性細線の各々の抵抗値は、前記導電性細線の各々の抵抗値の平均値から10%以下の範囲にあり、
前記導電性細線の各々は、前記バスバーの一方の極から他方の極に至るまで、平面視で前記他方の極を通り越さず、
前記導電性細線の各々は、前記折り返しの回数が同一であり、
前記ガラス板の主面は複数のゾーンに分割され、
前記ゾーン毎に、互いに独立した1組のバスバー、及び1組の前記バスバーの間に並列に配置された複数の導電性細線が設けられ、
前記ゾーン毎に、前記導電性細線の各々の抵抗値の平均値が異なることを特徴とする合わせガラス。
【請求項2】
前記合わせガラスを車両に取り付けたときの垂直方向に、3回以上の前記折り返しを有することを特徴とする請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
並列に配置された複数の前記導電性細線からなる帯の幅が12cm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記折り返しにおける前記導電性細線の最近接線間のピッチが周囲のピッチと等しいことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項5】
前記導電性細線の各々の線幅が30μm以下であり、かつ複数の前記導電性細線の中で最小の線幅の部分と最大の線幅の部分との線幅の差が7μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項6】
複数の前記導電性細線は、線幅及びピッチの少なくとも片方が、前記バスバーの一方の極から他方の極に至るまでの途中で変化している導電性細線を含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項7】
複数の前記導電性細線は、波線の導電性細線を含み、
前記波線の導電性細線の周期が、前記バスバーの一方の極から他方の極に至るまでの途中で変化していることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項8】
前記導電性細線のピッチが1mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項1乃至
7の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項9】
前記導電性細線は、直線、波線の何れか又は組み合わせからなることを特徴とする請求項1乃至
8の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項10】
前記導電性細線及び前記バスバーは、銀、銅、又はアルミからなることを特徴とする請求項1乃至
9の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項11】
前記導電性細線の各々は、前記合わせガラスを車両に取り付けたときのフロント側に配置されることを特徴とする請求項1乃至
10の何れか一項に記載の合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や鉄道等の車両の窓ガラスで、冬季に窓ガラスに付着した水分の凍結を解消したり(融氷)、窓ガラスの曇を晴らしたり(防曇)するために、電熱線を挟み込んだ合わせガラス(電熱ガラス)が広く知られている。
【0003】
電熱ガラスの具体例としては、主に細い金属線を中間接着層に予め張り付けて作製される所謂ヒートワイヤ(例えば、特許文献1参照)や、導電性の配線が形成された基材を合わせガラスに封入するもの(例えば、特許文献2参照)等が挙げられる。
【0004】
自動車のサイドガラスにおいても、上記各々の電熱ガラスを適用することは可能であるが、サイドガラスはフロントガラス等と比べて形状が単純な長方形や台形でないことも多く、均一に発熱させることが難しい。
【0005】
特に昇降可能なサイドガラスでは印刷による隠蔽領域を十分にとることができず、見栄えや、導電性エレメントの水分からの保護の観点からバスバーは下辺に配置されることが望ましいため、電流の流れる経路がフロントガラスと比べて複雑になる。そのため、金属線を封入する構造は製造難易度が高い。
【0006】
一方、絶縁線により複数のセグメントに分けられた導電性のコーティングを、外ガラスと内ガラスとの間に面状に配置した合わせガラスも提案されているが(例えば、特許文献3参照)、絶縁線の存在は外観上好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平08-072674号公報
【文献】特開2016-20145号公報
