(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】チューブ製造装置及びチューブ製造方法
(51)【国際特許分類】
B05C 3/20 20060101AFI20230418BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20230418BHJP
B05D 7/22 20060101ALI20230418BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B05C3/20
C08J7/04 Z CER
C08J7/04 CEZ
B05D7/22 S
B05D7/22 F
B05D3/00 G
(21)【出願番号】P 2019168474
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】樫村 誠一
(72)【発明者】
【氏名】清兼 友理子
(72)【発明者】
【氏名】岸 雅通
(72)【発明者】
【氏名】寺木 直人
(72)【発明者】
【氏名】加古 学
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-150454(JP,A)
【文献】特開2006-241313(JP,A)
【文献】実開平06-064767(JP,U)
【文献】特開平07-265975(JP,A)
【文献】実開平01-178934(JP,U)
【文献】特開2019-181385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 3/20
C08J 7/04
B05D 7/22
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング剤の層であるコーティング層が内面に成膜されたチューブを製造するチューブ製造装置であって、
前記チューブの内面が前記コーティング剤の溶液により成膜される前に、前記チューブの断面を所定の形状に成形する成形部、
を有
し、
前記成形部は、内部に前記チューブが挿通されて相対的に移動するとともに、前記チューブの断面を前記所定の形状とする貫通孔が設けられている、チューブ製造装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のチューブ製造装置であって、
前記成形部は、前記チューブの移動方向に沿って複数並んで配置され、
前記複数の成形部における前記貫通孔の径は、少なくとも一部が異なり、
前記複数の成形部は、先に挿通される側の前記成形部の前記貫通孔の径が、後に挿通される側の前記成形部の前記貫通孔の径よりも大きい、チューブ製造装置。
【請求項3】
請求項
2に記載のチューブ製造装置であって、
前記成形部は、前記チューブの移動方向に沿って複数並んで配置され、
前記複数の成形部における前記貫通孔の径は、少なくとも一部が異なり、
前記複数の成形部は、後に挿通される側の前記成形部の前記貫通孔の径が、先に挿通される側の前記成形部の前記貫通孔の径よりも大きい、チューブ製造装置。
【請求項4】
請求項
1から請求項
3までのいずれか1項に記載のチューブ製造装置であって、
前記成形部の前記貫通孔は、前記チューブの移動方向に沿って径が変化する、チューブ製造装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか1項に記載のチューブ製造装置であって、
前記成形部は、前記成形部の外部から前記コーティング剤の溶液の液面が視認できるように構成された、チューブ製造装置。
【請求項6】
請求項
5に記載のチューブ製造装置であって、
前記成形部は、前記液面と異なる位置に配置されている前記成形部を有するように構成されたチューブ製造装置。
【請求項7】
請求項
5又は請求項
6に記載のチューブ製造装置であって、
前記成形部には、前記成形部の外部から前記液面を視認可能とする視認部が設けられているチューブ製造装置。
【請求項8】
請求項1から請求項
7までのいずれか1項に記載のチューブ製造装置であって、
前記チューブの内面に成膜された前記コーティング剤の溶液の層を乾燥させる乾燥部を更に備えた、
チューブ製造装置。
【請求項9】
請求項1請求項8までのいずれか1項に記載のチューブ製造装置を用いて、チューブの内面がコーティング剤により成膜されたチューブを製造するチューブ製造方法であって、
前記チューブの断面を所定の形状に成形する成形工程と、
前記成形工程により成形された前記チューブの内面に前記コーティング剤の溶液の層を成膜する成膜工程と、
