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  • 特許-ボイラ水処理装置および処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】ボイラ水処理装置および処理方法
(51)【国際特許分類】
   F22D 11/00 20060101AFI20230418BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20230418BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20230418BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20230418BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20230418BHJP
   F22B 37/52 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
F22D11/00 N
B01D19/00 H
B01D61/00
C02F1/42 A
C02F1/44 H
F22B37/52 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018199332
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020067209
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】内田 和義
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-028394(JP,A)
【文献】特開昭61-240006(JP,A)
【文献】特開2005-240588(JP,A)
【文献】特開平04-190001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 1/00 - 11/06
B01D 19/00 - 19/04
B01D 61/00 - 71/82
C02F 1/42 - 1/44
F22B 37/00 - 37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転開始時又は運転再開前にボイラ給水を給水ラインから分岐して取り出し、運転停止期間中又は運転開始前に混入した不純物を除去した後に、ボイラへの供給を開始するためのボイラ水処理装置であって、
原水を処理して純水を製造して純水タンクへ供給する前処理装置と、
該前処理装置からの純水を該純水タンクからボイラへ供給する純水供給ラインと
を有するボイラ水処理装置において、
純水タンク内の純水の一部を取り出して不純物除去手段で不純物除去処理し、この処理水を該純水タンクに戻す不純物除去ラインと、
純水タンクから純水の少なくとも一部を該不純物除去ラインに取り出すか、全量を該ボイラへ供給するかを切り替える切替手段とを備え、
前記不純物除去手段が薬剤を用いないものであることを特徴とするボイラ水処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記不純物は二酸化炭素を含むことを特徴とするボイラ水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記不純物は二酸化炭素を含み、前記不純物除去手段は、脱炭酸装置、イオン交換装置、および膜脱気装置のいずれかを含むことを特徴とするボイラ水処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、前記ボイラからの排気蒸気が凝縮されて該ボイラから排出されたボイラ復水を前記純水タンクに返送するボイラ復水返送ラインを備えることを特徴とするボイラ水処理装置。
【請求項5】
運転開始時又は運転再開前にボイラ給水を給水ラインから分岐して取り出し、運転停止期間中又は運転開始前に混入した不純物を除去した後に、ボイラへの供給を開始するためのボイラ水処理方法であって、
原水を前処理装置で処理して純水を製造して純水タンクに供給し
該前処理装置からの純水を該純水タンクを経由してボイラへ供給するボイラ水処理方法において、
不純物除去ラインにより、純水タンク内の純水の一部を取り出して不純物除去手段で不純物除去処理し、この処理水を該純水タンクに戻すボイラ水処理方法であって、
前記不純物除去手段が薬剤を用いないものであり、
純水タンクから純水の少なくとも一部を該不純物除去ラインに取り出すか、全量を該ボイラへ供給するかを切替手段により切り替えることを特徴とするボイラ水処理方法。
【請求項6】
請求項において、前記不純物は二酸化炭素を含むことを特徴とするボイラ水処理方法。
【請求項7】
請求項又はにおいて、前記不純物は二酸化炭素を含み、前記不純物除去手段は、脱炭酸装置、イオン交換装置、および膜脱気装置のいずれかを含むことを特徴とするボイラ水処理方法。