【文献】特表2016-532624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、電気的に加熱可能な合わせガラスにおいて、外観及び発熱均一性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本合わせガラスは、互いに対向する1対のガラス板と、前記1対のガラス板の間に位置し、前記1対のガラス板にそれぞれ接する1対の中間接着層と、前記1対の中間接着層の間に位置する配線と、前記配線に接続される1組のバスバーと、を備える合わせガラスであって、前記配線は、前記ガラス板の同一辺側に配置される1組のバスバーの間に並列に配置された複数の導電性細線を含み、前記導電性細線の各々は、前記ガラス板の主面における少なくとも一部の領域に、一つのまとまりとして配置され、少なくとも1回の折り返しを有し、前記導電性細線の各々の抵抗値は、前記導電性細線の各々の抵抗値の平均値から10%以下の範囲にあり、前記導電性細線の各々は、前記バスバーの一方の極から他方の極に至るまで、平面視で前記他方の極を通り越さず、前記導電性細線の各々は、前記折り返しの回数が同一であり、前記ガラス板の主面は複数のゾーンに分割され、前記ゾーン毎に、互いに独立した1組のバスバー、及び1組の前記バスバーの間に並列に配置された複数の導電性細線が設けられ、前記ゾーン毎に、前記導電性細線の各々の抵抗値の平均値が異なることを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、電気的に加熱可能な合わせガラスにおいて、外観及び発熱均一性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態に係る車両用のサイドガラスを例示する図である。
【
図2A】
図1のA-A線に沿う部分拡大断面図(その1)である。
【
図2B】
図1のA-A線に沿う部分拡大断面図(その2)である。
【
図4】第2の実施の形態に係る車両用のサイドガラスを例示する図である。
【
図5】第2の実施の形態の変形例に係る車両用のサイドガラスを例示する図である。
【
図9】第3の実施の形態に係る車両用のサイドガラスを例示する図である。
【
図10】第4の実施の形態に係る車両用のサイドガラスを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係る車両用のサイドガラスを例示する図である。
図2Aは、
図1のA-A線に沿う部分拡大断面図である。なお、
図1において、左側(矢印Xの根元側)がサイドガラス10を車両に取り付けたときのフロント側となり、右側(矢印Xの先端側)がリア側となる。又、
図1において、下側(矢印Zの根元側)がサイドガラス10を車両に取り付けたときのフロア側となり、上側(矢印Zの先端側)がルーフ側となる。又、
図1において、一点鎖線Dよりも下側は、サイドガラス10を車両に取り付けたときに車体に隠れて車両の外部から視認できない領域である。
【0014】
図1及び
図2Aに示すように、サイドガラス10は、主要な構成要素として、1対のガラス板11及び12と、1対の中間接着層13及び14と、配線16及びバスバー17が形成された基材15とを有し、電気的に加熱可能な合わせガラスである。サイドガラス10は湾曲形状でなくても、湾曲形状であってもよい。1対の中間接着層13及び14と、配線16が形成された基材15とが積層された形態は、中間膜とも呼ばれる。
【0015】
ガラス板11及び12は、互いに対向するように配置されている。ガラス板11及び12としては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケート、有機ガラス等を用いることができる。ガラス板11及び12のそれぞれの厚さは、飛び石性能等の各種性能や成型の容易性等を考慮して適宜決定できるが、例えば、0.3mm~3mm程度とすることができる。
【0016】
ガラス板11及び12の形状は、特に限定されないが、バスバー17が配置される一辺を有する形状であればよく、例えば、四角形、四角形の少なくとも一つの角を斜めにした斜角長方形、四角形の少なくとも一つの角を丸くした角丸長方形等が挙げられる。本実施の形態では、一例として、ガラス板11及び12の形状は、長方形の一つの角を斜めにした斜角長方形である。
【0017】
なお、融氷や防曇を速く行うためには、ガラス板11及び12の少なくとも一方の厚みは2.0mm以下が好ましく、1.8mm以下であることがより好ましい。特に飛び石性能と高速融氷・防曇を両立させるためには、車外側のガラス板の厚みは、1.8mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、車内側のガラス板の厚みは、2.0mm以下が好ましく、1.8mm以下がより好ましい。
【0018】
中間接着層13及び14は、配線16及びバスバー17が形成された基材15を間に挟んだ状態でガラス板11とガラス板12とを接着している。中間接着層13は、ガラス板11とガラス板12との間において、ガラス板11及び基材15(配線16及びバスバー17が形成されている側)に接するように配置されており、配線16及びバスバー17を被覆している。中間接着層14は、ガラス板11とガラス板12との間において、ガラス板12及び基材15(配線16及びバスバー17が形成されていない側)に接するように配置されている。