を順に実行するチューブ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チューブの内側の壁面がコーティング剤により成膜されたチューブを製造する、チューブ製造装置及びチューブ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内側にコーティング剤の溶液が充填された状態のチューブを鉛直上方向に向かって引き上げ、チューブの内側の壁面(以下、チューブの内面とも記載する)に沿って溶液の層を形成し、溶液の層を乾燥させるチューブ製造装置が記載されている。
【0003】
これにより、コーティング剤の層であるコーティング層が内面に形成されたチューブが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のコーティング装置では、チューブが鉛直上方向に向かって誘導される際に、チューブは誘導する部材から力を受ける。力を受けたチューブは、断面形状と異なる歪んだ形状となる。歪んだ形状となったチューブの内面に沿ってコーティングを行うと、コーティング層の厚さが所定の範囲から外れ、不均一になるという課題が生じる。
【0006】
本開示の1つの局面は、チューブの内面に形成されるコーティング剤の層の厚さが不均一になることを抑制するコーティング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、コーティング剤の層であるコーティング層が内面に成膜されたチューブを製造するチューブ製造装置であって、チューブの内面がコーティング剤の溶液により成膜される前に、チューブの断面を所定の形状に成形する成形部、を有する。
【0008】
このような構成によれば、コーティング剤の溶液が成膜される前に、成形部により、チューブの断面を所定の形状にすることができる。そのため、コーティング剤の溶液を元に、チューブの内面に形成されるコーティング剤の層の厚さが不均一になることを抑制することができる。
【0009】
本開示の一態様は、チューブの内面がコーティング剤により成膜されたチューブを製造するチューブ製造方法であって、チューブの断面を所定の形状に成形する成形工程と、成形工程により成形されたチューブの内面にコーティング剤の溶液の層を成膜する成膜工程と、を順に実行する。
【0010】
このような構成によれば、成形工程によって、チューブの断面が所定の形状に成形される。そして、成膜工程によって、成形工程により成形されたチューブの内面にコーティング剤の溶液の層を成膜する。そのため、コーティング剤の溶液を元に、チューブの内面に形成されるコーティング剤の層の厚さが不均一になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施形態における成膜領域の構成を表した図である。
【
図3】実施形態における基材チューブの成形とコーティング剤の溶液の層の成膜の様子を表した図である。
【
図4】成形を行わない状態で成膜を行った場合のチューブの断面を表した模式図である。
【
図5】液面を含む範囲を成形する成形部を有する場合の成膜領域を表した図である。
【
図6】複数の成形部を有する場合の構成を表した図である。
【
図7】下から上に向かって狭まる挿通孔を有する成形部を表した図である。
【
図8】下から上に向かって広がる挿通孔を有する成形部を表した図である。
【
図9】ローラによる成形を行う成形部を表した図である。
【
図10】変形例におけるガイドを含むチューブ製造装置の一部を表した図である。
【
図11】変形例におけるガイドを含むチューブ製造装置の一部を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.構成]
本実施形態に示すチューブ製造装置1は、基材チューブ100aの内側にコーティング層400が成膜されたコーティングチューブ100cを製造するものである。
【0013】
チューブ製造装置1により製造されるコーティングチューブ100cの用途は、特に限定されるものではない。コーティングチューブ100cは、例えば、医療用に用いられる医療用のカテーテルチューブであってもよい。コーティングチューブ100cに用いられるコーティング層400及び基材チューブ100aの材料は生体適合性を有する材料(例えば、シリコーン)であってもよい。ここでいう生体適合性とは、体内に入れた場合においても、身体に対して毒性を及ぼさないような性質をいう。なお、基材チューブ100aとコーティング層400とは、性質が異なる材料が用いられてもよい。例えば、医療用カテーテルチューブなどの場合、コーティング層400は、チューブ内に挿入されるワイヤーやケーブルとの摩擦が小さくなるスベリ性が高い材料が用いられてもよい。なお、コーティング層400の膜厚は特に限定されるものではないが、5μm~20μmであってもよい。また、コーティングチューブ100cの内径は特に限定されるものではないが、3mm程度であってもよい。