【請求項8】
請求項のいずれか1項において、前記ボイラからの排気蒸気が凝縮されて該ボイラから排出されたボイラ復水を前記純水タンクに返送することを特徴とするボイラ水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ給水用補給水(純水など)を蒸気ボイラへボイラ給水として供給して加熱することにより発生する蒸気を負荷装置において利用するとともに、蒸気が凝縮して得られる復水として貯水タンクへ返送して再利用するボイラにおけるボイラ給水の水処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ設備では、工業用水等から前処理(凝集固液分離と脱塩処理など)により純水を製造し、製造した純水を純水タンクに貯留し、純水タンクからボイラへボイラ給水として供給する。ボイラでは、このボイラ給水を加熱することにより蒸気を発生させて利用する。
また、ボイラからの排気蒸気が凝縮されてボイラから排出されたボイラ復水は、回収し、ボイラ復水返送ラインにより純水タンクに返送してボイラ給水として再利用することが行われている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
このようなボイラ設備、特にボイラ復水の返送ラインの腐食を引き起こす主な要因として、軟水を給水する場合は、ボイラからの排気蒸気が炭酸ガスを含んでいることが挙げられる。そのため、返送ラインの腐食を防止するために、復水処理剤を投入する方法や、ボイラ給水のMアルカリ成分を除去する方法が提案されており、ボイラ給水の脱炭酸についても言及されている(例えば、特許文献3,4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-122689号公報
【文献】特開2008-157580号公報
【文献】特開2017-159212号公報
【文献】実開平4-45524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前処理によりボイラ給水の純度を高めていても、配管洗浄などのメンテナンスによる運転停止時には、純水タンクなどの大気開放部分から大気中の二酸化炭素等の不純物が系内に混入して蓄積する問題がある。また、ボイラ設備の立ち上げ時にもボイラ設備の設営中或いは持ち込まれたボイラ設備の構成部材に由来して不純物が系内に混入する問題がある。系内に混入した二酸化炭素は、起動時に蒸気の酸導電率の上昇やpH低下を引き起こす原因となる。
【0006】
このため、ボイラ設備の運転開始時や運転停止後の運転再開時には、系内に混入した不純物を除去することが望ましいが、従来において、このような不純物混入の問題に対する対策は講じられていない。
【0007】
本発明は、ボイラ設備運転開始初期や運転停止からの運転再開時においても、高水質のボイラ給水を安定してボイラに給水することができるボイラ水処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ね、運転開始や運転再開する前にボイラ給水を給水ラインから分岐して取り出し、運転停止期間中や運転開始前に混入した不純物を除去した後に、ボイラへの供給を開始するようにすることで、上記課題を解決することができることを見出した。
【0009】
本発明のボイラ水処理装置は、原水を処理して純水を製造する前処理装置と、該前処理装置からの純水をボイラへ供給する純水供給ラインとを有するボイラ水処理装置において、該純水供給ラインから純水の一部を取り出し部から取り出して不純物除去手段で不純物除去処理し、この処理水を該取り出し部又はそれよりも上流側の該純水供給ラインに戻す不純物除去ラインと、該純水供給ラインから純水の少なくとも一部を該不純物除去ラインに取り出すか、全量を該ボイラへ供給するかを切り替える切替手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様のボイラ水処理装置では、前記不純物は二酸化炭素を含む。
【0011】
本発明の一態様のボイラ水処理装置では、前記不純物除去手段が薬剤を用いないものである。
【0012】
本発明の一態様のボイラ水処理装置では、前記不純物は二酸化炭素を含み、前記不純物除去手段は、脱炭酸装置、イオン交換装置、および膜脱気装置のいずれかを含む。
【0013】
本発明の一態様のボイラ水処理装置では、前記ボイラからの排気蒸気が凝縮されて該ボイラから排出されたボイラ復水を前記純水供給ラインに返送するボイラ復水返送ラインを備える。
【0014】
本発明の一態様のボイラ水処理装置では、前記ボイラ復水返送ラインは、前記ボイラ復水を前記取り出し部又はそれよりも上流側の前記純水供給ラインに返送する。
【0015】