【0019】
中間接着層13及び14としては熱可塑性樹脂が多く用いられ、例えば、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂等の従来からこの種の用途に用いられている熱可塑性樹脂が挙げられる。又、特開2015-821号公報に記載されている変性ブロック共重合体水素化物を含有する樹脂組成物も好適に使用できる。
【0020】
これらの中でも、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れたものを得られることから、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂が好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。上記可塑化ポリビニルアセタール系樹脂における「可塑化」とは、可塑剤の添加により可塑化されていることを意味する。その他の可塑化樹脂についても同様である。
【0021】
上記ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルアルコール(以下、必要に応じて「PVA」と言うこともある)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール系樹脂、PVAとn-ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂(以下、必要に応じて「PVB」と言うこともある)等が挙げられ、特に、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、PVBが好適なものとして挙げられる。なお、これらのポリビニルアセタール系樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。但し、中間接着層13及び14を形成する材料は、熱可塑性樹脂には限定されない。
【0022】
中間接着層13及び14の各々の厚みに制限はないが、中間接着層13及び14の一方の厚みは0.01mm以上0.20mm以下であることが好ましい。中間接着層13及び14の他方の厚みは、中間接着層に遮熱、遮音などの機能を付与する観点で0.38mm以上2.28mm以下であることが好ましい。配線16に接する側に配置される中間接着層(本実施の形態では、中間接着層13)の厚みが、配線16に接しない側に配置される中間接着層(本実施の形態では、中間接着層14)の厚みよりも薄いことが好ましい。
【0023】
一方の中間接着層の厚みが他方の中間接着層の厚みより薄く、且つ、薄い方の中間接着層の厚みが0.20mm以下であることにより、配線16への通電時に生じる透視歪(通電歪)を効果的に低減することができる。
【0024】
基材15は、配線16及びバスバー17を形成するための支持体となるものであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等のフィルム状基材を用いることができる。基材15の厚さは、例えば、25~150μm程度とすることができる。
【0025】
基材15の一方の側(本実施の形態ではガラス板11側)には、配線16及びバスバー17が形成されている。
【0026】
又、
図2Bに示すように、基材15を設けず、中間接着層13又は14を、配線16及びバスバー17の支持体とすることもできる。この場合、中間接着層13と14の間に配線16及びバスバー17が位置することが好ましい。なお、
図2Bでは中間接着層13と中間接着層14の界面を明示しているが、両者が一体化して界面が不明確になる場合もある。以降の説明は、基材15を有する
図2Aの構造を例にして行う。
【0027】
配線16は、基材15の一方の側に並列に配置された導電性細線16a~16hを含んでいる。但し、配線16が8本の導電性細線16a~16hを含むのは一例であり、配線16は2本以上の任意の本数の導電性細線を含むことができる。
【0028】
1組のバスバー17は、一方の極17a及び他方の極17bを含んでいる。バスバー17の一方の極17aは例えば正極であり、リード線等を介して、車両に搭載されたバッテリー等の電源の正側と接続される。又、バスバー17の他方の極17bは例えば負極であり、リード線等を介して、車両に搭載されたバッテリー等の電源の負側と接続される。
【0029】
1組のバスバー17の一方の極17aと他方の極17bは、サイドガラス10の同一辺側(例えば、下辺側)に配置されている。バスバー17は、一点鎖線Dよりも下側に配置することが好ましい。一点鎖線Dよりも下側の領域は、サイドガラス10を車両に取り付けたときに車体に隠れるため、外観を損なうことを防止できるためである。又、下辺にバスバー17を配置した場合、隠蔽領域が十分でバスバー17や配線16を水分等から保護できることからも下辺にバスバー17を配置することが望ましい。