【0014】
本実施形態では、チューブ製造装置1は、
図1に示すように、乾燥部20及び巻取部30を備える例に適用して説明する。なお、チューブ製造装置1は、このような構成に限定されるものではない。
【0015】
スベリ性を付与するコーティング剤溶液400aは、例えば、シリコーンゴム表面改質用コーティング剤(商品名:X-93-1755-1、信越化学社製)を用いることができる。また、さらにスベリ性を向上する目的で、シリコーンレジン微粒子(例えば商品名:X-52-1621、信越化学社製)などを添加し、分散させて、コーティング層表面に凹凸を形成してもよい。なお、添加する微粒子は材料としてシリコーンレジンを用いたものに限定されるものではなく、シリコーンゴムやシリカなどの生体に影響を与えない材料が選択できる。
【0016】
図1に示すように、チューブ製造装置1は、基材ロール11及びガイド12を有する。
基材ロール11は、円柱状に形成されている。円柱状に形成された基材ロール11の円周面に沿って、基材チューブ100aが巻き付けられている。
【0017】
ガイド12は、基材ロール11から延びる基材チューブ100aの向きを、鉛直上方向に誘導するものである。ガイド12は、円柱状又は円筒状の中心軸(回転軸)を有し、基材チューブ100aがガイド12の円周面に沿うように設けられるものである。なお、ガイド12は、鉛直上方向に向かって基材チューブ100aを誘導できるものであればよい。例えば、ガイド12は回転ローラであってもよい。
【0018】
<乾燥部20>
乾燥部20は、公知の乾燥装置を利用することができる。
乾燥部20は、成膜チューブ100bを加熱し、成膜チューブ100bの内面のコーティング剤溶液400aの溶媒を気化させることにより、液体状態のコーティング剤溶液400aの層を乾燥させ、固体状態のコーティング剤の層であるコーティング層400にするものである。内面のコーティング剤溶液400aの層が乾燥することにより固体状態のコーティング層400が形成されたコーティングチューブ100cとする。例えば、乾燥部20としてヒータを用いることができる。
【0019】
巻取部30は、コーティングチューブ100cを巻き取るものである。また、巻取部30は、コーティングチューブ100cを巻き取ることにより、基材チューブ100aを、基材ロール11から乾燥部20を通って巻取部30まで搬送するものである。
【0020】
<巻取部30>
巻取部30は、巻取ローラ31と巻取ローラ31をコーティングチューブ100cが巻き取られる方向に回転させるための図示しない回転軸により構成される。
【0021】
巻取ローラ31は、円柱状又は円筒状に形成される。巻取ローラ31は円周面にコーティングチューブ100cが巻き付けられる。巻取ローラ31は、乾燥部20の開口からコーティングチューブ100cが延びる上方向に、好ましくは鉛直上方向に配置される。
【0022】
<成形部210>
図2に示すように、基材チューブ100aの鉛直上方向への引き出し部分である、ガイド12と乾燥部20との間には成形部210が配置される。
【0023】
成形部210は、円筒形状の外形を有し、内部に挿通孔210aを有する。
挿通孔210aは、上下方向に延びる貫通孔である。挿通孔210aの上下方向に対する垂直な断面の断面形状は、例えば、円形形状であってもよい。
【0024】
挿通孔210aの大きさは、基材チューブ100aの外側表面と接触しつつ、基材チューブ100aが挿通できる大きさに形成される。
挿通孔210aの大きさ及び形状は、下端から上端まで一定であってもよい。なお、ここでいう一定とは、厳密な意味での一定ではなくてもよい。
【0025】
また、挿通孔210aの大きさ及び形状は、基材チューブ100aを所定の断面形状にできればよい。ここでいう、所定の断面形状とは、チューブの内面の膜厚が一定となりやすい断面形状であればよい。所定の断面形状は、例えば円形形状であることが好ましい。また、所定の断面形状は、真円形状であることが更に好ましい。例えば、外径3mmのカテーテルチューブの場合、成形部210に後述する弾性体を使用することを想定し、孔径2.95mm以上3mm以下の真円形状としても良い。
【0026】
成形部210に用いられる材料は、基材チューブ100aよりも柔らかい材質の材料が用いられてもよい。挿通孔210aの内部を基材チューブ100aが挿通する際に、基材チューブ100aの外側表面を傷つけない材質であることが望ましい。成形部210は弾性体から形成されてもよい。弾性体としては、例えばポリウレタン樹脂やエチレンプロピレンゴム、またこれらの発泡体を例示することができる。