本発明のボイラ水処理方法は、原水を前処理装置で処理して純水を製造し、該前処理装置からの純水を純水供給ラインを経由してボイラへ供給するボイラ水処理方法において、該純水供給ラインから純水の一部を取り出し部から取り出して不純物除去手段で不純物除去処理し、この処理水を該取り出し部又はそれよりも上流側の該純水供給ラインに戻すボイラ水処理方法であって、該純水供給ラインから純水の少なくとも一部を該不純物除去ラインに取り出すか、全量を該ボイラへ供給するかを切替手段により切り替えることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様のボイラ水処理方法では、前記不純物は二酸化炭素を含む。
【0017】
本発明の一態様のボイラ水処理方法では、前記不純物除去手段が薬剤を用いないものである。
【0018】
本発明の一態様のボイラ水処理方法では、前記不純物は二酸化炭素を含み、前記不純物除去手段は、脱炭酸装置、イオン交換装置、および膜脱気装置のいずれかを含む。
【0019】
本発明の一態様のボイラ水処理方法では、前記ボイラからの排気蒸気が凝縮されて該ボイラから排出されたボイラ復水を前記純水供給ラインに返送する。
【0020】
本発明の一態様のボイラ水処理方法では、前記ボイラ復水を前記取り出し部又はそれよりも上流側の前記純水供給ラインに返送する。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、運転停止期間中や運転開始前に純水タンクなど大気開放部分から系内に混入した二酸化炭素などの不純物を、不純物除去手段で除去し、水質を安定化させた上でボイラに供給することで、運転停止期間中や運転開始前における不純物の系内混入に起因するスケール、腐食などのトラブルを未然に防止することができる。
特に、本発明では、前処理装置からの純水をボイラに供給する純水供給ライン(メインライン)に不純物除去手段を設けるのではなく、該純水供給ラインから分岐した不純物除去ライン(オフライン)に不純物除去手段を設けている。そのため、不純物除去手段を、純水供給ライン(メインライン)での純水供給制御とは別に制御することができる。つまり運転開始初期や運転停止時からの再開時にのみ補給用純水を不純物除去ライン(オフライン)に分岐させるように切り替えると共に不純物除去手段を稼働させ、処理が終了したら純水供給ライン(メインライン)に送給するよう切り替えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係るボイラ水処理装置のフロー図である。
図2】別の実施の形態に係るボイラ水処理装置のフロー図である。
図3】比較例に係るボイラ水処理装置のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0024】
図1は、第1の実施の形態に係るボイラ水処理装置のフロー図であり、図1は、ボイラ設備立ち上げ前又は運転停止期間中に純水タンクに混入した二酸化炭素を運転開始時又は運転再開時に除去することができるシステムを示す。
【0025】
図1において、原水としての工水(工業用水)は、前処理装置1で前処理されて純水となり、配管2を介して純水タンク3(取り出し部に相当)に導入される。純水タンク3内の純水は、ポンプ4を有する配管5を介してボイラ6へ供給される。この実施の形態では、純水供給ラインは、配管2、純水タンク3、ポンプ4及び配管5を有したものとなっている。ボイラ6で生じたボイラ蒸気は、第1熱交換器8B及び本冷却手段8Aを有する配管7よりなるボイラ復水返送ラインを介して、熱を利用されると共に凝縮してボイラ復水として純水タンク3に返送される。
【0026】
この実施の形態では、純水タンク3内の純水の一部を取り出して二酸化炭素の除去処理を行うために、二酸化炭素除去ラインが設けられている。即ち、純水タンク3内の純水が配管15、第2熱交換器16、ポンプ17を介して膜脱気装置11へ供給され、脱気処理水が配管18を介して純水タンク3に返送される。
【0027】
このボイラ水処理装置にあっては、運転開始時又は運転再開時にポンプ17を稼働させて、純水タンク3内の純水を膜脱気装置11によって脱気処理することにより、ボイラ設備立ち上げ前又は運転停止期間中に純水タンク3に混入した二酸化炭素を除去することができる。ポンプ17は運転開始時又は運転再開時に所定時間稼働させてもよく、純水タンク3内の二酸化炭素濃度を測定するCO計を設け、CO計の測定値に連動して、純水タンク3内の水の二酸化炭素濃度が所定値以下になったときはポンプ17を停止して、膜脱気装置11による処理を停止し、純水タンク3内の純水の全量をボイラ6に送給するようにしてもよい。
【0028】
図2は、第2の実施の形態に係るボイラ水処理装置のフロー図であり、純水タンク3内の純水の二酸化炭素除去用の不純物除去手段として、膜脱気装置11の代わりにイオン交換装置12が設置されている。イオン交換樹脂としては、アニオン交換樹脂又は混床樹脂を用いることが好ましい。その他の構成は図1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0029】