【0030】
更に、本実施の形態では、導電性細線16a~16hが、同一方向に電流が流れる一つのまとまりとして配置されることにより、バスバー17は1組となることから、簡易的で生産性の優れるバスバー配置を実現することができる。
【0031】
配線16を構成する導電性細線16a~16hは、各々が1回の折り返しを有している(
図1のB部)。そして、導電性細線16a~16hの一端はバスバー17の一方の極17aと電気的に接続され、導電性細線16a~16hの他端はバスバー17の他方の極17bと電気的に接続されている。
【0032】
なお、バスバー17の一方の極17aから他方の極17bに至るまでの間に各々の導電性細線に流れる電流の向きが180度変わる回数を、折り返し回数と称する。
図1の例では、導電性細線16a~16hの各々について折り返し回数は1(
図1のB部)であるが、後述の実施の形態で示すように、第1の実施の形態においても折り返し回数は1回より多くてもよい。
【0033】
バッテリー等の電源からバスバー17を介して導電性細線16a~16hに電流が供給されると、導電性細線16a~16hが発熱する。導電性細線16a~16hで発生した熱は、ガラス板11及び12に伝わってガラス板11及び12を温め、ガラス板11及び12に付着した結露による曇を取り除いたり、窓ガラスの凍結を解消したりすることで、乗員の良好な視界を確保することができる。
【0034】
導電性細線16a~16hの各々の抵抗値は、導電性細線16a~16hの各々の抵抗値の平均値から10%以下の範囲である。ここで、バスバー17の一方の極17aと他方の極17bとの間の導電性細線16a~16hの抵抗値を各々Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、及びRhとする。この場合、導電性細線16a~16hの抵抗値の平均値Rm=(Ra+Rb+Rc+Rd+Re+Rf+Rg+Rh)/8である。そして、0.9×Rm≦Ra≦1.1×Rmであり、Rb~Rhについても同様である。
【0035】
導電性細線16a~16hの各々の抵抗値は、導電性細線16a~16hの各々の長さ及び幅の片方又は両方を変えることで調整することができる。
【0036】
このように、導電性細線16a~16hの各々の抵抗値を、導電性細線16a~16hの各々の抵抗値の平均値から10%以下の範囲とすることにより、導電性細線16a~16hが配置された領域を均一に加熱することができる。一方、導電性細線16a~16hの各々の抵抗値が、導電性細線16a~16hの各々の抵抗値の平均値より10%より大きくなると、導電性細線16a~16hが配置された領域を均一に加熱することが困難となり、曇が均一に晴れない等の問題が生じる。
【0037】
導電性細線16a~16hの材料としては、導電性材料であれば特に制限はないが、例えば、金属材料を用いることができる。金属材料の一例としては、銀、銅、アルミニウム等を挙げることができる。バスバー17の材料としては、例えば、導電性細線16a~16hと同様の材料を用いることができる。導電性細線16a~16hとバスバー17は、同一材料により一体に形成されてもよい。
【0038】
導電性細線16a~16hの各々の線幅Wは、5μm以上とすることが好ましい。導電性細線16a~16hの各々の線幅Wが5μm以上であると断線等の不具合が生じにくいためである。
【0039】
又、導電性細線16a~16hの各々の線幅Wは30μm以下であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは18μm以下、更に好ましくは16μm以下である。導電性細線16a~16hの各々の線幅Wが30μm以下であると線が視認しにくく、20μm以下、18μm以下、16μm以下になるにつれて線がいっそう視認しにくくなるためである。
【0040】
導電性細線16a~16hの中で最小の線幅の部分と最大の線幅の部分との線幅の差ΔWは、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下である。ΔWが7μm以下であると、視認したときの違和感を小さくすることができ、5μm以下、3μm以下になるにつれて違和感をいっそう小さくできるためである。
【0041】
導電性細線16a~16hは所望のピッチPで互いに離れており、そのピッチPは、好ましくは1mm以上5mm以下、より好ましくは2mm以上4mm以下、更に好ましくは2mm以上3mm以下である。導電性細線16a~16hのピッチPが1mm以上であると、線の密度が高くならないため、サイドガラス10の透過率が低下することを防止でき、2mm以上とすることで透過率が低下することをいっそう防止できるためである。又、導電性細線16a~16hのピッチPが5mm以下であると、線が視認されにくく、又、融氷や防曇にムラができにくいためである。導電性細線16a~16hのピッチPが4mm以下、3mm以下になるにつれて、線がいっそう視認されにくく、又、融氷や防曇にムラがいっそうできにくくなる。ピッチPは、常に一定であってもよく、後述するように途中で変化してもよい。