【0027】
成形部210の配置される位置は、成形部210の上端部分がコーティング剤溶液400aの液面Laよりも下である例を挙げることができる。
また、成形部210の引き抜き力は、基材チューブ100aの変形を補正できかつ外側表面を傷つけない範囲で自由に変更して良い。引き抜き力の大きさは、例えば、基材チューブ100aの外径に対する挿通孔210aの内径の相対的な大きさ、成形部210の長さ(基材チューブ100aとの接触面積)や成形部210の材料を変えることにより、変更することができる。ここでいう引き抜き力とは、基材チューブ100aを巻き取る際に必要な力、すなわち、巻き取られる基材チューブ100aにかかるせん断力とする。発明者らの実験では、1mmから3mmまでの厚さを有し、3mmから30mmまでの内径を有するシリコーンチューブでは、1kPaから10MPaまでの引き抜き力により基材チューブ100aの変形を補正することができた。ただし、ガイド12などによるコート前の変形度合いによって、必要な力の大きさは変わってしまう。そのため、引き抜き力は、1kPaから10MPaまでの範囲に限定されるものではない。
【0028】
なお、成形部210により、基材チューブ100aを所定の断面形状にする工程が成形工程の一例に相当する。
[2.作用]
図1に示すチューブ製造装置1において、基材チューブ100aの内部にコーティング剤溶液400aが充填される。コーティング剤溶液400aの充填は、コーティング剤溶液400aの液面Laの高さがガイド12と基材チューブ100aとが接する位置よりも上であって、乾燥部20よりも下の位置となるあらかじめ決められた位置になるように行われる。
【0029】
基材ロール11の円周面に巻き付けられた基材チューブ100aは、巻取部30により巻き取られる。
ここで、基材チューブ100aは、基材ロール11からガイド12の回転部分の周面に巻き付き、基材チューブ100aの軸方向が鉛直方向を向くように向きを変え、搬送される。なお、ガイド12により変えられた基材チューブ100aの搬送方向が特許請求の範囲での移動方向の一例に相当する。ここで、基材チューブ100aは、ガイド12の回転部分の周面に接触する。ガイド12や基材ロール11との接触により基材チューブ100aの周面に対して力が加わる。当該基材チューブ100aの周面に加わる力が基材チューブ100aに
図3(A)に示すような歪みが生じる原因になり得る。
【0030】
そして、基材チューブ100aは、成形部210の挿通孔210aを挿通することにより、
図3(B)に示すように、基材チューブ100aの歪みが取り除かれて所定の断面形状に形成される。
【0031】
基材チューブ100aは引き上げられ、
図3(C)に示すように、液面Laにおいて所定の断面形状が保持される。
そして、
図3(D)に示すように、高さが液面La以上の範囲である成膜領域200に、基材チューブ100aが引き上げられることによりコーティング剤溶液400aの表面張力が作用して、コーティング剤溶液400aの層が基材チューブ100aの内面に成膜される。液面Laから上の成膜領域200に引き上げられることにより、コーティング剤溶液400aの層が成膜され、基材チューブ100aは成膜チューブ100bとなる。
【0032】
図1に戻り、成膜チューブ100bは、乾燥部20の内部を通り、乾燥される。なお、乾燥部20により内部のコーティング剤溶液400aが乾燥される。また、乾燥部20の内部とは、例えば乾燥部20としてヒータが用いられる場合、ヒータにより熱せられる範囲をいう。
【0033】
コーティング剤溶液400aが乾燥することにより基材チューブ100aの内部に固体のコーティング層400が生成され、コーティングチューブ100cとなる。
巻取ローラ31は、コーティングチューブ100cを上方向に引っ張る。また、巻取ローラ31は、好ましくは、コーティングチューブ100cを鉛直上方向に引っ張る。巻取ローラ31は、より好ましくは、コーティングチューブ100cを成形部210から真っ直ぐに鉛直上方向に引っ張る。生成されたコーティングチューブ100cにおいてコーティングされるコーティング層400の膜厚は、コーティング剤溶液400aの粘性と、成膜チューブ100bが引き上げられる速度、すなわち、巻取ローラ31がコーティングチューブ100cを巻き取る速度により変化する。例えば、巻取ローラ31がコーティングチューブ100cを巻き取る速度を早くすると、膜厚は増加し、巻取ローラ31がコーティングチューブ100cを巻き取る速度を遅くすると、膜厚は減少する構成であってもよい。巻取ローラ31は、コーティングチューブ100cを巻き取る速度を設定することにより、コーティング層400の膜厚を調整する構成を有してもよい。また、一連の工程を繰り返して、コーティング剤溶液400aの多層膜が成膜されるようにしてもよい。この場合、多層膜は同じ種類の膜であっても、異なる種類の膜であってもよい。