なお、図1、2では、配管15は取り出し部として純水タンク3に接続されているが、配管15は純水タンク3の下流側の配管5に接続されてもよい。この場合は分岐点が取り出し部となる。同様に、配管15は配管5に介設したタンクに接続されてもよい。また、図1、2において、第1熱交換器8Bを省略し、予備冷却を行わず本冷却手段8Aのみでボイラ復水を所定温度まで冷却するようにすることも可能である。
【0030】
図1、2は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。
【0031】
除去する不純物としては二酸化酸素の他に雑菌や有機物であってもよく、その場合、不純物除去手段としてはUV殺菌装置、RO装置を設けてもよい。また複数の不純物を除去する場合は不純物除去手段の2種以上を組み合わせて設けてもよい。
【0032】
図1、2のボイラ水処理装置の構成機器の好適例、機能等について以下に説明する。
【0033】
(1) 前処理装置1
前処理装置1は、例えば、工業用水(市水、地下水など)等の原水に対して、凝集処理、固液分離(沈殿分離や加圧浮上分離など)、二層濾過を順次行った後に脱塩処理(カチオン交換樹脂塔、脱炭酸塔、アニオン交換樹脂塔、混床樹脂塔、電気脱塩装置などによる処理)を行うことにより、純水を製造する。
【0034】
(2) 純水タンク3
純水タンク3では、前処理により製造された純水が貯留され、水質や水量の調整が行われる。
【0035】
(3) 不純物除去手段
前述の通り、ボイラ設備では、立ち上げ前や運転停止期間中に、純水タンク等の大気開放部分などから二酸化炭素等の不純物が系内に混入し、その後の運転開始又は運転再開後の運転中に蒸気の酸導電率の上昇やpH低下を引き起こす原因となる。
このため、本発明では、運転開始又は運転再開に先立ち、純水供給ラインから純水の少なくとも一部を取り出し、不純物除去手段で不純物除去処理し、処理水を取り出し部(図1、2では純水タンク3)又はそれよりも上流側の純水供給ラインに戻す。
【0036】
ここで、除去する不純物としては、特に制限はないが、代表的には二酸化炭素、有機物、菌類の1種又は2種以上が挙げられる。
また、これらの不純物を除去する不純物除去手段としては、メンテナンスを容易とする観点から、薬剤を用いないものが好ましく、膜脱気装置、イオン交換装置、脱炭酸装置、UV殺菌装置、RO装置等の1種又は2種以上の組み合わせが挙げられ、特に膜脱気装置、イオン交換装置、脱炭酸装置のいずれかを用いることが好ましい。即ち、混入する不純物としては二酸化炭素が最も一般的であり、従って、不純物除去手段としては、二酸化炭素の除去効率に優れた脱炭酸装置、イオン交換装置、膜脱気装置を用いることが好ましい。
【0037】
本発明では、ボイラ設備の運転開始又は運転再開に先立ち、純水タンク3内の純水を取り出し、不純物除去手段で不純物を除去し、処理水を純水タンク3に戻すが、この不純物処理手段による不純物除去処理は、運転開始又は運転再開に先立ち純水タンク3の容量によって所定の時間行ってもよく、純水タンクに不純物濃度の測定手段を設け、この不純物濃度測定手段の測定値が許容範囲となるまで行ってもよい。
【0038】
なお、不純物除去手段で不純物除去処理する水の不純物濃度が所定値以下となったときに、不純物除去手段による不純物除去処理を終了するようにする場合、例えば、不純物濃度測定手段とポンプ17とを連動させて、不純物濃度測定手段の測定値が所定値以下になったら、ポンプ17を停止させて、不純物除去処理を終了するようにしてもよいし、配管15に開閉弁を設け、この開閉弁を不純物濃度測定手段と連動させて、不純物濃度測定手段の測定値が所定値以下になったら開閉弁を閉として不純物除去処理を終了するようにしてもよい。この場合において、運転中に不純物濃度測定手段の測定値が所定値よりも高くなった場合には、ポンプ17を作動させるか開閉弁を開として不純物除去手段への純水の供給を再開して運転中に不純物除去処理を行うようにしてもよい。
【0039】
このように、不純物濃度測定手段の測定値に基づいて、不純物除去手段への純水の供給の有無や供給量を制御することにより、必要量の純水を不純物除去手段で処理することができ、不純物除去処理に係るコストを低減することができる。
【0040】
このような不純物除去手段への純水の供給制御は、不純物濃度測定手段の不純物濃度の測定値が入力され、この測定値に基づいてポンプ又は弁への制御信号を出力する制御装置により、自動制御で行うことができる。
【0041】
(4) ボイラ6としては、高圧ボイラ、中圧ボイラ、低圧ボイラなど各種のものを用いることができる。
【0042】
(5) ボイラ復水返送ライン
ボイラ蒸気の凝縮水は一般には高温であり(例えば70~97℃)、ボイラからボイラ復水として排出された後に本冷却手段8A(密閉冷却塔、熱交換器など)により20~40℃程度に冷却された上で、純水タンク3に返送される。
【0043】
図1、2では、ボイラ復水を冷却した後、そのまま純水タンク3に返送しているが、ボイラ復水は、復水脱塩装置で脱塩処理した後純水タンク3に返送してもよい。この場合、復水脱塩装置としてはボイラ復水を脱塩酸処理できる物理化学的手段であれば特に限定されないが、例えば直列多段RO処理→電気脱塩(直列に複数段(例えば2段)配置されたRO装置とその後段の電気脱塩装置との組み合わせ)処理等が好適である。