【0042】
導電性細線16a~16hは、ガラス板11及び12の主面の略全体に配置する必要はなく、ガラス板11及び12の主面における少なくとも一部の領域に配置してもよい。
図1の例では、サイドガラス10のフロントガラス側の下方のみに配線16が配置されている。これにより、運転者がサイドガラス10を介してドアミラーを視る領域の曇を晴らすことができるため、運転者からドアミラーが容易に視認できるようになる。
【0043】
導電性細線16a~16hは、基材15に対して車内側に設けられてもよいし、車外側に設けられてもよい。又、
図1では、便宜上、導電性細線16a~16hの線幅W及ピッチPが一定であるように描かれている。しかし、導電性細線16a~16hの線幅W及びピッチPの片方又は両方は、バスバー17の一方の極17aから他方の極17bに至るまでの途中で部分的に変化してもよい。
【0044】
導電性細線16a~16hは直線には限定されず、直線、波線(正弦波、三角波、矩形波等)の何れか又は組み合わせから構成することができる。導電性細線16a~16hは、例えば、
図3(a)に示す正弦波でもよく、
図3(b)に示す三角波でもよく、その他(例えば、矩形波等)でもよく、これらが混在してもよく、これらと直線とが混在してもよい。なお、
図3は、
図1のC部の部分拡大図である。
【0045】
又、導電性細線16a~16hが波線である場合、バスバーの一方の極17aから他方の極17bに至るまでの途中で波長や周期が変化してもよい。又、導電性細線16a~16hが波線である場合、導電性細線16a~16hのうち、隣接する導電性細線の位相は揃っていてもよいし、ずれていてもよいが、隣接する導電性細線の位相がずれていると、光の規則的な散乱による光芒を抑制できる点で好適である。
【0046】
又、サイドガラス10の車外側や車内側に撥水、紫外線カット、赤外線カット、可視光吸収の機能を有する被膜や、低放射特性を有する被膜を有していてもよい。又、ガラス板11及び12の中間接着層13又は14と接する側に、紫外線カットや赤外線カット、低放射特性、可視光吸収、着色等の被膜を有していてもよい。
【0047】
サイドガラス10を作製するには、例えばフロート法等によりガラス板11及び12を作製する。又、基材15を準備し、基材15の一方の側に配線16及びバスバー17を形成する。配線16及びバスバー17は、サブトラクティブ法やセミアディティブ法等の周知の配線形成方法により、基材15の一方の側に一体に形成することができる。
【0048】
次に、中間接着層13及び14を準備し、中間接着層13及び14の間の所定位置に配線16及びバスバー17が形成された基材15を挟んだ積層体を作製する。そして、作製した積層体を更にガラス板11及び12の間に挿入して、各部材が
図2Aの順番に積層された合わせガラス前駆体(圧着前の合わせガラス)を作製する。なお、以上の工程で用いる各部材の材料や厚さについては、前述の通りである。
【0049】
次に、合わせガラス前駆体をゴム等からなる真空バッグの中に入れ、この真空バッグを排気系に接続して、真空バッグ内の圧力が約-65~-100kPaの減圧度(絶対圧力)となるように減圧吸引(脱気)しながら温度約70~130℃で接着する。これにより、合わせガラス(
図1に示すサイドガラス10)を得ることができる。
【0050】
更に、例えば100~150℃、圧力0.1~1.3MPaの条件で加熱加圧する圧着処理を行うことで、より耐久性の優れた合わせガラスを得ることができる。但し、場合によっては工程の簡略化、並びに合わせガラス中に封入する材料の特性を考慮して、この加熱加圧工程を使用しない場合もある。
【0051】
なお、バスバー17の端部に、電力を外部から供給する端子対やポートを配置しておく。
【0052】
このように、サイドガラス10では、導電性細線16a~16hの各々の抵抗値を、導電性細線16a~16hの各々の抵抗値の平均値から10%以下の範囲としている。これにより、サイドガラス10の導電性細線16a~16hが配置された領域における発熱均一性を向上することができる。
【0053】
又、サイドガラス10では絶縁線等の外観を阻害する部材を用いていないため、外観を向上することができる(視認性の低下を防止することができる)。更に、導電性細線16a~16hの線幅を30μm以下とし、かつ導電性細線16a~16hの中で最小の線幅の部分と最大の線幅の部分との線幅の差を7μm以下とすることで、線が視認しにくくなり、かつ視認したときの違和感を小さくすることができる。すなわち、外観をいっそう向上することが可能となる。
【0054】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、導電性細線の折り返し回数が第1の実施の形態と異なる例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0055】