【0034】
液面Laから上に引き上げられることにより、コーティング剤溶液400aの層が成膜される工程が特許請求の範囲に記載の成膜工程に相当する。
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0035】
(3-1)上記実施形態によれば、内面にコーティング層400を有する、コーティングチューブ100cを製造することができる。
これにより、例えば、コーティングチューブ100cの外面である基材チューブ100aとは異なる性質を有するコーティング層400が内面に形成されたコーティングチューブ100cを製造することができる。具体的には、例えば、内面に摩擦係数の小さいコーティング層400を配置することにより、内面の滑り性が高いコーティングチューブ100cを製造することができる。
【0036】
(3-2)上記実施形態によれば、コーティング剤の層であるコーティング層400が内面に成膜されたコーティングチューブ100cを製造するチューブ製造装置1において、基材チューブ100aの内面がコーティング剤の溶液であるコーティング剤溶液400aにより成膜される前に、基材チューブ100aの断面を所定の形状に成形する。
【0037】
このような構成によれば、コーティング剤溶液400aが成膜される前に、基材チューブ100aの断面を所定の形状にすることができる。そのため、コーティング剤溶液400aを元に、基材チューブ100aの内面に形成されるコーティング剤の層の厚さが不均一になることを抑制することができる。
【0038】
(3-3)上記実施形態のチューブ製造装置1は、基材チューブ100aの内面がコーティング層400により成膜されたチューブであるコーティングチューブ100cを製造する。ここで、チューブ製造装置1は、成膜領域200の下方向に成形部210が配置される。そして、成形部210は、下方向(基材チューブ100aが先に挿通される側(上流側))から上方向(基材チューブ100aが後に挿通される側(下流側))に移動する基材チューブ100aにおけるコーティング剤溶液400aの層が成膜される成膜領域200の液面Laにおいて基材チューブ100aの断面を所定の形状とする。
【0039】
このような構成によれば、コーティング剤溶液400aの層の成膜前に、コーティング剤溶液400aの層が成膜される成膜領域200の液面Laにおいて、基材チューブ100aの断面を所定の形状にすることができる。そのため、基材チューブ100aの断面形状がガイド12や基材ロール11に巻き付くことにより歪みが生じ、基材チューブ100aの内面に形成されるコーティング剤溶液400aの層の厚さが不均一になることを抑制することができる。そして、コーティング剤溶液400aが乾燥したことにより形成されるコーティングチューブ100cは、コーティング層400の膜厚が不均一となることが抑制される。
【0040】
これにより、内面に配置されるコーティング層400の膜厚の均一性が向上することにより、コーティングチューブ100cにおいて、コーティング層400の性質をより発揮させることができる。すなわち、例えば、
図4に示すように基材チューブ100aに対してコーティング層400の層が形成されていない部分である不良部分600を有する不良チューブ100dに比べて、コーティング層400の層が形成されていない部分が小さいため、コーティングチューブ100cの方が不良チューブ100dに比べ、コーティング層400の性質をより発揮できる。
【0041】
(3-4)上記実施形態によれば、成膜チューブ100bが鉛直上方向に引き上げられることにより、成膜チューブ100bの内面に成膜されるコーティング剤溶液400aの層はより均一となる。すなわち、表面張力により基材チューブ100aの内側表面にコーティング剤溶液400aの層が成膜されるが、特に基材チューブ100aの内径が大きい場合(基材チューブ100aが太い場合)には、均一になりにくくなる。上記実施形態では、鉛直方向に引き上げられることにより、不均一になることを抑制することができる。
【0042】
(3-5)上記実施形態では、挿通孔210aの形状及び大きさにより、引き抜き力の大きさを調整することができる。引き抜き力の大きさが調整されることにより、巻き取りの際に基材チューブ100aが不安定となり、いわゆるブレが生じることを防ぎつつ、基材チューブ100aが挿通孔210aと基材チューブ100aとの摩擦により伸びることを抑制することができた。その結果、コーティングチューブ100cにおいて、不均一なコーティング層400の層が形成されることを抑制することができる。また、チューブの断面方向だけでなく、チューブの延伸方向に対してコーティング層400の膜厚が不均一となることを抑制することができる。なお、引き抜き力の大きさは、例えば、1mmから3mmまでの厚さを有し、3mmから30mmまでの内径を有するシリコーンチューブでは、1kPaから10MPaまでの引き抜き力により基材チューブ100aの変形を補正することができる。