【0044】
(6) 第1熱交換器8B
図1、2のように、系外からの冷却水を本冷却手段8Aの前段に設けられた第1熱交換器8Bに通水してボイラ復水と熱交換してボイラ復水を50~70℃程度に予備冷却する。これにより、本冷却手段8Aの負荷を軽減することができる。
【0045】
(7) 第2熱交換器16
純水タンク3の水温が所定値以下(例えば15℃以下)に低下しやすい場合は、不純物除去手段の給水を第2熱交換器16にて温水と熱交換して加温する。これにより、不純物除去手段で効率的に不純物を除去することが可能である。また、これによって純水タンク3の水温が例えば20~35℃に維持されるようにすれば、ボイラ6の負担を軽減することができる。
また、返送されるボイラ復水がやや高温である場合は純水タンク3内の純水を、第2熱交換器16で冷却して温度調整した後に不純物除去手段に供給することもできる。
【0046】
なお、純水供給ライン(配管2、純水タンク3、配管5等)や、不純物除去ライン(配管15,18等)中の水温を測定し、測定値が所定値以下にまで低温になったときに、第2熱交換器16に温水を供給するように弁を切り替えて本機構による昇温を行うように制御してもよい。また、水温測定値に基づいて第2熱交換器16への供給流量を調整するように流量制御しても構わない。これによりボイラ給水の水温が所定範囲に維持され、ボイラへの負荷が一定範囲内に維持されるので好ましい。
【0047】
(8) 切り替え手段
ボイラ6の運転開始前または運転停止中に純水供給ライン中の純水を取り出して不純物除去手段で不純物を除去する不純物除去工程と、ボイラ6へ純水を給水してボイラを稼働する運転工程とを繰り返して継続運転する。
このとき、不純物除去工程ではポンプ4を停止すると共にポンプ17を稼働するか、ポンプ4、17に加えて配管5に設けた開閉弁(図示なし)を閉とすると共に配管15に設けた開閉弁(図示なし)を開とし、運転工程に移行するときはポンプ4を稼働すると共にポンプ17を停止するか、ポンプ4、17に加えて配管5に設けた開閉弁を開とすると共に配管15に設けた開閉弁を閉とすることで工程を切り替えする。
また、純水供給ライン(配管2、純水タンク3、配管5等)や、不純物除去ライン(配管15,18等)における不純物濃度測定手段を、配管5、15に設けた開閉弁やポンプ4、17と連動させ、不純物除去工程における不純物濃度測定手段の測定値が所定値以下になったとき、ポンプ4、17の運転・停止を反転するか、ポンプ4、17に加えて配管5、15に設けた開閉弁の開閉を反転させて、不純物除去工程から運転工程に移行するようにしてもよい。
【実施例
【0048】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0049】
[実施例1]
千葉県工業用水を前処理装置1で処理し、ボイラ6に給水すると共に、ボイラ復水回収を行う図1のボイラ水処理装置において、10日間の運転停止後、運転を再開するに先立ち、純水タンク3内の純水を10m/hrの平均給水量(配管15,18内の平均流量)で30℃に加熱した後膜脱気装置11に送給して脱気処理し、処理水を純水タンク3に戻す処理を10時間行った。その後、運転を再開した。前処理装置1では、凝集処理、加圧浮上分離、二層濾過、2床3塔型イオン交換(陽イオン交換、脱炭酸、陰イオン交換)を行って純水を製造した。運転中の主な条件を下記に示す。
【0050】
工水の平均供給量(配管2平均流量):10m/hr
純水タンク3容積:50m
ボイラへの平均給水量(配管5平均流量):100m/hr
ボイラ復水平均流量(配管7平均流量):50m/hr
第1熱交換器8B給水平均流量:10~12m/hr
本冷却手段8A給水平均流量:10~12m/hr
【0051】
運転再開後のボイラ復水の水質は以下の通りであり、運転に支障をきたすことなく運転を継続することができた。
【0052】
<ボイラ復水水質>
運転再開時点のカチオン導電率 :1.2μS/cm
運転再開から2時間後のカチオン導電率 :0.3μS/cm以下
【0053】
[比較例1]
実施例1において、配管15、第2熱交換器16、ポンプ17、膜脱気装置11及び配管18を省略し、図3のフローとし、運転再開に先立つ二酸化炭素除去処理を行わなかったこと以外は実施例1と同一条件で運転を行った。
その結果、運転再開後のボイラ復水の水質は以下の通りであり、カチオン導電率の高止まりの問題があり、水質基準値に到達するのにより時間を要する結果であった。
【0054】
<ボイラ復水水質>
運転再開時点のカチオン導電率 :1.2~1.3μS/cm
運転再開から2時間後のカチオン導電率 :0.4~0.5μS/cm
運転再開から3時間後のカチオン導電率 :0.3μS/cm以下
【符号の説明】
【0055】
1 前処理装置
3 純水タンク
6 ボイラ
8A 本冷却手段
8B 第1熱交換器
11 膜脱気装置
12 イオン交換装置
16 第2熱交換器
17 ポンプ
図1
図2
図3