図4は、第2の実施の形態に係る車両用のサイドガラスを例示する図である。
図4に示すサイドガラス10Aは、導電性細線16a~16hの折り返し回数が3回である点が、サイドガラス10(
図1参照)と主に相違する。
【0056】
すなわち、サイドガラス10Aでは、バスバー17の一方の極17aからZ方向上側に伸びる導電性細線16a~16hはB1部で垂直方向に折り返されZ方向下側に進み、B2部で垂直方向に折り返されZ方向上側に進む。そして、更にB3部で垂直方向に折り返されZ方向下側に進みバスバー17の他方の極17bに至る。導電性細線16a~16hの各々の抵抗値は、導電性細線16a~16hの各々の抵抗値の平均値から10%以下の範囲である。
【0057】
導電性細線16a~16hは、ガラス板の主面における少なくとも一部の領域に、同一方向に電流が流れる一つのまとまり(一群)を有している。
【0058】
並列に配置された導電性細線16a~16hからなり、複数の導電性細線の一群である帯の幅W1及びW2は、12cm以下とすることが好ましい。帯の幅W1及びW2は、導電性細線16a~16hの帯において、一方の最外の導電性細線16aの帯の外側の側面から他方の最外の導電性細線16hの帯の外側の側面までのX方向の長さである。
【0059】
帯の幅W1及びW2を12cm以下とすることで、導電性細線16a~16hの折り返しが容易となり、導電性細線16a~16hの配置の設計自由度を向上できる。すなわち、導電性細線16a~16hの帯の幅が広くなり過ぎて折り返しができなくなったり、折り返し回数に制約が生じて設計自由度が低下したりすることを防止できる。但し、導電性細線16a~16hの帯の幅が狭くなり過ぎると、折り返しが多くなり、外観が良くない上、設計が煩雑になるため、導電性細線16a~16hの帯の幅W1及びW2を6cm以上とすることが好ましい。
【0060】
サイドガラス10Aでは、サイドガラス10の奏する発熱均一性を向上する効果や外観を向上する効果に加え、更に以下の効果を奏する。すなわち、導電性細線16a~16hの折り返しが水平方向(X方向)である場合、水平方向の線が多くなるので、日中の太陽光や夜の街灯の反射が強くなる。これに対して、サイドガラス10Aのように導電性細線16a~16hの折り返しが垂直方向(Z方向)である場合、水平方向の線が少なくなるので、日中の太陽光や夜の街灯の反射を低減することができる。
【0061】
又、導電性細線16a~16hを垂直方向に折り返すことで、サイドガラス10Aの高さが途中で変わっても、導電性細線16a~16hのレイアウトを柔軟に設計することが可能となり、設計自由度を向上することができる。又、導電性細線16a~16hの折り返しが垂直方向(Z方向)に3回である場合、各々の導電性細線16a~16hの抵抗値を適切な範囲に調整することが容易である。但し、折り返し回数は3回より多くてもよい。折り返し回数を3回以上とすることで、各々の導電性細線16a~16hの抵抗値を、折り返し回数が1回のときと比べてより平均値に近づけることが可能である。このため、折り返し回数を3回以上とすることで、折り返し回数が1回のときと比べてより均一に発熱させることができる。
【0062】
〈第2の実施の形態の変形例〉
第2の実施の形態の変形例では、第2の実施の形態において細部の仕様を変更した例を示す。なお、第2の実施の形態の変形例において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0063】
図5は、第2の実施の形態の変形例に係る車両用のサイドガラスを例示する図である。
図5に示すサイドガラス10Bは、全体的にはサイドガラス10A(
図4参照)と同様であるが、細部の仕様が相違する。
【0064】
図6は、
図5のE部の拡大図である。
図6に示すように、サイドガラス10Bでは、折り返しにおける導電性細線の最近接線間のピッチP
1が周囲のピッチP
2と等しい。言い換えれば、最も小さなループで折り返す導電性細線16hのピッチP
1と、その周囲のピッチP
2とが等しい。すなわち、
図6において、P
1=全てのP
2である。
【0065】
このように、折り返しにおける導電性細線の最近接線間のピッチP1が周囲のピッチP2と等しいことで、サイドガラス10Bを視認したときの違和感を感じ難くすることが可能となり、見栄えを向上することができる。
【0066】
図7は、
図5のF部の拡大図である。
図7に示すように、サイドガラス10Bでは、バスバー17の一方の極17aから他方の極17bに至るまでの途中で、導電性細線16a~16hの線幅がW
4からW
5に変化している(W
5<W
4)。なお、W
5及びW
4の大小関係は逆でも良い。
【0067】