【0043】
(3-6)上記実施形態によれば、成形部210の上端が液面Laよりも下に配置されるため、液面Laの位置を視認することができる。このため、液面Laの位置において、基材チューブ100aが所定の形状となっているか視認することができる。このため、液面Laの位置での基材チューブ100aの断面形状が所定の形状から外れることにより、基材チューブ100aの内面に成膜されるコーティング層400の膜厚が不均一となることを抑制することができる。また、成形部210において、液面Laの位置が見えるような構成である視認部を構成する必要が無く、液面Laの位置を視認することができる。なお、液面Laの位置が下がってきた場合に、成形部210を下方に下げるための位置調整機構を設けても良い。
【0044】
(3-7)上記実施形態によれば、成形部210は、内部にチューブが挿通されて相対的に移動するとともに、成膜領域200において基材チューブ100aの断面を所定の形状とする挿通孔210aが設けられる。
【0045】
このような構成によれば、成形部210の挿通孔210aに基材チューブ100aが挿通されることにより、基材チューブ100aの断面の形状を所定の形状に形成することができる。そのため、基材チューブ100aの内面にコーティング剤溶液400aの層が成膜される際にコーティング剤溶液400aの層の膜厚が不均一となることを抑制することができる。その結果、コーティングチューブ100cにおいて、不均一なコーティング層400が形成されることを抑制することができる。
【0046】
(3-8)上記実施形態によれば、乾燥部20により成膜チューブ100bの内部のコーティング剤溶液400aが乾燥される。このような構成によれば、自然乾燥により乾燥する場合に比べ、乾燥する時間及び区間を短くすることができるため、成膜チューブ100bの断面の形状を所定の形状に保持する時間及び区間を短くすることができる。そのため、成膜チューブ100bの断面を所定の形状に保持しやすい。その結果、コーティングチューブ100cの内面に形成されるコーティング層400の厚さが不均一になることを抑制することができる。
【0047】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0048】
(4-1)上記実施形態では、成形部210の上端は、液面Laよりも下に配置される。しかし、成形部210の配置は、その成形部210の上端が液面Laよりも下にあるものに限定されるものではない。例えば
図5に示すように、液面Laの高さが、成形部214の上端と下端との間に配置されてもよい。このような配置によれば、液面Laの高さにおいて、成形部214の挿通孔214aと基材チューブ100aの周面とが直接的に接触するため、成形部214により成形された後の基材チューブ100aが液面Laの高さに達するまでに、断面形状が所定の形状ではなくなることを抑制することができる。
【0049】
(4-2)また、成形部214は透明な材料により形成されてもよい。このような構成によれば、例えば、成形部214の挿通孔214aが設けられた範囲に液面Laが含まれる場合であっても、成形部214の外部から液面Laの位置を視認することができる。すなわち、位置の制約を受けず、成形部214を配置することができる。
【0050】
(4-3)上記実施形態では、成形部210は、成膜領域200に一つ配置される。しかし、配置される成形部210の数は1つに限定されるものではなく、複数存在してもよい。例えば、
図6に示すように3つの成形部211,212,213を備えてもよい。なお、成形部210の数は3つに限られず、2つでもよく、4つ以上でもよい。
【0051】
また、液面Laよりも上に成形部213を配置することにより、液面Laにおいて、所定の形状になっていた基材チューブ100aの断面をコーティング剤溶液400aの層が成膜された後においても所定の形状になるように保持しやすくなる。
【0052】
(4-4)更に、複数の成形部211,212,213が存在する場合には、そのうちの少なくとも1つの挿通孔211a,212a,213aの大きさは、他の成形部211,212,213の挿通孔211a,212a,213aの大きさと異なるように形成されてもよい。具体的には、成形部211,212,213の挿通孔211a,212a,213aは異なる大きさに形成されてもよい。また、成形部211,212,213の挿通孔211a,212a,213aの少なくとも一部が異なる構成であってもよい。