このように、導電性細線16a~16hの線幅を線の途中で適宜変化させることにより、領域毎に効率よく発熱させることや、外観を良くすることが可能となる。例えば、ある領域のみにおいて発熱性を上げたい場合、その領域のみにおいて導電性細線16a~16hの線幅を細くすることが有効である。逆に、ある領域のみにおいて発熱を抑えたい場合、導電性細線16a~16hの線幅を太くすればよい。なお、導電性細線16a~16hの線幅の変化は2段階のみでなく、必要に応じて3段階以上としてもよい。又、線の変化はある程度の長さをかけて滑らかに変化することが外観上好ましい。
【0068】
図8は、
図5のG部の拡大図である。
図8に示すように、サイドガラス10Bでは、バスバー17の一方の極17aから他方の極17bに至るまでの途中で、導電性細線16a~16hのピッチがP
3からP
4に変化している(P
3<P
4)。なお、P
3及びP
4の大小関係は逆でも良い。
【0069】
このように、導電性細線16a~16hのピッチを適宜変化させることにより、領域毎に効率よく発熱させることや、外観を良くすることが可能となる。例えば、ある領域のみにおいて発熱性を上げたい場合、その領域のみにおいて導電性細線16a~16hのピッチを狭くすることが有効である。逆に、ある領域のみにおいて発熱を抑えたい場合、導電性細線16a~16hのピッチを広くすればよい。なお、導電性細線16a~16hのピッチの変化は2段階のみでなく、必要に応じて3段階以上としてもよい。
【0070】
又、導電性細線16a~16hの線幅とピッチを同時に変えてもよい。例えば、
図7の導電性細線16a~16hの線幅W
4の部分(太い部分)をピッチP
4(広く)とし、導電性細線16a~16hの線幅W
5の部分(細い部分)をピッチP
3(狭く)としてもよい。
【0071】
但し、導電性細線16a~16hの線幅やピッチを変化させた場合でも、導電性細線16a~16hの各々の抵抗値は、導電性細線16a~16hの各々の抵抗値の平均値から10%以下の範囲である。
【0072】
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態では、複数組のバスバーを設ける例を示す。なお、第3の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0073】
図9は、第3の実施の形態に係る車両用のサイドガラスを例示する図である。
図9に示すサイドガラス10Cは、X方向に並置された2つのゾーン(ゾーンZ
1とゾーンZ
2)を有し、サイドガラス10Cの略全体を加熱可能に構成された点が、サイドガラス10A(
図4参照)と相違する。なお、サイドガラス10Cにおいて、ゾーンZ
1の仕様はサイドガラス10Aと同様であるため、説明は省略する。
【0074】
サイドガラス10Cにおいて、ゾーンZ2には、ゾーンZ1のバスバー17とは独立した1組のバスバー27が設けられている。本実施の形態では、同一方向に電流が流れる導電性細線の一つのまとまりが2組存在しており、バスバーもそれに対応して2組となる。1組のバスバー27の一方の極27aと他方の極27bは、サイドガラス10Cの同一辺側(例えば、下辺側)に配置されている。又、1組のバスバー27の一方の極27aと他方の極27b、及び1組のバスバー17の一方の極17aと他方の極17bは、全てサイドガラス10Cの同一辺側(例えば、下辺側)に配置されている。バスバー17及び27は、一点鎖線Dよりも下側に配置することが好ましい。一点鎖線Dよりも下側の領域は、サイドガラス10を車両に取り付けたときに車体に隠れるため、外観を損なうことを防止できるためである。又、下辺にバスバー17を配置した場合、隠蔽領域が十分でバスバー17や配線16を水分等から保護できることからも下辺にバスバー17を配置することが望ましい。
【0075】
ゾーンZ2には、配線26が配置されている。配線26は、基材15の一方の側に並列に配置された導電性細線26a~26jを含んでいる。但し、配線26が10本の導電性細線26a~26jを含むのは一例であり、配線26は2本以上の任意の本数の導電性細線を含むことができる。
【0076】
ゾーンZ
2において、導電性細線26a~26jはゾーンZ
1と同様に3回の折り返しを有している(
図9のB
4~B
6部)。そして、導電性細線26a~26jの一端は1組のバスバー27の一方の極27aと電気的に接続され、導電性細線26a~26jの他端は1組のバスバー27の他方の極27bと電気的に接続されている。
【0077】
バスバー27の一方の極27aは例えば正極であり、リード線等を介して、車両に搭載されたバッテリー等の電源の正側と接続される。又、バスバー27の他方の極27bは例えば負極であり、リード線等を介して、車両に搭載されたバッテリー等の電源の負側と接続される。バッテリー等の電源からバスバー27を介して導電性細線26a~26jに電流が供給されると、各々の導電性細線26a~26jが発熱する。
【0078】
各々の導電性細線26a~26jで発生した熱は、ガラス板11及び12に伝わってガラス板11及び12を温め、ガラス板11及び12に付着した結露による曇を取り除き、乗員の良好な視界を確保することができる。
【0079】
ゾーンZ1において、導電性細線16a~16hの各々の抵抗値は、導電性細線16a~16hの各々の抵抗値の平均値から10%以下の範囲である。又、ゾーンZ2において、導電性細線26a~26jの各々の抵抗値は、導電性細線26a~26jの各々の抵抗値の平均値から10%以下の範囲である。但し、ゾーンZ1に配置された導電性細線の各々の抵抗値の平均値と、ゾーンZ2に配置された導電性細線の各々の抵抗値の平均値とは、同一であっても構わないが、異なる値であってもよい。
【0080】
すなわち、ゾーンZ1、ゾーンZ2の各々のゾーン内では均一な加熱が求められる場合であっても、各々のゾーン間では必ずしも均一な加熱が必要であるとは限らない。むしろ、低消費電力の観点から、加熱が多く必要な領域において導電性細線の各々の抵抗値の平均値を低くして効率的に加熱し、加熱があまり必要でない領域において導電性細線の各々の抵抗値の平均値を高くして発熱を抑えることが望ましい。例えば、ドアミラーを透視する際に重要な前方のゾーンZ1においては、導電性細線の各々の抵抗値の平均値を低くし、発熱性能を上げることが望ましい。
【0081】
なお、加熱対象となる領域を3つ以上のゾーンに分割し、各々のゾーンに独立にバスバーを設けても構わない。又、各々のゾーンにおいて、導電性細線の線幅やピッチを部分的に変えても構わない。
【0082】
このように、加熱対象となる領域を複数のゾーンに分割し、各々のゾーンに独立にバスバーを設けることで、各々のゾーンにおいて、導電性細線の各々の抵抗値を導電性細線の各々の抵抗値の平均値から10%以下の範囲とすることが容易となる。
【0083】
すなわち、例えば、サイドガラス10Cの略全体を加熱する場合を考える。この場合、1つのゾーンで設計すると、導電性細線の各々の抵抗値を導電性細線の各々の抵抗値の平均値から10%以下の範囲に納めるためには、内側の配線は折り返しを多くする必要があり、設計が難しいだけでなく、見栄えが悪くなる。複数のゾーンに分割することで、同様の折り返しパターンでサイドガラス10Cの略全体に導電性細線を配置することができる。
【0084】
本実施の形態では、サイドガラス10Cに複数のゾーンを設けて意図的な発熱分布構造を設計することが可能である。この場合にも、各々のゾーンにおいて導電性細線の各々の抵抗値を導電性細線の各々の抵抗値の平均値から10%以下の範囲とすることにより、各々のゾーン内の発熱均一性を向上できる。
【0085】
但し、ゾーンの数が増えるとバスバーの組数も増え、デザインが複雑になることから、生産性の観点からはゾーン数は少ないほどよく、以上を鑑みるとゾーン数は多くとも3つ程度が望ましい。
【0086】
〈第4の実施の形態〉
第4の実施の形態では、配線が折り返し回数の異なる導電性細線を含む例を示す。なお、第4の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0087】
図10は、第4の実施の形態に係る車両用のサイドガラスを例示する図である。
図10に示すサイドガラス10Dは、配線16が折り返し回数の異なる導電性細線を含む点が、サイドガラス10A(
図4参照)と相違する。
【0088】
サイドガラス10Dにおいて、配線16は、基材15の一方の側に並列に配置された導電性細線16a~16kを含んでいる。但し、配線16が11本の導電性細線16a~16kを含むのは一例であり、配線16は2本以上の任意の本数の導電性細線を含むことができる。
【0089】
サイドガラス10Dでは、例えば、バスバー17の一方の極17aから他方の極17bに至る最も外側のループを構成する導電性細線16aの折り返し回数は1であるが、最も内側のループを構成する導電性細線16kの折り返し回数は10である。
【0090】
このように、必要に応じて導電性細線の折り返し回数を変えることで、導電性細線の各々の抵抗値を、導電性細線の各々の抵抗値の平均値から10%以下の範囲にできる。又、加熱対象となる領域の形状に依存せずに導電性細線16a~16kのレイアウトを柔軟に設計することが可能となり、設計自由度を向上することができる。但し、外観上は、各々の導電性細線の折り返し回数が同一であるサイドガラス10A(
図4参照)の方が好ましい。
【0091】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0092】
本国際出願は2017年8月25日に出願した日本国特許出願2017-162339号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2017-162339号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0093】
10、10A、10B、10C、10D サイドガラス
11、12 ガラス板
13、14 中間接着層
15 基材
16、26 配線
16a~16k、26a~26j 導電性細線
17、27 バスバー
17a、27a 一方の極
17b、27b 他方の極