【0053】
このような構成によれば、例えば、複数の成形部211,212,213の挿通孔211a,212a,213aの大きさを下(基材チューブ100aが先に挿通される側(搬送上流側))から順に小さくなるように形成することにより、基材チューブ100aの形状を段階的に所定の形状となるように形成することができる。
【0054】
また、反対に、例えば、複数の成形部211,212,213の挿通孔211a,212a,213aの大きさを下(基材チューブ100aが先に挿通される側(搬送上流側))から順に大きくなるように形成することにより、基材チューブ100a一番下の成形部211の挿通孔211aを挿通した際に基材チューブ100aに成形部211と基材チューブ100aとの間に摩擦が生じ、基材チューブ100aが伸びたとしても、成形部212及び成形部213で伸びを抑えた状態で、乾燥部20に搬送することができる。これにより、液面Laの高さに達した基材チューブ100a及び乾燥部20に入る前の成膜チューブ100bを所定の形状に保持しやすくなる。
【0055】
(4-5)上記実施形態では、挿通孔210aは、挿通孔210aの大きさ及び形状は、挿通孔210aの下端から上端まで一定であってもよいとしたが、挿通孔210aの大きさは、挿通孔210aの下端から上端まで一定でなく、変化していてもよい。具体的には、
図7に示すように挿通孔215aの下端から上端にかけて挿通孔215aの大きさが狭くなるように形成されていてもよい。このような構成によれば、挿通孔215aの下端から段階的に、基材チューブ100aの断面形状を成形することができる。
【0056】
反対に、
図8に示すように挿通孔216aの下端から上端まで大きさが広くなるように形成されていてもよい。このような構成によれば、仮に挿通孔216aの下端部分で基材チューブ100aと成形部216とが接触し、基材チューブ100aと成形部216との摩擦により、基材チューブ100aが伸びたとしても、基材チューブ100aの伸びが上端側に向かうにつれて段階的に小さくなる。そのため、基材チューブ100aの伸びを抑えた状態で、乾燥部20に搬入することができる。これにより、乾燥部20に入る前の成膜チューブ100bを所定の形状に保持しやすくなる。
【0057】
(4-6)上記実施形態では、挿通孔210aを有する成形部210により基材チューブ100aの断面形状が成形された。しかし、基材チューブ100aの断面形状を成形する構成は、このような構成に限定されるものではない。
【0058】
例えば、
図9に示すような、チューブを挟むローラ700a,700bによって、断面形状を所定の形状に成形するものであってもよい。
このような構成によれば、チューブを挟むローラ700a,700bによって、コーティング剤溶液400aの層が成膜される成膜領域200において、基材チューブ100aの断面を所定の形状にすることができる。そのため、コーティングチューブ100cの内面に形成されるコーティング層400の厚さが不均一になることを抑制することができる。
【0059】
(4-7)上記実施形態では、基材チューブ100aは、基材ロール11の周面に巻かれた状態で配置されるが、基材ロール11などの周面に巻かれた状態で配置されるものに限定されるものではない。
【0060】
例えば、
図10に示すように基材ロール11を有しない構成であってもよい。
また、回転軸及び回転部分を有する複数のガイド12を有していてもよい。このような場合、両側から挟み込み、ガイド12a,12bから力が基材チューブ100aの両側から加わるため、より断面形状が歪みやすくなる。このような構成であっても、成形部210により成形されることにより所定の形状に断面形状を形成することができ、所定の膜厚のコーティング層400により内面がコーティングされたコーティングチューブ100cを形成することができる。
【0061】
さらに、
図10に示すように、基材チューブ100aに充填されたコーティング剤溶液400aを排出する構成を有していてもよい。
すなわち、基材チューブ100aの端部が開口され、開口から内部のコーティング剤溶液400aが排出されてもよい。更に基材チューブ100aの端部から排出されたコーティング剤溶液400aを収集するタンク300を有してもよい。また、液面Laを略同一の高さに端部が配置されてもよい。
【0062】
また、複数のガイド12の配置は、
図11に示すように、例えば、回転軸の軸方向が平行となるような複数のガイド12c-12gを有していてもよい。そして、当該複数のガイド12c-12gは、ガイド12c-12gにより誘導される基材チューブ100aが下に凸となるU字形状となるように搬送されてもよい。さらに、基材チューブ100aのU字形状の2箇所において、コーティング剤溶液400aの液面が現れるような位置にガイド12c-12gが配置されてもよい。すなわち、ガイド12c-12gにより基材チューブ100aの端部がコーティング剤溶液400aの液面Laの高さよりも高い位置に位置するように配置されてもよい。具体的には、例えば、成膜領域200に対して最も遠い位置にあるガイド12fの周面の上側が液面Laよりも高い位置に配置され、当該ガイド12fの周面の上側を基材チューブ100aが通るように配置されてもよい。なお、液面Laよりも高い位置に周面の上側が配置されるガイド12は、成膜領域200から最も遠い位置のガイド12fに限定されるものではない。また、ガイド12c,12d,12eが、ガイド12fからガイド12gまでの間に配置され、搬送される基材チューブ100aの下側に沿って回転部分の周面が位置するように配置されてもよい。これにより、ガイド12fからガイド12gまでの間を基材チューブ100aが搬送される際に、基材チューブ100aを支持することができる。
【0063】
(4-8)上記実施形態によればチューブ製造装置1は、成膜チューブ100bのコーティング層400を固めるために、乾燥部20を有するが、成膜チューブ100bのコーティング層400を固める構成は乾燥部20に限定されるものではない。例えば、コーティング剤溶液400aが、溶媒によりコーティング層400が溶けた溶液ではなく、コーティング層400を加温槽等の熱で加熱することにより液体状態にした場合には、成膜チューブ100bを乾燥させる乾燥部20の代わりに、成膜チューブ100bを冷却させる冷却槽を通してもよい。また、コーティング層400の材料の種類によっては、乾燥部20の代わりに配置されるものだけではなく、乾燥部20とは別に冷却槽が配置されるものであってもよい。また、乾燥部20と冷却槽との位置関係は乾燥部20の上に冷却槽が配置されてもよく、冷却槽の上に乾燥部20が配置されてもよい。すなわち、乾燥後に冷却する構成であってもよく、冷却後に乾燥する構成であってもよい。
【0064】
(4-9)上記実施形態では、乾燥部20を設けたが、乾燥部20は配置されなくてよい。すなわち、乾燥部20を設けず、恒温槽から出た成膜チューブ100bは、自然乾燥され、液体状態のコーティング剤溶液400aが固体状態のコーティング層400になることによりコーティングチューブ100cが製造されてもよい。上記実施形態では、成膜領域200は、成膜チューブ100bは乾燥部20に搬入される位置までの範囲であるとしたが、成膜領域200はこのような範囲に限定されるものではない。例えば、乾燥部20を有しない構成である場合、成膜領域200は、基材チューブ100aの表面にコーティング剤溶液400aの層が成膜される液面Laの位置から、コーティングチューブ100cに設けられる固体状態のコーティング層400の膜厚が変化しない位置までの範囲であってもよい。
【0065】
(4-10)上記実施形態において、成膜領域200は、コーティング剤溶液400aが乾燥することにより固まることを抑制する恒温槽の内部に配置されてもよい。成膜領域200に到達する前に、コーティング剤溶液400aが基材チューブ100aの内部で固まり、チューブの詰まりの原因となることを抑制することができる。
【0066】
(4-11)挿通孔210aの形状は、上下方向に対して垂直な断面が円形形状となるものに限定されるものではない。具体的には、液面Laにおいて、基材チューブ100aの断面形状が所定の形状に形成されていればよい。
【0067】
(4-12)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0068】
(4-13)上述したチューブ製造装置1の他、当該チューブ製造装置1を構成要素とするシステム、当該チューブ製造装置1としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、チューブ製造方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0069】
1…チューブ製造装置、11…基材ロール、12,12a-12g…ガイド、20…乾燥部、30…巻取部、31…巻取ローラ、100a…基材チューブ、100b…成膜チューブ、100c…コーティングチューブ、100d…不良チューブ、200…成膜領域、210-216…成形部、210a-216a…挿通孔、300…タンク、400…コーティング層、400a…コーティング剤溶液、700a,700b…ローラ、La…液面。